第214回:プロ雀士インタビュー 魚谷侑未 インタビュアー:浜野太陽
2021年02月08日
魚谷侑未プロ。今や麻雀界を代表するトッププロであり、一昨年はG1タイトル三冠、昨年はタイトルこそ無かったもののMリーグMVP。さらに今回の女流モンド王者に輝き、若手の僕から見ると女流プロ最強の名を欲しいままにしているような方である。その魚谷プロへ優勝記念インタビューという大任を賜り、お話を伺うと…まだこの優勝すら道中なのだと感じさせる魚谷プロの大きな野望と覚悟を知ることができたので、ぜひ皆さんにお伝えしたい。
当日は魚谷プロと親交の深い藤井すみれプロを交えてイタリアンのお店に伺い、シラスかけ放題(!)のパスタに舌鼓を打ちつつお話を伺った。
—— 早速ですが、この度は優勝おめでとうございます!決勝戦のメンツは和久津プロ、大島プロ、日向プロ(以下敬称略)。決勝のメンツが決まった時はどう思いましたか?
魚谷「正直勝てると思わなかったんだよね。このメンバーは日本シリーズ、プロクイーン、女流桜花…それぞれ別のどこかで負けた思い出があって。そもそも予選も初戦が4着スタートだったり、トップ取れそうなところから池沢さんが国士をアガッて逆転されたり…決勝にすら行けると思ってなかったしね。」
—— 実績では圧倒的な魚谷さんが勝てる気がしなかったなんて意外です。
魚谷「なんか私ずっと低迷期っていうか、なかなか魂が帰ってこなくて、納得いく麻雀が打ててなかったんだよね。リーグ戦の解説でも瀬戸熊さんに『いつもの麻雀が打てていない』っていうことを言われたんだけど、気持ちで麻雀を打つ人には伝わるんだなって思った(笑)でも女流モンドが始まってからは、やっと帰ってきた感じがあって、心も体も充実した状態で臨めた。だから、苦しい予選の中でも自信を持ってプレーできたのは大きかったかな。」
「最近自信を持って打てない」「打ち方に迷っている」といった話は若手同士でもすることはあるが、「魂」という単語が説得力を持って自然と出てくるのはさすがだと思わされる。
—— そして決勝戦。南場までアガリがなく、発声はリーチの1回だけでした。焦りはあったりしましたか?
魚谷「何回も決勝戦をやってきて、1回戦は3着まで入ってれば全然可能性あると思ってたよ。だから焦りとかはなかった。もちろんトップが有利なんだけどね。」
—— 優勝経験豊富だからこその余裕ですね。決勝の内容については、僕が気になった局と魚谷さん自身が思い入れのある局についてお伺いしたいのですが、まずは僕が気になった局から伺えればと思います。1回戦の南1局13巡目、ドラ雀頭でイーペーコー出来合いの手牌から鳴きを入れました。これ、鳴きたくない人が多いと思うんですが…
魚谷「くっつきテンパイで受け入れの種類自体はたくさんあるよね。でも既に結構切られてしまっていて、テンパイはまだしもアガリは厳しいんじゃないかっていう感覚があったんだよね。だからノーテンだけは阻止しようと思ってチーした。そういえば、初めて優勝した時の女流桜花で藤原さんに同じようなチーしたのを観戦記で結構キツく言われたんだよね。でも自分の選択には自信を持ってたから気にせずここまでやってきて、今回も打ち方を貫けたよ。」
手牌だけを見るとメンゼンのアガリを諦めたくないところだが、柔軟に目標を下方修正できるのはすごい。
—— では、ご自身で鍵になったと思う局はどこでしたか?
魚谷「実はあまりコレ!って感じの見せ場は無かったなあと思ってるんだよね。自分の局ではないんだけど、大島さんに倍満をツモられた時はかなり大きくて、負けを覚悟したな。」
トップスタートの大島は2回戦に跳満の放銃に見舞われるも、次局には倍満のアガリですぐにリカバー。オーラス時点では、倍満ツモという非常に厳しい条件を魚谷に突きつけた。
魚谷「でも何が起こるかわからないから、チャンスを逃さないように気持ちだけは切らさないようにしてた。自分が無理そうなら大島さんがアガらないように絞りつつ、和久津さんが連荘してくれることを願ってたよ」
そしてその願い通り、和久津の必死の連荘でオーラスは2本場・供託2本に。魚谷の条件は倍満ツモが1,300・2,600ツモという現実的なものに!見事ドラドラの手牌をリーチしてツモアガリ、優勝を決めた!
—— これで女流モンド杯優勝は3回目。優勝した瞬間の思いはどうでしたか?
魚谷「リーグ戦とかも勝てなかったから久しぶりに勝ちにつながって本当に嬉しい。自分の麻雀にそれなりに自信があっても、負けが続くと『どっか違うかもしれない』という不安と戦い続けなきゃいけないから。また自分を信じていいのかなっていう安心もあったよ。」
—— 放送での優勝コメントでは、「1、2回目の優勝でいろいろ道が拓けて今の自分がある」というコメントがありました。個人的にすごく興味があるんですが、どういうことがあったんですか?
魚谷「タイトルを取ることってそれ自体の価値に加えて『いろんな人に知ってもらえる』っていうことがとても大きいと思っていて、私の中で応援してくれる人が増えたことを一番顕著に感じたのがモンド王座を優勝した時なんだよね。今でも『モンド王座を見てファンになりました』って言ってくれる人がいるぐらい。初めての女流モンドの時点で負けてたら、次は呼ばれずに消えていく人だったかもしれない。」
モンド王座で跳満ツモ条件をクリアして優勝した場面は多くの人の脳裏に焼き付いているだろう。今こんなに第一線で活躍している魚谷プロが、世に出ない未来なんてあったんだろうか。
——最後にモンド王座決定戦に向けて、ファンの皆様に一言お願いします!
魚谷「モンドは私の原点と思っている、特別思い入れの深いタイトルです。そんな女流モンド杯で、応援してくれる人に久しぶりにいい報告ができてとても嬉しく思っています。女流モンドの最多優勝はすごく嬉しいけど、もっともっと結果を出して、ずっと名前が残るような選手になりたいです。いつも通り『応援してくれる人よりも先に諦めない』の精神で頑張りますので、モンド王座も応援お願いします!」
最多優勝でも満足することなく、未来の選手をも越えようとしている…色々なメディアでのカッコいい姿や、動画サイトでの配信など精力的に活動する魚谷プロを支える思いを知ることができた。皆さんにも魚谷プロを以前よりも身近に感じていただくことができたら幸いに思います。モンド王座もぜひご注目ください!
カテゴリ:プロ雀士インタビュー