鳳凰の部屋/第29期鳳凰戦の軌跡~体感~
2013年07月24日
第29期鳳凰位決定戦が終わり、僕の麻雀をよく知る人物に評されて、一番しっくりくる言葉があった。
「よく、あの人達と対等に戦えるようになったね」
『しっかり殴り合う』この事を常に考えていた。
『倒れるなら前に倒れよう』を合言葉にしていた。
7回戦で腰が引けて、自分を戒め、8回戦でまた自分を取り戻した。
迎えた9回戦。
この半荘は、完全に「行き腰」のある麻雀を打つ事だけを考えていた。
8回戦終了時成績
前原+41.7P 瀬戸熊+29.5P 荒▲27.7P 藤崎▲43.5P
東2局、背中を後押ししてくれるかのような自然なアガリをものにする。
ポン ツモ ドラ
荒さんのリーチ(–マチ)を掻い潜り、幸先の良いスタート。
迎えた親番。ダブ東が早い段階で鳴け、一人旅となる。山との勝負。
カン ツモ ドラ
これもヒットする。
8回戦のスレスレの戦いがようやく実を結ぶ。俗に言われる「クマクマタイム」の入り口。
しかし、怪物たちがそのくらいの事を分らない訳がない。誰一人顔をあげない。
ほとんど加点のないまま親を落とされる。
南場の親番でもう一度ブレイクさせる為に、前に出る。
しかし、南1局、荒さんのスーパープレイが炸裂する。
このが止まる人が、この世に何人いるのだろう。
僕からのテンパイ気配は、当然、荒さんも感じている。そこへ親の藤崎さんの若干強めの牌。
それだけの些細な情報から、を止める荒正義。28期決定戦で僕の当たり牌を止めた再現。
トータルトップの前原さんが9,600の放銃となり、ハコを割る。
他の3人のトップ走者包囲網が実を結んだ瞬間。
このスーパープレイは、僕からは分からない。
そこで僕は勘違いをしてしまう。展開まで仕上がって来ていると。
そこで迎えた南2局。エラーと呼べない程の小さな小さなミスが出る。
藤崎さんの連チャンの1本場。前原さんが7巡目に仕掛ける、ポンテン。
ポン ドラ
僕の手牌は、
ツモ 打
最終形
これを思い描く。
自分で本当に作り上げた体勢ならば、そうなったであろう。
しかし、状況はちょっと違っていたのである。
次巡の前原さんは、ツモ切りの。
この、仕上がっているならば「ステイ」である。
しかし、本当はまだ仕上がっていない。
「チー」の声が出ない。いや出せない。
そして次巡、前原さんツモで500・1,000のアガリ。
チーしていれば、
チー ツモ
こうなり、–のテンパイ。
前原さんのマチは、山に2枚。僕のマチは山に3枚となっていたはずであった。
このアガリ形を見て確信する。
「次の前原さんの親番は大変な事になる。」
南2局、持ち点1,000点の前原さんが、予想通りリーチ。
数巡後、ツモの発声。
ツモ ドラ
4,000オール。嵐の過ぎ去るのを待つしかない。
東場のクマクマタイムは幻と化そうとしていた。
次局、これまた全員が予想する中で、8巡目リーチ。100%本手だ。
捨て牌
ドラ
僕は下を向いて耐えるしかない。
西家・荒さんが、珍しくツモ番で少考に入る。打。
荒さんの手牌は、
ツモ
オリを選択。僕ならどうしただろうか。
北家・藤崎さんも少考に入る。打。藤崎さんの無筋打ち。200%テンパイである。
手牌は、
ツモ
前原さんのツモはドラの。少しだけ時間が止まる。
同巡、藤崎さん「ツモ」の発声。しのいだ。いや僕は座って、助けてもらっただけだ。
前原さんのリーチは、
こうだった。ヤミテンなら、シャンポンなら、これまたミスとは言えない場面である。
「隙」とは言えない隙を潰し合う。
「ああ、鳳凰位決定戦なんだなあ」と思う。
間違いなくそこに、日本で最高のレベルの麻雀が存在していると体感するのであった。
その中の1人に僕がいる。勝つ事よりも、いかにこのレベルに乗り遅れないように打つか、新たに考えさせられた。
オーラス、東場の貯金のまま、持ち点48,800とある状況で、ラス目の前原さんからリーチが入る。
捨て牌
どう見ても変則手であり、点棒状況から考えて、満貫から跳満クラスのリーチである。
15巡目、僕の手牌は以下のものとなる。
ツモ ドラ
親の荒さんはオリている。安全牌を抜けば、この半荘は無事に終わる。ツモはあと2回。
リーチの前原さんのツモを考えると、3回のチャンス。一般的には「オリ」が正解なのだろう。
僕は、ファンの声、応援してくれている人に問おうと思った。
胸を張って切ったドラのを。
十中八九予想していた「ロン」の声。
開けられた手牌
ロン ドラ
腹をくくっていたつもりだが、気持ちが揺れた。荒さんと藤崎さんの視線が刺さるのを感じた。
小休止の間、自問自答して出した答えは、
「10回戦、トップを獲れば正解としよう」と自分に言い聞かせた。
この怪物たちと殴り合うのは、本当に精神力の戦いである。
殴っても殴っても、僕のパンチが効いているのか分らない。
中間地点を前に、再びトータルトップに立ったのは事実だし、戦い方にも満足していた。
後は、結果を気にしないでどこまでリングに立っていられるかだろう。
苦しいけど、確かな幸せがそこにはあった。
第29期鳳凰戦の軌跡~反応~へ続く
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