第16期女流桜花決定戦~初日~レポート
2021年12月13日
仲田か魚谷か――
女流桜花の歴史は、というと大げさだが、近年はこの2人を中心に回っている。
昨年こそ魚谷は決定戦に進出できなかったが、この10年で8回目。
仲田は6年連続。
今年の女流桜花Aリーグでも2人は圧倒し、プレーオフ前には仲田が+242.8ポイント、魚谷が+159.4ポイントと決定戦進出をほぼ確定させていた。
決定戦となると不思議なことに、2人の対決は仲田が3勝、魚谷が0勝。
2人とも破れた2019年も仲田の方が上と、魚谷は全く勝てていない。
1位通過 仲田加南
4、5年前のことだろうか。
仲田と僕はプロリーク(鳳凰戦)で同じC2リーグに所属していた。
どういうシチュエーションだったか忘れてしまったが、「最近、勝てないんだよねー」と会話した記憶がある。
その頃は、体調もあまり良くなかったらしい。
今は万全かわからないが、女流桜花だけでなくリーグ戦もC1、B2リーグとトントンと昇級。
好調さがうかがえる。
“牌と戦うのではなく、人と戦う”
毎年のように、今年も魚谷を徹底マークだろう。
2位通過 魚谷侑未
今期のプロリーグ(A2)は中盤に大きなマイナスが続き降級ポジションの15位だったが、11月に+96.3Pと大勝し残留ボーダーラインまで回復。
また先日行われた第1期鸞和戦のベスト16、ベスト8とも危なげない内容で決勝進出と、直近は絶好調。
仲田が最大の壁と認識するも、基本はその局面での最善を目指す”牌と戦う”スタイル。
3位通過 内田美乃里
プレーオフは4位スタートで、1つ順位を上げるも、後から行われるB卓にターゲットにされ、抜かされることが大半。
半ば諦めていただろうが、B卓では仲田が圧倒したおかげで決定戦進出。
1度は捨てた命とか追い風ポールポジションとか、何か他の力が働いてもおかしくない。
攻めが鋭い、切れ味のある麻雀が特徴。
第12期(2017年)以来の3回目の決定戦、プロリーグはC2リーグ所属。
現女流桜花 川原舞子
一番不安な心境で決定戦を迎えたのは川原ではなかろうか。
対局機会はあるものの、女流桜花の舞台では1年ぶりの対局。
仲田、魚谷、内田との対局も久しぶりかと思われる。
女流桜花を戴冠したことで、呼ばれた対局、得られたシードは多かったはず。
『もう1年桜花でいたい』、その気持ちは非常に強いだろう。
プロリーグはC2リーグ所属。
開局こそ魚谷、仲田、内田の3件リーチとなったが、その後はあまり手がぶつからず、流局の多かった初日。
3回戦には、魚谷、内田のファインプレーで親の川原のドラ4を阻止と、誰一人抜け出せない。
しかし、突如4回戦に嵐が吹き荒れる。
(牌譜解説で取り上げられた1局。リーチとドラの暗カンに挟まれて様子見になりそうなところ、魚谷がここからを仕掛けてさばいたことを絶賛。内田もより先にを切ったのも好プレーだった。)
4回戦南2局、ここまで魚谷以外の3者が満貫をアガリ、現状トータルトップの魚谷が1人沈みのラス。
スコアは次のキャプチャを参照してほしいが、初日はあまり差がつかずに終わるなと、解説席からはそんな雰囲気が漂っていたように思えたのは僕だけであろうか。
少なくとも僕は、2日目勝負だなと完全に油断していた。
のツモ切りかと思われたが、仲田の選択はを暗カンして1シャンテン戻し。
暗カンは思いつかなかったが、目の当たりにすると、なるほどと思う一手。
嶺上は有効牌ではなかったが、その後を引き入れてリーチ。
川原は既にこのテンパイが入っていたが、
ポン ドラ
魚谷が追いついてリーチだったが、
ツモ リーチ 打 ドラ
内田
ツモ 打 ポン ドラ
ちょうどが中筋となってしまい放銃。
リーチ、タンヤオ、三色同順、ドラの12,000!
とうとう仲田のラリアットが決まってしまった。
仲田は次局の2本場を2,900で刻むと、3本場は
ツモ ポン ポン ドラ
南、ドラ3の4,000+300オールと、追加の一撃。
仲田大量リード。ほんの十分前の均衡は何だったのか――。
初日をリードで終われそうだった魚谷、ライバルの仲田に、それこそ『今まで通りに』引き離されてしまい、内心穏やかではなかったはずだ。
過去の戦いを見ると、仲田にリードされ、焦るではないのだが、ややかかってしまっていたように感じる。
(こんなこと書くと、そんなことなかったよ、と一蹴されそうではある)
南3局、この半荘初めての勝負手、
かかっていたらなおさらリーチの手ではあるのだが――待ち取りやリーチの是非を検討したのだろう――場を見渡しての冷静かつ落ち着いたリーチ宣言に、今までとの違いを感じずにはいられなかった。
リーチ、ツモ、タンヤオ、ドラ3の3,000・6,000。
そして、迎えた南4局の親番、魚谷は500オール、2,000+100オールと加点し、24,100点持ちと浮きまであと少しになった2本場、高目11,600の先制リーチ。
「流れがきた!」と魚谷を応援するファンは、もしかすると仲田を応援するファンも思ったかもしれない。
一度はヤミテンにした仲田、意を決してのリーチ。そして、魚谷から出アガリ。
不格好な倒牌を取り上げて仲田には申し訳ないが、この力の入りよう、魚谷を止めなければならない勝負局と捉えていたことがおわかりいただけるだろう。
初日を終えてのスコアはこちら。
魚谷、川原としては、4回戦で仲田に大トップを取られてしまったのは不本意だが、悲観することはない差、2日目は仲田に走られないように戦うだろう。
しかし、内田はどうだろうか。
この4回戦、内田は一時4万点を超えていたにも関わらず、終わってみたら4,000点のラス。
仲田のきっかけとなった12,000を放銃した局は、このを仕掛けていれば、次巡の仲田のツモがだったので、内田のアガリだった。
内田のスタイルでは鳴かないように思うが、目に見えて悪い結果となってしまった。
ただこれは結果論であって、逆にが川原、魚谷の手にいくようなら、翻牌を絞ってしまって、仲田の親が連荘したかもしれない。
その点を内田が2日目までのインターバルで消化し、戦う気持ちを持てるか、心理的にノックアウトされたままなら大逆転は厳しいだろう。
(文:福光聖雄)
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) レポート