十段戦 レポート

十段戦 レポート/第30期十段戦 ベスト16レポート

 
5月25日から始まった十段戦も、いよいよベスト16の戦いとなる。
去年、決勝に駒を進めた4人はここから出場となるため、なんとか去年のリベンジをと思いこの戦いに臨んでいることであろう。また、ここまで勝ち上がってきた者たちにはそれぞれに勢いがある。雪辱を誓う思いか?それとも勢いか?
それぞれの戦いを振り返ってみたいと思う。
A卓
堀内正人(前年度二位) vs 明石定家 vs 古川孝次 vs 河井保国


堀内正人

明石定家

古川孝次

河井保国

東1局は、古川の1,600からスタート。
最初の2回戦、全23局中20回は誰かが仕掛けているという非常に鳴きの多い面子だが、その中で4者門前と静かなスタートを切った。
そんな中ぶつかり合ったのが南1局。
まず北家の古川が、
七万八万九万五索五索七索八索九索五筒六筒北北北  リーチ  ドラ七筒
そこですぐに東家の河井が追いつく。
五万六万七万三索四索五索九索九索四筒四筒四筒七筒九筒  リーチ
ここは古川が高目である七筒を一発でツモアガリ2,000・3,900。
ルールの上では一発という役は付かないが、勢いを十分に感じさせるものである。
古川の牌姿を見て、四筒を暗刻で持つ河井は厳しい表情を少し滲ませた。
このアガリが効いて、初戦は古川がトップとなる。
2回戦、堀内が勢いに乗る。
南1局
二万二万四万五万二索三索三索四索四索五索三筒四筒五筒  リーチ  ドラ九万
古川・明石の仕掛けに対して四索を引き入れてのリーチ。
ここは明石が安目の六万を放銃し3,900。
しかしそのまま堀内の勢いは止まらず、
南2局
一万二万三万七万三索四索五索七索八索九索三筒四筒五筒  リーチ  ドラ七万
これをツモりあげ、この半荘は堀内の1人浮きトップとなる。
4回戦、我慢の続く河井が反撃の狼煙を上げる。
東1局3本場
一万一万二万三万四万五万六万三筒六筒六筒六筒東東  ドラ二筒
堀内のリーチを受けるが、親の河井はここに七万をツモり、当たってみろと言わんばかりに渾身の三筒切りリーチ。力強く一発でダブ東をツモリ4,300オール。
以降、河井は着実にアガリを拾い、6万点弱の大きいトップを取る。
今回も堀内は安定の打ち回しで浮きの2着。
4回戦を終えて、堀内の1人浮きの状態となり、3人による残り1つの椅子の奪い合いが始まる。
5回戦東3局、親の河井。
二索三索四索六索八索西西  ポン東東東  ポン南南南  ドラ六索
西家の明石
四万四万六万六万六万七万八万六索七索八索六筒七筒八筒  リーチ
ここで明石が力強く四万をツモアガリ、3人の争いから一歩抜け出す大きなトップをとる。
最終戦を迎えポイント状況は以下。
堀内(+61.5P)明石(▲4.1P)古川(▲23.7P)河井(▲33.7P)
南1局、親の河井。
三万四万五万六万八万八万八万  チー五万 左向き四万 上向き六万 上向き  ポン二万 上向き二万 上向き二万 左向き  ツモ六万
この6,000オールをアガリ、また3者が並ぶ。
そこで迎えた最終戦のオーラス。
西家・古川の配牌。 四万五万六万三索四索四索五索六索二筒三筒四筒四筒四筒  ドラ四筒 もう一度言うと、これが配牌である。
古川の条件である3,900を十分に満たしている為、当然ダブルリーチは打たない。 僅か3巡で決着。
A1リーガー古川の勝負強さを見せつけられたオーラスである。
また、6回戦を通して堀内の安定感が非常に際立った戦いだったように思う。
勝ち上がり 堀内正人  古川孝次
 
B卓
仁平宣明(前年度3位) vs 中村毅 vs 伊藤優孝 vs 山井弘


仁平宣明

中村毅

伊藤優孝

山井弘

 
見所は山井、中村の攻撃力VS伊藤の粘り強さVS仁平の対応力とカウンター。
いきなり親の伊藤が魅せる。
東1局
一万二万三万六万六万三索四索五索六筒七筒七筒八筒九筒  ツモ五筒  ドラ七筒
この2,600オール。
一索一索一索二索三索八索九索  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き  ツモ七索  ドラ七索
そして6,100オール。
八万八万二筒二筒五筒五筒八筒八筒南北北白白  リーチ  ロン南  ドラ北
さらにこの12,600。
怒涛の3連荘。一気に60,000点オーバーのトップ目に躍り出る。
3者が追う形となって迎えた南2局。
東家・仁平
一万二万三万四万五万七万八万九万六索六索六索七索八索  リーチ  ドラ二筒
我慢の続く展開に、リーチ宣言にも力が入る。
しかしここは中村が1,000で捌く。
南4局1本場、ラス目の親の山井がリーチ。
宣言牌は八筒
流局し、山井の1人テンパイ。山井の開けた手牌を、同卓者が皆注意深く覗き込む。
四万五万六万一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒七筒八筒  リーチ  ドラ二筒
四万五万六万一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒
この形から七筒をツモってからの三筒六筒八筒九筒待ち、高目一通のフリテンリーチである。
『オフェンスマスター』山井弘が早くも勝負の姿勢を見せてきた。
その後も連荘するが、最後は中村が上手く捌く。
伊藤の一人舞台に中村もついていく形で浮きの2着。
2回戦、山井と中村がぶつかる。
南1局、南家・山井。
三万四万五万六万七万八万六索七索六筒七筒八筒南南  リーチ  ドラ九索
北家・中村
東東南南  ポンポン九索 上向き九索 左向き九索 上向き  チー五万 左向き三万 上向き四万 上向き  ポン北北北
丁寧な打ち回しで手役をしっかりと作ってくる山井だが、ここは東を掴み中村に8,000の放銃。
2回戦を終え、山井が2ラスと1人置いていかれる展開となる。
続く3回戦、そんな山井に大物手が入る。
3回戦、東3局。
親・山井
六万七万八万北北発発発中中  ポン白白白 ドラ六万
高目大三元のテンパイ。このテンパイが入っても、至って山井は静かである。
しかしここも中村が捌く。
山井は大物手をテンパイしてもアガれない苦しい展開が続く。
4回戦、南家・中村。
三万四万五万三索四索五索七索八索三筒四筒五筒北北  リーチ  ドラ五筒
西家・山井
二万二万四万五万六万七万八万九万三索四索五索五筒六筒  リーチ
ここでも軍配は中村に上がる。九索をツモリ3,000・6,000。
このアガリが大きく、4回戦も中村がトップを取り、トータルでも非常に優位な状況となる。
5回戦。後がない山井と仁平。
南2局、親の仁平。
四万四万五万六万七万六索七索八索二筒三筒四筒五筒六筒  リーチ  ドラ五筒
一発で一筒を引きアガリ一矢報いるが、山井が意地を見せ最終戦に臨みを繋ぐ1人浮きトップをとる。
最終戦を迎えポイント状況は以下。
中村(+46.0P)伊藤(+13.9P)山井(▲12.5P)仁平(▲47.4P)
5回戦で大きなトップを取った山井が、その勢いを最終戦でも見せつける。
南1局、北家・山井
三万四万五万一筒二筒五筒五筒  ポン南南南 ポン白白白  ツモ五筒  ドラ五筒
ピンズが安く打一筒とした後、更に五筒をツモリ暗槓。
そのリンシャンに眠っていた牌は二筒であった。
三万四万五万二筒  暗槓牌の背五筒 上向き五筒 上向き牌の背  ポン南南南 ポン白白白  リンシャンツモ二筒
3,000・6,000。
南2局、西家・山井
六万六万七万七万三索三索五索五索二筒三筒三筒四筒四筒白  ドラ白
ドラ単騎待ちリーチか。場に安い色でかつ迷彩の効いている二筒単騎待ちか。
少考の後、大きく溜息をつき山井が宣言牌として河に置いた牌は白であった。
これが上手くはまり、中村から6,400をものにする。
この後もドラポンを交わしながら、技ありの1,300・2,600をアガリ、3連続のアガリで勢いそのままオーラスの親を迎えた山井。これで、中村、伊藤両者とも危なくなる。
しかし最後に立ちはだかったのも中村であった。伊藤から1,000をアガる。
怒涛の追い上げを魅せた半荘、最後は静かに幕を閉じた。
自然と山井の後ろにはギャラリーが集まる。
人を惹きつける麻雀を打つ山井に、次回も期待したい。
勝ち上がり 伊藤優孝 中村毅
 
C卓
浜上文吾(前年度4位) vs 前原雄大 vs 山田浩之 vs 安村浩司


浜上文吾

前原雄大

山田浩之

安村浩司

1回戦東1局。
安村に自然な形でペン七万の一通のテンパイが入る。これをノータイムでリーチとして前原から5,200をアガる。安村のここまでの勢いを感じさせるスタートである。
そして、大きな動きのないまま東場は進む。
南1局、東家・浜上6巡目。
五万六万七万三索三索一筒一筒六筒七筒八筒中中中  リーチ  ドラ一万
そこに前原が無筋を勝負しついに追いつく。
北家・前原15巡目
一万一万四万五万六万三索四索五索七索八索四筒五筒六筒  リーチ  ロン六索
この7,700を浜上からアガリ、原点復帰を果たす。
その後は静かな展開となり、最後は安村が自らアガリ初戦をトップとする。
2回戦東2局、ついに前原が暴れ出す。
四万五万六万七万五索六索七索四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ  ツモ四万  ドラ四筒
この3,000・6,000のアガリ。
東4局
六万七万八万四索四索三筒四筒五筒六筒七筒西西西  リーチ  ツモ五筒  ドラ四索
この3,900オール。2回のアガリであっという間に50,000点を超える。
こういう前原を今まで何度か見てきたが、やはり凄さを感じずにはいられない。
2回戦はこのまま前原の圧勝となる。
他の3人にとっては苦しい半荘であったが、そんな中でも山田は我慢を重ねてプラスの2着とする。
3回戦、東1局から前原が大物手をリーチと行く。
西家・前原
一索二索三索五索五索五索六索六索西西西発発  リーチ  ドラ五万
アガリにはならなかったが、こういう手をリーチと行けるから、前原のリーチに対戦者は恐怖を感じるのであろう。この後も前原は小刻みにアガリを重ねて場面をリードしていく。
前原の勝ちパターンかと思う中、ついに山田が前原を捕える。
南1局、東家・山田
四万五万二索三索四索六索七索八索二筒三筒四筒六筒六筒  リーチ  ロン六万  ドラ四筒
西家・前原
一万一万五万六万七万五索六索四筒四筒五筒五筒六筒六筒
このアガリで山田が初トップを取り調子を上げていく。
その反面、この放銃から前原が苦しい戦いを強いられるようになる。
4回戦、山田が安定感のある内容でプラスを積み重ねていく。
また、2回戦、3回戦とラスとなり苦しい戦いとなっていた安村も、粘りを見せこの半荘をトップとして前原とトータルで並ぶことになる。
5回戦、ここまでなかなか見せ場の無かった浜上にようやく勝負手が入る。
東3局、東家・浜上
四万五万三索三索一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ドラ六万
一筒七筒を振り替えての、高め6,000オールのリーチも山田に捌かれてしまう。
この後も決め手となるアガリが出ない中、前原がテンパイ料と小さなアガリだけで得点を重ねてトップを取る。調子を落としても崩れずにポイントをまとめられるのも前原の強さであろう。
反対に、安村はマイナスの3着となり最終戦を前に苦しい状況となってしまう。
最終戦を迎えポイント状況は以下。
山田(+42.3P)前原(+19.6P)安村(▲5.0P)浜上(▲56.9P)
試合巧者の山田と前原がリードで迎えた最終戦、2人が場を進めようとするのを止めるのはやはり難しく、このまま山田と前原の勝ち上がりとなる。
6回戦を通して山田の安定感と、前原の引き出しの多さが感じられる戦いであった。
勝ち上がり 山田浩之 前原雄大
 
D卓
安東裕允(前年度5位) vs 小島武夫 vs 沢崎誠 vs 滝沢和典


安東裕允

小島武夫

沢崎誠

滝沢和典

1回戦、沢崎が開局から好調さを見せつけて、2局連続で満貫をものにしてまずはスタートダッシュに成功する。
そんな沢崎に待ったをかけたのが「ミスター麻雀」小島武夫である。
東4局
一索二索三索三索三索四索四索五索五索八索八索北北  リーチ  ツモ八索
この3,000・6,000で沢崎に並ぶ。しかし、沢崎は強かった。
南3局、南家・沢崎
六万七万八万一索二索三索三索四索五索五筒  ポン南南南  ツモ五筒  ドラ五筒
このアガリが決め手となり1回戦トップをものにする。
2回戦、東1局から小島と滝沢がぶつかる。
東家・小島
四万五万五索五索六索六索七索七索四筒四筒五筒六筒七筒  リーチ  ドラ九索
西家・滝沢
二万三万四万六万六万三索四索四筒四筒五筒五筒六筒六筒  リーチ
この二件リーチに、北家の安東がチーを入れると滝沢のアガリ牌である二索が流れる。
1回戦から苦しい展開が、今後も滝沢に続くかと見ていたが、続く1本場で小島から5,200をアガリ迎えた親番でも2,600オールをものにして調子を上げていく。しかし、そんな滝沢を圧倒したのがまたも小島であった。
南1局、東家・小島
二万三万四万二索二索六索八索二筒二筒二筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ七索  ドラ七索
3,900オール。そして1本場は、
三索三索四索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ九筒  ドラ六筒
この6,100オール。2回のアガリで一気にダントツとなりそのまま2回戦を制す。
3回戦、1回戦に続き沢崎が魅せる。
東4局
四索四索四索六索六索九万九万  ポン八筒八筒八筒  ポン二索二索二索  ロン九万  ドラ九万
これを滝沢からアガると、南2局の親番でも、
東家・沢崎
五万六万七万一索一索一索三筒三筒四筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ハイテイツモ五筒  ドラ三筒
しっかりハイテイで引きアガリ大きくリードを奪う。
こういうアガリを確実にものにするのが沢崎の強さだと感じる。
迎えた南4局。ここを落とすと苦しい滝沢が1人テンパイと、
東家・滝沢
六万六万八万九万五索六索七索四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ  ツモ七万  ドラ七万
この2,000オールで原点を超えるも最後に沢崎に2,000を放銃し、沢崎の1人浮きで3回戦を終える。
3回戦を終えて、小島、沢崎のベテラン2人がトップを取りあう展開となる。
4回戦東1局。
後がない安東が、滝沢のドラポンに対し中バックの形で必死に親番を維持する。
迎えた1本場に、安東が4,000オールを引きアガリ、4回戦を通して初めて安東がリードを奪う。
小島、滝沢がお互いに満貫をツモアガリ、沢崎の1人沈みで4回戦を終える。
東4局、西家・小島
二万三万四万四万五万五索五索二筒三筒四筒七筒七筒七筒  リーチ  ツモ六万  ドラ五索
南1局、南家・滝沢
五万六万七万五索六索七索二筒三筒四筒五筒七筒七筒七筒  リーチ  ツモ六筒  ドラ九索
5回戦を迎えて、滝沢はこれまで苦しい戦いが続くも何とか小島、沢崎に食らいついている。
もう1人の安東にとっては絶対トップが欲しい所である。そんな安東の思いがやっと実る。
南2局、西家・安東
四万五万三索四索五索三筒四筒五筒五筒五筒  ポン八索八索八索  ロン六万  ドラ五筒
南4局、東家・安東
九万九万二索三索四索三筒三筒三筒四筒六筒北北北  ツモ五筒  ドラ九万
この2度のアガリで待望の初トップをものにする。
最終戦を迎えポイント状況は以下。
小島(+28.7P)沢崎(+5.0P)安東(▲13.4P)滝沢(▲20.3P)
東1局に、沢崎から3,900をアガった滝沢が、東2局の親番でも先制リーチと出る。
東2局、東家・滝沢
一万二万二万三万三万四万六万七万四索四索六索七索八索  リーチ  ドラ八万
滝沢のリーチを受けて安東が追いつく。
南家・安東
一万二万三万八万八万六索七索八索九索三筒四筒五筒六筒六筒   打九索
役無しドラ2の形でテンパイを果たし、無筋の九索を勝負するも安東の選択はヤミテン。
同巡、滝沢が六筒を掴むもアガれず、安東はどういう思いであったろうか。
結局は、滝沢が五万をツモアガリ、沢崎、安東、滝沢の争いが更に面白くなる。
東3局、今度は沢崎と安東がぶつかる。
東家・安東
五万六万六万七万八万一索二索三索六筒七筒八筒南南  リーチ  ドラ一索
西家・沢崎
一万二万三万四万五万七万八万九万四索五索六索四筒四筒  リーチ
安東が六万を掴み7,700の放銃となる。
これで沢崎と滝沢の争いに絞られたかと思われたが、安東が意地を見せる。
南3局、東家・安東
七索七索九索九索  ポン一万一万一万  ポン南南南  ポン西西西  ツモ九索  ドラ西
この6,000オールで滝沢を交わす。
南4局を迎えて安東が条件を満たすテンパイを入れるも流局となり、沢崎と小島の勝ち上がりとなった。
勝ち上がり 沢崎誠 小島武夫
 
これで翌日のベスト8が出揃った。
真夏の暑い戦いが続く中、誰が現十段・瀬戸熊直樹への挑戦権を得るのであろうか?