第31期特別昇級リーグ最終節レポート
2022年01月13日
【須浦の逃げ切りか、それとも…】
唐突だが、第7節までの成績に本日の2回戦までを加えたスコアだ。
2回戦で桜井が1人浮きのトップを取ったとはいえ、まだ須浦との差は100ポイント以上。
須浦と宮澤の差もだいぶ開いてしまった。
須浦の優勝はほぼ確定的で、この後の見どころは宮澤、原田が何位に食い込めるかだろう。
(左から、原田潤次、須浦正裕、桜井紘己、宮澤太佑)
特別昇級リーグのシステムの詳細はリンクからご覧いただきたいが、簡単に書くと、C1リーグの須浦、桜井はB2リーグに特別昇級する優勝しか価値がなく、Dリーグの宮澤、原田は2位(C1へ)、3位(C2へ)でも歓迎、といった思惑だ。
3回戦東1局、親桜井のリーチを受けた原田
ツモ ポン ポン ドラ
まだ1年目の原田ではあるが、アガリやすさや、桜井への放銃率の差はわかっていただろう。
しかし、トータルポイントがそうさせる打。
桜井、7,700のアガリ。
リーチ ロン ドラ
東1局1本場は宮澤の満貫。
ロン チー 暗カン ドラ
須浦にしては淡白な放銃に見えたが、おそらくテンパイで、放銃でも桜井の親が落ちるならという考えもあったか。
東3局桜井、嬉しい高目のツモで3,000・6,000。
須浦に親被りさせる。
リーチ ツモ ドラ
南3局、原田「宮澤さんがマンズのホンイツなので、から切らなきゃいけないんですよね。でも、桜井さんのリーチの間4間だったので切りきれなく、からいってしまいました。」
終局後に反省点とあげたのはこの局。
親番がない21,000点持ちであり、トータルで桜井、宮澤を逆転しようと思ったら、この半荘、浮きに回らないと相当厳しい。
自身は跳満が見える1シャンテンだが、宮澤がダブ南を鳴きホンイツ模様、西家桜井からリーチが入っている。
ツモ ドラ
から勝負する気持ちも非常にわかる。
しかし、結果は悪い方に。を引いてリーチ宣言するも、宮澤への8,000点の放銃になってしまった。
ロン ポン ポン
原田「途中敗退しそうだったのですが、第6節で大きくプラスできて、そのおかげで決勝まで残れて、非常によい経験になりました。桜井さん、宮澤さんは何度もあたったのですが、強かったです。打点が高くて、すぐ(点棒を)持っていかれました。」
結果は4位と惜しくも特別昇級には届かなかったが、まだ1年目、40人参加での4位は大健闘。
第6節の観戦記者を担当していた蒼山も「いい選手だね」と評価しており、これからが楽しみである。
3回戦は、桜井がトップ、2着宮澤、須浦は沈みの3着。
差は60ポイント強に縮まったが、先ほどよりは可能性が出てきたかな、といった程度。
迎えた最終戦、東1局に原田が桜井から7,700をアガリ、反撃の芽もついえたかと思われたが、東2局、早い桜井の11,600に須浦が飛び込む。
ロン ポン ドラ
須浦「巡目が浅く、今からのベタオリでは手づまりそうだった。筋を頼りにしたが、激痛だった。」
ここまで飄々と打っていた須浦だったが、この局以降、眉間に皺がよった苦しい表情。
東3局、さらに桜井は、親原田との二軒リーチを制して、5,200を加点する。
リーチ ロン ドラ
原田 リーチ ドラ
開始時120ポイントもあった差は、なんと約20ポイントまで迫ってきた。
これまで座っていた立会人の藤原と紺野も、立ち上がって観戦している。
東4局、親は須浦。
早々にダブ東が鳴け、7巡目にこのテンパイ。
ここでの5,800のアガリは、安全圏になり、一息つけそうだ。
ポン ドラ
下家の宮澤が、2フーロしていたが、3フーロ目をチー。
手牌4枚から、さらに手出しが入る。
そして次巡、
ツモ チー ポン ポン
「2,000・4,000。」
こんな試練あるのかと、マスクの下で開いた口が塞がらない僕。
を2枚も食い取られ、当然、須浦の顔も歪む。
この半荘の持ち点が以下になって南入。(カッコ内は3回戦終了時の総トータル)
宮澤 41,400 (+173.0)
桜井 42,200 (+170.7)
原田 25,100 (+87.7)
須浦 11,300 (+234.6)
2時間前まで須浦優勝の雰囲気だったが、もう宮澤でも桜井でも4,000オールで並んでしまう点差になってしまっている。
南1局、須浦、白、ドラ1の500・1,000。
宮澤の親を落とす。
南2局、親は桜井。
須浦にとってはここが最終関門。
しかし、配牌が悪かったのか序盤から受け気味の捨て牌。
13巡目、とうとうきてしまった桜井のリーチ宣言。
引き入れたのは絶好のドラのだ。
ツモ リーチ 打 ドラ
桜井「ワンチャンスあるかな、ってところまで差を詰めたんだけど、やはりスタートの差が大きくて厳しかった。全員が優勝狙いだったら、また違った結果だったんだろうけど。」
今日、ここまで面白い試合になったのは、桜井の諦めない粘りと打点を作る構想力の賜物だろう。
スタートの差を考えると、何もできない1日になってもおかしくなかった。
宮澤 ロン ドラ
2位でもよい宮澤がいたこと、偶然にも宮澤と桜井が僅差だったことが、最後に須浦に味方した。
桜井のリーチ宣言牌に宮澤のロンの声。
辛うじて須浦は逃げ切り、優勝を手にした。
優勝:須浦 正裕
第2位:宮澤 太佑
第3位:桜井 紘己
第4位:原田 潤次
「優勝しか意味がなく(狭き門なので)、出るかどうかは迷った。でも、出てよかったね。」
終局後の須浦、流石に安堵の表情。
須浦は22期生の43歳。この特別昇級リーグ、以前は39歳以下にしか出場権利が与えられなかったが、近年、対象年齢が引き上げられたことで出場できることに。
その後に行われたリーグ戦最終節も、無事にプラスをキープし、B2リーグに特別昇級。
2位の宮澤、「特昇を通して運も良かったと思いますが、納得いく麻雀が打てました。D2リーグ一節目に大敗(▲91.6)してから手組、押し引きを見直してそれに結果がついてきてくれて良かったです。このチャンスを活かすためにリーグ戦絶対勝ちます!」と戦後のコメント。
+60ポイントはなかなか難しく、強気だなぁと思ったのだが、なんとこの男、3回戦までで+75ポイント、最終戦南3局までトータルプラス条件を満たしていたらしい。
しかし、非情にも南3局に他者の8,000オールのツモアガリ、数ポイント足らずでC1にはたどり着けなかった。
残念ながら、今回はチャンスを逃してしまったが、成長著しい。
すぐにリーグは上がっていくだろう。今後の活躍に注目である。
(文:福光聖雄)
カテゴリ:特別昇級リーグ 決勝観戦記