プロ雀士インタビュー

第234回:プロ雀士インタビュー後編 魚谷侑未  インタビュアー:福光聖雄

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前編では、リーグ戦の最下位をきっかけに稽古を増やしたこと、プロ13年の思い出や、仲田をとうとうマークした女流桜花について語ってもらった。
後編では、鸞和戦の戦いと、失ってしまった何か、5年後の未来について触れている。
拙い文章ではあるが、お付き合いいただければ幸甚だ。
(前編はこちら

 

【久しぶりの泣き虫マーメイド?】

福光「9年ぶりの女流桜花優勝、なかなか勝てなかったから涙するんじゃないかと期待してたんだよね。」

魚谷「終わった…ふぅ…って感じ。自分でも、泣けなかったなー不思議だなーって気分だよ。インタビューがとりやん(実況の部谷幸則)だったからか?(笑)」

 

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自分のときは泣けなくなってしまった魚谷だが、先日(2021年12月)の桜蕾戦では菅原千瑛の涙のインタビューにもらい泣き。

 

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魚谷「自分が主役じゃないから泣いちゃダメって思ってるんだけど、堪えられなかったよ。」

福光「泣いてもいいと思うよ。見ていてグッときたよ。」

ご存じの方も多いと思うが、通り名の『最速マーメイド』は、よく鳴くとよく泣くをかけて、『泣き虫マーメイド』という案もあったとのこと。
悔しくて泣き、嬉しくて泣き、感動して泣き、役牌からでも後付けでもいつでも鳴いていたのである。

 

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(懐かしの第12期女流桜花入れ替え戦。左から解説の魚谷、昇級を決めた藤井、実況の小笠原)
泣かなくなった理由について、黒木が書いた近代麻雀のnoteの記事で触れられているらしい。
途中から有料ではあるが、興味があれば読んでいただきたい。

 

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【突如スイッチの入った鸞和戦】

女流桜花の優勝を決めた2日後の鸞和戦決勝。
ノリノリで家を出たのかと思ったらそうではなかった。

魚谷「それがさー、桜花の激戦の疲れが抜けてなくて…。『クールにやろう作戦』って言って家を出たのよね。クールにやってたんだけど、まさか南3局に45,200点も持ってて沈むなんてある?」

福光「ないない(笑)」

 

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魚谷「これで目が覚めたっていうか、火がついたっていうか、3回戦4回戦と熱くやりましたわ。心が折れないのが凄いって言われたけど、そこは強みだからね。」

昔から最後まで諦めない、応援してくれるファンより先に諦めてはいけない、は魚谷の口癖。
某野球ゲームに例えると[逆境◎]が間違いなくついているし、むしろ逆境の方が好きなんじゃないかまで思ってしまう。

福光「そういえば、事前に予習しておく局を聞いたら、最終戦の南1局と南3局。どっちもオリてる局じゃん。どうして?」

魚谷「決勝のバランスで(頭取りだから)押すっていう結論になりがちだけど、この2局は真剣に考えた結果、いかないことを選んだんだよね。冷静にできたのがとても気に入ってるの。」

 

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先制リーチの猿川の待ちは一万四万七万。終盤に手づまりした柴田からリーチ、ピンフの2,000点のアガリ。

 

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この局の状況説明は長くなってしまうので放送をご覧いただきたいのだが、魚谷は大長考してのオリ。結末は、猿川が柴田から5,200点をアガリ、トータルトップになってオーラスを迎えた。

魚谷「放銃しなかったおかげで、南4局を出アガリ3,200点以上と難しくない条件で迎えられたしね。その条件で、配牌でダブ南が暗刻よ。最後にご褒美がきてくれた。こっちもホント紙一重の優勝だったね。」

 

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【失ってしまったもの】

華々しい活躍をする魚谷だが、その活躍と引き換えに失ってしまったものがある。
ふとした会話にきっかけがあったのだが、深堀りして聞いてみた。

魚谷「対局をして、楽しいと思えるときが少なくなってしまった。最近、ほとんど楽しいと思えるときがなかったなぁ。麻雀は好きなんだけど、とても好きだけど楽しく感じない。昔は楽しいしかなかったのになぁ。好きだけどなぁ。練習がキツいわけじゃないし、全然苦じゃないのだけど。」

Mリーグという大舞台、チームとファンの期待を背負って、勝っても負けてもすぐに次の戦いに備えなければならない、そんな日々を続けてきたからかもしれない。
慣れてしまった、という表現は不適切で、一喜一憂していたら身が持たないと防衛本能が働くのだろうか。
過酷な戦場に――気持ちで戦う魚谷は毎回心を燃やして――、極限の集中力で挑んでいく。
心身ともにどのくらいの負担なのか、全く想像もつかない。

前編に書いた「もういい!一人で生きてく!」「ダメです。結婚しなさい。」は冗談混じりのやり取りではあるのだが、僕は本気で結婚すべきと思っていた。
チームメイトからの励ましはあるだろうが、負けて帰ったときに、暗い家か明るい家かは大きく違うんじゃないかと思う。
魚谷が第一線で活躍し続けるためにも――

 

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【最高のパートナーと未来】

宮澤「嫁の対局は96%くらい見てる。対局を見て、これダメじゃんとか言ったことはないかな。嫁が選ぶ方ならそれは正解だよ。」

宮澤「僕は、いつも『人を超えて神になりなさい』と言ってるんだよね。」

魚谷「あはは。私は神ってガラじゃないなぁ。でも、人間の出来る最高には到達したいね。」

猫は可愛いし、旦那の性格はピカイチだそうだ。
やっぱり、結婚して良い影響あるんじゃないの?(笑)

魚谷は将来をどう考えているのだろうか?
5年後、10年後を想像してもらった。

魚谷「難しいこと聞くねー。5年後、10年後に麻雀を取り巻く環境がどうなっているか全然想像つかない。けど、選手として第一線で戦っていたいと思うよ。ただ、もし衰えてしまってパフォーマンスが出せなかったら、そのときは辞めちゃうと思う。」

このインタビュー、最初から最後までホント魚谷らしい答えが返ってくるな。嬉しいよ。

勘違いしないでいただきたいが、もう満足してしまったのでいつ辞めてもいい、ではない。
活躍できなくなったら退かなきゃいけない、という覚悟だ。
魚谷は、勝てなくなった私には存在価値はない、と言い出すような人だ。
鳳凰位には一歩後退してしまったし、セガサミーフェニックスを優勝に導いてもいないのだ。
成し遂げるまで歩みを止めることはないだろう。
まだまだまだまだ、先の長い歩みになるかもしれない。
でもいつか、魚谷ならきっと成し遂げて、素敵な泣き顔を見せてくれると思う。よろしく頼んだよ!

(文:福光聖雄)