※第30期十段戦8回戦において堀内正人プロの競技内容に悪質な三味線行為があり、
日本プロ麻雀連盟内規に基づく厳正な審議の結果、堀内正人プロを失格処分とし、
7回戦から再度執り行うこととなりました。
失格処分についてのご説明はこちら
鳳凰戦と並び、プロ連盟の象徴ともいえる2大タイトルの1つである十段戦。
共に連盟が創立し間もない頃に設立され、今期で第30期を迎えた。
連名員なら、誰もが一度は手にしたいと願うこの2つタイトルを独占しているのが、
現チャンピォンのこの男である。
瀬戸熊直樹八段
瀬戸熊直樹プロ
14期生 1970年8月27日生まれ(43歳)O型
28期29期優勝。(4年連続5回目の決勝)
4年前の春、初めて鳳凰位の座に着くやいなや、めきめき頭角を現し連覇を果たす。
一度は荒に奪われるも、今春すぐに奪還。2年前に初載冠したこの十段位は、今回3連覇がかかる防衛戦となる。年齢的にも円熟期にさしかかり「絶対王者」「瀬戸熊時代の到来」などの声も聞こえてくる。
若手に慕われ、上からの信頼も厚く、今や団体のいや業界のエースに上りつめた感さえある。
頂点に立っても奢ること無く、更なる進化を求めて日々精進する姿は後輩達の素晴らしきお手本。
今回の優勝者予想では、当然のように瀬戸熊推しが大多数だったが、打倒瀬戸熊に燃える挑戦者達を相手に、
また一段階スキルアップした勝利を見せてくれるのか?
今回の挑戦者達は以下の4名。
小島武夫九段
小島武夫プロ
1期生 1936年2月11日生まれ(77歳)O型
(9年ぶり8回目の決勝)
今更ここで詳しく紹介しなくても、皆さんご存知「ミスター麻雀」日本プロ麻雀連盟最高顧問の小島先生である。十段戦は第1期から出場しているが、今回はひさしぶりの決勝。
初優勝への意欲は少なくなかろうと思うし、実力と実績は間違いなく優勝候補の1人なのだが、懸念されるのが高齢による気力、体力の衰え。40数年トッププロとして先頭に立つ小島は、今でも人気№1でゲストの依頼も後を絶たない。今回も決勝初日直前に高知から戻り、翌日の朝には大阪に飛んでいた。
「僕は相手は関係ない。自分の麻雀、いい麻雀が打てれば結果は自ずとついてくるし、勝ち負けにはこだわらない。」こうよくおっしゃるが、この年齢で多忙な中、3日間の決勝戦、全ての局を集中力を切らさず打ち切れるかがカギとなろう。3年前に新設された麻雀グランプリMAXでは(当時74歳)、並み居る若手やAリーガーを撃破して第1期覇者となったのですから、今回も華麗な手作りと高いアガリを魅せてくれることを期待します。
沢崎誠八段
沢崎誠プロ
3期生 1955年1月13日生まれ(58歳)B型
第13期優勝(5年ぶり6回目の決勝)
沢崎は私と同期で1歳年上。連盟に入会してから28年になる。
十段位以外にも、新人王、雀魔王、麻雀マスターズ、チャンピオンズリーグ、麻雀グランプリと、獲得タイトルも多く、長期に渡りA1に君臨する実力派の大ベテラン。
3年前のプロリーグでは、1年間ブッチギリの首位で通過し、鳳凰位の瀬戸熊に挑んだが退けられた。
今年は再びA1の首位に立ち、現鳳凰位瀬戸熊への挑戦権をほぼ手中にしている。今年こそはと瀬戸熊へのリベンジに燃えていることだろう。その沢崎が、十段戦の決勝へも勝ち上がってきて、鳳凰戦の前哨戦という図式にもなったからには、瀬戸熊も沢崎を意識しないという訳にはいかない。群馬県出身の沢崎は、昨年末に長年の東京生活から地元に戻り、やはり故郷の水や空気が合うのか、肌の色つやも良くなり体調も良さそうだ。
今期、麻雀が好調な要因はこのあたりにもありそうだ。
王者瀬戸熊が敗れるとしたら、最有力候補は沢崎ではないだろうか?
中村毅四段
中村毅プロ
19期生 1975年10月25日生まれ(38歳)本人曰くA型かO型との事。
獲得タイトルはまだ無いが、發王戦とチャンピオンズリーグで決勝戦を戦った経験がある。
思い切りの良い攻撃麻雀で、A2リーグまで昇ったが現在はB1リーグ。
今期のベスト16(準々決勝と準決勝)ではスーパーつよし君に変身し圧勝劇を見せた。
特に準決勝では、古川、沢崎、前原の3人を相手に、立ち上がりから3連勝を決め、後半はベテラン3人をシビアな2着争いに追い込んだ。
超強豪3人に、ブッチギリで完勝した事は、かなりの自信に繋がったはず。
中村だけがテレビ対局が初めてなので、腕が縮こまらず普段通りに打てるかが問題だが、持前のなりふり構わない攻撃麻雀が打てれば台風の目になるだろう。
堀内正人四段
堀内正人プロ
22期生 1985年1月4日生まれ(28歳)B型
第17期チャンピオンズリーグ優勝、第27期十段位。3年前、チャンピオンズリーグ優勝のシード権で五段戦から出場し、一気に頂点まで駆け上がった。決勝で破った相手が、4連覇がかかる超獣前原と鳳凰位の瀬戸熊だっただけに、一躍その名を轟かせることとなる。
その翌年の防衛戦からは、2年連続で瀬戸熊と最後の最後まで熾烈を極める優勝争いを繰り広げたのは記憶に新しい。今期で4年連続の瀬戸熊VS堀内となる。
決勝で負けた翌年はベスト16からのシードとはいえ、4年連続の対決は新記録。
今年は準決勝の最終戦、ラス前の親番で絶対絶命のピンチから奇跡の逆転勝ち上がりを果たした。
タイトル戦の相性の良さもあるのだろうが、堀内の打倒瀬戸熊、十段位奪還への執念は世界中の誰よりも強いのだろう。
11月3日文化の日、私は決勝の立会人を務めるため、プロリーグの会場から十段戦の決勝会場である【夏目坂スタジオ】へと向かった。
都営大江戸線の牛込柳町で降りて、坂を少し上ると右手に今風の洒落たビルがあり、その中に新設されたばかりの夏目坂スタジオがある。10月末に完成したばかりで、連盟の主要な対局は殆どこのスタジオからの生配信となる。
今後、プロ連盟のメインスタジアムとなるこのスタジオからお送りする、最初のビッグタイトル戦決勝が、今回の第30期十段位決定戦なのです。
決勝のシステムは5人打ちで、前半1~5回戦を1回ずつ交代で抜け、後半6~10回戦もまた交代で抜け番。
各人が8半荘を対局し、この時点での最下位がここで脱落。上位4名がポイント持越しで、もう2半荘を打ち優勝が決定する。
まず抜け番を選択する抽選が行われ、前半戦の抜け番は、沢崎―瀬戸熊―中村―堀内―小島となった。
テレビ配信の都合で、1日4半荘の3日間で行うため、初日は小島だけが4回連続の対局となる。
1回戦
起親から、瀬戸熊、中村、小島、堀内(抜け番:沢崎)
東1局
放送画面で気が付いた方もいると思うが、配牌を取る瀬戸熊の指先が小刻みに震えていた。武者震いである。
ここ4~5年で鳳凰戦と十段戦だけでも7度の決勝を戦い5回優勝、今や打倒瀬戸熊に燃える挑戦者達から目標とされ、完全に追われる立場となった。本人は受けて立つ気は無く、常にチャレンジャーの気持ちで闘いたい心算でも、なかなかそうはいかないだろう。そこに立った者にしか解らない王者であり続けることの、様々なプレッシャーが度々圧し掛かかってくる毎日なのではないだろうか?
対局直前まで選手控室から出て、人気の無い場所で瞑想していた姿が印象に残った。
さて対局に戻ろう、大事なスタートの1局でしかも起親。
瀬戸熊6巡目
ドラ
ここからの切りは、ドラかダブ東を重ねて高い手に仕上げる意思の表れ。
その思い叶ってドラを暗刻にしてリーチ。は2枚切れているがはスジになっている。
手変わりもないので、リーチで他家を足止めしたほうが良いとの判断。
もしツモれれば8,000オールと、望外のアガリとなるが、南家の中村が手詰まりで放銃。
中村を責めるのは酷かもしれないが、もっと慎重に考えてのトイツ落としなどで凌げていれば、小島が追い付いていたかもしれない。
東1局1本場
瀬戸熊にしてみれば3連覇に向けて上々の親満スタート。更にたたみ掛けていきなりのクマクマタイムか・・・と思いきや西家・小島が先にリーチ。
リーチ ドラ
ここから切りでカン待ちを選択。12巡目に瀬戸熊が追いかけリーチ。
リーチ
瀬戸熊が有利に思えたし、小島が先にの方を引いたので(アガリ逃がし)、また瀬戸熊のアガリかと思わせたが、小島がもツモって2,000・3,900
のアガリ。
中村の親は、瀬戸熊のリーチで1人テンパイの流局。
小島の親番では、北家・中村のリーチに南家・堀内が追いかける。
中村
堀内
ここにツモでテンパイ。ピンフも一通も崩れて不本意なリーチだったが、ドラ2の瀬戸熊が前に出てで放銃。堀内初アガリで原点復帰のアガリ親。
東4局、南家の瀬戸熊が、2~3巡目に続けて切られたを、2枚ともスルーし12巡目に三色崩れのリーチ。
ドラ
ドラ2の手を丁寧に育てていた親の堀内に、カンが埋まり自信満々の追いかけリーチ。
リーチ
瀬戸熊が掴むと手痛い一撃を食らうところだったが、堀内がをツモってトップ目に立った。
手バラだったから私もは仕掛けないと思うが、もし瀬戸熊がどちらかのをポンしていたらこの局はどうなっていたのか・・・
南2局に南家・小島の逸機。
ミンカン ポン ドラ
終盤にをツモったが、流局間際だしは危ないと思ったのか、ペンのほうがアガリ目があると見たのか、小考後、をツモ切り。もし厚かましくドラ単騎に受け変えていれば満貫をツモっていた。
同1本場は、親かぶりを免れた中村がリーチツモドラ2の3,900オールで初アガリ。
1人蚊帳の外のダンラスだったので、これで少し落ち着いただろう。
次局は、小島がドラ暗刻のリーチをツモ。オーラス堀内の親でも
リーチ ドラ
これをリーチして高目ツモと元気。
堀内に黒棒4本届かなかったが、満貫クラスを3回もツモアガリして気分上々の立ち上がり。
堀内も瀬戸熊を沈めてのトップスタートは上出来であろう。
いきなり親満を決めたのにマイナスの3着で終わった瀬戸熊はどう思ったのだろうか?
次が抜け番でちょうど良かったかもしれない。
1回戦成績
堀内+17.9P 小島+13.5P 瀬戸熊▲9.4P 中村▲22.0P
2回戦
起家から、小島、中村、堀内、沢崎(抜け番:瀬戸熊)
東1局、満を持して登場の沢崎。決して良くない配牌から序盤のを2枚スルーして、この最終形に仕上げた感性は素晴らしい。小島は一度アガリを諦め手中に収めただったが、形式テンパイに向かって打ちだし満貫放銃となってしまったのは痛い。小島のこんな小島らしくない放銃は見たことがないし見たくなかった。沢崎に対する警戒が瞬間消えてしまったのだろうか?
小島が仕掛けなかったり放銃しなかった場合、残りの牌山を調べていないので、沢崎の四暗刻か堀内の跳満ツモが無かったとは言い切れないが、沢崎自身このアガリには手答えを感じたことだろう。
東2局は堀内にミスが出る。南家・堀内の即リーチ
リーチ ドラ
確かにリーチしてツモれば2,000・3,900だが、引きや引きもあるからヤミで様子を見る手もあるだろう。
ヤミテン2,600はリーチしてツモれば満貫クラスにアップするので、私でも好形ならリーチするが、堀内はカンチャンやシャンポンでも即リーチを打つことが多い。自分のフォームのひとつにしているのだろうが、しかしこの局は裏目に出て、リーチ後すぐにとを引いた。
その裏では下家の沢崎が、
ここから、場に–が多目に切られているのを見て、と外しペンを引いてテンパイしていた。
–受けを残して切りとした場合、堀内のをチーテンにとる愚行さえ犯さなければ、ヤミテンで跳満をツモっていたのだが、アガリ逃しの堀内がを掴んで沢崎が満貫のアガリ。
小島のミスと堀内のミスで、勢いが沢崎に傾いた東3局。
こんどは北家の中村がポンからデキ面子を壊してまで無理やりトイトイに向かい、沢崎の捌き手に放銃する。中村らしいなりふり構わない攻めは良いのだが、沢崎に勢いがついた状況では、火に油を注ぐような無理筋に思った。
さて、3者からアガって迎えた東4局の親番で、沢崎の連荘が始まるかと思いきや、以外にも中村がツモのみであっさり親落ち。南場は大きな点棒移動は無く終了。中村が辛うじて浮き2着に持ち込みほっと一息。
テレビ対局の雰囲気にも少し慣れてきたたようだ。百戦練磨の沢崎はあらゆる展開を想定してきただろうが、この好発進にほぼ不満はないだろう。
2回戦成績
沢崎+25,4P 中村+4,9P 堀内▲9,1P 小島▲21,2P
2回戦終了時
沢崎+25,4P 堀内+8,8P 小島▲7,7P 瀬戸熊▲9,4P 中村▲17,1P
3回戦
起親から 堀内、小島、沢崎、瀬戸熊(抜け番:中村)
東1局、起親の堀内が6巡目ダブ東暗刻でペン待ちの即リーチ。
西家・沢崎の4巡目
ここから小考して切り。懐の広い好手だと思う。
もし暗カンをしていたら、5巡目ツモで–待ちの追いかけリーチだっただろうが(リンシャン牌は不明だが)、12巡目にようやく追いつきリーチ。
リーチ
小島も追いかけるが、最も好形の沢崎がツモアガリ2,000・3,900とまたも先制する。
東2局は、終盤ようやくテンパイに漕ぎ着けた瀬戸熊がヤミテンで、
ドラ
堀内から安目の出アガリ。この局、もし沢崎が国士無双を狙っていたら、3枚切れのマチのテンパイ。
その場合は、4枚目を掴むのが瀬戸熊だからやむなく切りで七対子単騎に受け変えるので、そうなるとヤミテンでピンフをテンパイしていた小島のアガリだったろう。
東4局の瀬戸熊の親番は、小島がリーチで2,000・3,900。
ツモ ドラ
南1局1本場は、前局にカン待ちの足止めリーチをツモアガって連荘の堀内が、また6巡目即リーチ。
リーチ ドラ
この即リーチはさすがにどうだろうか?タンヤオで出アガリが利くし、
引きや、567の三色変化もある。
堀内の頑ななまでに澈底する先制愚形即リーチや、役牌イチ鳴きは、好意的に解釈すれば培ってきた自分のフォームへの自信と強い精神力の表れなのであろう。小島が終盤にようやく理想型にして追いかけるも流局。
しぶとく形テンに持ち込む沢崎もそつが無い。
同2本場、ここまで不調の瀬戸熊に、突如2巡目にドラのがトイツの九単騎七対子テンパイが入り、小島が不運にも3巡目にツモ切って交通事故みたいな6,400の失点。
それでも瀬戸熊はまだ原点に届かない、南2局とラス前は、堀内が渾身の1,000点で原点復帰。
特に南3局(ドラ)では親の沢崎がポン、ポンと仕掛けているにも関わらず、1シャンテンで超危険に見える生牌の發を切り出して食いタンでアガった。
自分のテーマ(このときは原点復帰)が満たせる手がきたら、例え安手でもリスクを犯して勝負に出る強いハートは持っている。
南4局、ラス親の瀬戸熊が僅かに沈んでいるので、沢崎と堀内はこのまま終わらせたいところ。
北家の沢崎が、ポンポンと仕掛けて1シャンテン。堀内もが暗刻の1シャンテン。
9巡目、最初にテンパイを入れたのは親の瀬戸熊だった。
ドラ
しかし、瀬戸熊は何故かリーチを宣言せず、役無しヤミテンを選択。同巡、堀内がテンパイし打。
堀内はツモればトップ(ツモリ三暗刻)のテンパイなので、瀬戸熊がリーチでもは勝負する可能性が高い。
一手変わりで親満に変化するなら解るが、このケースで即リーチを打たないのは緩手ではなかったか?
その後、ピンフにも一通にもならず、とのシャンポンでリーチをかけたが、沢崎と堀内もテンパイした後では簡単にはオリてくれない。沢崎が堀内に打って2連勝で終了。
3回戦成績
沢崎+11.6P 堀内+6.6P 瀬戸熊▲5.7P 小島▲12.5P
3回戦終了時
沢崎+37.0P 堀内+15.4P 瀬戸熊▲15.1P 中村▲17.1P 小島▲20.2P
4回戦
起家から、中村、沢崎、小島、瀬戸熊(抜け番:堀内)
堀内は、初日をプラスで打ち終えてまずまずの気分だろう。
瀬戸熊、中村、小島の3人は、ここでトップを取ればマイナスをほぼ解消して初日を終われる。
ただ、沢崎の3連勝だけは阻止しておきたいところだ。
東1局、北家の瀬戸熊がソーズのメンホンに的を絞り、狙い通り配牌から抱えていた自風のを重ねてテンパイする。
ドラ
これに親の中村が飛び込み、瀬戸熊が久々の先制打。
瀬戸熊はこのアガリを契機にしようと、ようやく強めのチャージをかけ始めたが、アガリには結びつかず東4局の親番でのリーチも空振りに終わる。
ドラ
沢崎も粘って、単騎の七対子に持ち込み今日は沈みそうにない。
同2本場、沢崎が平凡な配牌でも第一打から、と切り出す独特のランダムな役牌先切り。
技の引き出しが多い沢崎だが、長年の経験則から身に付けた手法の一つなのだろうか、丁寧に絞る時もあればこの局のようにワザと先に切り出す時もある。
これに釣られるように、親の瀬戸熊が3~4巡目にをかぶり直ぐに暗刻でがトイツに・・・
放送を観た方は三元役を失敗したように映るかもしれないが、瀬戸熊がを捨てない場合は、北家の小島が早めに切るはずでありポンするとは重ならないから「大三元だったかも~」を論じてもあまり意味は無い。
この局は、一番にテンパイしていた南家・中村がを引いてイーペーコーに変わってから切りリーチ。
ドラ
小島が同巡、–待ちでテンパイ。山越で中村の現物。
しかも、まだ手変わりもあるが思いきって追いかける。
リーチ
不調の中村が直ぐに薄いを掴み1人沈没。
手役を決めた時の、小島の思い切りのよさと勝負強さは流石である。
これで小島もトップ争いに加わり、オーラスは3人がアガリトップの状態。
沢崎がアガれば、初日3戦3トップとなるが、北家・小島の手が良過ぎた。
何と6巡目にポンテンの跳満テンパイ
ポン ドラ
瀬戸熊の手牌に放銃の危険が迫る、ツモられても黒棒浮きで止まるのだが、
「小島先生は、テンパイしているかもしれないと思っていましたが、沢崎さんとのポイント差が開き過ぎてもいけないと思い、まっすぐアガリに向かってしまいました。」
何とも痛すぎる一発!
瀬戸熊はこの痛打で、初トップを目前にしながらマイナスの3着に落ち、初日は全てマイナスの3着。
流石に調子が悪くても少ないマイナスで何とか抑えてはいるが、首位沢崎との差が約70P。
このポイント差を利用した、匠なゲーム回しができる沢崎が首位なだけに、3連覇に黄信号が灯ったと言えるかもしれない。
4回戦成績
小島+24.5P 沢崎+9.0P 瀬戸熊▲9.8P 中村▲23.7P
4回戦終了時
沢崎+46.0 P 堀内+15.4P 小島+4.3P 瀬戸熊▲24.9P 中村▲40.8P
沢崎はほぼ満足な初日だっただろう。
試合巧者がポイントをリードしただけに、2日目からも優位にゲームを支配しそうな気がする。
堀内は、瀬戸熊を沈めてプラスで終えたのだからOKだろう。
連続して瀬戸熊と熾烈な優勝争いをしてきたので、瀬戸熊の親番ではかなり意識して落としに行っているように見受けられた、クマクマタイムを発動させない作戦は当然かもしれないが、瀬戸熊を意識しすぎると沢崎に楽に逃げ切られる懸念もある。
小島は最後のトップでプラスに回り「初日はまあこんなもんで充分」と余裕の表情。
やはり小島の大物手が決まり始めると麻雀が面白くなる。
中村は、初のテレビ対局に緊張したようだ。
自分でも言っているように、守備があまり得意ではないのだから、ポイントは気にせず我武者羅にガンガン攻めて活路を見出して欲しい。
王者瀬戸熊は「全体的にちょっと感覚が悪かった」と言うように、今日は少しズレていたようだ。
沢崎との点差を考えると余裕は無いが、自ら運を引き寄せて一気に逆転する場面は、何度も目の当たりにしてきた。約1週間空くので、しっかり修正して2日目からの立て直しに期待したい。
初日4回戦が終了・・・
【2日目5回戦~】
2日目は前半の最終戦となる第5回戦から始まる。
初日オール3着で総合4位と不調のまま終えた瀬戸熊は、
「久しぶりに追う展開。逃げるより気分的には楽だが、もう余裕のないくらい離されているので、初戦から自分らしく攻めて行きます、この1週間、Aルールを沢山打ち込んで再調整して来ました。」とのコメント。
逆に小島は「ツキを貯めるために、何日間か牌を握らないで来たよ、ガハハ。」と対照的だった。
5回戦
起親から、瀬戸熊、堀内、沢崎、中村(抜け番:小島)
東1局、起親の瀬戸熊が7巡目に先制リーチ。
リーチ ドラ
ここからツモで、一通崩れの足止めリーチだが、西家の沢崎が直ぐに手なりで追いつく。
ここから、沢崎が危険牌や手変わりする牌を引いて迷う間もなく、瀬戸熊が即高目のを掴んで、沢崎にあっさり満貫放銃。
追い上げなければならない瀬戸熊が、最初から躓き沢崎がこのまま独走態勢に入るのかと思わせるスタート。
次局は、沢崎の早いリーチ。
ドラ
捨て牌が
リーチ
1シャンテンの瀬戸熊が、
ここからラス牌のを即掴んで止めようもなく3,200点の放銃。
やるせないような放銃が続く瀬戸熊。私には王者瀬戸熊が、早くも土俵際まで追い詰められたように思えた。
東3局、親の沢崎が意外に手間取り13巡目にリーチ。
リーチ ドラ
その前から、ピンフのみをヤミテンで回していた、南家の中村が沢崎のリーチ後すぐを引く。
ツモ
やむなく、現物の切りでとのシャンポンに受け変えると沢崎の次のツモが。
ここは中村が落ち着いたプレーで沢崎のダメ押しを阻止したのだが・・・
南場に入って異変が起こる。
流局2本場で迎えた南1局は、ラス目瀬戸熊の親。
瀬戸熊は苦しい展開の中、復活への蜘蛛の糸を求めて、諦めずに丁寧な手巡で123の三色から純チャンまで育てようとするが、やはり先手を取るのは好調沢崎。
たて続けにドラのを重ね、345の三色は崩れたが12巡目、切りリーチ。
リーチ ドラ
沢崎のツモアガリの気配が濃厚のなか、瀬戸熊が追い付いた。
とりあえず追い付きはしたのだが、沢崎の現物のは2枚切れ。
は危険牌(実際、沢崎の入り目がかならはアタリ牌)やはり純チャンの3ハンは捨てがたくピシリとを勝負。
すると沢崎のツモが、瀬戸熊が弱気に受けていれば沢崎からロンだった。
しかし、次の手番である北家の中村が長考後、何故かラス牌のを河に置く。
瀬戸熊、起死回生の親満で浮きの2着目に浮上した。
中村の手はオリている手で、沢崎のリーチに合わせて安意に共通安全牌のを切らず、3枚目のを合わせておけば瀬戸熊が仕方なく切りとし、沢崎からで3,900だったし、残したのならば、瀬戸熊のはリーチに対して厳しい牌なので、は抑え共通安全牌がまだあったのだから、そちらを切るべきだったのは私が言うまでもない事。
プロを名乗るなら、少なくとも十段戦決勝という高いステージで戦うプロならば、こんな言い訳の利かないレベルの低い放銃はやめて欲しい。多くの批判に晒されても致し方なかろう。
土俵を割る寸前、僥倖の親満をゲットし、徳俵で踏みとどまった瀬戸熊だったが連荘は続かず。
連荘の堀内が7巡目にいつもの足止め愚形リーチ。
リーチ ドラ
は場に2枚切れで、押し返されたら危険。北家の瀬戸熊がその前の6巡目、
この形から切りとした好手に注目したい。是が非でも高打点に仕上げる強い意志の一打だ。
堀内のリーチを受けても手を曲げず、ドラを重ねると無筋のをトイツで落とし、まるで堀内のリーチが安手で愚形なことを読み切っているかのように攻めて行く。
中村が何気なく押してきた打がまたラッキーで、タイミング良くチーテンが取れ見事カンをツモリ上げた。
オーラスは、沢崎が逃げ切りトップは取れなかったが、瀬戸熊が今決勝でようやくプラスした半荘となった。
5回戦成績
沢崎+14.3P 瀬戸熊+5.7P 中村▲6.6P 堀内▲13.4P
5回戦終了時
沢崎+60.3P 小島+4.3P 堀内+2.0P 瀬戸熊▲19.2P 中村▲47.4P
沢崎がトップだったので、瀬戸熊と沢崎のポイントはまた少し開いたが、復調の兆しが見えてきた瀬戸熊。
後半戦の追い上げに期待が出来そうだ。
ここで、前半5回の成績により、上位者から後半戦の抜け番が選択できる。
今日の残りは6~8回戦、9~10回戦は最終日になる。
トータルトップの沢崎は、8回戦の抜け番を選んだ。2位に着ける小島は7回戦。
3位の堀内は6回戦と上位3人共今日抜けておいて、最終日は4半荘全部闘いに参加する作戦だ。
敗退者が確定する10回戦は抜けたくないのが普通で、瀬戸熊が9回戦を選び中村が10回戦の抜け番に決定した。
続いて6回戦が行われたのですが、2日目の最終戦となる8回戦で、前代未聞のアクシデントが起こってしまいました。
既に放送をご覧になった方々はご存じだと思いますが、堀内プロが東4局に勝負手を入れ、是が非でもアガリたいあまり、小島プロの親リーチに対して現物である安全牌のを引いたのに、危険牌を引いてオリたと思わせるような動作とため息とともにに、手中のを仕方なさそうに切り出すという三味線まがいのアンフェアなトリックプレーを行いました。(堀内プロの待ちはリーチの現物ので7,700点)
これに対して瀬戸熊プロは、その少し前に親リーチの現物ですが、堀内プロには当たりになる本命のを掴まされ、テンパイしていたにも関わらず、これを止めてオリていたのですが、この一連の動作によって堀内プロがオリたのではないかと惑わされを捨て放銃となりました。
このプレーを悪質な反則行為として、その場でゲームを止めることができず、後日の再審議となってしまい、多少の混乱も招いてしまいましたが、理事会での慎重な審議により、堀内プロを失格とし、残りの4名で決勝戦を継続することになりました。
思ってもいなかった、あってはならない事態が起こってしまった事は誠に残念ですが、
今後は、連盟員全員が競技麻雀のプロとしての自覚と誇りを再認識し、二度とこのような事が起こらないように努力して行かなければなりません。
継続の方法ですが、競技部で検討の結果、後半戦最初の第6回戦目は途中失格の堀内選手が抜け番だったため有効とし(ここまでで残り4名の選手が同じ5半荘ずつの対局となる)
6回戦までのトータル成績を引き継ぎ、後半戦を再開。堀内選手が対局した第7回戦と第8回戦をノーゲームとしました。
どのように決めても誰かに多少の有利不利が生じますが、該当選手全員に納得していただき、
7回戦~11回戦を4人で対局し、今期の十段位を決定する事になりました。
第6回戦からの対局は、観戦記後編でお伝えいたします。