第4期グランプリMAX初日観戦記

鳳凰位決定戦の激闘が終わると、息をつく暇もなく、グランプリMAXがやってくる。

日本プロ麻雀連盟の段位システムに使用されている、ポイントランキングの上位者と、タイトルホルダーなどを中心としたメンバーで行われる、年度末最後のタイトル戦である。

 

第4期麻雀グランプリ MAX一次予選レポート

第4期麻雀グランプリ MAX二次予選レポート

第4期麻雀グランプリMAXベスト16レポート

第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 瀬戸熊直樹

第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 藤崎智

 

決勝に進出したのは、以下の4名。

100

左から二階堂瑠美 灘麻太郎 前田直哉 安村浩司

 

1回戦
(起家から、灘、二階堂、安村、前田)
東1局 ドラ東
配牌から、ドラの東が、親番の灘、西家の安村に2枚ずつ。

2巡目の西をいきなり灘が仕掛ける。

gpmax2012

 

例えば私なら、アガリたいからこの西は仕掛けない。
説明するまでもないであろうが、西を仕掛けたら他家の警戒心も強まり、後は自分のツモに任せる以外なくなってしまうからだ。
シャンテン数を上げることは、アガリに近づけることではない。
特にドラの価値が重い、日本プロ麻雀連盟Aルールでは尚更だ。

しかし、これが灘の雀風である。常識的なことは承知の上で、相手にプレッシャーをかけていくのである。

この挨拶代わりの灘のポンを受けて、周りはどう動くのか?
東1局から興味深い局だ。

gpmax2012

 

4巡目、南家の二階堂は上の手牌から、打中とした。

確かに、早い段階で役牌を打てば、放銃のリスクは低くなる。
「どうしてもアガリたい手牌なら、放銃になるまで絞れ。テンパイ料欲しさに打ち出すくらいなら、心中しろ」
私が若い頃はそんな感じで教わったものだが、現代風の考え方は違うようだ。

しかし、危険牌を先打ちするのが二階堂のフォームというわけではなく、これは、予選段階で何度も灘の仕掛けを見た上での対応策なのである。
もちろん、234の三色への変化がある自分の手牌もあってのことだが、灘の仕掛けには屈しない、といった意志が感じられる。

二階堂にピンフのテンパイが入った次巡、安村にもテンパイが入る。

gpmax2012

 

ライブで観戦した方はわかったと思うが、安村のこのリーチには微塵も躊躇が感じられなかった。
この後の安村の戦い方を見るに、決してかかっているわけではなく、自身のフォームで打ち抜こうという、こちらも二階堂と同じく、決意のようなものが感じられる間合いであった。

もちろん、この局面でのリーチ判断の是か否かはさておき、の話しだが。

リーチをかけた時点で、灘の手牌は2シャンテン・・・

gpmax2012

 

しかし、結果は安村から灘に12,000の放銃となる。

リーチをかけることによるデメリットの1つに、数牌の入れ替えができなくなることがある。
灘の仕掛けが、トイトイを匂わせていることもあり、リーチは尚早だったのかもしれない。
実際、五索八索は入れ替えることができなくなり、前田が二階堂の二万五万に飛び込む可能性も低くなった。
場には六万が2枚打たれてあるし、灘から五万が打たれることもある。もちろん半分は結果論の話しではある。

しかし、これが安村のフォームなら、この局の結果はどうでも良いのではないかと、私は思う。
初の大舞台。カメラの向こうにいる想像もつかないほど大勢の観戦者の前で、素の麻雀を打っていることが、躍進を続けている安村の強さの理由のひとつではないだろうか。

もう一つ注目すべきは、4巡目に中を打った二階堂が、灘が2フーロ目の五索ポンが入ったあと、場面に見えていない発を打ち出していることだ。
安村のリーチを受けた後の五索ポン。つまり、灘が全面戦争の構えであることを物語っている。
安村にもドラの東が入っていることが考えられるため、灘の手牌に発が関連している確率は50%を超える。
また、リーチがかかったことにより、前田から二万五万の出アガリも期待できなくなった。
きっと放銃となれば、暴牌と罵られるだろう。

それでも二階堂は発を打ったのである。

灘は、相手に問題を突きつけ、打牌に制限をかけるような麻雀を打つ。
安村も二階堂も、相手の動向に左右されすぎて、破壊されないようにしようと、心に決めてきたに違いない。

東2局

gpmax2012

 

7巡目に、二階堂が白を仕掛ける。

次巡に灘がリーチをかけるが五筒六筒八索と無スジを3枚打った二階堂が、ドラの六筒を勝負して、4,000・8,000をツモアガる。

gpmax2012

 

100

二階堂瑠美

妹の亜樹が、日本プロ麻雀連盟の門を叩いた翌年、姉の瑠美が入会した。
亜樹は堅実な麻雀、瑠美は大きな構えで手役を狙う麻雀。
長期間に渡って、極端なほどの手役派として打ち続けていたが、今期のプロクイーンを獲得したときは、皆が知る二階堂瑠美のイメージとは少し違っていた。
簡単に言えば、遊びの部分が少なくなった。無理を通す場面を減らし、勝ちに対して貪欲になったといった感じか。
女流プロ達の最前線で活動している二階堂姉妹だが、人気の裏には、人とは違った悩みもあるだろう。
例えば、その手役を狙うそのスタイルが、好意的に解釈される方が多いということがある。
つまり、ファンの期待に応えて、麻雀を打つことが当然になってくるということだ。
自分の打ちたい麻雀を打って勝てるのなら良いが、そんなに簡単なものではない。
しかし、勝ちから遠のけば、プロとしての存在意義を考えてしまう。

ここまで貫いてきたスタイルを修正したことが、直接的に勝利に繋がっているかどうかはわからない。
実際スタイルチェンジするのには、かなりのエネルギーを要するはずだ。
それでも決心したのは、単なる人気商売では終わらせない、勝つこともプロとしての義務であると、本人が思い直したことに他ならないであろう。

 

東2局に、安村が2,000・4,000をツモアガる。

三万四万五万七万七万六索七索八索五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ツモ七筒  ドラ七万

すると、安村が止まらない。
東3局

五万五万六万七万八万一索三索七索八索九索三筒四筒五筒  リーチ  ツモ二索  ドラ三索

東3局1本場

六万七万七万八万八万六索七索八索九索九索四筒五筒六筒  リーチ  ロン六万  ドラ五索

東3局2本場は、難しい手牌をまとめて1人テンパイで流局に持ち込む。

東3局3本場

一万二万三万七万八万九万一索一索六索七索六筒七筒八筒  リーチ  ツモ八索  ドラ七万

この5局で一気にトップ目に立つ。

東4局4本場

gpmax2012

 

灘の仕掛けは6巡目。
カン二索を引いた安村は、打五万とする。

11巡目に二階堂が六索をリャンメンチーすると、安村にドラの八筒が食い下がりテンパイが入る。
安村の選択はカン五筒待ちの一通で即リーチ。

gpmax2012

 

すると、二階堂はこの一筒でオリを選択し、次の巡目にアガリ逃しとなる三筒をツモる。

結果はまたしても、安村の1人テンパイ。
主導権を取りにいった選択が功を奏した。

 

100

安村浩司
富山県出身の29歳。A型。連盟入会は、魚谷侑未、福光聖雄らと同時期となる。
今年度は、十段戦ベスト16、王位戦ベスト16など、躍進の年となった。

 

東3局5本場

gpmax2012

 

3巡目、白を仕掛けた安村の手牌はこうだ。

一万三万四万四万七万八万九万四索四索五筒西白白

その後、安村の手牌が動くことはなく、南家・前田の2,000・3,900ツモアガリとなった。

六万七万八万八万八万一索二索三索四索五索六索八索九索  ツモ七索  ドラ八索

私が気になったのは、白ポンに対し、解説の藤崎智が「この仕掛けはどうでしょうね~」と、首をかしげたことだ。

本当に、安村が仕掛けた瞬間にコメントを発した藤崎。これが鳳凰位の実力か。
いや、しかし安村にとっては白を仕掛けるのが普通で、これを仕掛けないということは、自身のフォームが乱れていることに繋がるのかもしれない。
何が何だかわかならくなってきたが、解説者の藤崎はもちろん、例えば私も仕掛けない選択をすることが多い場面ではある。

1回戦結果
二階堂+17.0P  安村+11.7P  灘▲9.0P  前田▲19.7P

 

2回戦
(起家から安村、灘、前田、二階堂)

gpmax2012

 

2回戦は前田の3,900からスタート。
全体牌譜の前田の捨て牌。5、6巡目の三索は両方手出しである。(明るい牌が手出し、暗い牌がツモ切り)
放銃した安村は、前田の手牌を見た瞬間に「ああ空切りか」と認識する。
こういう形で引っかかるのがイヤだから、と思考を放棄してしまう打ち手がいるが、これは麻雀の駆け引きの面白さでもあるのだ。

 

100

前田直哉
静岡県出身。42歳。A型。
今年、第2回グランプリMAX優勝者の勝又健志と共にA1に昇級。

 

2回戦東1局、前田は意図的に三索を空切りした。
しかし、次に同じ場面がきたら2枚目の三索はツモ切りするかもしれない。
自分が相手のデータを持っているように、相手も自分のデータを持っている。
長年プロリーグを戦っている前田の勝負感は、分厚く形成されてきているのであろう。

東2局
7巡目の二索にポンの声は、親番の灘麻太郎。

 

100

灘麻太郎
日本プロ麻雀連盟名誉会長
1回戦から所々に見られる遠い仕掛けは、常識的な対応をするもののピントを狂わせる。

逆に、人一倍常識を知っているからこそ、仕掛けたあとの均衡が保たれているとも言える。
体力も抜群で、とても77歳とは思えない。若い選手がフラフラになって戦っている中、姿勢を崩さずビシッと打ってくる。
勝負に関わる精神力は、年齢を重ねるに連れて充実していくという話しを聞いたことがあるが、体力も充実していなければ、麻雀を打って勝ち続けることは難しいだろう。とにかく規格外。並の人間ではない。

 

gpmax2012

 

さて、このポンをした後のバランス感覚が素晴らしい。
まず、この仕掛けを入れた瞬間、灘の選択は打七筒
目一杯には構えず、まずは相手の出方を見ようということだ。
出方と一言に言っても、牌譜だけでは伝わらない、ありとあらゆる所から情報を得ているのである。(としか思えない)

結果は、南家・前田との2人テンパイで流局となった。
これを検証する意味があるかどうかはわからないが、仮に二索を仕掛けなかった場合は、おそらく安村のアガリとなり、灘の連荘はなかった。
大きなアガリはないものの、この親は3本場まで続き、灘がトップ目に立つ。

東3局
親番の前田は9巡目にテンパイ。

二万二万二万四万五万六万四索六索三筒四筒五筒発発  ドラ六筒

ドラ引きプラス三色の3ハンアップの変化があるので、これをヤミテンに構えるのは、まあ普通だ。
しかし11巡目、前田はこの手牌に七索を引いてさらにヤミテンとした。

gpmax2012

 

全体牌譜を見ていただければわかるように、南家・二階堂から、七万 左向き五万 上向き六万 上向きのリャンメンチーが入っている。
二階堂の仕掛けは高いことが前提。
ドラを持っているであろう仕掛けに対して他家がどう対応していくか。
二階堂の捨て牌にはソーズが高く、自分の待ちであるソーズの上を厚く持っていそうだ。
前田の思考はそういったところであろうか。
結果、前田が5で500オールのツモアガリとなった。

二万二万四万五万六万六索七索三筒四筒五筒発発  ツモ五索

それにしても落ち着いている。
1回戦をラスで終了した前田だが、一切の焦りが感じられない。

東3局1本場

gpmax2012

 

前巡にツモ九万で、七対子ドラ2をテンパイした前田。
ここで六万に待ち替えで、さらにヤミテン続行。
この待ち選択はアガるためのもので、納得感はあるだろう。
13巡目に二索を暗刻から空切りしてリーチをかけると、一発でツモって6,000オール。

gpmax2012

 

この半荘のトップを決める大きなアガリとなった。

東4局では

gpmax2012

 

二階堂のリーチを受けて、この手牌から五索を勝負。
八万を出アガリ、トップを磐石のものとした。

終了後のインタビューで、勝負にメリハリをつけることが自分の持ち味だと、前田は語った。
一言にメリハリをつけると言っても、背景がしっかりしていないと、メリハリをつけて勝つことはできない。
先ほどの役無しヤミテンの後だけに、対局者には強烈な印象として刻まれたことだろう。

2回戦結果
前田+43.8P 灘+19.8P 安村▲21.0P 二階堂▲42.6P

2回戦終了時
前田+24.1P 灘+10.8P 安村▲9.3P 二階堂▲25.6P

 

3回戦
2回戦は、1回戦の着順と反対になったが、素点の大きさで前田が首位、二階堂が最下位となった。
このように日本プロ麻雀連盟のAルールでは、平均着順はそれほど大きな意味を持たない。

点数の動きが出れば、感情の動きも出てくる。
追いつかれた方と、追いついた方。残り回数が少なくなるに連れ、追い詰められる局面も多くなるものである。

東1局

gpmax2012

 

3巡目、二階堂の中打ち。
今までの二階堂瑠美なら、この中を打ち出すことはなかったであろう。

gpmax2012

 

3巡目の中打ちの段階で三筒を打っても、九筒を打っても、二階堂の最終形に変化はなかった。

しかし、ドラ打ちを見た他家の対応は違ってくる。
例えば、前田の打五索は二階堂のスピードを感じて、先打ちした可能性がある。
他家に関しても、二階堂の安全牌を残して手牌をスリムに構えたり、と場面に影響を与えているのは間違いない。
これが、自分にとってプラスに帰ってくることも、マイナスになることもあるところが難しいところだ。

南1局1本場

gpmax2012

 

2巡目、二階堂は發をツモり、メンツの七筒を打ってホンイツに向かう。
これは、今までどおりの二階堂のスタイルだ。

この局の結果は前田の1,300出アガリ。

gpmax2012

 

これも、2回戦目の役無しヤミテンと同様、リーチをかけても良さそうな手牌だが、前田はヤミテンを選択した。
やはり、この丁寧なヤミテンが、前田の強い部分となっているようだ。

理想的な並びで、3回戦目も前田のトップで終了となった。

3回戦結果
前田+13.2P 二階堂+6.7P 安村▲7.6P 灘▲12.7P

3回戦終了時
前田+37.3P 灘▲1.5P 安村▲16.9P 二階堂▲18.9P

 

4回戦
(起家から、前田、安村、二階堂、灘)
東1局 ドラ四万
親番の前田、ピンフツモからスタート。

gpmax2012

 

一万は場に2枚切れ、ドラの四万は1枚も見えていない。
今まで前田がヤミテンを選択した手牌の全ては、リーチをかけてもおかしくはない手牌だ。
勝負を急がない、落ち着いた打ちまわし。
前田の押し引きのピントが合っているように感じるが、若干の違和感も覚える。
それは、キレイにまとめすぎではないか、ということだ。

私、滝沢の短所がそういった所にあることが、より、そう感じさせる理由かもしれない。
リスクを避ける打ち方をしていれば、大きく負けることはない。しかし、数少ない勝負所を先延ばしにしてばかりでは、勝ち味が遅くなる。
例えばこの東1局、リーチをかける前から「この親番は勝負所、一気に突き放す!」と心に決めていれば、どうだったか?
今の私は、反省すべき箇所をそういった所に持っていくことが多い。
ツキの偏りを捕らえにいく際に、決心は必要で、それは単なる思い込みでも構わないと思う。
極端に言えば、配牌を取る前から腹をくくっても良い。

「丁寧に打つところが長所だね」
そう言われれば、常に丁寧さをこころがける。しかし、時にそれが、成長の妨げになることがある。
特に、勝った者はあらゆる部分で好評価を受けやすいものだ。
短所を克服しようとすれば、その分長所がかすむものだが、それの繰り返しで太い幹が形成されるのではないか。というのが、今の私の考えだ。

南4局

gpmax2012

 

実に、ここまでの前田「らしくない」放銃。
二階堂がトップで、初日が終了となった。

そういえば前田も安村と同様、タイトル戦の決勝は初だった・・・

4回戦成績
二階堂+27.3P 灘+14.8P 前田▲17.2P 安村▲13.1P

4回戦終了時
前田+20.1P 灘+13.3P 二階堂+8.4P 安村▲41.8P

~2日目観戦記へ続く~

グランプリ 決勝観戦記/第4期グランプリMAX初日観戦記

鳳凰位決定戦の激闘が終わると、息をつく暇もなく、グランプリMAXがやってくる。
日本プロ麻雀連盟の段位システムに使用されている、ポイントランキングの上位者と、タイトルホルダーなどを中心としたメンバーで行われる、年度末最後のタイトル戦である。
 
第4期麻雀グランプリ MAX一次予選レポート
第4期麻雀グランプリ MAX二次予選レポート
第4期麻雀グランプリMAXベスト16レポート
第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 瀬戸熊直樹
第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 藤崎智
 
決勝に進出したのは、以下の4名。

100

左から二階堂瑠美 灘麻太郎 前田直哉 安村浩司

 
1回戦
(起家から、灘、二階堂、安村、前田)
東1局 ドラ東
配牌から、ドラの東が、親番の灘、西家の安村に2枚ずつ。
2巡目の西をいきなり灘が仕掛ける。
gpmax2012
 
例えば私なら、アガリたいからこの西は仕掛けない。
説明するまでもないであろうが、西を仕掛けたら他家の警戒心も強まり、後は自分のツモに任せる以外なくなってしまうからだ。
シャンテン数を上げることは、アガリに近づけることではない。
特にドラの価値が重い、日本プロ麻雀連盟Aルールでは尚更だ。
しかし、これが灘の雀風である。常識的なことは承知の上で、相手にプレッシャーをかけていくのである。
この挨拶代わりの灘のポンを受けて、周りはどう動くのか?
東1局から興味深い局だ。
gpmax2012
 
4巡目、南家の二階堂は上の手牌から、打中とした。
確かに、早い段階で役牌を打てば、放銃のリスクは低くなる。
「どうしてもアガリたい手牌なら、放銃になるまで絞れ。テンパイ料欲しさに打ち出すくらいなら、心中しろ」
私が若い頃はそんな感じで教わったものだが、現代風の考え方は違うようだ。
しかし、危険牌を先打ちするのが二階堂のフォームというわけではなく、これは、予選段階で何度も灘の仕掛けを見た上での対応策なのである。
もちろん、234の三色への変化がある自分の手牌もあってのことだが、灘の仕掛けには屈しない、といった意志が感じられる。
二階堂にピンフのテンパイが入った次巡、安村にもテンパイが入る。
gpmax2012
 
ライブで観戦した方はわかったと思うが、安村のこのリーチには微塵も躊躇が感じられなかった。
この後の安村の戦い方を見るに、決してかかっているわけではなく、自身のフォームで打ち抜こうという、こちらも二階堂と同じく、決意のようなものが感じられる間合いであった。
もちろん、この局面でのリーチ判断の是か否かはさておき、の話しだが。
リーチをかけた時点で、灘の手牌は2シャンテン・・・
gpmax2012
 
しかし、結果は安村から灘に12,000の放銃となる。
リーチをかけることによるデメリットの1つに、数牌の入れ替えができなくなることがある。
灘の仕掛けが、トイトイを匂わせていることもあり、リーチは尚早だったのかもしれない。
実際、五索八索は入れ替えることができなくなり、前田が二階堂の二万五万に飛び込む可能性も低くなった。
場には六万が2枚打たれてあるし、灘から五万が打たれることもある。もちろん半分は結果論の話しではある。
しかし、これが安村のフォームなら、この局の結果はどうでも良いのではないかと、私は思う。
初の大舞台。カメラの向こうにいる想像もつかないほど大勢の観戦者の前で、素の麻雀を打っていることが、躍進を続けている安村の強さの理由のひとつではないだろうか。
もう一つ注目すべきは、4巡目に中を打った二階堂が、灘が2フーロ目の五索ポンが入ったあと、場面に見えていない発を打ち出していることだ。
安村のリーチを受けた後の五索ポン。つまり、灘が全面戦争の構えであることを物語っている。
安村にもドラの東が入っていることが考えられるため、灘の手牌に発が関連している確率は50%を超える。
また、リーチがかかったことにより、前田から二万五万の出アガリも期待できなくなった。
きっと放銃となれば、暴牌と罵られるだろう。
それでも二階堂は発を打ったのである。
灘は、相手に問題を突きつけ、打牌に制限をかけるような麻雀を打つ。
安村も二階堂も、相手の動向に左右されすぎて、破壊されないようにしようと、心に決めてきたに違いない。
東2局
gpmax2012
 
7巡目に、二階堂が白を仕掛ける。
次巡に灘がリーチをかけるが五筒六筒八索と無スジを3枚打った二階堂が、ドラの六筒を勝負して、4,000・8,000をツモアガる。
gpmax2012
 
100
二階堂瑠美
妹の亜樹が、日本プロ麻雀連盟の門を叩いた翌年、姉の瑠美が入会した。
亜樹は堅実な麻雀、瑠美は大きな構えで手役を狙う麻雀。
長期間に渡って、極端なほどの手役派として打ち続けていたが、今期のプロクイーンを獲得したときは、皆が知る二階堂瑠美のイメージとは少し違っていた。
簡単に言えば、遊びの部分が少なくなった。無理を通す場面を減らし、勝ちに対して貪欲になったといった感じか。
女流プロ達の最前線で活動している二階堂姉妹だが、人気の裏には、人とは違った悩みもあるだろう。
例えば、その手役を狙うそのスタイルが、好意的に解釈される方が多いということがある。
つまり、ファンの期待に応えて、麻雀を打つことが当然になってくるということだ。
自分の打ちたい麻雀を打って勝てるのなら良いが、そんなに簡単なものではない。
しかし、勝ちから遠のけば、プロとしての存在意義を考えてしまう。
ここまで貫いてきたスタイルを修正したことが、直接的に勝利に繋がっているかどうかはわからない。
実際スタイルチェンジするのには、かなりのエネルギーを要するはずだ。
それでも決心したのは、単なる人気商売では終わらせない、勝つこともプロとしての義務であると、本人が思い直したことに他ならないであろう。
 
東2局に、安村が2,000・4,000をツモアガる。
三万四万五万七万七万六索七索八索五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ツモ七筒  ドラ七万
すると、安村が止まらない。
東3局
五万五万六万七万八万一索三索七索八索九索三筒四筒五筒  リーチ  ツモ二索  ドラ三索
東3局1本場
六万七万七万八万八万六索七索八索九索九索四筒五筒六筒  リーチ  ロン六万  ドラ五索
東3局2本場は、難しい手牌をまとめて1人テンパイで流局に持ち込む。
東3局3本場
一万二万三万七万八万九万一索一索六索七索六筒七筒八筒  リーチ  ツモ八索  ドラ七万
この5局で一気にトップ目に立つ。
東4局4本場
gpmax2012
 
灘の仕掛けは6巡目。
カン二索を引いた安村は、打五万とする。
11巡目に二階堂が六索をリャンメンチーすると、安村にドラの八筒が食い下がりテンパイが入る。
安村の選択はカン五筒待ちの一通で即リーチ。
gpmax2012
 
すると、二階堂はこの一筒でオリを選択し、次の巡目にアガリ逃しとなる三筒をツモる。
結果はまたしても、安村の1人テンパイ。
主導権を取りにいった選択が功を奏した。
 
100
安村浩司
富山県出身の29歳。A型。連盟入会は、魚谷侑未、福光聖雄らと同時期となる。
今年度は、十段戦ベスト16、王位戦ベスト16など、躍進の年となった。
 
東3局5本場
gpmax2012
 
3巡目、白を仕掛けた安村の手牌はこうだ。
一万三万四万四万七万八万九万四索四索五筒西白白
その後、安村の手牌が動くことはなく、南家・前田の2,000・3,900ツモアガリとなった。
六万七万八万八万八万一索二索三索四索五索六索八索九索  ツモ七索  ドラ八索
私が気になったのは、白ポンに対し、解説の藤崎智が「この仕掛けはどうでしょうね~」と、首をかしげたことだ。
本当に、安村が仕掛けた瞬間にコメントを発した藤崎。これが鳳凰位の実力か。
いや、しかし安村にとっては白を仕掛けるのが普通で、これを仕掛けないということは、自身のフォームが乱れていることに繋がるのかもしれない。
何が何だかわかならくなってきたが、解説者の藤崎はもちろん、例えば私も仕掛けない選択をすることが多い場面ではある。
1回戦結果
二階堂+17.0P  安村+11.7P  灘▲9.0P  前田▲19.7P
 
2回戦
(起家から安村、灘、前田、二階堂)
gpmax2012
 
2回戦は前田の3,900からスタート。
全体牌譜の前田の捨て牌。5、6巡目の三索は両方手出しである。(明るい牌が手出し、暗い牌がツモ切り)
放銃した安村は、前田の手牌を見た瞬間に「ああ空切りか」と認識する。
こういう形で引っかかるのがイヤだから、と思考を放棄してしまう打ち手がいるが、これは麻雀の駆け引きの面白さでもあるのだ。
 
100
前田直哉
静岡県出身。42歳。A型。
今年、第2回グランプリMAX優勝者の勝又健志と共にA1に昇級。
 
2回戦東1局、前田は意図的に三索を空切りした。
しかし、次に同じ場面がきたら2枚目の三索はツモ切りするかもしれない。
自分が相手のデータを持っているように、相手も自分のデータを持っている。
長年プロリーグを戦っている前田の勝負感は、分厚く形成されてきているのであろう。
東2局
7巡目の二索にポンの声は、親番の灘麻太郎。
 
100
灘麻太郎
日本プロ麻雀連盟名誉会長
1回戦から所々に見られる遠い仕掛けは、常識的な対応をするもののピントを狂わせる。
逆に、人一倍常識を知っているからこそ、仕掛けたあとの均衡が保たれているとも言える。
体力も抜群で、とても77歳とは思えない。若い選手がフラフラになって戦っている中、姿勢を崩さずビシッと打ってくる。
勝負に関わる精神力は、年齢を重ねるに連れて充実していくという話しを聞いたことがあるが、体力も充実していなければ、麻雀を打って勝ち続けることは難しいだろう。とにかく規格外。並の人間ではない。
 
gpmax2012
 
さて、このポンをした後のバランス感覚が素晴らしい。
まず、この仕掛けを入れた瞬間、灘の選択は打七筒
目一杯には構えず、まずは相手の出方を見ようということだ。
出方と一言に言っても、牌譜だけでは伝わらない、ありとあらゆる所から情報を得ているのである。(としか思えない)
結果は、南家・前田との2人テンパイで流局となった。
これを検証する意味があるかどうかはわからないが、仮に二索を仕掛けなかった場合は、おそらく安村のアガリとなり、灘の連荘はなかった。
大きなアガリはないものの、この親は3本場まで続き、灘がトップ目に立つ。
東3局
親番の前田は9巡目にテンパイ。
二万二万二万四万五万六万四索六索三筒四筒五筒発発  ドラ六筒
ドラ引きプラス三色の3ハンアップの変化があるので、これをヤミテンに構えるのは、まあ普通だ。
しかし11巡目、前田はこの手牌に七索を引いてさらにヤミテンとした。
gpmax2012
 
全体牌譜を見ていただければわかるように、南家・二階堂から、七万 左向き五万 上向き六万 上向きのリャンメンチーが入っている。
二階堂の仕掛けは高いことが前提。
ドラを持っているであろう仕掛けに対して他家がどう対応していくか。
二階堂の捨て牌にはソーズが高く、自分の待ちであるソーズの上を厚く持っていそうだ。
前田の思考はそういったところであろうか。
結果、前田が5で500オールのツモアガリとなった。
二万二万四万五万六万六索七索三筒四筒五筒発発  ツモ五索
それにしても落ち着いている。
1回戦をラスで終了した前田だが、一切の焦りが感じられない。
東3局1本場
gpmax2012
 
前巡にツモ九万で、七対子ドラ2をテンパイした前田。
ここで六万に待ち替えで、さらにヤミテン続行。
この待ち選択はアガるためのもので、納得感はあるだろう。
13巡目に二索を暗刻から空切りしてリーチをかけると、一発でツモって6,000オール。
gpmax2012
 
この半荘のトップを決める大きなアガリとなった。
東4局では
gpmax2012
 
二階堂のリーチを受けて、この手牌から五索を勝負。
八万を出アガリ、トップを磐石のものとした。
終了後のインタビューで、勝負にメリハリをつけることが自分の持ち味だと、前田は語った。
一言にメリハリをつけると言っても、背景がしっかりしていないと、メリハリをつけて勝つことはできない。
先ほどの役無しヤミテンの後だけに、対局者には強烈な印象として刻まれたことだろう。
2回戦結果
前田+43.8P 灘+19.8P 安村▲21.0P 二階堂▲42.6P
2回戦終了時
前田+24.1P 灘+10.8P 安村▲9.3P 二階堂▲25.6P
 
3回戦
2回戦は、1回戦の着順と反対になったが、素点の大きさで前田が首位、二階堂が最下位となった。
このように日本プロ麻雀連盟のAルールでは、平均着順はそれほど大きな意味を持たない。
点数の動きが出れば、感情の動きも出てくる。
追いつかれた方と、追いついた方。残り回数が少なくなるに連れ、追い詰められる局面も多くなるものである。
東1局
gpmax2012
 
3巡目、二階堂の中打ち。
今までの二階堂瑠美なら、この中を打ち出すことはなかったであろう。
gpmax2012
 
3巡目の中打ちの段階で三筒を打っても、九筒を打っても、二階堂の最終形に変化はなかった。
しかし、ドラ打ちを見た他家の対応は違ってくる。
例えば、前田の打五索は二階堂のスピードを感じて、先打ちした可能性がある。
他家に関しても、二階堂の安全牌を残して手牌をスリムに構えたり、と場面に影響を与えているのは間違いない。
これが、自分にとってプラスに帰ってくることも、マイナスになることもあるところが難しいところだ。
南1局1本場
gpmax2012
 
2巡目、二階堂は發をツモり、メンツの七筒を打ってホンイツに向かう。
これは、今までどおりの二階堂のスタイルだ。
この局の結果は前田の1,300出アガリ。
gpmax2012
 
これも、2回戦目の役無しヤミテンと同様、リーチをかけても良さそうな手牌だが、前田はヤミテンを選択した。
やはり、この丁寧なヤミテンが、前田の強い部分となっているようだ。
理想的な並びで、3回戦目も前田のトップで終了となった。
3回戦結果
前田+13.2P 二階堂+6.7P 安村▲7.6P 灘▲12.7P
3回戦終了時
前田+37.3P 灘▲1.5P 安村▲16.9P 二階堂▲18.9P
 
4回戦
(起家から、前田、安村、二階堂、灘)
東1局 ドラ四万
親番の前田、ピンフツモからスタート。
gpmax2012
 
一万は場に2枚切れ、ドラの四万は1枚も見えていない。
今まで前田がヤミテンを選択した手牌の全ては、リーチをかけてもおかしくはない手牌だ。
勝負を急がない、落ち着いた打ちまわし。
前田の押し引きのピントが合っているように感じるが、若干の違和感も覚える。
それは、キレイにまとめすぎではないか、ということだ。
私、滝沢の短所がそういった所にあることが、より、そう感じさせる理由かもしれない。
リスクを避ける打ち方をしていれば、大きく負けることはない。しかし、数少ない勝負所を先延ばしにしてばかりでは、勝ち味が遅くなる。
例えばこの東1局、リーチをかける前から「この親番は勝負所、一気に突き放す!」と心に決めていれば、どうだったか?
今の私は、反省すべき箇所をそういった所に持っていくことが多い。
ツキの偏りを捕らえにいく際に、決心は必要で、それは単なる思い込みでも構わないと思う。
極端に言えば、配牌を取る前から腹をくくっても良い。
「丁寧に打つところが長所だね」
そう言われれば、常に丁寧さをこころがける。しかし、時にそれが、成長の妨げになることがある。
特に、勝った者はあらゆる部分で好評価を受けやすいものだ。
短所を克服しようとすれば、その分長所がかすむものだが、それの繰り返しで太い幹が形成されるのではないか。というのが、今の私の考えだ。
南4局
gpmax2012
 
実に、ここまでの前田「らしくない」放銃。
二階堂がトップで、初日が終了となった。
そういえば前田も安村と同様、タイトル戦の決勝は初だった・・・
4回戦成績
二階堂+27.3P 灘+14.8P 前田▲17.2P 安村▲13.1P
4回戦終了時
前田+20.1P 灘+13.3P 二階堂+8.4P 安村▲41.8P
~2日目観戦記へ続く~

第28期 新人王戦のご案内

第28期 新人王戦の概要詳細はこちら

連盟インフォメーション/第28期 新人王戦のご案内

第28期 新人王戦の概要詳細はこちら

第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 藤崎智

第4期麻雀グランプリMAXのベスト8A卓。
つまりわかり易く言うとあと1回勝てば決勝戦の舞台に立てるという事である。

「ベスト8」聞こえはカッコ良く聞こえる。このタイトル戦は出場する事すら難しい。
ベスト8まで勝ち上がるとなれば、かなりの名誉なはずである。
しかし、麻雀のプロの世界では何の意味もなさない。
ましてや本人達にとっては何の財産にもならないものなのである。

名誉になるのは優勝者のみ。たとえ敗れたとしても、本人の財産として残るのは決勝進出者のみである。
ここは、対局者4人にとって、絶対に負けられない大戦なのである。
ある意味では、決勝戦よりも大切な一戦と言ってもいいのかもしれない。

さて対局の方は、4人それぞれ持ち味を発揮している。
序盤から激しい主導権争いが、灘、前原、二階堂(瑠美)の3人で繰り広げられる。

前年度チャンピオンの前原と一緒に戦った灘は、昨年の決勝戦の再戦であり、現プロクイーンの二階堂はグランプリ初出場での決勝進出を目指す。
3人共に人気トッププロという事もあって、コメントでの応援合戦もすごかったが、やはり応援合戦では二階堂がやや優勢か。

さて、展開的には1人おいでいかれたグランプリ2度目の出場の中村。
3度目の連盟チャンネル出演となるのだが、こちらは今年度の十段戦の決勝で魅せた最終戦最後方からの末脚。グランプリベスト16での最終戦での大逆転劇と派手な対局がファンの心をぐっと掴んだようだ。
現在B1リーグ所属で、無冠の19期生の38歳。他の3人に比べると知名度では断然劣る。
しかし、応援コメントでは決して負けていなかった。

相変わらずのスタートの悪さと、高打点派のスタイルから今回も最後方からのレースとなった。
しかし、いつものように中盤戦あたりから中村らしい手順でテンパイを入れる。
こうなると、ポイント的に大きく沈んでいる者に、上位3人は振り込みたくない。
したがって、中村は他の3人を降ろしてゆっくりツモアガリを目指せばいいはずであった。

これで得意の末脚爆発が決まるはずだったのだが、態勢の差を重視した二階堂が中村の勝負手を全て捌いた。この二階堂の感性で彼女が局面をリードする事となり、中村は最後まで浮上のきっかけを掴む事は叶わなかった。

終盤の4回戦。
ここを無難に乗り切れば、最終5回戦を待たずして二階堂の勝ち上がりがほぼ決まるというところで、二階堂痛恨の大きなラスを引く。

並びも最悪で、前原がトップで灘が2着。
対局後、二階堂が言っていた。

「ここはラスだけは引いてはいけないという局面で、大きなラスを引いてしまう。
自分にとっての大きな課題です。」

どうやったらクリアできる課題なのかはわからないが、彼女らしい麻雀の大きさがうかがえるコメントである。

さて最終5回戦。席順とポイントは、
起家から、二階堂+2.2P・前原+29.9P・灘+20.1P・中村▲54.0P

東1局に、二階堂が爆発して1人早くも当確。
もう1枠は、南2局まで灘が優勢に進めて、南3局の親番での爆発につなげる。
錆びないカミソリの切れ味は抜群で、本当に隙がない。安定感抜群の対局であった。

一方、大本命と目された前原はここで敗退。
競り合いには強い前原ではあったが、今回は灘と二階堂のゲームの組み立てが素晴らしかった。
完敗と言っていいだろう。

グランプリ レポート/第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 藤崎智

第4期麻雀グランプリMAXのベスト8A卓。
つまりわかり易く言うとあと1回勝てば決勝戦の舞台に立てるという事である。
「ベスト8」聞こえはカッコ良く聞こえる。このタイトル戦は出場する事すら難しい。
ベスト8まで勝ち上がるとなれば、かなりの名誉なはずである。
しかし、麻雀のプロの世界では何の意味もなさない。
ましてや本人達にとっては何の財産にもならないものなのである。
名誉になるのは優勝者のみ。たとえ敗れたとしても、本人の財産として残るのは決勝進出者のみである。
ここは、対局者4人にとって、絶対に負けられない大戦なのである。
ある意味では、決勝戦よりも大切な一戦と言ってもいいのかもしれない。
さて対局の方は、4人それぞれ持ち味を発揮している。
序盤から激しい主導権争いが、灘、前原、二階堂(瑠美)の3人で繰り広げられる。
前年度チャンピオンの前原と一緒に戦った灘は、昨年の決勝戦の再戦であり、現プロクイーンの二階堂はグランプリ初出場での決勝進出を目指す。
3人共に人気トッププロという事もあって、コメントでの応援合戦もすごかったが、やはり応援合戦では二階堂がやや優勢か。
さて、展開的には1人おいでいかれたグランプリ2度目の出場の中村。
3度目の連盟チャンネル出演となるのだが、こちらは今年度の十段戦の決勝で魅せた最終戦最後方からの末脚。グランプリベスト16での最終戦での大逆転劇と派手な対局がファンの心をぐっと掴んだようだ。
現在B1リーグ所属で、無冠の19期生の38歳。他の3人に比べると知名度では断然劣る。
しかし、応援コメントでは決して負けていなかった。
相変わらずのスタートの悪さと、高打点派のスタイルから今回も最後方からのレースとなった。
しかし、いつものように中盤戦あたりから中村らしい手順でテンパイを入れる。
こうなると、ポイント的に大きく沈んでいる者に、上位3人は振り込みたくない。
したがって、中村は他の3人を降ろしてゆっくりツモアガリを目指せばいいはずであった。
これで得意の末脚爆発が決まるはずだったのだが、態勢の差を重視した二階堂が中村の勝負手を全て捌いた。この二階堂の感性で彼女が局面をリードする事となり、中村は最後まで浮上のきっかけを掴む事は叶わなかった。
終盤の4回戦。
ここを無難に乗り切れば、最終5回戦を待たずして二階堂の勝ち上がりがほぼ決まるというところで、二階堂痛恨の大きなラスを引く。
並びも最悪で、前原がトップで灘が2着。
対局後、二階堂が言っていた。
「ここはラスだけは引いてはいけないという局面で、大きなラスを引いてしまう。
自分にとっての大きな課題です。」
どうやったらクリアできる課題なのかはわからないが、彼女らしい麻雀の大きさがうかがえるコメントである。
さて最終5回戦。席順とポイントは、
起家から、二階堂+2.2P・前原+29.9P・灘+20.1P・中村▲54.0P
東1局に、二階堂が爆発して1人早くも当確。
もう1枠は、南2局まで灘が優勢に進めて、南3局の親番での爆発につなげる。
錆びないカミソリの切れ味は抜群で、本当に隙がない。安定感抜群の対局であった。
一方、大本命と目された前原はここで敗退。
競り合いには強い前原ではあったが、今回は灘と二階堂のゲームの組み立てが素晴らしかった。
完敗と言っていいだろう。

第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 瀬戸熊直樹

「B卓」

沢崎誠、望月雅継、前田直哉、安村浩司の4人の決勝を賭けた熾烈な戦いも
4回戦(全5回戦)を終えていた。

トータルポイント
前田+42.1P  安村▲3.5P  望月▲18.5P  沢崎▲21.1P
残り1回という事を考えれば、前田は、ほぼ当確で、残り一枠を3人で争う事となった。

ベスト8で負けることは、決勝で負けるよりもつらいと僕は思っている。

特に若い安村と、タイトルのない前田にとっては、絶対に負けられない戦い。
前田の心は、今非常に軽くなっているだろう。
逆に安村は、不安と戦っているはずだ。
何しろ追ってくる相手は、沢崎と望月なのだから。

しかし、冷静に見れば安村にも勝機は充分にあった。
この日の沢崎は、とにかく後手に回っていた。俗に言う、全く手が入らない状況。
それを技術だけでここまでのポイント差にまとめていた。

対称的に望月は好調だったが、途中望月らしからぬイージーミスで、この混戦を招いていた。

あとは安村がどう腹をくくれるかだ。

事件は、東2局に訪れる。

親は望月、受け取った配牌は、

七万八万九万二索三索四索五索六索七索八索九索三筒白白  ドラ七万

テンパイしている。まさにこの上ない配牌。
当然のダブリ―。安村は心の中で何を思っただろうか。
キチンと「4,000オール」と言われた時の気持ちを作っていただろうか。

5巡目、安目とは言え四索をツモリ、あっさり安村を追い抜く。
このアガリで、ここからはセオリーとばかりに畳み掛ける望月。
その後も親番を維持して持ち点を47,900まで伸ばす。
安村と沢崎は、22,000点前後となる。

望月と沢崎は、着順勝負。
望月と安村は、望月トップで安村が沈みなら、3,000点だけ点差をつければいい。
安村が浮いても、望月は11,000点差をつければ勝ち。
この時点で、安村は最低2回の満貫クラスのアガリが必要となった。

局は消化され、沢崎の親、安村の親が簡単に落ちて、南場に入る。
前田は余裕があり、着実に小さいアガリを拾い、原点復帰していた。

そして南2局、2度目の望月の親番。
11巡目、後がない南家・沢崎がリーチ。

二万三万四万五索五索八索八索八索六筒七筒  暗カン牌の背七万 上向き七万 上向き牌の背  ドラ七筒

同巡、西家・安村もリーチ。

二万三万五万五万五万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ

北家、前田も前に出る。

八万九万一索一索一索六索七索七筒八筒北北白白

ここから、安村の宣言牌五索をチーして、打九万

望月はオリ。沢崎ツモ切り、安村のツモは五万。暗カン。そしてリンシャンから持って来た牌は一万
安村にとって値千金のアガリとなった。このアガリで再びトータル2着になる。

南2局の沢崎の親は、前田が1,000点で落とし、オーラスを迎える。

オーラスの持ち点は、
安村32,700  前田30,500  望月39,200  沢崎17,600

安村が浮いている為、望月は3,900点以上のアガリ、もしくは800・1,600ツモ。
また、望月1人テンパイは届かないが、安村ノーテンで、前田、望月の2人テンパイなら、望月の勝ち。
親の安村としても、手を組んでいかなければならない状況で始まった。

望月が8巡目、運命の選択を迫られる。

五万六万七万六索八索一筒二筒三筒四筒五筒五筒七筒九筒  ツモ六筒  ドラ四筒

僕の直観は打九筒。しかし望月の選択は打八索。次巡ツモ八索。痛恨のテンパイ逃し。
巡目が深くなり、前田が役なしテンパイ。
安村、望月が1シャンテンのまま、各自ツモは2回。
前田が打ちきれない牌を持ってきて、ノーテンに戻したとたん、望月にテンパイが入る。

五万六万七万六索一筒一筒二筒三筒四筒五筒五筒六筒七筒  ツモ三筒

本来なら、望月のアガリとなっていた三筒
残すツモは、あと1回ずつ。望月のツモはアガリ牌ではなく、ツモ切り。
安村の勝ちが見えてきたが、今度は、テンパイしない牌を、持ってこなければならないという条件が入っている。(前田のノーテンを安村が見抜いていたかは、微妙なので、テンパイすれば、宣言の可能性があった)

勝利の女神は安村に微笑んだ。

勝ち上がり 前田直哉 安村浩司

安村に焦点をあてたレポートとなったが、若い安村にアドバイスを1つ贈りたい。

解説中もコメントで「熊、激辛」などと言われたが、安村は非常に期待している若手の1人である。
もし安村がワンステップ上を目指すなら、足りないものは「覚悟」である。

一次予選から勝ち上がったその戦いぶりを観ていると、状況判断、打牌選択はどれもクレバーで好感が持てる。でも競った時の打牌は全て「保留」しているチョイスが目立っていた。

「負けられない戦い」だからこそ、そこに「覚悟をもった、魂を込めた打牌」を今後見せてもらいたい。
そういう戦いが必ず道を開く。せっかく良い物を持っているのだから。
そして若さは、その「勇気」が許されるのだから。

グランプリ レポート/第4期麻雀グランプリMAXベスト8レポート 瀬戸熊直樹

「B卓」
沢崎誠、望月雅継、前田直哉、安村浩司の4人の決勝を賭けた熾烈な戦いも
4回戦(全5回戦)を終えていた。
トータルポイント
前田+42.1P  安村▲3.5P  望月▲18.5P  沢崎▲21.1P
残り1回という事を考えれば、前田は、ほぼ当確で、残り一枠を3人で争う事となった。
ベスト8で負けることは、決勝で負けるよりもつらいと僕は思っている。
特に若い安村と、タイトルのない前田にとっては、絶対に負けられない戦い。
前田の心は、今非常に軽くなっているだろう。
逆に安村は、不安と戦っているはずだ。
何しろ追ってくる相手は、沢崎と望月なのだから。
しかし、冷静に見れば安村にも勝機は充分にあった。
この日の沢崎は、とにかく後手に回っていた。俗に言う、全く手が入らない状況。
それを技術だけでここまでのポイント差にまとめていた。
対称的に望月は好調だったが、途中望月らしからぬイージーミスで、この混戦を招いていた。
あとは安村がどう腹をくくれるかだ。
事件は、東2局に訪れる。
親は望月、受け取った配牌は、
七万八万九万二索三索四索五索六索七索八索九索三筒白白  ドラ七万
テンパイしている。まさにこの上ない配牌。
当然のダブリ―。安村は心の中で何を思っただろうか。
キチンと「4,000オール」と言われた時の気持ちを作っていただろうか。
5巡目、安目とは言え四索をツモリ、あっさり安村を追い抜く。
このアガリで、ここからはセオリーとばかりに畳み掛ける望月。
その後も親番を維持して持ち点を47,900まで伸ばす。
安村と沢崎は、22,000点前後となる。
望月と沢崎は、着順勝負。
望月と安村は、望月トップで安村が沈みなら、3,000点だけ点差をつければいい。
安村が浮いても、望月は11,000点差をつければ勝ち。
この時点で、安村は最低2回の満貫クラスのアガリが必要となった。
局は消化され、沢崎の親、安村の親が簡単に落ちて、南場に入る。
前田は余裕があり、着実に小さいアガリを拾い、原点復帰していた。
そして南2局、2度目の望月の親番。
11巡目、後がない南家・沢崎がリーチ。
二万三万四万五索五索八索八索八索六筒七筒  暗カン牌の背七万 上向き七万 上向き牌の背  ドラ七筒
同巡、西家・安村もリーチ。
二万三万五万五万五万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ
北家、前田も前に出る。
八万九万一索一索一索六索七索七筒八筒北北白白
ここから、安村の宣言牌五索をチーして、打九万
望月はオリ。沢崎ツモ切り、安村のツモは五万。暗カン。そしてリンシャンから持って来た牌は一万
安村にとって値千金のアガリとなった。このアガリで再びトータル2着になる。
南2局の沢崎の親は、前田が1,000点で落とし、オーラスを迎える。
オーラスの持ち点は、
安村32,700  前田30,500  望月39,200  沢崎17,600
安村が浮いている為、望月は3,900点以上のアガリ、もしくは800・1,600ツモ。
また、望月1人テンパイは届かないが、安村ノーテンで、前田、望月の2人テンパイなら、望月の勝ち。
親の安村としても、手を組んでいかなければならない状況で始まった。
望月が8巡目、運命の選択を迫られる。
五万六万七万六索八索一筒二筒三筒四筒五筒五筒七筒九筒  ツモ六筒  ドラ四筒
僕の直観は打九筒。しかし望月の選択は打八索。次巡ツモ八索。痛恨のテンパイ逃し。
巡目が深くなり、前田が役なしテンパイ。
安村、望月が1シャンテンのまま、各自ツモは2回。
前田が打ちきれない牌を持ってきて、ノーテンに戻したとたん、望月にテンパイが入る。
五万六万七万六索一筒一筒二筒三筒四筒五筒五筒六筒七筒  ツモ三筒
本来なら、望月のアガリとなっていた三筒
残すツモは、あと1回ずつ。望月のツモはアガリ牌ではなく、ツモ切り。
安村の勝ちが見えてきたが、今度は、テンパイしない牌を、持ってこなければならないという条件が入っている。(前田のノーテンを安村が見抜いていたかは、微妙なので、テンパイすれば、宣言の可能性があった)
勝利の女神は安村に微笑んだ。
勝ち上がり 前田直哉 安村浩司
安村に焦点をあてたレポートとなったが、若い安村にアドバイスを1つ贈りたい。
解説中もコメントで「熊、激辛」などと言われたが、安村は非常に期待している若手の1人である。
もし安村がワンステップ上を目指すなら、足りないものは「覚悟」である。
一次予選から勝ち上がったその戦いぶりを観ていると、状況判断、打牌選択はどれもクレバーで好感が持てる。でも競った時の打牌は全て「保留」しているチョイスが目立っていた。
「負けられない戦い」だからこそ、そこに「覚悟をもった、魂を込めた打牌」を今後見せてもらいたい。
そういう戦いが必ず道を開く。せっかく良い物を持っているのだから。
そして若さは、その「勇気」が許されるのだから。

第10期北陸リーグ 第1節レポート

お初の方は初めまして。ご存知の方はご無沙汰しておりました。
第10期北陸リーグのレポートを担当させて戴きます22期生の荒谷と申します。
拙い文章ですが半年間のお付き合い、どうか宜しくお願い致します。

春の訪れは未だ遠く、雪混じりの冷たい雨が降りしきる3月9日、プロアマ総勢20名によって今期北陸リーグの火蓋は切って落とされた。
北陸リーグは、今期新たにルールが改定され、4節までの上位8名が翌月の準決勝に駒を進めることが出来る仕様となった。
準決勝はポイントをフラットにした状態で半荘を2回、そして各卓2名の勝ち上がりで、準決勝のポイントを持ち越した状態で半荘2回の決勝戦が行われる。

より短期戦に特化し、状態次第では一気に突き抜けることも、またその逆も往々に起こりうる今回のルールの改定。各人がその日の状態を早急に把握し、牌勢に見合った戦略を行使することが求められるリーグ戦と言えるのではないだろうか。

そんな、より立ち上がりの重要性が増した第1節、ポイントを叩いて首位に立ったのは光岡さん。
2、2、1、1のオールプラスで同卓者を圧倒。
ここまで9期行われている北陸リーグの参加者で、プロアマ通じて唯一、複数回優勝を経験している貫禄を見せ付ける形となった。

光岡さんの雀風は、自他共に認める受け麻雀。決して強引に攻めることなく、時には捌き、時には粘って勝負手をものにする腰の据わった打ち手である。今期も他のプロに一歩も引かず、優勝候補の一角となるだろう。

それを微差で追いかけるのが後藤。こちらも彼らしい攻撃的な打ち筋そのままに大物手を続けざまにアガリ、半荘1回で60Pを叩き出している。自らをトップラス麻雀と評する彼の攻撃力は、同じく打撃戦を身上とする私も見習うべき点は多い。

他のプロは私を含め大半が苦しい立ち上がりの中、濱平も好調な滑り出しを見せている。
決して良くは無い状態に加え、彼の卓は「面前大三元」と「面前緑一色」という、めったにお目にかかれないような手が連発する荒れ場。その場況に耐え忍ぶのではなく、自ら強引に流れを掴みに行く打牌で、ラス2回ながらもトップ2回の素点差で荒れ場を制している。

今期は8位までに入れば準決勝に進めるということもあり、最終節まで全員にチャンスはあるだろう。
短期戦ながらも、私を含めたプロにとっては準決勝をノルマとして頑張って貰いたい。

また、最後になるが、冒頭で述べたように短期戦はその日の体勢の把握と、状況に即した立ち回りが要求される。それを充分理解した上で、打撃戦を旨とする私の雀風を貫く事ができるかどうか。個人的な楽しみも内包し、今期を戦い抜きたいと思う。

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計
1 光岡大幸 一般 65.8 65.8
2 後藤正博 プロ 64.1 64.1
3 森田有一 一般 51.1 51.1
4 北川光 一般 50.8 50.8
5 押川憲一 一般 43.3 43.3
6 窪田一彦 一般 33.9 33.9
7 濱平光朗 プロ 26.4 26.4
8 飯田輝雄 一般 10.5 10.5
9 安城るい プロ 7.2 7.2
10 森田繁基 一般 ▲ 3.3 ▲ 3.3
11 高村和人 一般 ▲ 11.8 ▲ 11.8
12 小川洋輔 一般 ▲ 20.2 ▲ 20.2
13 小泉陽平 一般 ▲ 24.3 ▲ 24.3
14 荒谷誠 プロ ▲ 26.3 ▲ 26.3
15 本田朋広 プロ ▲ 27.2 ▲ 27.2
16 四柳弘樹 プロ ▲ 34.4 ▲ 34.4
17 志多木健 一般 ▲ 36.2 ▲ 36.2
18 恵比須均 一般 ▲ 38.0 ▲ 38.0
19 松原健志 プロ ▲ 47.2 ▲ 47.2
20 清水裕 一般 ▲ 87.2 ▲ 87.2

北陸リーグ レポート/第10期北陸リーグ 第1節レポート

お初の方は初めまして。ご存知の方はご無沙汰しておりました。
第10期北陸リーグのレポートを担当させて戴きます22期生の荒谷と申します。
拙い文章ですが半年間のお付き合い、どうか宜しくお願い致します。
春の訪れは未だ遠く、雪混じりの冷たい雨が降りしきる3月9日、プロアマ総勢20名によって今期北陸リーグの火蓋は切って落とされた。
北陸リーグは、今期新たにルールが改定され、4節までの上位8名が翌月の準決勝に駒を進めることが出来る仕様となった。
準決勝はポイントをフラットにした状態で半荘を2回、そして各卓2名の勝ち上がりで、準決勝のポイントを持ち越した状態で半荘2回の決勝戦が行われる。
より短期戦に特化し、状態次第では一気に突き抜けることも、またその逆も往々に起こりうる今回のルールの改定。各人がその日の状態を早急に把握し、牌勢に見合った戦略を行使することが求められるリーグ戦と言えるのではないだろうか。
そんな、より立ち上がりの重要性が増した第1節、ポイントを叩いて首位に立ったのは光岡さん。
2、2、1、1のオールプラスで同卓者を圧倒。
ここまで9期行われている北陸リーグの参加者で、プロアマ通じて唯一、複数回優勝を経験している貫禄を見せ付ける形となった。
光岡さんの雀風は、自他共に認める受け麻雀。決して強引に攻めることなく、時には捌き、時には粘って勝負手をものにする腰の据わった打ち手である。今期も他のプロに一歩も引かず、優勝候補の一角となるだろう。
それを微差で追いかけるのが後藤。こちらも彼らしい攻撃的な打ち筋そのままに大物手を続けざまにアガリ、半荘1回で60Pを叩き出している。自らをトップラス麻雀と評する彼の攻撃力は、同じく打撃戦を身上とする私も見習うべき点は多い。
他のプロは私を含め大半が苦しい立ち上がりの中、濱平も好調な滑り出しを見せている。
決して良くは無い状態に加え、彼の卓は「面前大三元」と「面前緑一色」という、めったにお目にかかれないような手が連発する荒れ場。その場況に耐え忍ぶのではなく、自ら強引に流れを掴みに行く打牌で、ラス2回ながらもトップ2回の素点差で荒れ場を制している。
今期は8位までに入れば準決勝に進めるということもあり、最終節まで全員にチャンスはあるだろう。
短期戦ながらも、私を含めたプロにとっては準決勝をノルマとして頑張って貰いたい。
また、最後になるが、冒頭で述べたように短期戦はその日の体勢の把握と、状況に即した立ち回りが要求される。それを充分理解した上で、打撃戦を旨とする私の雀風を貫く事ができるかどうか。個人的な楽しみも内包し、今期を戦い抜きたいと思う。

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計
1 光岡大幸 一般 65.8 65.8
2 後藤正博 プロ 64.1 64.1
3 森田有一 一般 51.1 51.1
4 北川光 一般 50.8 50.8
5 押川憲一 一般 43.3 43.3
6 窪田一彦 一般 33.9 33.9
7 濱平光朗 プロ 26.4 26.4
8 飯田輝雄 一般 10.5 10.5
9 安城るい プロ 7.2 7.2
10 森田繁基 一般 ▲ 3.3 ▲ 3.3
11 高村和人 一般 ▲ 11.8 ▲ 11.8
12 小川洋輔 一般 ▲ 20.2 ▲ 20.2
13 小泉陽平 一般 ▲ 24.3 ▲ 24.3
14 荒谷誠 プロ ▲ 26.3 ▲ 26.3
15 本田朋広 プロ ▲ 27.2 ▲ 27.2
16 四柳弘樹 プロ ▲ 34.4 ▲ 34.4
17 志多木健 一般 ▲ 36.2 ▲ 36.2
18 恵比須均 一般 ▲ 38.0 ▲ 38.0
19 松原健志 プロ ▲ 47.2 ▲ 47.2
20 清水裕 一般 ▲ 87.2 ▲ 87.2

第25期チャンピオンズリーグ優勝特別インタビュー:森岡 貞臣

先日、第25期チャンピオンズリーグ優勝を成し遂げた森岡貞臣プロ。
小雨の降る平日。インタビューのため千葉駅で落ち合った。

西川「森岡さん、あらためまして、この度はチャンピオンズリーグ優勝おめでとうございます!仕事の後でお疲れでしょうに時間をとっていただき感謝です。」

森岡「いやいや、こちらこそありがとう。こうやって話を聞いてくれるのは嬉しいことだよ。」

西川「先日の祝勝会はごちそうさまでした!全部おごってもらっちゃって。みんなに『社長!』ってずっと言われてましたね(笑)。あの時は大勢いたし、じっくり話を聞くことができなかったので、今日は長く落ち着けるファミレスでインタビューしたいんですが良いですか?」

森岡「うん、いいよ~いいよ~。」

西川「あれ~?ここ、異様に混んでますね、すごい順番待ちだ。ちょっと腹減ってるんで、もう少し先の寿司屋で先につまんでもいいですかね!?」

森岡「うん、いいよ~いいよ~。人間、我慢はいけないからね。何事も本能に忠実に生きた方がうまくいくし、食べたい時に食べたいモノを食べるのが長生きできるそうだよ~。」

西川「ほ、本能…そ、そうですか(汗)ではお言葉に甘えて、雨だけど移動ってことで。」

28期生と連盟では新人だが、都内の大手ソフトウェア会社に勤める49歳。
この歳になってからのプロ入りはほとんど例がなく、プロ連盟のなかでかなり異色の経歴といえるだろう。
千葉で開催している勉強会でいつも一緒しているが、面倒見のよい兄貴肌でムードメーカー。周囲にはいつも笑いがある。
趣味は将棋と占い。
このインタビューの中でも再三繰り返されるように運命論とか流れの話が大好き。

100

祝勝会の様子

100

後日インタビュー2回目の様子の森岡プロ(右)

西川「さて、と。早速ですが。今回の藤原プロの観戦記、前例のないダメ出しの連続でしたね(笑)」

森岡「いやーホントにそうだねぇ。でも感謝しております。麻雀において注意してくれる方が周囲には居なくて。滅多に負けないし、年上の人が少なくて叱ってくれる人はいないから。ありがたいことです。」

西川「そんなに勝ってるんですか?」

森岡「そうだねー。スコアを全部公開しているけど、今年の平均順位率は2.15くらいだからね。」

西川「2.15!? 麻雀の数字じゃないですね。よく嫌われませんね(笑)」

森岡「いやいや…まあ、決勝は実際ヒドイ内容だったからね。牌譜は後で何回もみたけど、オレこんなに下手やったんだ!?ってのばかりだったしね。」

西川「うーん…でも優勝したからには何かの理由があったはず。今日はそこらへんをじっくり聞かせてもらいますよ!」

西川「まずは前週に決勝進出がきまってからの入り方ですが・・・」

森岡「準決勝(トーナメント)が激戦だったので、その後2、3日、体がガタっときたからね。体調を戻し、維持することに努めたよ。」

西川「あの準決はレポートを書かせてもらいましたが、猛者相手に1日に9回戦と本当にタフでしたものね。」

森岡「そうだったよね。その後は、決勝戦で勝つ為のシミュレーションを何度も繰り返したよ。良い状態のときのパターン、悪いときのパターンとね。プロ入りする前から競技麻雀は好きだったので、幸い決勝戦というものは何度も観戦してきた。だから優勝者のパターンってのがなんとなくわかっていたからね。優勝だけを考えてイメージトレーニングをした。」

西川「そうだったんですか…具体的には?」

森岡「とにかく優勝以外はいらない。2位も3位も同じ。そのために『常に前に出る』。『逃げない姿勢を貫く』。決勝卓ではそういう人に勝負の女神は微笑むんだと思ってました。」

西川「ふむ…それで当日は緊張もなくいけました?」

森岡「あの日、関東は大雪で大変だったじゃない?交通機関がマヒしていて。いつもよりかなり早い時間に出たんだけど、途中で電車が動かなくなって対局に間に合うかどうか、危なかったんだ。」

西川「そうだったんですか!?」

森岡「だからそのときは神様に祈ったね(笑)1回戦は大ラスでいい。お願いだから対局させてくれ~ってね。だから、ギリギリ間に合った時はツイてるって思ったよ。」

西川「あはは、気持ちわかります。」

森岡「そんな感じだから緊張どころではなかったんだけど、そういう感じで始まった例の1回戦東1局(下図参照)だったんだよね。あの二万を切っての放銃は相手をなめていたのかもしれないね。」

gpmax2012

西川「そうですね。あれは森岡プロらしくない打牌ですね。私もあれをみたら(森岡さんの)優勝はない、って思っちゃうかも。」

森岡「気持ちもまだ入りきってなかったんだろうね。それから、小町プロの手出し六筒ピンがずっと引っ掛かっていて、ホンイツでこれ当たるの?って確認したかった意識もあって。勿論、甘い打牌であることは間違いない。だけど、5回戦は長丁場。1回戦の開局で、目を覚ます意味でも良かったんだと思う。さぁ、これからは気持ちを引き締めて頑張ろう!って小町プロに気持ち良く8千点を支払ったこともよく覚えてる。これからが、私の決勝戦!全力で行くぞ~って思えたんだよね。」

西川「……めちゃめちゃポジティブですね(笑)そういえば、トーナメントの時も、開始から放銃が続いても全く揺れてない感じでしたものね。大事なところで四暗刻をツモられ親かぶりしても表情が死んでなかったからホント感心したんですよ。ああいう姿勢は見習うところが多いと思うなあ。」

森岡「2回戦が終わった時点でトータルがちょうどプラスマイナスゼロになったんだけど、これだけ下手うってるのにチャラかい?オレ、ツイてる~♪って。」

西川「とことん前向きですね(汗)」

何事も状況を悲観せず前向きに取り組むのが森岡プロの強みかも知れない。

森岡「ただ状態は本当に悪かったからね。自分の勝ちパターンとは程遠かった。だから状態を上げよう、上げよう、と必死だったよ。」

西川「たしかにしっくりこない展開が続きましたよね。で、状態ってどうやって上げるんですか?」

森岡「状態が悪い時に、その状態を好転させる戦術として、鳴き仕掛けあるいはリーチだと思っているので、とにかくリーチをした。局面を直線的ではなく曲線的に歪ませるのが目的のリーチってことです。」

西川「ほう~また難しい話をしますね。実際2回戦終了までだけで8回もリーチを打ってますね」

森岡「そうそう。2回戦までは状態を好転させる為に、意識してリーチを打って相手を前に出させないようにしたんだ。普段ならばAルールでタブーのピンフドラ無しのリーチも打ったはず。(笑) それで3回戦東4局の『これアガれちゃうの?』という7,700点の不思議なアガリで、ようやく波に乗りかかった感じがしたんだよね。逆に状態が良くなりつつあると感じていた4回戦南4局4本場(下図参照)は、メンゼンを貫こうと決めていた。だから六万八万も鳴かない。感性が四暗刻だといってたこともある。それから、総合ポイントでも、この時点で僅差の2着という意識もあって一発を狙ったんだよね。まぁ、実際にはテンパイすら出来なかったけど、優勝を狙うが故の判断だったので後悔はしてないよ。」

西川「あれ(山中プロの六万)は鳴きたい場面だものなあ。私なら絶対鳴くな。森岡プロはそういう信念のもと戦ってたんですね。」

gpmax2012

独特の麻雀観で組み立てていく森岡プロのゲームプランは、どこかしら連盟の重鎮たちの訓えとかぶるところがある。その自分の考えにしっかり寄り添えるところに森岡プロの真髄があるのかもしれない。

森岡「いずれにしても、最後の最後まで完全な状態にはならなくてずっと苦しいままだったよ。だからとにかく無我夢中で本能のまま集中して打つことを心掛けたなあ。これだけ出し切った5回戦ってのはかつてなくて・・・。現時点の私の良い面・悪い面もすべてが凝縮された決勝の5回戦だったなと牌譜をあとで見て思います。ただね、私はよっぽど勝ちたかったんでしょうねぇ・・・(笑)。勝ちたいが為に余裕がなくミスも多かった。そして、優勝したあと、勝つ事がこんなに大変なことだったんだって心から思ったよ。」

西川「ほんとうに全身全霊で打ち切ったんですね」

森岡「そうだねえ、これは戦前から意識していたことだけど、優勝するためには下手と思われても良いから、自分の考える『強い麻雀』を打ち切ろう!と決めていた。めったにないチャンスだから後悔したくなかったからね。」

西川「なんとなく森岡プロの強さが見えてきた気がしました。それで栄冠を勝ち取って、いまの気持ちはどうですか?」

森岡「まずは、貴重な休みに応援に駆けつけてくれた会社の同僚や仲間、そしていつも楽しく厳しく勉強会をしている仲間に感謝だなあ。うん、ああいうもののおかげだなあ。」

西川「私も森岡さんが獲ってくれて嬉しい限りです。」

森岡「あとはあれかなあ。決勝戦ってのは良いものだよね。牌譜をとってくれて、普段味わえない感覚を経験できて、注目を浴びて…いっぱい良いことがあるよね。」

西川「ということは?次の目標は…」

森岡「また、タイトル戦の決勝に出たい。そして2つ目のタイトルを獲りたいですね~!」

西川「じゃあ、次はタイトルホルダーとしてみられる戦いになりますねっ。そうだ、ちゃんとロン2やってくださいよー。」

森岡「あ~やりたいし、やろうと思ってるんだけどね・・・毎日、日中ずっとパソコンとにらめっこしている仕事なのでPCが嫌で嫌でしかたないんだよね~自宅ではもう画面は見たくないっみたいな。」

西川「わかります…わかりますけど、連盟のタイトル獲ってそれではイカンでしょ(笑)インタビューに書きますからねっ。森岡さんの麻雀がどういうものか色んな方々に見ていただきましょう。いいですか!?」

森岡「わかった、わかったよ~。 そうだなあ。あのあとグランプリMAXを戦って魚谷侑未プロと佐々木寿人プロに負けたんだけど、まだまだ強くならないといけないな~って決意したんだよね。こういう気持ちにさせてくれたプロ連盟に入れて本当に良かった。これからも努力して強くなっていきます!」

西川「はい、お願いします。今日はありがとうございました。」

森岡「ありがとうございました。」

いつも笑顔で物腰が柔らかく人懐っこい森岡プロの麻雀は、「人間が打っている」と感じさせる人間味あふれる魅力的なものだった。
仕事が忙しく30代のころは全く麻雀ができなかったという森岡プロは、いまは勤めをこなす傍ら、人生のなかで一番麻雀を打っているといい、麻雀を楽しんでいるという。今後はますますパワーアップしていくことだろう。このスタイルは日々仕事に追われ疲れ切っている日本のサラリーマンにとっては一つの生き方のヒントになるのではないだろうか?と思うほどイキイキとしていたのだった。
森岡プロの今後の活躍に期待したい。

プロ雀士インタビュー/第25期チャンピオンズリーグ優勝特別インタビュー:森岡 貞臣

先日、第25期チャンピオンズリーグ優勝を成し遂げた森岡貞臣プロ。
小雨の降る平日。インタビューのため千葉駅で落ち合った。
西川「森岡さん、あらためまして、この度はチャンピオンズリーグ優勝おめでとうございます!仕事の後でお疲れでしょうに時間をとっていただき感謝です。」
森岡「いやいや、こちらこそありがとう。こうやって話を聞いてくれるのは嬉しいことだよ。」
西川「先日の祝勝会はごちそうさまでした!全部おごってもらっちゃって。みんなに『社長!』ってずっと言われてましたね(笑)。あの時は大勢いたし、じっくり話を聞くことができなかったので、今日は長く落ち着けるファミレスでインタビューしたいんですが良いですか?」
森岡「うん、いいよ~いいよ~。」
西川「あれ~?ここ、異様に混んでますね、すごい順番待ちだ。ちょっと腹減ってるんで、もう少し先の寿司屋で先につまんでもいいですかね!?」
森岡「うん、いいよ~いいよ~。人間、我慢はいけないからね。何事も本能に忠実に生きた方がうまくいくし、食べたい時に食べたいモノを食べるのが長生きできるそうだよ~。」
西川「ほ、本能…そ、そうですか(汗)ではお言葉に甘えて、雨だけど移動ってことで。」
28期生と連盟では新人だが、都内の大手ソフトウェア会社に勤める49歳。
この歳になってからのプロ入りはほとんど例がなく、プロ連盟のなかでかなり異色の経歴といえるだろう。
千葉で開催している勉強会でいつも一緒しているが、面倒見のよい兄貴肌でムードメーカー。周囲にはいつも笑いがある。
趣味は将棋と占い。
このインタビューの中でも再三繰り返されるように運命論とか流れの話が大好き。

100

祝勝会の様子

100

後日インタビュー2回目の様子の森岡プロ(右)

西川「さて、と。早速ですが。今回の藤原プロの観戦記、前例のないダメ出しの連続でしたね(笑)」
森岡「いやーホントにそうだねぇ。でも感謝しております。麻雀において注意してくれる方が周囲には居なくて。滅多に負けないし、年上の人が少なくて叱ってくれる人はいないから。ありがたいことです。」
西川「そんなに勝ってるんですか?」
森岡「そうだねー。スコアを全部公開しているけど、今年の平均順位率は2.15くらいだからね。」
西川「2.15!? 麻雀の数字じゃないですね。よく嫌われませんね(笑)」
森岡「いやいや…まあ、決勝は実際ヒドイ内容だったからね。牌譜は後で何回もみたけど、オレこんなに下手やったんだ!?ってのばかりだったしね。」
西川「うーん…でも優勝したからには何かの理由があったはず。今日はそこらへんをじっくり聞かせてもらいますよ!」
西川「まずは前週に決勝進出がきまってからの入り方ですが・・・」
森岡「準決勝(トーナメント)が激戦だったので、その後2、3日、体がガタっときたからね。体調を戻し、維持することに努めたよ。」
西川「あの準決はレポートを書かせてもらいましたが、猛者相手に1日に9回戦と本当にタフでしたものね。」
森岡「そうだったよね。その後は、決勝戦で勝つ為のシミュレーションを何度も繰り返したよ。良い状態のときのパターン、悪いときのパターンとね。プロ入りする前から競技麻雀は好きだったので、幸い決勝戦というものは何度も観戦してきた。だから優勝者のパターンってのがなんとなくわかっていたからね。優勝だけを考えてイメージトレーニングをした。」
西川「そうだったんですか…具体的には?」
森岡「とにかく優勝以外はいらない。2位も3位も同じ。そのために『常に前に出る』。『逃げない姿勢を貫く』。決勝卓ではそういう人に勝負の女神は微笑むんだと思ってました。」
西川「ふむ…それで当日は緊張もなくいけました?」
森岡「あの日、関東は大雪で大変だったじゃない?交通機関がマヒしていて。いつもよりかなり早い時間に出たんだけど、途中で電車が動かなくなって対局に間に合うかどうか、危なかったんだ。」
西川「そうだったんですか!?」
森岡「だからそのときは神様に祈ったね(笑)1回戦は大ラスでいい。お願いだから対局させてくれ~ってね。だから、ギリギリ間に合った時はツイてるって思ったよ。」
西川「あはは、気持ちわかります。」
森岡「そんな感じだから緊張どころではなかったんだけど、そういう感じで始まった例の1回戦東1局(下図参照)だったんだよね。あの二万を切っての放銃は相手をなめていたのかもしれないね。」
gpmax2012
西川「そうですね。あれは森岡プロらしくない打牌ですね。私もあれをみたら(森岡さんの)優勝はない、って思っちゃうかも。」
森岡「気持ちもまだ入りきってなかったんだろうね。それから、小町プロの手出し六筒ピンがずっと引っ掛かっていて、ホンイツでこれ当たるの?って確認したかった意識もあって。勿論、甘い打牌であることは間違いない。だけど、5回戦は長丁場。1回戦の開局で、目を覚ます意味でも良かったんだと思う。さぁ、これからは気持ちを引き締めて頑張ろう!って小町プロに気持ち良く8千点を支払ったこともよく覚えてる。これからが、私の決勝戦!全力で行くぞ~って思えたんだよね。」
西川「……めちゃめちゃポジティブですね(笑)そういえば、トーナメントの時も、開始から放銃が続いても全く揺れてない感じでしたものね。大事なところで四暗刻をツモられ親かぶりしても表情が死んでなかったからホント感心したんですよ。ああいう姿勢は見習うところが多いと思うなあ。」
森岡「2回戦が終わった時点でトータルがちょうどプラスマイナスゼロになったんだけど、これだけ下手うってるのにチャラかい?オレ、ツイてる~♪って。」
西川「とことん前向きですね(汗)」
何事も状況を悲観せず前向きに取り組むのが森岡プロの強みかも知れない。
森岡「ただ状態は本当に悪かったからね。自分の勝ちパターンとは程遠かった。だから状態を上げよう、上げよう、と必死だったよ。」
西川「たしかにしっくりこない展開が続きましたよね。で、状態ってどうやって上げるんですか?」
森岡「状態が悪い時に、その状態を好転させる戦術として、鳴き仕掛けあるいはリーチだと思っているので、とにかくリーチをした。局面を直線的ではなく曲線的に歪ませるのが目的のリーチってことです。」
西川「ほう~また難しい話をしますね。実際2回戦終了までだけで8回もリーチを打ってますね」
森岡「そうそう。2回戦までは状態を好転させる為に、意識してリーチを打って相手を前に出させないようにしたんだ。普段ならばAルールでタブーのピンフドラ無しのリーチも打ったはず。(笑) それで3回戦東4局の『これアガれちゃうの?』という7,700点の不思議なアガリで、ようやく波に乗りかかった感じがしたんだよね。逆に状態が良くなりつつあると感じていた4回戦南4局4本場(下図参照)は、メンゼンを貫こうと決めていた。だから六万八万も鳴かない。感性が四暗刻だといってたこともある。それから、総合ポイントでも、この時点で僅差の2着という意識もあって一発を狙ったんだよね。まぁ、実際にはテンパイすら出来なかったけど、優勝を狙うが故の判断だったので後悔はしてないよ。」
西川「あれ(山中プロの六万)は鳴きたい場面だものなあ。私なら絶対鳴くな。森岡プロはそういう信念のもと戦ってたんですね。」
gpmax2012
独特の麻雀観で組み立てていく森岡プロのゲームプランは、どこかしら連盟の重鎮たちの訓えとかぶるところがある。その自分の考えにしっかり寄り添えるところに森岡プロの真髄があるのかもしれない。
森岡「いずれにしても、最後の最後まで完全な状態にはならなくてずっと苦しいままだったよ。だからとにかく無我夢中で本能のまま集中して打つことを心掛けたなあ。これだけ出し切った5回戦ってのはかつてなくて・・・。現時点の私の良い面・悪い面もすべてが凝縮された決勝の5回戦だったなと牌譜をあとで見て思います。ただね、私はよっぽど勝ちたかったんでしょうねぇ・・・(笑)。勝ちたいが為に余裕がなくミスも多かった。そして、優勝したあと、勝つ事がこんなに大変なことだったんだって心から思ったよ。」
西川「ほんとうに全身全霊で打ち切ったんですね」
森岡「そうだねえ、これは戦前から意識していたことだけど、優勝するためには下手と思われても良いから、自分の考える『強い麻雀』を打ち切ろう!と決めていた。めったにないチャンスだから後悔したくなかったからね。」
西川「なんとなく森岡プロの強さが見えてきた気がしました。それで栄冠を勝ち取って、いまの気持ちはどうですか?」
森岡「まずは、貴重な休みに応援に駆けつけてくれた会社の同僚や仲間、そしていつも楽しく厳しく勉強会をしている仲間に感謝だなあ。うん、ああいうもののおかげだなあ。」
西川「私も森岡さんが獲ってくれて嬉しい限りです。」
森岡「あとはあれかなあ。決勝戦ってのは良いものだよね。牌譜をとってくれて、普段味わえない感覚を経験できて、注目を浴びて…いっぱい良いことがあるよね。」
西川「ということは?次の目標は…」
森岡「また、タイトル戦の決勝に出たい。そして2つ目のタイトルを獲りたいですね~!」
西川「じゃあ、次はタイトルホルダーとしてみられる戦いになりますねっ。そうだ、ちゃんとロン2やってくださいよー。」
森岡「あ~やりたいし、やろうと思ってるんだけどね・・・毎日、日中ずっとパソコンとにらめっこしている仕事なのでPCが嫌で嫌でしかたないんだよね~自宅ではもう画面は見たくないっみたいな。」
西川「わかります…わかりますけど、連盟のタイトル獲ってそれではイカンでしょ(笑)インタビューに書きますからねっ。森岡さんの麻雀がどういうものか色んな方々に見ていただきましょう。いいですか!?」
森岡「わかった、わかったよ~。 そうだなあ。あのあとグランプリMAXを戦って魚谷侑未プロと佐々木寿人プロに負けたんだけど、まだまだ強くならないといけないな~って決意したんだよね。こういう気持ちにさせてくれたプロ連盟に入れて本当に良かった。これからも努力して強くなっていきます!」
西川「はい、お願いします。今日はありがとうございました。」
森岡「ありがとうございました。」
いつも笑顔で物腰が柔らかく人懐っこい森岡プロの麻雀は、「人間が打っている」と感じさせる人間味あふれる魅力的なものだった。
仕事が忙しく30代のころは全く麻雀ができなかったという森岡プロは、いまは勤めをこなす傍ら、人生のなかで一番麻雀を打っているといい、麻雀を楽しんでいるという。今後はますますパワーアップしていくことだろう。このスタイルは日々仕事に追われ疲れ切っている日本のサラリーマンにとっては一つの生き方のヒントになるのではないだろうか?と思うほどイキイキとしていたのだった。
森岡プロの今後の活躍に期待したい。

第4期麻雀グランプリMAXベスト16レポート

「麻雀グランプリMAX」
それは、日本プロ麻雀連盟のオールスター戦とも置き換えることが出来るのではないだろうか。
オールスター戦というとお祭り感があるかもしれないがそれとも違う。
今年度活躍したプロが一同に介し、その頂点を競う。
戦績次第では入会間もない若手にもそのチャンスは存分にある。
そんな夢のようなタイトル戦。

実力、勢いを持った者たちで行われた1次、2次予選を勝ち抜いた10名。
ベスト16からは、前原雄大(前年度グランプリMAX優勝)、藤崎智(鳳凰位)、瀬戸熊直樹(十段位)、森下剛任(王位)、小車翔(マスターズ)、沢崎誠(ポイントランキング1位)、以上の6名がシード選手として出場し、タイトル戦は更に熱を帯びてゆく。

勝ち上がり条件は半荘5回戦を行い、成績上位2名がベスト8へ進出する。

 

A卓 前原雄大×前田直哉×杉浦勘助×魚谷侑未

1回戦(起家から、前田・前原・杉浦・魚谷)

前年度麻雀グランプリMAXを制した前原を中心とした展開が予想されるA卓。
東場は穏やかな展開が続く。
南場に入り、その均衡を破ったのは前田。

南2局14巡目
北家・前田

二万二万四万四万四万四索五索七索七索中  暗カン牌の背二筒 上向き二筒 上向き牌の背  ドラ四索

ここから二万をポンして三索六索待ち。
16巡目に七索をツモリドラ単騎に待ちかえ。
次巡四索を引き当て、3,000・6,000。
ここまで我慢を重ねた前田の大きなアガリ。

この時、杉浦は以下のテンパイ。

六万六万二索三索四索四索五索六索三筒四筒五筒七筒八筒

前田のツモった四索を見て何を思うか。
次局、親の杉浦は1シャンテンからドラの中をリリース。

南3局6巡目
東家・杉浦

三万三万四万八万八万二索三索四索五筒六筒七筒八筒中  ツモ九筒  打中  ドラ中

このドラを前巡重ねた前田がポンしてテンパイ。

西家・前田

四万五万六万四索五索六索五筒六筒東東  ポン中中中

山に5枚残りの四筒七筒を9巡目にツモアガリ、2,000・3,900。
南4局、親の魚谷が前原から2,000点をアガリ点棒状況は以下の通り。

前田46,300 前原19,700 杉浦21,800 魚谷32,200

南4局1本場、親の魚谷が三色確定のリーチ。
東家・魚谷 6巡目

四万四万五万六万七万五索七索五筒六筒七筒西西西  リーチ  ドラ二索

これをツモリ4,000オール。
一気に前田を抜き去りトップ目に立つ。
ここまで元気のない前原。次局、ドラトイツの手牌を積極的に仕掛ける。

南4局2本場
西家・前原

五索六索七索七索六筒七筒八筒  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  チー三万 左向き四万 上向き五万 上向き  ドラ七索

魚谷、前田の仕掛けを掻い潜りドラの七索を引き当て2,000・3,900。
前原のアガリへの執念を感じた一局となった。

1回戦成績
魚谷+18.4P 前田+14.1P 前原▲10.1P 杉浦▲22.4P

2回戦、3回戦は前原が持ち前の攻撃力を見せつけ連勝。
前田、魚谷も食らいつく。苦しいのは杉浦。

3回戦終了時
前原+30.9P 前田+20.8P 魚谷+8.3P 杉浦▲60.0P

4回戦(起家から、前原・前田・魚谷・杉浦)

東1局で前田が2,000・4,000をツモアガリ一歩リードする。
後がない杉浦。この4回戦はトップが絶対条件。
杉浦は小さいながらアガリを積み重ね、微差のトップ目で迎えた南3局。

選択肢の多い手牌を丁寧に仕上げ前原から6,400。

南3局
南家・杉浦

一万一万二万二万三万九万九万九万七筒八筒九筒発発  ロン三万  ドラ三筒

この日初めての本手をアガる。迎えたオーラスの親番。
淀みない手順で仕上げた手牌。5回戦に望みを繋ぐ大きな4,000オール。

南4局
東家・杉浦

八万八万二索三索四索五索六索七索二筒三筒四筒六筒七筒  リーチ  ツモ八筒  ドラ五索

4回戦終了時
前田+29.4P 前原+6.6P 魚谷▲7.9P 杉浦▲28.1P

最終戦(起家から、前田・杉浦・魚谷・前原)

魚谷、杉浦は前に出るしかない。もちろん前田、前原も安心はできない。
東1局、魚谷が1,300・2,600をツモアガリ先制。魚谷は更に攻める。
東2局1本場では積極的に仕掛けるも、親の杉浦に7,700の放銃。
続く2本場ではピンフをアガリ嫌な流れを断ち切る。
迎えた親番

東3局6巡目
東家・魚谷

一万一万二万三万四万五万六万七万七索八索一筒二筒三筒  リーチ  ドラ二筒

このリーチを12巡目にツモアガリ2,600オール。
魚谷はこの時点トータルポイントで前原を抜き去る。
こうなっては引けない前原、小さなアガリを重ねる。
そして杉浦も食い下がる。

南3局を迎え、ここまでのトータルポイントに現在の持ち点を加味すると
前田+8.4P 前原+1.6P 魚谷+1.1P 杉浦▲11.1P
となり、全員に勝ち上がりの可能性がある。
そして全員の手がぶつかる。

東家・魚谷7巡目。

七万八万九万二索三索四索七索七索四筒五筒  ポン中中中  ドラ西

南家・前原7巡目。

三万三万五索六索七索一筒三筒六筒七筒八筒白白白  リーチ

西家・前田9巡目。

四万四万四万五索六索八索八索五筒六筒七筒  ポン西西西

3者テンパイのこの状況、軍配は・・・前原。
価値ある大きな1,300・2,600。

オーラスでは魚谷、杉浦ともに条件をクリアーするリーチをかけるも流局での幕切れとなった。

最終戦終了時
前原+10.3P 前田+1.6P 魚谷▲2.0P 杉浦▲11.9P 供託+2.0P

勝ち上がり 前原雄大 前田直哉

 

B卓 藤崎智×四柳弘樹×中村毅×安村浩司

1回戦(起家から、四柳・中村・藤崎・安村)

鳳凰位藤崎の登場。1回戦からその力を見せつける。

東1局
西家・藤崎6巡目。

四万五万二索三索四索一筒二筒三筒四筒五筒八筒白白  ツモ六万  打八筒  ドラ八索

これをヤミテンに構える。
次巡、白を暗刻にし五筒切りリーチ。更に9巡目に白を暗カン。
14巡目にツモアガリ、2,000・3900。

次局も配牌は悪いながら丁寧な手順で1,300・2,600。

東2局、南家・藤崎。

五万六万七万九万九万三索四索三筒四筒五筒五筒六筒七筒  ツモ五索  ドラ九万

小さな点棒移動で迎えた南2局。中村に疑問手。
5巡目に安村が以下のリーチ。

南2局2本場
西家・安村

四万五万七万八万九万五筒六筒七筒東東南南南  リーチ  ドラ六索

対して親の中村が7巡目に追いつきヤミテン。

東家・中村

四万五万六万七万八万九万五索五索六索七索八索五筒六筒

14巡目、中村は五筒をツモり、現物の六筒切り。役なしテンパイに受けかえる。
15巡目、中村のツモは四筒。アガリ逃しとなったが、受けを考えてのヤミテンなら致し方ないか。
しかし中村はツモ切りリーチを選択。そして中村に訪れた最後のツモは六万
中村痛恨の放銃となる。

オーラスでは安村が3,900オールをツモアガリ原点復帰。

南4局
東家・安村

一万二万三万五万五万一筒一筒一筒六筒七筒七筒八筒九筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ五万

続く1本場では藤崎が中村から8,000の出アガリ。

南4局1本場8巡目
北家・藤崎

七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒西西  ロン九筒  ドラ三索

鳳凰位藤崎、勝ち上がりに向け好発進。

1回戦終了時
藤崎+31.6P 安村+11.6P 四柳▲14.4P 中村▲28.8P

2回戦は安村が粘り強い麻雀で中村と同点トップ。
3回戦、4回戦は我慢を強いられていた四柳が行かざるを得ない状況となり、放銃が続いてしまう。
3者で点棒を分ける形となった。普段から受けの強い四柳だけに残念な結果となった。

4回戦終了時
藤崎+42.5P 安村+39.8P 中村▲2.3P 四柳▲82.0P 供託2.0P

最終戦(起家から、四柳・安村・中村・藤崎)

四柳の勝ち上がり条件は非常に厳しく、実質3名で2つの切符を争う形となる。

迎えた東3局。親の中村が果敢に攻める。
2局連続でリーチを放つもどちらも流局。しかし3本場で2,900をアガる。
積み棒3本、供託3,000点の価値あるアガリ。

東3局3本場5巡目
東家・中村

二万三万四万四万五万五万六万六万中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン四万  ドラ五索

これはわずか5巡目のアガリである。前巡に

二万三万三万四万四万五万五万六万中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ツモ六万

ここから三万を切りだしている。
巡目も浅いことから清一色に向かうことも考えられたが、同巡藤崎が

二索三索四索五索五索六索六索七索西西  ポン南南南

このテンパイを果たしており好判断だったか。
中村は続く東4局で1,300・2,600をツモアガリ、トータルポイントで安村を抜き去る。

踏ん張りどころの安村。この半荘現在ラス目。
迎えた南2局の親番。ライバルの中村が早々に仕掛け、安村にプレッシャーを掛ける。
しかし最初のテンパイは安村。

南2局5巡目
東家・安村

四万六万四索五索五索七筒七筒八筒九筒九筒  暗カン牌の背北北牌の背  ツモ五万  打四索 左向き  リーチ  ドラ四筒

上記の手牌で即リーチ。
待ちの八筒は、河に1枚、自身で1枚、中村の手牌に1枚あり残り1枚。
安村から見えるだけでも残りは2枚。親番を離せない安村は流局も覚悟の上であろう。
13巡目。安村は手牌の横に八筒をそっと置く。
中村を再逆転、藤崎も抜き去る大きな3,900オール。

更に次局、9巡目リーチで3,900は4,000オール。

南2局1本場11巡目
東家・安村

一索二索三索五索六索七索一筒二筒三筒六筒七筒発発  ツモ五筒  ドラ発

このアガリで他家を大きく引き離す。
こうなると苦しいのは中村。南3局の親番を維持できない場合、オーラスの条件は非常に厳しい。
そんな中村に引導を渡そうと藤崎が以下のテンパイ。

南3局14巡目
南家・藤崎

四索四索七索七索七索六筒六筒六筒八筒八筒発発発  ドラ六索

待ちの四索は山に残っていないが、八筒は2枚生きている。
ジリジリとした緊張感の中、ツモ切りが続く。

藤崎、最後のツモ牌を河に切る。ベスト8を決定する戦いは次局に持越し。
親の中村は流局寸前で意地のテンパイを果たしていた。

チャンスの後にはピンチあり。
次局、好配牌を手にした親の中村は4巡目にポンしてテンパイ。

南3局1本場4巡目
東家・中村

二索三索四索七索七索一筒一筒中中中  ポン西西西  ドラ七索

この場面、打六索としてのテンパイだが河に一筒が1枚放たれており、打一筒のテンパイ取らずも考えられたがここは素直にテンパイ取り。そして次巡七索を引き当てた中村。4,000は4,100オール。
まさに電光石火のアガリである。

目まぐるしく入れ替わるボーダー争い。
この時点で通過者は安村、中村。

藤崎が追い込まれる・・・・日本プロ麻雀連盟現鳳凰位藤崎智。
視聴者を唸らせるこのアガリ。

南3局2本場
南家・藤崎

三万四万五万六万七万八万二索二索四索五索六索三筒四筒  ツモ五筒  ドラ一筒

藤崎がトータルポイントで中村を再逆転する。
見応え十分の戦い。ドラマはオーラスへ。

この時点で安村の通過はほぼ確定しており、藤崎、中村の争い。
ポイント差は僅か3.7ポイント。
中村の1人テンパイでは逆転されてしまうため藤崎も手牌を進行させなくてはならない。

安い連荘では次局以降も中村には条件が残るため、藤崎は高打点を目指しピンズのホンイツへ向かう。
中村はトイツ手へ向かう。そして下家藤崎の危険牌であるピンズを切りだしていく。

流局。藤崎は中村の捨て牌からテンパイ濃厚と判断しテンパイ宣言。
中村の手牌は伏せられた。中村ノーテン。

次局は中村が残されたチャンスをきっちりものにする。
執念の1,300・2,600のツモアガリ。ベスト8への切符を手にした。

南4局1本場
北家・中村

二万四万六万六万四筒五筒六筒七筒八筒九筒  カン四索四索四索四索  ツモ三万  ドラ三万

鳳凰位藤崎敗退。しかしその存在感は非常に大きく視聴者を大いに沸かせたことだろう。

最終戦終了時
安村+44.5P 中村+34.0P 藤崎+33.5P 四柳▲114.0P 供託2.0

勝ち上がり 安村浩司 中村毅

 

C卓 瀬戸熊直樹×小車翔×灘麻太郎×二階堂留美

十段戦連覇中の瀬戸熊の登場である。
≪卓上の暴君≫と呼ばれる、その攻撃力に期待である。

そしてマスターズチャンプ小車。
若手代表、九州代表として晴れの舞台に登場。

しかし、1回戦は両名共に灘の自在に繰り出される技の前に後手を引かされる苦しい立ち上がり。

2回戦(起家から、灘・二階堂・小車・瀬戸熊)

瀬戸熊の反撃。

東2局5巡目
西家・瀬戸熊

八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒九筒南南北  ドラ六索

この形から上家から放たれた3枚目の八筒に目もくれない。
この時、灘に仕掛けが入っており、3枚目ということもあり八筒をチーする打ち手も多いであろう。
瀬戸熊は8巡目に七万を引き入れ、次巡、二階堂から八筒でアガリ切る。

灘の仕掛けは

東2局3巡目
北家・灘

二万八万一索一索二索東東西西北白発中

ここから西をポンして打八万
かなり苦しい仕掛けに感じられたが最終形は

一索一索二索二索東東東北白白  ポン西西西

以上の1シャンテン。自由自在に仕掛けを操る。
瀬戸熊はこの後も攻め続ける。

南1局2本場ではトイツ手とメンツ手の判断が難しい手牌を七対子に仕上げ灘から6,400。
更に次局では

南2局
東家・二階堂

一万二万三万六万六万六索七索八索二筒三筒四筒六筒八筒  ドラ七筒  リーチ

北家・灘

四万五万九万九万九万一索一索二筒三筒四筒五筒六筒七筒  リーチ

この2件リーチに真っ向勝負。無筋を連打しヤミテンで押し切り灘からアガる。

西家・瀬戸熊

三万四万二索二索三索四索五索五索六索七索八筒八筒八筒  ロン五万

迎えたオーラス。

南4局6巡目
東家・瀬戸熊

二万四万六万四索五索五筒五筒七筒八筒八筒八筒発発  ドラ七万

この形になり、場に放たれた発をスルー。
昨今の麻雀では鳴くことが多いと思われるが、瀬戸熊はスルー。
これをメンゼンで仕上げ。アガリ切る。

価値あるトップで1回戦のマイナスを解消する。

2回戦終了時
灘+17.3P 瀬戸熊+6.9P 二階堂+4.0P 小車▲28.2P

3回戦は接戦のオーラス、小車が2,000・4,000で1人浮きのトップ。
小車は隙のない麻雀を打ち続け、最後まで勝ち上がりの希望を繋ぐこととなる。

4回戦(起家から、二階堂・瀬戸熊・灘・小車)

南場を迎え持ち点は以下の通り。
二階堂34,000 瀬戸熊18,200 灘34,900 小車32,900
ここまでのトータルポイントを加算すると
灘+28.0P 二階堂+0.5P 小車▲6.9P 瀬戸熊▲21.6P
トータルポイント4番手は瀬戸熊。

南1局5巡目
北家・小車

四万五万六万七万八万九万一索二索三索九索九索七筒八筒  リーチ  ドラ八万

小車が上記のリーチ。対して瀬戸熊の手牌。

南家・瀬戸熊

二万二万六万七万四索四索六索六索六索八索東白白

ここから勝負に向かう瀬戸熊。
7巡目にアタリ牌の六筒を掴んでいる。迎えた10巡目。

二万二万六万七万六索六索六索六筒白白  暗カン牌の背四索 上向き四索 上向き牌の背  ツモ四筒  打四筒

六筒はすでに自身の2巡目に捨ててある。
ここでタンヤオに向かう打白の選択もあったがノータイムで四筒をツモ切り。
次巡五筒をツモ切る瀬戸熊。13巡目に八万をツモ切る小車。
瀬戸熊の心中は如何に・・・

15巡目

二万二万六万七万六索六索六索六筒白白  暗カン牌の背四索 上向き四索 上向き牌の背  ツモ七万  打六筒

3回戦までの展開に焦りがあったわけではないと思う。
最後までアガリを追い求めた瀬戸熊の放銃。

更に次局の親番では灘の仕掛け、二階堂の先制リーチ。
粘りに粘りテンパイするも直後に二階堂のツモアガリ。
この時、二階堂の二万は山に1枚。瀬戸熊の三索六索は山に3枚。

南2局
北家・二階堂

一万三万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒九筒西西  リーチ  ツモ二万  ドラ六索

東家・瀬戸熊

一万二万三万一索二索三索四索五索三筒四筒五筒七筒七筒

いよいよ厳しくなった瀬戸熊。視聴者の悲痛なコメントが流れる。
それでも瀬戸熊は・・・・瀬戸熊。

南3局1本場15巡目
北家・瀬戸熊

六万七万五索六索七索三筒三筒五筒六筒七筒中中中  リーチ  ツモ八万

苦しい戦況の中、8枚目の八万を引きアガリ2,000・3,900。
オーラスを迎え点棒状況は

二階堂39,100 瀬戸熊17,900 灘31,000 小車32,000

最終戦に向け1,300・2,600以上のアガリが欲しい瀬戸熊。

南4局10巡目
西家・瀬戸熊

二万三万四万三索四索八索八索八索一筒一筒二筒三筒四筒  リーチ  ドラ九万

渾身のリーチ。
私には、南2局の親が流れた時の劣勢さは既に感じられなかった。
しかし、3者はきっちり対応。
このリーチは流局となり、現実は1人沈みのラスとなる。

それでも視聴者の皆様に熱い麻雀を届けられただろう。
この熱いモノを伝えられることこそ、今麻雀プロに求められているものなのかもしれない。

4回戦終了時
灘+16.1P 二階堂+9.6P 小車▲6.8P 瀬戸熊▲19.9P 供託1.0P

最終戦終了時
灘+33.1P 二階堂+17.1P 小車▲13.7P 瀬戸熊▲37.5P 供託1.0P

勝ち上がり 灘麻太郎 二階堂留美

 

D卓 沢崎誠×森下剛任×望月雅継×河井保国

1回戦(起家から、望月・沢崎・森下・河井)

王位、森下の登場である。中部本部期待のホープ、地方の想いを抱き夢の舞台に。
更に、今年度ポイントランキング第1位の沢崎。
実力、知名度共に十分の沢崎に対し3者はどのように立ち向かうのか。

その沢崎とAⅠリーグでの対戦経験も豊富な望月。1回戦東1局から3者を圧倒する。

東1局10巡目
東家・望月

一万一万五万六万七万四索五索六索七索五筒六筒七筒八筒  ツモ六筒  打四索  ドラ三筒

これをヤミテンに構える。12巡目には五筒を引き入れ打八筒。ヤミテン続行。
同巡、森下から11,600の先制パンチ。
沢崎の捨て牌が国士模様だったこともあるが、この手牌をヤミテンに構える望月を初めて見た気がする。
慎重というよりは、柔軟さを感じさせるヤミテン。
対局者が望月に対して持っているイメージを改めるには十分な一局であったであろう。

続く1本場では、森下、河井の両者テンパイもアガリは望月。河井から4,800は5,100。

東1局1本場
東家・望月

一万一万一万六万六万七万八万九万七索七索七索四筒五筒  リーチ  ロン三筒  ドラ五筒

これ以上の加点は阻止したい3者。
まずは河井が仕掛けてテンパイ。

東1局2本場6巡目
北家・河井

一筒三筒四筒五筒北北  チー六筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ポン東東東  ドラ八索

続いて7巡目には森下がテンパイ。

西家・森下

二万三万四万一索二索三索四索四索一筒三筒発発発

そして当然のように追いついた望月。そしてリーチの宣言。

東家・望月

一索二索四索五索六索七索八索九索六筒七筒八筒白白  リーチ

勢い的にも望月が押し切ると思われたこの局を制するのは・・・沢崎。
望月がリーチを宣言した時の沢崎は以下の2シャンテン。

南家・沢崎

四万五万二索三索四索五索五索二筒三筒三筒五筒七筒七筒

リーチ宣言牌の四筒二筒三筒四筒でチーして打七筒。次巡の六筒をチーして打三筒
そして河井から1,000は1,600。

南家・沢崎

四万五万二索三索四索五索五索  チー五筒 左向き六筒 上向き七筒 上向き  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ロン三万

3者のテンパイをリャンシャンテンから追い抜く。
打点は安いものの、非常に粘り強い価値あるアガリ。

ダメ押しを寸前でかわされた望月。
それでも次局で5,200をアガると、それ以降も繊細、且つ丁寧な手順のうち回し。
オーラスも自らアガリ切り1回戦を1人浮きのトップで締める。

1回戦終了時
望月+29.9P 河井▲3.6P 沢崎▲7.4P 森下▲18.9P

2回戦(起家から、河井・森下・望月・沢崎)

1回戦好調だった望月に代わり2回戦スタートダッシュを決めたのは沢崎。
東2局で2,000・3,900。東3局では1,000・2,000。
東4局の親番を1人テンパイでの流局。迎えた1本場。好配牌を手にした沢崎は以下のテンパイ。

東4局1本場12巡目
東家・沢崎

三万三万四万五万六万七万八万一索二索三索四筒五筒六筒  ドラ二索

まだ2回戦が始まったばかり。
しかしAⅠリーガーの沢崎、望月にリードされたまま終盤戦を迎えれば、森下、河井にとって勝ち上がりの条件が厳しくなるのは明らかである。
これに立ち向かうのは同巡に追いついた河井。
序盤から三色を睨んだ手順でテンパイ即リーチ。

南家・河井

七万八万四索五索五索五索六索八索六筒六筒六筒七筒八筒  ツモ七索  打四索  リーチ

そして沢崎もリーチで応戦。
河井は自信の手組。勝ち上がりに向け負けるわけにはいかないこのリーチ。
河井は静かに六万六を手牌の横に置いた。戦線に留まる大きな2,000・3,900。

更に南3局では全員の手がぶつかる。

南家・沢崎10巡目

一万二万三万四万五万六万五索五索二筒三筒四筒東東  ドラ東  リーチ

西家・河井12巡目

二万三万一索一索二索三索四索六索七索八索一筒二筒三筒

北家・森下12巡目

一万二万三万一索七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒九筒

東家・望月15巡目

七万八万九万三索四索五索六索六索六筒六筒七筒七筒八筒

軍配は河井。
トップも見える位置に付けるが、序盤にリードされた沢崎に一歩届かなかった。

2回戦終了時
望月+11.4P 河井+2.5P 沢崎▲13.9P 森下▲27.8P

3回戦では望月が1人浮きのトップ。森下が負債を1人で抱え込む形となる。

4回戦(起家から、沢崎・森下・河井・望月)

勝ち上がりに向けトップが欲しい森下。
東2局で望月が5,200をアガッた次局、再び望月にチャンス手。

東3局8巡目
南家・望月

一万一万一万二万三万三万四万五万五万五万六万東東  ツモ六万 打東  ドラ五索

テンパイではあるがTは場に2枚切られており東のトイツ落としで清一色へ向かう。
これに対抗するのは後のない森下。11巡目に追いつく。

北家・森下

二万四万六万二索三索四索二筒二筒四筒五筒六筒七筒八筒  ツモ三万 打六万  リーチ

森下のリーチ宣言牌である六万をポンして5面待ちの望月・・・これをポンせず。
次巡、森下が六筒をツモアガる。
ポンしていれば望月の放銃であったであろう。絶妙なバランス感覚。

南1局、望月は6巡目に発をポンしてホンイツに向かう。迎えた10巡目、

南1局10巡目
北家・望月

三索三索五索五索七索七索九索九索九索南  ポン発発発  ドラ一万

上家の河井から切られた六索に目もくれずツモ山に手を伸ばす望月。
これに追いついたのは親の沢崎。13巡目以下のリーチ。

東家・沢崎

一万二万三万四万五万六万三索五索七索五筒五筒五筒六筒  ツモ四索 打七索  リーチ

この七索を望月がポンしてテンパイ。AⅠリーガー同士の真っ向勝負。
軍配は沢崎。望月から価値ある5,800。
沢崎は一気に抜け出す。次局、4,000は4,100オール。

南1局1本場11巡目
東家・沢崎

二万三万六万七万八万三索四索五索二筒二筒三筒四筒五筒  リーチ  ツモ四万  ドラ四筒

このスピード感。掴んだチャンスは必ずものにする。
この沢崎に追いすがるのは森下。
次局、河井とのリーチ合戦に競り勝ち2,000・4,000。

南1局2本場17巡目

四万五万六万二索三索四索一筒一筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ六筒  ドラ一筒

オーラスで1,300・2,600をツモアガッた森下が逆転トップで締めた。

4回戦終了時
望月+12.5P 沢崎+8.3P 森下▲9.6P 河井▲11.2P

ここまで健闘した森下、河井ではあったが、やはり壁は高かった。
最終戦は自力で上回る沢崎、望月が隙を与えない卓回しで勝ち上がりを決めた。

最終戦終了時
沢崎+13.9P 望月+11.4P 河井+2.5P 森下▲27.8P

勝ち上がり 沢崎誠 望月雅継

ベスト8では決勝戦に向け、更に熱い戦いが期待できるであろう。

グランプリ レポート/第4期麻雀グランプリMAXベスト16レポート

「麻雀グランプリMAX」
それは、日本プロ麻雀連盟のオールスター戦とも置き換えることが出来るのではないだろうか。
オールスター戦というとお祭り感があるかもしれないがそれとも違う。
今年度活躍したプロが一同に介し、その頂点を競う。
戦績次第では入会間もない若手にもそのチャンスは存分にある。
そんな夢のようなタイトル戦。
実力、勢いを持った者たちで行われた1次、2次予選を勝ち抜いた10名。
ベスト16からは、前原雄大(前年度グランプリMAX優勝)、藤崎智(鳳凰位)、瀬戸熊直樹(十段位)、森下剛任(王位)、小車翔(マスターズ)、沢崎誠(ポイントランキング1位)、以上の6名がシード選手として出場し、タイトル戦は更に熱を帯びてゆく。
勝ち上がり条件は半荘5回戦を行い、成績上位2名がベスト8へ進出する。
 
A卓 前原雄大×前田直哉×杉浦勘助×魚谷侑未
1回戦(起家から、前田・前原・杉浦・魚谷)
前年度麻雀グランプリMAXを制した前原を中心とした展開が予想されるA卓。
東場は穏やかな展開が続く。
南場に入り、その均衡を破ったのは前田。
南2局14巡目
北家・前田
二万二万四万四万四万四索五索七索七索中  暗カン牌の背二筒 上向き二筒 上向き牌の背  ドラ四索
ここから二万をポンして三索六索待ち。
16巡目に七索をツモリドラ単騎に待ちかえ。
次巡四索を引き当て、3,000・6,000。
ここまで我慢を重ねた前田の大きなアガリ。
この時、杉浦は以下のテンパイ。
六万六万二索三索四索四索五索六索三筒四筒五筒七筒八筒
前田のツモった四索を見て何を思うか。
次局、親の杉浦は1シャンテンからドラの中をリリース。
南3局6巡目
東家・杉浦
三万三万四万八万八万二索三索四索五筒六筒七筒八筒中  ツモ九筒  打中  ドラ中
このドラを前巡重ねた前田がポンしてテンパイ。
西家・前田
四万五万六万四索五索六索五筒六筒東東  ポン中中中
山に5枚残りの四筒七筒を9巡目にツモアガリ、2,000・3,900。
南4局、親の魚谷が前原から2,000点をアガリ点棒状況は以下の通り。
前田46,300 前原19,700 杉浦21,800 魚谷32,200
南4局1本場、親の魚谷が三色確定のリーチ。
東家・魚谷 6巡目
四万四万五万六万七万五索七索五筒六筒七筒西西西  リーチ  ドラ二索
これをツモリ4,000オール。
一気に前田を抜き去りトップ目に立つ。
ここまで元気のない前原。次局、ドラトイツの手牌を積極的に仕掛ける。
南4局2本場
西家・前原
五索六索七索七索六筒七筒八筒  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  チー三万 左向き四万 上向き五万 上向き  ドラ七索
魚谷、前田の仕掛けを掻い潜りドラの七索を引き当て2,000・3,900。
前原のアガリへの執念を感じた一局となった。
1回戦成績
魚谷+18.4P 前田+14.1P 前原▲10.1P 杉浦▲22.4P
2回戦、3回戦は前原が持ち前の攻撃力を見せつけ連勝。
前田、魚谷も食らいつく。苦しいのは杉浦。
3回戦終了時
前原+30.9P 前田+20.8P 魚谷+8.3P 杉浦▲60.0P
4回戦(起家から、前原・前田・魚谷・杉浦)
東1局で前田が2,000・4,000をツモアガリ一歩リードする。
後がない杉浦。この4回戦はトップが絶対条件。
杉浦は小さいながらアガリを積み重ね、微差のトップ目で迎えた南3局。
選択肢の多い手牌を丁寧に仕上げ前原から6,400。
南3局
南家・杉浦
一万一万二万二万三万九万九万九万七筒八筒九筒発発  ロン三万  ドラ三筒
この日初めての本手をアガる。迎えたオーラスの親番。
淀みない手順で仕上げた手牌。5回戦に望みを繋ぐ大きな4,000オール。
南4局
東家・杉浦
八万八万二索三索四索五索六索七索二筒三筒四筒六筒七筒  リーチ  ツモ八筒  ドラ五索
4回戦終了時
前田+29.4P 前原+6.6P 魚谷▲7.9P 杉浦▲28.1P
最終戦(起家から、前田・杉浦・魚谷・前原)
魚谷、杉浦は前に出るしかない。もちろん前田、前原も安心はできない。
東1局、魚谷が1,300・2,600をツモアガリ先制。魚谷は更に攻める。
東2局1本場では積極的に仕掛けるも、親の杉浦に7,700の放銃。
続く2本場ではピンフをアガリ嫌な流れを断ち切る。
迎えた親番
東3局6巡目
東家・魚谷
一万一万二万三万四万五万六万七万七索八索一筒二筒三筒  リーチ  ドラ二筒
このリーチを12巡目にツモアガリ2,600オール。
魚谷はこの時点トータルポイントで前原を抜き去る。
こうなっては引けない前原、小さなアガリを重ねる。
そして杉浦も食い下がる。
南3局を迎え、ここまでのトータルポイントに現在の持ち点を加味すると
前田+8.4P 前原+1.6P 魚谷+1.1P 杉浦▲11.1P
となり、全員に勝ち上がりの可能性がある。
そして全員の手がぶつかる。
東家・魚谷7巡目。
七万八万九万二索三索四索七索七索四筒五筒  ポン中中中  ドラ西
南家・前原7巡目。
三万三万五索六索七索一筒三筒六筒七筒八筒白白白  リーチ
西家・前田9巡目。
四万四万四万五索六索八索八索五筒六筒七筒  ポン西西西
3者テンパイのこの状況、軍配は・・・前原。
価値ある大きな1,300・2,600。
オーラスでは魚谷、杉浦ともに条件をクリアーするリーチをかけるも流局での幕切れとなった。
最終戦終了時
前原+10.3P 前田+1.6P 魚谷▲2.0P 杉浦▲11.9P 供託+2.0P
勝ち上がり 前原雄大 前田直哉
 
B卓 藤崎智×四柳弘樹×中村毅×安村浩司
1回戦(起家から、四柳・中村・藤崎・安村)
鳳凰位藤崎の登場。1回戦からその力を見せつける。
東1局
西家・藤崎6巡目。
四万五万二索三索四索一筒二筒三筒四筒五筒八筒白白  ツモ六万  打八筒  ドラ八索
これをヤミテンに構える。
次巡、白を暗刻にし五筒切りリーチ。更に9巡目に白を暗カン。
14巡目にツモアガリ、2,000・3900。
次局も配牌は悪いながら丁寧な手順で1,300・2,600。
東2局、南家・藤崎。
五万六万七万九万九万三索四索三筒四筒五筒五筒六筒七筒  ツモ五索  ドラ九万
小さな点棒移動で迎えた南2局。中村に疑問手。
5巡目に安村が以下のリーチ。
南2局2本場
西家・安村
四万五万七万八万九万五筒六筒七筒東東南南南  リーチ  ドラ六索
対して親の中村が7巡目に追いつきヤミテン。
東家・中村
四万五万六万七万八万九万五索五索六索七索八索五筒六筒
14巡目、中村は五筒をツモり、現物の六筒切り。役なしテンパイに受けかえる。
15巡目、中村のツモは四筒。アガリ逃しとなったが、受けを考えてのヤミテンなら致し方ないか。
しかし中村はツモ切りリーチを選択。そして中村に訪れた最後のツモは六万
中村痛恨の放銃となる。
オーラスでは安村が3,900オールをツモアガリ原点復帰。
南4局
東家・安村
一万二万三万五万五万一筒一筒一筒六筒七筒七筒八筒九筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ五万
続く1本場では藤崎が中村から8,000の出アガリ。
南4局1本場8巡目
北家・藤崎
七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒西西  ロン九筒  ドラ三索
鳳凰位藤崎、勝ち上がりに向け好発進。
1回戦終了時
藤崎+31.6P 安村+11.6P 四柳▲14.4P 中村▲28.8P
2回戦は安村が粘り強い麻雀で中村と同点トップ。
3回戦、4回戦は我慢を強いられていた四柳が行かざるを得ない状況となり、放銃が続いてしまう。
3者で点棒を分ける形となった。普段から受けの強い四柳だけに残念な結果となった。
4回戦終了時
藤崎+42.5P 安村+39.8P 中村▲2.3P 四柳▲82.0P 供託2.0P
最終戦(起家から、四柳・安村・中村・藤崎)
四柳の勝ち上がり条件は非常に厳しく、実質3名で2つの切符を争う形となる。
迎えた東3局。親の中村が果敢に攻める。
2局連続でリーチを放つもどちらも流局。しかし3本場で2,900をアガる。
積み棒3本、供託3,000点の価値あるアガリ。
東3局3本場5巡目
東家・中村
二万三万四万四万五万五万六万六万中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン四万  ドラ五索
これはわずか5巡目のアガリである。前巡に
二万三万三万四万四万五万五万六万中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ツモ六万
ここから三万を切りだしている。
巡目も浅いことから清一色に向かうことも考えられたが、同巡藤崎が
二索三索四索五索五索六索六索七索西西  ポン南南南
このテンパイを果たしており好判断だったか。
中村は続く東4局で1,300・2,600をツモアガリ、トータルポイントで安村を抜き去る。
踏ん張りどころの安村。この半荘現在ラス目。
迎えた南2局の親番。ライバルの中村が早々に仕掛け、安村にプレッシャーを掛ける。
しかし最初のテンパイは安村。
南2局5巡目
東家・安村
四万六万四索五索五索七筒七筒八筒九筒九筒  暗カン牌の背北北牌の背  ツモ五万  打四索 左向き  リーチ  ドラ四筒
上記の手牌で即リーチ。
待ちの八筒は、河に1枚、自身で1枚、中村の手牌に1枚あり残り1枚。
安村から見えるだけでも残りは2枚。親番を離せない安村は流局も覚悟の上であろう。
13巡目。安村は手牌の横に八筒をそっと置く。
中村を再逆転、藤崎も抜き去る大きな3,900オール。
更に次局、9巡目リーチで3,900は4,000オール。
南2局1本場11巡目
東家・安村
一索二索三索五索六索七索一筒二筒三筒六筒七筒発発  ツモ五筒  ドラ発
このアガリで他家を大きく引き離す。
こうなると苦しいのは中村。南3局の親番を維持できない場合、オーラスの条件は非常に厳しい。
そんな中村に引導を渡そうと藤崎が以下のテンパイ。
南3局14巡目
南家・藤崎
四索四索七索七索七索六筒六筒六筒八筒八筒発発発  ドラ六索
待ちの四索は山に残っていないが、八筒は2枚生きている。
ジリジリとした緊張感の中、ツモ切りが続く。
藤崎、最後のツモ牌を河に切る。ベスト8を決定する戦いは次局に持越し。
親の中村は流局寸前で意地のテンパイを果たしていた。
チャンスの後にはピンチあり。
次局、好配牌を手にした親の中村は4巡目にポンしてテンパイ。
南3局1本場4巡目
東家・中村
二索三索四索七索七索一筒一筒中中中  ポン西西西  ドラ七索
この場面、打六索としてのテンパイだが河に一筒が1枚放たれており、打一筒のテンパイ取らずも考えられたがここは素直にテンパイ取り。そして次巡七索を引き当てた中村。4,000は4,100オール。
まさに電光石火のアガリである。
目まぐるしく入れ替わるボーダー争い。
この時点で通過者は安村、中村。
藤崎が追い込まれる・・・・日本プロ麻雀連盟現鳳凰位藤崎智。
視聴者を唸らせるこのアガリ。
南3局2本場
南家・藤崎
三万四万五万六万七万八万二索二索四索五索六索三筒四筒  ツモ五筒  ドラ一筒
藤崎がトータルポイントで中村を再逆転する。
見応え十分の戦い。ドラマはオーラスへ。
この時点で安村の通過はほぼ確定しており、藤崎、中村の争い。
ポイント差は僅か3.7ポイント。
中村の1人テンパイでは逆転されてしまうため藤崎も手牌を進行させなくてはならない。
安い連荘では次局以降も中村には条件が残るため、藤崎は高打点を目指しピンズのホンイツへ向かう。
中村はトイツ手へ向かう。そして下家藤崎の危険牌であるピンズを切りだしていく。
流局。藤崎は中村の捨て牌からテンパイ濃厚と判断しテンパイ宣言。
中村の手牌は伏せられた。中村ノーテン。
次局は中村が残されたチャンスをきっちりものにする。
執念の1,300・2,600のツモアガリ。ベスト8への切符を手にした。
南4局1本場
北家・中村
二万四万六万六万四筒五筒六筒七筒八筒九筒  カン四索四索四索四索  ツモ三万  ドラ三万
鳳凰位藤崎敗退。しかしその存在感は非常に大きく視聴者を大いに沸かせたことだろう。
最終戦終了時
安村+44.5P 中村+34.0P 藤崎+33.5P 四柳▲114.0P 供託2.0
勝ち上がり 安村浩司 中村毅
 
C卓 瀬戸熊直樹×小車翔×灘麻太郎×二階堂留美
十段戦連覇中の瀬戸熊の登場である。
≪卓上の暴君≫と呼ばれる、その攻撃力に期待である。
そしてマスターズチャンプ小車。
若手代表、九州代表として晴れの舞台に登場。
しかし、1回戦は両名共に灘の自在に繰り出される技の前に後手を引かされる苦しい立ち上がり。
2回戦(起家から、灘・二階堂・小車・瀬戸熊)
瀬戸熊の反撃。
東2局5巡目
西家・瀬戸熊
八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒九筒南南北  ドラ六索
この形から上家から放たれた3枚目の八筒に目もくれない。
この時、灘に仕掛けが入っており、3枚目ということもあり八筒をチーする打ち手も多いであろう。
瀬戸熊は8巡目に七万を引き入れ、次巡、二階堂から八筒でアガリ切る。
灘の仕掛けは
東2局3巡目
北家・灘
二万八万一索一索二索東東西西北白発中
ここから西をポンして打八万
かなり苦しい仕掛けに感じられたが最終形は
一索一索二索二索東東東北白白  ポン西西西
以上の1シャンテン。自由自在に仕掛けを操る。
瀬戸熊はこの後も攻め続ける。
南1局2本場ではトイツ手とメンツ手の判断が難しい手牌を七対子に仕上げ灘から6,400。
更に次局では
南2局
東家・二階堂
一万二万三万六万六万六索七索八索二筒三筒四筒六筒八筒  ドラ七筒  リーチ
北家・灘
四万五万九万九万九万一索一索二筒三筒四筒五筒六筒七筒  リーチ
この2件リーチに真っ向勝負。無筋を連打しヤミテンで押し切り灘からアガる。
西家・瀬戸熊
三万四万二索二索三索四索五索五索六索七索八筒八筒八筒  ロン五万
迎えたオーラス。
南4局6巡目
東家・瀬戸熊
二万四万六万四索五索五筒五筒七筒八筒八筒八筒発発  ドラ七万
この形になり、場に放たれた発をスルー。
昨今の麻雀では鳴くことが多いと思われるが、瀬戸熊はスルー。
これをメンゼンで仕上げ。アガリ切る。
価値あるトップで1回戦のマイナスを解消する。
2回戦終了時
灘+17.3P 瀬戸熊+6.9P 二階堂+4.0P 小車▲28.2P
3回戦は接戦のオーラス、小車が2,000・4,000で1人浮きのトップ。
小車は隙のない麻雀を打ち続け、最後まで勝ち上がりの希望を繋ぐこととなる。
4回戦(起家から、二階堂・瀬戸熊・灘・小車)
南場を迎え持ち点は以下の通り。
二階堂34,000 瀬戸熊18,200 灘34,900 小車32,900
ここまでのトータルポイントを加算すると
灘+28.0P 二階堂+0.5P 小車▲6.9P 瀬戸熊▲21.6P
トータルポイント4番手は瀬戸熊。
南1局5巡目
北家・小車
四万五万六万七万八万九万一索二索三索九索九索七筒八筒  リーチ  ドラ八万
小車が上記のリーチ。対して瀬戸熊の手牌。
南家・瀬戸熊
二万二万六万七万四索四索六索六索六索八索東白白
ここから勝負に向かう瀬戸熊。
7巡目にアタリ牌の六筒を掴んでいる。迎えた10巡目。
二万二万六万七万六索六索六索六筒白白  暗カン牌の背四索 上向き四索 上向き牌の背  ツモ四筒  打四筒
六筒はすでに自身の2巡目に捨ててある。
ここでタンヤオに向かう打白の選択もあったがノータイムで四筒をツモ切り。
次巡五筒をツモ切る瀬戸熊。13巡目に八万をツモ切る小車。
瀬戸熊の心中は如何に・・・
15巡目
二万二万六万七万六索六索六索六筒白白  暗カン牌の背四索 上向き四索 上向き牌の背  ツモ七万  打六筒
3回戦までの展開に焦りがあったわけではないと思う。
最後までアガリを追い求めた瀬戸熊の放銃。
更に次局の親番では灘の仕掛け、二階堂の先制リーチ。
粘りに粘りテンパイするも直後に二階堂のツモアガリ。
この時、二階堂の二万は山に1枚。瀬戸熊の三索六索は山に3枚。
南2局
北家・二階堂
一万三万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒九筒西西  リーチ  ツモ二万  ドラ六索
東家・瀬戸熊
一万二万三万一索二索三索四索五索三筒四筒五筒七筒七筒
いよいよ厳しくなった瀬戸熊。視聴者の悲痛なコメントが流れる。
それでも瀬戸熊は・・・・瀬戸熊。
南3局1本場15巡目
北家・瀬戸熊
六万七万五索六索七索三筒三筒五筒六筒七筒中中中  リーチ  ツモ八万
苦しい戦況の中、8枚目の八万を引きアガリ2,000・3,900。
オーラスを迎え点棒状況は
二階堂39,100 瀬戸熊17,900 灘31,000 小車32,000
最終戦に向け1,300・2,600以上のアガリが欲しい瀬戸熊。
南4局10巡目
西家・瀬戸熊
二万三万四万三索四索八索八索八索一筒一筒二筒三筒四筒  リーチ  ドラ九万
渾身のリーチ。
私には、南2局の親が流れた時の劣勢さは既に感じられなかった。
しかし、3者はきっちり対応。
このリーチは流局となり、現実は1人沈みのラスとなる。
それでも視聴者の皆様に熱い麻雀を届けられただろう。
この熱いモノを伝えられることこそ、今麻雀プロに求められているものなのかもしれない。
4回戦終了時
灘+16.1P 二階堂+9.6P 小車▲6.8P 瀬戸熊▲19.9P 供託1.0P
最終戦終了時
灘+33.1P 二階堂+17.1P 小車▲13.7P 瀬戸熊▲37.5P 供託1.0P
勝ち上がり 灘麻太郎 二階堂留美
 
D卓 沢崎誠×森下剛任×望月雅継×河井保国
1回戦(起家から、望月・沢崎・森下・河井)
王位、森下の登場である。中部本部期待のホープ、地方の想いを抱き夢の舞台に。
更に、今年度ポイントランキング第1位の沢崎。
実力、知名度共に十分の沢崎に対し3者はどのように立ち向かうのか。
その沢崎とAⅠリーグでの対戦経験も豊富な望月。1回戦東1局から3者を圧倒する。
東1局10巡目
東家・望月
一万一万五万六万七万四索五索六索七索五筒六筒七筒八筒  ツモ六筒  打四索  ドラ三筒
これをヤミテンに構える。12巡目には五筒を引き入れ打八筒。ヤミテン続行。
同巡、森下から11,600の先制パンチ。
沢崎の捨て牌が国士模様だったこともあるが、この手牌をヤミテンに構える望月を初めて見た気がする。
慎重というよりは、柔軟さを感じさせるヤミテン。
対局者が望月に対して持っているイメージを改めるには十分な一局であったであろう。
続く1本場では、森下、河井の両者テンパイもアガリは望月。河井から4,800は5,100。
東1局1本場
東家・望月
一万一万一万六万六万七万八万九万七索七索七索四筒五筒  リーチ  ロン三筒  ドラ五筒
これ以上の加点は阻止したい3者。
まずは河井が仕掛けてテンパイ。
東1局2本場6巡目
北家・河井
一筒三筒四筒五筒北北  チー六筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ポン東東東  ドラ八索
続いて7巡目には森下がテンパイ。
西家・森下
二万三万四万一索二索三索四索四索一筒三筒発発発
そして当然のように追いついた望月。そしてリーチの宣言。
東家・望月
一索二索四索五索六索七索八索九索六筒七筒八筒白白  リーチ
勢い的にも望月が押し切ると思われたこの局を制するのは・・・沢崎。
望月がリーチを宣言した時の沢崎は以下の2シャンテン。
南家・沢崎
四万五万二索三索四索五索五索二筒三筒三筒五筒七筒七筒
リーチ宣言牌の四筒二筒三筒四筒でチーして打七筒。次巡の六筒をチーして打三筒
そして河井から1,000は1,600。
南家・沢崎
四万五万二索三索四索五索五索  チー五筒 左向き六筒 上向き七筒 上向き  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ロン三万
3者のテンパイをリャンシャンテンから追い抜く。
打点は安いものの、非常に粘り強い価値あるアガリ。
ダメ押しを寸前でかわされた望月。
それでも次局で5,200をアガると、それ以降も繊細、且つ丁寧な手順のうち回し。
オーラスも自らアガリ切り1回戦を1人浮きのトップで締める。
1回戦終了時
望月+29.9P 河井▲3.6P 沢崎▲7.4P 森下▲18.9P
2回戦(起家から、河井・森下・望月・沢崎)
1回戦好調だった望月に代わり2回戦スタートダッシュを決めたのは沢崎。
東2局で2,000・3,900。東3局では1,000・2,000。
東4局の親番を1人テンパイでの流局。迎えた1本場。好配牌を手にした沢崎は以下のテンパイ。
東4局1本場12巡目
東家・沢崎
三万三万四万五万六万七万八万一索二索三索四筒五筒六筒  ドラ二索
まだ2回戦が始まったばかり。
しかしAⅠリーガーの沢崎、望月にリードされたまま終盤戦を迎えれば、森下、河井にとって勝ち上がりの条件が厳しくなるのは明らかである。
これに立ち向かうのは同巡に追いついた河井。
序盤から三色を睨んだ手順でテンパイ即リーチ。
南家・河井
七万八万四索五索五索五索六索八索六筒六筒六筒七筒八筒  ツモ七索  打四索  リーチ
そして沢崎もリーチで応戦。
河井は自信の手組。勝ち上がりに向け負けるわけにはいかないこのリーチ。
河井は静かに六万六を手牌の横に置いた。戦線に留まる大きな2,000・3,900。
更に南3局では全員の手がぶつかる。
南家・沢崎10巡目
一万二万三万四万五万六万五索五索二筒三筒四筒東東  ドラ東  リーチ
西家・河井12巡目
二万三万一索一索二索三索四索六索七索八索一筒二筒三筒
北家・森下12巡目
一万二万三万一索七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒九筒
東家・望月15巡目
七万八万九万三索四索五索六索六索六筒六筒七筒七筒八筒
軍配は河井。
トップも見える位置に付けるが、序盤にリードされた沢崎に一歩届かなかった。
2回戦終了時
望月+11.4P 河井+2.5P 沢崎▲13.9P 森下▲27.8P
3回戦では望月が1人浮きのトップ。森下が負債を1人で抱え込む形となる。
4回戦(起家から、沢崎・森下・河井・望月)
勝ち上がりに向けトップが欲しい森下。
東2局で望月が5,200をアガッた次局、再び望月にチャンス手。
東3局8巡目
南家・望月
一万一万一万二万三万三万四万五万五万五万六万東東  ツモ六万 打東  ドラ五索
テンパイではあるがTは場に2枚切られており東のトイツ落としで清一色へ向かう。
これに対抗するのは後のない森下。11巡目に追いつく。
北家・森下
二万四万六万二索三索四索二筒二筒四筒五筒六筒七筒八筒  ツモ三万 打六万  リーチ
森下のリーチ宣言牌である六万をポンして5面待ちの望月・・・これをポンせず。
次巡、森下が六筒をツモアガる。
ポンしていれば望月の放銃であったであろう。絶妙なバランス感覚。
南1局、望月は6巡目に発をポンしてホンイツに向かう。迎えた10巡目、
南1局10巡目
北家・望月
三索三索五索五索七索七索九索九索九索南  ポン発発発  ドラ一万
上家の河井から切られた六索に目もくれずツモ山に手を伸ばす望月。
これに追いついたのは親の沢崎。13巡目以下のリーチ。
東家・沢崎
一万二万三万四万五万六万三索五索七索五筒五筒五筒六筒  ツモ四索 打七索  リーチ
この七索を望月がポンしてテンパイ。AⅠリーガー同士の真っ向勝負。
軍配は沢崎。望月から価値ある5,800。
沢崎は一気に抜け出す。次局、4,000は4,100オール。
南1局1本場11巡目
東家・沢崎
二万三万六万七万八万三索四索五索二筒二筒三筒四筒五筒  リーチ  ツモ四万  ドラ四筒
このスピード感。掴んだチャンスは必ずものにする。
この沢崎に追いすがるのは森下。
次局、河井とのリーチ合戦に競り勝ち2,000・4,000。
南1局2本場17巡目
四万五万六万二索三索四索一筒一筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ六筒  ドラ一筒
オーラスで1,300・2,600をツモアガッた森下が逆転トップで締めた。
4回戦終了時
望月+12.5P 沢崎+8.3P 森下▲9.6P 河井▲11.2P
ここまで健闘した森下、河井ではあったが、やはり壁は高かった。
最終戦は自力で上回る沢崎、望月が隙を与えない卓回しで勝ち上がりを決めた。
最終戦終了時
沢崎+13.9P 望月+11.4P 河井+2.5P 森下▲27.8P
勝ち上がり 沢崎誠 望月雅継
ベスト8では決勝戦に向け、更に熱い戦いが期待できるであろう。

第30期鳳凰位決定戦観戦記 「何を云うか鳳凰戦・最終回」

3日目の第9戦が始まった。
ここまで点差が開いたなら、追う側3人は腹を括るしかない。

藤崎+98.4P 沢崎▲12.6P 瀬戸熊▲20.6P 伊藤▲65.2P

まず自分の失点を埋め、話はそれからである。
藤崎が早めに満貫を打ち、失点したら浮上のチャンスを与えない。
これは3人の暗黙の協定である。
これを破るものは他の2人から白い目で見られるし、解説も何を云うか気がかりだ。

追う側は苦しい。だが一番苦しいのは追う側より、逃げる藤崎の方である。
なぜならここまで来たら勝って当然だし、負けたら何を云われるか分らないからである。

2日目が済んで3日目に入るまでの6日間は長い。
その間にじんわりとかかるプレッシャーは相当なものだったろう。

ただ逃げるだけではいつか捉まる、そのことは藤崎も承知している。
逃げも大事だがサバキもかけねばならないのだ。
そして隙があれば加点しなければならない。
その目安は今日一日でプラス30P。これなら9割以上、勝負は決するからである。

東1局、最初にテンパイしたのは藤崎だった。

 

100

 

4人の河から八索は好いマチに見えるが藤崎はヤミテン。あえて危険は冒さない。
10巡目六索を引き、タンヤオに切り変わり受けも広くなるが、やっぱりヤミテン。これも好感覚だ。
南家の沢崎の河はピンズの染め手だし、ドラの行方も分からないからである。
そしてこの局の結末はこうだ。

 

100

 

瀬戸熊はピンズの3面チャン。沢崎もメンホンの勝負手だったのである。
これは藤崎の軽いサバキながら、効果はてきめん。

続く東2局も藤崎の軽いサバキが見られた。
100

 

藤崎のテンパイは7巡目の打四万だが、ここでもヤミを選択。
リーチなら三索の壁の一索を沢崎から打ちとっていたが、そんなことは意に介さない。
ここに藤崎の用心深さが見える。

相手に攻めの火の手が上がり、危険を感じたらすみやかに退散する腹である。
その構えはヤミテンで、ちゃんと逃走経路は確保してあるのだ。これが忍者・藤崎なのである。

沢崎は発打ちでテンパイ。
ダブル風の東を暗刻にした7,700の勝負手のテンパイだったが、途端に藤崎のツモである。
勝負手を2度も蹴られると、沢崎の膝がカックンと折れたはずである。

藤崎は出だしから順風満帆。が、そこに待ったをかけたのがやはり瀬戸熊だった。
東3局は親番が瀬戸熊。そこから14巡目にリーチが入る。同巡、藤崎もテンパイ。
藤崎は国士崩れだが、変化しホンロウ七対子を張る。

 

100

 

さあここで、マチの選択である。並みの打ち手なら現物の九万を切るに違いない。
九万は2枚切れだしリーチの現物、一方九筒はリーチのソバテンで大いに危険だからである。
だが、藤崎は九筒を勝負した。彼の読みの精度は天下一品である。

しかしこれが、瀬戸熊にズドンと命中。ドラが八万でそのシャンポンの片割れが九筒だったのである。
7,700のアガリだが、これを視聴者はどう見たかである。

これが藤崎の読みの精度が高い証と私には見えたが、どうであろう。
なお、沢崎の九万二筒は手出しである。
後日、私の問いに藤崎が答える。

藤崎「あそこで手出しの九万切りなら、普通は2丁切りと見ますよね。ですから後悔はしていません」

七万は場に4丁枯れている。
二筒九万も親の現物だから、九万はたまたま連続で切られなかっただけの話、と藤崎は読んでいたのだ。

「次は九万、ならばここで勝負だ―」これがプロの発想である。

 

100

 

九筒を切れば藤崎の攻めが見えるが、それでも沢崎の九万は止まらない。
先に九筒が当たったのは、ただの偶然であることも確かなのである。
藤崎の読みは見事だ。沢崎の九万切りはトイツ落としで、読みはピタリと当たっていたのだ。

ここで藤崎を沈めトップに立った瀬戸熊は、勢いに乗る。
次は、リーチ合戦で5,800を伊藤から召し取る。

 

100

 

南場ではこのツモだ。

四万四万二索三索四索六索七索八索四筒四筒六筒七筒八筒  ツモ四筒  ドラ四筒

まず8,000。

六万六万六万八万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒中中  ツモ中

次が親で、リーチをかけ2,600オール。
この後、親で4本積んで持ち点を68,700点とする。
この間に藤崎も満貫を決め、浮きに回る。

そして、この半荘の結末はこうだ。

 

100

 

瀬戸熊は大きなトップだが、しかし藤崎もしぶとく浮いているためそう大きくは点差が詰まらない。
現状でその差がまだ86.6Pの差があるのだ。

ただ警戒すべきは、瀬戸熊タイムの発動である。
これが出ると点差が一気に詰まる。後日、藤崎もこう語っている。

「瀬戸熊の親だけは、ぶつけていくつもりでした…」

瀬戸熊の嵐は何度も見ているから、藤崎も用心し対策は考えていたのだ。

第10戦は不調だった伊藤が盛り返す。
瀬戸熊から親のダブルリーチがかかるが、伊藤が3巡目に追いつきリーチだ。
瀬戸熊はシャンポン待ちだが、引けば3,900オールの高打点。
しかし引き勝ったのは、両面で牌数の多い伊藤だった。

 

100

 

前回好調だった瀬戸熊のエンジンのかかりがなぜか悪い。これは藤崎には好都合だ。
そして、南場で瀬戸熊は2軒リーチに勝負に出るが、これもつかまる。

 

100

そして結果はこうだ。

 

100

 

伊藤のトップは藤崎の理想形なのである。
しかも自分も浮きだから、沢崎と瀬戸熊の点差は開く一方である。
これはもう藤崎の流れなのである。

11回戦も藤崎ペースだ。
トップは沢崎だが藤崎は浮きの2着で、怖い瀬戸熊が再びラスに沈んだのも藤崎には有利である。

 

100

 

これで藤崎は浮きの2着が3回目である。点差は詰まらない。いや、むしろ開いている。
瀬戸熊はこの2ラスで9回戦の大トップを吐き出してしまった。

12回戦、今度は瀬戸熊が頑張った。しかし目標の藤崎は沈まない。沈む気配すら感じない。
おまけにオーラスは、行きがけの駄賃とこの手をアガる。

 

100

 

これで藤崎は大きな浮きの2着が4回だ。これも珍しい。
そして点差はさらに開いた。

藤崎+147.6P 瀬戸熊▲1.3P 沢崎▲29.2P 伊藤▲117.1P

これで藤崎の優勝は99%確定である。
昨年の鳳凰決定戦と同じく、4日目を待たずに決定したのだ。
ここで(まだ分らない)というのは机上の空論である。
ここから逆転など、鳳凰戦30年の歴史では例がないし、まして相手が受けの達人・藤崎では論外である。

もちろんこのことは藤崎も承知している。
3日目が終わった時、私が云った。
「だがな、1%だけ不安があるぞ―」
すると藤崎は意外な顔をして、私をじっと見つめた。

「それはな…6日後の直前に交通事故に遇うことだ」
もちろん、これは私の冗談である。
「大丈夫です。脚を折っても、這ってでも出てきます!」

案の定、4日目は晴れた海で風も吹かなかった。

念願の「鳳凰」…藤崎の描いた設計図が今日、17年目にして完成されたのだ。
最後の横線一本は部屋に帰り、喜びをかみしめながらゆっくりと引けばいいのだ。
おめでとう、藤崎さん!

プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記/第30期鳳凰位決定戦観戦記 「何を云うか鳳凰戦・最終回」

3日目の第9戦が始まった。
ここまで点差が開いたなら、追う側3人は腹を括るしかない。
藤崎+98.4P 沢崎▲12.6P 瀬戸熊▲20.6P 伊藤▲65.2P
まず自分の失点を埋め、話はそれからである。
藤崎が早めに満貫を打ち、失点したら浮上のチャンスを与えない。
これは3人の暗黙の協定である。
これを破るものは他の2人から白い目で見られるし、解説も何を云うか気がかりだ。
追う側は苦しい。だが一番苦しいのは追う側より、逃げる藤崎の方である。
なぜならここまで来たら勝って当然だし、負けたら何を云われるか分らないからである。
2日目が済んで3日目に入るまでの6日間は長い。
その間にじんわりとかかるプレッシャーは相当なものだったろう。
ただ逃げるだけではいつか捉まる、そのことは藤崎も承知している。
逃げも大事だがサバキもかけねばならないのだ。
そして隙があれば加点しなければならない。
その目安は今日一日でプラス30P。これなら9割以上、勝負は決するからである。
東1局、最初にテンパイしたのは藤崎だった。
 
100
 
4人の河から八索は好いマチに見えるが藤崎はヤミテン。あえて危険は冒さない。
10巡目六索を引き、タンヤオに切り変わり受けも広くなるが、やっぱりヤミテン。これも好感覚だ。
南家の沢崎の河はピンズの染め手だし、ドラの行方も分からないからである。
そしてこの局の結末はこうだ。
 
100
 
瀬戸熊はピンズの3面チャン。沢崎もメンホンの勝負手だったのである。
これは藤崎の軽いサバキながら、効果はてきめん。
続く東2局も藤崎の軽いサバキが見られた。
100
 
藤崎のテンパイは7巡目の打四万だが、ここでもヤミを選択。
リーチなら三索の壁の一索を沢崎から打ちとっていたが、そんなことは意に介さない。
ここに藤崎の用心深さが見える。
相手に攻めの火の手が上がり、危険を感じたらすみやかに退散する腹である。
その構えはヤミテンで、ちゃんと逃走経路は確保してあるのだ。これが忍者・藤崎なのである。
沢崎は発打ちでテンパイ。
ダブル風の東を暗刻にした7,700の勝負手のテンパイだったが、途端に藤崎のツモである。
勝負手を2度も蹴られると、沢崎の膝がカックンと折れたはずである。
藤崎は出だしから順風満帆。が、そこに待ったをかけたのがやはり瀬戸熊だった。
東3局は親番が瀬戸熊。そこから14巡目にリーチが入る。同巡、藤崎もテンパイ。
藤崎は国士崩れだが、変化しホンロウ七対子を張る。
 
100
 
さあここで、マチの選択である。並みの打ち手なら現物の九万を切るに違いない。
九万は2枚切れだしリーチの現物、一方九筒はリーチのソバテンで大いに危険だからである。
だが、藤崎は九筒を勝負した。彼の読みの精度は天下一品である。
しかしこれが、瀬戸熊にズドンと命中。ドラが八万でそのシャンポンの片割れが九筒だったのである。
7,700のアガリだが、これを視聴者はどう見たかである。
これが藤崎の読みの精度が高い証と私には見えたが、どうであろう。
なお、沢崎の九万二筒は手出しである。
後日、私の問いに藤崎が答える。
藤崎「あそこで手出しの九万切りなら、普通は2丁切りと見ますよね。ですから後悔はしていません」
七万は場に4丁枯れている。
二筒九万も親の現物だから、九万はたまたま連続で切られなかっただけの話、と藤崎は読んでいたのだ。
「次は九万、ならばここで勝負だ―」これがプロの発想である。
 
100
 
九筒を切れば藤崎の攻めが見えるが、それでも沢崎の九万は止まらない。
先に九筒が当たったのは、ただの偶然であることも確かなのである。
藤崎の読みは見事だ。沢崎の九万切りはトイツ落としで、読みはピタリと当たっていたのだ。
ここで藤崎を沈めトップに立った瀬戸熊は、勢いに乗る。
次は、リーチ合戦で5,800を伊藤から召し取る。
 
100
 
南場ではこのツモだ。
四万四万二索三索四索六索七索八索四筒四筒六筒七筒八筒  ツモ四筒  ドラ四筒
まず8,000。
六万六万六万八万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒中中  ツモ中
次が親で、リーチをかけ2,600オール。
この後、親で4本積んで持ち点を68,700点とする。
この間に藤崎も満貫を決め、浮きに回る。
そして、この半荘の結末はこうだ。
 
100
 
瀬戸熊は大きなトップだが、しかし藤崎もしぶとく浮いているためそう大きくは点差が詰まらない。
現状でその差がまだ86.6Pの差があるのだ。
ただ警戒すべきは、瀬戸熊タイムの発動である。
これが出ると点差が一気に詰まる。後日、藤崎もこう語っている。
「瀬戸熊の親だけは、ぶつけていくつもりでした…」
瀬戸熊の嵐は何度も見ているから、藤崎も用心し対策は考えていたのだ。
第10戦は不調だった伊藤が盛り返す。
瀬戸熊から親のダブルリーチがかかるが、伊藤が3巡目に追いつきリーチだ。
瀬戸熊はシャンポン待ちだが、引けば3,900オールの高打点。
しかし引き勝ったのは、両面で牌数の多い伊藤だった。
 
100
 
前回好調だった瀬戸熊のエンジンのかかりがなぜか悪い。これは藤崎には好都合だ。
そして、南場で瀬戸熊は2軒リーチに勝負に出るが、これもつかまる。
 
100
そして結果はこうだ。
 
100
 
伊藤のトップは藤崎の理想形なのである。
しかも自分も浮きだから、沢崎と瀬戸熊の点差は開く一方である。
これはもう藤崎の流れなのである。
11回戦も藤崎ペースだ。
トップは沢崎だが藤崎は浮きの2着で、怖い瀬戸熊が再びラスに沈んだのも藤崎には有利である。
 
100
 
これで藤崎は浮きの2着が3回目である。点差は詰まらない。いや、むしろ開いている。
瀬戸熊はこの2ラスで9回戦の大トップを吐き出してしまった。
12回戦、今度は瀬戸熊が頑張った。しかし目標の藤崎は沈まない。沈む気配すら感じない。
おまけにオーラスは、行きがけの駄賃とこの手をアガる。
 
100
 
これで藤崎は大きな浮きの2着が4回だ。これも珍しい。
そして点差はさらに開いた。
藤崎+147.6P 瀬戸熊▲1.3P 沢崎▲29.2P 伊藤▲117.1P
これで藤崎の優勝は99%確定である。
昨年の鳳凰決定戦と同じく、4日目を待たずに決定したのだ。
ここで(まだ分らない)というのは机上の空論である。
ここから逆転など、鳳凰戦30年の歴史では例がないし、まして相手が受けの達人・藤崎では論外である。
もちろんこのことは藤崎も承知している。
3日目が終わった時、私が云った。
「だがな、1%だけ不安があるぞ―」
すると藤崎は意外な顔をして、私をじっと見つめた。
「それはな…6日後の直前に交通事故に遇うことだ」
もちろん、これは私の冗談である。
「大丈夫です。脚を折っても、這ってでも出てきます!」
案の定、4日目は晴れた海で風も吹かなかった。
念願の「鳳凰」…藤崎の描いた設計図が今日、17年目にして完成されたのだ。
最後の横線一本は部屋に帰り、喜びをかみしめながらゆっくりと引けばいいのだ。
おめでとう、藤崎さん!

第2期広島リーグ最終節レポート

半年間、計6節で行われる広島リーグは3月9日に最終節を迎えた。
最終節開始前のポイント状況は以下の通りとなった。
1位 豊内(プロ) 155.3P
2位 石田(研修生)139.2P
3位 井筒(プロ) 126.8P
4位 根木(アマ)  57.2P
5位 荻巣(プロ)  41.3P
6位 松木(研修生) 35.0P

今期からプロになった豊内、井筒、研修生の石田、松木と、若手の台頭が目立つ中、
一般で女性の根木が上位に食い込む奮闘を見せていた。

今期第1節の最初の半荘で10万点近いトップを取ったポイントをそのまま残している豊内。
研修生だが、ネット麻雀でも成績を残している石田。
今期全節プラスポイントで安定感のある井筒。
この3人の三つ巴の様相を見せてはいるが、直接対決の根木や、
今期不調で8位ではあるが、爆発力のある清水広島支部長にも可能性が残っていた。

1半荘目、プレッシャーの無い根木が着実に点数を積み上げる中、豊内も3万点をキープ。
跳満親かぶりした井筒もツモった手牌から雀頭を落とし、ドラの中を持ってきたところでリーチ。
これを終盤にツモり、何とか浮きを確保した。

優勝を狙うには浮きを確保したいところで、勝負強さを発揮した。
石田にとっては痛恨の1人沈みとなった。
この時点で、根木と石田の差はほとんど無いに等しいところまで追い込んでいた。

2半荘目、親番の豊内の手牌でヤミテン。

一万二万三万四万五万六万四索五索七筒八筒九筒中中  ドラ五万

ここに五をツモり、一万切りの1シャンテン戻し。
次巡、七万をツモり、二万切りリーチ。
早めの四索切りが効いたのか、根木の打三索で7,700点アガリ。
このオリジナル手順を生かした豊内と井筒の2人浮きで2半荘目終了。

3半荘目、この日好調の根木が井筒の親番でまたも跳満ツモ。
終盤、仕掛けやリーチに慎重にオリていた根木だが、豊内が30,500点、井筒が31,500まで取り返し、
オーラスへ。
トップ目の根木がリーチ。
これに豊内、井筒は逆らうことができず、根木が平和をツモり700・1,300。
豊内を沈め、可能性を残す。

最終4半荘目の段階ではポイントは以下のようになっていた。
1位 豊内(プロ) 166.6P
2位 井筒(プロ) 142.7P
3位 根木(アマ) 101.1P
4位 石田(研修生) 68.1P

豊内と井筒の差は23.9P。
この差は、井筒が優勝するには3着順つけることが最低ラインとなった。
最終戦ということもあり、いつもより攻めの姿勢を見せていた井筒だったが、裏目に出る形となり、終始ラス目で局が進んでいく。

豊内も3位ながら3万点をキープし、井筒にとっては厳しい展開のままオーラスへ。
オーラスの前に条件を確認。

井筒は、豊内からの倍満直撃もしくはリーチ棒が出れば跳満直撃が最低条件となる。
しかもオーラスは豊内。

豊内はノーテンで伏せれば優勝なので、実質、この1局で決める必要がある。
一発、ウラドラの無い競技麻雀をしたことがある方は分かると思うが、跳満、倍満はほとんど出ない。
しかも直撃条件。相当厳しい条件である。

配牌と取ると、豊内の手牌は九種九牌。
当然流すことなく局を開始し、幺九牌を切り続ける豊内。
井筒は、手配を縦に寄せようとするが、実らない。
そして8巡目、豊内が国士無双テンパイ、2枚切れの一万待ち。
数巡後、石田からリーチが入るも、豊内は無筋の五筒七索を勝負。

周囲は、おそらく豊内はオリる材料を集めており、石田には振っても構わないつもりと映っていた。
この状況が助けたのか、リーチ者の現物の一万を根木が切り、48,000放銃。
これが最後の決定打となり、豊内の優勝で幕を閉じた。

清水広島支部長も別卓で追い上げを見せ、総合4位となった。
奮闘を見せたが、最後に親役満を放銃して総合5位となった根木には、来期以降の検討も楽しみにしたい。

最終成績上位は以下の通り。
1位 豊内(プロ) 225.0P
2位 井筒(プロ) 125.0P
3位 石田(研修生) 90.9P
4位 清水(プロ)  46.6P
5位 根木(アマ)  37.6P

広島リーグレポート/第2期広島リーグ最終節レポート

半年間、計6節で行われる広島リーグは3月9日に最終節を迎えた。
最終節開始前のポイント状況は以下の通りとなった。
1位 豊内(プロ) 155.3P
2位 石田(研修生)139.2P
3位 井筒(プロ) 126.8P
4位 根木(アマ)  57.2P
5位 荻巣(プロ)  41.3P
6位 松木(研修生) 35.0P
今期からプロになった豊内、井筒、研修生の石田、松木と、若手の台頭が目立つ中、
一般で女性の根木が上位に食い込む奮闘を見せていた。
今期第1節の最初の半荘で10万点近いトップを取ったポイントをそのまま残している豊内。
研修生だが、ネット麻雀でも成績を残している石田。
今期全節プラスポイントで安定感のある井筒。
この3人の三つ巴の様相を見せてはいるが、直接対決の根木や、
今期不調で8位ではあるが、爆発力のある清水広島支部長にも可能性が残っていた。
1半荘目、プレッシャーの無い根木が着実に点数を積み上げる中、豊内も3万点をキープ。
跳満親かぶりした井筒もツモった手牌から雀頭を落とし、ドラの中を持ってきたところでリーチ。
これを終盤にツモり、何とか浮きを確保した。
優勝を狙うには浮きを確保したいところで、勝負強さを発揮した。
石田にとっては痛恨の1人沈みとなった。
この時点で、根木と石田の差はほとんど無いに等しいところまで追い込んでいた。
2半荘目、親番の豊内の手牌でヤミテン。
一万二万三万四万五万六万四索五索七筒八筒九筒中中  ドラ五万
ここに五をツモり、一万切りの1シャンテン戻し。
次巡、七万をツモり、二万切りリーチ。
早めの四索切りが効いたのか、根木の打三索で7,700点アガリ。
このオリジナル手順を生かした豊内と井筒の2人浮きで2半荘目終了。
3半荘目、この日好調の根木が井筒の親番でまたも跳満ツモ。
終盤、仕掛けやリーチに慎重にオリていた根木だが、豊内が30,500点、井筒が31,500まで取り返し、
オーラスへ。
トップ目の根木がリーチ。
これに豊内、井筒は逆らうことができず、根木が平和をツモり700・1,300。
豊内を沈め、可能性を残す。
最終4半荘目の段階ではポイントは以下のようになっていた。
1位 豊内(プロ) 166.6P
2位 井筒(プロ) 142.7P
3位 根木(アマ) 101.1P
4位 石田(研修生) 68.1P
豊内と井筒の差は23.9P。
この差は、井筒が優勝するには3着順つけることが最低ラインとなった。
最終戦ということもあり、いつもより攻めの姿勢を見せていた井筒だったが、裏目に出る形となり、終始ラス目で局が進んでいく。
豊内も3位ながら3万点をキープし、井筒にとっては厳しい展開のままオーラスへ。
オーラスの前に条件を確認。
井筒は、豊内からの倍満直撃もしくはリーチ棒が出れば跳満直撃が最低条件となる。
しかもオーラスは豊内。
豊内はノーテンで伏せれば優勝なので、実質、この1局で決める必要がある。
一発、ウラドラの無い競技麻雀をしたことがある方は分かると思うが、跳満、倍満はほとんど出ない。
しかも直撃条件。相当厳しい条件である。
配牌と取ると、豊内の手牌は九種九牌。
当然流すことなく局を開始し、幺九牌を切り続ける豊内。
井筒は、手配を縦に寄せようとするが、実らない。
そして8巡目、豊内が国士無双テンパイ、2枚切れの一万待ち。
数巡後、石田からリーチが入るも、豊内は無筋の五筒七索を勝負。
周囲は、おそらく豊内はオリる材料を集めており、石田には振っても構わないつもりと映っていた。
この状況が助けたのか、リーチ者の現物の一万を根木が切り、48,000放銃。
これが最後の決定打となり、豊内の優勝で幕を閉じた。
清水広島支部長も別卓で追い上げを見せ、総合4位となった。
奮闘を見せたが、最後に親役満を放銃して総合5位となった根木には、来期以降の検討も楽しみにしたい。
最終成績上位は以下の通り。
1位 豊内(プロ) 225.0P
2位 井筒(プロ) 125.0P
3位 石田(研修生) 90.9P
4位 清水(プロ)  46.6P
5位 根木(アマ)  37.6P

第104回:藤崎 智

【鳳凰位獲得】

滝沢「さて、早速ですが、まずは鳳凰位決定戦の3日目、打九筒で瀬戸熊さんに7,700放銃となった局の話しを聞かせてください」

gpmax2012

 

滝沢「僕が解説していた時だったのですが…これは、今までの忍者のイメージを覆す打牌か!?
と思いました。トータルポイントでかなりリードしているということもあります」

藤崎「まあ、解説でタッキーも言っていたように、沢崎さんのドラ打ち、その後、数巡して手出し九万。そして、
瀬戸熊のリーチ」

滝沢「はい、沢崎さんの九万はほぼトイツ落としと見て良さそうです」

藤崎「そう。でも沢崎さんは俺の打九筒を見ることになるから、簡単に九万を打ってくるわけではないよね。だから、本当に一瞬の勝負なんだ。沢崎さんが安全牌に窮している様子がなければ、すぐに撤退する」

滝沢「そこまでは見ている方にも伝わったかと思います。でも・・・」

 

雀力アップ上級より

状態の良い時は、自分の不要牌はリーチの現物であるケースが多い。
従って、自分のテンパイの前に相手の危険牌を掴むのはあまり良い状態とは言えないのですが、
それでも自分の状態の良し悪しもわからないうちから、1枚も勝負出来ないのはいくら守備型の藤崎とはいえ弱過ぎる。
だから藤崎流は1枚だけ押す。
それでも更にテンパイせず危険牌が飛んでくるようならオリる。
攻撃型の人であればとりあえず、アガるか振るかの決着が着くまで勝負してみるのだろうが、守備型なら1枚が精一杯であろう。
「あそこであの1枚さえ押せていれば」なんて経験みなさんもありますよね。
これが1枚だけの理由でもある。もう1枚押せていれば…いやいやキリがない。
元来守備型はビビりなのだから1枚で充分である。

 

藤崎「まあ、結果的にやりすぎだったけどね。曖昧な部分に勝負をかけたわけではないってことは伝わるといいなぁ」

 

【天才、秀才】

藤崎「そういえば、後で放送を見たんだけど、同じ局の瀬戸ちゃん(瀬戸熊直樹プロ)の八万

gpmax2012

藤崎「この手牌からドラの八万を動かないんだから、たまげるよね!」

確かに、これは我々も驚愕しました。

藤崎「ドラを打った誠さん(沢崎誠プロ)もだけどさ。世の中には常識にはとらわれない強い奴がいっぱいいるよ」

 

雀力アップ上級より

麻雀プロは、天才肌の打ち手と秀才タイプの打ち手に分かれる。

天才肌の打ち手は、色々な引き出しを持ち感性に優れた打ち手が多い。
元々持って生まれた才能に恵まれたタイプであり、どんな戦法を試してみてもやはり最終的には勝つ。
それが経験値として積み上げられて、いろんな引き出しを持つ事になる。
これが天才肌の打ち手である。

逆に、秀才タイプの打ち手は自分自身の長年培ってきたスタイルで、芯のしっかりした麻雀をベースに打つケースが多い。

 

滝沢「藤崎さんは秀才の方だって書いていましたね」

藤崎「うん明らかに秀才タイプの方だね。タッキーも恐らくそうでしょう」

滝沢「名前を挙げたらキリがないですけど、プロ連盟には天才肌っぽい打ち手がたくさんいますね」

藤崎「そうだね。文章に書いた通り、経験に基づいた打牌選択が多い打ち手が多い。今の若手には減ってきたけど、昔は定石を知った上で裏切ってくる。あの強さを知らない、認められない内は一流とは言えないよ」

滝沢「様々な形の強さを知った上で、自分の麻雀に芯を作っていくのが大事ということですね」
gpmax2012

 

【定石はあるか?】

滝沢「若手といえば、この場面では何が正解ですか?って感じで、マニュアルを欲しがる打ち手が多いように感じます」

藤崎「期待値の計算の仕方が全員違っている以上は、結局方程式を作ることが難しいね」

滝沢「はい。もちろん問題によりますが、中には、答えが存在するものもあるかも。でも、その答えが存在するってことは、具体的に目に見える情報が多いときで・・・その情報を収集する努力って自分でやるべきことじゃないかな、と」

藤崎「そこが面白い部分だと思うけどね。みんな同じ打ち方になったら、麻雀が終わりになっちゃう。仮に細かいところまで定石みたいなのができて、みんながそれで打つようになれば、その返し技みたいなのができて、またそれを返す技ができて…その繰り返し。浅い所での定石はあるだろうけど、あまり意味はないと思う」

 

【東北支部のアドバイザーとして】

藤崎「最近、地方の若手が活躍しているよね、今期は小車祥(九州)、森下剛任(中部)がG1タイトル取ったし、他にも決勝に残る選手が増えてきた」

滝沢「現在東北のアドバイザーをされているそうですね」

藤崎「プロテストや新人研修のアドバイスを主に。若手のプロは、身近な人を倣う風潮があるから、良い選手が出てくれば、次の世代の選手も育つってことだよね」

滝沢「確かに」

藤崎「時間はかかるかもしれないけど、一歩一歩前進していくしかないね。なんとか東北からも活躍する打ち手が出てくると嬉しい」

 

【再び決定戦の話し】

滝沢「僕個人は、役牌の切り出しが特に興味深かったです。」

gpmax2012

滝沢「例えばこの局の2打目、いつもの藤崎さんなら、西から打ち出すことが多いですよね?」

藤崎「うん、間違いない」

滝沢「終盤以降、同じような局を何度か見ました」

藤崎「100Pくらいリードして3日目なると、1枚目から仕掛けて、軽いアガリをする人が少なくなる。仕掛けた人のテーマがはっきりするから、逆に打ち出すようにしていたんだ」

滝沢「なるほど。普段の藤崎さんは、場面に影響を与えない、静かな牌から打ち出すのがベースだと思います。僕は字牌を打ち出す順番が、勝負の明暗を分けることが多いと思っています。派手な勝負所もたくさんありましたが、こちらのほうが気になりました」

藤崎「細かいところが疎かになっては、安定感のある麻雀にならない。なんとなくで打つ牌を減らして、意志のある打牌を増やすことが大事だね」

 

【久しぶりの勝利】

滝沢「そういえば、このプロ雀士インタビューに登場するのは久しぶりですよね?」

藤崎「つまり、しばらく勝っていなかったってことだよね」

ダンプ大橋「前回のインタビューは僕が書きました」

100
100
グランプリ2005優勝の藤崎智

◆ 藤崎智 タイトル戦年表 ◆

年度 タイトル戦 結果
1997 第14期十段戦 3位
1999 第16期十段戦 優勝
2000 第17期十段戦 5位
2002 第19期十段戦 3位
2003 第12期麻雀マスターズ 4位
2003 第29期王位戦 3位
2003 第3回日本オープン 優勝
2004 第21期十段戦 3位
2004 第30期王位戦 5位
2004 第4回日本オープン 3位
2005 第31期王位戦 4位
2005 グランプリ2005 優勝
2006 第15期麻雀マスターズ 3位

滝沢「懐かしい写真ですが、これに第30期鳳凰位が刻まれました。鳳凰位として、何か伝えたいことなどありますか?」

藤崎「降級争いみたいなところから、一気に決定戦に残れただけだから、勝っても偉そうなことは言えないね。リーグ戦では負けているようなものだから」

滝沢「じゃあ、鳳凰の部屋で楽しみにしています」

藤崎「文章はあまり、得意なほうではないんだけどね…」

100
第4期グランプリMAX解説室風景①
100
第4期グランプリMAX解説室風景②

 

前線から一歩引いた位置につけ、闇夜でバッサリ。
メディアが作った“忍者・藤崎智”のイメージは、本当にピッタリだ。
しかし、今回の鳳凰位決定戦では、鋭い切れ味だけでなく、幹の太い藤崎麻雀の芯を垣間見ることができた。

麻雀に定石はないが、自己流の定石を作るのは良いことだと藤崎は言う。

藤崎流の定石を研究すること、真の強さを知ることが、自己の雀力アップにつながることは間違いないであろう。
またワクワクするような課題ができた。

滝沢和典

プロ雀士インタビュー/第104回:藤崎 智

【鳳凰位獲得】
滝沢「さて、早速ですが、まずは鳳凰位決定戦の3日目、打九筒で瀬戸熊さんに7,700放銃となった局の話しを聞かせてください」
gpmax2012
 
滝沢「僕が解説していた時だったのですが…これは、今までの忍者のイメージを覆す打牌か!?
と思いました。トータルポイントでかなりリードしているということもあります」
藤崎「まあ、解説でタッキーも言っていたように、沢崎さんのドラ打ち、その後、数巡して手出し九万。そして、
瀬戸熊のリーチ」

滝沢「はい、沢崎さんの九万はほぼトイツ落としと見て良さそうです」
藤崎「そう。でも沢崎さんは俺の打九筒を見ることになるから、簡単に九万を打ってくるわけではないよね。だから、本当に一瞬の勝負なんだ。沢崎さんが安全牌に窮している様子がなければ、すぐに撤退する」
滝沢「そこまでは見ている方にも伝わったかと思います。でも・・・」
 
雀力アップ上級より
状態の良い時は、自分の不要牌はリーチの現物であるケースが多い。
従って、自分のテンパイの前に相手の危険牌を掴むのはあまり良い状態とは言えないのですが、
それでも自分の状態の良し悪しもわからないうちから、1枚も勝負出来ないのはいくら守備型の藤崎とはいえ弱過ぎる。
だから藤崎流は1枚だけ押す。
それでも更にテンパイせず危険牌が飛んでくるようならオリる。
攻撃型の人であればとりあえず、アガるか振るかの決着が着くまで勝負してみるのだろうが、守備型なら1枚が精一杯であろう。
「あそこであの1枚さえ押せていれば」なんて経験みなさんもありますよね。
これが1枚だけの理由でもある。もう1枚押せていれば…いやいやキリがない。
元来守備型はビビりなのだから1枚で充分である。
 
藤崎「まあ、結果的にやりすぎだったけどね。曖昧な部分に勝負をかけたわけではないってことは伝わるといいなぁ」
 
【天才、秀才】
藤崎「そういえば、後で放送を見たんだけど、同じ局の瀬戸ちゃん(瀬戸熊直樹プロ)の八万
gpmax2012
藤崎「この手牌からドラの八万を動かないんだから、たまげるよね!」
確かに、これは我々も驚愕しました。
藤崎「ドラを打った誠さん(沢崎誠プロ)もだけどさ。世の中には常識にはとらわれない強い奴がいっぱいいるよ」
 
雀力アップ上級より
麻雀プロは、天才肌の打ち手と秀才タイプの打ち手に分かれる。
天才肌の打ち手は、色々な引き出しを持ち感性に優れた打ち手が多い。
元々持って生まれた才能に恵まれたタイプであり、どんな戦法を試してみてもやはり最終的には勝つ。
それが経験値として積み上げられて、いろんな引き出しを持つ事になる。
これが天才肌の打ち手である。
逆に、秀才タイプの打ち手は自分自身の長年培ってきたスタイルで、芯のしっかりした麻雀をベースに打つケースが多い。
 
滝沢「藤崎さんは秀才の方だって書いていましたね」
藤崎「うん明らかに秀才タイプの方だね。タッキーも恐らくそうでしょう」
滝沢「名前を挙げたらキリがないですけど、プロ連盟には天才肌っぽい打ち手がたくさんいますね」
藤崎「そうだね。文章に書いた通り、経験に基づいた打牌選択が多い打ち手が多い。今の若手には減ってきたけど、昔は定石を知った上で裏切ってくる。あの強さを知らない、認められない内は一流とは言えないよ」
滝沢「様々な形の強さを知った上で、自分の麻雀に芯を作っていくのが大事ということですね」
gpmax2012
 
【定石はあるか?】
滝沢「若手といえば、この場面では何が正解ですか?って感じで、マニュアルを欲しがる打ち手が多いように感じます」
藤崎「期待値の計算の仕方が全員違っている以上は、結局方程式を作ることが難しいね」
滝沢「はい。もちろん問題によりますが、中には、答えが存在するものもあるかも。でも、その答えが存在するってことは、具体的に目に見える情報が多いときで・・・その情報を収集する努力って自分でやるべきことじゃないかな、と」
藤崎「そこが面白い部分だと思うけどね。みんな同じ打ち方になったら、麻雀が終わりになっちゃう。仮に細かいところまで定石みたいなのができて、みんながそれで打つようになれば、その返し技みたいなのができて、またそれを返す技ができて…その繰り返し。浅い所での定石はあるだろうけど、あまり意味はないと思う」
 
【東北支部のアドバイザーとして】
藤崎「最近、地方の若手が活躍しているよね、今期は小車祥(九州)、森下剛任(中部)がG1タイトル取ったし、他にも決勝に残る選手が増えてきた」
滝沢「現在東北のアドバイザーをされているそうですね」
藤崎「プロテストや新人研修のアドバイスを主に。若手のプロは、身近な人を倣う風潮があるから、良い選手が出てくれば、次の世代の選手も育つってことだよね」
滝沢「確かに」
藤崎「時間はかかるかもしれないけど、一歩一歩前進していくしかないね。なんとか東北からも活躍する打ち手が出てくると嬉しい」
 
【再び決定戦の話し】
滝沢「僕個人は、役牌の切り出しが特に興味深かったです。」
gpmax2012
滝沢「例えばこの局の2打目、いつもの藤崎さんなら、西から打ち出すことが多いですよね?」
藤崎「うん、間違いない」
滝沢「終盤以降、同じような局を何度か見ました」
藤崎「100Pくらいリードして3日目なると、1枚目から仕掛けて、軽いアガリをする人が少なくなる。仕掛けた人のテーマがはっきりするから、逆に打ち出すようにしていたんだ」
滝沢「なるほど。普段の藤崎さんは、場面に影響を与えない、静かな牌から打ち出すのがベースだと思います。僕は字牌を打ち出す順番が、勝負の明暗を分けることが多いと思っています。派手な勝負所もたくさんありましたが、こちらのほうが気になりました」
藤崎「細かいところが疎かになっては、安定感のある麻雀にならない。なんとなくで打つ牌を減らして、意志のある打牌を増やすことが大事だね」
 
【久しぶりの勝利】
滝沢「そういえば、このプロ雀士インタビューに登場するのは久しぶりですよね?」
藤崎「つまり、しばらく勝っていなかったってことだよね」
ダンプ大橋「前回のインタビューは僕が書きました」

100
100
グランプリ2005優勝の藤崎智

◆ 藤崎智 タイトル戦年表 ◆

年度 タイトル戦 結果
1997 第14期十段戦 3位
1999 第16期十段戦 優勝
2000 第17期十段戦 5位
2002 第19期十段戦 3位
2003 第12期麻雀マスターズ 4位
2003 第29期王位戦 3位
2003 第3回日本オープン 優勝
2004 第21期十段戦 3位
2004 第30期王位戦 5位
2004 第4回日本オープン 3位
2005 第31期王位戦 4位
2005 グランプリ2005 優勝
2006 第15期麻雀マスターズ 3位

滝沢「懐かしい写真ですが、これに第30期鳳凰位が刻まれました。鳳凰位として、何か伝えたいことなどありますか?」
藤崎「降級争いみたいなところから、一気に決定戦に残れただけだから、勝っても偉そうなことは言えないね。リーグ戦では負けているようなものだから」
滝沢「じゃあ、鳳凰の部屋で楽しみにしています」
藤崎「文章はあまり、得意なほうではないんだけどね…」

100
第4期グランプリMAX解説室風景①
100
第4期グランプリMAX解説室風景②

 
前線から一歩引いた位置につけ、闇夜でバッサリ。
メディアが作った“忍者・藤崎智”のイメージは、本当にピッタリだ。
しかし、今回の鳳凰位決定戦では、鋭い切れ味だけでなく、幹の太い藤崎麻雀の芯を垣間見ることができた。
麻雀に定石はないが、自己流の定石を作るのは良いことだと藤崎は言う。
藤崎流の定石を研究すること、真の強さを知ることが、自己の雀力アップにつながることは間違いないであろう。
またワクワクするような課題ができた。
滝沢和典