決勝2日目の朝が来た。泣いても笑っても、残り6半荘しかない。
今日も、同じゴールに向かいそれぞれがやるべき事をぶつけあう。
7回戦(起家から新谷・中尾・大和田・小車)
東2局、親の中尾が4巡目からこの1シャンテンでかまえている。













ここからツモが縦に入り9巡目に














こうなり迷う。正着打は何切りなのだろうか?
結局、中尾は
をツモ切り四暗刻の目は追わずとするが、すぐに
を引きテンパイ。
あっさり
をツモり4,000オールのアガリとなった。












ツモ
初日は大きな点棒の移動は無かっただけに、トータルトップ目の中尾が更に大きなアドバンテージを取った瞬間だった。
ここから小さく点棒は動くも、中尾が1人抜けた状態のまま南場を迎えた。
南1局、中盤で現状ラス目の大和田に以下のような手が入る。














ここで打
とすると、その
を下家の小車にポンされる。
小車はポンして良形だが、タンヤオのみの1シャンテンにかまえる。
大和田が、前巡ノータイムでドラの
をツモ切った事から、さばきに行こうとしているように見えた。









ポン


次巡、小車に
が流れた。もちろん小車は不要牌なのでツモ切るが、大和田にとって
が1番嬉しいツモだっただけに大和田はショックだったはずだ。
さらには、河にマンズが安く大和田の目から見て
はかなり良く見えた。
その後すぐに小車は
を引き入れ、中尾のツモ切った
でアッサリと1,000点アガるのだ。
本来なら大和田のアガリ牌になっていたはずの
だ。
小車がこのポンをするしないで、もしかしたら結果は大きく変わっていたのかもしれない。
南2局、先程の手はアガリに結びつかなかった大和田に、5巡目このテンパイが入る。












ドラ
大和田はほぼノータイムでリーチを打った。
どうするだろうか?打ち手によって選択が分かれるのではないだろうか。
リーチを打つメリットと手変わりを待つメリット。
この問題は麻雀を打つ人間にとって切っても切れない問題だ。
1枚の手変わりは3ハンも役が増えるが、枚数だけで考えるとアガリ牌である
はその倍の枚数存在する。リーチを打つことで出アガリ率は減少するが、その分もつれてツモアガリ率が上がる。
もちろん最高打点は跳満になるこの手だが、2,000点のアガリになるのはあまり嬉しくない。
大和田はおそらく、先手でこの手をリーチしない事はほぼ無い打ち手だろうと私は勝手ながら思っている。
大事な戦いや緊張している時も、その考えがブレない所が大和田の強さの根源にあると思えた1局だった。
しかし、決勝進出した選手は皆、先手リーチを打たれたところで簡単に引き下がるようなメンツではない。
親である中尾が9巡目にリーチを打ち、先手の大和田とめくり合う事になった。












リーチ
結果、中尾が
を掴み大和田に3,900の放銃となり点差が一気に丸くなった。
オーラス
東:小車 31,200
南:新谷 31,300
西:中尾 34,100
北:大和田 22,400
上3人は本当に近差だが、大和田もトップが見えない訳ではない。
なかなか本手をアガらせてもらえず、かわし手を多用し原点を維持してきた新谷に、ここで早そうな手が入る。
5巡目にはこんな1シャンテンで、トップを取るには申し分なさそうだ。












ドラ
上家で親の小車は、三色の見えるメンツ手に向かいトイツをほぐすも、結局縦に重なりはじめる。














ここから
をはらって、七対子へ移行することにした。
小車から
が切られたのは10巡目なのだが、新谷はこの
を鳴いてテンパイを取る事もできた。
この時新谷はこのような形だ。













チーしてドラの
を切ると、
でアガった時だけ一通が付き、トップ条件を満たすのだが、
は中尾からの出アガリだけしかトップ条件を満たさない。新谷は
に見向きもせずにツモ山に手を伸ばす。
心が強いなと、ただただ思った。
実はこの時、中尾は
を暗カンしており若干のテンパイ気配が出ていた。
5巡目からさほど形が変わらず1,400以上の失点をすると原点を割ってしまう事から、私が新谷の立場だったら焦って原点と2着維持、そしてよもやのトップ狙いの仕掛けをしてしまいそうだ。
トップと高打点を見据えノータイムでスルーするという、1度決勝を経験した事のある者の余裕と精神力の強さが見えた。
先程少しふれたが、
を暗カンした中尾は、実はタンヤオのみのテンパイをしていた。









暗カン



新谷がピンズによせているため、アッサリとはいかなそうだが、アガリトップの局面でヤミのきくテンパイが入るということはやはりツイている。
しかしここで、現状1人沈みの大和田にドラ単騎の逆転手が入る。












ドラ
終盤に入った所なので巡目は深いが、なんと新谷が1枚持っているだけで残り2枚は山にいた。
跳満ツモでトップになる大和田は、もちろんリーチでトップを目指す。
点差があまりない事から、他3名は流局を願いオリを選択せざるを得なかった。
結局大和田のみならず、誰1人Tをツモる事無く流局を迎え、大和田の1人沈みラスで7回戦は終了した。
7回戦成績
中尾+11.1P 新谷+3.3P 小車+1.2P 大和田 ▲16.6P
7回戦終了時トータル
中尾+46.2P 大和田▲9.2P 新谷▲10.7P 小車▲27.3P
トータルポイントが中尾の1人浮きになってしまい、他3名はこの辺でトップが欲しいところだ。
8回戦(起家から新谷・大和田・小車・中尾)
東2局、中尾はこのまま走りぬけようと、仕掛けを駆使して局を進めている。
この局も2巡目から役牌を仕掛けて、7巡目にはテンパイしていた。









ポン


しかしそうする事で直撃チャンスも生まれやすい。
大和田がその巡目で以下のテンパイを入れリーチを打ってきた。












リーチ ドラ
しかしこの局を制したのは新谷だった。
新谷は大和田のリーチ後この6,400のヤミテンを入れていたのだが、













ここに
を引き、イーぺーコーが付いた上に大和田の現物の
待ちへと変化した。
すぐに中尾がツモ切った
をとらえ8,000のアガリとなった。
大和田のリーチをけっただけでなく、トータルトップの中尾を直撃したことが、大きく状況を変えたアガリとなった。
東3局、トータルラスの小車が、親で1,000オールからの4,000オールをアガリ、少し抜けている。
中尾が現状ラス目で中尾包囲網が敷かれていた。
2本場、2着目の新谷が7巡目に七対子の西単騎リーチを打つ。












リーチ ドラ
ラス目である中尾は、すぐにチャンタ系の手からドラを使った七対子をテンパイ。
待ちの選択は
か
。まだ情報の少ない新谷のリーチは、いましがた
が通ったところで、中尾の河には
があった。中尾は思う。これは
単騎でリーチしたほうがアガれるのではないか。
中尾はリーチを打ち勝負に出た。
この中尾の選択は正解となり、大和田がオリきる牌が無くなって、中尾に8,000は8,600を放銃する。












リーチ ロン
七対子のリーチは中尾に持っていかれた新谷だが、親で4,000オールを引き、トップ目になる。
トータルポイントからみて、この半荘はトップを取りたいところだ。
南3局、10,100点持ちで親番の無い大和田に勝負手が入った。
6巡目ですでにこの形で、先手と高打点が見込めそうだ。












ドラ
7回戦で1人沈みラスをとっただけにこの手は成就させたい。
しかし、次巡
をツモり悩んでしまう。と言うのも、上段で既に
が4枚、
が1枚切れているのだ。
大和田はここから打
とし、ピンズの受け入れを広く残す事にした。
が、次巡裏目の
をツモってくる。
11巡目、やっと大和田に急所である
を引き入れてのテンパイが入る。
しかし、
の裏目さえなければ、この
で跳満のアガリだったと思うと、是が非でも次の待ち選択は慎重にいきたい。














選択肢は3つ。





枚数だけ見るとどれも6枚ずつ残っている。
を切り一通とピンフを付けたい所だが、下家で親の小車は何やら奇妙な河で
をポンしているので
がすでに放銃になる可能性があった。
結局、
で放銃しない形でリーチを打つ事に決めた大和田は、

と

の比較で、河の情報から高目の枚数が1枚多い
切りを選択するのだが、これが小車へ5,800の放銃となってしまう。









ポン

ロン
小車の話では、誰のリーチが来ようと、このテンパイはオリないし、
をツモった場合も
を切り待ち変えをするそうだ。
大和田がここで
を勝負し、跳満確定のリーチが打てていたら、小車の待ちの枚数よりも圧倒的に優秀な待ちであり、出アガリも期待できることから大きく加点できていたのかもしれない。
なんにせよ、大和田のメンタルに傷をつけた1局となった。
その後、沈んでいた中尾も原点以上に復帰し、大和田の1人沈みでオーラスを迎えた。
2本場供託2本、トータルトップの中尾から出アガリし、しっかり原点を割らせた新谷がこの半荘を制したのだった。
8回戦成績
新谷+32.2P 小車+10.9P 中尾▲5.0P 大和田▲38.1P
8回戦終了時トータル
中尾+41.2P 新谷+21.5P 小車▲16.4P 大和田▲47.3P
9回戦(起家から新谷・大和田・小車・中尾)
直接対決なので、ここからの戦いは特に誰がトップで誰がラスかが重要になってくる。
東2局、9巡目中尾はこの形で本手リーチを打つ。












リーチ ドラ
しかし、中尾を追う新谷も黙ってはいない。すぐにテンパイし中尾とのめくり合いにもっていく。












リーチ
ここで、親の大和田が新谷のリーチ宣言牌の
をチーしてテンパイを入れる。
実は大和田は、5巡目からずっと形の変わらない1シャンテンだった。









チー

ドラの見えない2件リーチだが、トータルポイントを考えると簡単に引くことのできない親番だ。
すぐに新谷が中尾のアタり牌である9を掴み、8,000は8,300放銃となるのだが、大和田が仕掛けることをしなければ、トータルトップの中尾に2,000・4,000をツモられていた。
トータルポイントで中尾に詰め寄っていた新谷が、今回放銃に回った事はツイていない。しかし、大和田にとっては、親は流れてしまったがそれほど悪くない結果となった。
新谷がツイていない雰囲気を引きずったまま南入する。
ポイントは新谷の1人沈みだ。
南2局1本場、ここでトップをとっておきたい大和田に、親で良い配牌が来る。













2巡目に、簡単に
を引き打点も十分なホンイツへむかった。
しかし、大和田が持っている南は小車にもトイツだった。
その小車は、配牌からマンズに寄っており、5巡目にはすでに手牌がマンズと字牌だけになる。













その巡目、
をポン、すぐに
と
を引き9巡目には、
と
待ちでテンパイする。
小車の河はあまりホンイツに見えないので、
は別としても、
での出アガリは十分に期待が持てた。
現状1人沈みの新谷、ここでひとアガリ欲しいところだが、結構厳しい配牌だったためなかなか手が進まない。染める気はあまり無かったのだが、字牌がどんどん重なり、大和田と同じピンズで流局間際にやっとテンパイする。






ポン

ポン


あんなに早そうだった大和田は一向に有効牌を引かず、
・
も新谷・小車と持ち持ちでずっと1シャンテンのままだった。
結局、9巡目以降ずっとツモ切り続けた小車が
をつかみ、新谷に5,200は5,500の放銃となり新谷は少し加点することができた。
オーラス
東:中尾 36,300
南:新谷 20,900
西:大和田 31,300
北:小車 31,500
北家の小車が













ここから、ドラの
と
を引き入れ、11巡目にトップ条件を満たしたリーチを打つ。












しかし1人沈みの新谷に逆転手が入り小車を追いかける。













単騎選択は
と
で新谷は
を選択。だがすぐに小車が
をツモ切りする。
は河に1枚と小車に1枚で残り1枚しかいない。若干望み薄かと思われた。
しかし新谷は、このラス牌の
をすぐにツモりラスからトップへと大逆転する。
トップを取りにいくリーチ棒で、ラスになった小車にとっては非常に痛い結果となった。
ひとつひとつの選択で、大きく結果が変わってくるのだと思わされる非常にドラマティックなオーラスだった。
9回戦成績
新谷+11.9P 中尾+4.3P 大和田▲5.7P 小車▲10.5P
9回戦終了時トータル
中尾+45.5P 新谷+33.4P 小車▲26.9P 大和田▲53.0P
10回戦(起家から大和田・小車・新谷・中尾)
先程のトップで、新谷がかなり中尾に迫ってきた。
残り3回戦、精神的にもここからがかなりきつい戦いになるだろう。
点棒は小さく小さく動きながら局が進んでいく。
東4局、親の中尾に8巡目テンパイが入る。












ドラ
すぐに
を引くもリーチはせずに、静かに
を切った。
これまでの中尾ならリーチをしたのではないだろうか?
自分に追いつこうとする新谷を狙っていたのか、国士模様の小車を狙っていたのか。
中尾は、その場その場で戦い方を変化させているように思えた。
このヤミテンが功を奏し、その巡目で小車の
をとらえ11,600のアガリとなる。
このアガリによって大きくアドバンテージをとった。
他3名全力でくらいつくも、中尾は逃げ切りトップ目のままオーラスを迎える。
東:中尾 49,800
南:大和田 19,200
西:小車 18,700
北:新谷 32,300
8巡目、ラス目の小車からドラ切りのリーチが入る。












リーチ ドラ
中尾は親で現状トップだが、オリる気はない。自分がドラを2枚持っている事からドラ切りのリーチにはいきやすく、トータルポイントも離れている小車には放銃しても良いと思っているのだろう。
現状の待ちこそ悪いが、3人を更に突き放すチャンスだった。













小車と中尾のツモ切りが続く中、安全牌が全くない新谷が小車に
で7,700放銃してしまい、中尾に1人浮きトップを許してしまう。
この放銃で、新谷と小車の着順も変わってしまい、更に中尾が抜けた状況になってしまった。
10回戦成績
中尾+31.8P 小車▲4.6P 新谷▲8.4P 大和田▲18.8P
10回戦終了時トータル
中尾+77.3P 新谷+25.0P 小車▲31.5P 大和田▲71.8P
11回戦(起家から大和田・新谷・小車・中尾)
残り2半荘。
小車・大和田がトータルトップになるにはおそらく連勝条件ぐらいで、もちろんここから2半荘の中尾の順位も大きく関わってくる。
東1局、小車は七対子をリーチして一発でツモり、1,600・3,200をアガる。
もちろん一発はAルールで役にはならないが、これまでの自分とは違うのだぞと、勢いを見せ付けたアガリとなった。












リーチ ツモ
勢いの付いた小車が小さく加点しながら局を進め、その小車から5,200アガった中尾がしかっりと2着につけて南場を迎える。
中尾は局を早く進めようと、早い巡目から仕掛けをおこない、ドラの
待ちでとりあえずのテンパイをとる。






ポン

ポン


中尾を好き勝手させる訳にはいかないと言わんばかりに、親の新谷も3フーロしてテンパイ。



ポン

ポン

ポン


中尾はここから更に
をポンしトイトイに変化。
場に1枚の
に待ち変えをしホンイツもつけた。
2人が3フーロし、どちらが勝つかのめくり合いだった。
そこに小車がテンパイを入れる。













この
なのだが、自分の目から既に6枚見えており、場にマンズが安く大和田がベタオリをしていることから、残りはおそらく山にいて、リーチするかが非常に悩ましい。
とりあえず残り2枚のドラの所在も分からないので、ヤミテンで様子を伺うことにした。
しかし新谷がドラの
をツモ切りし、その
に大和田が合わせた事で、小車の目にはドラが全部見え
が山にいる事が確実になった。
このままヤミテンでも拾えそうなアガリだが、トータルポイントを考えると、3人でめくり合いをした方が良いので、小車はツモ切りリーチを打つ。
残り少ないその九は、新谷のツモ山におり新谷が小車に7,700の放銃となった。
南3局、勢いのある小車は親で連荘をはじめる。
テンパイ、3,900は4,000オール、テンパイと場を制しはじめた。
3本場、はやくこの親を流したい中尾にピンズ寄りの早い手が入る。
5巡目














こうなり効率よく
を切った。
次巡、小車から切り出された
に少し仕掛けを考え止まってしまうがスルーを選択。
中尾がここで必要なのは、打点ではなく確実なアガリだからだ。
すぐに急所である
を引きテンパイ。
ヤミテンでこの親が落ちる瞬間を今か今かと待った。













しかし、アガリの発声はまたしても小車の声だった。
中尾がツモ切った
にロンの声。













ドラの
雀頭の11,600だ。
実は中尾が仕掛けようかと考えた
切り、あそこで既に小車はテンパイしていたのだ。
小車は大和田の国士模様に、
がこぼれるチャンスを伺っていたのだが、中尾から直撃という最も良い結果となった。
もうほぼ中尾で決まりなんじゃないだろうかと思っていた者も多かっただろう。
しかしこのアガリが、もしかしたら中尾以外の者が獲るかもしれないなと多くの人間に思わせたアガリとなった。
この結果、11回戦はトータルトップの中尾にラスを押し付け、小車が1人浮きの大きいトップをとった。
11回戦成績
小車+55.4P 新谷▲9.8P 大和田▲15.7P 中尾▲29.9P
11回戦終了時トータル
中尾+47.4P 小車+23.9P 新谷+15.2P 大和田▲87.5P
12回戦(起家から小車・新谷・大和田・中尾)
いよいよ長かった戦いも最終戦となる。
11回戦でかなりポイントをたたいた小車が、トータル2着目につけていた。
中尾を追う小車と新谷。現実的には優勝は少し厳しい大和田以外は、この半荘のトップは絶対条件だった。
東1局、親の小車はこのような配牌をもらう。













ドラ
ここから1巡目に打
としチャンタ三色を目指す。
トータル2着の小車の親を、早くけってトップのまま終わらせてしまいたい中尾は、2巡目にこんな仕掛けをする。









ポン


どんな配牌でも自分にできるMAXのスピードで勝負するようだ。
しかし、その仕掛けの後、着々と小車が有効牌を引き6巡目にリーチを打たれてしまう。












リーチ
ここで中尾は1歩も引かなかった。親のリーチだろうが関係ない。ギリギリまで攻めきるのだ。
小車のリーチに4枚の無スジを押し切り、新谷のリーチ宣言牌である
をとらえる。









ポン

ロン
東2局1本場、9巡目既に
を仕掛けて加カンしている小車が、以下のテンパイになる。






チー

加カン


ドラ
小車がテンパイしてすぐ大和田に以下のテンパイが入った。














大和田はリーチ宣言牌のRで、小車に8,000は8,300を放銃してしまう。
をツモってきたのは小車も大和田も1シャンテンの時なのだが、その時に切っていたらポンで済んでいたのだ。
しかし1シャンテン時、大和田はカン
という急所があったため、さすがにドラの
が切れなかった。
牌の後先だった。
小車は11回戦の途中から、今までとは別人のように配牌とツモがよく、この半荘も4局連続して配牌や早い巡目からドラがトイツだった。小車の勝ちたいという気持ちにまるで牌がこたえているかのようだった。
東4局、毎回早い手が入っていた親の中尾は、8巡目この1シャンテンからドラの
をリリースする。














その
を下家の小車がポンする。次巡ツモった
を加カン、リンシャンからのツモでテンパイし、すぐに2,000・4,000をツモアガリした。









加カン


ツモ
このアガリで小車が40,000点を超えるトップの状態で南場へと突入。
南2局、戦える手が来るまではおとなしくチャンスを伺っていた新谷の親だ。
新谷は11巡目このようなテンパイを入れる。












ドラ
手変わりも見据えてのヤミテンだ。
14巡目、上家の小車から
が切られるが新谷はこれを見逃しノータイムでツモりに行く。
なんとしても中尾の点棒を削り順位を落としたい所だ。
新谷はグッと我慢した。その我慢強さは観戦者の目にしっかりと焼きついた。
次局は本手をモノにしたい。新谷は思っただろう。
しかし、その思いも虚しく、中尾が仕掛けて局を流しゲームは南3局へと進んだ。
ラス前
小車 45,300
新谷 29,000
大和田 11,900
中尾 33,800.
それぞれが、自分が何をすべきかを考えた。
小車・新谷は中尾に30,000点を切らせるために、中尾から3,900以上のアガリをするか、素点を稼ぎオーラスに持って行きたい所だ。
中尾は逆に、原点を割らない事が大事になってくるので、局を早く流してしまいオーラスを迎えたい。
11巡目、中尾を追う小車がツモり三暗刻のリーチを打つ。












ドラ
同じく中尾を追う新谷は、9巡目からタンピン三色の1シャンテンで













ここから小車に
をツモ切り、3,200を放銃してしまう。
オーラス
小車 48,500
中尾 33,800
新谷 25,800
大和田 11,900
それぞれの優勝条件はこうだった。
中尾:ノーテン流局
小車:1,000・2,000・新谷、大和田から5,200・中尾から2,600
新谷:6,000・12,000ツモ・他家から32,000直撃。
大和田:なし
小車の優勝条件が軽いことから、まずはひとアガリしようと中尾は全力でアガリに向かう。
2巡目に、
を仕掛け3巡目にもうひとつポン。これでテンパイ。
次巡アッサリとツモり、新谷と大和田は2回しかツモ番が回ってこないまま500オールの支払いになった。






ポン

ポン

ツモ
このアガリによって小車の条件が先程よりも重くなった。
1,200・2,300ツモ・新谷、大和田から8,000・中尾から3,200
現実的には1,300・2,600を作りに行くだろう。
中尾は、今回は流局狙いで1巡目から小車の安全牌を集めた。
6巡目、小車はこの1シャンテンから打
とする。













ドラ
が入ればツモ条件を満たすのでリーチが打てる。
が、残念な事に
を引き
待ちの条件を満たさないテンパイになってしまった。
ここから
を切りタンヤオか
の重なりに期待し、テンパイをはずす。
三倍満ツモ条件の新谷はというと、ドラの
を使ったメンホンに向かい条件を作ろうとしていたが、三暗刻かチャンタの2ハン役が必要になったためテンパイすることができなかった。
そして、小車も残念ながらハイテイまで形が変わらず全員ノーテンで流局。
第14期皇帝位は中尾多門に決定した。
12回戦成績
小車+26.0P 中尾+9.3P 新谷▲8.7P 大和田▲26.6P
第14期皇帝位戦結果
優勝:中尾+56.7P 準優勝:小車+49.9P 3位:新谷+6.5P 4位:大和田▲114.1P
優勝した中尾は祝勝会の席でこう言っていた。
「自分は小車さんのようにG1タイトルを持つわけでもない。大和田さんのように中央リーグに参加しているわけでもなく、新谷さんのように九州の事務局の仕事をしているわけでもない。
だが、この決勝は引け目を感じずに全力でぶつかっていきました。
それに応えるように、他3名も全力でぶつかって来てくれて、人間力のぶつけ合いが本当に楽しかったしその戦いで勝てた事が純粋に嬉しいです。」
選手はもちろんだが、観戦しこのレポートを書いている私も、おそらく観戦してくれた方々も、本当に楽しめた2日間だったんじゃないだろうか。
これからもそんな場面を、麻雀を通じて沢山作っていけたらいいなと思わされた決勝だった。
優勝者を称えていたとはいえ、小車・新谷・大和田が悔しくないわけがない。
麻雀マスターズ決勝という大きな舞台を経験している小車でさえ、「何度経験しても決勝の舞台で戦うのは良い経験になる」と言っていた。
その経験の数だけ打ち手として成長するのだろうなと私は感じることができた。
そして今回の敗北を経て臨む次のリーグ戦は、彼らにとって今までとはまた違った戦いになるのだろう。
皇帝位を手にした中尾は、これから少なくとも1年間は九州のトップとして君臨することになり、麻雀の内容を内側からも外側からも今まで以上に多くの人に見られるようになる。
強い部分を見せ付けるチャンスでもあり、反対に甘い部分には厳しい意見も出るかもしれない。
そのプレッシャーの中で戦うことを唯一許された皇帝位中尾は、間違いなく今以上の打ち手になるだろう。
そうして1年後、5年後、10年後の中尾が、自分が初めてタイトルを獲得した戦いを振り返った時にどう思うのか。何を感じるのか。それはまだわからない。
わからないが、そんな時に私の書いたこのつまらないレポートが、少しでも役に立てたらこんなに嬉しいことはない。
その思いだけでこのレポートを仕上げたと言っても過言ではない。
最後に、選手の皆さん本当にお疲れ様でした。
差し出がましくも私のような新人が、このようなレポートを書かせていただいた事を光栄に思っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。