第16期特別昇級リーグ 決勝レポート 小車祥

去る8月10日、連盟四ツ谷道場にて第16期特別昇級リーグの決勝が行われた。

鳳凰位。
それは我々日本プロ麻雀連盟のプロならば誰しもが憧れる頂点の座。
現在プロリーグは研修リーグを除いても10段階のリーグに分かれている。
D3リーグからA1リーグへ最短で昇級していったとしても、鳳凰位を獲得できるチャンスを得るのは6年目。
もちろん全てストレートに昇級などまず無理なので、それ以上の時間がかかってしまう。

そこで、力のある若手へのチャンスとして特別昇級リーグが設けられている。
各リーグの昇級者や、タイトル戦の決勝に残った者へ、特別昇級リーグへ出場する権利が与えられる。
リーグ戦が始まった時に立会人である藤原プロが言った。

「優秀なプロを助けるためのリーグであるが故に、昇級条件や失格となる条件も厳しい。
ここにいるというだけでチャンスなのだから、きっちりチャンスを活かして欲しい」

その言葉通り、チャンスをものにするべく決勝へと駒を進めたのは以下4名。

土井 悟(+152.5P、C2)
福光 聖雄(+127.3P、C2)
高宮 まり(+114.0P、C2)
本田 朋広(+105.3P、D1)

特別昇級リーグでの昇級の条件の1つに、その期のプロリーグをプラスで終えることというものがある。
そのため、特別昇級リーグの決勝では「昇級権利を持っているのは事実上1名のみ……」というようなことも少なくないのだが、今期の決勝はなんと全員に昇級権利が残っている。
しかも福光と本田に関しては、それぞれのリーグで自力昇級を決めていた。

この特別昇級リーグには、それだけ力のある選手ばかりが集まっているということなのである。
4者の譲れぬ戦いの幕が開けた。

 

1回戦(起家から、本田・土井・高宮・福光)

東3局、立ち上がりは小さな点数の動きしかなかったのだが、ここで最初に本手を決めたのが本田。

三万四万五万五索五索四筒五筒五筒六筒七筒北北北  リーチ  ツモ三筒  ドラ五筒

ドラが2枚あるチャンス手だなと思って見ていたが、あっさりテンパイし、あっさりツモった。
こんな簡単に2,000・3,900をアガれていいのかと、見ているこちらが嫉妬するほどだった。

東4局、9巡目に土井がドラ単騎待ちの七対子をリーチ。

六万四索四索八索八索九索九索一筒一筒九筒九筒発発  リーチ  ドラ六万

これを受けて高宮の手牌。

三万四万四万五万五万六万七万七万八万八万東南南

この手をもらっては全面戦争の構えだったが、有効牌をツモることも仕掛けることもできないまま、土井がドラの六万をツモ。
3,000・6,000

南2局、高宮が1巡目に白ポン、5巡目に中ポンと、積極的に仕掛け以下の手牌。

七万七万九索九索一筒三筒発  ポン中中中  ポン白白白  ドラ七筒

次に七万をツモりテンパイするも、打一筒とテンパイを取らない。
2,600テンパイよりもトイトイや大三元を目指す。
発を打ち出さないことで、周囲への牽制も兼ねていた。
強い意志を持って前に出た高宮だったが、ツモ切った四万に土井からロンの声がかかる。

二万三万三索四索五索二筒三筒四筒五筒六筒六筒六筒七筒  ロン四万

高宮は5,800の手痛い放銃となってしまう。

南3局2本場、ここまで展開に恵まれない高宮は、1回戦最後の親番の維持に全力を注ぐ。
5巡目に南をポンして以下の手牌。

一万二万九万九万一索一索二索東西発  ポン南南南  ドラ九万

ドラドラだが、簡単には鳴かせてもらえそうもないどう見ても苦しい手牌。言ってしまえば泥臭い。
小柄で容姿端麗な高宮からは、想像もつかないような泥臭い必死の闘牌。

私は苦しい仕掛けのその声のトーンや、内に秘められた熱い思いに胸が苦しくなった。
しかし無情にも、この局を制したのは本田。

三万三万三万九万九万二索三索七筒七筒八筒八筒九筒九筒  ツモ四索
2,000・3,900

南4局、福光の親番。
本田と800点差でトップの土井は、開局第1打からドラの白を河に置く。
1回戦をトップで逃げ切りたいという意志のこもった打牌。
土井は役牌の西を仕掛けて局を終わらせに行く。
ここで高宮がテンパイ、リーチ。

六万七万八万二索二索四索五索六索五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ白

高宮が七筒をツモって1,300・2,600。
トータル首位だった土井がリードを広げる形で1回戦が終了する。

1回戦成績
土井+23.1P  本田+18.3P  福光▲17.3P  高宮▲24.1P

1回戦終了時
土井+175.6P  本田+124.2P  福光+110.0P  高宮+89.9P

 

2回戦(起家から、本田・福光・土井・高宮)

東3局、高宮が5巡目に九万をポン。
その後、九万七万八万とツモって以下のテンパイ。

二万二万四万五万六万六万七万八万八万九万  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ドラ二万

苦しい待ちだが、跳満確定の勝負手。
ここに三万をツモって来て少考の後、三万をツモ切り。

二万と六のシャンポンに受け変えはできるが、場に六万が2枚出ていたので待ちは変えない方がいいだろう。
同じ待ちのままでも九万を加カンすることができた。
リンシャン牌でツモれば倍満となる手だけに、カンもありだったかと思いながら見ていた。

次のツモが四万、カン五万に受け変えることもできるが待ちを変えずツモ切り。
そして次のツモが裏目の五万
高宮はここで九万を加カンし、二万八万のシャンポン待ちへと受け変える。
リンシャンから持ってきた中をツモ切ると、親の土井からロンの声がかかる。

二筒二筒四筒四筒五筒五筒六筒六筒白白発発中  ロン中

12,000の放銃。最初のツモ三万の時にカンをしていれば、この中は土井のテンパイよりも先に切ることができていた。
そして三万を残していると、四万ツモで二万五万待ちに変えることができ、五をツモっていた。

もちろんこれは結果論かもしれない。自分の目から六万が4枚見えている七万待ちにしたくなる気持ちもわかる。
しかし、そのそれぞれの選択によって待っている結果が両極端過ぎる高宮にとってはきつい局であった。

南2局、南家の土井が早々に南をポン。7巡目に以下の手牌。

三万三万二索三索五索六索七索九索九索白  ツモ一索  ポン南南南  ドラ白

トップ目なのでドライにドラをリリースするかとも思ったが、ここはテンパイ取らずの打三万とした。
その巡目で福光がテンパイし、以下のリーチを打つ。

一万二万四万五万六万七万八万九万二索二索三筒四筒五筒  リーチ

これは土井の手の中にあるもう1枚の三万が捕まってしまったかと思いながら見ていた。
しかし、土井はこのリーチを受けて九索のトイツ落とし。
結局、ギリギリのところで逃げ切り流局となった。

南3局、親の土井が2巡目に中をポンして以下の手牌。

四万六万八万三索四索七索一筒二筒四筒五筒  ポン中中中  ドラ四万

かなりリスキーな仕掛けである。
親番とはいえトータルトップでこの2回戦目もトップ目。
しかし7巡目には以下の形に整う。

四万五万六万一索二索三索四索五索四筒五筒  ポン中中中

13巡目にはついにツモ四筒でテンパイしてしまった。
ここで福光から声があがる。

二万三万四万三索三索四索五索五索七索八索九索四筒五筒  ツモ四索  リーチ 打五筒 上向き

四筒単騎の思い切りの良いリーチである。
同巡、本田からもリーチ。

一万一万四万四万六索七索七索八索八索九索三筒三筒三筒  リーチ

こちらもドラドラの本手。
3者の内、誰に軍配が上がるかと見ていると、高宮が長考の末九筒を暗カン。

二筒二筒二筒四筒五筒六筒六筒七筒七筒八筒  暗カン牌の背九筒 上向き九筒 上向き牌の背

リンシャンから持ってきたのは六筒で、打八筒とする。
全員が前に出るという、競技Aルールでは珍しい局となったが、この局アガリ切ったのは土井。
高宮がツモ切った六索で、2,900のアガリとなった。

このように、一見リスキーな仕掛けを見せる土井だが、ギリギリのところで逃げ切り誰も捕まえられない。
このまま2回戦も土井が逃げ切り、一気に土井の優勝ムードが高まるかに思えたオーラス。
親の高宮がドラドラの手牌をもらう。
ここまで良い手が入っているものの競り負けて放銃となってしまう局面が多い高宮。
積極的な攻めの姿勢を見せる。

5巡目に土井から切られた四索をチー。

五万六万八万八万五筒七筒七筒七筒八筒九筒  チー四索 左向き二索 上向き三索 上向き  ドラ八万

その後、なんとか以下のテンパイまで漕ぎ付ける。

八万八万二索四索七筒七筒七筒  チー四万 左向き五万 上向き六万 上向き  チー四索 左向き二索 上向き三索 上向き

土井は中を仕掛けて以下のテンパイを入れていた。

三万四万七万八万九万一筒二筒三筒南南  ポン中中中

残りツモ2回というところで、ツモってきた四を高宮に切りきれず、場に1枚出ていた南のトイツ落とし。
次巡、五万をツモってしまいアガリ逃し。しかし四万単騎のテンパイ。
ハイテイ牌が回ってきた土井。ハイテイのツモは三索で高宮のロン牌。

四万をやめているので、当然テンパイ崩すかなと思いきや、この三索を勝負。
タンヤオ・ハイテイ・ドラ2の11,600を放銃してしまう。

オーラス1本場にも、土井は高宮に2,900は3,200を放銃。
オーラス2本場には、福光に700・1,300をツモられ、土井はついには配給原点を割り2回戦を終えてしまった。

2回戦成績
福光+15.3P  本田+6.9P  土井▲4.5P  高宮▲17.7P

2回戦終了時
土井+171.1P  本田+130.5P  福光+125.3P  高宮+72.2P

 

3回戦(起家から、福光・本田・土井・高宮)

東2局、本田は親番で積極的に仕掛けていく。

九万三索七索九索九索発中  ポン東東東  ポン白白白  ドラ八万

親がここまで派手な仕掛けを入れれば、もうこの先は自力でツモるしかない。
七索中とツモり1シャンテンとなる。
ここで福光が以下の手牌。

二万三万四万七万二索二索四索五索六索六索六索四筒五筒六筒

七万を切ればタンヤオのテンパイ。
本田の河はソウズのホンイツが濃厚なのだが、ドラそばの七万での放銃となると11,600を覚悟しなければならない。

そして、本田の手出し九万が気になっているのだ。
福光は七万を切りきれず、打二万とする。そして上家から切られた三索をチー。
これは七万を切っていればアガリとなっていた牌である。

結果的には、このチーが最悪となってしまう。
本田に流れた牌は九索、そして中

七索七索九索九索九索中中  ポン東東東  ポン白白白  ツモ中

本田の8,000オールが炸裂する。

南3局にも2,000・3,900をアガった本田が、3回戦を制しトータルトップに躍り出る。

3回戦成績
本田+29.0P  高宮+14.4P  福光▲17.0P  土井▲26.4P

3回戦終了時
本田+159.5P  土井+144.7P  福光+108.3P  高宮+86.6P

 

4回戦(起家から、土井・福光・高宮・本田)

東2局、親の福光にドラの発が暗刻で入るがなかなかテンパイできない。
そうしている内に土井がリーチを打つ。

一万二万三万一索三索一筒二筒三筒六筒七筒八筒西西  リーチ  ドラ発

本田もすぐに追いつき、追いかけリーチ。

一万二万三万四万五万七万八万九万二索二索一筒二筒三筒  リーチ

福光もオリる気はなくぶつかり合うことが予想された。
土井のアガリ牌である二索は、河に1枚切られていて、本田が雀頭にしている。
そんなことを知る由もない土井は、あっさりとラス牌の二索をツモった。

見えている本田は「まじか……」と思ったのではないだろうか。
見ている私ですらそう思ったのだから。

東4局、土井が積極的に仕掛ける。

五万三索五索二筒二筒六筒七筒  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き  ドラ中

これはまたリスキーな仕掛けだと思った。
しかし土井は、そのリスクを承知で前に出ている。
これまでにこういう局面を何度も見てきたし、その度にギリギリのところで競り勝ってきているからだ。

土井の手牌が整わない内に、福光がテンパイした。

九万九万八索八索六筒六筒九筒九筒東北北中中  リーチ

リーチしたその巡目で土井が東を掴む。
福光は、土井と本田の2人を追わねばならぬ立場。
やはりここはリーチが定石となってしまう。
福光がヤミテンなら止まらない牌だが、リーチならば土井は打たないのだ。

こういう局面になると簡単にオリを選択する。1枚でも現物があればそれを切る。
そうやって、ギリギリの押し引きで凌いで今の位置にいるのだ。
結局、もう1枚重ねた東を土井は河へ切ることはなく、流局となる。
やはり土井の強さは、この絶妙な押し引きバランスにあるのだと確信した。

南3局、残すところ高宮の親番と、オーラスの本田の親番のみ。
親番のなくなった福光は、かなり苦しい状況に立たされていた。
配牌8種から国士へ向かう。

8巡目、最後の親を落としてしまうと負けが確定する高宮は、以下の手でリーチを打つ。

五万五万五万四索六索二筒二筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ドラ南

ドラも手役もなく待ちも悪いリーチ。
しかし、このリーチを打つしかない立場の高宮と、最後まで諦めない姿勢に胸が熱くなる。
そして、このリーチを受けた巡目に、なんと福光が国士をテンパイしていた。

福光の雀頭は失念してしまったが九筒待ち。
そしてリーチを打っている親の高宮の河には九筒が1枚。
今にもアガれそうな待ちだった。

冒頭にも書いた通り、福光はC1リーグへの昇級を決めている。
つまり福光にとって、この特別昇級リーグは優勝でのB2リーグ格付けにしか意味のないものとなっている。

2人を追う立場の福光は、高宮から国士をアガってもあまり意味はなく、できればツモりたいと考えていたはず。
もし河に九筒が出てしまった場合どうしようか、福光のそんな心配も杞憂に終わってしまう。
福光が二索を切ったことで、スジとなってしまった五索を本田が切り、高宮の2,000のアガリとなる。

南3局1本場。
高宮の粘りも虚しく、本田のアガリ。

二万三万二索三索三索四索四索五索二筒二筒八筒八筒八筒  リーチ  ツモ四万  ドラ九索

1,000・2,000は1,100・2,100。

南4局。
本田28,000点持ち。土井43,200点持ち。
本田は、原点復帰は最低条件。
土井はアガれば何でもいい状況。

本田の配牌。
三万六万八万一索三索六索七索一筒一筒五筒八筒東発  ドラ五筒

土井の配牌。
一万二万四万二索四索一筒一筒五筒六筒西中中中

土井は本田の下家。
これはもうさすがに決まったかなと、この時点で思わされていた。

本田、重ねた八筒をポン、七索をポン。
ツモにも助けられなんとかテンパイ。

六万六万五索六索三筒四筒五筒  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き

土井も果敢に仕掛け、テンパイ。

一筒一筒五筒六筒中中中  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き

土井はアガれば優勝。自分のアガリ牌以外は全てツモ切るのかと思っていたが、ドラの五筒をツモって長考する。
確かに、親の仕掛けに対してドラでは放銃したくない。

しかし、アガリやめはないので、放銃してももう1局はある。
ドラでだけは打ちたくないのなら、間を取って打六筒という選択肢もある。
しかし土井は、一番確実な中の暗刻落としを選択。

親がノーテンでない限りは、必ず次の局以降の決着となる選択をする。
次の土井のツモは一筒で、シャンポンにすればアガっていた。
このアガリ形に行き着いた人ももしかしたらいるかもしれない。
まもなく本田が四索をツモ。1,000オールで原点復帰となる。

南4局1本場。
本田31,000点持ち。土井42,200点持ち。
2人ともノーテンで終わればトータルポイントが同点で終了するが、現実的には本田があと1回アガリ、次の局にノーテンで終わらせるか、土井がアガるかというものになるだろう。

本田の配牌。
一万六万七万九万三索四索六索九索七筒九筒東南白発  ドラ北

ここにきて本田はかなり苦しい手牌。

土井の配牌。
四万五万二索四索五索七索八索三筒四筒七筒九筒白白

役牌のあるまずまずの手で、なおかつその白は本田の手の中にある。
ここもかなり土井が有利な配牌となった。
土井は白ポンして1シャンテン。
本田、ここもツモに助けられテンパイ。リーチ。

一万二万三万五万六万七万三索三索四索五索六索七筒九筒  リーチ

本田のリーチ宣言牌は五筒で、土井はこれをチーしてテンパイ。

四万五万六万七索八索七筒七筒  チー五筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ポン白白白

土井の河には九筒が切られており、福光と高宮からの出アガリは期待できない状況。
本田は、土井に仕掛けさせないためにカン六筒待ちにしてリーチを打つべきだったのかもしれない。
しかし、確かにカン八筒はかなり良い待ちに見えたのも事実。

六索九索待ちは牌山にかなり残っており、土井の優勝は目前かと思った。
しかし土井は五万をツモると、打七索とテンパイを崩してしまう。
さすがにここは、たとえそれが親のロン牌であっても切るべきではないのかと思った。

これは本田にチャンスが生まれたかと思えたが、土井が五筒六筒とツモりテンパイ復活し、一度は止めた五万を勝負。

四万五万六万五筒六筒七筒七筒  チー三筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き  ポン白白白

本田が四筒をツモ切り、土井のアガリとなった。

4回戦成績
土井+26.5P  本田▲2.3P  高宮▲7.7P  福光▲16.5P

最終成績
土井+171.2P  本田+157.2P  福光+91.8P  高宮+78.9P

 

優勝は土井悟プロ。
見事、B2リーグへの昇級を勝ち取った。
準優勝だった本田朋広プロも、C1リーグへの昇級となる。
こうして、第16期特別昇級リーグは幕を閉じた。

高宮「今日は一生懸命頑張りました。また頑張ってこのステージに戻ってきます」

福光「土井さんは途中で何度かあたって、やりづらいなーと感じていた。対局が始まると、やはりやりづらかったです。今期自力昇級してるんで、来期もまた出れます。来期の特別昇級リーグこそは優勝したいと思います」

本田「悔しいの一言しかないです。泣きそう……。ターゲットはずっと土井さんだったんですが、最後まで逃げ切られてしまいました。でも来期はC1なんで、気合い入れてがんばります!」

土井「2回戦オーラスのカン三筒はやっちゃいました……反省です。今期のC2リーグでギリギリのところで昇級を逃した経験は大きかったです。その悔しさをバネに今日頑張れたと思います。来期B2は気合い入っているんで、リーグ戦前日までしっかりと体調を整えて挑みたいと思います!」

最近では、様々なタイトル戦の決勝やベスト8、16などが連盟チャンネルにて放送されている。
今回、特別昇級リーグの決勝戦に観戦記者として立ち会った私が、なぜこの対局がニコ生じゃないんだと悔しい気持ちになるくらい内容の濃い良い対局だった。

今回は私も1選手としての独自の見解を入れつつ、起こったことを正直に書かせて頂いた。
これを読んでくださった方にも様々な考え方や価値観があり、選手の選択をいろんな風に思うだろう。
それでいいと思っている。

間違いなく言えることは、そこに座って戦っている選手が一番苦しく、誰より勝ちたいと望んでいる。
その思いがプレッシャーになり、冷静さを欠く原因になり、手の震えを生む。
そんな中で得た勝利は、何物にも替え難い財産となるのである。

私もC1リーグを自力で昇級し、来期からはB2リーグ。
この勝利でさらに手強くなった土井とも牌を交えるだろう。
特別昇級リーグでの借りも返さねばならない。
全員に共通する思いは、鳳凰位という頂を目指すこと。

よき仲間であり、よきライバル。
理想の自分に近づくために、この日の4者の戦いを私の脳に刻んでおこう。

特別昇級リーグ 決勝観戦記/第16期特別昇級リーグ 決勝レポート 小車祥

去る8月10日、連盟四ツ谷道場にて第16期特別昇級リーグの決勝が行われた。
鳳凰位。
それは我々日本プロ麻雀連盟のプロならば誰しもが憧れる頂点の座。
現在プロリーグは研修リーグを除いても10段階のリーグに分かれている。
D3リーグからA1リーグへ最短で昇級していったとしても、鳳凰位を獲得できるチャンスを得るのは6年目。
もちろん全てストレートに昇級などまず無理なので、それ以上の時間がかかってしまう。
そこで、力のある若手へのチャンスとして特別昇級リーグが設けられている。
各リーグの昇級者や、タイトル戦の決勝に残った者へ、特別昇級リーグへ出場する権利が与えられる。
リーグ戦が始まった時に立会人である藤原プロが言った。
「優秀なプロを助けるためのリーグであるが故に、昇級条件や失格となる条件も厳しい。
ここにいるというだけでチャンスなのだから、きっちりチャンスを活かして欲しい」
その言葉通り、チャンスをものにするべく決勝へと駒を進めたのは以下4名。
土井 悟(+152.5P、C2)
福光 聖雄(+127.3P、C2)
高宮 まり(+114.0P、C2)
本田 朋広(+105.3P、D1)
特別昇級リーグでの昇級の条件の1つに、その期のプロリーグをプラスで終えることというものがある。
そのため、特別昇級リーグの決勝では「昇級権利を持っているのは事実上1名のみ……」というようなことも少なくないのだが、今期の決勝はなんと全員に昇級権利が残っている。
しかも福光と本田に関しては、それぞれのリーグで自力昇級を決めていた。
この特別昇級リーグには、それだけ力のある選手ばかりが集まっているということなのである。
4者の譲れぬ戦いの幕が開けた。
 
1回戦(起家から、本田・土井・高宮・福光)
東3局、立ち上がりは小さな点数の動きしかなかったのだが、ここで最初に本手を決めたのが本田。
三万四万五万五索五索四筒五筒五筒六筒七筒北北北  リーチ  ツモ三筒  ドラ五筒
ドラが2枚あるチャンス手だなと思って見ていたが、あっさりテンパイし、あっさりツモった。
こんな簡単に2,000・3,900をアガれていいのかと、見ているこちらが嫉妬するほどだった。
東4局、9巡目に土井がドラ単騎待ちの七対子をリーチ。
六万四索四索八索八索九索九索一筒一筒九筒九筒発発  リーチ  ドラ六万
これを受けて高宮の手牌。
三万四万四万五万五万六万七万七万八万八万東南南
この手をもらっては全面戦争の構えだったが、有効牌をツモることも仕掛けることもできないまま、土井がドラの六万をツモ。
3,000・6,000
南2局、高宮が1巡目に白ポン、5巡目に中ポンと、積極的に仕掛け以下の手牌。
七万七万九索九索一筒三筒発  ポン中中中  ポン白白白  ドラ七筒
次に七万をツモりテンパイするも、打一筒とテンパイを取らない。
2,600テンパイよりもトイトイや大三元を目指す。
発を打ち出さないことで、周囲への牽制も兼ねていた。
強い意志を持って前に出た高宮だったが、ツモ切った四万に土井からロンの声がかかる。
二万三万三索四索五索二筒三筒四筒五筒六筒六筒六筒七筒  ロン四万
高宮は5,800の手痛い放銃となってしまう。
南3局2本場、ここまで展開に恵まれない高宮は、1回戦最後の親番の維持に全力を注ぐ。
5巡目に南をポンして以下の手牌。
一万二万九万九万一索一索二索東西発  ポン南南南  ドラ九万
ドラドラだが、簡単には鳴かせてもらえそうもないどう見ても苦しい手牌。言ってしまえば泥臭い。
小柄で容姿端麗な高宮からは、想像もつかないような泥臭い必死の闘牌。
私は苦しい仕掛けのその声のトーンや、内に秘められた熱い思いに胸が苦しくなった。
しかし無情にも、この局を制したのは本田。
三万三万三万九万九万二索三索七筒七筒八筒八筒九筒九筒  ツモ四索
2,000・3,900
南4局、福光の親番。
本田と800点差でトップの土井は、開局第1打からドラの白を河に置く。
1回戦をトップで逃げ切りたいという意志のこもった打牌。
土井は役牌の西を仕掛けて局を終わらせに行く。
ここで高宮がテンパイ、リーチ。
六万七万八万二索二索四索五索六索五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ白
高宮が七筒をツモって1,300・2,600。
トータル首位だった土井がリードを広げる形で1回戦が終了する。
1回戦成績
土井+23.1P  本田+18.3P  福光▲17.3P  高宮▲24.1P
1回戦終了時
土井+175.6P  本田+124.2P  福光+110.0P  高宮+89.9P
 
2回戦(起家から、本田・福光・土井・高宮)
東3局、高宮が5巡目に九万をポン。
その後、九万七万八万とツモって以下のテンパイ。
二万二万四万五万六万六万七万八万八万九万  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ドラ二万
苦しい待ちだが、跳満確定の勝負手。
ここに三万をツモって来て少考の後、三万をツモ切り。
二万と六のシャンポンに受け変えはできるが、場に六万が2枚出ていたので待ちは変えない方がいいだろう。
同じ待ちのままでも九万を加カンすることができた。
リンシャン牌でツモれば倍満となる手だけに、カンもありだったかと思いながら見ていた。
次のツモが四万、カン五万に受け変えることもできるが待ちを変えずツモ切り。
そして次のツモが裏目の五万
高宮はここで九万を加カンし、二万八万のシャンポン待ちへと受け変える。
リンシャンから持ってきた中をツモ切ると、親の土井からロンの声がかかる。
二筒二筒四筒四筒五筒五筒六筒六筒白白発発中  ロン中
12,000の放銃。最初のツモ三万の時にカンをしていれば、この中は土井のテンパイよりも先に切ることができていた。
そして三万を残していると、四万ツモで二万五万待ちに変えることができ、五をツモっていた。
もちろんこれは結果論かもしれない。自分の目から六万が4枚見えている七万待ちにしたくなる気持ちもわかる。
しかし、そのそれぞれの選択によって待っている結果が両極端過ぎる高宮にとってはきつい局であった。
南2局、南家の土井が早々に南をポン。7巡目に以下の手牌。
三万三万二索三索五索六索七索九索九索白  ツモ一索  ポン南南南  ドラ白
トップ目なのでドライにドラをリリースするかとも思ったが、ここはテンパイ取らずの打三万とした。
その巡目で福光がテンパイし、以下のリーチを打つ。
一万二万四万五万六万七万八万九万二索二索三筒四筒五筒  リーチ
これは土井の手の中にあるもう1枚の三万が捕まってしまったかと思いながら見ていた。
しかし、土井はこのリーチを受けて九索のトイツ落とし。
結局、ギリギリのところで逃げ切り流局となった。
南3局、親の土井が2巡目に中をポンして以下の手牌。
四万六万八万三索四索七索一筒二筒四筒五筒  ポン中中中  ドラ四万
かなりリスキーな仕掛けである。
親番とはいえトータルトップでこの2回戦目もトップ目。
しかし7巡目には以下の形に整う。
四万五万六万一索二索三索四索五索四筒五筒  ポン中中中
13巡目にはついにツモ四筒でテンパイしてしまった。
ここで福光から声があがる。
二万三万四万三索三索四索五索五索七索八索九索四筒五筒  ツモ四索  リーチ 打五筒 上向き
四筒単騎の思い切りの良いリーチである。
同巡、本田からもリーチ。
一万一万四万四万六索七索七索八索八索九索三筒三筒三筒  リーチ
こちらもドラドラの本手。
3者の内、誰に軍配が上がるかと見ていると、高宮が長考の末九筒を暗カン。
二筒二筒二筒四筒五筒六筒六筒七筒七筒八筒  暗カン牌の背九筒 上向き九筒 上向き牌の背
リンシャンから持ってきたのは六筒で、打八筒とする。
全員が前に出るという、競技Aルールでは珍しい局となったが、この局アガリ切ったのは土井。
高宮がツモ切った六索で、2,900のアガリとなった。
このように、一見リスキーな仕掛けを見せる土井だが、ギリギリのところで逃げ切り誰も捕まえられない。
このまま2回戦も土井が逃げ切り、一気に土井の優勝ムードが高まるかに思えたオーラス。
親の高宮がドラドラの手牌をもらう。
ここまで良い手が入っているものの競り負けて放銃となってしまう局面が多い高宮。
積極的な攻めの姿勢を見せる。
5巡目に土井から切られた四索をチー。
五万六万八万八万五筒七筒七筒七筒八筒九筒  チー四索 左向き二索 上向き三索 上向き  ドラ八万
その後、なんとか以下のテンパイまで漕ぎ付ける。
八万八万二索四索七筒七筒七筒  チー四万 左向き五万 上向き六万 上向き  チー四索 左向き二索 上向き三索 上向き
土井は中を仕掛けて以下のテンパイを入れていた。
三万四万七万八万九万一筒二筒三筒南南  ポン中中中
残りツモ2回というところで、ツモってきた四を高宮に切りきれず、場に1枚出ていた南のトイツ落とし。
次巡、五万をツモってしまいアガリ逃し。しかし四万単騎のテンパイ。
ハイテイ牌が回ってきた土井。ハイテイのツモは三索で高宮のロン牌。
四万をやめているので、当然テンパイ崩すかなと思いきや、この三索を勝負。
タンヤオ・ハイテイ・ドラ2の11,600を放銃してしまう。
オーラス1本場にも、土井は高宮に2,900は3,200を放銃。
オーラス2本場には、福光に700・1,300をツモられ、土井はついには配給原点を割り2回戦を終えてしまった。
2回戦成績
福光+15.3P  本田+6.9P  土井▲4.5P  高宮▲17.7P
2回戦終了時
土井+171.1P  本田+130.5P  福光+125.3P  高宮+72.2P
 
3回戦(起家から、福光・本田・土井・高宮)
東2局、本田は親番で積極的に仕掛けていく。
九万三索七索九索九索発中  ポン東東東  ポン白白白  ドラ八万
親がここまで派手な仕掛けを入れれば、もうこの先は自力でツモるしかない。
七索中とツモり1シャンテンとなる。
ここで福光が以下の手牌。
二万三万四万七万二索二索四索五索六索六索六索四筒五筒六筒
七万を切ればタンヤオのテンパイ。
本田の河はソウズのホンイツが濃厚なのだが、ドラそばの七万での放銃となると11,600を覚悟しなければならない。
そして、本田の手出し九万が気になっているのだ。
福光は七万を切りきれず、打二万とする。そして上家から切られた三索をチー。
これは七万を切っていればアガリとなっていた牌である。
結果的には、このチーが最悪となってしまう。
本田に流れた牌は九索、そして中
七索七索九索九索九索中中  ポン東東東  ポン白白白  ツモ中
本田の8,000オールが炸裂する。
南3局にも2,000・3,900をアガった本田が、3回戦を制しトータルトップに躍り出る。
3回戦成績
本田+29.0P  高宮+14.4P  福光▲17.0P  土井▲26.4P
3回戦終了時
本田+159.5P  土井+144.7P  福光+108.3P  高宮+86.6P
 
4回戦(起家から、土井・福光・高宮・本田)
東2局、親の福光にドラの発が暗刻で入るがなかなかテンパイできない。
そうしている内に土井がリーチを打つ。
一万二万三万一索三索一筒二筒三筒六筒七筒八筒西西  リーチ  ドラ発
本田もすぐに追いつき、追いかけリーチ。
一万二万三万四万五万七万八万九万二索二索一筒二筒三筒  リーチ
福光もオリる気はなくぶつかり合うことが予想された。
土井のアガリ牌である二索は、河に1枚切られていて、本田が雀頭にしている。
そんなことを知る由もない土井は、あっさりとラス牌の二索をツモった。
見えている本田は「まじか……」と思ったのではないだろうか。
見ている私ですらそう思ったのだから。
東4局、土井が積極的に仕掛ける。
五万三索五索二筒二筒六筒七筒  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き  ドラ中
これはまたリスキーな仕掛けだと思った。
しかし土井は、そのリスクを承知で前に出ている。
これまでにこういう局面を何度も見てきたし、その度にギリギリのところで競り勝ってきているからだ。
土井の手牌が整わない内に、福光がテンパイした。
九万九万八索八索六筒六筒九筒九筒東北北中中  リーチ
リーチしたその巡目で土井が東を掴む。
福光は、土井と本田の2人を追わねばならぬ立場。
やはりここはリーチが定石となってしまう。
福光がヤミテンなら止まらない牌だが、リーチならば土井は打たないのだ。
こういう局面になると簡単にオリを選択する。1枚でも現物があればそれを切る。
そうやって、ギリギリの押し引きで凌いで今の位置にいるのだ。
結局、もう1枚重ねた東を土井は河へ切ることはなく、流局となる。
やはり土井の強さは、この絶妙な押し引きバランスにあるのだと確信した。
南3局、残すところ高宮の親番と、オーラスの本田の親番のみ。
親番のなくなった福光は、かなり苦しい状況に立たされていた。
配牌8種から国士へ向かう。
8巡目、最後の親を落としてしまうと負けが確定する高宮は、以下の手でリーチを打つ。
五万五万五万四索六索二筒二筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ  ドラ南
ドラも手役もなく待ちも悪いリーチ。
しかし、このリーチを打つしかない立場の高宮と、最後まで諦めない姿勢に胸が熱くなる。
そして、このリーチを受けた巡目に、なんと福光が国士をテンパイしていた。
福光の雀頭は失念してしまったが九筒待ち。
そしてリーチを打っている親の高宮の河には九筒が1枚。
今にもアガれそうな待ちだった。
冒頭にも書いた通り、福光はC1リーグへの昇級を決めている。
つまり福光にとって、この特別昇級リーグは優勝でのB2リーグ格付けにしか意味のないものとなっている。
2人を追う立場の福光は、高宮から国士をアガってもあまり意味はなく、できればツモりたいと考えていたはず。
もし河に九筒が出てしまった場合どうしようか、福光のそんな心配も杞憂に終わってしまう。
福光が二索を切ったことで、スジとなってしまった五索を本田が切り、高宮の2,000のアガリとなる。
南3局1本場。
高宮の粘りも虚しく、本田のアガリ。
二万三万二索三索三索四索四索五索二筒二筒八筒八筒八筒  リーチ  ツモ四万  ドラ九索
1,000・2,000は1,100・2,100。
南4局。
本田28,000点持ち。土井43,200点持ち。
本田は、原点復帰は最低条件。
土井はアガれば何でもいい状況。
本田の配牌。
三万六万八万一索三索六索七索一筒一筒五筒八筒東発  ドラ五筒
土井の配牌。
一万二万四万二索四索一筒一筒五筒六筒西中中中
土井は本田の下家。
これはもうさすがに決まったかなと、この時点で思わされていた。
本田、重ねた八筒をポン、七索をポン。
ツモにも助けられなんとかテンパイ。
六万六万五索六索三筒四筒五筒  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き
土井も果敢に仕掛け、テンパイ。
一筒一筒五筒六筒中中中  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き
土井はアガれば優勝。自分のアガリ牌以外は全てツモ切るのかと思っていたが、ドラの五筒をツモって長考する。
確かに、親の仕掛けに対してドラでは放銃したくない。
しかし、アガリやめはないので、放銃してももう1局はある。
ドラでだけは打ちたくないのなら、間を取って打六筒という選択肢もある。
しかし土井は、一番確実な中の暗刻落としを選択。
親がノーテンでない限りは、必ず次の局以降の決着となる選択をする。
次の土井のツモは一筒で、シャンポンにすればアガっていた。
このアガリ形に行き着いた人ももしかしたらいるかもしれない。
まもなく本田が四索をツモ。1,000オールで原点復帰となる。
南4局1本場。
本田31,000点持ち。土井42,200点持ち。
2人ともノーテンで終わればトータルポイントが同点で終了するが、現実的には本田があと1回アガリ、次の局にノーテンで終わらせるか、土井がアガるかというものになるだろう。
本田の配牌。
一万六万七万九万三索四索六索九索七筒九筒東南白発  ドラ北
ここにきて本田はかなり苦しい手牌。
土井の配牌。
四万五万二索四索五索七索八索三筒四筒七筒九筒白白
役牌のあるまずまずの手で、なおかつその白は本田の手の中にある。
ここもかなり土井が有利な配牌となった。
土井は白ポンして1シャンテン。
本田、ここもツモに助けられテンパイ。リーチ。
一万二万三万五万六万七万三索三索四索五索六索七筒九筒  リーチ
本田のリーチ宣言牌は五筒で、土井はこれをチーしてテンパイ。
四万五万六万七索八索七筒七筒  チー五筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ポン白白白
土井の河には九筒が切られており、福光と高宮からの出アガリは期待できない状況。
本田は、土井に仕掛けさせないためにカン六筒待ちにしてリーチを打つべきだったのかもしれない。
しかし、確かにカン八筒はかなり良い待ちに見えたのも事実。
六索九索待ちは牌山にかなり残っており、土井の優勝は目前かと思った。
しかし土井は五万をツモると、打七索とテンパイを崩してしまう。
さすがにここは、たとえそれが親のロン牌であっても切るべきではないのかと思った。
これは本田にチャンスが生まれたかと思えたが、土井が五筒六筒とツモりテンパイ復活し、一度は止めた五万を勝負。
四万五万六万五筒六筒七筒七筒  チー三筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き  ポン白白白
本田が四筒をツモ切り、土井のアガリとなった。
4回戦成績
土井+26.5P  本田▲2.3P  高宮▲7.7P  福光▲16.5P
最終成績
土井+171.2P  本田+157.2P  福光+91.8P  高宮+78.9P
 
優勝は土井悟プロ。
見事、B2リーグへの昇級を勝ち取った。
準優勝だった本田朋広プロも、C1リーグへの昇級となる。
こうして、第16期特別昇級リーグは幕を閉じた。
高宮「今日は一生懸命頑張りました。また頑張ってこのステージに戻ってきます」
福光「土井さんは途中で何度かあたって、やりづらいなーと感じていた。対局が始まると、やはりやりづらかったです。今期自力昇級してるんで、来期もまた出れます。来期の特別昇級リーグこそは優勝したいと思います」
本田「悔しいの一言しかないです。泣きそう……。ターゲットはずっと土井さんだったんですが、最後まで逃げ切られてしまいました。でも来期はC1なんで、気合い入れてがんばります!」
土井「2回戦オーラスのカン三筒はやっちゃいました……反省です。今期のC2リーグでギリギリのところで昇級を逃した経験は大きかったです。その悔しさをバネに今日頑張れたと思います。来期B2は気合い入っているんで、リーグ戦前日までしっかりと体調を整えて挑みたいと思います!」
最近では、様々なタイトル戦の決勝やベスト8、16などが連盟チャンネルにて放送されている。
今回、特別昇級リーグの決勝戦に観戦記者として立ち会った私が、なぜこの対局がニコ生じゃないんだと悔しい気持ちになるくらい内容の濃い良い対局だった。
今回は私も1選手としての独自の見解を入れつつ、起こったことを正直に書かせて頂いた。
これを読んでくださった方にも様々な考え方や価値観があり、選手の選択をいろんな風に思うだろう。
それでいいと思っている。
間違いなく言えることは、そこに座って戦っている選手が一番苦しく、誰より勝ちたいと望んでいる。
その思いがプレッシャーになり、冷静さを欠く原因になり、手の震えを生む。
そんな中で得た勝利は、何物にも替え難い財産となるのである。
私もC1リーグを自力で昇級し、来期からはB2リーグ。
この勝利でさらに手強くなった土井とも牌を交えるだろう。
特別昇級リーグでの借りも返さねばならない。
全員に共通する思いは、鳳凰位という頂を目指すこと。
よき仲間であり、よきライバル。
理想の自分に近づくために、この日の4者の戦いを私の脳に刻んでおこう。

天空麻雀15 男性大会決勝レポート 福光 聖雄

目を瞑って想像してみてほしい。

学校の教室よりは広い部屋。そう、バスケットボールのコートくらいの広さ。
天井は高い。目測10メートル。

その真ん中には麻雀卓が一台。
広い部屋に、たったの一台。

自分はその一角に、やや強張った顔つきで座っている。
見上げれば目の前は荒正義。左は滝沢和典。右に灘麻太郎。

外界からは遮断されていて、何一つ外の音は聞こえない。
打牌音がパーンと響く空間は、初めてだが心地よい。
牌をかき混ぜる音がこんなにも耳障りだったかと疑問に思う。

 

 

 

 

 

100

灘 麻太郎
75歳を超えた今でもそのカミソリが錆びることはない。
より磨きがかかっているかと錯覚することすらある。
「福光君は何の仕事をしているの?へー、パソコン関係なんだ。難しいかい?
パソコンはよく知らないんだけど、今から学びだしても成功できると思うよ。」

『使える』ではなく(事業として)『成功できる』という好奇心に
「いやいやご冗談を」ではなく、「この人なら本当に成功させそうだ」と思う何かがある。

 

 

 

100

荒 正義
昨期は鳳凰位を手放すことになったが、今期もA1リーグでは鳳凰位決定戦圏内と健在。
いや、健在という表現は誤りだろう。
未だ連盟を代表するトッププロとして君臨、という表現が適切だ。
ブログからはウィットに富んだお茶目な印象を受けるが、卓につくと途端に別の顔。
対峙する身としては『怖い』の一言。

 

 

 

100

滝沢 和典
滝沢の麻雀は美しい。
フォームの美しさも相まって、ある種の芸術性さえ感じる。
美しさは手順の正確さ、お手本のような押し引き、的確な状況判断からくるのだろうか?
滝沢の打牌は、何時も正解を指していると思えてくる。
ただ同時に、正解を打ち続けなければならない、という期待を背負っているようにも感じる。

正解を打つということは対局者からすると、読みやすい。
仕掛けてくれば、早いか高い。攻め返してくれば、攻め返す理由がある。
とはいえ、これは滝沢の背負った宿命。

 

 

 

100

福光 聖雄
そして、私。自分の紹介は甚だ困る。
2月に行われた「天空への道」という選抜戦で1席を勝ち取り(最後には字一色・小四喜もアガリ)、
この天空麻雀では予選を3着、準決勝を2着と、狙ったかのようなギリギリの勝ち上がり。
来るべくしてこの場に立っているのか、たまたまこの場まで勝ち上がってしまったのか。
その判断は観ていただいた皆様にお任せしたい。
ただ、本人がたまたまと思っていたとしたら、ここでの勝利は期待できない。

 

 

前置きが長くなったが、これが『天空麻雀15(決勝戦)』の大舞台だ。
自分なりのイメージが想像出来ただろうか?
他人が羨むこの舞台で、自分が麻雀を打つ姿を想像出来ただろうか?

ここで解説席も紹介したい。
MCはナレーターの伊藤裕一郎さん。
ナビゲーターは第1回リーチ麻雀世界選手権チャンピオンの山井弘。
解説は森山茂和会長と藤崎智鳳凰位。
単なる平面での解説ではなく、対局者の麻雀観も把握したうえでの解説と、
解説席にも一流が揃っている。

そして、収録に関わっていただいたスタッフの方々。
映像やTV番組には詳しくなく説明できないのがもどかしいが、
20名近くはこの番組の制作にかかわっていたと思われる。
彼ら無しではこの一流の舞台は成しえない。

さて舞台に戻ろう。
今回の主演男優は4人か?
ここが高校野球、甲子園の決勝であれば、勝ったチーム、負けたチームともに主役かもしれない。
試合後には両者ともに大きな拍手を受ける。

この舞台はどうか?
負けた者に温かい拍手はあるか?
勝負の世界に筋書き、台本なんてものは存在しないが、主役は1人に決まる。
残酷にも最後に。
ベテランか若手か、実績があるのかないのか、は何一つ関係ない。
この右腕で勝利を掴んだものが主役だ。

主役は、乱打戦を制した灘か?
主役は、固い守りで投手戦を制した荒か?
主役は、先制、中押し、ダメ押しと理想の試合展開を進めた滝沢か?
主役は、「?」なプレーもあるも、最後は満塁ホームランの福光か?

100

 

決勝の最終戦は、8/20から絶賛放送中。
***エンタメ~テレ***

特集企画/天空麻雀15 男性大会決勝レポート 福光 聖雄

目を瞑って想像してみてほしい。
学校の教室よりは広い部屋。そう、バスケットボールのコートくらいの広さ。
天井は高い。目測10メートル。
その真ん中には麻雀卓が一台。
広い部屋に、たったの一台。
自分はその一角に、やや強張った顔つきで座っている。
見上げれば目の前は荒正義。左は滝沢和典。右に灘麻太郎。
外界からは遮断されていて、何一つ外の音は聞こえない。
打牌音がパーンと響く空間は、初めてだが心地よい。
牌をかき混ぜる音がこんなにも耳障りだったかと疑問に思う。
 
 
 
 
 
100
灘 麻太郎
75歳を超えた今でもそのカミソリが錆びることはない。
より磨きがかかっているかと錯覚することすらある。
「福光君は何の仕事をしているの?へー、パソコン関係なんだ。難しいかい?
パソコンはよく知らないんだけど、今から学びだしても成功できると思うよ。」
『使える』ではなく(事業として)『成功できる』という好奇心に
「いやいやご冗談を」ではなく、「この人なら本当に成功させそうだ」と思う何かがある。
 
 
 
100

荒 正義
昨期は鳳凰位を手放すことになったが、今期もA1リーグでは鳳凰位決定戦圏内と健在。
いや、健在という表現は誤りだろう。
未だ連盟を代表するトッププロとして君臨、という表現が適切だ。
ブログからはウィットに富んだお茶目な印象を受けるが、卓につくと途端に別の顔。
対峙する身としては『怖い』の一言。
 
 
 
100
滝沢 和典
滝沢の麻雀は美しい。
フォームの美しさも相まって、ある種の芸術性さえ感じる。
美しさは手順の正確さ、お手本のような押し引き、的確な状況判断からくるのだろうか?
滝沢の打牌は、何時も正解を指していると思えてくる。
ただ同時に、正解を打ち続けなければならない、という期待を背負っているようにも感じる。
正解を打つということは対局者からすると、読みやすい。
仕掛けてくれば、早いか高い。攻め返してくれば、攻め返す理由がある。
とはいえ、これは滝沢の背負った宿命。
 
 
 
100
福光 聖雄
そして、私。自分の紹介は甚だ困る。
2月に行われた「天空への道」という選抜戦で1席を勝ち取り(最後には字一色・小四喜もアガリ)、
この天空麻雀では予選を3着、準決勝を2着と、狙ったかのようなギリギリの勝ち上がり。
来るべくしてこの場に立っているのか、たまたまこの場まで勝ち上がってしまったのか。
その判断は観ていただいた皆様にお任せしたい。
ただ、本人がたまたまと思っていたとしたら、ここでの勝利は期待できない。
 
 
前置きが長くなったが、これが『天空麻雀15(決勝戦)』の大舞台だ。
自分なりのイメージが想像出来ただろうか?
他人が羨むこの舞台で、自分が麻雀を打つ姿を想像出来ただろうか?
ここで解説席も紹介したい。
MCはナレーターの伊藤裕一郎さん。
ナビゲーターは第1回リーチ麻雀世界選手権チャンピオンの山井弘。
解説は森山茂和会長と藤崎智鳳凰位。
単なる平面での解説ではなく、対局者の麻雀観も把握したうえでの解説と、
解説席にも一流が揃っている。
そして、収録に関わっていただいたスタッフの方々。
映像やTV番組には詳しくなく説明できないのがもどかしいが、
20名近くはこの番組の制作にかかわっていたと思われる。
彼ら無しではこの一流の舞台は成しえない。
さて舞台に戻ろう。
今回の主演男優は4人か?
ここが高校野球、甲子園の決勝であれば、勝ったチーム、負けたチームともに主役かもしれない。
試合後には両者ともに大きな拍手を受ける。
この舞台はどうか?
負けた者に温かい拍手はあるか?
勝負の世界に筋書き、台本なんてものは存在しないが、主役は1人に決まる。
残酷にも最後に。
ベテランか若手か、実績があるのかないのか、は何一つ関係ない。
この右腕で勝利を掴んだものが主役だ。
主役は、乱打戦を制した灘か?
主役は、固い守りで投手戦を制した荒か?
主役は、先制、中押し、ダメ押しと理想の試合展開を進めた滝沢か?
主役は、「?」なプレーもあるも、最後は満塁ホームランの福光か?
100
 
決勝の最終戦は、8/20から絶賛放送中。
***エンタメ~テレ***

インターネット麻雀日本選手権2014観戦記後半 山井弘

100

もう一度、ここまでの点数状況を振りかえってみよう。

ともたけ+57.5P
佐々木+27.5P
徳川さん▲38.8P
瀬戸熊▲46.2P

トップを走るともたけと、ラス目の瀬戸熊との点差は100Pを超えている。
順位点が15,000点、5,000点なので、トップ→ラスを残り2戦ともクリアしたとしても、瀬戸熊は73,700点の差をつけなければいけない。
徳川さんにしても、瀬戸熊と同じような状況に変わりない。

誰もが、ともたけVS佐々木の一騎打ちと思ったに違いない。
4回戦から解説に入った森山茂和会長も、瀬戸熊の今日の調子から「ほとんどダメでしょう」と言うくらい、絶望的な数字と言っても過言ではない。

しかし、麻雀は何点差だろうと、親番さえ残っていれば、逆転する可能性はゼロではない。
そんな奇跡を瀬戸熊は何度も起こしてきたが・・・

4回戦
起家から、瀬戸熊・佐々木・徳川さん・ともたけ

100

これまでの点差を挽回するため、ホンイツやチンイツのような高打点を目指したいところだが、今日の瀬戸熊は思い通りに手は進まない。それでも、ここは一通の変化を見ながらヤミテンが定石だろう。そんなことは百も承知。
しかし、瀬戸熊はここでリーチの決断をする。

五索六索七索一筒一筒二筒三筒四筒七筒八筒九筒北北ドラ四筒

できが悪いからこそのリーチ。流れが悪いから。自分の思い通りにいくわけがない。
そうしなければ、このままともたけ、佐々木のどちらからに持っていかれる。
瀬戸熊はそう考えたに違いない。

あっさりと一筒をツモり、裏が乗って3,900オール。
状態がよくないときは、ファーストテンパイがいいと聞いたことがあるが、今回は正にそのケースだ。

例えば、手替わりを待っている間に一筒をツモってしまし、安手でアガるしかない場合。
または、一筒切りでテンパイを外し、中々テンパイしないうちに相手に逆に攻め込まれてしまうなど、どちらもダメなパターンだ。

今日の瀬戸熊の状態を考えれば、どの選択がいいのか明らかではあるが、それを信じて迷わず実行できるところが、瀬戸熊の強さなのではないだろうか。
また、これまでの実績が、瀬戸熊の背中を強く押してくれたのかもしれない。

次の配牌は、

一万一万二万四万五万六万二索二索八索五筒九筒東東白ドラ一万

ダブ東にドラがトイツ。一方、ともたけ、佐々木は戦える手になっていない。
それに、優勝争いをしている2人にしてみれば、調子が上がってきた瀬戸熊に放銃するほどバカらしいことはない。競っている相手が喜ぶだけだ。

そして、こちら徳川さんは、前に出て戦わざるを得ない状況。

三万四万七万八万四索五索六索二筒三筒四筒七筒七筒東ツモ八索

ギリギリまで東を引っ張ったが、安全牌候補の八索を引きここでリリース。
瀬戸熊はこれを当然ポン。

一万一万四万五万六万二索二索三索五筒五筒六筒ポン東東東

ともたけ、佐々木はこの瞬間にオリ。瀬戸熊は、この後五筒も鳴けてテンパイ。
そして、徳川さんにもテンパイが入る。アガリ牌である二万は瀬戸熊の現物なので冷静にヤミテンにしたいところだが、ここで少しでも得点を稼ぎたい徳川さんはリーチと行く。

三万四万八万八万八万四索五索六索三筒四筒五筒七筒七筒リーチ

徳川さんにとってはここが正念場。
だが終盤、残りツモあと2回のところで四索を掴み、瀬戸熊へ11,600の放銃となってしまった。

徳川さんは、ハンゲームから決勝まで勝ち上がってきた唯一のユーザー代表。
本戦では、猿川真寿プロ。ベスト16では、森山茂和プロ。
そしてベスト8では、荒正義プロ、前原雄大プロといった、いずれも名の知れたトッププロを破ってこの決勝まで勝ち上がってきた。

しかし、この決勝の舞台は、スタジオでの対戦、そしてニコニコ生放送という、大きなプレッシャーの中での戦い。それが、徳川さんに重くのしかかっていたのではないだろうか。

このあと徳川さんが復活することはなかったが、ネット麻雀日本一を決めるこの舞台まで進んできたことを誇りに思ってもらいたい。徳川さんの後ろには、多くの敗れたプロ達がいるのだから。

さあ、ついに”クマクマタイム”発動の時がきたのか?誰もがそう思ったに違いない。
この時点で、トータルトップのともたけとの差は、56.2P差。
しかし、ともたけにまだ焦りはない。

一万二万三万一筒二筒四筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒  ツモ九筒  ドラ八万

ここからテンパイ取らずの打三万。チンイツに持って行く。実にともたけらしい。
瀬戸熊が親で爆発寸前、いや半分爆発しているようなもの。
それでもともたけはスタイルを曲げない。自分が描いた最終形を目指して進む。
もちろん、テンパイを取るのも普通だ。でも、ここでチンイツに向かってくれたら、見ている人たちはわくわくする。ともたけファンは、きっとペン三筒のテンパイは取ってほしくないだろう。

結果、チンイツのテンパイまで行くことはなかったが、視聴者にともたけ流の麻雀を魅せることができたのではないだろうか。

100

七万九万二索二索五索六索六索七索七索八索一筒二筒三筒リーチ一発ツモ八万ドラ九万南

今局は、佐々木がこの2,000・3,900をアガリ、瀬戸熊の親は爆発寸前で止まった。
次局、アガリで親を迎えた佐々木。

五索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒中中ドラ四索

9巡目にこの1シャンテンになる。
しかし、後がない徳川さんからリーチが入る。

四万五万六万九万九万四索六索一筒二筒三筒六筒七筒八筒リーチ

1巡して佐々木が引いたのは無筋の二索
佐々木は現在、トップ目のともたけと9.3Pの差。

「くだらない放銃が多いんですよ」

100

佐々木が十段戦で負けたときに、反省点として話してくれたことがあった。
ある日の勉強会のひとコマだが、例えば佐々木が親でこんな1シャンテンとしよう。

二万三万四万二索三索四索六索七索三筒四筒六筒六筒北ツモ六万ドラ中

相手は、

六万七万七万八万八万五索五索四筒五筒六筒六筒七筒八筒リーチ

この形でリーチとくる。勉強会は普段連盟Aルールが多いので一発と裏がない。
佐々木は、安全牌の北があることや一発があるない関わらず、何時もこの六万をツモ切る。
これには佐々木なりの考えがあって、どうせ勝負をする手なのだから、遅かれ早かれ切る六万が、二番手、三番手の攻めに間に合う前に切りたい。それから、リーチ者と一騎打ちに持ち込みたいということもある。これは佐々木の中の1つの戦法である。

しかし、このように放銃することももちろんあり、例えばこの時などは、もし佐々木が六万を切らなければ、リーチ者は九万ですぐツモとなっていたので700・1,300のアガリ。佐々木は北さえ切っていれば7.700の失点が1,300ですんでいたのだ。

このようなことが、佐々木の頭をよぎったかどうかは分からないが、

二索五索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒中中

ここから打六索となった。
これが新しい佐々木の戦い方で、何度もこの二索で痛い目にあってきた故に止まる。
この後、もう一度二索を引き、中を切って迂回する。
これでもう五索が出ることはない。そしてようやく七筒を引き込みリーチ。
二索五索のシャンポンだが、五索での放銃は回避できた。
真っ直ぐ行っていたら、恐らく四索七索の受けになるので五索で徳川さんへ放銃となっていたに違いない。

しかしアガったのは瀬戸熊。
佐々木の前局のアガリを見て、すかさず発を一鳴きして交わしに行った。
徳川さんからリーチが来るも、ここは真っ直ぐ打ち抜く。

七万八万九万七索七索七索五筒六筒東東ポン発発発

一発で無筋の、三万、現物の北、中筋の四万、そして佐々木が通した中

100

気が付いた方もいると思うが、もし佐々木が二索を真っ直ぐ切っていたら、瀬戸熊が生牌の中を掴むことになり、恐らく瀬戸熊はこれを打ち抜き、それを佐々木がポンしてテンパイすれば、放銃を回避してテンパイすることができた。

しかもアガリまであった可能性もあるが、この場合は、佐々木に入る七筒が徳川さんに流れるので、しっかりと攻め抜いた瀬戸熊の頭ハネとなり、どちらにしても瀬戸熊のアガリであった。

東4局、ともたけが親番を迎える。
ノーミスで七対子をテンパイする。
捨て牌は、

北九筒 上向き四筒 上向き七万 上向き三索 上向き七索 上向きドラ八筒

確かに、捨て牌は多少派手にはなってしまった。
しかし、ここは親でもあり1枚切れの発タンキでリーチに行けばよかった。
そう、強く思ったのはともたけ本人だろう。

二万二万六万六万五索五索西西白白発中中  ツモ発
一発ツモだった。
その心の動きが、次局に影響しないはずがない。

二万三万四万六万六万六索六索六索三筒四筒七筒八筒九筒リーチロン二筒ドラ八索六索
裏が乗ったのはその影響かどうか分からないが、ともたけは8,000点の痛い放銃となった。

南場に入り、再び瀬戸熊は親を迎えた。
流れがよくなったら、「自然に打つ」「自然な鳴き」この2つがテーマだろう。
ちなみに自然な鳴きとは、鳴くという行為自体、自然な行為ではないので、極力鳴かないように進めるが、2鳴きやどうしても鳴くほうが自然な場合のことをいう。

南1局

三万四万五万七万八万二索三索四索二筒二筒七筒八筒九筒リーチツモ六万ドラ七万四筒

この自然なアガリで連荘。そして次局は自然に6,000オール。
南1局2本場、この局の注目は第一打である。

二万二万三万八万一索二索二索四索五筒六筒六筒七筒八筒白ドラ五筒

ここから一索ではなく白を切る。これはいわゆる、初心者の打ち方である。
断っておくが、瀬戸熊が初心者と言っているわけではない。
麻雀を覚えたてのころ、まずは字牌整理と言って、字牌をとにかく先に切って行き、本当の意味での手成りで手を進める初心者がいたと思う。その頃、みなさんも経験があると思うが、バカみたいにツイている仲間はいなかっただろうか。一度爆発すると誰にも止められない。そんな打ち方をする人が。

当然、初心者であるその人は、ついていなくても同じように打つので、その時は大敗するだろう。でも瀬戸熊は、それを分かって使い分けることができる。

1局、1局に繋がりはないと言うプロも大勢いるが、私はそうは思わない。
そうでないと、この瀬戸熊の第一打は説明のしようがない。
鳳凰位を連覇、十段位を三連覇している男が切る牌である。
そこに意味がない分けがないのである。瀬戸熊がいつも言う、

「いかに早く麻雀に入れるか、自分の時間帯を作れるか」

100

ついに瀬戸熊はその時間帯を捕まえた。

一万一万二万二万三万二索二索五筒六筒六筒七筒七筒八筒リーチツモ三万

普通にごく自然にツモアガる。

しかし次局、麻雀の神様は瀬戸熊に意地悪な選択を迫る。

100

この状態になればもう相手は関係ない。誰のリーチであろうと、自分の手を中心に攻める。
しかし、このドラの三万は鳴くほうが自然なのか、それとも鳴かないほうが自然なのか。
非常に難しい選択だ。

「ネットじゃなきゃポンしてましたね」

瀬戸熊は声が出なかった、いや、指が反応しなかったというほうが正しいだろう。
もしこれが実際の牌を使う麻雀だと、指を動かすのではなく、まずは声が出る、
「ポン」そうすれば、

四万四万四万七万七万四索五索五筒六筒七筒ポン三万 上向き三万 上向き三万 上向きロン三索

このアガリがあったかもしれない。
結果は2人テンパイで流局。

次局、このアガリ逃しが分かっている瀬戸熊の気持ちと、先ほど発タンキをリーチしておけばよかったと思ったに違いない、ともたけとの心境がシンクロしたかのように、

五万六万七万二索三索四索四索五索六索六索六索暗カン牌の背八万 上向き八万 上向き牌の背ツモ三索ドラ八万二筒

この跳満を佐々木がアガリ、瀬戸熊の”クマクマタイム”はここで終わった。

4回戦成績
瀬戸熊+73.2P  佐々木+9.0P  ともたけ▲15.3P  徳川さん▲66.9P

4回戦終了時
ともたけ+42.2P  佐々木+36.5P  瀬戸熊+27.0P  徳川さん▲105.7P

最終戦を迎え、ともたけ、佐々木は、着順が上のほうが勝ち。
瀬戸熊はともたけと2着順つけるか、1つ上の着順で5,200点差をつければ勝ち。
なんとも、103.7Pあった差が、たった1回で普通の差になってしまった。

5回戦
起家から、瀬戸熊・佐々木・徳川さん・ともたけ

開局は瀬戸熊、3巡目に早くもテンパイするも、アガリ牌である六筒はすでに2枚打たれた後だ。

七万八万九万四索六索五筒七筒七筒八筒九筒東南南ツモ五索

ここは、七索引きからの789の三色やピンズのピンフ変化を見てヤミテン。
このあたり、先ほどまでと流れが変わってきているので、打ち方も普通に戻している感じがする。

しかし、ここからが瀬戸熊の正念場である。
1つの選択ミスが、すぐに敗北に繋がる。表情もこれまでと少し違ってきた。

100

手替わる間もなく、あっさりと六筒をツモアガリ。
次局1本場、実に自然な手順である。

四万四万三索四索七索八索八索一筒二筒八筒東東白中ドラ六万

三筒三万東三索ツモ切りツモ切り九索
白中八筒三万八索一索南三索リーチ

四万四万三索四索七索八索九索一筒二筒三筒暗カン牌の背東東牌の背リーチリンシャンツモ五索ドラ六万七筒六万七筒

この4,000オールで、ついにトータルトップに踊り出た。

ともたけも負けてはいない。

五万六万一索二索三索五索六索七索二筒二筒四筒四筒四筒リーチツモ七万ドラ中九索

何とか瀬戸熊の親を落とす。
そして、次局も徳川さんの高め三色リーチを交わし、1,000・2,000をアガリ瀬戸熊を追う。

後がない徳川さんが親番を迎える。
最終戦の開始前に、「どう打てばいいのでしょうか」と私に問いかけてきた徳川さん。
私は、「親番がある限り、逆転の可能性はゼロではないので、最後の親が落ちるまでは普通に打ちます」と、そう答えた。

一般のユーザーの方が、普段、麻雀を娯楽として楽しんでいるだけの方が、自分の打った牌で勝者を決めていいのだろうか、そんなことを真剣に考えてくれたことが私には感激だった。
100
一万二万六万八万九万一索六索六索六索九索九索六筒西白ドラ六索

配牌ドラ暗刻の手。しかし、他の牌が少々重い形ではある。
案の定、手は進まず、

六万八万八万三索四索六索六索六索九索九索六筒六筒八筒

渋々ここで六筒をポンして形式テンパイの1シャンテン。
六万にくっついてくれれば、九索を切ってタンヤオに移行できるのだが。
この仕掛けを受けて瀬戸熊。

八万九万六索八索二筒四筒六筒七筒八筒九筒北北北ツモ三索

この手牌で少考に入る。
普段あまり時間をかけて考えるタイプではない瀬戸熊が、時間を使っているので珍しいと思った。しかも、得点のほしい徳川さんの仕掛けが安いわけがないのに。

すると瀬戸熊は、まったく無筋である三索をツモ切ってきたのである。
これには少し驚いた。いくら瀬戸熊といえども、ここで親に放銃してしまったら痛い。
ましてや、攻めるような手でもない。でも瀬戸熊の何かが、この手はいかなければ行けない、ベタオリしてはいけないと、本人にしか分からない何かがあるのかと思った。

がしかし、そうではなかった。
何と、ネットの回線の不具合で、三索は完全にコンピューターが勝手に切ったものだった。
ネットの対戦は、このようなことがたまに起こるので致し方ないのだが、この時はそれが致命傷になる一打にはならなかった。

このマシーントラブルを直すため、今回は1人持ち時間5分という設定にしてあったため、徳川さんの切り番で待ってもらう。それでも時間が足りず、ともたけの切り番まで行く。

瀬戸熊のマシーンも直り再開。
佐々木からリーチも入るが、徳川さんも何とかテンパイまで持ち込み連荘に成功。
しかし、このドラ暗刻の手は悔しいが成熟せず。

次局、徳川さんがダブ東をポンしてテンパイ。

三万四万四万五万五万六万六索七索八筒八筒ポン東東東ドラ白
そこに佐々木がテンパイで追いつく。

二万三万四万四索五索六索七索八索九索九索四筒五筒白ツモ六筒

仕掛けがなければ、また、自身に得点が必要なければドラであろうと白を切ったに違いない。
ここは九索切りで白タンキリーチ。しかし、次巡のツモは三索

だが、ちなみにここで白を切ると、

三万五万六万七万七万八万九万二索二索四索五索白白

瀬戸熊がここからポンテンになり、佐々木がツモる三索でツモアガリとなるのだ。
従って、佐々木のアガリはここでも無いのである。

今局はハイテイまでもつれ、佐々木のほしい白はまだ山に1枚残っている。
しかし、ハイテイにいた牌は徳川さんの当たり牌である八索だった。
ダブ東、ホウテイの5,800の放銃で、佐々木は苦しい位置となってしまった。

このアガリで勢いがついてきた徳川さんが、またもリーチとくる。

六万六万七万七万八万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒リーチドラ五万

100

これに追いついた瀬戸熊は、ドラが暗刻で打点十分にもかかわらずリーチと行った。
現状、トータルトップ目、調子が上がってきた親に放銃となれば、喜ぶのはともたけや佐々木。だがしかし、瀬戸熊はここで勝負をかける。

まだともたけとの点差がそれほどないこと、そのともたけがオーラス最後の親を残していること。

これは、タイトル戦の決勝をいかに多く経験し、そして勝利してきた瀬戸熊だからこそできる押し引きではないだろうか。勝負勘とでも言えばいいのだろうか。

結果は流局だったが、この鬼気迫るリーチに、瀬戸熊のオーラが画面越しに伝わった。

それが次のアガリに繋がったかどうか立証することはできない。
がしかし、麻雀は4人の人間が打つもの。ネットであろうと、やはり人が打っている限り、そこに流れは存在する。森山会長も「ネットでも流れはある」「あるに決まっている」と断言していた。

二万三万四万六万六万三筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒七筒ロン六万ドラ七筒

瀬戸熊があっさりとこのアガリを決める。

東4局、ともたけは、瀬戸熊にトータルを捲られて迎えた親番。
配牌
一万三万四万七万九万九万二索五索一筒三筒四筒七筒東白ドラ二万

これが伸びて、

一万二万三万四万四万七万八万九万九万五索三筒四筒七筒東ツモ三筒

こうなるのだが、ここでともたけの選択は打九万
普通の人が打てば、それほどおかしな打牌ではない。
まだ一通も残るし、ドラ絡みのイーペーコーなどもあるので、無理に染めに行く必要はない。
しかし、これを今打っているのは、ともたけ雅晴である。

ともたけは、これくらいの手であれば、思い切って真ん中の牌を切って行き、自分の描いた理想の手に向かって、手順は無視して行く打ち手である。

しかし、トータルで瀬戸熊に抜かれてしまった。ここで連荘して追いつきたい。
そう思ったのかもしれない。ともたけらしくない打九万

麻雀を打っていると、その人なりの勝ちパターンがあるように思う。
普段から打っている勝ちパターンでないと、中々勝つのは難しいのではないだろうか。
ともたけはよく決勝まで進出する。しかし、決勝では中々結果が出ない。
それはやはり、決勝では自分のスタイルを貫き通せていないということではないだろうか。

4回戦で瀬戸熊が、東1局に連荘していてもまったく気にせず、ペン三筒のテンパイ取らずで、マンズの1メンツを切って行けるともたけならば、

一万二万三万四万四万四万七万八万九万九万九万東東ツモ東

この形でのアガリがあったのではないだろうか。
リーチをすかどうかは本人次第だが、ヤミテンでも6,000オールある。
リーチなら8,000オールだ。そうなると、今度は瀬戸熊が苦しくなる番であった。

一万二万三万四万四万四万七万八万九万五索七索三筒三筒リーチ

結局、この形で1人テンパイの流局。
捨て牌には九万が2枚、東が3枚寂しそうに並んでいた。

すると次局もやはり続かない。
南2局、佐々木の親は、瀬戸熊が自らピンフのみで流して残すは2局。

現状、瀬戸熊は50,300点で総合ポイントは+62.3P。
佐々木は、14,100点で+5.6P。残す2局で逆転するには、役満級のアガリが必要になる。
ともたけは、33,200点で50.4Pと、最後の親番が勝負か。
徳川さんはとにかく連荘しかない。

その徳川さんが連荘して迎えた南3局1本場。
瀬戸熊は2役トイツで、逃げるには絶好の手牌となった。
そう誰もが思っていたと思う。しかし、瀬戸熊本人はそうは思っていなかった。

ともたけとの差がまだそれほどでもないので、この手を決まり手にしよう。
そう考えていたと、対局終了後に話してくれた。

確かに、ともたけが2着の場合、現状11,900点の差しかないのである。
そう考えると、オーラスを迎え、最悪一度アガられても、捲り返せるくらいにしておかなくてはならない。

これも、決勝を何度も経験してきて初めて分かる押し引きかもしれない。
しかし、ここ最近は連盟チャンネルなどでタイトル戦の生放送が見られるようになった。
そのことで、これまで知ることができなかった情報が、こうして知ることができる。
決勝の経験がなくても、学ぶことができるようになったのだ。

決勝初体験でも、しっかりと勉強さえしておけば、大事な難しい局面で答えを導き出せるかもしれない。

四万六万四索五索三筒四筒六筒七筒西西ポン中中中ドラ六筒

ここで中を鳴いて行く。その後、手は進み、

四索五索一筒三筒四筒四筒六筒七筒西西ポン中中中

こうなり、ここで上家のともたけから八筒が出る。
私はこれをチーして一筒を切るものと思っていた。
しかし、瀬戸熊は先ほどから述べているように、ここでさらに点差をつけるため、ホンイツへ向かう。
すぐに西も鳴けて、

100

最後は、全員がテンパイとなる、乾坤一擲の勝負を制して、見事、インターネット麻雀日本選手権の優勝を手繰り寄せた。

勝利した瞬間、瀬戸熊はいつものポーズをとる。
腰に手をあて、胸を張って大きく深呼吸する。
その仕草は、タイトル戦の決勝を勝利で終えた直後にする、瀬戸熊特有のポーズだ。

たしか16年前に優勝したやつも、同じポーズをとっていたような気がするのは気のせいだろうか。

最終戦成績
瀬戸熊+44.7P  ともたけ+3.3P  徳川さん▲13.8P  佐々木▲34.2P

 

総合トータル
瀬戸熊+71.7P  ともたけ+45.5P  佐々木+2.3P  徳川さん▲119.5P

瀬戸熊は”暴君”と呼ばれていた時代があった。しかし、今は誰もそう呼ばない。
瀬戸熊の今の麻雀を見ていれば分かると思うが、その打ち筋は正に王道。
絶対王者と呼ぶに相応しい打ち手となった。
もはや、連盟のエースではなく、麻雀界のエースと言っても過言ではない。

世界に広がるインターネット。まだまだ世界中に多くの打ち手がいる。
それはまだ未知数ではあるが、このインターネットを使えば、何年後かには、
インターネット”世界”選手権なるものが開催されているかもしれない。

今回はネットで”クマクマタイム”が証明された。
だがしかし、麻雀が世界中に広がればきっと、瀬戸熊をも越える、そんな打ち手がいるかもしれない。
今の麻雀界は、夢が広がるばかりだ。

 

100

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プロ雀士コラム/インターネット麻雀日本選手権2014観戦記後半 山井弘

100
もう一度、ここまでの点数状況を振りかえってみよう。
ともたけ+57.5P
佐々木+27.5P
徳川さん▲38.8P
瀬戸熊▲46.2P
トップを走るともたけと、ラス目の瀬戸熊との点差は100Pを超えている。
順位点が15,000点、5,000点なので、トップ→ラスを残り2戦ともクリアしたとしても、瀬戸熊は73,700点の差をつけなければいけない。
徳川さんにしても、瀬戸熊と同じような状況に変わりない。
誰もが、ともたけVS佐々木の一騎打ちと思ったに違いない。
4回戦から解説に入った森山茂和会長も、瀬戸熊の今日の調子から「ほとんどダメでしょう」と言うくらい、絶望的な数字と言っても過言ではない。
しかし、麻雀は何点差だろうと、親番さえ残っていれば、逆転する可能性はゼロではない。
そんな奇跡を瀬戸熊は何度も起こしてきたが・・・
4回戦
起家から、瀬戸熊・佐々木・徳川さん・ともたけ
100
これまでの点差を挽回するため、ホンイツやチンイツのような高打点を目指したいところだが、今日の瀬戸熊は思い通りに手は進まない。それでも、ここは一通の変化を見ながらヤミテンが定石だろう。そんなことは百も承知。
しかし、瀬戸熊はここでリーチの決断をする。
五索六索七索一筒一筒二筒三筒四筒七筒八筒九筒北北ドラ四筒
できが悪いからこそのリーチ。流れが悪いから。自分の思い通りにいくわけがない。
そうしなければ、このままともたけ、佐々木のどちらからに持っていかれる。
瀬戸熊はそう考えたに違いない。
あっさりと一筒をツモり、裏が乗って3,900オール。
状態がよくないときは、ファーストテンパイがいいと聞いたことがあるが、今回は正にそのケースだ。
例えば、手替わりを待っている間に一筒をツモってしまし、安手でアガるしかない場合。
または、一筒切りでテンパイを外し、中々テンパイしないうちに相手に逆に攻め込まれてしまうなど、どちらもダメなパターンだ。
今日の瀬戸熊の状態を考えれば、どの選択がいいのか明らかではあるが、それを信じて迷わず実行できるところが、瀬戸熊の強さなのではないだろうか。
また、これまでの実績が、瀬戸熊の背中を強く押してくれたのかもしれない。
次の配牌は、
一万一万二万四万五万六万二索二索八索五筒九筒東東白ドラ一万
ダブ東にドラがトイツ。一方、ともたけ、佐々木は戦える手になっていない。
それに、優勝争いをしている2人にしてみれば、調子が上がってきた瀬戸熊に放銃するほどバカらしいことはない。競っている相手が喜ぶだけだ。
そして、こちら徳川さんは、前に出て戦わざるを得ない状況。
三万四万七万八万四索五索六索二筒三筒四筒七筒七筒東ツモ八索
ギリギリまで東を引っ張ったが、安全牌候補の八索を引きここでリリース。
瀬戸熊はこれを当然ポン。
一万一万四万五万六万二索二索三索五筒五筒六筒ポン東東東
ともたけ、佐々木はこの瞬間にオリ。瀬戸熊は、この後五筒も鳴けてテンパイ。
そして、徳川さんにもテンパイが入る。アガリ牌である二万は瀬戸熊の現物なので冷静にヤミテンにしたいところだが、ここで少しでも得点を稼ぎたい徳川さんはリーチと行く。
三万四万八万八万八万四索五索六索三筒四筒五筒七筒七筒リーチ
徳川さんにとってはここが正念場。
だが終盤、残りツモあと2回のところで四索を掴み、瀬戸熊へ11,600の放銃となってしまった。
徳川さんは、ハンゲームから決勝まで勝ち上がってきた唯一のユーザー代表。
本戦では、猿川真寿プロ。ベスト16では、森山茂和プロ。
そしてベスト8では、荒正義プロ、前原雄大プロといった、いずれも名の知れたトッププロを破ってこの決勝まで勝ち上がってきた。
しかし、この決勝の舞台は、スタジオでの対戦、そしてニコニコ生放送という、大きなプレッシャーの中での戦い。それが、徳川さんに重くのしかかっていたのではないだろうか。
このあと徳川さんが復活することはなかったが、ネット麻雀日本一を決めるこの舞台まで進んできたことを誇りに思ってもらいたい。徳川さんの後ろには、多くの敗れたプロ達がいるのだから。
さあ、ついに”クマクマタイム”発動の時がきたのか?誰もがそう思ったに違いない。
この時点で、トータルトップのともたけとの差は、56.2P差。
しかし、ともたけにまだ焦りはない。
一万二万三万一筒二筒四筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒  ツモ九筒  ドラ八万
ここからテンパイ取らずの打三万。チンイツに持って行く。実にともたけらしい。
瀬戸熊が親で爆発寸前、いや半分爆発しているようなもの。
それでもともたけはスタイルを曲げない。自分が描いた最終形を目指して進む。
もちろん、テンパイを取るのも普通だ。でも、ここでチンイツに向かってくれたら、見ている人たちはわくわくする。ともたけファンは、きっとペン三筒のテンパイは取ってほしくないだろう。
結果、チンイツのテンパイまで行くことはなかったが、視聴者にともたけ流の麻雀を魅せることができたのではないだろうか。
100
七万九万二索二索五索六索六索七索七索八索一筒二筒三筒リーチ一発ツモ八万ドラ九万南
今局は、佐々木がこの2,000・3,900をアガリ、瀬戸熊の親は爆発寸前で止まった。
次局、アガリで親を迎えた佐々木。
五索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒中中ドラ四索
9巡目にこの1シャンテンになる。
しかし、後がない徳川さんからリーチが入る。
四万五万六万九万九万四索六索一筒二筒三筒六筒七筒八筒リーチ
1巡して佐々木が引いたのは無筋の二索
佐々木は現在、トップ目のともたけと9.3Pの差。
「くだらない放銃が多いんですよ」
100
佐々木が十段戦で負けたときに、反省点として話してくれたことがあった。
ある日の勉強会のひとコマだが、例えば佐々木が親でこんな1シャンテンとしよう。
二万三万四万二索三索四索六索七索三筒四筒六筒六筒北ツモ六万ドラ中
相手は、
六万七万七万八万八万五索五索四筒五筒六筒六筒七筒八筒リーチ
この形でリーチとくる。勉強会は普段連盟Aルールが多いので一発と裏がない。
佐々木は、安全牌の北があることや一発があるない関わらず、何時もこの六万をツモ切る。
これには佐々木なりの考えがあって、どうせ勝負をする手なのだから、遅かれ早かれ切る六万が、二番手、三番手の攻めに間に合う前に切りたい。それから、リーチ者と一騎打ちに持ち込みたいということもある。これは佐々木の中の1つの戦法である。
しかし、このように放銃することももちろんあり、例えばこの時などは、もし佐々木が六万を切らなければ、リーチ者は九万ですぐツモとなっていたので700・1,300のアガリ。佐々木は北さえ切っていれば7.700の失点が1,300ですんでいたのだ。
このようなことが、佐々木の頭をよぎったかどうかは分からないが、
二索五索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒中中
ここから打六索となった。
これが新しい佐々木の戦い方で、何度もこの二索で痛い目にあってきた故に止まる。
この後、もう一度二索を引き、中を切って迂回する。
これでもう五索が出ることはない。そしてようやく七筒を引き込みリーチ。
二索五索のシャンポンだが、五索での放銃は回避できた。
真っ直ぐ行っていたら、恐らく四索七索の受けになるので五索で徳川さんへ放銃となっていたに違いない。
しかしアガったのは瀬戸熊。
佐々木の前局のアガリを見て、すかさず発を一鳴きして交わしに行った。
徳川さんからリーチが来るも、ここは真っ直ぐ打ち抜く。
七万八万九万七索七索七索五筒六筒東東ポン発発発
一発で無筋の、三万、現物の北、中筋の四万、そして佐々木が通した中
100
気が付いた方もいると思うが、もし佐々木が二索を真っ直ぐ切っていたら、瀬戸熊が生牌の中を掴むことになり、恐らく瀬戸熊はこれを打ち抜き、それを佐々木がポンしてテンパイすれば、放銃を回避してテンパイすることができた。
しかもアガリまであった可能性もあるが、この場合は、佐々木に入る七筒が徳川さんに流れるので、しっかりと攻め抜いた瀬戸熊の頭ハネとなり、どちらにしても瀬戸熊のアガリであった。
東4局、ともたけが親番を迎える。
ノーミスで七対子をテンパイする。
捨て牌は、
北九筒 上向き四筒 上向き七万 上向き三索 上向き七索 上向きドラ八筒
確かに、捨て牌は多少派手にはなってしまった。
しかし、ここは親でもあり1枚切れの発タンキでリーチに行けばよかった。
そう、強く思ったのはともたけ本人だろう。
二万二万六万六万五索五索西西白白発中中  ツモ発
一発ツモだった。
その心の動きが、次局に影響しないはずがない。
二万三万四万六万六万六索六索六索三筒四筒七筒八筒九筒リーチロン二筒ドラ八索六索
裏が乗ったのはその影響かどうか分からないが、ともたけは8,000点の痛い放銃となった。
南場に入り、再び瀬戸熊は親を迎えた。
流れがよくなったら、「自然に打つ」「自然な鳴き」この2つがテーマだろう。
ちなみに自然な鳴きとは、鳴くという行為自体、自然な行為ではないので、極力鳴かないように進めるが、2鳴きやどうしても鳴くほうが自然な場合のことをいう。
南1局
三万四万五万七万八万二索三索四索二筒二筒七筒八筒九筒リーチツモ六万ドラ七万四筒
この自然なアガリで連荘。そして次局は自然に6,000オール。
南1局2本場、この局の注目は第一打である。
二万二万三万八万一索二索二索四索五筒六筒六筒七筒八筒白ドラ五筒
ここから一索ではなく白を切る。これはいわゆる、初心者の打ち方である。
断っておくが、瀬戸熊が初心者と言っているわけではない。
麻雀を覚えたてのころ、まずは字牌整理と言って、字牌をとにかく先に切って行き、本当の意味での手成りで手を進める初心者がいたと思う。その頃、みなさんも経験があると思うが、バカみたいにツイている仲間はいなかっただろうか。一度爆発すると誰にも止められない。そんな打ち方をする人が。
当然、初心者であるその人は、ついていなくても同じように打つので、その時は大敗するだろう。でも瀬戸熊は、それを分かって使い分けることができる。
1局、1局に繋がりはないと言うプロも大勢いるが、私はそうは思わない。
そうでないと、この瀬戸熊の第一打は説明のしようがない。
鳳凰位を連覇、十段位を三連覇している男が切る牌である。
そこに意味がない分けがないのである。瀬戸熊がいつも言う、
「いかに早く麻雀に入れるか、自分の時間帯を作れるか」
100
ついに瀬戸熊はその時間帯を捕まえた。
一万一万二万二万三万二索二索五筒六筒六筒七筒七筒八筒リーチツモ三万
普通にごく自然にツモアガる。
しかし次局、麻雀の神様は瀬戸熊に意地悪な選択を迫る。
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この状態になればもう相手は関係ない。誰のリーチであろうと、自分の手を中心に攻める。
しかし、このドラの三万は鳴くほうが自然なのか、それとも鳴かないほうが自然なのか。
非常に難しい選択だ。
「ネットじゃなきゃポンしてましたね」
瀬戸熊は声が出なかった、いや、指が反応しなかったというほうが正しいだろう。
もしこれが実際の牌を使う麻雀だと、指を動かすのではなく、まずは声が出る、
「ポン」そうすれば、
四万四万四万七万七万四索五索五筒六筒七筒ポン三万 上向き三万 上向き三万 上向きロン三索
このアガリがあったかもしれない。
結果は2人テンパイで流局。
次局、このアガリ逃しが分かっている瀬戸熊の気持ちと、先ほど発タンキをリーチしておけばよかったと思ったに違いない、ともたけとの心境がシンクロしたかのように、
五万六万七万二索三索四索四索五索六索六索六索暗カン牌の背八万 上向き八万 上向き牌の背ツモ三索ドラ八万二筒
この跳満を佐々木がアガリ、瀬戸熊の”クマクマタイム”はここで終わった。
4回戦成績
瀬戸熊+73.2P  佐々木+9.0P  ともたけ▲15.3P  徳川さん▲66.9P
4回戦終了時
ともたけ+42.2P  佐々木+36.5P  瀬戸熊+27.0P  徳川さん▲105.7P
最終戦を迎え、ともたけ、佐々木は、着順が上のほうが勝ち。
瀬戸熊はともたけと2着順つけるか、1つ上の着順で5,200点差をつければ勝ち。
なんとも、103.7Pあった差が、たった1回で普通の差になってしまった。
5回戦
起家から、瀬戸熊・佐々木・徳川さん・ともたけ
開局は瀬戸熊、3巡目に早くもテンパイするも、アガリ牌である六筒はすでに2枚打たれた後だ。
七万八万九万四索六索五筒七筒七筒八筒九筒東南南ツモ五索
ここは、七索引きからの789の三色やピンズのピンフ変化を見てヤミテン。
このあたり、先ほどまでと流れが変わってきているので、打ち方も普通に戻している感じがする。
しかし、ここからが瀬戸熊の正念場である。
1つの選択ミスが、すぐに敗北に繋がる。表情もこれまでと少し違ってきた。
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手替わる間もなく、あっさりと六筒をツモアガリ。
次局1本場、実に自然な手順である。
四万四万三索四索七索八索八索一筒二筒八筒東東白中ドラ六万
三筒三万東三索ツモ切りツモ切り九索
白中八筒三万八索一索南三索リーチ
四万四万三索四索七索八索九索一筒二筒三筒暗カン牌の背東東牌の背リーチリンシャンツモ五索ドラ六万七筒六万七筒
この4,000オールで、ついにトータルトップに踊り出た。
ともたけも負けてはいない。
五万六万一索二索三索五索六索七索二筒二筒四筒四筒四筒リーチツモ七万ドラ中九索
何とか瀬戸熊の親を落とす。
そして、次局も徳川さんの高め三色リーチを交わし、1,000・2,000をアガリ瀬戸熊を追う。
後がない徳川さんが親番を迎える。
最終戦の開始前に、「どう打てばいいのでしょうか」と私に問いかけてきた徳川さん。
私は、「親番がある限り、逆転の可能性はゼロではないので、最後の親が落ちるまでは普通に打ちます」と、そう答えた。
一般のユーザーの方が、普段、麻雀を娯楽として楽しんでいるだけの方が、自分の打った牌で勝者を決めていいのだろうか、そんなことを真剣に考えてくれたことが私には感激だった。
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一万二万六万八万九万一索六索六索六索九索九索六筒西白ドラ六索
配牌ドラ暗刻の手。しかし、他の牌が少々重い形ではある。
案の定、手は進まず、
六万八万八万三索四索六索六索六索九索九索六筒六筒八筒
渋々ここで六筒をポンして形式テンパイの1シャンテン。
六万にくっついてくれれば、九索を切ってタンヤオに移行できるのだが。
この仕掛けを受けて瀬戸熊。
八万九万六索八索二筒四筒六筒七筒八筒九筒北北北ツモ三索
この手牌で少考に入る。
普段あまり時間をかけて考えるタイプではない瀬戸熊が、時間を使っているので珍しいと思った。しかも、得点のほしい徳川さんの仕掛けが安いわけがないのに。
すると瀬戸熊は、まったく無筋である三索をツモ切ってきたのである。
これには少し驚いた。いくら瀬戸熊といえども、ここで親に放銃してしまったら痛い。
ましてや、攻めるような手でもない。でも瀬戸熊の何かが、この手はいかなければ行けない、ベタオリしてはいけないと、本人にしか分からない何かがあるのかと思った。
がしかし、そうではなかった。
何と、ネットの回線の不具合で、三索は完全にコンピューターが勝手に切ったものだった。
ネットの対戦は、このようなことがたまに起こるので致し方ないのだが、この時はそれが致命傷になる一打にはならなかった。
このマシーントラブルを直すため、今回は1人持ち時間5分という設定にしてあったため、徳川さんの切り番で待ってもらう。それでも時間が足りず、ともたけの切り番まで行く。
瀬戸熊のマシーンも直り再開。
佐々木からリーチも入るが、徳川さんも何とかテンパイまで持ち込み連荘に成功。
しかし、このドラ暗刻の手は悔しいが成熟せず。
次局、徳川さんがダブ東をポンしてテンパイ。
三万四万四万五万五万六万六索七索八筒八筒ポン東東東ドラ白
そこに佐々木がテンパイで追いつく。
二万三万四万四索五索六索七索八索九索九索四筒五筒白ツモ六筒
仕掛けがなければ、また、自身に得点が必要なければドラであろうと白を切ったに違いない。
ここは九索切りで白タンキリーチ。しかし、次巡のツモは三索
だが、ちなみにここで白を切ると、
三万五万六万七万七万八万九万二索二索四索五索白白
瀬戸熊がここからポンテンになり、佐々木がツモる三索でツモアガリとなるのだ。
従って、佐々木のアガリはここでも無いのである。
今局はハイテイまでもつれ、佐々木のほしい白はまだ山に1枚残っている。
しかし、ハイテイにいた牌は徳川さんの当たり牌である八索だった。
ダブ東、ホウテイの5,800の放銃で、佐々木は苦しい位置となってしまった。
このアガリで勢いがついてきた徳川さんが、またもリーチとくる。
六万六万七万七万八万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒リーチドラ五万
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これに追いついた瀬戸熊は、ドラが暗刻で打点十分にもかかわらずリーチと行った。
現状、トータルトップ目、調子が上がってきた親に放銃となれば、喜ぶのはともたけや佐々木。だがしかし、瀬戸熊はここで勝負をかける。
まだともたけとの点差がそれほどないこと、そのともたけがオーラス最後の親を残していること。
これは、タイトル戦の決勝をいかに多く経験し、そして勝利してきた瀬戸熊だからこそできる押し引きではないだろうか。勝負勘とでも言えばいいのだろうか。
結果は流局だったが、この鬼気迫るリーチに、瀬戸熊のオーラが画面越しに伝わった。
それが次のアガリに繋がったかどうか立証することはできない。
がしかし、麻雀は4人の人間が打つもの。ネットであろうと、やはり人が打っている限り、そこに流れは存在する。森山会長も「ネットでも流れはある」「あるに決まっている」と断言していた。
二万三万四万六万六万三筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒七筒ロン六万ドラ七筒
瀬戸熊があっさりとこのアガリを決める。
東4局、ともたけは、瀬戸熊にトータルを捲られて迎えた親番。
配牌
一万三万四万七万九万九万二索五索一筒三筒四筒七筒東白ドラ二万
これが伸びて、
一万二万三万四万四万七万八万九万九万五索三筒四筒七筒東ツモ三筒
こうなるのだが、ここでともたけの選択は打九万
普通の人が打てば、それほどおかしな打牌ではない。
まだ一通も残るし、ドラ絡みのイーペーコーなどもあるので、無理に染めに行く必要はない。
しかし、これを今打っているのは、ともたけ雅晴である。
ともたけは、これくらいの手であれば、思い切って真ん中の牌を切って行き、自分の描いた理想の手に向かって、手順は無視して行く打ち手である。
しかし、トータルで瀬戸熊に抜かれてしまった。ここで連荘して追いつきたい。
そう思ったのかもしれない。ともたけらしくない打九万
麻雀を打っていると、その人なりの勝ちパターンがあるように思う。
普段から打っている勝ちパターンでないと、中々勝つのは難しいのではないだろうか。
ともたけはよく決勝まで進出する。しかし、決勝では中々結果が出ない。
それはやはり、決勝では自分のスタイルを貫き通せていないということではないだろうか。
4回戦で瀬戸熊が、東1局に連荘していてもまったく気にせず、ペン三筒のテンパイ取らずで、マンズの1メンツを切って行けるともたけならば、
一万二万三万四万四万四万七万八万九万九万九万東東ツモ東
この形でのアガリがあったのではないだろうか。
リーチをすかどうかは本人次第だが、ヤミテンでも6,000オールある。
リーチなら8,000オールだ。そうなると、今度は瀬戸熊が苦しくなる番であった。
一万二万三万四万四万四万七万八万九万五索七索三筒三筒リーチ
結局、この形で1人テンパイの流局。
捨て牌には九万が2枚、東が3枚寂しそうに並んでいた。
すると次局もやはり続かない。
南2局、佐々木の親は、瀬戸熊が自らピンフのみで流して残すは2局。
現状、瀬戸熊は50,300点で総合ポイントは+62.3P。
佐々木は、14,100点で+5.6P。残す2局で逆転するには、役満級のアガリが必要になる。
ともたけは、33,200点で50.4Pと、最後の親番が勝負か。
徳川さんはとにかく連荘しかない。
その徳川さんが連荘して迎えた南3局1本場。
瀬戸熊は2役トイツで、逃げるには絶好の手牌となった。
そう誰もが思っていたと思う。しかし、瀬戸熊本人はそうは思っていなかった。
ともたけとの差がまだそれほどでもないので、この手を決まり手にしよう。
そう考えていたと、対局終了後に話してくれた。
確かに、ともたけが2着の場合、現状11,900点の差しかないのである。
そう考えると、オーラスを迎え、最悪一度アガられても、捲り返せるくらいにしておかなくてはならない。
これも、決勝を何度も経験してきて初めて分かる押し引きかもしれない。
しかし、ここ最近は連盟チャンネルなどでタイトル戦の生放送が見られるようになった。
そのことで、これまで知ることができなかった情報が、こうして知ることができる。
決勝の経験がなくても、学ぶことができるようになったのだ。
決勝初体験でも、しっかりと勉強さえしておけば、大事な難しい局面で答えを導き出せるかもしれない。
四万六万四索五索三筒四筒六筒七筒西西ポン中中中ドラ六筒
ここで中を鳴いて行く。その後、手は進み、
四索五索一筒三筒四筒四筒六筒七筒西西ポン中中中
こうなり、ここで上家のともたけから八筒が出る。
私はこれをチーして一筒を切るものと思っていた。
しかし、瀬戸熊は先ほどから述べているように、ここでさらに点差をつけるため、ホンイツへ向かう。
すぐに西も鳴けて、
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最後は、全員がテンパイとなる、乾坤一擲の勝負を制して、見事、インターネット麻雀日本選手権の優勝を手繰り寄せた。
勝利した瞬間、瀬戸熊はいつものポーズをとる。
腰に手をあて、胸を張って大きく深呼吸する。
その仕草は、タイトル戦の決勝を勝利で終えた直後にする、瀬戸熊特有のポーズだ。
たしか16年前に優勝したやつも、同じポーズをとっていたような気がするのは気のせいだろうか。
最終戦成績
瀬戸熊+44.7P  ともたけ+3.3P  徳川さん▲13.8P  佐々木▲34.2P
 
総合トータル
瀬戸熊+71.7P  ともたけ+45.5P  佐々木+2.3P  徳川さん▲119.5P
瀬戸熊は”暴君”と呼ばれていた時代があった。しかし、今は誰もそう呼ばない。
瀬戸熊の今の麻雀を見ていれば分かると思うが、その打ち筋は正に王道。
絶対王者と呼ぶに相応しい打ち手となった。
もはや、連盟のエースではなく、麻雀界のエースと言っても過言ではない。
世界に広がるインターネット。まだまだ世界中に多くの打ち手がいる。
それはまだ未知数ではあるが、このインターネットを使えば、何年後かには、
インターネット”世界”選手権なるものが開催されているかもしれない。
今回はネットで”クマクマタイム”が証明された。
だがしかし、麻雀が世界中に広がればきっと、瀬戸熊をも越える、そんな打ち手がいるかもしれない。
今の麻雀界は、夢が広がるばかりだ。
 
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第31期A2リーグ第5節レポート 櫻井 秀樹

雷電風雨(動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し)
臨機応変(機に臨みて、変に応じる)

私の掲げる人生の行動指標、いわゆる座右の銘だ。
もちろん我々麻雀プロにとっては麻雀=人生でもあるので、麻雀における行動指標といってもいいだろう。

特に2の臨機応変。
麻雀は、タイトル戦ごとのシステム、毎半荘、毎局、毎巡、他家の所作1つ1つ毎に状況が変化しうるため、固定概念や、当初の思い込みといったもので見落としや誤判断を招くことが多いというのが私の考えだ。

常に情報収集を欠かさず、変化に応じていかなければならない。

例えば、
リーグ戦(Aルール)のオーラス、原点より6,000点ほどの浮きだが現状トップ目。
さらに付け加えると、本日は4連勝すると決意し会場入り、1戦目もトップで終了。

配牌は上々、第一ツモでタンヤオの1シャンテン!2連勝も目前だ。
ところが。
2巡目にドラのファンパイをツモ切ると、2,000点強浮いている2着目(下家)が「ポン」!
状況は一変する。

変に応じるのなら、ここは下家を絞り込み、放銃だけは絶対に避ける。
最悪ツモられても、原点は切らないので、プラスポイントを維持できる
と、切り替えて対応していくのが自分の麻雀である。
ましてやリーグ戦の中盤戦ならば、1着にこだわる理由も全くないのだから・・・

今節2回戦オーラス、私は五索で佐々木のドラポンに放銃し、トップから沈みの3着まで転落してしまった。しかも、ドラ中もテンパイになる牌八万も私が鳴かせており、挙句にはテンパイ打牌のマタギで自身が暗刻の牌五索での放銃である。

<牌姿>
櫻井
三万四万五万五万七万四索五索五索五索六索七索二筒二筒  ツモ六索  打五索  ドラ中

佐々木
三索四索七索八索九索四筒四筒  チー八万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン中中中

佐々木 捨て牌
九筒 上向き(中ポン→)白南一索 上向き発一万 上向き(八チー→)四索 上向き

麻雀を多少知っているものなら絶対に打たない、プロ競技者ならなおさらという大暴牌だ。
しかし、私には後悔は全くなかった、自身の信条に背き、あえて上記の決意「4連勝」に拘ってみたのだ。

初のリーグ配信卓、そして同世代の人気実績共にトッププロ3人、これ以上ないアピールの場である。多少無茶してでも、自分の意思を見せつけたかった。

これからも麻雀を続けていくという意思、絶対彼らを並び追い越すという意思。

まだまだ折り返し地点、20半荘でついた差は20半荘あれば取り返せるはず。
優勝も全く諦めるつもりはない。

今回預けた点棒も必ず取り戻す。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A2リーグ第5節レポート 櫻井 秀樹

雷電風雨(動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し)
臨機応変(機に臨みて、変に応じる)
私の掲げる人生の行動指標、いわゆる座右の銘だ。
もちろん我々麻雀プロにとっては麻雀=人生でもあるので、麻雀における行動指標といってもいいだろう。
特に2の臨機応変。
麻雀は、タイトル戦ごとのシステム、毎半荘、毎局、毎巡、他家の所作1つ1つ毎に状況が変化しうるため、固定概念や、当初の思い込みといったもので見落としや誤判断を招くことが多いというのが私の考えだ。
常に情報収集を欠かさず、変化に応じていかなければならない。
例えば、
リーグ戦(Aルール)のオーラス、原点より6,000点ほどの浮きだが現状トップ目。
さらに付け加えると、本日は4連勝すると決意し会場入り、1戦目もトップで終了。
配牌は上々、第一ツモでタンヤオの1シャンテン!2連勝も目前だ。
ところが。
2巡目にドラのファンパイをツモ切ると、2,000点強浮いている2着目(下家)が「ポン」!
状況は一変する。
変に応じるのなら、ここは下家を絞り込み、放銃だけは絶対に避ける。
最悪ツモられても、原点は切らないので、プラスポイントを維持できる
と、切り替えて対応していくのが自分の麻雀である。
ましてやリーグ戦の中盤戦ならば、1着にこだわる理由も全くないのだから・・・
今節2回戦オーラス、私は五索で佐々木のドラポンに放銃し、トップから沈みの3着まで転落してしまった。しかも、ドラ中もテンパイになる牌八万も私が鳴かせており、挙句にはテンパイ打牌のマタギで自身が暗刻の牌五索での放銃である。
<牌姿>
櫻井
三万四万五万五万七万四索五索五索五索六索七索二筒二筒  ツモ六索  打五索  ドラ中
佐々木
三索四索七索八索九索四筒四筒  チー八万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン中中中
佐々木 捨て牌
九筒 上向き(中ポン→)白南一索 上向き発一万 上向き(八チー→)四索 上向き
麻雀を多少知っているものなら絶対に打たない、プロ競技者ならなおさらという大暴牌だ。
しかし、私には後悔は全くなかった、自身の信条に背き、あえて上記の決意「4連勝」に拘ってみたのだ。
初のリーグ配信卓、そして同世代の人気実績共にトッププロ3人、これ以上ないアピールの場である。多少無茶してでも、自分の意思を見せつけたかった。
これからも麻雀を続けていくという意思、絶対彼らを並び追い越すという意思。
まだまだ折り返し地点、20半荘でついた差は20半荘あれば取り返せるはず。
優勝も全く諦めるつもりはない。
今回預けた点棒も必ず取り戻す。

第21回ファン感謝祭レポート 太田 優介

8月16日(土)に、日本プロ麻雀連盟公式オンライン麻雀サイト『ロン2』のイベント、
第21回ファン感謝祭が行われました。
レポーターは太田優介が担当させていただきます。

約1年振りの開催(※お待たせしてすみませんでした!!)となったファン感謝祭、
久しぶりの開催ということで、「参加ユーザーさんも少なくなっちゃうかなぁ・・・」と、
僕は勝手に不安がっていましたが、いざ開場したら集合時間前にユーザーさんが続々と来場、
不安は一瞬にして雲散霧消。誰一人欠席者の出ることなく、総勢39名のユーザーさんが参加されました!

今回は毎年恒例となった浴衣デー!13名の若手女流プロが参戦しました!

 

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ルールはロン2道場ルールで半荘戦を4回。
さらには跳満以上をアガると「ロン2特製クリアファイル」or「ロン2特製ステッカー2枚セット」
のどちらかをプレゼント!(賞品が無くなった後、一部のユーザー様には、古橋プロのサイン色紙を差し上げてました(笑))

1回戦が開始されて約30分経過、目の前の卓で「ロン、48000」の声。

役満・国士無双をアガったのは、小笠原奈央プロ!

小笠原プロは2回戦も大きく加点し、非常に調子がよさそう!
逆に調子が悪そうだったのが、立花プロ、菅原プロ。
1・2回戦、ともに沈んでしまい、苦しいスタートとなってしまいました。

 

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それでは、2回戦終了後に行われたトークショーの模様をダイジェストでどうぞ!

西嶋ゆかりプロ
「北関東支部所属の西嶋です。皆さんよろしくお願いいたします。」

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富村つぐみプロ
「ファン感謝祭に参加するのは3回目です。皆さん楽しんでいってください。」

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小笠原奈央プロ
「さっき国士無双アガりました!今日もう1回役満アガりたいです!」

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井上絵美子プロ
「ファン感謝祭に参加させていただくのは二度目です。
久しぶりにお会いできた方もいらっしゃって、とても嬉しいです!」

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立花つくしプロ
「ファン感謝祭に出るのは2回目です。浴衣着れたり、初めて会う方がいたりしてとても楽しいです。」

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菅原千瑛プロ
「日本プロ麻雀連盟の菅原です・・・って、みんな連盟か(笑)
『あ、ロン!やった!』の人です。最強戦ガールの東日本エリアを担当しています。
みなさんよろしければ、ぜひ、ブログの方にコメントをお願いします!」

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井上真実プロ
「ファン感謝祭に出るのは初めてです。ちょっと浴衣が苦しいです。みなさん楽しく麻雀をしましょう!」

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白銀紗希プロ
「カピバラじゃないです。」

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月江いくこプロ
「ファン感謝祭は今まで何度か出させてもらっています。すごくたのしいです。やくまんとかあがりたいです。」

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小谷美和子プロ
「浴衣着ても何か私だけスナックのママみたいになってる・・・。『皆様ご来店いつもありがとうございます』。」

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山脇千文美プロ
「私はロン2の中で『神』と呼ばれています。なぜなら私は『神』のような存在だからです。」(本人の発言ママ)

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東城りおプロ
「ファン感謝祭に出させていただくのは初めてです。(他のプロの)皆さん、面白いコメント言ってますが、私は何も思い浮 かびません(笑)。
1・2回戦は調子が悪かったので、この後の3・4回戦は頑張ります!」

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明里あゆみプロ
「知らない方は覚えて帰ってください。私、変わったサインを使っているので、良かったらもらってください!」

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トークショーの後、古橋プロデューサーの思いつきで『写真集・国士無双』争奪ジャンケン大会を開催!
スタッフやプロも獲得権利有りというカオスな状況の中、見事、ユーザーのzettさんが『国士無双』をゲットされていました!
完全に余談ですが、スタッフの西岡プロがいいとこまで残ったのに負けて、かなり悔しそうでした・・・。

 

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そして3回戦が行われ、滞りなく終了。
暫定1位は小笠原奈央プロ!そしてあまり差無く、暫定2位に富村つぐみプロ。
ただ、差があまり無く下が詰まっているので、最終戦での大まくりも十分にありそうな状況です!

最終4回戦、小笠原プロ、富村プロ、共に大きな2着。
このまま順位変動なしかなーなんて思っていたら、その下に控えていたユーザーさんがこぞって1着を取り一気に順位変動!

この乱戦を見事に制したのはtruth8さん!!
2位は高耀太さん、そして3位に先ほど写真集をゲットしたzettさん!
そして4位に小笠原奈央プロ、5位に富村つぐみプロという結果になりました。

そして最後に13名のプロに感想をいただき、第21回ファン感謝祭は終了となりました!

今回も跳満をアガった方や、上位入賞された方には賞品や写真等のプレゼントが送られました。

久しぶりの開催となりましたが、多くの方々に参加していただき、感謝感激です。
皆様、今後ともロン2をよろしくお願いいたします!

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特集企画/第21回ファン感謝祭レポート 太田 優介

8月16日(土)に、日本プロ麻雀連盟公式オンライン麻雀サイト『ロン2』のイベント、
第21回ファン感謝祭が行われました。
レポーターは太田優介が担当させていただきます。
約1年振りの開催(※お待たせしてすみませんでした!!)となったファン感謝祭、
久しぶりの開催ということで、「参加ユーザーさんも少なくなっちゃうかなぁ・・・」と、
僕は勝手に不安がっていましたが、いざ開場したら集合時間前にユーザーさんが続々と来場、
不安は一瞬にして雲散霧消。誰一人欠席者の出ることなく、総勢39名のユーザーさんが参加されました!
今回は毎年恒例となった浴衣デー!13名の若手女流プロが参戦しました!
 

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ルールはロン2道場ルールで半荘戦を4回。
さらには跳満以上をアガると「ロン2特製クリアファイル」or「ロン2特製ステッカー2枚セット」
のどちらかをプレゼント!(賞品が無くなった後、一部のユーザー様には、古橋プロのサイン色紙を差し上げてました(笑))
1回戦が開始されて約30分経過、目の前の卓で「ロン、48000」の声。
役満・国士無双をアガったのは、小笠原奈央プロ!
小笠原プロは2回戦も大きく加点し、非常に調子がよさそう!
逆に調子が悪そうだったのが、立花プロ、菅原プロ。
1・2回戦、ともに沈んでしまい、苦しいスタートとなってしまいました。
 
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それでは、2回戦終了後に行われたトークショーの模様をダイジェストでどうぞ!
西嶋ゆかりプロ
「北関東支部所属の西嶋です。皆さんよろしくお願いいたします。」
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富村つぐみプロ
「ファン感謝祭に参加するのは3回目です。皆さん楽しんでいってください。」
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小笠原奈央プロ
「さっき国士無双アガりました!今日もう1回役満アガりたいです!」
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井上絵美子プロ
「ファン感謝祭に参加させていただくのは二度目です。
久しぶりにお会いできた方もいらっしゃって、とても嬉しいです!」
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立花つくしプロ
「ファン感謝祭に出るのは2回目です。浴衣着れたり、初めて会う方がいたりしてとても楽しいです。」
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菅原千瑛プロ
「日本プロ麻雀連盟の菅原です・・・って、みんな連盟か(笑)
『あ、ロン!やった!』の人です。最強戦ガールの東日本エリアを担当しています。
みなさんよろしければ、ぜひ、ブログの方にコメントをお願いします!」
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井上真実プロ
「ファン感謝祭に出るのは初めてです。ちょっと浴衣が苦しいです。みなさん楽しく麻雀をしましょう!」
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白銀紗希プロ
「カピバラじゃないです。」
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月江いくこプロ
「ファン感謝祭は今まで何度か出させてもらっています。すごくたのしいです。やくまんとかあがりたいです。」
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小谷美和子プロ
「浴衣着ても何か私だけスナックのママみたいになってる・・・。『皆様ご来店いつもありがとうございます』。」
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山脇千文美プロ
「私はロン2の中で『神』と呼ばれています。なぜなら私は『神』のような存在だからです。」(本人の発言ママ)
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東城りおプロ
「ファン感謝祭に出させていただくのは初めてです。(他のプロの)皆さん、面白いコメント言ってますが、私は何も思い浮 かびません(笑)。
1・2回戦は調子が悪かったので、この後の3・4回戦は頑張ります!」
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明里あゆみプロ
「知らない方は覚えて帰ってください。私、変わったサインを使っているので、良かったらもらってください!」
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トークショーの後、古橋プロデューサーの思いつきで『写真集・国士無双』争奪ジャンケン大会を開催!
スタッフやプロも獲得権利有りというカオスな状況の中、見事、ユーザーのzettさんが『国士無双』をゲットされていました!
完全に余談ですが、スタッフの西岡プロがいいとこまで残ったのに負けて、かなり悔しそうでした・・・。
 
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そして3回戦が行われ、滞りなく終了。
暫定1位は小笠原奈央プロ!そしてあまり差無く、暫定2位に富村つぐみプロ。
ただ、差があまり無く下が詰まっているので、最終戦での大まくりも十分にありそうな状況です!
最終4回戦、小笠原プロ、富村プロ、共に大きな2着。
このまま順位変動なしかなーなんて思っていたら、その下に控えていたユーザーさんがこぞって1着を取り一気に順位変動!
この乱戦を見事に制したのはtruth8さん!!
2位は高耀太さん、そして3位に先ほど写真集をゲットしたzettさん!
そして4位に小笠原奈央プロ、5位に富村つぐみプロという結果になりました。
そして最後に13名のプロに感想をいただき、第21回ファン感謝祭は終了となりました!
今回も跳満をアガった方や、上位入賞された方には賞品や写真等のプレゼントが送られました。
久しぶりの開催となりましたが、多くの方々に参加していただき、感謝感激です。
皆様、今後ともロン2をよろしくお願いいたします!
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第31期A1リーグ第5節レポート 勝又 建志

3、4節と、攻めるべき局面でしっかりと攻め切るということに重きを置いて戦うことで、好結果を残すことができた。

結果が吉とでたこともそうだが、それ以上に、内容に手応えを感じることができていたので、今節も当然しっかりと攻め切るということを意識して対局に臨んだ。

1回戦東1局の1本場に、早くもポイントとなる局面が訪れた。
好配牌をもらった私は、8巡目に

二索二索三索三索四索四索五索六索六索六索七索北北  ドラ七索

このテンパイが入る。この時、親で上家のともたけが発をポンして、ピンズのリャンメンターツを払いマンズのホンイツ模様であっただけに、ソウズが変化すればアガれるであろうと考えていた。

次巡、ともたけからドラの七索が打ち出される。
このドラは動かずにツモを見ると東

ともたけにかなり危険な牌であるが、まだマンズも余っておらずこれはツモ切り。
この東をともたけがポンして打八万。まず間違いなくテンパイである。

さらに私のツモは五万。これをツモ切ると、次巡は六万。これは打ち切れずオリを選択する。
結果は、ともたけがハイテイで6,000オールのツモアガリとなった。
この局に、自分の課題が集約されているように思う。

第一に、ともたけから打ち出された七索。私の中にメンゼンで決めたアガリの方が勢いがつくという感覚があるが、七索だけは仕掛けるべきであった。ともたけがホンイツに向かっている以上、ここはアガリ易さを優先すべき局面である。

第二に、次巡引いてきた東。これをツモ切りともたけにテンパイを入れさせてしまうのだが、ここに大きな問題がある。この手牌で東をポンされたならば、打点、待ち共に相手の方が上回っており、自身の手牌が次巡以降勝負に見合わなくなってしまう。ならばここは一旦六索を切り、ソウズが好形に変化してから東の勝負に出るべきである。また、ともたけが仕掛けた発が1枚目ということを踏まえれば、この東にポンが入る可能性はかなり高いと考えなければならなかった。

最後に、五万を勝負して次巡の六万でのオリ。一局単位で考えるならば、東がポンされた以上、五万を切るのは全く見合っていない。これは攻めではなく、自分はホンイツをテンパイしているのだからという欲から打ち出された暴牌である。

また、大局観で戦っていくならば、自分の手牌に素直に六をも勝負し、自分の体勢を計りその結果で今後の戦い方を決めるという考え方もある。この時の私の思考は、五万が通った後の六万だけにかなり危険。ここで致命傷は負いたくないというものであった。

このように、一見普通の選択にみえるが、戦い方の基準がブレており、その場しのぎの打牌の繰り返しと言わざるをえない。

藤崎鳳凰位ならば東は打たないであろうし、瀬戸熊十段位なら六万だけでなく最後まで攻め切りその結果から対応していくであろう。

自分には足りないものが多すぎる。
しかし、それを悲観するのではなく、一つ一つと向かい合い乗り越え、次節は目指すべき麻雀を打ち切りたい。

きっとその先に決定戦があるのであろうから。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A1リーグ第5節レポート 勝又 建志

3、4節と、攻めるべき局面でしっかりと攻め切るということに重きを置いて戦うことで、好結果を残すことができた。
結果が吉とでたこともそうだが、それ以上に、内容に手応えを感じることができていたので、今節も当然しっかりと攻め切るということを意識して対局に臨んだ。
1回戦東1局の1本場に、早くもポイントとなる局面が訪れた。
好配牌をもらった私は、8巡目に
二索二索三索三索四索四索五索六索六索六索七索北北  ドラ七索
このテンパイが入る。この時、親で上家のともたけが発をポンして、ピンズのリャンメンターツを払いマンズのホンイツ模様であっただけに、ソウズが変化すればアガれるであろうと考えていた。
次巡、ともたけからドラの七索が打ち出される。
このドラは動かずにツモを見ると東
ともたけにかなり危険な牌であるが、まだマンズも余っておらずこれはツモ切り。
この東をともたけがポンして打八万。まず間違いなくテンパイである。
さらに私のツモは五万。これをツモ切ると、次巡は六万。これは打ち切れずオリを選択する。
結果は、ともたけがハイテイで6,000オールのツモアガリとなった。
この局に、自分の課題が集約されているように思う。
第一に、ともたけから打ち出された七索。私の中にメンゼンで決めたアガリの方が勢いがつくという感覚があるが、七索だけは仕掛けるべきであった。ともたけがホンイツに向かっている以上、ここはアガリ易さを優先すべき局面である。
第二に、次巡引いてきた東。これをツモ切りともたけにテンパイを入れさせてしまうのだが、ここに大きな問題がある。この手牌で東をポンされたならば、打点、待ち共に相手の方が上回っており、自身の手牌が次巡以降勝負に見合わなくなってしまう。ならばここは一旦六索を切り、ソウズが好形に変化してから東の勝負に出るべきである。また、ともたけが仕掛けた発が1枚目ということを踏まえれば、この東にポンが入る可能性はかなり高いと考えなければならなかった。
最後に、五万を勝負して次巡の六万でのオリ。一局単位で考えるならば、東がポンされた以上、五万を切るのは全く見合っていない。これは攻めではなく、自分はホンイツをテンパイしているのだからという欲から打ち出された暴牌である。
また、大局観で戦っていくならば、自分の手牌に素直に六をも勝負し、自分の体勢を計りその結果で今後の戦い方を決めるという考え方もある。この時の私の思考は、五万が通った後の六万だけにかなり危険。ここで致命傷は負いたくないというものであった。
このように、一見普通の選択にみえるが、戦い方の基準がブレており、その場しのぎの打牌の繰り返しと言わざるをえない。
藤崎鳳凰位ならば東は打たないであろうし、瀬戸熊十段位なら六万だけでなく最後まで攻め切りその結果から対応していくであろう。
自分には足りないものが多すぎる。
しかし、それを悲観するのではなく、一つ一つと向かい合い乗り越え、次節は目指すべき麻雀を打ち切りたい。
きっとその先に決定戦があるのであろうから。

第1期両毛カップ太田リーグ(プロアマ混合) 第7節成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 合計
1 沢崎 誠 プロ 13.4 34.8 54.9 54.7 157.8
2 堰合 正治 一般 81.0 31.4 9.2 ▲ 18.9 102.7
3 関口 英行 一般 26.4 48.7 10.1 ▲ 3.0 82.2
4 菅谷 陽介 一般 6.4 36.6 27.7 0.8 71.5
5 飯塚 亮 一般 ▲ 33.4 79.2 7.7 1.0 13.6 68.1
6 桧山 拓 一般 ▲ 36.4 57.4 ▲ 4.9 12.9 33.6 62.6
7 大里 幸弘 一般 ▲ 1.2 ▲ 13.3 9.9 ▲ 2.6 65.3 58.1
8 提橋 剛 一般 12.7 ▲ 0.9 24.9 14.9 51.6
9 高橋 信夫 プロ ▲ 28.4 23.8 ▲ 0.7 ▲ 11.2 63.4 46.9
10 小林 正和 一般 ▲ 35.8 44.1 32.0 5.5 ▲ 5.8 40.0
11 小谷 美和子 プロ 36.1 ▲ 14.4 ▲ 23.9 ▲ 21.6 61.4 37.6
12 中津 真吾 プロ 39.4 ▲ 35.1 52.6 ▲ 21.1 35.8
13 須永 光俊 一般 37.1 36.7 ▲ 43.7 5.4 35.5
14 高月 章男 一般 36.8 ▲ 48.4 31.0 ▲ 26.3 33.8 26.9
15 桝井 律男 一般 36.1 ▲ 60.8 ▲ 22.9 20.0 45.2 17.6
16 久保 公男 プロ ▲ 5.0 ▲ 28.8 61.3 ▲ 17.7 9.8
17 町野 高司 一般 60.5 ▲ 56.7 ▲ 2.4 1.4
18 小林 寛之 一般 19.2 ▲ 18.0 1.2
19 黒木 聡太 一般 26.2 7.3 3.2 ▲ 48.5 11.4 ▲ 0.4
20 岩崎 殊男 一般 ▲ 17.0 109.1 ▲ 60.2 ▲ 33.8 ▲ 1.9
21 浜  正彦 一般 ▲ 17.9 34.1 ▲ 44.4 27.4 ▲ 4.1 ▲ 4.9
22 斎藤 健人 プロ 26.1 ▲ 40.6 5.4 ▲ 4.1 ▲ 13.2
23 関根 直也 一般 30.3 ▲ 37.2 ▲ 19.6 ▲ 26.5
24 福田 栄司 一般 ▲ 8.3 2.1 ▲ 1.6 45.4 ▲ 69.3 ▲ 31.7
25 後藤 隆 プロ ▲ 33.0 ▲ 33.0
26 西尾 猛 一般 ▲ 17.3 ▲ 15.2 37.2 ▲ 25.4 ▲ 12.9 ▲ 33.6
27 中山 典也 一般 ▲ 73.9 ▲ 5.1 37.2 2.2 ▲ 39.6
28 笹岡 一生 一般 4.4 55.3 ▲ 103.1 ▲ 43.4
29 橋本 幸志郎 一般 ▲ 6.6 ▲ 26.5 ▲ 30.8 16.9 ▲ 47.0
30 小林 一行 一般 ▲ 36.6 ▲ 1.7 ▲ 13.3 ▲ 51.6
31 西嶋 ゆかり プロ ▲ 26.3 ▲ 55.1 ▲ 11.7 32.1 ▲ 6.4 ▲ 67.4
32 小坂 智徳 一般 ▲ 28.0 ▲ 11.6 ▲ 2.4 ▲ 46.1 2.8 ▲ 85.3
33 村田 昌代 一般 ▲ 43.1 ▲ 45.0 ▲ 8.5 ▲ 96.6
34 塚越 祐次郎 プロ ▲ 46.0 8.3 ▲ 21.3 45.6 ▲ 84.4 ▲ 97.8
35 吉田 幸雄 プロ ▲ 39.0 ▲ 45.5 49.8 ▲ 23.3 ▲ 43.3 ▲ 101.3
36 高田 麻衣子 プロ ▲ 49.0 ▲ 0.6 ▲ 36.6 ▲ 43.7 ▲ 129.9

北関東プロリーグ 成績表/第1期両毛カップ太田リーグ(プロアマ混合) 第7節成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 合計
1 沢崎 誠 プロ 13.4 34.8 54.9 54.7 157.8
2 堰合 正治 一般 81.0 31.4 9.2 ▲ 18.9 102.7
3 関口 英行 一般 26.4 48.7 10.1 ▲ 3.0 82.2
4 菅谷 陽介 一般 6.4 36.6 27.7 0.8 71.5
5 飯塚 亮 一般 ▲ 33.4 79.2 7.7 1.0 13.6 68.1
6 桧山 拓 一般 ▲ 36.4 57.4 ▲ 4.9 12.9 33.6 62.6
7 大里 幸弘 一般 ▲ 1.2 ▲ 13.3 9.9 ▲ 2.6 65.3 58.1
8 提橋 剛 一般 12.7 ▲ 0.9 24.9 14.9 51.6
9 高橋 信夫 プロ ▲ 28.4 23.8 ▲ 0.7 ▲ 11.2 63.4 46.9
10 小林 正和 一般 ▲ 35.8 44.1 32.0 5.5 ▲ 5.8 40.0
11 小谷 美和子 プロ 36.1 ▲ 14.4 ▲ 23.9 ▲ 21.6 61.4 37.6
12 中津 真吾 プロ 39.4 ▲ 35.1 52.6 ▲ 21.1 35.8
13 須永 光俊 一般 37.1 36.7 ▲ 43.7 5.4 35.5
14 高月 章男 一般 36.8 ▲ 48.4 31.0 ▲ 26.3 33.8 26.9
15 桝井 律男 一般 36.1 ▲ 60.8 ▲ 22.9 20.0 45.2 17.6
16 久保 公男 プロ ▲ 5.0 ▲ 28.8 61.3 ▲ 17.7 9.8
17 町野 高司 一般 60.5 ▲ 56.7 ▲ 2.4 1.4
18 小林 寛之 一般 19.2 ▲ 18.0 1.2
19 黒木 聡太 一般 26.2 7.3 3.2 ▲ 48.5 11.4 ▲ 0.4
20 岩崎 殊男 一般 ▲ 17.0 109.1 ▲ 60.2 ▲ 33.8 ▲ 1.9
21 浜  正彦 一般 ▲ 17.9 34.1 ▲ 44.4 27.4 ▲ 4.1 ▲ 4.9
22 斎藤 健人 プロ 26.1 ▲ 40.6 5.4 ▲ 4.1 ▲ 13.2
23 関根 直也 一般 30.3 ▲ 37.2 ▲ 19.6 ▲ 26.5
24 福田 栄司 一般 ▲ 8.3 2.1 ▲ 1.6 45.4 ▲ 69.3 ▲ 31.7
25 後藤 隆 プロ ▲ 33.0 ▲ 33.0
26 西尾 猛 一般 ▲ 17.3 ▲ 15.2 37.2 ▲ 25.4 ▲ 12.9 ▲ 33.6
27 中山 典也 一般 ▲ 73.9 ▲ 5.1 37.2 2.2 ▲ 39.6
28 笹岡 一生 一般 4.4 55.3 ▲ 103.1 ▲ 43.4
29 橋本 幸志郎 一般 ▲ 6.6 ▲ 26.5 ▲ 30.8 16.9 ▲ 47.0
30 小林 一行 一般 ▲ 36.6 ▲ 1.7 ▲ 13.3 ▲ 51.6
31 西嶋 ゆかり プロ ▲ 26.3 ▲ 55.1 ▲ 11.7 32.1 ▲ 6.4 ▲ 67.4
32 小坂 智徳 一般 ▲ 28.0 ▲ 11.6 ▲ 2.4 ▲ 46.1 2.8 ▲ 85.3
33 村田 昌代 一般 ▲ 43.1 ▲ 45.0 ▲ 8.5 ▲ 96.6
34 塚越 祐次郎 プロ ▲ 46.0 8.3 ▲ 21.3 45.6 ▲ 84.4 ▲ 97.8
35 吉田 幸雄 プロ ▲ 39.0 ▲ 45.5 49.8 ▲ 23.3 ▲ 43.3 ▲ 101.3
36 高田 麻衣子 プロ ▲ 49.0 ▲ 0.6 ▲ 36.6 ▲ 43.7 ▲ 129.9

第23期中部プロリーグレポート

「ツモ。4,000オール」
静かだが力強いその声の向こう側で、観戦者からは驚きの表情とどよめきが聞こえた。
5回戦オーラスの最終局面でこの展開を何人が予想しただろう?
「麻雀は最後まで何が起こるか分からない。」「諦めたらそこで終わり。」とよく聞くが、それは麻雀に限った事ではなく、全ての出来事に当てはまるのだが、今日起きた結果を振り返るとその言葉で締めくくるのがふさわしく思えた。

それでは本日決勝で闘う主役達を紹介しよう。

1位通過 伊藤鉄也(22期生/三段)
決勝進出:3回目 最高成績:優勝(1回)
記憶にも新しいが前期の優勝者であり、本命候補筆頭でもある。
その麻雀スタイルは一見攻撃型に感じるが、実際打って感じるのは押し引きに長けているバランス型。
仕掛けも上手く相手を翻弄する事もしばしば。連覇が期待されるが結果はいかに?

2位通過 長谷川弘(20期生/二段)
決勝進出:2回目 最高成績:4位
元々はAリーガーで、一時はCリーグまで降級するものの、実力で今期Aリーグ返り咲きを果たし、最終怒涛の追い上げで決勝まで駒を進めた。
麻雀は緻密に計算された攻撃型。一度流れを掴むとその勢いを止める事は難しい。
自分のスタイルを発揮出来れば、優勝も狙える対抗馬的存在。

3位通過 毛受俊(24期生/二段)
決勝進出:初
決勝は初だがリーグ戦をオールプラスで終えた実力は大きな自信に繋がる所だろう。
スタイルは手組み・打点を重視し、場況を読み押し進めて行く守備型。
しかしここぞと言う時の瞬発力は侮れない力を持つ。
決勝の大舞台でリーグ戦と変わらぬ、毛受らしい麻雀が打てるか?

4位通過 太田充(25期生/初段)
決勝進出:初
こちらも決勝は初挑戦。勝負勘に優れ、大事な局面・勝負所できっちりアガり切る力を持つ。
最終節では熾烈な決勝枠を制し、初の大舞台に挑む。
前期は最終節で大きなマイナスを叩いたが故に次点の地位に甘んじたが、今回はその雪辱を果たせるか?

 

1回戦(起家から伊藤・長谷川・毛受・太田)
東1局 開局早々に毛受が魅せる。
毛受の配牌

一万一万三万九万九万九万一索二索三索三筒三筒九筒北  ドラ六万

4巡目には二万ツモで

一万一万二万三万七万九万九万九万一索一索二索三索三筒三筒

毛受はここから三筒切りを選択したが、人によってはこのツモで打牌が分かれるのではないか?
しかし、この打牌選択が唯一アガリに繋がる打ち筋だった。
8巡目に八万を引き入れテンパイ。

一万一万二万二万三万七万八万九万九万九万一索二索三索

10巡目に太田がポンテンを入れるも、11巡目に伊藤から8,000をアガリ、幸先良いスタートを切る。

東2局 放銃した伊藤は全く動じる事もなく、積極的に仕掛け1,600・3,200をツモ。

一索一索発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン七万 上向き七万 上向き七万 上向き  ポン北北北  ツモ一索  ドラ南

この時、毛受がタンピン系の1シャンテンの形からドラをツモ切りしており、大事には至らなかったが、放銃すれば12,000が見えるだけに少し慎重さを欠いていたように思えた。
決勝の舞台では誰もが目に見えないプレッシャーと背中合わせにあり、いかに集中力を切らさずいつも通りの麻雀が打てるかが重要なカギにもなる。

東3局2本場、毛受の親を落とすべく伊藤・太田の手がぶつかる。

伊藤5巡目
四万五万六万七万七万八万三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ二筒  打八万 左向き  ドラ三筒

太田7巡目
二万三万五索六索七索八索八索九索四筒五筒六筒八筒八筒  ツモ八索  打九索 左向き

観戦者目線で言わせて頂くと、伊藤が一筒をツモるのではないか?と思っていた。
結果は、伊藤が太田から七筒で3,900をアガリ決着。とは言え積み棒も含めると6,500の加点は大きい。

東4局 ここまで身を潜めていた太田に親でチャンスが訪れる。
太田の配牌

四万五万八索九索二筒五筒七筒八筒西西西北白白  ドラ西

ドラ暗刻の勝負手にもなりそうな配牌だが展開はいかに。
結論を言えば、太田が4,000オールをツモり、この半荘を決定づけた局と私は感じた。
太田は3巡目1シャンテン。
しかし5巡目、最短でテンパイが入ったのは西家の長谷川だった。

一万二万三万七万七万七万二索四索六索四筒五筒九筒九筒  ツモ三筒

これまでずっとチャンスを窺っては居たものの、テンパイチャンスもなく初めて訪れたテンパイだった。
しかし長谷川は、リーチすることが出来ず、決勝後に「あそこで六索切りリーチを打てなかった時点でいつもの麻雀ではなかった」と振り返り、強く悔やんでいた。

麻雀に「たら、れば」はないが、あの時長谷川がリーチと発声出来たなら、きっと違う展開が訪れていたに違いない。
ここで太田が勢いに乗るかと思われたが、毛受がしっかり捌いて太田から2,000をアガる。

南1局、3着太田とラス長谷川の手がぶつかる。
両者の配牌

太田
二万三万四万八万二索五索五索九索四筒五筒六筒六筒白  ドラ八万

長谷川
五万五万三索三索三索四索七索八索九索九索東白白

9巡目、太田テンパイ。

二万三万四万五索五索四筒四筒五筒六筒六筒  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き

同巡、長谷川もテンパイ。

三索四索七索八索九索西西  ポン白白白  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き

山に眠っている数は太田1枚、長谷川3枚で長谷川有利かと考えていたが、なんとここで毛受が太田に7,700放銃。てっきりオリていると思っていたので一瞬抜き間違いかと考えた。後の話では「危ないとは分かっていたが五筒さえ通れば5巡凌げると思ったから」と語ってくれたが、この時の毛受の手牌が、

六万七万六索六索六索八索八索二筒二筒二筒五筒五筒南

先に落とすなら、シャンポン待ちのない五筒より二筒を選ぶべきではないか?
苦しい時ほど、楽になりたい一心で選択ミスも起こるものだが、この代償は大きい。

南2局、7巡目に毛受が果敢にリーチするも空振り、1人テンパイ。

八万九万一索二索三索四索五索六索七索八索九索北北  リーチ  ドラ九万

南3局は浮きに回りたい伊藤が、長谷川から5,200のアガリ。

一万一万一万二万二万三万四万中中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン五万  ドラ南

長谷川の1人沈みで迎えたオーラス、太田・伊藤・長谷川共に12巡目同時テンパイ。

太田
七万七万二索二索四索四索二筒二筒九筒東東中中  ドラ九筒

伊藤はここでトップを狙いに勝負を懸ける。

三万四万五万五万六万七万六索七索七索八索八索五筒五筒  リーチ

長谷川
四索五索六索六索七索二筒三筒四筒白白白発発

軍配が挙がったのは長谷川。伊藤から1,600。次戦以降に望みをつなぐアガリをモノにした。

1回戦成績
伊藤+4.2P 長谷川▲24.5P 毛受+1.7P 太田+18.6P

2回戦(起家から毛受・太田・伊藤・長谷川)
東1局、毛受がピンフツモの700オールと静かな幕開けで開局。
続く1本場、毛受が12巡目に七筒を切って1人テンパイを果たすも違和感を覚えた。

六万七万八万五索五索六索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒七筒  ドラ西

太田がピンズのホンイツ仕掛けをしていたのだが、条件がなければ一手変わり三色で四筒切りのはず。
しかし14巡目、太田から手出しが入ったにも拘わらず、15巡目では四筒をツモ切りしていた。
落ち着いているように見えても、決勝の舞台でその感情を消す事は難しい。

2本場は毛受・太田が共にテンパイで流局。
3本場、伊藤が先制リーチを掛けるも、同テンの七万を長谷川が力強くツモり上げた。

七万七万一索二索三索一筒二筒三筒三筒四筒五筒白白  リーチ  ドラ一索

長谷川
八万九万三索三索九筒九筒九筒中中中  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ツモ七万

ここで同テンを制した事で、ようやく長谷川に流れが傾くか?とメモ書きを記す。

東2局 流局。
東3局1本場 太田がピンフ、ツモで400・700は500・800。
東4局 伊藤が長谷川から1,000アガリ小場が続く。
南場に入りヒートアップ。4人全員が一歩も引かない局面となる。

毛受
四万五万九万九万  ポン南南南  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き  ドラ六筒

太田
四万五万六万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き

伊藤
一万二万三万五万五万四索五索六索三筒四筒七筒八筒九筒

長谷川
八万八万五索六索二筒三筒四筒七筒八筒九筒  ポン白白白

ここは太田が五筒をツモり、加点は2,000だが価値あるアガリとなった。
南2局 流局。
南3局1本場 毛受のターニングポイントとも感じた局。
現点棒状況:
太田32.900 伊藤24,800 毛受34,000 長谷川28,300
5巡目、毛受の牌姿はこう

三万四万三索三索四索五索五索二筒三筒四筒五筒五筒五筒  ドラ七索  ツモ三万

234や345の三色も見え、最終12,000まで見える悩ましい手だが、現在トップ目でもあった毛受が選択した打牌はツモ切り。
巡目も早く打点を目指すなら当然の一打であろう。しかし今の置かれている状況を冷静に把握し先を見据えて打つのであれば、テンパイを取っても良かったのではと思う。
もちろん色々な意見があるとは思うが、短期決戦の場では一瞬の隙が取り返しのつかない状況を生み出す。
その結末は、毛受がテンパイを取っていれば四索で捉えられていた伊藤が長谷川から七対子ドラ2の9,600をモノにした。

南4局2本場 最速7巡目テンパイを果たしたのは4,900以上で浮きに回る太田。

三万四万五万二索二索三索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ドラ四筒

きっちり手役をつくり伊藤からなら逆転、他からでも2着となるためヤミを選択。
しかし13巡目に追いついた伊藤が太田の待ちをしっかり抑えた上でツモアガリ。

六万七万八万八万八万四索四索四索八索八索二筒三筒四筒  ツモ八索

伊藤の勢いと好調さが生まれた半荘となった。

2回戦成績
伊藤+21.9P  毛受+6.1P  太田▲10.0P  長谷川▲18.0P

2回戦終了時
伊藤+26.1P  太田+8.6P  毛受+7.8P  長谷川▲42.5P

3回戦(起家から、長谷川・伊藤・毛受・太田)
伊藤に勢いが出始めたが、それを追う太田・毛受にもまだまだチャンスは十分。
長谷川は展開的に苦しいが、巻き返すならここで挽回したいところ。

東2局 伊藤の親をいかに早く落とせるか?と思って見ていると、毛受が3巡目で以下の形でリーチ。

一万一万一万七万八万九万三索三索五筒六筒南南南  ドラ五万

伊藤・長谷川から仕掛けが入り、結果両方から喰い取られる形となって流局テンパイ。

東4局

伊藤配牌
三万四万七万二索三索五索八索九索五筒九筒東南南  ドラ八筒

7巡目に長谷川からリーチが入る。

二万三万四万五万六万一筒一筒一筒二筒三筒四筒東東  リーチ

11巡目には伊藤が下記テンパイで追いつく。

一万一万三万四万五万五万六万七万七万八万八万南南南

ここから八万を落とし六万九万待ち。山に眠る枚数は長谷川3枚、伊藤が4枚、しかも1牌も余らず迷う事なくテンパイしたところを見て、伊藤のアガリかと思われたが、長谷川が七万をツモり700・1,300。
南1局 前局好調な伊藤との勝負を制し今度こそ流れが傾くかと思われたが、選択を間違えアガリを逃してしまう。

9巡目 長谷川の手牌

三索四索五索五筒七筒七筒南南発発  ポン北北北  ツモ四筒  ドラ南

捨て牌
九万 上向き九索 上向き二筒 上向き六万 上向き二万 上向き一索 上向き白六索 上向き

選択したのは四筒のツモ切り。
この状況でドラの南が出る事はまず考えられない。北仕掛けでホンイツやトイトイが警戒されるので、私なら待ち数が多い四筒五筒の方を残し、最悪テンパイでもよしとするだろう。
結果論で言えば、七筒切りなら発ツモだったが流局テンパイ。

南2局 ここで伊藤・毛受の手がぶつかり合い場況が大きく動く。
7巡目に伊藤テンパイ

二万二万三索三索五索五索一筒一筒三筒四筒四筒発発  ドラ一筒

8巡目、毛受が追いつき5面待ちリーチ

三万三万三万四万五万六万七万三索四索五索三筒四筒五筒  リーチ

毛受のリーチを受け、ツモった九万に待ちを変えた所、次巡に九万をツモり4,000オール。やはり調子がいい。
南2局1本場 伊藤の勢いは止まらない。
14巡目、ドラの八万を重ね意を決するリーチ。

一万二万三万五万六万八万八万四索五索六索六筒七筒八筒  ドラ八万

七万を一発でツモり4,000は4,100オール。たった2局で一気に5万点オーバーし、会場内ではこれまでのポイント表を確認すると同時に、伊藤の優勝を確信したような雰囲気に包まれた。
南2局3本場、毛受が長谷川から2,000は2,900をアガリなんとか親を落とす。

場は淡々と進み、伊藤の1人浮きで終了。

3回戦成績
伊藤+37.8P  毛受▲7.1P  長谷川▲9.7P  太田▲22.0P(供託+1.0)

3回戦終了時
伊藤+63.9P  毛受+0.7P  太田▲13.4P  長谷川▲52.2P

4回戦(起家から、毛受・太田・長谷川・伊藤)
1~3回戦を全てプラスで終え、圧倒的な勢いと好調さを見せつけている伊藤に対し、他の3人が確固たる意志を持ってどこまで対抗出来るかがカギとなる。

東1局 開始早々伊藤の配牌とツモに注目。勢いは確実に増している。

北家 伊藤の配牌
一万二万二万七万一筒五筒六筒七筒東北北中中  ドラ北

4巡目にはこの形で1シャンテン

一万一万二万三万五筒六筒七筒東東北北中中

9巡目に北のポンテンを果たすも、太田がそれを許さない。
長谷川から1,300出アガリ。

テンパイ続きの東3局2本場、ここで長谷川がついに反撃に出る。
5巡目にリーチ、

六万六万七万七万八万八万六索七索八索八筒八筒白白  ドラ三索  リーチ

力強く一発で白をツモ。3,900オールは4,100オール。
その後は流局が続き、東4局5本場、ここでアガれば積み棒併せて4,500点のオマケ付き。
誰もが制したい局面であり、重要な勝負所でもある。
結果は、ここでも伊藤に軍配が上がり、太田より1,500は3,000。
南1局7本場 毛受・太田の手がぶつかる。
9巡目 毛受先制リーチ

二万三万四万五万五万二索三索四索一筒一筒一筒二筒三筒  ドラ六筒  リーチ

14巡目、太田が追いついて

二万三万四万七万七万七索八索九索五筒六筒七筒南南  リーチ

残り1巡のハイテイ間際、太田が値千金の南をツモり2,000・4,000。
南2局、伊藤が毛受に3,900放銃し3人の思惑通り伊藤がラス目に。
南3局、長谷川が毛受より5,800をアガり5万点オーバー。
オーラス、伊藤にラスを押しつけられるかが焦点だったが、結果は毛受がラスとなり終了。

4回戦成績
長谷川+30.8P  太田+8.3P  伊藤▲16.1P  毛受▲23.0P(供託+1.0)

4回戦終了時
伊藤+47.8P  太田▲5.1P  長谷川▲21.4P  毛受▲22.3P

4回戦を終え、伊藤以外、全員マイナスでその差は50P以上でかなりキツい。
伊藤で決まりか?

5回戦(起家から、長谷川・毛受・伊藤・太田)
東1局 なんとかしたいトータル2着の太田にチャンスが訪れる。太田の配牌。

三万五万六万一索三索六索六索九索七筒八筒九筒西西  ドラ六索

5巡目にはツモも伸びて即リーチ

四万五万六万六索六索九索九索七筒八筒九筒西西西  リーチ

九索を一発ツモで2,000・4,000。太田と打っていて感じるのは「ここぞという時の勝負強さ」である。
もちろんこうした時は打点も高いのだが、プロとして必要不可欠な要素だろう。
東2局、ここまで順調に来ていた伊藤も負けるわけにはいかないとばかりに8巡目にリーチを選択。
伊藤らしいと言えばそうなのだが、少しリスクが高いようにも感じた。

七万八万八万八万四索五索六索七索八索九索三筒四筒五筒  ドラ五筒

結果は、ソーズのホンイツ仕掛けをしていた長谷川が九万で3,900の放銃。

東3局、伊藤は攻撃の手を緩めず8巡目に勢いよくここでもリーチ。

二万三万四万五索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒  リーチ  ドラ東

50P差以上あるとは言え、トータルトップ目でドラの行方が全く見えていない状況でのリーチはと嫌な予感がしたその時。

伊藤が切った九筒を太田がチー。
伊藤を観戦していたため、太田の手牌は後から知ったのだが、案の定ドラを持っての仕掛けだった。
結果は、伊藤が太田に痛恨の3,900振り込み。直撃はなんとしても避けなくてはいけない状況とは伊藤も分かっていたはずだが、これが決勝の舞台の雰囲気なのだろう。

東4局、直撃のアガリで勢いに乗りたい親番の太田だったが、長谷川に3,900の放銃。
南1局1本場、太田が上手く仕掛けて1,300・2,600は1,400・2,700をツモアガリ。
南2局、伊藤の配牌はなんと1シャンテン。
3巡目でピンフテンパイ。同巡に長谷川から出アガリ。
この時点で伊藤は「優勝を意識して打っていた」と後に語ってくれた。

南3局、親である伊藤は最後まで自分の麻雀を貫くべく、攻撃の手を緩めなかったが、長谷川に5,200を振り込み暗雲が立ちこめる。

しかし5回戦オーラス、泣いても笑ってもこれが最後である。
現在のポイントと点棒を照らし合わせると下記の通り。
伊藤はアガれば優勝。太田は12.2P差で2,000オールでもひとまず逆転するが、親なのでアガっても続行。
長谷川は役満ツモ、毛受は伊藤から役満直撃条件となる。

ラス親の太田配牌
一万三万五万七万八万八万三索三索五索五索八索九索三筒発  ドラ七索

北家の伊藤配牌
一万一索一索四索九索二筒三筒六筒東北北中中

太田はツモにもよるが、伊藤は役牌もあり比較的軽く感じやや有利か?
3巡目には驚異的なツモで太田が七対子1シャンテン。

同巡、伊藤はホンイツorチャンタ系での2シャンテン。北中のどちらかでも鳴ければ早そうだが、他の2人は役満が条件なだけに、場には字牌が見えない厳しい状況。

9巡目、ついに太田が七対子テンパイ。さらにはリーチを選択。ここが最後の勝負所だと感じたのだろう。

三万五万五万七万七万八万八万三索三索五索五索八索八索  リーチ

なんとか追いつきたい伊藤はまだ1シャンテン止まり。表情には焦りが見えた。
だが11巡目、伊藤がついにテンパイを果たす。

一索一索一索三索四索七索八索九索北北北中中

張り詰める空気の中、2人の勝負を観戦者が固唾を呑んで見守っていたその時、13巡目に太田が力強く三万を引き寄せ4,000オール。
しかし太田は親なので続行。今度は伊藤が追う立場になり実質のラストチャンス。

伊藤の条件としては5,200出アガリまたは1,000・2,000ツモで優勝。
アガリ切れなければ太田が優勝となる。

南4局1本場、事実上の最終決戦。伊藤の連覇か?太田が初優勝を果たすか?

東家、太田配牌
五万七万九万二索三索三索九索一筒四筒六筒六筒八筒発中  ドラ二万

北家、伊藤配牌
四万七万七万八万九万一索六索八索一筒四筒七筒発発

条件が5,200出アガリまたは1,000・2,000だけに太田も最初からオリは選択出来ない。
伊藤をケアしながらアガリに向かう。伊藤はツモ次第だが、チャンタor三色がなんとか見える形か。
9巡目、一足早く1シャンテンで迎えたのは伊藤。

三万四万七万八万九万一索一索二索七筒九筒発発発

場に八筒が残り1枚なだけにリーチを掛けてツモりに行く形になると思っていたのだが、11巡目に上家の毛受から最後の八筒が切られてしまう。
この時伊藤の牌姿は、

一万三万四万七万八万九万一索一索七筒九筒発発発

八筒を仕掛ければ4巡後にドラの二万をツもり優勝だったが、伊藤が選択したのはスルー。
最後は太田がゆっくりと手を伏せ、伊藤の1人テンパイ。

太田の初優勝が決まった瞬間だった。
観戦者からは大きな祝福の拍手と共に、第23期中部プロリーグ決勝の幕が閉じた。

伊藤にもチャンスはあった。だが、あの時八筒を仕掛けていれば…と書いたところで事実が変わるわけではないし、それが決勝という舞台で5回戦まで打ち切った結果でもある。

競技麻雀で1半荘に50P以上の差を埋めるのは容易ではないが、「何事も諦めない」という姿勢は、今回の決勝のように見る者を魅了する結果に繋がるのだろう。

 

決勝メンバーのコメント
第4位 毛受俊
「初の決勝でも緊張はしていませんでしたが、要所要所でアガリ切る事が出来なかった。
形にこだわりすぎて綺麗に打ち過ぎました。自分の得意な状況に持ち込めなかったのが敗因です。」

第3位 長谷川弘
「結果としては残念だが、あの状況から3位で終われたのは良かった。1~3回戦目に手が入らなかった時、どう打開すべきかを考えて打っていたが、知らない内に優等生の麻雀を打ってしまっていたし、基本的に自分の信じているスタイルを出し切ることが出来ず、4回戦目にようやく取れたトップでも勢いに乗り切れなかった。」

準優勝 伊藤鉄也
「自分自身すごく落ち着いていたし、4回戦目まで上手く打てていたと感じていたが最後の最後で捲られてしまい非常に悔しい。正直5回戦目の南3局を迎えた時はこのまま優勝出来ると意識していました。しかし最終局面で4,000オールをツモった太田さんが強かったし、それが結果です。」

優勝 太田充
「上手く打てていた部分もミスした局面もありましたが、半分はツイていた所もあり結果として優勝出来たのは嬉しいです。放銃が少なかったのもありますが、5回戦目にラス親を引けた事が勝因に大きく繋がりました。次回は実力で優勝したと思われるような打ち方で勝ちきりたいと思います。今後も中部プロリーグはもちろん、タイトル戦にも積極的に参加して結果を出して行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。」

中部プロリーグ レポート/第23期中部プロリーグレポート

「ツモ。4,000オール」
静かだが力強いその声の向こう側で、観戦者からは驚きの表情とどよめきが聞こえた。
5回戦オーラスの最終局面でこの展開を何人が予想しただろう?
「麻雀は最後まで何が起こるか分からない。」「諦めたらそこで終わり。」とよく聞くが、それは麻雀に限った事ではなく、全ての出来事に当てはまるのだが、今日起きた結果を振り返るとその言葉で締めくくるのがふさわしく思えた。
それでは本日決勝で闘う主役達を紹介しよう。

1位通過 伊藤鉄也(22期生/三段)
決勝進出:3回目 最高成績:優勝(1回)
記憶にも新しいが前期の優勝者であり、本命候補筆頭でもある。
その麻雀スタイルは一見攻撃型に感じるが、実際打って感じるのは押し引きに長けているバランス型。
仕掛けも上手く相手を翻弄する事もしばしば。連覇が期待されるが結果はいかに?
2位通過 長谷川弘(20期生/二段)
決勝進出:2回目 最高成績:4位
元々はAリーガーで、一時はCリーグまで降級するものの、実力で今期Aリーグ返り咲きを果たし、最終怒涛の追い上げで決勝まで駒を進めた。
麻雀は緻密に計算された攻撃型。一度流れを掴むとその勢いを止める事は難しい。
自分のスタイルを発揮出来れば、優勝も狙える対抗馬的存在。
3位通過 毛受俊(24期生/二段)
決勝進出:初
決勝は初だがリーグ戦をオールプラスで終えた実力は大きな自信に繋がる所だろう。
スタイルは手組み・打点を重視し、場況を読み押し進めて行く守備型。
しかしここぞと言う時の瞬発力は侮れない力を持つ。
決勝の大舞台でリーグ戦と変わらぬ、毛受らしい麻雀が打てるか?
4位通過 太田充(25期生/初段)
決勝進出:初
こちらも決勝は初挑戦。勝負勘に優れ、大事な局面・勝負所できっちりアガり切る力を持つ。
最終節では熾烈な決勝枠を制し、初の大舞台に挑む。
前期は最終節で大きなマイナスを叩いたが故に次点の地位に甘んじたが、今回はその雪辱を果たせるか?
 
1回戦(起家から伊藤・長谷川・毛受・太田)
東1局 開局早々に毛受が魅せる。
毛受の配牌
一万一万三万九万九万九万一索二索三索三筒三筒九筒北  ドラ六万
4巡目には二万ツモで
一万一万二万三万七万九万九万九万一索一索二索三索三筒三筒
毛受はここから三筒切りを選択したが、人によってはこのツモで打牌が分かれるのではないか?
しかし、この打牌選択が唯一アガリに繋がる打ち筋だった。
8巡目に八万を引き入れテンパイ。
一万一万二万二万三万七万八万九万九万九万一索二索三索
10巡目に太田がポンテンを入れるも、11巡目に伊藤から8,000をアガリ、幸先良いスタートを切る。
東2局 放銃した伊藤は全く動じる事もなく、積極的に仕掛け1,600・3,200をツモ。
一索一索発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン七万 上向き七万 上向き七万 上向き  ポン北北北  ツモ一索  ドラ南
この時、毛受がタンピン系の1シャンテンの形からドラをツモ切りしており、大事には至らなかったが、放銃すれば12,000が見えるだけに少し慎重さを欠いていたように思えた。
決勝の舞台では誰もが目に見えないプレッシャーと背中合わせにあり、いかに集中力を切らさずいつも通りの麻雀が打てるかが重要なカギにもなる。
東3局2本場、毛受の親を落とすべく伊藤・太田の手がぶつかる。
伊藤5巡目
四万五万六万七万七万八万三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ二筒  打八万 左向き  ドラ三筒
太田7巡目
二万三万五索六索七索八索八索九索四筒五筒六筒八筒八筒  ツモ八索  打九索 左向き
観戦者目線で言わせて頂くと、伊藤が一筒をツモるのではないか?と思っていた。
結果は、伊藤が太田から七筒で3,900をアガリ決着。とは言え積み棒も含めると6,500の加点は大きい。
東4局 ここまで身を潜めていた太田に親でチャンスが訪れる。
太田の配牌
四万五万八索九索二筒五筒七筒八筒西西西北白白  ドラ西
ドラ暗刻の勝負手にもなりそうな配牌だが展開はいかに。
結論を言えば、太田が4,000オールをツモり、この半荘を決定づけた局と私は感じた。
太田は3巡目1シャンテン。
しかし5巡目、最短でテンパイが入ったのは西家の長谷川だった。
一万二万三万七万七万七万二索四索六索四筒五筒九筒九筒  ツモ三筒
これまでずっとチャンスを窺っては居たものの、テンパイチャンスもなく初めて訪れたテンパイだった。
しかし長谷川は、リーチすることが出来ず、決勝後に「あそこで六索切りリーチを打てなかった時点でいつもの麻雀ではなかった」と振り返り、強く悔やんでいた。
麻雀に「たら、れば」はないが、あの時長谷川がリーチと発声出来たなら、きっと違う展開が訪れていたに違いない。
ここで太田が勢いに乗るかと思われたが、毛受がしっかり捌いて太田から2,000をアガる。
南1局、3着太田とラス長谷川の手がぶつかる。
両者の配牌
太田
二万三万四万八万二索五索五索九索四筒五筒六筒六筒白  ドラ八万
長谷川
五万五万三索三索三索四索七索八索九索九索東白白
9巡目、太田テンパイ。
二万三万四万五索五索四筒四筒五筒六筒六筒  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き
同巡、長谷川もテンパイ。
三索四索七索八索九索西西  ポン白白白  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き
山に眠っている数は太田1枚、長谷川3枚で長谷川有利かと考えていたが、なんとここで毛受が太田に7,700放銃。てっきりオリていると思っていたので一瞬抜き間違いかと考えた。後の話では「危ないとは分かっていたが五筒さえ通れば5巡凌げると思ったから」と語ってくれたが、この時の毛受の手牌が、
六万七万六索六索六索八索八索二筒二筒二筒五筒五筒南
先に落とすなら、シャンポン待ちのない五筒より二筒を選ぶべきではないか?
苦しい時ほど、楽になりたい一心で選択ミスも起こるものだが、この代償は大きい。
南2局、7巡目に毛受が果敢にリーチするも空振り、1人テンパイ。
八万九万一索二索三索四索五索六索七索八索九索北北  リーチ  ドラ九万
南3局は浮きに回りたい伊藤が、長谷川から5,200のアガリ。
一万一万一万二万二万三万四万中中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン五万  ドラ南
長谷川の1人沈みで迎えたオーラス、太田・伊藤・長谷川共に12巡目同時テンパイ。
太田
七万七万二索二索四索四索二筒二筒九筒東東中中  ドラ九筒
伊藤はここでトップを狙いに勝負を懸ける。
三万四万五万五万六万七万六索七索七索八索八索五筒五筒  リーチ
長谷川
四索五索六索六索七索二筒三筒四筒白白白発発
軍配が挙がったのは長谷川。伊藤から1,600。次戦以降に望みをつなぐアガリをモノにした。
1回戦成績
伊藤+4.2P 長谷川▲24.5P 毛受+1.7P 太田+18.6P
2回戦(起家から毛受・太田・伊藤・長谷川)
東1局、毛受がピンフツモの700オールと静かな幕開けで開局。
続く1本場、毛受が12巡目に七筒を切って1人テンパイを果たすも違和感を覚えた。
六万七万八万五索五索六索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒七筒  ドラ西
太田がピンズのホンイツ仕掛けをしていたのだが、条件がなければ一手変わり三色で四筒切りのはず。
しかし14巡目、太田から手出しが入ったにも拘わらず、15巡目では四筒をツモ切りしていた。
落ち着いているように見えても、決勝の舞台でその感情を消す事は難しい。
2本場は毛受・太田が共にテンパイで流局。
3本場、伊藤が先制リーチを掛けるも、同テンの七万を長谷川が力強くツモり上げた。
七万七万一索二索三索一筒二筒三筒三筒四筒五筒白白  リーチ  ドラ一索
長谷川
八万九万三索三索九筒九筒九筒中中中  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ツモ七万
ここで同テンを制した事で、ようやく長谷川に流れが傾くか?とメモ書きを記す。
東2局 流局。
東3局1本場 太田がピンフ、ツモで400・700は500・800。
東4局 伊藤が長谷川から1,000アガリ小場が続く。
南場に入りヒートアップ。4人全員が一歩も引かない局面となる。
毛受
四万五万九万九万  ポン南南南  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き  ドラ六筒
太田
四万五万六万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き
伊藤
一万二万三万五万五万四索五索六索三筒四筒七筒八筒九筒
長谷川
八万八万五索六索二筒三筒四筒七筒八筒九筒  ポン白白白
ここは太田が五筒をツモり、加点は2,000だが価値あるアガリとなった。
南2局 流局。
南3局1本場 毛受のターニングポイントとも感じた局。
現点棒状況:
太田32.900 伊藤24,800 毛受34,000 長谷川28,300
5巡目、毛受の牌姿はこう
三万四万三索三索四索五索五索二筒三筒四筒五筒五筒五筒  ドラ七索  ツモ三万
234や345の三色も見え、最終12,000まで見える悩ましい手だが、現在トップ目でもあった毛受が選択した打牌はツモ切り。
巡目も早く打点を目指すなら当然の一打であろう。しかし今の置かれている状況を冷静に把握し先を見据えて打つのであれば、テンパイを取っても良かったのではと思う。
もちろん色々な意見があるとは思うが、短期決戦の場では一瞬の隙が取り返しのつかない状況を生み出す。
その結末は、毛受がテンパイを取っていれば四索で捉えられていた伊藤が長谷川から七対子ドラ2の9,600をモノにした。
南4局2本場 最速7巡目テンパイを果たしたのは4,900以上で浮きに回る太田。
三万四万五万二索二索三索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ドラ四筒
きっちり手役をつくり伊藤からなら逆転、他からでも2着となるためヤミを選択。
しかし13巡目に追いついた伊藤が太田の待ちをしっかり抑えた上でツモアガリ。
六万七万八万八万八万四索四索四索八索八索二筒三筒四筒  ツモ八索
伊藤の勢いと好調さが生まれた半荘となった。
2回戦成績
伊藤+21.9P  毛受+6.1P  太田▲10.0P  長谷川▲18.0P
2回戦終了時
伊藤+26.1P  太田+8.6P  毛受+7.8P  長谷川▲42.5P
3回戦(起家から、長谷川・伊藤・毛受・太田)
伊藤に勢いが出始めたが、それを追う太田・毛受にもまだまだチャンスは十分。
長谷川は展開的に苦しいが、巻き返すならここで挽回したいところ。
東2局 伊藤の親をいかに早く落とせるか?と思って見ていると、毛受が3巡目で以下の形でリーチ。
一万一万一万七万八万九万三索三索五筒六筒南南南  ドラ五万
伊藤・長谷川から仕掛けが入り、結果両方から喰い取られる形となって流局テンパイ。
東4局
伊藤配牌
三万四万七万二索三索五索八索九索五筒九筒東南南  ドラ八筒
7巡目に長谷川からリーチが入る。
二万三万四万五万六万一筒一筒一筒二筒三筒四筒東東  リーチ
11巡目には伊藤が下記テンパイで追いつく。
一万一万三万四万五万五万六万七万七万八万八万南南南
ここから八万を落とし六万九万待ち。山に眠る枚数は長谷川3枚、伊藤が4枚、しかも1牌も余らず迷う事なくテンパイしたところを見て、伊藤のアガリかと思われたが、長谷川が七万をツモり700・1,300。
南1局 前局好調な伊藤との勝負を制し今度こそ流れが傾くかと思われたが、選択を間違えアガリを逃してしまう。
9巡目 長谷川の手牌
三索四索五索五筒七筒七筒南南発発  ポン北北北  ツモ四筒  ドラ南
捨て牌
九万 上向き九索 上向き二筒 上向き六万 上向き二万 上向き一索 上向き白六索 上向き
選択したのは四筒のツモ切り。
この状況でドラの南が出る事はまず考えられない。北仕掛けでホンイツやトイトイが警戒されるので、私なら待ち数が多い四筒五筒の方を残し、最悪テンパイでもよしとするだろう。
結果論で言えば、七筒切りなら発ツモだったが流局テンパイ。
南2局 ここで伊藤・毛受の手がぶつかり合い場況が大きく動く。
7巡目に伊藤テンパイ
二万二万三索三索五索五索一筒一筒三筒四筒四筒発発  ドラ一筒
8巡目、毛受が追いつき5面待ちリーチ
三万三万三万四万五万六万七万三索四索五索三筒四筒五筒  リーチ
毛受のリーチを受け、ツモった九万に待ちを変えた所、次巡に九万をツモり4,000オール。やはり調子がいい。
南2局1本場 伊藤の勢いは止まらない。
14巡目、ドラの八万を重ね意を決するリーチ。
一万二万三万五万六万八万八万四索五索六索六筒七筒八筒  ドラ八万
七万を一発でツモり4,000は4,100オール。たった2局で一気に5万点オーバーし、会場内ではこれまでのポイント表を確認すると同時に、伊藤の優勝を確信したような雰囲気に包まれた。
南2局3本場、毛受が長谷川から2,000は2,900をアガリなんとか親を落とす。
場は淡々と進み、伊藤の1人浮きで終了。
3回戦成績
伊藤+37.8P  毛受▲7.1P  長谷川▲9.7P  太田▲22.0P(供託+1.0)
3回戦終了時
伊藤+63.9P  毛受+0.7P  太田▲13.4P  長谷川▲52.2P
4回戦(起家から、毛受・太田・長谷川・伊藤)
1~3回戦を全てプラスで終え、圧倒的な勢いと好調さを見せつけている伊藤に対し、他の3人が確固たる意志を持ってどこまで対抗出来るかがカギとなる。
東1局 開始早々伊藤の配牌とツモに注目。勢いは確実に増している。
北家 伊藤の配牌
一万二万二万七万一筒五筒六筒七筒東北北中中  ドラ北
4巡目にはこの形で1シャンテン
一万一万二万三万五筒六筒七筒東東北北中中
9巡目に北のポンテンを果たすも、太田がそれを許さない。
長谷川から1,300出アガリ。
テンパイ続きの東3局2本場、ここで長谷川がついに反撃に出る。
5巡目にリーチ、
六万六万七万七万八万八万六索七索八索八筒八筒白白  ドラ三索  リーチ
力強く一発で白をツモ。3,900オールは4,100オール。
その後は流局が続き、東4局5本場、ここでアガれば積み棒併せて4,500点のオマケ付き。
誰もが制したい局面であり、重要な勝負所でもある。
結果は、ここでも伊藤に軍配が上がり、太田より1,500は3,000。
南1局7本場 毛受・太田の手がぶつかる。
9巡目 毛受先制リーチ
二万三万四万五万五万二索三索四索一筒一筒一筒二筒三筒  ドラ六筒  リーチ
14巡目、太田が追いついて
二万三万四万七万七万七索八索九索五筒六筒七筒南南  リーチ
残り1巡のハイテイ間際、太田が値千金の南をツモり2,000・4,000。
南2局、伊藤が毛受に3,900放銃し3人の思惑通り伊藤がラス目に。
南3局、長谷川が毛受より5,800をアガり5万点オーバー。
オーラス、伊藤にラスを押しつけられるかが焦点だったが、結果は毛受がラスとなり終了。
4回戦成績
長谷川+30.8P  太田+8.3P  伊藤▲16.1P  毛受▲23.0P(供託+1.0)
4回戦終了時
伊藤+47.8P  太田▲5.1P  長谷川▲21.4P  毛受▲22.3P
4回戦を終え、伊藤以外、全員マイナスでその差は50P以上でかなりキツい。
伊藤で決まりか?
5回戦(起家から、長谷川・毛受・伊藤・太田)
東1局 なんとかしたいトータル2着の太田にチャンスが訪れる。太田の配牌。
三万五万六万一索三索六索六索九索七筒八筒九筒西西  ドラ六索
5巡目にはツモも伸びて即リーチ
四万五万六万六索六索九索九索七筒八筒九筒西西西  リーチ
九索を一発ツモで2,000・4,000。太田と打っていて感じるのは「ここぞという時の勝負強さ」である。
もちろんこうした時は打点も高いのだが、プロとして必要不可欠な要素だろう。
東2局、ここまで順調に来ていた伊藤も負けるわけにはいかないとばかりに8巡目にリーチを選択。
伊藤らしいと言えばそうなのだが、少しリスクが高いようにも感じた。
七万八万八万八万四索五索六索七索八索九索三筒四筒五筒  ドラ五筒
結果は、ソーズのホンイツ仕掛けをしていた長谷川が九万で3,900の放銃。
東3局、伊藤は攻撃の手を緩めず8巡目に勢いよくここでもリーチ。
二万三万四万五索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒  リーチ  ドラ東
50P差以上あるとは言え、トータルトップ目でドラの行方が全く見えていない状況でのリーチはと嫌な予感がしたその時。
伊藤が切った九筒を太田がチー。
伊藤を観戦していたため、太田の手牌は後から知ったのだが、案の定ドラを持っての仕掛けだった。
結果は、伊藤が太田に痛恨の3,900振り込み。直撃はなんとしても避けなくてはいけない状況とは伊藤も分かっていたはずだが、これが決勝の舞台の雰囲気なのだろう。
東4局、直撃のアガリで勢いに乗りたい親番の太田だったが、長谷川に3,900の放銃。
南1局1本場、太田が上手く仕掛けて1,300・2,600は1,400・2,700をツモアガリ。
南2局、伊藤の配牌はなんと1シャンテン。
3巡目でピンフテンパイ。同巡に長谷川から出アガリ。
この時点で伊藤は「優勝を意識して打っていた」と後に語ってくれた。
南3局、親である伊藤は最後まで自分の麻雀を貫くべく、攻撃の手を緩めなかったが、長谷川に5,200を振り込み暗雲が立ちこめる。
しかし5回戦オーラス、泣いても笑ってもこれが最後である。
現在のポイントと点棒を照らし合わせると下記の通り。
伊藤はアガれば優勝。太田は12.2P差で2,000オールでもひとまず逆転するが、親なのでアガっても続行。
長谷川は役満ツモ、毛受は伊藤から役満直撃条件となる。
ラス親の太田配牌
一万三万五万七万八万八万三索三索五索五索八索九索三筒発  ドラ七索
北家の伊藤配牌
一万一索一索四索九索二筒三筒六筒東北北中中
太田はツモにもよるが、伊藤は役牌もあり比較的軽く感じやや有利か?
3巡目には驚異的なツモで太田が七対子1シャンテン。
同巡、伊藤はホンイツorチャンタ系での2シャンテン。北中のどちらかでも鳴ければ早そうだが、他の2人は役満が条件なだけに、場には字牌が見えない厳しい状況。
9巡目、ついに太田が七対子テンパイ。さらにはリーチを選択。ここが最後の勝負所だと感じたのだろう。
三万五万五万七万七万八万八万三索三索五索五索八索八索  リーチ
なんとか追いつきたい伊藤はまだ1シャンテン止まり。表情には焦りが見えた。
だが11巡目、伊藤がついにテンパイを果たす。
一索一索一索三索四索七索八索九索北北北中中
張り詰める空気の中、2人の勝負を観戦者が固唾を呑んで見守っていたその時、13巡目に太田が力強く三万を引き寄せ4,000オール。
しかし太田は親なので続行。今度は伊藤が追う立場になり実質のラストチャンス。
伊藤の条件としては5,200出アガリまたは1,000・2,000ツモで優勝。
アガリ切れなければ太田が優勝となる。
南4局1本場、事実上の最終決戦。伊藤の連覇か?太田が初優勝を果たすか?
東家、太田配牌
五万七万九万二索三索三索九索一筒四筒六筒六筒八筒発中  ドラ二万
北家、伊藤配牌
四万七万七万八万九万一索六索八索一筒四筒七筒発発
条件が5,200出アガリまたは1,000・2,000だけに太田も最初からオリは選択出来ない。
伊藤をケアしながらアガリに向かう。伊藤はツモ次第だが、チャンタor三色がなんとか見える形か。
9巡目、一足早く1シャンテンで迎えたのは伊藤。
三万四万七万八万九万一索一索二索七筒九筒発発発
場に八筒が残り1枚なだけにリーチを掛けてツモりに行く形になると思っていたのだが、11巡目に上家の毛受から最後の八筒が切られてしまう。
この時伊藤の牌姿は、
一万三万四万七万八万九万一索一索七筒九筒発発発
八筒を仕掛ければ4巡後にドラの二万をツもり優勝だったが、伊藤が選択したのはスルー。
最後は太田がゆっくりと手を伏せ、伊藤の1人テンパイ。
太田の初優勝が決まった瞬間だった。
観戦者からは大きな祝福の拍手と共に、第23期中部プロリーグ決勝の幕が閉じた。
伊藤にもチャンスはあった。だが、あの時八筒を仕掛けていれば…と書いたところで事実が変わるわけではないし、それが決勝という舞台で5回戦まで打ち切った結果でもある。
競技麻雀で1半荘に50P以上の差を埋めるのは容易ではないが、「何事も諦めない」という姿勢は、今回の決勝のように見る者を魅了する結果に繋がるのだろう。
 
決勝メンバーのコメント
第4位 毛受俊
「初の決勝でも緊張はしていませんでしたが、要所要所でアガリ切る事が出来なかった。
形にこだわりすぎて綺麗に打ち過ぎました。自分の得意な状況に持ち込めなかったのが敗因です。」
第3位 長谷川弘
「結果としては残念だが、あの状況から3位で終われたのは良かった。1~3回戦目に手が入らなかった時、どう打開すべきかを考えて打っていたが、知らない内に優等生の麻雀を打ってしまっていたし、基本的に自分の信じているスタイルを出し切ることが出来ず、4回戦目にようやく取れたトップでも勢いに乗り切れなかった。」
準優勝 伊藤鉄也
「自分自身すごく落ち着いていたし、4回戦目まで上手く打てていたと感じていたが最後の最後で捲られてしまい非常に悔しい。正直5回戦目の南3局を迎えた時はこのまま優勝出来ると意識していました。しかし最終局面で4,000オールをツモった太田さんが強かったし、それが結果です。」
優勝 太田充
「上手く打てていた部分もミスした局面もありましたが、半分はツイていた所もあり結果として優勝出来たのは嬉しいです。放銃が少なかったのもありますが、5回戦目にラス親を引けた事が勝因に大きく繋がりました。次回は実力で優勝したと思われるような打ち方で勝ちきりたいと思います。今後も中部プロリーグはもちろん、タイトル戦にも積極的に参加して結果を出して行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。」

インターネット麻雀日本選手権2014観戦記前半 山井弘

早いもので、私がプロになって16年が経った。
今では第三次プロテストとなっているが、私が受験した当時は研修と呼ばれていた。
その卒業試験で、私は決勝まで進んだが準優勝で終わり、悔しい思いをしたことを今でも覚えている。

あれから16年。
随分と時間がかかったが、ようやく初めてタイトルを獲得することができた。
7月に、フランスはパリで行われた、第1回リーチ麻雀世界選手権。
この、初代世界チャンピオンとなった。

この大会に参加して感じたことは、世界でリーチ麻雀が広がりつつあるのはインターネットの影響が大きいということ。今や世界中で様々な情報を得ることができるインターネットで、多くの海外の人たちが、日本のネット麻雀をプレイしているということだ。

16年前は、このネットの世界で、麻雀の日本一を決めるなんて、想像すらしていなかった・・

今年も日本プロ麻雀連盟が、インターネットの各主要サイトに参加を呼びかけ、3月から予選がスタートした。
「ハンゲーム 麻雀4」では、勝ち上がってきたユーザー16名と日本プロ麻雀連盟のプロ16名が激突。
16名がハンゲーム代表という形で進出。
「ロン2」でも同様の予選が行われて、16名が本戦へと進出した。
本戦からは各卓上位2名通過のトーナメント形式。

私もベスト8まで駒を進めることができたが、ここで敗退してしまった。

※大会概要はこちら

インターネット麻雀日本選手権2014決勝へ勝ち上がったのは、

 

瀬戸熊直樹

100

現十段位であり、ここ最近の成績は凄まじく、鳳凰位は連覇も含め3回獲得。
十段位は現在3連覇中で、今年秋に4連覇を目指す。
このインターネット麻雀日本選手権の決勝は初で、瀬戸熊曰く、
『ネットで”クマクマタイム”が出るかどうかは分からないが、もし出せれば勝てる可能性もある』とのこと。
『ただ、普段の決勝とは違う雰囲気なので、どうなるのか予測できない』と語る。
『やっている内にわかってくるかもしれない』と、
決勝を何度も戦った瀬戸熊でさえも、ネットでの対戦は先の展開は読みづらいということだろう。

 

ともたけ雅晴

100

現A1リーガーで、7年前に、決勝進出回数14回目にして念願の鳳凰位を獲得。
翌年の防衛戦で、前原プロに敗れて以来、久しぶりの決勝進出となった。
もちろんインターネット麻雀日本選手権の決勝は初となる。
決勝常連のともたけは、久しぶりの決勝という舞台で、
『作戦はとくにないよ、普段通り戦う。いっぱい真ん中から切るからね』とコメントをくれたが、
そのコメント通り、真ん中の牌から切り飛ばして行くともたけの雀風は、高打点を見据えて最終形を描いたら、その形に向かって一直線に突き進む、攻撃型ではあるが、打点重視の面前攻撃型である。
したがって、手が進まなければ守りに入ることができるので、守備にも適している打法ともいえる。

 

佐々木寿人

100

インターネット麻雀日本選手権の決勝は2回目。
初開催の年に決勝まで進むも、「チームガラクタ」の総帥、前原雄大プロに敗れる。
今回はそのリベンジに燃え決勝まで進出するも、その前原プロはベスト8で敗退。
ちなみに「チームガラクタ」とは、前原、佐々木の2人だけのチームで、麻雀の形は美しくはなくガラクタのようだが、その強さからチームガラクタと言われるようになった。
『でたとこ勝負で展開次第。作戦は特になし』と、佐々木らしいコメント。
しかし、『でも、タイムラグを読みの材料にできるかもしれない』と勝つためには少しでも有利に戦えるよう隙は微塵もない。「チームガラクタ・部長」の意地を見せることができるのか。

 

徳川龍之介さん

100

もちろん本名ではなくニックネーム。ドラマの主人公の名前である。
私もちょうど、この名前の主人公が活躍していたドラマの世代だ。
ハンゲームから勝ち上がってきた徳川さんは、今回参戦するため愛知県三河市から東京までお越しになった。
普段は、IT関係のお仕事をされているようで、麻雀は休みの日に大会などあるとネットで打つことが多いとのこと。
お盆や暮れには、大学の友人たちと集まって、実際の牌を使って麻雀をすることもあるそうだ。
『決勝は半荘5回戦なので厳しいかも・・・でも、何とかトップとの点差を意識し、最後まで離されないようついていきたい。相手は強者なので、かき回したいです』と語る徳川さん。
これまで多くのプロを打ち破ってきた実力はいかに!?

以上の4名で、半荘5回戦の幕は切って落とされた。

100

 

 

1回戦
起家から、佐々木・瀬戸熊・徳川さん・ともたけ

いきなり先手を取ったのは徳川さんだった。

七万八万一索一索一筒一筒二筒五筒六筒東東白白  ドラ四筒

開始前のコメントで、
「プロは強いので、その3人が相手では、普通に打っていては勝ち目はない。とにかくかく乱して、先手を取っていきたい」と話してくれた徳川さんが、さっそく動いた。ここから佐々木の切った一筒をポン。

ここで私が驚いたのは、親である佐々木の対応だ。
まずは一筒ポンを受けたこの牌姿から、

五万四索五索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒九筒九筒白  ツモ西

佐々木の選択は打九筒
この手牌で、東1局から対応している佐々木を見て、人は変わるものだなと思った。
以前の佐々木であれば、仕掛けが入っていようとリーチが入っていようと、開局に親番でそこそこの手牌が寄ってきていれば、真っ直ぐに西白と打ちぬいていたに違いない。

鳴り物入りでプロデビューして8年。
テレビ対局では結果を出してはいたが、プロリーグや十段戦などのタイトル戦ではいい結果が出せず、本人も自分のその戦い方について、いっぱい悩んだに違いない。
しかし、ここ最近では、プロリーグも快進撃を続け、ようやくA2、そしてA1へと、あと一歩のところまできている。その新しい佐々木寿人の戦い方がこのスタイルなのだろう。

徳川さんは、一索も鳴いて東白のシャンポンでテンパイ。
佐々木はその後、手は進み、

五万四索五索八索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒西白  ツモ六索

ここでもまだ、西白も切らずに打五万とする。

そしてもう1人、ここにもしっかりと対応している者がいた。

一万二万七万八万九万七索九索七筒八筒九筒発中中  ツモ三万

ここから、テンパイ取らずの打中はともたけ。
しかも、アガリ牌である八索は、仕掛けている徳川さんの現物にもかかわらず発を切らずに対応する。
開局にこのテンパイを外す勇気は相当なものだと思う。
もし八索でアガリ逃したらと考えると、恐ろしくて私にはできないが、ここでともたけが発を切れば、当然、現物であろうと八索が出るメンツではないということなども含めての選択であろう。
それにしても、ここでのテンパイ外しは、それなりの勇気と覚悟が必要だと私は思う。
結局、ともたけは発を重ねて復活。

佐々木も最後は白西を切ればテンパイ、というところまで持ち込み、ここは指運で西を切って3人テンパイ。
実に見応えのある開局となった。

開局乗り遅れたかたに見えた瀬戸熊だが、東1局2本場、4巡目に早くもリーチが入る。

四万四万七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  リーチ  ドラ四筒

これを受けた佐々木の手牌。

二万三万二索三索四索九索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ツモ三筒

ここで白をリリースすると、これをポンはともたけ。

六万七万七万八万九万六筒六筒六筒西西  ポン白白白

瀬戸熊のリーチを交わしにいく。
しかし、一万八筒とツモ切ったあと、九筒を引き瀬戸熊に高め放銃となった。
痛い失点となったともたけだが、その影にもう一人痛いと思っている者がいた。佐々木だ。

ともたけの喰い下げた一万八筒は、佐々木のテンパイ牌、そして一発でツモアガリとなる牌であった。
佐々木は果たして、ともたけがツモ切るその牌を、どのような思いで見ていたのだろうか。

放銃となったともたけだが、次局、力強く倍満のツモアガリをする。

三万四万四万四万一索二索三索七筒八筒九筒  暗カン牌の背東東牌の背  リーチ  ツモ二万  ドラ一索九筒  裏東七筒

次局は、徳川さんが四暗刻の1シャンテンとなる。

二万三万三万五万五万五万六万六万三筒三筒三筒六筒六筒  ドラ二筒

しかしこれだけ真ん中の牌ばかりだと、他家に使われているケースが多いため、どうしても2鳴きにはしにくい。1枚目の六筒をポンしてテンパイ。
これを受けた佐々木は、4トイツから一気に北東と有効牌を引き込みテンパイ。

二万一索一索二筒二筒五筒五筒九筒九筒東東北北

捨て牌は、三万 上向き一万 上向き八索 上向き六万 上向き四万 上向き南白八万 上向き

1巡ヤミテンを選択するも、2枚切れの西を引き、ここは待ち替えせずツモ切りリーチ。
普段、地獄待ちを好む佐々木だが、この時はともたけが国士を作っていたため、4枚目の西があてにならないこともあり、何より捨て牌に迷彩が施されていることが二万タンキを選択した一番の理由であろう。

このリーチに飛び込んでしまったのは徳川さん。
一発で捕まり、裏まで乗って16,000点の放銃となってしまった。

南場に入り、南3局ラス目で迎えた徳川さんは、

100

 

このテンパイをするも、一旦、ヤミテンに構える。
すると、トップを虎視眈々と狙う瀬戸熊に、絶好のカン八筒が埋まり、こちらもヤミテン。
瀬戸熊は、三色を決めたあとは交わし手が多く、恐らくまだ本調子ではないと感じていたのではないだろうか。
だからこそのヤミテンなのだろう。本調子の瀬戸熊であれば、恐らく迷いなくリーチと発声していたに違いない。

徳川さんにしても、いくら三色の手替わりがあるからとはいえ、親でドラ1あれば、多少苦しい待ちでもリーチと行きたくなるのが心情というもの。

もし仮にここで徳川さんがリーチだと、恐らく瀬戸熊も追いかけリーチとなり、徳川さんは、またも一発で九万を掴む運命だった。しかし、ヤミテンにしていたことで、この九万引きで三面チャンへと手替わり、放銃を回避しここでリーチとなった。三色へ受けなかったのは、他家へのケアもあったかもしれないが、ここは点数的にも三色に受けてもらいたかった。

これを受け、瀬戸熊も追いかけるが、この同テンは流局となる。

100

 

もし徳川さんがヤミテンで、瀬戸熊が先制リーチだった場合はどうだろうか。
全体牌譜を見てもらえば分かるが、瀬戸熊が七筒切りリーチの場合、徳川さんは五筒八筒を打てるかどうかである。
瀬戸熊の河はマンズの上が通りそうなので、もしかしたら打九となった可能性もあった。

1回戦成績
佐々木+33.8P  ともたけ+10.5P  瀬戸熊▲4.3P  徳川さん▲40.0P
※順位点=1位+15.0P 2位+5.0P 3位▲5.0P 4位▲15.0P

 

2回戦
起家から、瀬戸熊・ともたけ・佐々木・徳川さん

佐々木が徳川さんとのリーチ合戦を制して東1局は先制。
迎えた東2局、徳川さんが技ありの七対子を決める。

六万六万二筒四筒四筒九筒九筒南南白白中中  ドラ九索

8巡目にこのテンパイでヤミテン。
親番のともたけは、

七索八索九索二筒三筒三筒六筒七筒七筒北北発発  ツモ六筒

こうなり七対子も見てここで打二筒となった。
誰もが仕方がないと思ったであろう。でも、どこが技ありなのと読者の方は疑問に思うかもしれない。
どこか手順で技があったのなら、そこを書いてくれと思うだろう。
しかし、手順は普通だった、七対子も自然にできたものだ。

徳川さんはこの二筒を見逃した。

なぜ見逃したのか、2回戦が終わって聞いてみた。
「1,600点ではアガる気はなかった、1回戦ラスだったので打点がほしかった。ドラ引きなどを待つつもだったが、ここで二筒が出たので、これ利用してアガリに結び付けようと思った」

まだ2回戦と考えれば、見逃しというリスクをここで背負うのは危険な気はするが、徳川さん自身が1回戦を打ってみた感触から、この3人相手では、普通に戦ったのでは勝てないのではないか、何か工夫をしないとダメなのではないかと判断した結果、見逃しという選択になったのだろう。

徳川さんのツモ切りリーチに対して、

四万五万九万九万四索五索五索六索六索七索五筒六筒七筒

同巡、このテンパイを入れていた瀬戸熊が、2巡後二筒を掴み放銃となった。
瀬戸熊はどちらにしても七万一万と無筋を押していたので、この二筒も放銃になったかもしれないが、明らかに二筒が切られてからのツモ切りリーチなので、仮にもし当たったとしても、役ありのテンパイではないし、打点があるテンパイではないと考える。例えば、リーチのみのカン二筒のような愚形テンパイと読む。
しかし、開けられた手牌は七対子。

ともたけの二筒見逃しを見て、瀬戸熊はどう考えるのだろうか。
少なくとも、徳川さんに対するイメージは変わる。この人は色々な引き出しがあると頭にインプットする。
佐々木、ともたけも、これを見て瀬戸熊と同じ認識を持ったに違いない。
そうなれば、徳川さんのこの作戦は、見事成功したと言えるのではないだろうか。

相手にどう意識させるか。
この人は絶対に引っかけリーチをしないという人と戦うのと、引っかけリーチもなんでもありの人と戦うのでは、後者と戦うほうが戦いにくいのは間違いない。
そう思わせることで、相手に考えさせる幅を多くもたせることができる。
ただ、それが勝利に結びつくかはまた別物と私は考えるが。

ちなみにこれは余談だが、徳川さんは普段ロン2をプレイされたことはほとんどないが、この二筒を見逃すため、しっかりとオートでアガる機能を解除していたとのこと。
それに比べて、1回戦終了時、「耳が痛い・・」と、3名のプロが訴えてきたらしが、これはヘッドフォンをして対戦していたため、ロン2の効果音の音量が大きくてうるさかったということらしいが、普通は自分で音量を調節するとかしそうなものだが、今回のプロ3名は、まだガラケーを使っている機械音痴・・失礼、物を大切にする麻雀プロたちなので仕方なし。そんな彼らを横目に、徳川さんだけは平然としていたと聞いた。

話を戻そう。
瀬戸熊はこの後、ジリジリと点棒を削られ、22,900のラス目まで落ちてしまう。
南場の親番を迎えるも、佐々木に先手を取られる。

一万二万三万五万三索四索九索九索三筒南西西発  ドラ七索

落ち目の親をさばきに行って、あまりいい結果になることは少ないので、私などは仕掛けをためらってしまうが、佐々木は1枚目からでも落ち目の親はさっさと流しにいく。
今局は、今重なったところで、当然、2枚目の西はポン。

この仕掛けで、瀬戸熊に何が流れるかだが、

七万七万八万八万五索五索八索八索五筒六筒七筒南発

仕掛けなければ、六索四万二索東と有効牌はほとんど引かない。
しかし、佐々木の仕掛けで、八万八索を引き込み、

七万七万八万八万八万五索五索八索八索八索五筒六筒七筒  リーチ

ツモれば4,000オールからの勝負手になった。
私が恐れるのはまさにこの展開だが、佐々木はここで腹を括って攻め切る。

一万二万三万五万六万三索四索九索九索五筒  ポン西西西  ツモ五筒

ここでドラまたぎの九索は切りたくないからと、真っ直ぐ五筒を打ち抜く。
このあたりは、これまでの”ヒサトスタイル”を残していると言えよう。
無筋を切り飛ばして、四万七万待ちで追いつき、七万でツモアガる。見事押し切って見せた。
瀬戸熊は、またも同テンを今度は引き負ける。その心中や如何に。

ともたけがトップ目で迎えた南3局。親は佐々木。
佐々木がまた新スタイルを見せてくれる。

一万一万二万二万三万三万九万一索一索八索八索九索九索  ロン九万  ドラ一索

ヤミテンでトップ目のともたけから直撃。
これまで、七対子ドラドラをヤミテンにしている佐々木を見たことがなかったが、こんなヤミテンをするようになった。ここ最近では、連盟チャンネルでプロリーグも配信されるようになったが、佐々木の七対子ドラタンキのヤミテンや、このようなヤミテンを見る機会が増えた。

ちなみに、佐々木の捨ては、

二索 上向き三索 上向き五索 上向き四索 上向き六万 上向き五万 上向き四索 上向き二筒 上向き六索 上向き五筒 上向き六筒 上向き八万 上向き九筒 上向き

こうなっており、この河でリーチをする者は普通いない。
それでも佐々木はこれまで数多くリーチを打ち、そして失敗してきたのだろうと思う。
その経験が、佐々木を進化させているのではないだろうか。
こう書いていると、これまでの佐々木はまるで何も知らなかったかのように勘違いされそうだが、決してそんなことではなく、それらも当然踏まえてリーチのほうがメリットが大きいと判断し、これまでリーチをしてきたのだが、言うなれば、ツモれる時はタンキだろうとなんだろうとリーチで、出アガリしか期待できない時は、3面チャンでもヤミテンという、その選択の幅を広げたとでも言えばいいのだろうか、上手く説明できないが、とにかく勝つためにさらに進化したと言えることは間違いない。

オーラスは、ともたけがアガって2着となり、佐々木は2連勝となった。

2回戦成績
佐々木+23.8P  ともたけ+7.0P  徳川▲3.6P  瀬戸熊▲27.2P

2回戦終了時
佐々木+57.6P  ともたけ+17.5P  瀬戸熊▲31.5P  徳川▲43.6P

 

3回戦
起家から、ともたけ・佐々木・徳川さん・瀬戸熊

佐々木が2連勝したことで、あと1勝すればほぼ勝ちが決まってしまいそうな3回戦。
待ったをかけたのはともたけ。
ここまで2着2回と、佐々木に離されないよう粘っていたともたけが遂に爆発した。

六万七万八万五索六索三筒三筒  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  カン東東東東  ロン七索  ドラ八索三筒

この12,000をきっかけに、

三万三万四万五万五万五索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒  ロン四万  ドラ二筒白

佐々木のリーチを交わしこのアガリを決め、たった2局でトータルでもトップに踊りでた。

ともたけは、第一打から中途半端な打牌をしないというイメージだが、普通は、大きな手役を見ながら、ツモと相談しつつ、妥協しながらアガリを目指す。
それはやはり、自らがアガることで相手のアガリを阻止することができるからだ。
しかし、ともたけはそんなことは意に介さず、自分が考える理想形に向かい、手順無視で進めて行く。

私は、このインターネット麻雀選手権を見るまではそう思っていた。
いや、この観戦記を書くにあたって牌譜を見返すまでは。

ともたけは、この3回戦2回のアガリでトップに立つと、あとの局は、序盤の捨て牌が普通になっていることに気が付いた。

これは恐らく、まずは自らの状態を計り、ダメだと思った時は、大きな手を目指しながら、終盤まで局面を長引かせ、相手がミスすればアガリを狙い、そうでなければ、受けに入り相手のアガリを潰してしまう。
そして、今回の半荘のように自分がよくなったと思ったら、普通の手順に戻し手成りで打つ。
あくまで私の勝手な見解だが、局が始まる前に、すでに見切っているということだろう。
これがともたけ流の麻雀なのかもしれない。

そんなともたけだが、南1局、加点する大チャンスといえる配牌を貰った。

六万七万一索二索五索七索七索八索九索南南白白中  ドラ五索

第一打七万。しかし2巡目、佐々木から出た白を一鳴き。すぐに瀬戸熊に六索が下がる。
その後、八索を引き中切りとするのだが、私はここでドラの五索を切ってもいいかと思った。
もしくは、次巡四筒を引いたところで、一旦打五索とし、その後、手から四筒が出れば、四筒回りに関連牌があると見て、誰もホンイツだとは思わないかもしれな。
ペン三索も鳴けるかもしれないし、相手にもプレッシャーを与えることもできる。

四万五万六万六索七索三筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ

そうこうしているうちに、徳川さんからリーチが入ってしまう。

一索二索五索七索七索八索八索九索南南  ポン白白白  ツモ一索

ともたけは少考後、打八索として放銃となってしまった。
このあたり、しっかりと攻め切る姿勢はともたけらしいと思うが、それにしてもメンゼンで手を進めていたらどうなっていたのだろうと考えるのは、ともたけも同じであろう。

序盤で失点し、後がない徳川さんだったが、何とかオーラスを迎えて29,800点の2着目まで盛り返していた。
瀬戸熊も3着目で親番を迎え、取りあえずは佐々木の3連勝は阻止できそうだ。
できれば、オーラスで1つでも着順を上げたいところであったが、3巡目、ともたけがピンフのテンパイであっさりと決着となった。

3回戦成績
ともたけ+40.0P  徳川4.8P  瀬戸熊▲14.7P  佐々木▲30.1P

3回戦終了時
ともたけ+57.5P  佐々木+27.5P  徳川▲38.8P  瀬戸熊▲46.2P

残すは2戦。徳川さんと瀬戸熊は後がなっくなった。
次にトップを取らなければ、優勝はないといっても過言ではないだろう。
瀬戸熊は、未だ”クマクマタイム”発動せず。

後半へ続く。

プロ雀士コラム/インターネット麻雀日本選手権2014観戦記前半 山井弘

早いもので、私がプロになって16年が経った。
今では第三次プロテストとなっているが、私が受験した当時は研修と呼ばれていた。
その卒業試験で、私は決勝まで進んだが準優勝で終わり、悔しい思いをしたことを今でも覚えている。
あれから16年。
随分と時間がかかったが、ようやく初めてタイトルを獲得することができた。
7月に、フランスはパリで行われた、第1回リーチ麻雀世界選手権。
この、初代世界チャンピオンとなった。
この大会に参加して感じたことは、世界でリーチ麻雀が広がりつつあるのはインターネットの影響が大きいということ。今や世界中で様々な情報を得ることができるインターネットで、多くの海外の人たちが、日本のネット麻雀をプレイしているということだ。
16年前は、このネットの世界で、麻雀の日本一を決めるなんて、想像すらしていなかった・・
今年も日本プロ麻雀連盟が、インターネットの各主要サイトに参加を呼びかけ、3月から予選がスタートした。
「ハンゲーム 麻雀4」では、勝ち上がってきたユーザー16名と日本プロ麻雀連盟のプロ16名が激突。
16名がハンゲーム代表という形で進出。
「ロン2」でも同様の予選が行われて、16名が本戦へと進出した。
本戦からは各卓上位2名通過のトーナメント形式。
私もベスト8まで駒を進めることができたが、ここで敗退してしまった。
※大会概要はこちら
インターネット麻雀日本選手権2014決勝へ勝ち上がったのは、
 
瀬戸熊直樹
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現十段位であり、ここ最近の成績は凄まじく、鳳凰位は連覇も含め3回獲得。
十段位は現在3連覇中で、今年秋に4連覇を目指す。
このインターネット麻雀日本選手権の決勝は初で、瀬戸熊曰く、
『ネットで”クマクマタイム”が出るかどうかは分からないが、もし出せれば勝てる可能性もある』とのこと。
『ただ、普段の決勝とは違う雰囲気なので、どうなるのか予測できない』と語る。
『やっている内にわかってくるかもしれない』と、
決勝を何度も戦った瀬戸熊でさえも、ネットでの対戦は先の展開は読みづらいということだろう。
 
ともたけ雅晴
100
現A1リーガーで、7年前に、決勝進出回数14回目にして念願の鳳凰位を獲得。
翌年の防衛戦で、前原プロに敗れて以来、久しぶりの決勝進出となった。
もちろんインターネット麻雀日本選手権の決勝は初となる。
決勝常連のともたけは、久しぶりの決勝という舞台で、
『作戦はとくにないよ、普段通り戦う。いっぱい真ん中から切るからね』とコメントをくれたが、
そのコメント通り、真ん中の牌から切り飛ばして行くともたけの雀風は、高打点を見据えて最終形を描いたら、その形に向かって一直線に突き進む、攻撃型ではあるが、打点重視の面前攻撃型である。
したがって、手が進まなければ守りに入ることができるので、守備にも適している打法ともいえる。
 
佐々木寿人
100
インターネット麻雀日本選手権の決勝は2回目。
初開催の年に決勝まで進むも、「チームガラクタ」の総帥、前原雄大プロに敗れる。
今回はそのリベンジに燃え決勝まで進出するも、その前原プロはベスト8で敗退。
ちなみに「チームガラクタ」とは、前原、佐々木の2人だけのチームで、麻雀の形は美しくはなくガラクタのようだが、その強さからチームガラクタと言われるようになった。
『でたとこ勝負で展開次第。作戦は特になし』と、佐々木らしいコメント。
しかし、『でも、タイムラグを読みの材料にできるかもしれない』と勝つためには少しでも有利に戦えるよう隙は微塵もない。「チームガラクタ・部長」の意地を見せることができるのか。
 
徳川龍之介さん
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もちろん本名ではなくニックネーム。ドラマの主人公の名前である。
私もちょうど、この名前の主人公が活躍していたドラマの世代だ。
ハンゲームから勝ち上がってきた徳川さんは、今回参戦するため愛知県三河市から東京までお越しになった。
普段は、IT関係のお仕事をされているようで、麻雀は休みの日に大会などあるとネットで打つことが多いとのこと。
お盆や暮れには、大学の友人たちと集まって、実際の牌を使って麻雀をすることもあるそうだ。
『決勝は半荘5回戦なので厳しいかも・・・でも、何とかトップとの点差を意識し、最後まで離されないようついていきたい。相手は強者なので、かき回したいです』と語る徳川さん。
これまで多くのプロを打ち破ってきた実力はいかに!?
以上の4名で、半荘5回戦の幕は切って落とされた。
100
 
 
1回戦
起家から、佐々木・瀬戸熊・徳川さん・ともたけ
いきなり先手を取ったのは徳川さんだった。
七万八万一索一索一筒一筒二筒五筒六筒東東白白  ドラ四筒
開始前のコメントで、
「プロは強いので、その3人が相手では、普通に打っていては勝ち目はない。とにかくかく乱して、先手を取っていきたい」と話してくれた徳川さんが、さっそく動いた。ここから佐々木の切った一筒をポン。
ここで私が驚いたのは、親である佐々木の対応だ。
まずは一筒ポンを受けたこの牌姿から、
五万四索五索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒九筒九筒白  ツモ西
佐々木の選択は打九筒
この手牌で、東1局から対応している佐々木を見て、人は変わるものだなと思った。
以前の佐々木であれば、仕掛けが入っていようとリーチが入っていようと、開局に親番でそこそこの手牌が寄ってきていれば、真っ直ぐに西白と打ちぬいていたに違いない。
鳴り物入りでプロデビューして8年。
テレビ対局では結果を出してはいたが、プロリーグや十段戦などのタイトル戦ではいい結果が出せず、本人も自分のその戦い方について、いっぱい悩んだに違いない。
しかし、ここ最近では、プロリーグも快進撃を続け、ようやくA2、そしてA1へと、あと一歩のところまできている。その新しい佐々木寿人の戦い方がこのスタイルなのだろう。
徳川さんは、一索も鳴いて東白のシャンポンでテンパイ。
佐々木はその後、手は進み、
五万四索五索八索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒西白  ツモ六索
ここでもまだ、西白も切らずに打五万とする。
そしてもう1人、ここにもしっかりと対応している者がいた。
一万二万七万八万九万七索九索七筒八筒九筒発中中  ツモ三万
ここから、テンパイ取らずの打中はともたけ。
しかも、アガリ牌である八索は、仕掛けている徳川さんの現物にもかかわらず発を切らずに対応する。
開局にこのテンパイを外す勇気は相当なものだと思う。
もし八索でアガリ逃したらと考えると、恐ろしくて私にはできないが、ここでともたけが発を切れば、当然、現物であろうと八索が出るメンツではないということなども含めての選択であろう。
それにしても、ここでのテンパイ外しは、それなりの勇気と覚悟が必要だと私は思う。
結局、ともたけは発を重ねて復活。
佐々木も最後は白西を切ればテンパイ、というところまで持ち込み、ここは指運で西を切って3人テンパイ。
実に見応えのある開局となった。
開局乗り遅れたかたに見えた瀬戸熊だが、東1局2本場、4巡目に早くもリーチが入る。
四万四万七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  リーチ  ドラ四筒
これを受けた佐々木の手牌。
二万三万二索三索四索九索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ツモ三筒
ここで白をリリースすると、これをポンはともたけ。
六万七万七万八万九万六筒六筒六筒西西  ポン白白白
瀬戸熊のリーチを交わしにいく。
しかし、一万八筒とツモ切ったあと、九筒を引き瀬戸熊に高め放銃となった。
痛い失点となったともたけだが、その影にもう一人痛いと思っている者がいた。佐々木だ。
ともたけの喰い下げた一万八筒は、佐々木のテンパイ牌、そして一発でツモアガリとなる牌であった。
佐々木は果たして、ともたけがツモ切るその牌を、どのような思いで見ていたのだろうか。
放銃となったともたけだが、次局、力強く倍満のツモアガリをする。
三万四万四万四万一索二索三索七筒八筒九筒  暗カン牌の背東東牌の背  リーチ  ツモ二万  ドラ一索九筒  裏東七筒
次局は、徳川さんが四暗刻の1シャンテンとなる。
二万三万三万五万五万五万六万六万三筒三筒三筒六筒六筒  ドラ二筒
しかしこれだけ真ん中の牌ばかりだと、他家に使われているケースが多いため、どうしても2鳴きにはしにくい。1枚目の六筒をポンしてテンパイ。
これを受けた佐々木は、4トイツから一気に北東と有効牌を引き込みテンパイ。
二万一索一索二筒二筒五筒五筒九筒九筒東東北北
捨て牌は、三万 上向き一万 上向き八索 上向き六万 上向き四万 上向き南白八万 上向き
1巡ヤミテンを選択するも、2枚切れの西を引き、ここは待ち替えせずツモ切りリーチ。
普段、地獄待ちを好む佐々木だが、この時はともたけが国士を作っていたため、4枚目の西があてにならないこともあり、何より捨て牌に迷彩が施されていることが二万タンキを選択した一番の理由であろう。
このリーチに飛び込んでしまったのは徳川さん。
一発で捕まり、裏まで乗って16,000点の放銃となってしまった。
南場に入り、南3局ラス目で迎えた徳川さんは、
100
 
このテンパイをするも、一旦、ヤミテンに構える。
すると、トップを虎視眈々と狙う瀬戸熊に、絶好のカン八筒が埋まり、こちらもヤミテン。
瀬戸熊は、三色を決めたあとは交わし手が多く、恐らくまだ本調子ではないと感じていたのではないだろうか。
だからこそのヤミテンなのだろう。本調子の瀬戸熊であれば、恐らく迷いなくリーチと発声していたに違いない。
徳川さんにしても、いくら三色の手替わりがあるからとはいえ、親でドラ1あれば、多少苦しい待ちでもリーチと行きたくなるのが心情というもの。
もし仮にここで徳川さんがリーチだと、恐らく瀬戸熊も追いかけリーチとなり、徳川さんは、またも一発で九万を掴む運命だった。しかし、ヤミテンにしていたことで、この九万引きで三面チャンへと手替わり、放銃を回避しここでリーチとなった。三色へ受けなかったのは、他家へのケアもあったかもしれないが、ここは点数的にも三色に受けてもらいたかった。
これを受け、瀬戸熊も追いかけるが、この同テンは流局となる。
100
 
もし徳川さんがヤミテンで、瀬戸熊が先制リーチだった場合はどうだろうか。
全体牌譜を見てもらえば分かるが、瀬戸熊が七筒切りリーチの場合、徳川さんは五筒八筒を打てるかどうかである。
瀬戸熊の河はマンズの上が通りそうなので、もしかしたら打九となった可能性もあった。
1回戦成績
佐々木+33.8P  ともたけ+10.5P  瀬戸熊▲4.3P  徳川さん▲40.0P
※順位点=1位+15.0P 2位+5.0P 3位▲5.0P 4位▲15.0P
 
2回戦
起家から、瀬戸熊・ともたけ・佐々木・徳川さん
佐々木が徳川さんとのリーチ合戦を制して東1局は先制。
迎えた東2局、徳川さんが技ありの七対子を決める。
六万六万二筒四筒四筒九筒九筒南南白白中中  ドラ九索
8巡目にこのテンパイでヤミテン。
親番のともたけは、
七索八索九索二筒三筒三筒六筒七筒七筒北北発発  ツモ六筒
こうなり七対子も見てここで打二筒となった。
誰もが仕方がないと思ったであろう。でも、どこが技ありなのと読者の方は疑問に思うかもしれない。
どこか手順で技があったのなら、そこを書いてくれと思うだろう。
しかし、手順は普通だった、七対子も自然にできたものだ。
徳川さんはこの二筒を見逃した。
なぜ見逃したのか、2回戦が終わって聞いてみた。
「1,600点ではアガる気はなかった、1回戦ラスだったので打点がほしかった。ドラ引きなどを待つつもだったが、ここで二筒が出たので、これ利用してアガリに結び付けようと思った」
まだ2回戦と考えれば、見逃しというリスクをここで背負うのは危険な気はするが、徳川さん自身が1回戦を打ってみた感触から、この3人相手では、普通に戦ったのでは勝てないのではないか、何か工夫をしないとダメなのではないかと判断した結果、見逃しという選択になったのだろう。
徳川さんのツモ切りリーチに対して、
四万五万九万九万四索五索五索六索六索七索五筒六筒七筒
同巡、このテンパイを入れていた瀬戸熊が、2巡後二筒を掴み放銃となった。
瀬戸熊はどちらにしても七万一万と無筋を押していたので、この二筒も放銃になったかもしれないが、明らかに二筒が切られてからのツモ切りリーチなので、仮にもし当たったとしても、役ありのテンパイではないし、打点があるテンパイではないと考える。例えば、リーチのみのカン二筒のような愚形テンパイと読む。
しかし、開けられた手牌は七対子。
ともたけの二筒見逃しを見て、瀬戸熊はどう考えるのだろうか。
少なくとも、徳川さんに対するイメージは変わる。この人は色々な引き出しがあると頭にインプットする。
佐々木、ともたけも、これを見て瀬戸熊と同じ認識を持ったに違いない。
そうなれば、徳川さんのこの作戦は、見事成功したと言えるのではないだろうか。
相手にどう意識させるか。
この人は絶対に引っかけリーチをしないという人と戦うのと、引っかけリーチもなんでもありの人と戦うのでは、後者と戦うほうが戦いにくいのは間違いない。
そう思わせることで、相手に考えさせる幅を多くもたせることができる。
ただ、それが勝利に結びつくかはまた別物と私は考えるが。
ちなみにこれは余談だが、徳川さんは普段ロン2をプレイされたことはほとんどないが、この二筒を見逃すため、しっかりとオートでアガる機能を解除していたとのこと。
それに比べて、1回戦終了時、「耳が痛い・・」と、3名のプロが訴えてきたらしが、これはヘッドフォンをして対戦していたため、ロン2の効果音の音量が大きくてうるさかったということらしいが、普通は自分で音量を調節するとかしそうなものだが、今回のプロ3名は、まだガラケーを使っている機械音痴・・失礼、物を大切にする麻雀プロたちなので仕方なし。そんな彼らを横目に、徳川さんだけは平然としていたと聞いた。
話を戻そう。
瀬戸熊はこの後、ジリジリと点棒を削られ、22,900のラス目まで落ちてしまう。
南場の親番を迎えるも、佐々木に先手を取られる。
一万二万三万五万三索四索九索九索三筒南西西発  ドラ七索
落ち目の親をさばきに行って、あまりいい結果になることは少ないので、私などは仕掛けをためらってしまうが、佐々木は1枚目からでも落ち目の親はさっさと流しにいく。
今局は、今重なったところで、当然、2枚目の西はポン。
この仕掛けで、瀬戸熊に何が流れるかだが、
七万七万八万八万五索五索八索八索五筒六筒七筒南発
仕掛けなければ、六索四万二索東と有効牌はほとんど引かない。
しかし、佐々木の仕掛けで、八万八索を引き込み、
七万七万八万八万八万五索五索八索八索八索五筒六筒七筒  リーチ
ツモれば4,000オールからの勝負手になった。
私が恐れるのはまさにこの展開だが、佐々木はここで腹を括って攻め切る。
一万二万三万五万六万三索四索九索九索五筒  ポン西西西  ツモ五筒
ここでドラまたぎの九索は切りたくないからと、真っ直ぐ五筒を打ち抜く。
このあたりは、これまでの”ヒサトスタイル”を残していると言えよう。
無筋を切り飛ばして、四万七万待ちで追いつき、七万でツモアガる。見事押し切って見せた。
瀬戸熊は、またも同テンを今度は引き負ける。その心中や如何に。
ともたけがトップ目で迎えた南3局。親は佐々木。
佐々木がまた新スタイルを見せてくれる。
一万一万二万二万三万三万九万一索一索八索八索九索九索  ロン九万  ドラ一索
ヤミテンでトップ目のともたけから直撃。
これまで、七対子ドラドラをヤミテンにしている佐々木を見たことがなかったが、こんなヤミテンをするようになった。ここ最近では、連盟チャンネルでプロリーグも配信されるようになったが、佐々木の七対子ドラタンキのヤミテンや、このようなヤミテンを見る機会が増えた。
ちなみに、佐々木の捨ては、
二索 上向き三索 上向き五索 上向き四索 上向き六万 上向き五万 上向き四索 上向き二筒 上向き六索 上向き五筒 上向き六筒 上向き八万 上向き九筒 上向き
こうなっており、この河でリーチをする者は普通いない。
それでも佐々木はこれまで数多くリーチを打ち、そして失敗してきたのだろうと思う。
その経験が、佐々木を進化させているのではないだろうか。
こう書いていると、これまでの佐々木はまるで何も知らなかったかのように勘違いされそうだが、決してそんなことではなく、それらも当然踏まえてリーチのほうがメリットが大きいと判断し、これまでリーチをしてきたのだが、言うなれば、ツモれる時はタンキだろうとなんだろうとリーチで、出アガリしか期待できない時は、3面チャンでもヤミテンという、その選択の幅を広げたとでも言えばいいのだろうか、上手く説明できないが、とにかく勝つためにさらに進化したと言えることは間違いない。
オーラスは、ともたけがアガって2着となり、佐々木は2連勝となった。
2回戦成績
佐々木+23.8P  ともたけ+7.0P  徳川▲3.6P  瀬戸熊▲27.2P
2回戦終了時
佐々木+57.6P  ともたけ+17.5P  瀬戸熊▲31.5P  徳川▲43.6P
 
3回戦
起家から、ともたけ・佐々木・徳川さん・瀬戸熊
佐々木が2連勝したことで、あと1勝すればほぼ勝ちが決まってしまいそうな3回戦。
待ったをかけたのはともたけ。
ここまで2着2回と、佐々木に離されないよう粘っていたともたけが遂に爆発した。
六万七万八万五索六索三筒三筒  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  カン東東東東  ロン七索  ドラ八索三筒
この12,000をきっかけに、
三万三万四万五万五万五索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒  ロン四万  ドラ二筒白
佐々木のリーチを交わしこのアガリを決め、たった2局でトータルでもトップに踊りでた。
ともたけは、第一打から中途半端な打牌をしないというイメージだが、普通は、大きな手役を見ながら、ツモと相談しつつ、妥協しながらアガリを目指す。
それはやはり、自らがアガることで相手のアガリを阻止することができるからだ。
しかし、ともたけはそんなことは意に介さず、自分が考える理想形に向かい、手順無視で進めて行く。
私は、このインターネット麻雀選手権を見るまではそう思っていた。
いや、この観戦記を書くにあたって牌譜を見返すまでは。
ともたけは、この3回戦2回のアガリでトップに立つと、あとの局は、序盤の捨て牌が普通になっていることに気が付いた。
これは恐らく、まずは自らの状態を計り、ダメだと思った時は、大きな手を目指しながら、終盤まで局面を長引かせ、相手がミスすればアガリを狙い、そうでなければ、受けに入り相手のアガリを潰してしまう。
そして、今回の半荘のように自分がよくなったと思ったら、普通の手順に戻し手成りで打つ。
あくまで私の勝手な見解だが、局が始まる前に、すでに見切っているということだろう。
これがともたけ流の麻雀なのかもしれない。
そんなともたけだが、南1局、加点する大チャンスといえる配牌を貰った。
六万七万一索二索五索七索七索八索九索南南白白中  ドラ五索
第一打七万。しかし2巡目、佐々木から出た白を一鳴き。すぐに瀬戸熊に六索が下がる。
その後、八索を引き中切りとするのだが、私はここでドラの五索を切ってもいいかと思った。
もしくは、次巡四筒を引いたところで、一旦打五索とし、その後、手から四筒が出れば、四筒回りに関連牌があると見て、誰もホンイツだとは思わないかもしれな。
ペン三索も鳴けるかもしれないし、相手にもプレッシャーを与えることもできる。
四万五万六万六索七索三筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ
そうこうしているうちに、徳川さんからリーチが入ってしまう。
一索二索五索七索七索八索八索九索南南  ポン白白白  ツモ一索
ともたけは少考後、打八索として放銃となってしまった。
このあたり、しっかりと攻め切る姿勢はともたけらしいと思うが、それにしてもメンゼンで手を進めていたらどうなっていたのだろうと考えるのは、ともたけも同じであろう。
序盤で失点し、後がない徳川さんだったが、何とかオーラスを迎えて29,800点の2着目まで盛り返していた。
瀬戸熊も3着目で親番を迎え、取りあえずは佐々木の3連勝は阻止できそうだ。
できれば、オーラスで1つでも着順を上げたいところであったが、3巡目、ともたけがピンフのテンパイであっさりと決着となった。
3回戦成績
ともたけ+40.0P  徳川4.8P  瀬戸熊▲14.7P  佐々木▲30.1P
3回戦終了時
ともたけ+57.5P  佐々木+27.5P  徳川▲38.8P  瀬戸熊▲46.2P
残すは2戦。徳川さんと瀬戸熊は後がなっくなった。
次にトップを取らなければ、優勝はないといっても過言ではないだろう。
瀬戸熊は、未だ”クマクマタイム”発動せず。
後半へ続く。

第31期十段戦ベスト16B卓レポート ともたけ 雅晴

100

左から、中村毅 櫻井秀樹 三田不二夫 中尾多門

 

 

決勝という晴れ舞台に向けて残る階段は後二段。
しかし、ここからの一段一段を登って行く作業が大変で、今まで登ってきた階段とは訳が違うのである。
その階段を登ろうと挑戦するのは、中村毅、櫻井秀樹、三田不二夫、中尾多門というフレッシュな顔ぶれになった。

 

1回戦
起家から中村、中尾、三田、櫻井。

東1局、最初に先制パンチを放って、展開を有利に進めて行きたいと全員が思っている開局。
親の中村にドラがトイツのチャンス手が入る。
9巡目。

一万四万五万六万七万八万九万七索九索九索五筒六筒七筒??ドラ九索

ツモ五索一万を切ればテンパイするのだが、六索が既に2枚切られていることと、マンズの一気通貫への魅力が勝りテンパイ取らずでツモ切り。
しかし、四万七万に変われば三色、四索八索を引いてくればピンフになるのでテンパイを取っておくのも良いと思えたのだが…
次巡、四索をツモ切った時の中村の心境やいかに。

それでも、11巡目に待望の二万をツモってテンパイ。
七索を切ってリーチに行くのかと思いきや、自身の河にマンズが1枚も捨てられていないこともありヤミテンに。この七索を下家の中尾が3枚目ということもあり

三万四万一索一索二索二索三索三索六索八索九索北北

ここからペンチャンをチーして打四万

六索にくっ付けばホンイツ、二万一万を引けばチャンタという危険な仕掛けだが、上手く一万をツモってきてフリテンにならずにすむチャンタのテンパイ。

それを櫻井からアガリ2,000。
続く東2局、ここにもドラマが待っていた。
北家・中村8巡目。

五索七索九索九索東東南南西北北発発??ドラ三索

ツモ西、打五索でメンホン七対子のテンパイ。
9巡目、西家・櫻井

四万五万六万七万二索三索三索四索四索三筒七筒八筒九筒

ツモ五索三筒でリーチ。ドラが2枚入っているチャンス手である。
同巡、中村ツモ白で待ちの選択に。
七索はリーチ者櫻井の現物、白は2枚出てて俗にいう地獄単騎…
中村は少考して自身の得点アップ(白待ちだとホンローが付く)を選択。
次巡、櫻井がツモってきて河に置いたのは七索
これを見た中村の心中は…

100

 

結果は、13巡目に助かった櫻井が四万をツモって、2,000・3,900のアガリ。
櫻井にしてみれば、前局中途半端なところから放銃した分を回収しておつりのくるアガリである。
初戦のたった2局が終わっただけだが、今日の明暗を分ける2局に思えた。
その後も櫻井が加点して1回戦トップで終了。

100

 

1回戦結果
櫻井+25.4P  中尾+6.2P  中村▲7.7P  三田▲23.9P

 

2回戦
起家から、三田、中尾、櫻井、中村

1回戦では全く見せ場のなかった三田が、起家で5,800をアガってスタート。
一方、中村は前年度決勝進出者の意地とプライドで懸命に頑張るのだが、全て悪い方向へと空回り、終わってみれば1人沈みのラス。

2回戦結果
三田+25.1P  櫻井+9.2P  中尾+6.2P  中村▲40.5P

2回戦終了時
櫻井+34.6P  中尾+12.4P  三田+1.2P  中村▲48.2P

 

3回戦
起家から、三田、櫻井、中村、中尾

東1局、ドラ九万で南家・櫻井から先制リーチ。
親の三田が、ピンフドラ1で追いつくが、リーチと行かずヤミテン。
待ちは櫻井の現物ではないので、前回トップの勢いもありリーチと気迫を見せて貰いたかった。
結果は、三田がツモって1,300オール。

100

 

ツモったからという訳ではないが、他を引き離すチャンスを失ったようにも思えた。
この後も小場で回り、三田が逃げ切って2連勝。
中尾は痛恨の1人沈み。
それでも被害は最小限度で済んだので良かったところか。

100

 

3回戦結果
三田+11.8P  中村+5.3P  櫻井+1.5P  中尾▲18.6P

3回戦終了時
櫻井+36.1P  三田+13.0P  中尾▲6.2P  中村▲42.9P

 

4回戦
起家から、櫻井、中村、三田、中尾

そろそろゴールへ向けて、自分を有利な立場にしておきたいところ。
そんな思惑も絡んでか静かに場は進み、オーラスを迎えた時点でトップ目中尾+3.7、ラス目中村▲3.7という大接戦。

最後は、櫻井が中尾から2,000をアガリプラスになって終わる。

4回戦結果
中尾+9.7P  櫻井+4.5P  三田+1.5P  中村▲15.7P

4回戦終了時
櫻井+40.6P 三田+14.5P  中尾+3.5P  中村▲58.6P

 

5回戦
起家から、櫻井、三田、中村、中尾

いよいよ運命の最終戦。
現状では櫻井がやや有利で、中村は大トップが必要な苦しい立場。
それぞれの条件に向けて進んだ東3局。
親の中村は、ここはなんとしても連チャンして加点したいところだが、南家・中尾の手が早い。
6巡目。

一万二万三万四万六万七万四索五索六索九索九索一筒二筒??ドラ一万

絶好の三筒をツモって四万を切りテンパイ。
リーチをかけるもんだと思っていたらヤミテンを選択した。
9巡目にツモってきた三筒を手の中の三筒と入れ替えて、リーチと行く。
ここでは、ライバルに追い付き追い越す為にも、即リーチが良かったと思うのだが…

これを親番を死守したい中村から3,900でアガリ迎えた東4局、中尾の親番。
西家・三田

七万八万四索四索六索七索八索四筒五筒六筒六筒七筒八筒??ドラ四索

高目三色のテンパイ。
ヤミテンに構えていたのだが、ドラをツモってきて、そのドラをツモ切りしてリーチと行く。

六万をツモれば倍満で、当面のライバル中尾が親であるから、後の戦いが非常に有利にはなるのだが…
ここもリーチをかけるのなら即だろうし、ヤミに構えたのなら最後までそのままのほうが良かったのではないかと思う。

リーチをかければ櫻井、中村からは出てこない。
三田とすればドラを切ったのならテンパイをばらしてしまう、という思いもあったのか。
残念ながらツモることはできずに、中尾がしぶとくテンパイして連チャン。

続く1本場、三田がトイトイで仕掛ける。親の中尾もトイトイで対抗する。
途中、三田はポンしている三万を持ってきて加カンせずにツモ切ったのだが、万が一リンシャンでアガれば満貫になるのだからカンをしたほうが良かったのでは。

そして、半ばオリ気味の櫻井が中尾に3,900を献上したのだが、ここはしっかり止めて貰いたかった。
アガれて気分を良くした中尾は、続く2本場では、タンヤオドラ3をツモり、3本場ではリーチをかけて3,900は4.200オールと立て続けにアガって、勝ち上がりがほぼ当確。

ここまで安定した戦いをしてきた櫻井だが、事態が変わってしまい三田との点差も詰まってしまった。
そして迎えた南1局、親の櫻井がリーチをかけて、安目だが2,000オールをアガリ少し持ち直す。

南2局は、親の三田が3,900を中村からアガって連荘したのだが、続く1本場でテンパイできずに親を流してしまう。
南3局2本場、親は後のない中村。
だが、貰った配牌は今日を物語るように重い。対して、南家の中尾はタンヤオの軽い感じ。
中尾が局を進めるようタンヤオで仕掛ける。
途中、櫻井からドラがポンできて、山に3枚残りの四索七索待ちでテンパイ。

その後、回ってきた三田の手牌は

三万四万五万六万四筒五筒六筒東東南南中中

そしてツモ四索を堪え切れずにツモ切り。
中尾への7,700は8,300の放銃である。

1シャンテンではあるが、中尾へ打ってしまったら終わりなので、ここは我慢して止めて貰いたかった。
もちろん中尾がツモるかもしれないし、他者が放銃するかもしれない。が、自分が放銃してしまうのとは全然訳が違うのである。

長い戦いも最終局、勝ち上がりがほぼ決定している、中尾の親番だから1局勝負。
三田の条件は、櫻井から倍満以上直撃、中尾からは役満直撃か三倍満以上のツモアガリ。
中村に至っては、中尾、櫻井からダブル役満以上の直撃と非常に厳しい条件となってしまった。
局は淡々と進み、三田の1人テンパイで終了。

5回戦結果
中尾+58.5P  櫻井▲11.0P  三田▲14.9P  中村▲32.6P

最終結果
中尾+62.0P  櫻井+29.6P  三田▲0.4P  中村▲91.2P

以上となり、中尾と櫻井が準決勝へと勝ち上がった。
勝った2人は次の戦いに向けて準備をしっかりして貰い、負けてしまった2人はこの悔しさを糧に、より一層の努力をして貰いたいと思う。

以上、十段戦ベスト16B卓のレポートでした。

十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト16B卓レポート ともたけ 雅晴

100

左から、中村毅 櫻井秀樹 三田不二夫 中尾多門

 
 
決勝という晴れ舞台に向けて残る階段は後二段。
しかし、ここからの一段一段を登って行く作業が大変で、今まで登ってきた階段とは訳が違うのである。
その階段を登ろうと挑戦するのは、中村毅、櫻井秀樹、三田不二夫、中尾多門というフレッシュな顔ぶれになった。
 
1回戦
起家から中村、中尾、三田、櫻井。
東1局、最初に先制パンチを放って、展開を有利に進めて行きたいと全員が思っている開局。
親の中村にドラがトイツのチャンス手が入る。
9巡目。
一万四万五万六万七万八万九万七索九索九索五筒六筒七筒??ドラ九索
ツモ五索一万を切ればテンパイするのだが、六索が既に2枚切られていることと、マンズの一気通貫への魅力が勝りテンパイ取らずでツモ切り。
しかし、四万七万に変われば三色、四索八索を引いてくればピンフになるのでテンパイを取っておくのも良いと思えたのだが…
次巡、四索をツモ切った時の中村の心境やいかに。
それでも、11巡目に待望の二万をツモってテンパイ。
七索を切ってリーチに行くのかと思いきや、自身の河にマンズが1枚も捨てられていないこともありヤミテンに。この七索を下家の中尾が3枚目ということもあり
三万四万一索一索二索二索三索三索六索八索九索北北
ここからペンチャンをチーして打四万
六索にくっ付けばホンイツ、二万一万を引けばチャンタという危険な仕掛けだが、上手く一万をツモってきてフリテンにならずにすむチャンタのテンパイ。
それを櫻井からアガリ2,000。
続く東2局、ここにもドラマが待っていた。
北家・中村8巡目。
五索七索九索九索東東南南西北北発発??ドラ三索
ツモ西、打五索でメンホン七対子のテンパイ。
9巡目、西家・櫻井
四万五万六万七万二索三索三索四索四索三筒七筒八筒九筒
ツモ五索三筒でリーチ。ドラが2枚入っているチャンス手である。
同巡、中村ツモ白で待ちの選択に。
七索はリーチ者櫻井の現物、白は2枚出てて俗にいう地獄単騎…
中村は少考して自身の得点アップ(白待ちだとホンローが付く)を選択。
次巡、櫻井がツモってきて河に置いたのは七索
これを見た中村の心中は…
100
 
結果は、13巡目に助かった櫻井が四万をツモって、2,000・3,900のアガリ。
櫻井にしてみれば、前局中途半端なところから放銃した分を回収しておつりのくるアガリである。
初戦のたった2局が終わっただけだが、今日の明暗を分ける2局に思えた。
その後も櫻井が加点して1回戦トップで終了。
100
 
1回戦結果
櫻井+25.4P  中尾+6.2P  中村▲7.7P  三田▲23.9P
 
2回戦
起家から、三田、中尾、櫻井、中村
1回戦では全く見せ場のなかった三田が、起家で5,800をアガってスタート。
一方、中村は前年度決勝進出者の意地とプライドで懸命に頑張るのだが、全て悪い方向へと空回り、終わってみれば1人沈みのラス。
2回戦結果
三田+25.1P  櫻井+9.2P  中尾+6.2P  中村▲40.5P
2回戦終了時
櫻井+34.6P  中尾+12.4P  三田+1.2P  中村▲48.2P
 
3回戦
起家から、三田、櫻井、中村、中尾
東1局、ドラ九万で南家・櫻井から先制リーチ。
親の三田が、ピンフドラ1で追いつくが、リーチと行かずヤミテン。
待ちは櫻井の現物ではないので、前回トップの勢いもありリーチと気迫を見せて貰いたかった。
結果は、三田がツモって1,300オール。
100
 
ツモったからという訳ではないが、他を引き離すチャンスを失ったようにも思えた。
この後も小場で回り、三田が逃げ切って2連勝。
中尾は痛恨の1人沈み。
それでも被害は最小限度で済んだので良かったところか。
100
 
3回戦結果
三田+11.8P  中村+5.3P  櫻井+1.5P  中尾▲18.6P
3回戦終了時
櫻井+36.1P  三田+13.0P  中尾▲6.2P  中村▲42.9P
 
4回戦
起家から、櫻井、中村、三田、中尾
そろそろゴールへ向けて、自分を有利な立場にしておきたいところ。
そんな思惑も絡んでか静かに場は進み、オーラスを迎えた時点でトップ目中尾+3.7、ラス目中村▲3.7という大接戦。
最後は、櫻井が中尾から2,000をアガリプラスになって終わる。
4回戦結果
中尾+9.7P  櫻井+4.5P  三田+1.5P  中村▲15.7P
4回戦終了時
櫻井+40.6P 三田+14.5P  中尾+3.5P  中村▲58.6P
 
5回戦
起家から、櫻井、三田、中村、中尾
いよいよ運命の最終戦。
現状では櫻井がやや有利で、中村は大トップが必要な苦しい立場。
それぞれの条件に向けて進んだ東3局。
親の中村は、ここはなんとしても連チャンして加点したいところだが、南家・中尾の手が早い。
6巡目。
一万二万三万四万六万七万四索五索六索九索九索一筒二筒??ドラ一万
絶好の三筒をツモって四万を切りテンパイ。
リーチをかけるもんだと思っていたらヤミテンを選択した。
9巡目にツモってきた三筒を手の中の三筒と入れ替えて、リーチと行く。
ここでは、ライバルに追い付き追い越す為にも、即リーチが良かったと思うのだが…
これを親番を死守したい中村から3,900でアガリ迎えた東4局、中尾の親番。
西家・三田
七万八万四索四索六索七索八索四筒五筒六筒六筒七筒八筒??ドラ四索
高目三色のテンパイ。
ヤミテンに構えていたのだが、ドラをツモってきて、そのドラをツモ切りしてリーチと行く。
六万をツモれば倍満で、当面のライバル中尾が親であるから、後の戦いが非常に有利にはなるのだが…
ここもリーチをかけるのなら即だろうし、ヤミに構えたのなら最後までそのままのほうが良かったのではないかと思う。
リーチをかければ櫻井、中村からは出てこない。
三田とすればドラを切ったのならテンパイをばらしてしまう、という思いもあったのか。
残念ながらツモることはできずに、中尾がしぶとくテンパイして連チャン。
続く1本場、三田がトイトイで仕掛ける。親の中尾もトイトイで対抗する。
途中、三田はポンしている三万を持ってきて加カンせずにツモ切ったのだが、万が一リンシャンでアガれば満貫になるのだからカンをしたほうが良かったのでは。
そして、半ばオリ気味の櫻井が中尾に3,900を献上したのだが、ここはしっかり止めて貰いたかった。
アガれて気分を良くした中尾は、続く2本場では、タンヤオドラ3をツモり、3本場ではリーチをかけて3,900は4.200オールと立て続けにアガって、勝ち上がりがほぼ当確。
ここまで安定した戦いをしてきた櫻井だが、事態が変わってしまい三田との点差も詰まってしまった。
そして迎えた南1局、親の櫻井がリーチをかけて、安目だが2,000オールをアガリ少し持ち直す。
南2局は、親の三田が3,900を中村からアガって連荘したのだが、続く1本場でテンパイできずに親を流してしまう。
南3局2本場、親は後のない中村。
だが、貰った配牌は今日を物語るように重い。対して、南家の中尾はタンヤオの軽い感じ。
中尾が局を進めるようタンヤオで仕掛ける。
途中、櫻井からドラがポンできて、山に3枚残りの四索七索待ちでテンパイ。
その後、回ってきた三田の手牌は
三万四万五万六万四筒五筒六筒東東南南中中
そしてツモ四索を堪え切れずにツモ切り。
中尾への7,700は8,300の放銃である。
1シャンテンではあるが、中尾へ打ってしまったら終わりなので、ここは我慢して止めて貰いたかった。
もちろん中尾がツモるかもしれないし、他者が放銃するかもしれない。が、自分が放銃してしまうのとは全然訳が違うのである。
長い戦いも最終局、勝ち上がりがほぼ決定している、中尾の親番だから1局勝負。
三田の条件は、櫻井から倍満以上直撃、中尾からは役満直撃か三倍満以上のツモアガリ。
中村に至っては、中尾、櫻井からダブル役満以上の直撃と非常に厳しい条件となってしまった。
局は淡々と進み、三田の1人テンパイで終了。
5回戦結果
中尾+58.5P  櫻井▲11.0P  三田▲14.9P  中村▲32.6P
最終結果
中尾+62.0P  櫻井+29.6P  三田▲0.4P  中村▲91.2P
以上となり、中尾と櫻井が準決勝へと勝ち上がった。
勝った2人は次の戦いに向けて準備をしっかりして貰い、負けてしまった2人はこの悔しさを糧に、より一層の努力をして貰いたいと思う。
以上、十段戦ベスト16B卓のレポートでした。