第118回:和久津 晶 インタビュアー:藤島 健二郎

1月10日、B1リーグ最終節――

私は別卓3番手の吉田直に対し18.0P程リードして最終半荘を迎えていた。

”浮けば何とかなるかな”

そんな想いを胸に卓についていた。

オーラス29,500点持ち3着目

二万二万三万五万六万七万五索六索七索三筒四筒五筒中中  ドラ三筒

トップ目32,200点

一万四万が2枚ずつ切られ二万生牌、中1枚切れ。

B1リーグは他が全卓終了していたため、私の卓には選手を含めた観戦者がつどっていた。
必然的に私の結果に注目が集まった。

私はシャンポンのリーチを選択。
しかし一発目のツモが四万
そして2人テンパイで流局。

それでもテンパイ料で30,000点ジャストの浮きを確保。
恐る恐るうしろを振り返り、まわりの反応を伺う…

一万四万なら……」

結果を見守っていた、運営の瀬戸熊の一言で全てを察した。
別卓の吉田はしっかりと大トップをものにしていたのである。

私は今期もAリーグへの昇級を逃した。

ギャラリーを背負いながら明確な受け間違い…。恥ずかしさと悔しさが相混り、その場にはいられなかった。
交代時でごった返す選手の人ごみを掻き分け、階段の踊り場でやっとの思いでタバコに火をつけた。

下手な麻雀を打った――
この日1日を通してその認識はあったが、どうにもやり切れないものが込み上げてくる。
”この気持ちどうやって割りきろう?”

そこには今起きたことを受け入れられない自分がいた。

まさにそんな時、一本のメールが舞い込んだ。

『インタビュアーどうでしょうか?』

”こんな時になぜ……!

しかも対象者が今をときめく和久津晶である。

”荷が重い…というか今は引き受ける気になれない…

ああでも和久津はたぶん来期一緒か…”
そんな打ちひしがれていた私の脳裏に、ふとマスターズ決勝オーラスの和久津の牌姿が浮かんだ。

四万四万五万一索一索二索二索三索三索五索六索七索東東

(六万4枚三万1枚とび、四万生牌、東1枚とび)

”そう言えば彼女はここから四万切って4,000オールにしてたっけ…

それでも次局まくり返されちゃうんだよな…”

唐突にこの牌姿を思い出したことで、自分の弱さを受け入れる気持ちが芽生え出していた。
そして徐々に気持ちの整理がついていった。

私はその日のうちに、編集部に快諾のメールをとばした。

麻雀道はいばらの道――

和久津は決勝の舞台でたくさんの負けを味わっている。初優勝のプロクイーン以降今回制するまでの間、5回もの決勝に乗っているが全て準優勝…。惜しくない敗北など1つもないのである。
それらの悔しさは今の自分の比ではない。

「負けを噛み締める者は強い」

彼女は前回のインタビューでこう言っていた。
やはり今の彼女は間違いなく強い。

今期は天空麻雀を勝ち、プロクイーンで見事リベンジを果たした。まさに悔しさをバネに結果を出した。
さらには、現在女流桜花にて女流二冠に挑んでいる。
結局はインタビュアーとしてではなく、一麻雀打ちとして話を聞いてみたいと素直に思った次第である。

仕事・対局・収録など超多忙な彼女に無理を言って、週末の深夜に何とか時間を割いてもらった。

 

――池袋某所にて

100

 

藤島 「まずは改めてプロクイーンおめでとう。」

和久津「ありがとうございます!」

 

100

 

藤島 「早速だけど勝負のポイントになった最終戦の東パツについてだけど。」

和久津「普段なら嬉しい配牌なんだけど状況が特殊だから、アガリは正直厳しいかなとは思ってた。」

藤島 「普通は七対子かトイトイになってる。」

和久津「ああゆう局面だからダブ東は出ないとか、他も鳴けないだとかの決めつけは良くないと思っていて、手牌に素直に打ったつもり。」

藤島 「白ポンはまあ有りとしても、カン七索の最終形にはなかなかできない。」

和久津「分岐点のときに面子手も見て、3枚切れの八索を残したから、そこに意味を持たせたの。」

実際にはどう受けても待ち枚数は厳しかったが、見事にラス牌を手繰り寄せた。
この話1つからも彼女はイメージに反してかなり繊細で、過程や打牌理由には相当なこだわりを持っていることが伺えた。

藤島 「残り2回で54.2P差、最終戦を残して40.9P差。2日目にだいぶ差を詰めたとはいえ茅森プロの内容からも逃げ切り濃厚のムードが漂っていた。」

和久津「いつものように1回諦めたから…」

藤島 「その感じは珍しいね。どんな負け試合でも諦めモードにはなるけど、一応最後まで諦めはしないもの。」

和久津「あの局もなんて不幸な配牌だって思ったくらい。」

藤島 「まあ局の展開は向いたね。」

和久津「優勝する人って色んな要素が噛み合うでしょ。実際、宮内さんに役満手が入らなければ、ドラも東も出てこない牌だしね。あの局はそうゆう優勝者特有の流れを感じたかな。」

藤島 「あの局で捉え方が一転したと。」

和久津「2日間通して”これなら行ける”と初めて思えた瞬間だった。」

この後再び6,100オールとアガリ、たった2局で逆転に成功する。
さらに南1局の親番でも、この半荘3度目の親ッパネを決め、逆に大きなリードを得るのだが、オーラスに茅森プロの逆襲に遭う。

藤島 「オーラスの一連の立ち回りについて聞かせて。」

和久津「あの半荘はリードした後もほぼオリなかった。オーラスも直撃を許したり自分の打牌でテンパイとられたりと賛否両論あると思うけど、攻め続けたのは良かったと思ってる。」

藤島 「観てる方としては肝を冷やしたけどね。あのオーラスがあったからこそ名勝負として麻雀史に刻まれる。」

和久津「きれいに落とせる手が来るまで待つのが普通なのだろうけど。ただ自分らしくありたかった。」

 

100

 

藤島 「強引な3フーロからのカン四万で決着がついた。」

和久津「最後のアガリは私らしい泥臭さが出てて気に入ってます。」

和久津に一番良かった局を聞くと、真っ先にこの最後の局を挙げた。
牌譜レベルで見た場合には決して誉めることはできないアガリではあるが、この瞬間、全国の観戦者が画面の前で心動かされたことだけは間違いない。

藤島 「11回戦では見逃しから直撃を決めた局面があったね。」

和久津「他家の立ち回りが上手く作用したのは事実。でも楽はさせたくなかった。」

 

100

 

藤島 「どうしてもアタマを獲りたいという想いが、そうさせたのだろうけど見事に嵌まったね。」

和久津「11回戦の東場あたりからは、もうさやか(茅森プロ)との直対だと強く意識しだしていたので、自分でなんとかするしかないかなって。」

11回戦オーラスの5,200は脇からの出アガリで約65P差、直撃で約40P差となる状況。
親の倍満ほどの意味がある立ち回りだったが、最終戦に向けて精神面でも追い風となる数字以上の価値のあるアガリとなった。

藤島 「5回連続の準優勝。相当悔しかった?」

和久津「去年のプロクイーン以外は全部泣いてます。」

藤島 「去年はどんな…」

和久津「前回のは準備不足の意識が少しあったのと、瑠美さんが強すぎたからね。負けて納得だった。」

藤島 「敗戦を糧に戦ってるとは思うけど、今回特に意識したことは?」

和久津「前のインタビューとかでも触れたけど、点棒的に有利な状況でも攻めの意識は忘れないようにはしたよ。」

藤島 「攻撃型のイメージが強いけど、要所ではヤミテンも使い、戦略的な鳴きもけっこうあった。行くばかりではなくかなり引き出しが多いと感じた。」

和久津「引き出しの数は涙の数(笑)。でも基本的にはクレバーな戦い方はできない。というか敢えてしない感じかな。」

藤島 「それはなぜ?」

和久津「私には麻雀しかないなんてことはない。もし麻雀ダメでも助けてくれる人はたくさんいる。でも…だからこそ背負ってるものがたくさんある。守るべき人、期待してくれる人がたくさんいる。それらの人達に対して和久津らしく闘う義務があるから。」

藤島 「”和久津らしく”か…。そのルーツを少し聞かせて。麻雀覚えたのは?」

和久津「一番最初は10歳より前に完先ルールを。当時はトランプやボードゲームの延長だったと思う。学校の勉強はやらなかったけど、頭使うのは好きだったから。18くらいでアリアリルールを覚えてからはおもしろくて仕方なかった。ほら、麻雀て上手くいかないから。」

藤島 「あ、俺と過程や動機が似てる。でもプロ入りは意外と遅いよね。」

和久津「ホントは歌手になりたかったの。もともとが情感的なタイプではあるんだけど、多感な若い頃は自分が音楽や映画などの影響をかなり受けた。だから自分も人に何かを与えられる存在に憧れるようにはなった。」

藤島 「麻雀プロでも人の心を動かせる…!」

和久津「何の土台もないこんな私でも…泥臭く一生懸命やっていれば何とかなるという事をわかってもらえたら。」

和久津と会話をすることはよくあったが、いつも大事な部分をはぐらかして、面白おかしくされてしまうのが常である。
故に、彼女が真面目な話を真剣な眼差しで話す姿は、それだけで引き込まれるものがあった。

藤島 「最後に聞いておきたいこと。どうやったらあんなに危険牌を踏み込んで行けるのかな?」

和久津「親リーに無スジ切るときはみんなが背中を押すの。あれはみんなが通してくれてるって思う。いつかそれを共感できればいいな。」

今回、彼女を取材させてもらったことで、自分が昇級を逃したことなどあまりにもちっぽけなことに思えた。
普段は明るく楽しく振る舞う彼女ではあるが、麻雀プロとしての意識が相当高いことも充分に認識できた。
今後も唯一無二のキャラクターとして、より一層活躍していくはずである。

蛇足ではあるが。冒頭の和久津の牌姿の局。
実は、マスターズでは敗因にあげられた1局でもある。

やはり麻雀道は長く険しい。

100

プロ雀士インタビュー/第118回:和久津 晶 インタビュアー:藤島 健二郎

1月10日、B1リーグ最終節――
私は別卓3番手の吉田直に対し18.0P程リードして最終半荘を迎えていた。
”浮けば何とかなるかな”
そんな想いを胸に卓についていた。
オーラス29,500点持ち3着目
二万二万三万五万六万七万五索六索七索三筒四筒五筒中中  ドラ三筒
トップ目32,200点
一万四万が2枚ずつ切られ二万生牌、中1枚切れ。
B1リーグは他が全卓終了していたため、私の卓には選手を含めた観戦者がつどっていた。
必然的に私の結果に注目が集まった。
私はシャンポンのリーチを選択。
しかし一発目のツモが四万
そして2人テンパイで流局。
それでもテンパイ料で30,000点ジャストの浮きを確保。
恐る恐るうしろを振り返り、まわりの反応を伺う…
一万四万なら……」
結果を見守っていた、運営の瀬戸熊の一言で全てを察した。
別卓の吉田はしっかりと大トップをものにしていたのである。
私は今期もAリーグへの昇級を逃した。
ギャラリーを背負いながら明確な受け間違い…。恥ずかしさと悔しさが相混り、その場にはいられなかった。
交代時でごった返す選手の人ごみを掻き分け、階段の踊り場でやっとの思いでタバコに火をつけた。
下手な麻雀を打った――
この日1日を通してその認識はあったが、どうにもやり切れないものが込み上げてくる。
”この気持ちどうやって割りきろう?”
そこには今起きたことを受け入れられない自分がいた。
まさにそんな時、一本のメールが舞い込んだ。
『インタビュアーどうでしょうか?』
”こんな時になぜ……!
しかも対象者が今をときめく和久津晶である。
”荷が重い…というか今は引き受ける気になれない…
ああでも和久津はたぶん来期一緒か…”
そんな打ちひしがれていた私の脳裏に、ふとマスターズ決勝オーラスの和久津の牌姿が浮かんだ。
四万四万五万一索一索二索二索三索三索五索六索七索東東
(六万4枚三万1枚とび、四万生牌、東1枚とび)
”そう言えば彼女はここから四万切って4,000オールにしてたっけ…
それでも次局まくり返されちゃうんだよな…”
唐突にこの牌姿を思い出したことで、自分の弱さを受け入れる気持ちが芽生え出していた。
そして徐々に気持ちの整理がついていった。
私はその日のうちに、編集部に快諾のメールをとばした。
麻雀道はいばらの道――
和久津は決勝の舞台でたくさんの負けを味わっている。初優勝のプロクイーン以降今回制するまでの間、5回もの決勝に乗っているが全て準優勝…。惜しくない敗北など1つもないのである。
それらの悔しさは今の自分の比ではない。
「負けを噛み締める者は強い」
彼女は前回のインタビューでこう言っていた。
やはり今の彼女は間違いなく強い。
今期は天空麻雀を勝ち、プロクイーンで見事リベンジを果たした。まさに悔しさをバネに結果を出した。
さらには、現在女流桜花にて女流二冠に挑んでいる。
結局はインタビュアーとしてではなく、一麻雀打ちとして話を聞いてみたいと素直に思った次第である。
仕事・対局・収録など超多忙な彼女に無理を言って、週末の深夜に何とか時間を割いてもらった。
 
――池袋某所にて
100
 
藤島 「まずは改めてプロクイーンおめでとう。」
和久津「ありがとうございます!」
 
100
 
藤島 「早速だけど勝負のポイントになった最終戦の東パツについてだけど。」
和久津「普段なら嬉しい配牌なんだけど状況が特殊だから、アガリは正直厳しいかなとは思ってた。」
藤島 「普通は七対子かトイトイになってる。」
和久津「ああゆう局面だからダブ東は出ないとか、他も鳴けないだとかの決めつけは良くないと思っていて、手牌に素直に打ったつもり。」
藤島 「白ポンはまあ有りとしても、カン七索の最終形にはなかなかできない。」
和久津「分岐点のときに面子手も見て、3枚切れの八索を残したから、そこに意味を持たせたの。」
実際にはどう受けても待ち枚数は厳しかったが、見事にラス牌を手繰り寄せた。
この話1つからも彼女はイメージに反してかなり繊細で、過程や打牌理由には相当なこだわりを持っていることが伺えた。
藤島 「残り2回で54.2P差、最終戦を残して40.9P差。2日目にだいぶ差を詰めたとはいえ茅森プロの内容からも逃げ切り濃厚のムードが漂っていた。」
和久津「いつものように1回諦めたから…」
藤島 「その感じは珍しいね。どんな負け試合でも諦めモードにはなるけど、一応最後まで諦めはしないもの。」
和久津「あの局もなんて不幸な配牌だって思ったくらい。」
藤島 「まあ局の展開は向いたね。」
和久津「優勝する人って色んな要素が噛み合うでしょ。実際、宮内さんに役満手が入らなければ、ドラも東も出てこない牌だしね。あの局はそうゆう優勝者特有の流れを感じたかな。」
藤島 「あの局で捉え方が一転したと。」
和久津「2日間通して”これなら行ける”と初めて思えた瞬間だった。」
この後再び6,100オールとアガリ、たった2局で逆転に成功する。
さらに南1局の親番でも、この半荘3度目の親ッパネを決め、逆に大きなリードを得るのだが、オーラスに茅森プロの逆襲に遭う。
藤島 「オーラスの一連の立ち回りについて聞かせて。」
和久津「あの半荘はリードした後もほぼオリなかった。オーラスも直撃を許したり自分の打牌でテンパイとられたりと賛否両論あると思うけど、攻め続けたのは良かったと思ってる。」
藤島 「観てる方としては肝を冷やしたけどね。あのオーラスがあったからこそ名勝負として麻雀史に刻まれる。」
和久津「きれいに落とせる手が来るまで待つのが普通なのだろうけど。ただ自分らしくありたかった。」
 
100
 
藤島 「強引な3フーロからのカン四万で決着がついた。」
和久津「最後のアガリは私らしい泥臭さが出てて気に入ってます。」
和久津に一番良かった局を聞くと、真っ先にこの最後の局を挙げた。
牌譜レベルで見た場合には決して誉めることはできないアガリではあるが、この瞬間、全国の観戦者が画面の前で心動かされたことだけは間違いない。
藤島 「11回戦では見逃しから直撃を決めた局面があったね。」
和久津「他家の立ち回りが上手く作用したのは事実。でも楽はさせたくなかった。」
 
100
 
藤島 「どうしてもアタマを獲りたいという想いが、そうさせたのだろうけど見事に嵌まったね。」
和久津「11回戦の東場あたりからは、もうさやか(茅森プロ)との直対だと強く意識しだしていたので、自分でなんとかするしかないかなって。」
11回戦オーラスの5,200は脇からの出アガリで約65P差、直撃で約40P差となる状況。
親の倍満ほどの意味がある立ち回りだったが、最終戦に向けて精神面でも追い風となる数字以上の価値のあるアガリとなった。
藤島 「5回連続の準優勝。相当悔しかった?」
和久津「去年のプロクイーン以外は全部泣いてます。」
藤島 「去年はどんな…」
和久津「前回のは準備不足の意識が少しあったのと、瑠美さんが強すぎたからね。負けて納得だった。」
藤島 「敗戦を糧に戦ってるとは思うけど、今回特に意識したことは?」
和久津「前のインタビューとかでも触れたけど、点棒的に有利な状況でも攻めの意識は忘れないようにはしたよ。」
藤島 「攻撃型のイメージが強いけど、要所ではヤミテンも使い、戦略的な鳴きもけっこうあった。行くばかりではなくかなり引き出しが多いと感じた。」
和久津「引き出しの数は涙の数(笑)。でも基本的にはクレバーな戦い方はできない。というか敢えてしない感じかな。」
藤島 「それはなぜ?」
和久津「私には麻雀しかないなんてことはない。もし麻雀ダメでも助けてくれる人はたくさんいる。でも…だからこそ背負ってるものがたくさんある。守るべき人、期待してくれる人がたくさんいる。それらの人達に対して和久津らしく闘う義務があるから。」
藤島 「”和久津らしく”か…。そのルーツを少し聞かせて。麻雀覚えたのは?」
和久津「一番最初は10歳より前に完先ルールを。当時はトランプやボードゲームの延長だったと思う。学校の勉強はやらなかったけど、頭使うのは好きだったから。18くらいでアリアリルールを覚えてからはおもしろくて仕方なかった。ほら、麻雀て上手くいかないから。」
藤島 「あ、俺と過程や動機が似てる。でもプロ入りは意外と遅いよね。」
和久津「ホントは歌手になりたかったの。もともとが情感的なタイプではあるんだけど、多感な若い頃は自分が音楽や映画などの影響をかなり受けた。だから自分も人に何かを与えられる存在に憧れるようにはなった。」
藤島 「麻雀プロでも人の心を動かせる…!」
和久津「何の土台もないこんな私でも…泥臭く一生懸命やっていれば何とかなるという事をわかってもらえたら。」
和久津と会話をすることはよくあったが、いつも大事な部分をはぐらかして、面白おかしくされてしまうのが常である。
故に、彼女が真面目な話を真剣な眼差しで話す姿は、それだけで引き込まれるものがあった。
藤島 「最後に聞いておきたいこと。どうやったらあんなに危険牌を踏み込んで行けるのかな?」
和久津「親リーに無スジ切るときはみんなが背中を押すの。あれはみんなが通してくれてるって思う。いつかそれを共感できればいいな。」
今回、彼女を取材させてもらったことで、自分が昇級を逃したことなどあまりにもちっぽけなことに思えた。
普段は明るく楽しく振る舞う彼女ではあるが、麻雀プロとしての意識が相当高いことも充分に認識できた。
今後も唯一無二のキャラクターとして、より一層活躍していくはずである。
蛇足ではあるが。冒頭の和久津の牌姿の局。
実は、マスターズでは敗因にあげられた1局でもある。
やはり麻雀道は長く険しい。
100

第9期女流桜花決定戦 二日目観戦記 櫻井秀樹

初日終了時成績
吾妻さおり +33.9P
安田麻里菜 ▲7.5P
魚谷侑未  ▲13.1P
和久津晶  ▲13.3P

初日3、4回戦は多少荒れる展開になったものの、首位吾妻から4位和久津まで47.2P差と1半荘でひっくり返る差に収まった。
受けを強化し、良いバランスでゲームを運ぶ、現女流桜花吾妻が2日目もリードを広げるのか?
昨年のリベンジを誓う3人が吾妻を捕え、追い抜くのか?

第9期女流桜花2日目は予想だにしない衝撃の展開となった。

 

100

 

5回戦 (起家から、安田・魚谷・吾妻・和久津)

東1局 オヤの安田は2局連続でテンパイを入れるも、和久津がうまく立ち回りアガリを阻止。

一索二索三索七索九索発発発中中  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き  ドラ七索

二万二万三万四万五万七万八万九万九万九万東東東  ドラ四索

どちらも打点があるだけに痛い安田。しかし表情は落ち着いている。

東場は安田、魚谷がアガリあうも大きな動きは無く南入。
南1局がこの半荘の分岐点となる。

南1局、オヤ安田が13巡目にこのテンパイ

八万八万四索五索二筒二筒三筒三筒四筒四筒五筒七筒九筒  ツモ六索  ドラ九筒

ここは五筒を切ってのヤミテン。安田らしい選択。
オヤでリーチを打ちたくもなる手牌だが、下家の魚谷がソーズのチンイツで仕掛けを入れており、九筒を2枚切っている為、ヤミテンにして確実なアガリを取りにいったのだろう。
安田はこの日、このような冷静なリーチ判断が功を奏すかたちとなった。

100

この局もほどなく、チンイツ1シャンテンの魚谷から安田が八筒を出アガるのだが、吾妻はしっかりこの八筒を止めて受けにまわっていた。
自らが4巡前に切った八筒で、かつワンチャンスではあったのだが、「徹底して受ける局は受ける」、今期の吾妻が見せ続けている見事なバランス感覚であった。

そして次局、吾妻はドラ3枚の満貫をリーチでしっかりアガリ切り、この半荘も浮きをキープする。

魚谷、和久津は痛いマイナススタートの2日目となった。

5回戦成績
安田麻里菜+15.4P 吾妻さおり+8.4P 魚谷侑未▲7.4P 和久津晶▲16.4P

5回戦終了時
吾妻さおり+42.3P 安田麻里菜+7.9P 魚谷侑未▲20.5P 和久津晶▲29.7P

 

6回戦 (起家から、魚谷・和久津・吾妻・安田)

折り返しの半荘。
何度も書いてきたが、ここまでは吾妻のバランスが絶妙で点棒を減らすイメージが湧かない。
5回戦を終え、全て連に絡んでいる。このまま連覇に王手をかけ折り返すか?

吾妻、この半荘も序盤しっかり受け、落ちついた打ちまわしを見せていたが、東4局に難しい判断をせまられる。

東4局2本場

100

 

一万三万三索四索五索六索六索一筒二筒三筒五筒北北  ツモ北  ドラ七筒

ヤミテン。次巡、ツモ三万、打一万でシャンポンに受け変える。

三万三万三索四索五索六索六索一筒二筒三筒北北北

ここもヤミテン。
和久津が一万をポンしており、ホンイツ模様という事もあり、今期の吾妻のスタイルなら当然の選択。

ところが、この一万をオヤの安田に仕掛けられ、焦ってしまったのか、ツモ二索でフリテンリーチと出てしまう。

三万三万二索三索四索五索六索一筒二筒三筒北北北  ドラ七筒

※2巡目に一索が切ってある為フリテン
結果は最悪で、ホンイツテンパイの和久津に押し切られ5,200の放銃。

五万六万七万南南中中  ポン白白白  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ロン南

この判断はどうだっただろうか?
インタビューでは、このような結果も覚悟の上でのリーチ判断だったとの事だが、私はここも受けの局にすべきではなかったかと思う。
確かに、当面のライバルの安田に追い上げられてはいたが、現状この半荘も4万点を超えるトップ目であり、どうしても1,000・2,000が欲しい状況とは言えない。また、追い上げる2人に手が入っていた場合、ドラもないこの手牌では絶好の餌食になってしまいかねない。

これで、心が揺れたのか次局も吾妻は、

七万七万五索七索九索四筒五筒  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ポン南南南  ドラ五索

この手牌で上家の八索をスルーしている。
そもそもが、らしくない仕掛けではあるが、ここは1,000点を2,000点にする意味はほとんどなく、テンパイをとりドラ切りだろう。どのみちこの手組をした時点でオリ切れない。かなり中途半端で不安を感じる仕掛けであった。

しかし吾妻は、この半荘もしっかり原点を確保。なんとか踏みとどまる。

100

 

南2局7巡目

四万四万六万八万四索五索六索六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ドラ二万

北家・魚谷のこのリーチに対して、すでに4巡目に大物手をテンパイしていた安田。

一万三万一索二索三索七索八索九索一筒二筒三筒西西  ドラ二万

これを競り勝ち、大きな跳満のツモアガリ。
このアガリが決め手となり安田が5万点のトップ。
吾妻との差を大きく縮める。

6回戦成績
安田麻里菜+30.0P 吾妻さおり+6.3P 魚谷侑未▲15.9P 和久津晶▲20.4P

6回戦終了時
吾妻さおり+48.6P 安田麻里菜+37.9P 魚谷侑未▲36.4P 和久津晶▲50.1P

100

 

7回戦 (起家から、和久津・安田・吾妻・魚谷)

6回戦で少しバランスを崩した吾妻、7回戦は連続放銃のスタート。
東1局オヤの和久津のリーチ。

七万八万四索四索七索七索七索三筒四筒五筒八筒八筒八筒  リーチ  ドラ九万

一発でドラをツモ切り、和久津へ3,900。
これは自身もテンパイを入れていたためやむなしの感はあるが、続く東2局1本場 5巡目に南家・和久津が2枚目の二筒をリャンメンでチー。

四万四万四筒五筒六筒東東東中中  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ドラ四万

ここも吾妻が中で飛び込み8,000。
これまで吾妻は率先して字牌を切り出さず、ギリギリまでシボっていた。
リャンメンチーを考えると、打点もありそうなだけに淡白な放銃に見えてしまう。
これも追われるもののプレッシャーか?ここから現女流桜花には試練の2日目後半戦となる。

ところがさらに不調なのが魚谷。
吾妻の連続放銃をうけて、魚谷が軽快に仕掛けていく。
東3局、オヤ吾妻、南家・魚谷。

一万七万九万四索四索南南  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き  ポン発発発  ドラ東

このあたりの判断が魚谷は本当に的確で早い。
トータル首位の吾妻が沈んでいるため、オヤをやらせないための仕掛け。
自分がサッとアガってしまえばそれでよし。ドラも東なので、上家の吾妻にもプレッシャーをかけられる。
ゲームメイクの上手さや判断力の早さは女流でも抜けているだろう。

ところが、どうしても今日は魚谷の思惑通りにゲームが進まない。
今局もオヤの吾妻が悩みようの無い早いメンタンピンリーチ。

吾妻にだけは打てない2人は受けに回るしかなく、仕掛けた魚谷も身動きできずに吾妻のリーチ空振りをハイテイツモまで祈るしかないという結末に。

三万三万五万六万七万四索五索五索六索六索七索三筒四筒  リーチ  ハイテイツモ五筒

吾妻はこれでまた原点復帰。魚谷はラスを押しつけられてしまう。

しかしこの半荘の主役はまたも安田。見事だったのはオーラス。
トップ目の和久津の先行リーチを受け、27,900点持ちで役無しのドラドラテンパイをヤミテン。
3メンチャンになり、直撃したい吾妻がオリているのを見て意を決してリーチ。
オヤのリーチも入り、3者ツモる手に力が入る。

東家・魚谷

六万七万八万七索八索九索一筒一筒四筒五筒六筒南南  ドラ一筒

北家・和久津

一万一万一万四万五万六万七万七万六索六索六索白白

西家・安田

二万三万四万一筒一筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒九筒  リーチ  ツモ三筒

この大きなアガリで和久津をマクり、トータルでもついに吾妻を捕える。

7回戦成績
安田麻里菜+15.9P 和久津晶+9.7P 吾妻さおり+5.2P 魚谷侑未▲30.2P

7回戦終了時
吾妻さおり+53.8P 安田麻里菜+53.8P 和久津晶▲40.4P 魚谷侑未▲67.2P

 

8回戦 (起家から、魚谷・吾妻・和久津・安田)

さあ、本日の最終戦。
終始安定した打ちまわしで首位を走ってきた吾妻だったが、ついに安田が3連勝でその背中を捕えた。
しかし、吾妻は全く焦る必要はない。なぜなら自らポイントを減らしたのではないし、本日も実際オールプラスという申し分ない成績なのだから。

逆に後がない和久津と魚谷は、なんとしてでもこの半荘をプラスで終えなければならない。
この半荘が終われば残り4半荘。100ポイントの差がつけばかなり厳しい。

その魚谷が東2局、久々に手ごたえのあるアガリ。

100

二万三万五万五万七万八万九万七索八索九索七筒八筒九筒  ツモ四万  ドラ六索

 

和久津もオヤ番で、

100

二万二万三万四万五万一索二索三索五索六索七索六筒七筒  ツモ五筒  ドラ一索

この2,600オールをアガリ、2人がこの半荘をリードする展開かと思えた。

東4局1本場、西家・吾妻、ピンフのみのテンパイから、若干微妙な手順でこのリーチ。

七万八万九万九万六索七索八索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ六万

六万ツモなら3,000・6,000、安田がオヤ被りで一気に優位に立てる勝負リーチ。

だが、オヤの安田も、

四万五万六万七万七万一索二索三索四索六索七索八索九索

吾妻のリーチの前にこのヤミテンが入っており、五索が吾妻の現物。
そして五索を吾妻がつかみ7,700のアガリとなる。

結果だけを見ると、勝負手のめくりあいに安田が勝っただけのように見えるが、
安田は道中

三万四万五万七万七万一索二索三索四索六索七索八索九索

このテンパイで普通はリーチにいきたくなるのだが、吾妻が(リーチに)きそうだという理由でヤミテン。
ドラの六万と振り替える事ができた。

一方の吾妻は8巡目、

七万八万九万六索七索八索四筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒

一旦このテンパイを取るのが自然だったと思う。
そうすれば1,000点だが、安田から出アガリできていた。

ここから安田の勢いは止まらず、南場にも

二万四万二索三索四索二筒三筒五筒六筒七筒八筒八筒西  ツモ三万  ドラ八索

6巡目のこのテンパイを即リーチ、当たり前のように一発で四筒をツモリあげ勝負あり。

二万三万四万二索三索四索二筒三筒五筒六筒七筒八筒八筒  リーチ  ツモ四筒  ドラ八索

なんと2日目を4連勝で圧勝した。(1日目の最終半荘から5連勝)

吾妻はこの半荘に関して「場況に合わない選択をし続けてしまった心の弱さが情けなくて、悔しくて涙が止まりません」
こう綴っている。

失った機会(チャンス)や点棒はもう戻らない。それでもたかが50Pの差がついただけだ。
現女流桜花として、最終日を堂々と戦うため、しっかりこの1週間で気持ちを立て直してほしい。

8回戦成績
安田麻里菜+26.0P 和久津晶+17.4P 魚谷侑未▲10.6P 吾妻さおり▲32.8P

2日目終了時トータル
安田麻里菜+79.8P 吾妻さおり+21.0P 和久津晶▲23.0P 魚谷侑未▲77.8P

 

いよいよ第9期女流桜花も残すところあと1日。
このまま安田が初戴冠となるのか?
吾妻の再逆転連覇か?
アマゾネスの猛攻撃が2人を差し切るのか?
マーメイドが奇跡を起こすか?

最後に、最終日に向けての4名のコメントを書き記して締めさせて頂く

安田麻里奈
「去年ノートップでしたが、今年はたくさんトップ取れました。最終日も気を引き締めてしっかり打ちます」

吾妻さおり
「まだあきらめていません。今まで培ってきたものをきちんと最終日に出せたら、一か八かの勝負を賭けなくても必ず再逆転できると思います。」

和久津晶
「私は今までも100ポイント差をマクってきたはずです。マッチレースとか言わないで下さい!!カッコ悪い麻雀だけはせずに最後まで優勝目指します。」

魚谷侑未
「私の優勝の可能性は多分2%くらいです、が今までも負けを覚悟してからの優勝がありました。だからまだ諦めません。諦めたら2%が0%になるから。 最後まで麻雀プロ魚谷侑未として戦ってきます。」

※最終日放送はこちら

女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記/第9期女流桜花決定戦 二日目観戦記 櫻井秀樹

初日終了時成績
吾妻さおり +33.9P
安田麻里菜 ▲7.5P
魚谷侑未  ▲13.1P
和久津晶  ▲13.3P
初日3、4回戦は多少荒れる展開になったものの、首位吾妻から4位和久津まで47.2P差と1半荘でひっくり返る差に収まった。
受けを強化し、良いバランスでゲームを運ぶ、現女流桜花吾妻が2日目もリードを広げるのか?
昨年のリベンジを誓う3人が吾妻を捕え、追い抜くのか?
第9期女流桜花2日目は予想だにしない衝撃の展開となった。
 

100

 
5回戦 (起家から、安田・魚谷・吾妻・和久津)
東1局 オヤの安田は2局連続でテンパイを入れるも、和久津がうまく立ち回りアガリを阻止。
一索二索三索七索九索発発発中中  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き  ドラ七索
二万二万三万四万五万七万八万九万九万九万東東東  ドラ四索
どちらも打点があるだけに痛い安田。しかし表情は落ち着いている。
東場は安田、魚谷がアガリあうも大きな動きは無く南入。
南1局がこの半荘の分岐点となる。
南1局、オヤ安田が13巡目にこのテンパイ
八万八万四索五索二筒二筒三筒三筒四筒四筒五筒七筒九筒  ツモ六索  ドラ九筒
ここは五筒を切ってのヤミテン。安田らしい選択。
オヤでリーチを打ちたくもなる手牌だが、下家の魚谷がソーズのチンイツで仕掛けを入れており、九筒を2枚切っている為、ヤミテンにして確実なアガリを取りにいったのだろう。
安田はこの日、このような冷静なリーチ判断が功を奏すかたちとなった。
100
この局もほどなく、チンイツ1シャンテンの魚谷から安田が八筒を出アガるのだが、吾妻はしっかりこの八筒を止めて受けにまわっていた。
自らが4巡前に切った八筒で、かつワンチャンスではあったのだが、「徹底して受ける局は受ける」、今期の吾妻が見せ続けている見事なバランス感覚であった。
そして次局、吾妻はドラ3枚の満貫をリーチでしっかりアガリ切り、この半荘も浮きをキープする。
魚谷、和久津は痛いマイナススタートの2日目となった。
5回戦成績
安田麻里菜+15.4P 吾妻さおり+8.4P 魚谷侑未▲7.4P 和久津晶▲16.4P
5回戦終了時
吾妻さおり+42.3P 安田麻里菜+7.9P 魚谷侑未▲20.5P 和久津晶▲29.7P
 
6回戦 (起家から、魚谷・和久津・吾妻・安田)
折り返しの半荘。
何度も書いてきたが、ここまでは吾妻のバランスが絶妙で点棒を減らすイメージが湧かない。
5回戦を終え、全て連に絡んでいる。このまま連覇に王手をかけ折り返すか?
吾妻、この半荘も序盤しっかり受け、落ちついた打ちまわしを見せていたが、東4局に難しい判断をせまられる。
東4局2本場
100
 
一万三万三索四索五索六索六索一筒二筒三筒五筒北北  ツモ北  ドラ七筒
ヤミテン。次巡、ツモ三万、打一万でシャンポンに受け変える。
三万三万三索四索五索六索六索一筒二筒三筒北北北
ここもヤミテン。
和久津が一万をポンしており、ホンイツ模様という事もあり、今期の吾妻のスタイルなら当然の選択。
ところが、この一万をオヤの安田に仕掛けられ、焦ってしまったのか、ツモ二索でフリテンリーチと出てしまう。
三万三万二索三索四索五索六索一筒二筒三筒北北北  ドラ七筒
※2巡目に一索が切ってある為フリテン
結果は最悪で、ホンイツテンパイの和久津に押し切られ5,200の放銃。
五万六万七万南南中中  ポン白白白  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ロン南
この判断はどうだっただろうか?
インタビューでは、このような結果も覚悟の上でのリーチ判断だったとの事だが、私はここも受けの局にすべきではなかったかと思う。
確かに、当面のライバルの安田に追い上げられてはいたが、現状この半荘も4万点を超えるトップ目であり、どうしても1,000・2,000が欲しい状況とは言えない。また、追い上げる2人に手が入っていた場合、ドラもないこの手牌では絶好の餌食になってしまいかねない。
これで、心が揺れたのか次局も吾妻は、
七万七万五索七索九索四筒五筒  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ポン南南南  ドラ五索
この手牌で上家の八索をスルーしている。
そもそもが、らしくない仕掛けではあるが、ここは1,000点を2,000点にする意味はほとんどなく、テンパイをとりドラ切りだろう。どのみちこの手組をした時点でオリ切れない。かなり中途半端で不安を感じる仕掛けであった。
しかし吾妻は、この半荘もしっかり原点を確保。なんとか踏みとどまる。
100
 
南2局7巡目
四万四万六万八万四索五索六索六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ドラ二万
北家・魚谷のこのリーチに対して、すでに4巡目に大物手をテンパイしていた安田。
一万三万一索二索三索七索八索九索一筒二筒三筒西西  ドラ二万
これを競り勝ち、大きな跳満のツモアガリ。
このアガリが決め手となり安田が5万点のトップ。
吾妻との差を大きく縮める。
6回戦成績
安田麻里菜+30.0P 吾妻さおり+6.3P 魚谷侑未▲15.9P 和久津晶▲20.4P
6回戦終了時
吾妻さおり+48.6P 安田麻里菜+37.9P 魚谷侑未▲36.4P 和久津晶▲50.1P

100

 
7回戦 (起家から、和久津・安田・吾妻・魚谷)
6回戦で少しバランスを崩した吾妻、7回戦は連続放銃のスタート。
東1局オヤの和久津のリーチ。
七万八万四索四索七索七索七索三筒四筒五筒八筒八筒八筒  リーチ  ドラ九万
一発でドラをツモ切り、和久津へ3,900。
これは自身もテンパイを入れていたためやむなしの感はあるが、続く東2局1本場 5巡目に南家・和久津が2枚目の二筒をリャンメンでチー。
四万四万四筒五筒六筒東東東中中  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ドラ四万
ここも吾妻が中で飛び込み8,000。
これまで吾妻は率先して字牌を切り出さず、ギリギリまでシボっていた。
リャンメンチーを考えると、打点もありそうなだけに淡白な放銃に見えてしまう。
これも追われるもののプレッシャーか?ここから現女流桜花には試練の2日目後半戦となる。
ところがさらに不調なのが魚谷。
吾妻の連続放銃をうけて、魚谷が軽快に仕掛けていく。
東3局、オヤ吾妻、南家・魚谷。
一万七万九万四索四索南南  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き  ポン発発発  ドラ東
このあたりの判断が魚谷は本当に的確で早い。
トータル首位の吾妻が沈んでいるため、オヤをやらせないための仕掛け。
自分がサッとアガってしまえばそれでよし。ドラも東なので、上家の吾妻にもプレッシャーをかけられる。
ゲームメイクの上手さや判断力の早さは女流でも抜けているだろう。
ところが、どうしても今日は魚谷の思惑通りにゲームが進まない。
今局もオヤの吾妻が悩みようの無い早いメンタンピンリーチ。
吾妻にだけは打てない2人は受けに回るしかなく、仕掛けた魚谷も身動きできずに吾妻のリーチ空振りをハイテイツモまで祈るしかないという結末に。
三万三万五万六万七万四索五索五索六索六索七索三筒四筒  リーチ  ハイテイツモ五筒
吾妻はこれでまた原点復帰。魚谷はラスを押しつけられてしまう。
しかしこの半荘の主役はまたも安田。見事だったのはオーラス。
トップ目の和久津の先行リーチを受け、27,900点持ちで役無しのドラドラテンパイをヤミテン。
3メンチャンになり、直撃したい吾妻がオリているのを見て意を決してリーチ。
オヤのリーチも入り、3者ツモる手に力が入る。
東家・魚谷
六万七万八万七索八索九索一筒一筒四筒五筒六筒南南  ドラ一筒
北家・和久津
一万一万一万四万五万六万七万七万六索六索六索白白
西家・安田
二万三万四万一筒一筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒九筒  リーチ  ツモ三筒
この大きなアガリで和久津をマクり、トータルでもついに吾妻を捕える。
7回戦成績
安田麻里菜+15.9P 和久津晶+9.7P 吾妻さおり+5.2P 魚谷侑未▲30.2P
7回戦終了時
吾妻さおり+53.8P 安田麻里菜+53.8P 和久津晶▲40.4P 魚谷侑未▲67.2P
 
8回戦 (起家から、魚谷・吾妻・和久津・安田)
さあ、本日の最終戦。
終始安定した打ちまわしで首位を走ってきた吾妻だったが、ついに安田が3連勝でその背中を捕えた。
しかし、吾妻は全く焦る必要はない。なぜなら自らポイントを減らしたのではないし、本日も実際オールプラスという申し分ない成績なのだから。
逆に後がない和久津と魚谷は、なんとしてでもこの半荘をプラスで終えなければならない。
この半荘が終われば残り4半荘。100ポイントの差がつけばかなり厳しい。
その魚谷が東2局、久々に手ごたえのあるアガリ。
100
二万三万五万五万七万八万九万七索八索九索七筒八筒九筒  ツモ四万  ドラ六索
 
和久津もオヤ番で、
100
二万二万三万四万五万一索二索三索五索六索七索六筒七筒  ツモ五筒  ドラ一索
この2,600オールをアガリ、2人がこの半荘をリードする展開かと思えた。
東4局1本場、西家・吾妻、ピンフのみのテンパイから、若干微妙な手順でこのリーチ。
七万八万九万九万六索七索八索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ六万
六万ツモなら3,000・6,000、安田がオヤ被りで一気に優位に立てる勝負リーチ。
だが、オヤの安田も、
四万五万六万七万七万一索二索三索四索六索七索八索九索
吾妻のリーチの前にこのヤミテンが入っており、五索が吾妻の現物。
そして五索を吾妻がつかみ7,700のアガリとなる。
結果だけを見ると、勝負手のめくりあいに安田が勝っただけのように見えるが、
安田は道中
三万四万五万七万七万一索二索三索四索六索七索八索九索
このテンパイで普通はリーチにいきたくなるのだが、吾妻が(リーチに)きそうだという理由でヤミテン。
ドラの六万と振り替える事ができた。
一方の吾妻は8巡目、
七万八万九万六索七索八索四筒四筒五筒六筒七筒七筒八筒
一旦このテンパイを取るのが自然だったと思う。
そうすれば1,000点だが、安田から出アガリできていた。
ここから安田の勢いは止まらず、南場にも
二万四万二索三索四索二筒三筒五筒六筒七筒八筒八筒西  ツモ三万  ドラ八索
6巡目のこのテンパイを即リーチ、当たり前のように一発で四筒をツモリあげ勝負あり。
二万三万四万二索三索四索二筒三筒五筒六筒七筒八筒八筒  リーチ  ツモ四筒  ドラ八索
なんと2日目を4連勝で圧勝した。(1日目の最終半荘から5連勝)
吾妻はこの半荘に関して「場況に合わない選択をし続けてしまった心の弱さが情けなくて、悔しくて涙が止まりません」
こう綴っている。
失った機会(チャンス)や点棒はもう戻らない。それでもたかが50Pの差がついただけだ。
現女流桜花として、最終日を堂々と戦うため、しっかりこの1週間で気持ちを立て直してほしい。
8回戦成績
安田麻里菜+26.0P 和久津晶+17.4P 魚谷侑未▲10.6P 吾妻さおり▲32.8P
2日目終了時トータル
安田麻里菜+79.8P 吾妻さおり+21.0P 和久津晶▲23.0P 魚谷侑未▲77.8P
 
いよいよ第9期女流桜花も残すところあと1日。
このまま安田が初戴冠となるのか?
吾妻の再逆転連覇か?
アマゾネスの猛攻撃が2人を差し切るのか?
マーメイドが奇跡を起こすか?
最後に、最終日に向けての4名のコメントを書き記して締めさせて頂く
安田麻里奈
「去年ノートップでしたが、今年はたくさんトップ取れました。最終日も気を引き締めてしっかり打ちます」
吾妻さおり
「まだあきらめていません。今まで培ってきたものをきちんと最終日に出せたら、一か八かの勝負を賭けなくても必ず再逆転できると思います。」
和久津晶
「私は今までも100ポイント差をマクってきたはずです。マッチレースとか言わないで下さい!!カッコ悪い麻雀だけはせずに最後まで優勝目指します。」
魚谷侑未
「私の優勝の可能性は多分2%くらいです、が今までも負けを覚悟してからの優勝がありました。だからまだ諦めません。諦めたら2%が0%になるから。 最後まで麻雀プロ魚谷侑未として戦ってきます。」
※最終日放送はこちら

プロリーグ(鳳凰戦)成績表/第31期 A2リーグ 最終節成績表

A1 B1・B2 C1・C2・C3 D1・D2・D3

 

 

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 対局消化数 合計
1 仁平 宣明(福岡) 10.2 77.1 46.3 ▲ 16.5 ▲ 32.4 ▲ 9.4 ▲ 7.3 7.0 79.0 56.8 40/40 210.8
2 前原 雄大(東京) ▲ 16.8 4.7 ▲ 31.6 88.1 58.3 ▲ 16.7 63.8 5.7 ▲ 10.2 37.4 40/40 182.7
3 内川 幸太郎(長野) 10.8 40.7 44.1 57.1 24.9 ▲ 6.2 ▲ 18.7 20.1 ▲ 23.4 ▲ 11.3 40/40 138.1
4 佐々木 寿人(宮城) ▲ 16.1 67.6 11.0 33.6 92.9 ▲ 20.3 ▲ 2.9 35.7 3.8 ▲ 83.9 40/40 121.4
5 石渡 正志(神奈川) ▲ 6.1 13.6 ▲ 48.0 ▲ 10.2 52.9 4.3 ▲ 20.1 12.9 41.7 38.4 40/40 79.4
6 滝沢 和典(新潟) 22.0 53.7 ▲ 41.9 ▲ 38.9 ▲ 8.8 54.7 ▲ 9.1 33.8 1.1 0.3 40/40 66.9
7 二階堂 亜樹(神奈川) 22.7 9.1 47.4 ▲ 10.4 ▲ 38.1 ▲ 21.7 ▲ 64.7 43.5 ▲ 3.8 67.0 40/40 51.0
8 紺野 真太郎(静岡) 55.5 ▲ 18.4 ▲ 21.5 ▲ 39.0 35.8 82.5 ▲ 2.0 ▲ 35.8 ▲ 71.8 56.2 40/40 41.5
9 刀川 昌浩(東京) ▲ 4.7 ▲ 62.1 34.1 ▲ 26.0 15.3 60.4 ▲ 3.9 34.7 ▲ 23.0 ▲ 10.6 40/40 14.2
10 櫻井 秀樹(山口) 65.8 5.1 ▲ 19.6 ▲ 30.0 ▲ 8.9 ▲ 10.0 11.6 ▲ 32.7 20.0 ▲ 28.1 40/40 ▲ 26.8
11 白鳥 翔(東京) 46.8 ▲ 29.7 63.5 8.7 ▲ 18.7 ▲ 66.3 ▲ 10.7 10.2 ▲ 32.6 ▲ 1.1 40/40 ▲ 29.9
12 ダンプ 大橋(神奈川) 41.7 16.7 18.6 ▲ 4.6 ▲ 75.2 ▲ 18.4 18.3 ▲ 38.7 2.9 ▲ 5.0 40/40 ▲ 43.7
13 四柳 弘樹(富山) ▲ 56.0 ▲ 64.7 ▲ 33.6 5.3 52.8 7.3 21.6 ▲ 18.8 ▲ 7.2 ▲ 33.3 40/40 ▲ 126.6
14 山井 弘(富山) ▲ 79.6 4.2 ▲ 16.9 ▲ 60.6 ▲ 51.5 27.9 37.6 ▲ 32.7 5.3 18.3 40/40 ▲ 148.0
15 黒沢 咲(東京) ▲ 71.6 ▲ 52.5 ▲ 40.6 ▲ 10.6 ▲ 59.6 ▲ 11.7 ▲ 21.9 16.0 31.9 ▲ 21.8 40/40 ▲ 242.4
16 河井 保国(茨城) ▲ 26.6 ▲ 66.1 ▲ 12.3 ▲ 47.0 ▲ 39.7 ▲ 56.4 ▲ 13.6 ▲ 61.9 ▲ 15.7 ▲ 80.3 40/40 ▲ 419.6

第31期A2リーグ最終節レポートB卓 山田 浩之

前回に引き続き実況の私山田がレポートを担当させていただきます。
よろしくお願いいたします。

先週の対局を終え、ポイントは以下のようになった。

10位 紺野  ▲14.7P
11位 白鳥  ▲31.0P
12位 ダンプ ▲43.7P
13位 四柳  ▲93.3P
14位 山井  ▲148.0P
15位 黒沢  ▲220.6P
16位 河井  ▲419.6P

4人降級なので、ダンプの▲43.7Pが残留ライン。
B卓のメンバーは、紺野、白鳥、四柳、黒沢。

黒沢はポイントが離れているためかなり厳しい。
ほぼ、紺野、白鳥、ダンプ、四柳の内から1人降級となるであろう。
紺野、白鳥、四柳のうち、トータルポイントが一番低い人が降級。
その人がダンプのポイントを上回っていれば、ダンプが降級となる。

1回戦(起家から紺野、黒沢、四柳、白鳥)

点棒の移動があるものの、平たい点数状況で迎えた親で紺野がブレイクする。
南1局1本場、紺野リーチ。

一万二万三万五万五万一索二索三索二筒三筒六筒七筒八筒  リーチ  ロン一筒  ドラ三筒

これに飛び込んだのは四柳。

二万三万四万六索七索八索一筒三筒五筒五筒  ポン中中中  ツモ三筒  打一筒 上向き

ドラが重なっての待ちかえだが、痛い放銃となった。
続く2本場は、黒沢との2人テンパイで流局となったものの3本場、

二索三索三索四索四索五索六索七索八索八索八索九索九索  ロン九索  ドラ六索

これをテンパイの入っていた黒沢からアガリ6万点over。
南3局、四柳も親で反撃開始。

四万五万六万六万六万三索三索三索六索七索八索三筒四筒  リーチ  ロン二筒  ドラ五万

1本場

二万三万四万一索一索二索三索二筒三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ二索 1人テンパイ

2本場

六万六万五索五索八索一筒一筒四筒四筒七筒七筒西西  リーチ  ドラ七筒

ノーミスでのテンパイ。しかも3枚山に生きている。これに待ったをかけたのは紺野。

三万四万七万八万九万四索四索四索四筒五筒五筒白白

七索五万八索
白白四筒 左向き

持ち点にゆとりがあるものの、調子があがってきたライバルの親リーチに追いかけるのは勇気がいるだろう。
四柳の六索をとらえ1,300。
このまま紺野は1人浮きの大トップ。降級争いから抜け出した。
2回戦も紺野は攻め手を緩めず、2連勝。オーラス、ホンイツを決めた四柳が浮きの2着となった。

3回戦(紺野+63.6白鳥▲55.5四柳▲102.0黒沢▲263.5)

ダンプのポイントを下回り後が無くなった白鳥だったが、東1局6,400、東3局26,00オールと四柳を突き放す。
東4局、黒沢が意地をみせる。

七万七万七万九万九万九万五筒五筒六筒七筒九筒九筒九筒  ドラ九万

ここから五筒を見逃し、3人に追いつかれるも七筒を2枚引き四暗刻。
黒沢らしい豪快なアガリ。

YouTube動画はこちら

この先加点とまではいかなかったが、黒沢トップ。
序盤リードした白鳥が浮きの2着。四柳はオーラスの親で粘るも痛恨のラス。
ここでほぼ終戦となった。

攻めて勝ち切った紺野、守って逃げ切った白鳥がそれぞれ持ち味を出し残留を決めた。
一方、残念ながら黒沢は降級、四柳はC卓の結果待ちではあるが、120P以上離れているためほぼ降級が決まった。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A2リーグ最終節レポートB卓 山田 浩之

前回に引き続き実況の私山田がレポートを担当させていただきます。
よろしくお願いいたします。
先週の対局を終え、ポイントは以下のようになった。
10位 紺野  ▲14.7P
11位 白鳥  ▲31.0P
12位 ダンプ ▲43.7P
13位 四柳  ▲93.3P
14位 山井  ▲148.0P
15位 黒沢  ▲220.6P
16位 河井  ▲419.6P
4人降級なので、ダンプの▲43.7Pが残留ライン。
B卓のメンバーは、紺野、白鳥、四柳、黒沢。
黒沢はポイントが離れているためかなり厳しい。
ほぼ、紺野、白鳥、ダンプ、四柳の内から1人降級となるであろう。
紺野、白鳥、四柳のうち、トータルポイントが一番低い人が降級。
その人がダンプのポイントを上回っていれば、ダンプが降級となる。
1回戦(起家から紺野、黒沢、四柳、白鳥)
点棒の移動があるものの、平たい点数状況で迎えた親で紺野がブレイクする。
南1局1本場、紺野リーチ。
一万二万三万五万五万一索二索三索二筒三筒六筒七筒八筒  リーチ  ロン一筒  ドラ三筒
これに飛び込んだのは四柳。
二万三万四万六索七索八索一筒三筒五筒五筒  ポン中中中  ツモ三筒  打一筒 上向き
ドラが重なっての待ちかえだが、痛い放銃となった。
続く2本場は、黒沢との2人テンパイで流局となったものの3本場、
二索三索三索四索四索五索六索七索八索八索八索九索九索  ロン九索  ドラ六索
これをテンパイの入っていた黒沢からアガリ6万点over。
南3局、四柳も親で反撃開始。
四万五万六万六万六万三索三索三索六索七索八索三筒四筒  リーチ  ロン二筒  ドラ五万
1本場
二万三万四万一索一索二索三索二筒三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ二索 1人テンパイ
2本場
六万六万五索五索八索一筒一筒四筒四筒七筒七筒西西  リーチ  ドラ七筒
ノーミスでのテンパイ。しかも3枚山に生きている。これに待ったをかけたのは紺野。
三万四万七万八万九万四索四索四索四筒五筒五筒白白
七索五万八索
白白四筒 左向き
持ち点にゆとりがあるものの、調子があがってきたライバルの親リーチに追いかけるのは勇気がいるだろう。
四柳の六索をとらえ1,300。
このまま紺野は1人浮きの大トップ。降級争いから抜け出した。
2回戦も紺野は攻め手を緩めず、2連勝。オーラス、ホンイツを決めた四柳が浮きの2着となった。
3回戦(紺野+63.6白鳥▲55.5四柳▲102.0黒沢▲263.5)
ダンプのポイントを下回り後が無くなった白鳥だったが、東1局6,400、東3局26,00オールと四柳を突き放す。
東4局、黒沢が意地をみせる。
七万七万七万九万九万九万五筒五筒六筒七筒九筒九筒九筒  ドラ九万
ここから五筒を見逃し、3人に追いつかれるも七筒を2枚引き四暗刻。
黒沢らしい豪快なアガリ。
YouTube動画はこちら
この先加点とまではいかなかったが、黒沢トップ。
序盤リードした白鳥が浮きの2着。四柳はオーラスの親で粘るも痛恨のラス。
ここでほぼ終戦となった。
攻めて勝ち切った紺野、守って逃げ切った白鳥がそれぞれ持ち味を出し残留を決めた。
一方、残念ながら黒沢は降級、四柳はC卓の結果待ちではあるが、120P以上離れているためほぼ降級が決まった。

~振り返りと決意~ 藤崎 智

決定戦の2日目も好調のまま終える。

藤崎+98.4P
沢崎▲12.6P
瀬戸熊▲20.6P
伊藤▲65.2P

トータルでこうなっていた。
半分の2日間、半荘8回戦を残しているのでまだまだわからないが、それでも圧倒的に有利なポイントであることは間違いない。
自己評価で少し辛めに見ても、優勝確率80パーセントくらいはあるだろう。
それなら藤崎に対して甘い評価をしてくれる身近な人達ならどうだろう。
おそらく95パーセントを超える状況なのだろう。

「藤崎さん優勝おめでとう。」「祝勝会いつにします?」「いやー俺も嬉しいよ。」等々。
日頃からお世話になっている人達である。

自分の事のように喜んでいる姿を見ていると「まだ負けるかもしれませんよ。」とはなかなか言い出せない。
とにかく2日目から3日目までの1週間は「負けたらどうしよう」という不安との戦いであった。
プロになって、17年間経験したことのないプレッシャーを感じた長い長い1週間だった。

タイトル戦の経験だけは豊富な私でもこれである。
つい数週間前に、初タイトル(第8期女流桜花)でこれを体験したはずの吾妻プロは偉いなと心底思う。
先輩である私がプレッシャーに負けるわけにもいかず、いつも以上に笑顔で過ごした1週間であった。

さて3日目。
初戦の9回戦、私自身の中で今決定戦一番の失着の局。
東3局、南家。ここまで2局連続で点数は安いが、局面的にはかなり価値あるメンゼン捌きで局面をリードしている。
この2局は、荒プロの観戦記に載っているのでここではふれない。

東3局14巡目
100

この局面は、荒プロの観戦記にも滝沢プロのインタビューにも載っているのだが、最終形だけをみれば、九筒はドラを2枚以上は持っているだろう、親の瀬戸熊プロのリーチに危険牌である。
だが、アガリを目指して九筒を勝負するのは、自分の中では当然の一打なのでそれはいい。
しかし過程で大きなミスがあった。

100

この日の1回戦目。しっかり初日の1回戦目のように、最初から対局に完全に入り込んでいればこの4枚目のドラ表示牌の七万はツモ切りできた。
ここまでの2局は、この日のツキをかなり感じていた。ならば、結果はともかく、この局は攻撃的でなければならないはずである。
しかし、巡目もかなり微妙で、国士崩れのこの手も微妙。
しかも場にピンズがかなり高く、七筒九筒とタイミング良く払えるのかも微妙で、そろそろ店仕舞いも考えて1枚切れの一索を打ってしまい、七万を1巡持ってしまった。
このたった一瞬の迷いが大きな失着を生むこととなる。

もしここで七万をツモ切りできていれば、九筒は手順で12巡目に処理できていた。
これは決して結果論ではなく、明らかに私のミスである。
あまりに大きなポイント差があったことによる油断といってもいい。

ここから冬眠中の熊を起こしてしまったようだ。今決定戦初のクマクマタイム。
だが、私のこの日のツキもそれ以上であった。この竜巻のような嵐の中、浮きの2着をキープする。

続く10回戦。ここが今決定戦のクライマックスとなりえる勝負の半荘である。
瀬戸熊プロの立場からすれば、9回戦目に私に浮きをキープされてしまった以上、まだ90ポイント近い差を逆転するためには、クマクマタイムの連発が必要である。

逆に私の立場からすれば、この半荘、瀬戸熊プロの勢いを封じて、さらに差を広げるようなら大勢は決すると思っていた。

南3局、南家。9巡目。

100

ここまでは自分にとって絶好展開。
このままの順位で、私が30,000点を超えて終われば、今決定戦が終了するといっても過言ではない。
瀬戸熊プロ最後の親番。

普通、王位戦やマスターズのように、1日で勝負を決める決勝戦でここまで大きなリードを持っていれば、トータル2位の親のリーチにドラを切ることはない。
しかしこの局は、この瀬戸熊プロのリーチを捌いてしまえばほぼ勝ち。逆に振り込みとなっても、局面が大きく変わるというわけではない。
ならば当然勝負である。結果流局。

南3局3本場。瀬戸熊プロが必死の連荘で、クマクマタイムの入り口を探す。
逆に忍者は、必死にクマクマタイム発動阻止を狙う。4巡目。

100

上家の瀬戸熊プロからは、すでに殺気にも似た気配が漂っている。
これでリーチを打った場合の、その後の展開は簡単である。
瀬戸熊プロは全く怯むことなく前進あるのみ。沢崎プロと伊藤プロは「行け瀬戸熊!藤崎を引きずり落とせ」と心で叫びながらベタオリ。
再び創られたかのような、忍者vs熊の一騎打ちである。

ここで長考させてもらったのだが、第一感は九万切りで、あくまでヤミテンを目指すちょっと賢い風な打ち方。
しかし、正々堂々正面から勝負を挑んでくる相手に、そんな小細工は失礼ではないのだろうか?
ましては「絶対王者」とは呼ばれていても、卓を離れればかわいい後輩であり、麻雀に人生の全てを捧げると公言している男である。

”鳳凰位”

ずる賢い者が呼ばれる称号ではない。
1番強い者に与えられる称号でなければならないはずである。

しかし、ここでパソコンの向こうで応援してくれている人達の顔が頭に浮かぶ。
2日間独走状態をあれだけ喜んでくれた人達の顔が。そして五万を静かに河に置いた。

100

鳳凰位決定戦は終わった。
自分は初めて鳳凰位のタイトルを獲得した。

しかし、敗戦同様のリーグ戦や、大量リードがあるにもかかわらず、逃げ腰だった決定戦等を考えても、けして「鳳凰位」にはなっていない。

今年も瀬戸熊プロが、頼もしい後輩2人を引き連れて決定戦に戻ってきた。
昨年の非をわびるとともに、その時の後悔を払拭する機会をいただいた。
勝ち上がってきてくれた瀬戸熊プロに心から感謝している。

今年は瀬戸熊プロの攻撃を正面から受け止め、殴り合い上等の戦いをさせてもらう。
そして連覇した暁には、胸を張って「鳳凰位」を名乗らせてもらう。

1年間読んでいただいた方々に感謝します。
またいつかこの部屋に戻ってこられるよう頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします。
さて荷造りしましょ。

鳳凰の部屋/~振り返りと決意~ 藤崎 智

決定戦の2日目も好調のまま終える。
藤崎+98.4P
沢崎▲12.6P
瀬戸熊▲20.6P
伊藤▲65.2P
トータルでこうなっていた。
半分の2日間、半荘8回戦を残しているのでまだまだわからないが、それでも圧倒的に有利なポイントであることは間違いない。
自己評価で少し辛めに見ても、優勝確率80パーセントくらいはあるだろう。
それなら藤崎に対して甘い評価をしてくれる身近な人達ならどうだろう。
おそらく95パーセントを超える状況なのだろう。
「藤崎さん優勝おめでとう。」「祝勝会いつにします?」「いやー俺も嬉しいよ。」等々。
日頃からお世話になっている人達である。
自分の事のように喜んでいる姿を見ていると「まだ負けるかもしれませんよ。」とはなかなか言い出せない。
とにかく2日目から3日目までの1週間は「負けたらどうしよう」という不安との戦いであった。
プロになって、17年間経験したことのないプレッシャーを感じた長い長い1週間だった。
タイトル戦の経験だけは豊富な私でもこれである。
つい数週間前に、初タイトル(第8期女流桜花)でこれを体験したはずの吾妻プロは偉いなと心底思う。
先輩である私がプレッシャーに負けるわけにもいかず、いつも以上に笑顔で過ごした1週間であった。
さて3日目。
初戦の9回戦、私自身の中で今決定戦一番の失着の局。
東3局、南家。ここまで2局連続で点数は安いが、局面的にはかなり価値あるメンゼン捌きで局面をリードしている。
この2局は、荒プロの観戦記に載っているのでここではふれない。
東3局14巡目
100
この局面は、荒プロの観戦記にも滝沢プロのインタビューにも載っているのだが、最終形だけをみれば、九筒はドラを2枚以上は持っているだろう、親の瀬戸熊プロのリーチに危険牌である。
だが、アガリを目指して九筒を勝負するのは、自分の中では当然の一打なのでそれはいい。
しかし過程で大きなミスがあった。
100
この日の1回戦目。しっかり初日の1回戦目のように、最初から対局に完全に入り込んでいればこの4枚目のドラ表示牌の七万はツモ切りできた。
ここまでの2局は、この日のツキをかなり感じていた。ならば、結果はともかく、この局は攻撃的でなければならないはずである。
しかし、巡目もかなり微妙で、国士崩れのこの手も微妙。
しかも場にピンズがかなり高く、七筒九筒とタイミング良く払えるのかも微妙で、そろそろ店仕舞いも考えて1枚切れの一索を打ってしまい、七万を1巡持ってしまった。
このたった一瞬の迷いが大きな失着を生むこととなる。
もしここで七万をツモ切りできていれば、九筒は手順で12巡目に処理できていた。
これは決して結果論ではなく、明らかに私のミスである。
あまりに大きなポイント差があったことによる油断といってもいい。
ここから冬眠中の熊を起こしてしまったようだ。今決定戦初のクマクマタイム。
だが、私のこの日のツキもそれ以上であった。この竜巻のような嵐の中、浮きの2着をキープする。
続く10回戦。ここが今決定戦のクライマックスとなりえる勝負の半荘である。
瀬戸熊プロの立場からすれば、9回戦目に私に浮きをキープされてしまった以上、まだ90ポイント近い差を逆転するためには、クマクマタイムの連発が必要である。
逆に私の立場からすれば、この半荘、瀬戸熊プロの勢いを封じて、さらに差を広げるようなら大勢は決すると思っていた。
南3局、南家。9巡目。
100
ここまでは自分にとって絶好展開。
このままの順位で、私が30,000点を超えて終われば、今決定戦が終了するといっても過言ではない。
瀬戸熊プロ最後の親番。
普通、王位戦やマスターズのように、1日で勝負を決める決勝戦でここまで大きなリードを持っていれば、トータル2位の親のリーチにドラを切ることはない。
しかしこの局は、この瀬戸熊プロのリーチを捌いてしまえばほぼ勝ち。逆に振り込みとなっても、局面が大きく変わるというわけではない。
ならば当然勝負である。結果流局。
南3局3本場。瀬戸熊プロが必死の連荘で、クマクマタイムの入り口を探す。
逆に忍者は、必死にクマクマタイム発動阻止を狙う。4巡目。
100
上家の瀬戸熊プロからは、すでに殺気にも似た気配が漂っている。
これでリーチを打った場合の、その後の展開は簡単である。
瀬戸熊プロは全く怯むことなく前進あるのみ。沢崎プロと伊藤プロは「行け瀬戸熊!藤崎を引きずり落とせ」と心で叫びながらベタオリ。
再び創られたかのような、忍者vs熊の一騎打ちである。
ここで長考させてもらったのだが、第一感は九万切りで、あくまでヤミテンを目指すちょっと賢い風な打ち方。
しかし、正々堂々正面から勝負を挑んでくる相手に、そんな小細工は失礼ではないのだろうか?
ましては「絶対王者」とは呼ばれていても、卓を離れればかわいい後輩であり、麻雀に人生の全てを捧げると公言している男である。
”鳳凰位”
ずる賢い者が呼ばれる称号ではない。
1番強い者に与えられる称号でなければならないはずである。
しかし、ここでパソコンの向こうで応援してくれている人達の顔が頭に浮かぶ。
2日間独走状態をあれだけ喜んでくれた人達の顔が。そして五万を静かに河に置いた。
100
鳳凰位決定戦は終わった。
自分は初めて鳳凰位のタイトルを獲得した。
しかし、敗戦同様のリーグ戦や、大量リードがあるにもかかわらず、逃げ腰だった決定戦等を考えても、けして「鳳凰位」にはなっていない。
今年も瀬戸熊プロが、頼もしい後輩2人を引き連れて決定戦に戻ってきた。
昨年の非をわびるとともに、その時の後悔を払拭する機会をいただいた。
勝ち上がってきてくれた瀬戸熊プロに心から感謝している。
今年は瀬戸熊プロの攻撃を正面から受け止め、殴り合い上等の戦いをさせてもらう。
そして連覇した暁には、胸を張って「鳳凰位」を名乗らせてもらう。
1年間読んでいただいた方々に感謝します。
またいつかこの部屋に戻ってこられるよう頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします。
さて荷造りしましょ。

第22期東北プロリーグ後期第2節レポート

Aリーグレポート

1卓(大里、杜、粕谷、神藤、高橋)左から抜け番順

杜は1回戦を+19.6Pのトップでスタートすると、抜け番明けの3回戦目を最小限のマイナスで止めた後4、5回戦をプラスで終えた。
女流大里も、3回戦目の+25.9Pのトップなどでプラスを重ねて、今節+41.2Pと好調。
前節と合わせ+83.2Pで総合1位に躍り出た。

2卓(佐藤、三井、早坂、青木)

1回戦目、青木が+36.5Pの1人浮きでロケットスタート。
その後、2、3回戦をプラスにし、4回戦目でラスになったものの、+45.0Pで終え好成績を収めた。
また佐藤は、1回戦目でラスを引いたものの2、3、4回戦で少しずつマイナスを減らしていき、粘り強いところを見せた。

3卓(皆川、泉、工藤、岩熊)

全4回戦通して接戦だったこの卓、全員が1回ずつトップを分け合った。
卓内1位は僅差で岩熊で+11.0P。
皆川は3回戦目のトップ以外3ラスの結果だったものの、▲24.4Pと被害を止めて健闘した。

Aリーグ

順位 名前 後期1節 後期2節 後期3節 後期4節 後期5節 合計
1 大里奈美 42.0 41.2 83.2
2 佐藤大介 74.0 ▲ 4.6 69.4
3 泉亮多 59.7 4.0 63.7
4 青木武 0.9 45.0 45.9
5 粕谷勇吉 34.1 ▲ 3.5 30.6
6 岩熊隆一 0.8 11.0 11.8
7 工藤宏紀 ▲ 12.0 9.4 ▲ 2.6
8 杜麻沙也 ▲ 43.7 34.8 ▲ 8.9
9 三井光一 ▲ 4.5 ▲ 16.5 ▲ 21.0
10 皆川直毅 ▲ 14.8 ▲ 24.4 ▲ 39.2
11 神藤極 ▲ 74.5 29.1 ▲ 45.4
12 早坂和人 ▲ 51.6 ▲ 23.9 ▲ 75.5
13 高橋清隆 ▲ 12.4 ▲ 121.6 ▲ 134.0

 

Bリーグレポート

1卓(早川、菅原、新田、斎藤、東)左から抜け番順
全体的に点棒が大きく動く展開となった。その中で卓内1位となったのは東。
1回戦目には+29.9Pの1人浮き、3回戦目では早川と競った上での+29.5Pのトップ。
得点力の高さを見せつけ今節+75.4P。
前節の成績と合わせ、合計+138.9Pの首位で大きくアドバンテージを取った。
また、女流早川もトップは無かったものの、4回戦オールプラスとして+60.5P。
総合でも3位と好位置につけた。

2卓(千田、佐々木、山下、安ヶ平、国丸)左から抜け番順
佐々木は3回戦目に1人沈みラスがあったものの、2回のトップ時に大きく稼いで+27.4Pとして卓内トップ。
続いたのは今回から復帰した国丸。こちらも2回のトップを取っており、復帰戦としていい滑り出しとなった。

3卓(遠藤、吉田、佐藤、井上)
この卓で好調っぷりをみせたのは佐藤。
1、2回戦目で大きめのトップを取りプラスを重ねる。
3、4回戦目で遠藤の追撃があったが、佐藤は3回戦目を±0、4回戦目を▲1.1Pの2着として先行逃げ切りの形で卓内1位を守り、総合でも+85.9の2位となった。

Bリーグ

順位 名前 後期1節 後期2節 後期3節 後期4節 後期5節 合計
1 東幸一郎 63.5 75.4 138.9
2 佐藤晃大 30.7 55.2 85.9
3 早川林香 ▲ 1.8 60.5 58.7
4 千田諒 76.5 ▲ 39.0 37.5
5 遠藤昭太 ▲ 9.3 42.5 33.2
6 山下敬介 18.7 0.9 19.6
7 安ヶ平浩希 5.2 ▲ 4.8 0.4
8 国丸仁哉 ▲ 50.0 15.5 ▲ 34.5
9 新田大輔 ▲ 34.1 ▲ 2.2 ▲ 36.3
10 井上美里 21.4 ▲ 75.8 ▲ 54.4
11 佐々木啓文 ▲ 86.5 27.4 ▲ 59.1
12 菅原直哉 19.3 ▲ 91.6 ▲ 72.3
13 吉田勝弥 ▲ 100.0 ▲ 21.9 ▲ 121.9
14 斎藤智大 ▲ 123.6 ▲ 42.1 ▲ 165.7

東北プロリーグ レポート/第22期東北プロリーグ後期第2節レポート

Aリーグレポート
1卓(大里、杜、粕谷、神藤、高橋)左から抜け番順
杜は1回戦を+19.6Pのトップでスタートすると、抜け番明けの3回戦目を最小限のマイナスで止めた後4、5回戦をプラスで終えた。
女流大里も、3回戦目の+25.9Pのトップなどでプラスを重ねて、今節+41.2Pと好調。
前節と合わせ+83.2Pで総合1位に躍り出た。
2卓(佐藤、三井、早坂、青木)
1回戦目、青木が+36.5Pの1人浮きでロケットスタート。
その後、2、3回戦をプラスにし、4回戦目でラスになったものの、+45.0Pで終え好成績を収めた。
また佐藤は、1回戦目でラスを引いたものの2、3、4回戦で少しずつマイナスを減らしていき、粘り強いところを見せた。
3卓(皆川、泉、工藤、岩熊)
全4回戦通して接戦だったこの卓、全員が1回ずつトップを分け合った。
卓内1位は僅差で岩熊で+11.0P。
皆川は3回戦目のトップ以外3ラスの結果だったものの、▲24.4Pと被害を止めて健闘した。
Aリーグ

順位 名前 後期1節 後期2節 後期3節 後期4節 後期5節 合計
1 大里奈美 42.0 41.2 83.2
2 佐藤大介 74.0 ▲ 4.6 69.4
3 泉亮多 59.7 4.0 63.7
4 青木武 0.9 45.0 45.9
5 粕谷勇吉 34.1 ▲ 3.5 30.6
6 岩熊隆一 0.8 11.0 11.8
7 工藤宏紀 ▲ 12.0 9.4 ▲ 2.6
8 杜麻沙也 ▲ 43.7 34.8 ▲ 8.9
9 三井光一 ▲ 4.5 ▲ 16.5 ▲ 21.0
10 皆川直毅 ▲ 14.8 ▲ 24.4 ▲ 39.2
11 神藤極 ▲ 74.5 29.1 ▲ 45.4
12 早坂和人 ▲ 51.6 ▲ 23.9 ▲ 75.5
13 高橋清隆 ▲ 12.4 ▲ 121.6 ▲ 134.0

 
Bリーグレポート
1卓(早川、菅原、新田、斎藤、東)左から抜け番順
全体的に点棒が大きく動く展開となった。その中で卓内1位となったのは東。
1回戦目には+29.9Pの1人浮き、3回戦目では早川と競った上での+29.5Pのトップ。
得点力の高さを見せつけ今節+75.4P。
前節の成績と合わせ、合計+138.9Pの首位で大きくアドバンテージを取った。
また、女流早川もトップは無かったものの、4回戦オールプラスとして+60.5P。
総合でも3位と好位置につけた。
2卓(千田、佐々木、山下、安ヶ平、国丸)左から抜け番順
佐々木は3回戦目に1人沈みラスがあったものの、2回のトップ時に大きく稼いで+27.4Pとして卓内トップ。
続いたのは今回から復帰した国丸。こちらも2回のトップを取っており、復帰戦としていい滑り出しとなった。
3卓(遠藤、吉田、佐藤、井上)
この卓で好調っぷりをみせたのは佐藤。
1、2回戦目で大きめのトップを取りプラスを重ねる。
3、4回戦目で遠藤の追撃があったが、佐藤は3回戦目を±0、4回戦目を▲1.1Pの2着として先行逃げ切りの形で卓内1位を守り、総合でも+85.9の2位となった。
Bリーグ

順位 名前 後期1節 後期2節 後期3節 後期4節 後期5節 合計
1 東幸一郎 63.5 75.4 138.9
2 佐藤晃大 30.7 55.2 85.9
3 早川林香 ▲ 1.8 60.5 58.7
4 千田諒 76.5 ▲ 39.0 37.5
5 遠藤昭太 ▲ 9.3 42.5 33.2
6 山下敬介 18.7 0.9 19.6
7 安ヶ平浩希 5.2 ▲ 4.8 0.4
8 国丸仁哉 ▲ 50.0 15.5 ▲ 34.5
9 新田大輔 ▲ 34.1 ▲ 2.2 ▲ 36.3
10 井上美里 21.4 ▲ 75.8 ▲ 54.4
11 佐々木啓文 ▲ 86.5 27.4 ▲ 59.1
12 菅原直哉 19.3 ▲ 91.6 ▲ 72.3
13 吉田勝弥 ▲ 100.0 ▲ 21.9 ▲ 121.9
14 斎藤智大 ▲ 123.6 ▲ 42.1 ▲ 165.7

第31期A1リーグ最終節レポートB卓 白鳥 翔

A1リーグ最終節、中位卓となるB卓。
対戦メンバーと9節目までのポイントはそれぞれ、

5位 前田+25.4P
6位 近藤+23.9P
7位 古川+23.1P
8位 沢崎+20.5P

そして現在ボーダーである3位のともたけは+44.7P、2位の勝又も63.4Pなのでかなりの大混戦だ。
もしこの中位卓で40~50P、それ以上ポイントをプラスすることができれば、決定戦進出も十分に考えられる。
どの様な闘いになるのか、誰が抜け出すのか。大注目の一戦が始まった。

1回戦、場が動いたのは東3局。近藤が親でダブ東を仕掛けると3者が丁寧に対応。
古川がまわりながらもこのテンパイ。

二万二万三万三万四万四万八万八万二索三索四索四筒五筒  ドラ四索

ここから前田も親の上家でうまく打ちまわしてテンパイをいれる。

四万五万六万二索二索四索五索六索四筒六筒  チー七筒 左向き六筒 上向き八筒 上向き

そして終盤にロンの声。アガったのはなんと沢崎。

七万七万四索五索五索七索七索八索八索南南西西  ロン四索

沢崎も古川、前田と同じく丁寧に打ちまわしてこっそりとヤミテンをいれていた。
放銃してしまったのは古川で、沢崎が大きな6,400のアガリ。

次局の親番でも沢崎はたたみかけるようにタンピンドラ1でリーチを打つも流局。
前田、近藤も粘ってテンパイを取り3人テンパイで流局と、流石A1リーガー、簡単に加点は許さない。

次局1本場は、古川がしっかりとピンフで捌いて沢崎の親を落とした。
沢崎、大きな加点とはならなかったものの、1回戦しっかりとトップを堅守。

そして喰らいついてオーラス、自らアガって浮きをキープした前田が2着で1回戦目が終わった。

2回戦、前田が東2局の親番で積極的に仕掛けてトイトイドラ3の4,000オールを決める。

二万二万九万九万  ポン四万 上向き四万 上向き四万 上向き  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  暗カン牌の背一万 上向き一万 上向き牌の背  ツモ九万  ドラ九万

前田が1人浮きの状態で迎えたオーラスだったが、前田のテンパイ打の一万をラス目の近藤が捕える。

二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索九索五筒五筒  ドラ八索  ロン一万

この7,700のアガリ。これで近藤が浮きの2着にまわって、前田のトップで2回戦終了。

3回戦、前田が抜け出すと決定戦に大きく近づくことになるが、3回戦目は苦しい展開が続きオーラスを迎えて17,100点持ちのラス目。
このままだと決定戦進出は絶望的になってしまうが、ここで親の近藤からリーチが入る。

六万七万八万五索五索六索六索六索七索八索九索五筒六筒  リーチ  ドラ六筒

ここに前田も追いついて勝負とリーチに踏み切る。

二万三万四万九万九万二索三索四索二筒二筒二筒六筒六筒 

結果は、近藤がドラの六筒を掴み、前田に8,000の放銃。
これで前田が沈みながら3着に踏みとどまって、最終戦を迎えることとなった。

3回戦を終わってのトータルは、前田が+41.1Pとなり4位まで浮上。
沢崎、古川も苦しいながらなんとか3回戦までをプラスにまとめそれぞれ+26.8P、+26.1P、と最終戦大きなトップをとれば決定戦進出の可能性が十分のある位置にいる。
近藤はトータルで▲1.1Pと苦しいが、最後まで大きなトップを狙いにいくだろう。

最終戦、いきなり起家の沢崎が魅せる。6巡目のピンフテンパイ。

一万二万三万七万九万三索四索七索八索九索二筒二筒七筒  ツモ八万  ドラ三筒

これをテンパイトラズとして打四索と構えると、数巡後、九筒を引いて狙い通り三色に仕上げてリーチ。
古川から7,700を討ち取った。

次局1本場、沢崎メンホンのテンパイをいれるもテンパイ打が近藤のリーチに捕まり3,900は4,200の放銃。

東2局は、親番の近藤も仕掛けて攻めるが、今度は前田に7,700の放銃となってしまう。

前田、このまま加点して決定戦に大きく近づくかと思われたが、東3局の親番では沢崎がまたも見事な三色を決めて2,000・4,000のアガリ。
前田は痛い親カブリとなってしまう。

しかし、ここから前田が強かった。
局面を冷静に見極め我慢を重ね、南2局で古川から8,000をアガると、南3局の親番でメンツ手かトイツ手かをうまく見極め、沢崎から11,600をアガり、見事50,000点に近いトップで最終戦を締めくくった。

B卓が終わって、前田がトータル+66.5Pで勝又を抜いて、なんと2位まで一気に浮上。
前田は、最終C卓の結果次第で決定戦に進出、という形でB卓が終わった。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A1リーグ最終節レポートB卓 白鳥 翔

A1リーグ最終節、中位卓となるB卓。
対戦メンバーと9節目までのポイントはそれぞれ、
5位 前田+25.4P
6位 近藤+23.9P
7位 古川+23.1P
8位 沢崎+20.5P
そして現在ボーダーである3位のともたけは+44.7P、2位の勝又も63.4Pなのでかなりの大混戦だ。
もしこの中位卓で40~50P、それ以上ポイントをプラスすることができれば、決定戦進出も十分に考えられる。
どの様な闘いになるのか、誰が抜け出すのか。大注目の一戦が始まった。
1回戦、場が動いたのは東3局。近藤が親でダブ東を仕掛けると3者が丁寧に対応。
古川がまわりながらもこのテンパイ。
二万二万三万三万四万四万八万八万二索三索四索四筒五筒  ドラ四索
ここから前田も親の上家でうまく打ちまわしてテンパイをいれる。
四万五万六万二索二索四索五索六索四筒六筒  チー七筒 左向き六筒 上向き八筒 上向き
そして終盤にロンの声。アガったのはなんと沢崎。
七万七万四索五索五索七索七索八索八索南南西西  ロン四索
沢崎も古川、前田と同じく丁寧に打ちまわしてこっそりとヤミテンをいれていた。
放銃してしまったのは古川で、沢崎が大きな6,400のアガリ。
次局の親番でも沢崎はたたみかけるようにタンピンドラ1でリーチを打つも流局。
前田、近藤も粘ってテンパイを取り3人テンパイで流局と、流石A1リーガー、簡単に加点は許さない。
次局1本場は、古川がしっかりとピンフで捌いて沢崎の親を落とした。
沢崎、大きな加点とはならなかったものの、1回戦しっかりとトップを堅守。
そして喰らいついてオーラス、自らアガって浮きをキープした前田が2着で1回戦目が終わった。
2回戦、前田が東2局の親番で積極的に仕掛けてトイトイドラ3の4,000オールを決める。
二万二万九万九万  ポン四万 上向き四万 上向き四万 上向き  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  暗カン牌の背一万 上向き一万 上向き牌の背  ツモ九万  ドラ九万
前田が1人浮きの状態で迎えたオーラスだったが、前田のテンパイ打の一万をラス目の近藤が捕える。
二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索九索五筒五筒  ドラ八索  ロン一万
この7,700のアガリ。これで近藤が浮きの2着にまわって、前田のトップで2回戦終了。
3回戦、前田が抜け出すと決定戦に大きく近づくことになるが、3回戦目は苦しい展開が続きオーラスを迎えて17,100点持ちのラス目。
このままだと決定戦進出は絶望的になってしまうが、ここで親の近藤からリーチが入る。
六万七万八万五索五索六索六索六索七索八索九索五筒六筒  リーチ  ドラ六筒
ここに前田も追いついて勝負とリーチに踏み切る。
二万三万四万九万九万二索三索四索二筒二筒二筒六筒六筒 
結果は、近藤がドラの六筒を掴み、前田に8,000の放銃。
これで前田が沈みながら3着に踏みとどまって、最終戦を迎えることとなった。
3回戦を終わってのトータルは、前田が+41.1Pとなり4位まで浮上。
沢崎、古川も苦しいながらなんとか3回戦までをプラスにまとめそれぞれ+26.8P、+26.1P、と最終戦大きなトップをとれば決定戦進出の可能性が十分のある位置にいる。
近藤はトータルで▲1.1Pと苦しいが、最後まで大きなトップを狙いにいくだろう。
最終戦、いきなり起家の沢崎が魅せる。6巡目のピンフテンパイ。
一万二万三万七万九万三索四索七索八索九索二筒二筒七筒  ツモ八万  ドラ三筒
これをテンパイトラズとして打四索と構えると、数巡後、九筒を引いて狙い通り三色に仕上げてリーチ。
古川から7,700を討ち取った。
次局1本場、沢崎メンホンのテンパイをいれるもテンパイ打が近藤のリーチに捕まり3,900は4,200の放銃。
東2局は、親番の近藤も仕掛けて攻めるが、今度は前田に7,700の放銃となってしまう。
前田、このまま加点して決定戦に大きく近づくかと思われたが、東3局の親番では沢崎がまたも見事な三色を決めて2,000・4,000のアガリ。
前田は痛い親カブリとなってしまう。
しかし、ここから前田が強かった。
局面を冷静に見極め我慢を重ね、南2局で古川から8,000をアガると、南3局の親番でメンツ手かトイツ手かをうまく見極め、沢崎から11,600をアガり、見事50,000点に近いトップで最終戦を締めくくった。
B卓が終わって、前田がトータル+66.5Pで勝又を抜いて、なんと2位まで一気に浮上。
前田は、最終C卓の結果次第で決定戦に進出、という形でB卓が終わった。

第9期女流桜花決定戦 初日観戦記 櫻井秀樹

【プロの価値】
奇しくも去年と同じ面子での決勝となり、話題を呼んだ第9期の女流桜花。
プロ連盟にはこの女流桜花とプロクイーンという女流プロのいわば2大タイトルがある。
そしてここ数年、この2つのタイトル戦にほぼこの4名の誰かが絡んでいる。

麻雀という競技の性質上、短期戦で常に同じ人間が勝つということはなかなか起こらない。
ましてやプロを名乗り、日々麻雀にあけくれる者たちの集団ならなおさらだ。

私は麻雀プロとしての価値の求め方は各々いろんな方向性があってよいと思う。
華やかに業界を盛り上げる事ももちろん重要だし、ファンの方々や視聴者に麻雀の楽しみ、醍醐味を伝える事も、麻雀の普及に全力を注ぐのもすばらしいことだろう。

そしてここにいる4名は「自身のプロとしての価値」をどこに見出そうとしているのだろう?
おそらく「勝つこと」が自分の存在価値と捉えているのではないだろうか?

近年の彼女たちの活躍を見ると、そう思わざるをえないし、そうであってほしいとも思う。

 

 

100

【安田麻里菜】
昨年はノートップながらも安定した守備力でマイナスを最小限に抑え勝負を盛り上げた。
今期のプレーオフも一見有利な立場からのスタートに見えるが、実はかなり難しい条件をこなしての決勝進出。
最近はかなり攻撃力もついたという事で是非この1年での進化を見せてもらいたい。
ちなみに安田は、今期のC3リーグを危なげない成績で見事優勝している。

 

 

100

【和久津晶】
ご存じ超攻撃型麻雀アマゾネス。放銃(う)っても放銃ってもその倍アガり返す麻雀はファンを魅了し、勝負を盛り上げる。
6,000オール3発でのプロクイーン奪還は記憶に新しい。プレーオフでも大爆発大マクリの決勝進出だが、彼女であれば別に奇跡でもなく日常の事のように思えてしまう。
今期のB2リーグでも楽勝のところから70ポイント沈むもギリギリ踏みとどまり昇級。来期はB1リーグだ。

 

 

100

【魚谷侑未】

最速マーメイドという名をここ数年で何回聞いただろうか?

「麻雀しかない、負けたら自分の価値はない」と言い切る彼女は、結果を出すのが難しいといわれる短期戦での対局実績も凄まじく、勝ちにこだわるその麻雀スタイルに惹かれるファンも多い。
そのモチベーションから来る高い集中力は、桜花連覇の時より一層磨きがかかっている。
彼女も今期C1リーグで、最終戦に小四喜をツモりBリーグへの昇級を決めている。

 

 

100
【吾妻さおり】

現女流桜花。昨年初決勝で見事初戴冠。手役を重視しどこまでも踏み込んでいくスタイルはまさに王道。最終局も桜花の名にふさわしい美しいアガリで逆転。

現桜花であるため、対局の配信はなかったが、特昇リーグでは優勝。1半荘で120P近いプラスをするなど、恐ろしい程の破壊力を見せつけた。
そのため、来期はBリーグへの特別昇級が決まっている。

麻雀プロにはタイトルを獲ってから急激に成長するものがいる。吾妻も今年1年はいろんな意味で環境の変化があったはずだ。
そして今年は狙われる立場となり、受けるプレッシャーは去年以上となるだろう。
「進化した吾妻をお見せしたいと思います」
それはきっと他の3名も同じ。みんなここで勝つための1年を過ごしてきたのだから。

100

 

1回戦 (起家から、安田・吾妻・和久津・魚谷)

東1局、2局と魚谷が連続でアガリをとる。
打点こそないものの魚谷らしいロスの無い手順で安田、和久津の勝負手を潰す。

100

東3局、魚谷、和久津の本命コンビに微妙な選択。
南家・魚谷が9巡目にこのリーチ。

二万三万九万九万九万三索四索五索五筒五筒五筒北北  リーチ  ドラ二万

一見して普通のリーチだが、一万は場に4枚(ドラ表示含め)
それでもツモで1,300、2,600ならば魚谷にとっては当たり前のリーチか。
しかし、オヤの和久津が大チャンス。

二万三万四万七万七万三索四索二筒三筒四筒七筒八筒東

18,000が見えるこの手牌、超攻撃型の和久津でなくても全て押す一手。
当然のように無筋をいくが、終盤安田からもリーチが入り、六筒をしぶしぶチー。
2を魚谷から打ちとり、勝負局を制した価値あるアガリのようにみえた。
が、和久津は7巡目に、

二万三万四万七万七万八万三索四索二筒三筒四筒七筒八筒  ツモ南

この形から八万を切っている。直後に六万をツモり、魚谷のリーチ後八筒ツモ、チーした後に下家の魚谷から二索でロン。
南を残さずとも、六万ツモ切りでアタマを決める手もあるだけに結果論のように見えるが、6,000オールになっていた人も多い事は間違いない。
いや、いつものアマゾネスなら捉えていたように思う。
どこかずれていたのか?

この局の結果がそのまま初日のポイント結果となったようにも見えた。
終了後のインタビューで、和久津本人も悔いていた局であった。

続く東3局1本場、魚谷が痛恨の放銃。
11巡目 西家 安田のリーチ

二万三万三万四万五万三筒三筒四筒五筒六筒  暗カン牌の背九万 上向き九万 上向き牌の背  リーチ  ドラ三万

同巡、南家・魚谷

一万一万二万三万四万五万七万七万三索四索四索五索六索  ツモ四万

ここからタンピンを見、打一万として放銃。
七万が安田のリーチ宣言牌だけに、ここは打七万とするのが魚谷の麻雀ではないだろうか?
ただ、本人もこの瞬間は後悔はなかったのだろう、この後もブレることなくいつもの自分の麻雀を打ち続けるが、アガリを取る事はできず、1人沈みのラススタートとなってしまう。

1回戦成績
吾妻さおり+21.4P 和久津晶+10.6P 安田麻里菜+3.0P 魚谷侑未▲35.0P

100

 

2回戦 (起家から、和久津・吾妻・安田・魚谷)

1回戦トップの吾妻が冴えている。
東2局1本場、オヤの吾妻。5巡目にこのテンパイ

一万二万三万一索二索三索七索八索九索一筒三筒六筒六筒  ドラ五万

44,700点持ちからここはなんとヤミテンを選択。

五索 上向き三万 上向き七万 上向き三筒 上向き七万 上向き

捨て牌はこうで変則的ではあるが、4巡目の三筒をノータイムでツモ切りしており、手役は絞り込めない。
解説陣も満場一致でリーチを打つと。

ところがこれがズバリとハマり、すぐに安田から二筒を打ち取る。
なんと二筒は和久津が暗刻で、すでに山には残っていなかった。
リーチならば安田もまず打たないので、ドラドラで好形1シャンテンの魚谷(すぐにテンパイが入る)の反撃に遭うところであったのだ。

昨年の吾妻はメンゼンで手役を仕上げると常に前に出て打ち合っていた印象だった。
これが進化の形なのだろうか?この後も意外な仕掛けなども使用し、去年とは違う形を見せてきた。

一方、守備から一転して重い一撃も打てるようになった安田、南1局には素晴らしい攻撃を見せてくれた。
オヤの和久津のリーチと、タンヤオ仕掛けの吾妻に対して、

三万三万五万六万六万六索六索七索七索八索発発発  ツモ三万  ドラ五万

ここからドラの五万を勝負!その後ツモ六万でツモり四暗刻のリーチを打つ。
結果は和久津のツモアガリ。
この半荘ラスとなるも、新しい安田が垣間見れた見応えのある1局であった。

2回戦成績
吾妻さおり+17.5P 和久津晶+5.4P 魚谷侑未▲8.9P 安田麻里菜▲14.0P

2回戦終了時
吾妻さおり+38.9P 和久津晶+16.0P 安田麻里菜▲11.0P 魚谷侑未▲43.9P

 

3回戦 (起家から、安田・魚谷・和久津・吾妻)

吾妻の2連勝。昨年の初日爆発を彷彿とさせるスタート。
一方、今年も苦しいスタートは魚谷。まだ12分の2が終わったに過ぎないとはいえ、これ以上離されれば2日目以降が苦しくなるのは明白。

その魚谷がようやくらしいアガリを見せる。

東2局、5巡目の北家・安田の先行リーチ。

二万三万四万五筒五筒六筒七筒八筒南南南白白  リーチ  ドラ八筒

これを受けてオヤの魚谷は宣言牌の四万をチー

五万六万八索九索二筒三筒四筒五筒七筒八筒八筒  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き

現物の八索切り。
河には九索を2枚並べているが、ドラドラだけにタンヤオへの移行も見たバランスの良い手組。
そして、テンパイから時間はかかったものの、終盤に2,000オールのツモアガリ。

五万六万二筒三筒三筒四筒四筒五筒八筒八筒  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き  ツモ七万  ドラ八筒

また、南場のオヤ番でも持ち前の鋭い切れ味を発揮。

南2局 東家・魚谷、リーチを受けながらもしっかり攻め返し流局。

一万二万三万七万八万九万三筒四筒五筒七筒九筒西西西  打西→流局  ドラ八筒

1本場はここから南をポン。

五万六万七索八索三筒七筒八筒九筒南南白白白  ドラ七筒

七万チーで七索単騎。

七索七筒八筒九筒白白白  チー七万 左向き五万 上向き六万 上向き  ポン南南南

さらに、南家・和久津のリーチをうけ、リャンメンに受け変えアガリをもぎ取る。

七索八索七筒八筒九筒白白  チー七万 左向き五万 上向き六万 上向き  ポン南南南  ロン九索

賛否両論ある仕掛けだが、決まるかどうかわからない4,000オールより、受け入れを増やし7,700を狙える手組。
さらにはリーチを受けたのなら、打点を下げてでもアガリ率を優先。
抜群のバランス感覚を持つ、魚谷ならではの見事なアガリである。

2本場

六万七万八万四索五索五筒五筒中中中  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  ロン三索  ドラ七索

3本場、ついに面前で最速の大物手を決める。

二万二万六万七万三索四索五索五索六索七索五筒六筒七筒  ツモ五万  ドラ六索

魚谷麻雀の真骨頂とも言える連荘で、3回戦は魚谷が1人浮きのトップ。
マイナスを一気に取り戻す。

3回戦成績
魚谷侑未+37.3P 吾妻さおり▲3.7P 和久津晶▲12.4P 安田麻里菜▲21.2P

3回戦終了時
吾妻さおり+35.2P 和久津晶+3.6P 魚谷侑未▲6.6P 安田麻里菜▲32.2P

 

4回戦 (起家から、魚谷・和久津・吾妻・安田)

この半荘が初日の最終戦。
昨年のノートップから未だトップの無い安田。
今年は一歩踏み込みを深くしているように見えたが、ようやくその姿勢が形になる。

東4局2本場、オヤ吾妻のリーチ、和久津の仕掛けに対して、苦しい形ながら押し切りハイテイで跳満のツモアガリ。

二万二万二万三万四万六万六万六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ハイテイツモ六万  ドラ七筒

迎えたオヤ番では、絶妙なヤミテンと強引なリーチを使い分け、持ち点を59,700点まで伸ばす。
トータルをプラスに戻し、吾妻にせまる。

ところがここから好きにさせてくれないのがこの面子。
もともと攻撃的な3人は、荒れ場は大歓迎とばかりに、

吾妻 4,000・8,000

二万二万六万六万八万八万九万九万南西西発発  リーチ  ツモ南  ドラ南

魚谷 6,000オール

二万三万四万五万六万二索三索四索二筒三筒四筒七筒七筒  リーチ  ツモ七万  ドラ五索

和久津 2,000・3,900

四万四万五万六万七万四索五索三筒四筒五筒中中中  リーチ  ツモ三索  ドラ三索

点棒を削られ続け、終わってみれば安田は4万点台の普通のトップ。
それでも1人浮き、なにより決定戦でようやくのトップで、少しホッとできたのではないだろうか。

4回戦成績
安田麻里菜+24.7P 吾妻さおり▲1.3P 魚谷侑未▲6.5P 和久津晶▲16.9P

初日終了時
吾妻さおり+33.9P 安田麻里菜▲7.5P 魚谷侑未▲13.1P 和久津晶▲13.3P

 

なんと今年も昨年同様、初日は吾妻の1人浮きで終えた。
参考に去年の初日成績を下記しておく。

第8期女流桜花決定戦 初日終了時成績
吾妻さおり +92.5P
和久津晶  ▲10.3P
安田麻里菜 ▲37.4P
魚谷侑未  ▲44.8P

今年も初日は吾妻のできが良かった。だが、昨年よりポイントが伸びていないのは懸念点なのだろうか?
いや、本人はそうは思っていないはず。これはむしろ成長の証である、と。
こちらから見てもただがむしゃらに向かっていった1年前とは違い、しっかり押し引きのバランスが取れていたように見える。

安田、魚谷も同様。
吾妻の猛攻撃になすすべがなかった昨年とは違い、それぞれが個性、進化をアピールしてきた。

1人和久津がおとなしい。
だが、彼女の後半の追い上げパターンを考えれば、このくらいのマイナスはむしろ丁度いいのかもしれない。

上から下まで一撃で並ぶ点差。
2日目の初戦、4人はどういう戦略を打ってくるのか?
はたして誰が突き抜けるのか?

激戦必至の熱い戦いを見逃すな!

女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記/第9期女流桜花決定戦 初日観戦記 櫻井秀樹

【プロの価値】
奇しくも去年と同じ面子での決勝となり、話題を呼んだ第9期の女流桜花。
プロ連盟にはこの女流桜花とプロクイーンという女流プロのいわば2大タイトルがある。
そしてここ数年、この2つのタイトル戦にほぼこの4名の誰かが絡んでいる。
麻雀という競技の性質上、短期戦で常に同じ人間が勝つということはなかなか起こらない。
ましてやプロを名乗り、日々麻雀にあけくれる者たちの集団ならなおさらだ。
私は麻雀プロとしての価値の求め方は各々いろんな方向性があってよいと思う。
華やかに業界を盛り上げる事ももちろん重要だし、ファンの方々や視聴者に麻雀の楽しみ、醍醐味を伝える事も、麻雀の普及に全力を注ぐのもすばらしいことだろう。
そしてここにいる4名は「自身のプロとしての価値」をどこに見出そうとしているのだろう?
おそらく「勝つこと」が自分の存在価値と捉えているのではないだろうか?
近年の彼女たちの活躍を見ると、そう思わざるをえないし、そうであってほしいとも思う。
 
 
100

【安田麻里菜】
昨年はノートップながらも安定した守備力でマイナスを最小限に抑え勝負を盛り上げた。
今期のプレーオフも一見有利な立場からのスタートに見えるが、実はかなり難しい条件をこなしての決勝進出。
最近はかなり攻撃力もついたという事で是非この1年での進化を見せてもらいたい。
ちなみに安田は、今期のC3リーグを危なげない成績で見事優勝している。
 
 
100

【和久津晶】
ご存じ超攻撃型麻雀アマゾネス。放銃(う)っても放銃ってもその倍アガり返す麻雀はファンを魅了し、勝負を盛り上げる。
6,000オール3発でのプロクイーン奪還は記憶に新しい。プレーオフでも大爆発大マクリの決勝進出だが、彼女であれば別に奇跡でもなく日常の事のように思えてしまう。
今期のB2リーグでも楽勝のところから70ポイント沈むもギリギリ踏みとどまり昇級。来期はB1リーグだ。
 
 
100
【魚谷侑未】
最速マーメイドという名をここ数年で何回聞いただろうか?
「麻雀しかない、負けたら自分の価値はない」と言い切る彼女は、結果を出すのが難しいといわれる短期戦での対局実績も凄まじく、勝ちにこだわるその麻雀スタイルに惹かれるファンも多い。
そのモチベーションから来る高い集中力は、桜花連覇の時より一層磨きがかかっている。
彼女も今期C1リーグで、最終戦に小四喜をツモりBリーグへの昇級を決めている。
 
 
100
【吾妻さおり】
現女流桜花。昨年初決勝で見事初戴冠。手役を重視しどこまでも踏み込んでいくスタイルはまさに王道。最終局も桜花の名にふさわしい美しいアガリで逆転。
現桜花であるため、対局の配信はなかったが、特昇リーグでは優勝。1半荘で120P近いプラスをするなど、恐ろしい程の破壊力を見せつけた。
そのため、来期はBリーグへの特別昇級が決まっている。
麻雀プロにはタイトルを獲ってから急激に成長するものがいる。吾妻も今年1年はいろんな意味で環境の変化があったはずだ。
そして今年は狙われる立場となり、受けるプレッシャーは去年以上となるだろう。
「進化した吾妻をお見せしたいと思います」
それはきっと他の3名も同じ。みんなここで勝つための1年を過ごしてきたのだから。

100

 
1回戦 (起家から、安田・吾妻・和久津・魚谷)
東1局、2局と魚谷が連続でアガリをとる。
打点こそないものの魚谷らしいロスの無い手順で安田、和久津の勝負手を潰す。
100
東3局、魚谷、和久津の本命コンビに微妙な選択。
南家・魚谷が9巡目にこのリーチ。
二万三万九万九万九万三索四索五索五筒五筒五筒北北  リーチ  ドラ二万
一見して普通のリーチだが、一万は場に4枚(ドラ表示含め)
それでもツモで1,300、2,600ならば魚谷にとっては当たり前のリーチか。
しかし、オヤの和久津が大チャンス。
二万三万四万七万七万三索四索二筒三筒四筒七筒八筒東
18,000が見えるこの手牌、超攻撃型の和久津でなくても全て押す一手。
当然のように無筋をいくが、終盤安田からもリーチが入り、六筒をしぶしぶチー。
2を魚谷から打ちとり、勝負局を制した価値あるアガリのようにみえた。
が、和久津は7巡目に、
二万三万四万七万七万八万三索四索二筒三筒四筒七筒八筒  ツモ南
この形から八万を切っている。直後に六万をツモり、魚谷のリーチ後八筒ツモ、チーした後に下家の魚谷から二索でロン。
南を残さずとも、六万ツモ切りでアタマを決める手もあるだけに結果論のように見えるが、6,000オールになっていた人も多い事は間違いない。
いや、いつものアマゾネスなら捉えていたように思う。
どこかずれていたのか?
この局の結果がそのまま初日のポイント結果となったようにも見えた。
終了後のインタビューで、和久津本人も悔いていた局であった。
続く東3局1本場、魚谷が痛恨の放銃。
11巡目 西家 安田のリーチ
二万三万三万四万五万三筒三筒四筒五筒六筒  暗カン牌の背九万 上向き九万 上向き牌の背  リーチ  ドラ三万
同巡、南家・魚谷
一万一万二万三万四万五万七万七万三索四索四索五索六索  ツモ四万
ここからタンピンを見、打一万として放銃。
七万が安田のリーチ宣言牌だけに、ここは打七万とするのが魚谷の麻雀ではないだろうか?
ただ、本人もこの瞬間は後悔はなかったのだろう、この後もブレることなくいつもの自分の麻雀を打ち続けるが、アガリを取る事はできず、1人沈みのラススタートとなってしまう。
1回戦成績
吾妻さおり+21.4P 和久津晶+10.6P 安田麻里菜+3.0P 魚谷侑未▲35.0P

100

 
2回戦 (起家から、和久津・吾妻・安田・魚谷)
1回戦トップの吾妻が冴えている。
東2局1本場、オヤの吾妻。5巡目にこのテンパイ
一万二万三万一索二索三索七索八索九索一筒三筒六筒六筒  ドラ五万
44,700点持ちからここはなんとヤミテンを選択。
五索 上向き三万 上向き七万 上向き三筒 上向き七万 上向き
捨て牌はこうで変則的ではあるが、4巡目の三筒をノータイムでツモ切りしており、手役は絞り込めない。
解説陣も満場一致でリーチを打つと。
ところがこれがズバリとハマり、すぐに安田から二筒を打ち取る。
なんと二筒は和久津が暗刻で、すでに山には残っていなかった。
リーチならば安田もまず打たないので、ドラドラで好形1シャンテンの魚谷(すぐにテンパイが入る)の反撃に遭うところであったのだ。
昨年の吾妻はメンゼンで手役を仕上げると常に前に出て打ち合っていた印象だった。
これが進化の形なのだろうか?この後も意外な仕掛けなども使用し、去年とは違う形を見せてきた。
一方、守備から一転して重い一撃も打てるようになった安田、南1局には素晴らしい攻撃を見せてくれた。
オヤの和久津のリーチと、タンヤオ仕掛けの吾妻に対して、
三万三万五万六万六万六索六索七索七索八索発発発  ツモ三万  ドラ五万
ここからドラの五万を勝負!その後ツモ六万でツモり四暗刻のリーチを打つ。
結果は和久津のツモアガリ。
この半荘ラスとなるも、新しい安田が垣間見れた見応えのある1局であった。
2回戦成績
吾妻さおり+17.5P 和久津晶+5.4P 魚谷侑未▲8.9P 安田麻里菜▲14.0P
2回戦終了時
吾妻さおり+38.9P 和久津晶+16.0P 安田麻里菜▲11.0P 魚谷侑未▲43.9P
 
3回戦 (起家から、安田・魚谷・和久津・吾妻)
吾妻の2連勝。昨年の初日爆発を彷彿とさせるスタート。
一方、今年も苦しいスタートは魚谷。まだ12分の2が終わったに過ぎないとはいえ、これ以上離されれば2日目以降が苦しくなるのは明白。
その魚谷がようやくらしいアガリを見せる。
東2局、5巡目の北家・安田の先行リーチ。
二万三万四万五筒五筒六筒七筒八筒南南南白白  リーチ  ドラ八筒
これを受けてオヤの魚谷は宣言牌の四万をチー
五万六万八索九索二筒三筒四筒五筒七筒八筒八筒  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き
現物の八索切り。
河には九索を2枚並べているが、ドラドラだけにタンヤオへの移行も見たバランスの良い手組。
そして、テンパイから時間はかかったものの、終盤に2,000オールのツモアガリ。
五万六万二筒三筒三筒四筒四筒五筒八筒八筒  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き  ツモ七万  ドラ八筒
また、南場のオヤ番でも持ち前の鋭い切れ味を発揮。
南2局 東家・魚谷、リーチを受けながらもしっかり攻め返し流局。
一万二万三万七万八万九万三筒四筒五筒七筒九筒西西西  打西→流局  ドラ八筒
1本場はここから南をポン。
五万六万七索八索三筒七筒八筒九筒南南白白白  ドラ七筒
七万チーで七索単騎。
七索七筒八筒九筒白白白  チー七万 左向き五万 上向き六万 上向き  ポン南南南
さらに、南家・和久津のリーチをうけ、リャンメンに受け変えアガリをもぎ取る。
七索八索七筒八筒九筒白白  チー七万 左向き五万 上向き六万 上向き  ポン南南南  ロン九索
賛否両論ある仕掛けだが、決まるかどうかわからない4,000オールより、受け入れを増やし7,700を狙える手組。
さらにはリーチを受けたのなら、打点を下げてでもアガリ率を優先。
抜群のバランス感覚を持つ、魚谷ならではの見事なアガリである。
2本場
六万七万八万四索五索五筒五筒中中中  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  ロン三索  ドラ七索
3本場、ついに面前で最速の大物手を決める。
二万二万六万七万三索四索五索五索六索七索五筒六筒七筒  ツモ五万  ドラ六索
魚谷麻雀の真骨頂とも言える連荘で、3回戦は魚谷が1人浮きのトップ。
マイナスを一気に取り戻す。
3回戦成績
魚谷侑未+37.3P 吾妻さおり▲3.7P 和久津晶▲12.4P 安田麻里菜▲21.2P
3回戦終了時
吾妻さおり+35.2P 和久津晶+3.6P 魚谷侑未▲6.6P 安田麻里菜▲32.2P
 
4回戦 (起家から、魚谷・和久津・吾妻・安田)
この半荘が初日の最終戦。
昨年のノートップから未だトップの無い安田。
今年は一歩踏み込みを深くしているように見えたが、ようやくその姿勢が形になる。
東4局2本場、オヤ吾妻のリーチ、和久津の仕掛けに対して、苦しい形ながら押し切りハイテイで跳満のツモアガリ。
二万二万二万三万四万六万六万六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ハイテイツモ六万  ドラ七筒
迎えたオヤ番では、絶妙なヤミテンと強引なリーチを使い分け、持ち点を59,700点まで伸ばす。
トータルをプラスに戻し、吾妻にせまる。
ところがここから好きにさせてくれないのがこの面子。
もともと攻撃的な3人は、荒れ場は大歓迎とばかりに、
吾妻 4,000・8,000
二万二万六万六万八万八万九万九万南西西発発  リーチ  ツモ南  ドラ南
魚谷 6,000オール
二万三万四万五万六万二索三索四索二筒三筒四筒七筒七筒  リーチ  ツモ七万  ドラ五索
和久津 2,000・3,900
四万四万五万六万七万四索五索三筒四筒五筒中中中  リーチ  ツモ三索  ドラ三索
点棒を削られ続け、終わってみれば安田は4万点台の普通のトップ。
それでも1人浮き、なにより決定戦でようやくのトップで、少しホッとできたのではないだろうか。
4回戦成績
安田麻里菜+24.7P 吾妻さおり▲1.3P 魚谷侑未▲6.5P 和久津晶▲16.9P
初日終了時
吾妻さおり+33.9P 安田麻里菜▲7.5P 魚谷侑未▲13.1P 和久津晶▲13.3P
 
なんと今年も昨年同様、初日は吾妻の1人浮きで終えた。
参考に去年の初日成績を下記しておく。
第8期女流桜花決定戦 初日終了時成績
吾妻さおり +92.5P
和久津晶  ▲10.3P
安田麻里菜 ▲37.4P
魚谷侑未  ▲44.8P
今年も初日は吾妻のできが良かった。だが、昨年よりポイントが伸びていないのは懸念点なのだろうか?
いや、本人はそうは思っていないはず。これはむしろ成長の証である、と。
こちらから見てもただがむしゃらに向かっていった1年前とは違い、しっかり押し引きのバランスが取れていたように見える。
安田、魚谷も同様。
吾妻の猛攻撃になすすべがなかった昨年とは違い、それぞれが個性、進化をアピールしてきた。
1人和久津がおとなしい。
だが、彼女の後半の追い上げパターンを考えれば、このくらいのマイナスはむしろ丁度いいのかもしれない。
上から下まで一撃で並ぶ点差。
2日目の初戦、4人はどういう戦略を打ってくるのか?
はたして誰が突き抜けるのか?
激戦必至の熱い戦いを見逃すな!

第12期プロクイーン決定戦観戦記~前編~ 黒木 真生

褐色の女戦士

アマゾネスとはギリシャ神話に登場する女戦士の部族で「弓を射る際にジャマ」という理由で左の乳房を切り落としていたというほど「戦闘」に特化したヤバいオンナたちのことである。
もちろんこれは神話なので、フィクションかあるいは随分と「盛った」話なのだろうが、かなりインパクトがあって、強い女性を表現するのに良いなぁと、以前から思っていた。

特に私は、プロ雀士のキャッチというかニックネームをつけるよう依頼されることが多いので「アマゾネス」は、いつか女性プロの誰かにつけたいなと思っていた。
だが、あまりこの言葉が似合う人が現れず、温存し続けていたのだが、2年前、やっと「アマゾネス」の引き取り手が現れた。

日焼けサロンで仕上げた褐色の肌、手足が長くて長身で、気の強そうな面構え。
まさに「アマゾネス」にピッタリだ。
和久津晶プロが「麻雀最強戦2012」に出場する際に、私は迷わず「アマゾネス」をつけさせてもらった。
ただ「麻雀アマゾネス」だけでは見てくれだけでつけたと思われそうだったので、あえて前に超攻撃型をつけて強調した。

現在ではこの通り名をご本人も気に入ってくれているようで、今回のインタビューの際には
「私が本当に戦士だとしたら、負けたら死ぬんです。でも私は死にたくないから絶対に勝つ。そういう気持ちでやっているし、負けた過去の自分は死んだと思って、新たな気持で戦いに臨んでいます」
とコメントをしてくれた。

この人、ちょっと喋らせただけでも凄いなーと思う。
口先だけで「戦士」とか「死ぬ」とか言ってもサムイだけなのだが、彼女が言うと迫力があるのだ。

たかがオンナの麻雀。
もしかしたら、世間一般から女性プロの麻雀はそんな風に見られているかもしれない。
だが、そんな先入観を蹴散らしてしまうほどの迫力が彼女の打ちざまにはある。

彼女が筋肉を隆起させるほど力を込めてツモり、バイオハザードマーク付きの超・ド危険牌をガツーン!と打ち付け、そして本当に当たる牌だけはピタリと止める戦闘シーンを見たら、誰も軽口を叩けなくなる。

だから彼女は、女性プロやプロ雀士そのものの存在を高めてくれるような凄い選手だと私は思っているのである。

和久津はそんな凄い人なのだが、ここ数年で優勝は1回だけ。
3年前のプロクイーンを獲得して以来、タイトル戦で勝てていない。

ただ、本当に惜しい「あと1牌」で優勝を逃した準優勝がいくつもあった。
前回のプロクイーン決勝、その後にあった女流桜花、マスターズもそうだった。
全部、試合を面白くするだけ面白くして、栄冠は他人に奪われてきた。

麻雀のゲーム性をご存知の皆さんには釈迦に説法かもしれないが、3年間で1回だけ決勝に残って1回優勝することよりも、3回準優勝で優勝はゼロという方が難しい。どちらの選手が強いかと言えば後者である。でも、麻雀の「プロ」としては前者が圧倒的にエラい。

和久津も当然それを身にしみて分かっているから、インタビューで「死ぬ」という物騒な表現を使ったのだろう。

 

立ちはだかる天才

だが、さすがに今回だけはアマゾネスもダメかと思った。
ダメというのは勝ち負けの話だけではなくて、良いところを見せることすらできずに試合が終わってしまうのではないかという心配があったのだ。

「天才すぎるオンナ雀士」茅森早香プロ(一般社団法人最高位戦日本プロ麻雀協会所属)が、あまりにも絶好調だったからである。

初日、茅森プロはトップ、2着、2着、トップで+110.6ポイント。
対する和久津は2番手で+43.2ポイント。
実はこのポイント差は大したことがないと思っていたのだが、2日目の戦いぶりに「天才」を感じたため、さすがの和久津も無理かなーと思ったのだ。

茅森プロは初日はどちらかといえば、ツイていた。
もちろん、ただツイていただけではなくて、天才がツイていたわけである。

ある程度のレベルのプロになれば、調子が良ければ必ず勝つ。
だから茅森プロは当然勝ったのだが、翌日、風向きが変わってからの戦いぶりを見て、やっぱりこの人は凄い打ち手だなーと感心したのだ。

実は彼女のキャッチを名づけたのも私である。
和久津と同じく「麻雀最強戦」出場に際して、実行委員長の金ポンこと金本晃さんから依頼されてつけた。あの、いつも「誰だ!」という挨拶をやる生真面目そうな東大卒の編集者である。

最初は金ポンも「えー! そんな簡単に天才とかつけていいんですか? 面倒くさいからテキトーにつけたんでしょ」とニヤニヤしながら言ってきたし、ニコ生のコメントでも「この人は誰?」とか「天才なわけない」「テキトーすぎるキャッチ」という反応ばかりだった。

だが、試合が始まってみれば「本当に天才?」とか「すげー」というコメントだらけになり、茅森プロは優勝。金ポンも「いやー黒木さんの目は確かでしたねー」と手のひらをクルーっと返してきた。

金ポンにはドヤ顔した私だったが、いったいどういうところが天才なのかというと、実はよくわかっていない。彼女はあまり喋ってくれないし、他団体の方ということもあって、全容はつかみきれていないというのが正直なところだ。

ただ、これまでに麻雀の質問や取材をさせていただいた中でいえば、基礎雀力がとてもしっかりしている上にめちゃめちゃカンが鋭いのだと思う。場況についても明確に読まれているし、手作りやゲーム回しなど、論理的な部分について確認すると「なるほど!」と思える答えが返ってくる。

ただ、普段は感覚派で無口な人なので、こちらが聞かないと教えてくれない。
前に「近代麻雀オリジナル」で私が連載していた「強者の一打」で取材した際は、実戦譜を見せて「相手のリーチは何待ち?」と聞いたら、少し嬉しそうな声のトーンになって「ちょっと待ってください。えーっとねぇ、これは…たぶん四筒七筒」と一点で当てたこともあった。
他に通っていないスジもあったし、一点読みができるわけはないと思ったのだが「なんでそう思ったんですか?」と聞いても「んー、何となく。でも、当たってるでしょ?」としか返ってこなかった。

こんな調子の人なので、何となく天才っぽく見えるのである。
また、卓から離れた時の茅森プロは終始脱力感にあふれていて、対局前のインタビューなどでも「ヤル気ゼロ」にしか見えない。本人は「ヤル気あります」と言うのだが、まったく覇気が感じられなくて、軍隊ならブン殴られるぞ、というぐらいの態度なのである。

だから5回戦終了時点で首位に立ち、最初に抜け番の選択権が与えられた時も迷わず「明日の最初」と答えた。つまり7回戦である。

翌日、少しでも長く寝てから来たいというのがその理由で、自分がいない会場でどんな戦いが行われているかということには、ほとんど興味がない。否、たぶん質問したら「興味なくはないけど、朝は眠いので」という感じなのだろう。

だが、彼女のこの「気負わなさ」が勝負に奏功し、天才性となって現れるのであろう。

二索四索五索六索六索七索七索八索白白  ポン南南南  ドラ白

2日目の茅森プロの最初の半荘、8回戦の東2局2本場6巡目。
親の宮内こずえがソーズを余らせずに満貫のテンパイ。即、茅森プロが三索をつかみこの手に飛び込んだ。

宮内の捨て牌はソーズのホンイツがミエミエであったが、2枚切れの東が出たばかりで、テンパイを警戒してベタオリするには早過ぎる。茅森プロも1シャンテンだったので、この放銃は仕方がないだろう。

また、南1局でも不運と言える放銃があった。
9巡目に親の和久津からリーチが入っている状況で10巡目にこの手牌。

二万二万四万五万四筒六筒六筒七筒八筒二索二索三索五索  ツモ四索  ドラ九筒

二万二索も無スジなのだが、茅森プロが選んだのは二万の方で、無事通過。実はどちらを切ってもリーチには当たらなかったのだが、次巡、当然もう1回二万を切ると宮内から「ロン」の声。
茅森プロがトイツ落としをしている間に宮内が二万五万待ちでテンパイしたのだ。
点数こそ3,900点で済んだが、あまりにも「間」の悪い放銃。指運が悪いとも言える。

この2つの放銃は仕方ないと言えば仕方ないのだが、彼女は「仕方ない」で終わらせず、その後の対処に活かすから天才じゃないかと思ってしまうのだ。

南3局、南家の茅森は8巡目に以下の手でヤミテンを選択。打牌は当然二索だ。

一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒二索六索七索九索九索  ツモ五索  ドラ二筒

これはまぁセオリー通りと言えるのだが、10巡目に、宮内が以下の捨て牌でリーチをかけてきた。

八索 上向き南西白発四万 上向き八筒 上向き二筒 上向き一万 上向き発

この時点での点数状況は宮内がトップ目で47,300点持ち。茅森はわずか7,100点持ちのダンラス。
そして一発で六万をツモった茅森プロは、大人しく八筒を切った。

待ちはペン七筒と良くはないかもしれない。宮内がリーチをかけてきたので、他家からは出なくなった。しかし、親がオーラスに残っているとはいえ、リーチをかければ満貫になる手が目の前にある。相手はトップでこちらはラス。直撃できればオーラス逆転へ向けてはずみがつく。そもそもラスより下はないのだから、仮に悪い目が出たところで、大したダメージにはならないだろう。

そうやって肯定的な材料を用意して、六万を切ってリーチをかける人も多いと思うが、茅森プロはアッサリと諦めることができる。いわゆる勇気ある撤退ができる打ち手なのだ。

これが正しい選択かどうか、私には判断ができないが、結果的にはこれが正解だった。

一索二索三索五索六索七索五筒五筒七筒七筒七筒東東

宮内のリーチはこの手で、茅森プロのペン七筒はすでに純カラ。
また、リーチの2巡後、茅森プロは高目の東をつかんでいた。
もしヤミテンだったとしても、六万を勝負していたらこの東は止まらなかっただろう。

結果は、それでも安目の五筒ツモアガリで2,600点オールと宮内の好調ぶりが目立つアガリとなったが、私はこの茅森プロの我慢強さに驚かされた。

流れ論者のベテラン男性プロなら、こういった芸当も平気でやりそうなのだが、女性プロでこういった打ち回しができる人は少ないと思う。

対局から約1ヶ月後、茅森プロに訪ねてみたら「覚えてないです」と言われてしまったが、根気よくそれまでの試合展開を説明すると「ああ、まず宮内さんに向かっていく必要があまりなかったから」という言葉がもらえた。追い上げてきている宮内ではあるが、ポイント差を考えればまだ圏外。直撃さえ避けていれば問題はない。

対抗すべき相手は和久津であるから、先ほどの一通、和久津からのリーチなら押したのだろうか。
「いや、誰が相手でも待ちが悪ければ行かないです。それたぶん、待ち悪かったんですよね」
ペンチャン待ちだったから、という理由ではない。
場の状況的に七筒が苦しかったという判断があったのだ。

「私、待ちが悪かったらほとんどリーチしないんです。リャンメンでも厳しいと思ったら掛けません」

見ているこちらは、それまでの試合展開を考えてのヤミテンとオリの判断かと思ったが、茅森プロ本人の理由はいたって平面的なものであった。

こうやって聞いてしまうとあまり面白くない理由なのだが、私が関心するのは、あの舞台で、あの雰囲気の中でそうやって冷静に判断できることである。自分で決めたルールを貫き通すことができる鉄のメンタルがあるからこそ「天才」と呼ばれるのだと思う。

8回戦が終わって、和久津と茅森プロのポイント差は倍満1回分以内にまで縮まった。

勢いを考えたら和久津の逆転が予想されそうなのだが、9回戦は和久津が抜け番。
そこで茅森はキッチリ浮きをキープし、10回戦にはトップをとって、再度2位以下を引き離した。

やっぱり「天才すぎるオンナ雀士」は強すぎるのではないかと思ったのである。

(後編に続く)

プロクイーン決定戦 決勝観戦記/第12期プロクイーン決定戦観戦記~前編~ 黒木 真生

褐色の女戦士
アマゾネスとはギリシャ神話に登場する女戦士の部族で「弓を射る際にジャマ」という理由で左の乳房を切り落としていたというほど「戦闘」に特化したヤバいオンナたちのことである。
もちろんこれは神話なので、フィクションかあるいは随分と「盛った」話なのだろうが、かなりインパクトがあって、強い女性を表現するのに良いなぁと、以前から思っていた。
特に私は、プロ雀士のキャッチというかニックネームをつけるよう依頼されることが多いので「アマゾネス」は、いつか女性プロの誰かにつけたいなと思っていた。
だが、あまりこの言葉が似合う人が現れず、温存し続けていたのだが、2年前、やっと「アマゾネス」の引き取り手が現れた。
日焼けサロンで仕上げた褐色の肌、手足が長くて長身で、気の強そうな面構え。
まさに「アマゾネス」にピッタリだ。
和久津晶プロが「麻雀最強戦2012」に出場する際に、私は迷わず「アマゾネス」をつけさせてもらった。
ただ「麻雀アマゾネス」だけでは見てくれだけでつけたと思われそうだったので、あえて前に超攻撃型をつけて強調した。
現在ではこの通り名をご本人も気に入ってくれているようで、今回のインタビューの際には
「私が本当に戦士だとしたら、負けたら死ぬんです。でも私は死にたくないから絶対に勝つ。そういう気持ちでやっているし、負けた過去の自分は死んだと思って、新たな気持で戦いに臨んでいます」
とコメントをしてくれた。
この人、ちょっと喋らせただけでも凄いなーと思う。
口先だけで「戦士」とか「死ぬ」とか言ってもサムイだけなのだが、彼女が言うと迫力があるのだ。
たかがオンナの麻雀。
もしかしたら、世間一般から女性プロの麻雀はそんな風に見られているかもしれない。
だが、そんな先入観を蹴散らしてしまうほどの迫力が彼女の打ちざまにはある。
彼女が筋肉を隆起させるほど力を込めてツモり、バイオハザードマーク付きの超・ド危険牌をガツーン!と打ち付け、そして本当に当たる牌だけはピタリと止める戦闘シーンを見たら、誰も軽口を叩けなくなる。
だから彼女は、女性プロやプロ雀士そのものの存在を高めてくれるような凄い選手だと私は思っているのである。
和久津はそんな凄い人なのだが、ここ数年で優勝は1回だけ。
3年前のプロクイーンを獲得して以来、タイトル戦で勝てていない。
ただ、本当に惜しい「あと1牌」で優勝を逃した準優勝がいくつもあった。
前回のプロクイーン決勝、その後にあった女流桜花、マスターズもそうだった。
全部、試合を面白くするだけ面白くして、栄冠は他人に奪われてきた。
麻雀のゲーム性をご存知の皆さんには釈迦に説法かもしれないが、3年間で1回だけ決勝に残って1回優勝することよりも、3回準優勝で優勝はゼロという方が難しい。どちらの選手が強いかと言えば後者である。でも、麻雀の「プロ」としては前者が圧倒的にエラい。
和久津も当然それを身にしみて分かっているから、インタビューで「死ぬ」という物騒な表現を使ったのだろう。
 
立ちはだかる天才
だが、さすがに今回だけはアマゾネスもダメかと思った。
ダメというのは勝ち負けの話だけではなくて、良いところを見せることすらできずに試合が終わってしまうのではないかという心配があったのだ。
「天才すぎるオンナ雀士」茅森早香プロ(一般社団法人最高位戦日本プロ麻雀協会所属)が、あまりにも絶好調だったからである。
初日、茅森プロはトップ、2着、2着、トップで+110.6ポイント。
対する和久津は2番手で+43.2ポイント。
実はこのポイント差は大したことがないと思っていたのだが、2日目の戦いぶりに「天才」を感じたため、さすがの和久津も無理かなーと思ったのだ。
茅森プロは初日はどちらかといえば、ツイていた。
もちろん、ただツイていただけではなくて、天才がツイていたわけである。
ある程度のレベルのプロになれば、調子が良ければ必ず勝つ。
だから茅森プロは当然勝ったのだが、翌日、風向きが変わってからの戦いぶりを見て、やっぱりこの人は凄い打ち手だなーと感心したのだ。
実は彼女のキャッチを名づけたのも私である。
和久津と同じく「麻雀最強戦」出場に際して、実行委員長の金ポンこと金本晃さんから依頼されてつけた。あの、いつも「誰だ!」という挨拶をやる生真面目そうな東大卒の編集者である。
最初は金ポンも「えー! そんな簡単に天才とかつけていいんですか? 面倒くさいからテキトーにつけたんでしょ」とニヤニヤしながら言ってきたし、ニコ生のコメントでも「この人は誰?」とか「天才なわけない」「テキトーすぎるキャッチ」という反応ばかりだった。
だが、試合が始まってみれば「本当に天才?」とか「すげー」というコメントだらけになり、茅森プロは優勝。金ポンも「いやー黒木さんの目は確かでしたねー」と手のひらをクルーっと返してきた。
金ポンにはドヤ顔した私だったが、いったいどういうところが天才なのかというと、実はよくわかっていない。彼女はあまり喋ってくれないし、他団体の方ということもあって、全容はつかみきれていないというのが正直なところだ。
ただ、これまでに麻雀の質問や取材をさせていただいた中でいえば、基礎雀力がとてもしっかりしている上にめちゃめちゃカンが鋭いのだと思う。場況についても明確に読まれているし、手作りやゲーム回しなど、論理的な部分について確認すると「なるほど!」と思える答えが返ってくる。
ただ、普段は感覚派で無口な人なので、こちらが聞かないと教えてくれない。
前に「近代麻雀オリジナル」で私が連載していた「強者の一打」で取材した際は、実戦譜を見せて「相手のリーチは何待ち?」と聞いたら、少し嬉しそうな声のトーンになって「ちょっと待ってください。えーっとねぇ、これは…たぶん四筒七筒」と一点で当てたこともあった。
他に通っていないスジもあったし、一点読みができるわけはないと思ったのだが「なんでそう思ったんですか?」と聞いても「んー、何となく。でも、当たってるでしょ?」としか返ってこなかった。
こんな調子の人なので、何となく天才っぽく見えるのである。
また、卓から離れた時の茅森プロは終始脱力感にあふれていて、対局前のインタビューなどでも「ヤル気ゼロ」にしか見えない。本人は「ヤル気あります」と言うのだが、まったく覇気が感じられなくて、軍隊ならブン殴られるぞ、というぐらいの態度なのである。
だから5回戦終了時点で首位に立ち、最初に抜け番の選択権が与えられた時も迷わず「明日の最初」と答えた。つまり7回戦である。
翌日、少しでも長く寝てから来たいというのがその理由で、自分がいない会場でどんな戦いが行われているかということには、ほとんど興味がない。否、たぶん質問したら「興味なくはないけど、朝は眠いので」という感じなのだろう。
だが、彼女のこの「気負わなさ」が勝負に奏功し、天才性となって現れるのであろう。
二索四索五索六索六索七索七索八索白白  ポン南南南  ドラ白
2日目の茅森プロの最初の半荘、8回戦の東2局2本場6巡目。
親の宮内こずえがソーズを余らせずに満貫のテンパイ。即、茅森プロが三索をつかみこの手に飛び込んだ。
宮内の捨て牌はソーズのホンイツがミエミエであったが、2枚切れの東が出たばかりで、テンパイを警戒してベタオリするには早過ぎる。茅森プロも1シャンテンだったので、この放銃は仕方がないだろう。
また、南1局でも不運と言える放銃があった。
9巡目に親の和久津からリーチが入っている状況で10巡目にこの手牌。
二万二万四万五万四筒六筒六筒七筒八筒二索二索三索五索  ツモ四索  ドラ九筒
二万二索も無スジなのだが、茅森プロが選んだのは二万の方で、無事通過。実はどちらを切ってもリーチには当たらなかったのだが、次巡、当然もう1回二万を切ると宮内から「ロン」の声。
茅森プロがトイツ落としをしている間に宮内が二万五万待ちでテンパイしたのだ。
点数こそ3,900点で済んだが、あまりにも「間」の悪い放銃。指運が悪いとも言える。
この2つの放銃は仕方ないと言えば仕方ないのだが、彼女は「仕方ない」で終わらせず、その後の対処に活かすから天才じゃないかと思ってしまうのだ。
南3局、南家の茅森は8巡目に以下の手でヤミテンを選択。打牌は当然二索だ。
一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒二索六索七索九索九索  ツモ五索  ドラ二筒
これはまぁセオリー通りと言えるのだが、10巡目に、宮内が以下の捨て牌でリーチをかけてきた。
八索 上向き南西白発四万 上向き八筒 上向き二筒 上向き一万 上向き発
この時点での点数状況は宮内がトップ目で47,300点持ち。茅森はわずか7,100点持ちのダンラス。
そして一発で六万をツモった茅森プロは、大人しく八筒を切った。
待ちはペン七筒と良くはないかもしれない。宮内がリーチをかけてきたので、他家からは出なくなった。しかし、親がオーラスに残っているとはいえ、リーチをかければ満貫になる手が目の前にある。相手はトップでこちらはラス。直撃できればオーラス逆転へ向けてはずみがつく。そもそもラスより下はないのだから、仮に悪い目が出たところで、大したダメージにはならないだろう。
そうやって肯定的な材料を用意して、六万を切ってリーチをかける人も多いと思うが、茅森プロはアッサリと諦めることができる。いわゆる勇気ある撤退ができる打ち手なのだ。
これが正しい選択かどうか、私には判断ができないが、結果的にはこれが正解だった。
一索二索三索五索六索七索五筒五筒七筒七筒七筒東東
宮内のリーチはこの手で、茅森プロのペン七筒はすでに純カラ。
また、リーチの2巡後、茅森プロは高目の東をつかんでいた。
もしヤミテンだったとしても、六万を勝負していたらこの東は止まらなかっただろう。
結果は、それでも安目の五筒ツモアガリで2,600点オールと宮内の好調ぶりが目立つアガリとなったが、私はこの茅森プロの我慢強さに驚かされた。
流れ論者のベテラン男性プロなら、こういった芸当も平気でやりそうなのだが、女性プロでこういった打ち回しができる人は少ないと思う。
対局から約1ヶ月後、茅森プロに訪ねてみたら「覚えてないです」と言われてしまったが、根気よくそれまでの試合展開を説明すると「ああ、まず宮内さんに向かっていく必要があまりなかったから」という言葉がもらえた。追い上げてきている宮内ではあるが、ポイント差を考えればまだ圏外。直撃さえ避けていれば問題はない。
対抗すべき相手は和久津であるから、先ほどの一通、和久津からのリーチなら押したのだろうか。
「いや、誰が相手でも待ちが悪ければ行かないです。それたぶん、待ち悪かったんですよね」
ペンチャン待ちだったから、という理由ではない。
場の状況的に七筒が苦しかったという判断があったのだ。
「私、待ちが悪かったらほとんどリーチしないんです。リャンメンでも厳しいと思ったら掛けません」
見ているこちらは、それまでの試合展開を考えてのヤミテンとオリの判断かと思ったが、茅森プロ本人の理由はいたって平面的なものであった。
こうやって聞いてしまうとあまり面白くない理由なのだが、私が関心するのは、あの舞台で、あの雰囲気の中でそうやって冷静に判断できることである。自分で決めたルールを貫き通すことができる鉄のメンタルがあるからこそ「天才」と呼ばれるのだと思う。

8回戦が終わって、和久津と茅森プロのポイント差は倍満1回分以内にまで縮まった。
勢いを考えたら和久津の逆転が予想されそうなのだが、9回戦は和久津が抜け番。
そこで茅森はキッチリ浮きをキープし、10回戦にはトップをとって、再度2位以下を引き離した。
やっぱり「天才すぎるオンナ雀士」は強すぎるのではないかと思ったのである。
(後編に続く)

第27期チャンピオンズリーグ最終節(1月)成績表

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 岡田 茂 18.7 36.7 106.5 44.2 18.5 224.6
2 客野 直 13.6 60.1 118.2 ▲ 32.9 61.0 220.0
3 吉田 直 53.3 ▲ 29.7 10.9 79.6 45.5 159.6
4 小町 拓也 14.4 5.6 28.7 54.1 50.6 153.4
5 新谷 翔平 69.8 34.2 26.5 7.0 10.1 147.6
6 西田 修 ▲ 4.4 51.2 39.5 20.8 36.2 143.3
7 内川 幸太郎 ▲ 4.9 38.9 34.9 32.5 37.1 138.5
8 白鳥 翔 92.9 ▲ 38.9 1.1 37.7 40.9 133.7
9 山田 学武 3.0 38.1 58.3 25.4 ▲ 1.3 123.5
10 藤島 健二郎 ▲ 29.9 0.8 9.6 43.5 81.8 105.8
11 西川 淳 74.2 ▲ 6.6 50.6 49.4 ▲ 70.0 97.6
12 冨田 久志 36.0 12.1 25.6 42.7 ▲ 19.5 96.9
13 安達 紘文 ▲ 10.2 10.7 44.7 50.7 ▲ 4.3 91.6
14 瀬戸熊 直樹 25.7 25.2 ▲ 7.1 33.0 7.1 83.9
15 藤原 隆弘 ▲ 25.2 ▲ 32.3 54.9 25.5 57.4 80.3
16 末松 隆文 ▲ 9.0 22.9 40.0 17.5 5.1 76.5
17 小車 祥 ▲ 6.3 75.1 43.8 ▲ 6.3 ▲ 31.4 74.9
18 一井 慎也 73.1 ▲ 18.1 ▲ 31.7 37.0 12.9 73.2
19 西川 舞 ▲ 7.0 85.0 ▲ 15.6 40.9 ▲ 30.3 73.0
20 中 寿文 ▲ 7.2 11.1 10.9 19.0 36.8 70.6
21 ケネス・徳田 35.8 93.6 ▲ 5.1 3.7 ▲ 61.0 67.0
22 石川 正明 0.3 44.8 ▲ 42.1 60.2 ▲ 1.0 62.2
23 吉野 敦志 14.5 ▲ 1.4 28.6 35.0 ▲ 16.6 60.1
24 安田 麻里菜 62.9 14.4 ▲ 18.0 48.0 ▲ 52.3 55.0
25 山中 翼 52.2 ▲ 31.9 36.5 14.2 ▲ 20.5 50.5
26 水越 京子 35.7 24.4 43.3 10.1 ▲ 63.5 50.0
27 小川 拓麻 ▲ 15.1 23.5 19.6 ▲ 4.6 20.5 43.9
28 本田 朋広 7.5 47.6 33.0 3.8 ▲ 48.7 43.2
29 小笠原 奈央 ▲ 1.2 6.6 8.8 ▲ 5.6 32.1 40.7
30 東谷 達矢 58.4 77.8 ▲ 28.6 ▲ 62.9 ▲ 14.1 30.6
31 新井 駿一 ▲ 8.5 81.8 63.8 ▲ 29.3 ▲ 81.6 26.2
32 七瀬 真実 ▲ 23.9 ▲ 21.4 23.9 46.5 ▲ 8.2 16.9
33 紺野 真太郎 ▲ 24.5 28.9 24.6 ▲ 1.3 ▲ 15.2 12.5
34 手塚 紗掬 ▲ 58.4 35.0 31.7 54.1 ▲ 52.3 10.1
35 安藤 友一 ▲ 28.1 ▲ 9.0 5.2 30.1 10.7 8.9
36 末続 ヒロトシ ▲ 36.4 ▲ 13.1 ▲ 2.4 48.7 10.6 7.4
37 柴田 弘幸 ▲ 8.8 ▲ 3.0 ▲ 54.6 9.8 62.9 6.3
38 山口 大和 62.4 15.8 ▲ 20.5 ▲ 13.3 ▲ 41.1 3.3
39 阿部 謙一 ▲ 7.0 38.4 ▲ 3.5 ▲ 9.6 ▲ 21.7 ▲ 3.4
40 鳥越 真仁 ▲ 6.3 ▲ 6.3 ▲ 47.7 115.9 ▲ 60.6 ▲ 5.0
41 三田 晋也 38.3 ▲ 19.2 4.9 ▲ 30.2 0.6 ▲ 5.6
42 杉浦 勘介 ▲ 29.4 37.9 ▲ 11.4 18.6 ▲ 32.0 ▲ 16.3
43 山田 浩之 ▲ 67.4 ▲ 15.5 37.8 ▲ 7.7 31.2 ▲ 21.6
44 中野 妙子 ▲ 25.3 38.9 6.6 ▲ 19.3 ▲ 23.0 ▲ 22.1
45 松岡 昭彦 ▲ 7.0 54.9 ▲ 26.7 ▲ 3.9 ▲ 42.1 ▲ 24.8
46 相沢 かおる 32.7 28.6 ▲ 39.1 ▲ 37.8 ▲ 11.4 ▲ 27.0
47 清原 継光 ▲ 11.5 ▲ 25.5 ▲ 11.1 ▲ 0.5 18.5 ▲ 30.1
48 福島 佑一 2.9 ▲ 3.6 ▲ 1.2 ▲ 34.5 ▲ 7.1 ▲ 43.5
49 三好 直幸 ▲ 11.8 ▲ 16.7 20.7 ▲ 10.4 ▲ 30.4 ▲ 48.6
50 古橋 崇志 ▲ 20.0 ▲ 22.1 8.7 ▲ 9.9 ▲ 5.6 ▲ 48.9
51 土井 悟 ▲ 47.6 ▲ 52.0 57.4 43.7 ▲ 52.7 ▲ 51.2
52 高宮 まり ▲ 0.9 5.3 37.5 ▲ 72.8 ▲ 20.7 ▲ 51.6
53 太田 優介 ▲ 48.3 ▲ 11.5 1.2 18.4 ▲ 18.0 ▲ 58.2
54 石橋 和也 13.2 ▲ 21.4 ▲ 15.1 ▲ 36.1 ▲ 4.2 ▲ 63.6
55 山井 弘 23.7 ▲ 75.3 ▲ 18.5 5.4 ▲ 0.5 ▲ 65.2
56 樋口 徹 ▲ 7.1 ▲ 2.7 ▲ 71.0 ▲ 14.2 26.8 ▲ 68.2
57 安村 浩司 ▲ 19.6 ▲ 31.6 22.0 ▲ 0.2 ▲ 45.8 ▲ 75.2
58 須浦 正裕 ▲ 17.2 ▲ 0.8 ▲ 21.5 ▲ 17.1 ▲ 23.1 ▲ 79.7
59 中村 慎吾 ▲ 25.2 ▲ 54.0 22.5 ▲ 10.3 ▲ 13.9 ▲ 80.9
60 田中 史孝 23.2 ▲ 56.8 ▲ 9.4 ▲ 29.4 ▲ 31.7 ▲ 104.1
61 永井 勝晴 ▲ 23.8 46.8 ▲ 21.4 ▲ 82.9 ▲ 37.9 ▲ 119.2
62 中村 毅 16.3 ▲ 13.1 ▲ 49.3 0.2 ▲ 79.5 ▲ 125.4
63 犬見 武史 ▲ 41.2 ▲ 5.1 ▲ 6.1 ▲ 42.3 ▲ 33.0 ▲ 127.7
64 大木 亮典 3.8 ▲ 11.7 ▲ 82.0 44.5 ▲ 83.6 ▲ 129.0
65 吾妻 さおり ▲ 91.2 8.2 20.2 ▲ 2.8 ▲ 71.2 ▲ 136.8
66 桶本 篤史 ▲ 94.5 98.3 ▲ 34.8 ▲ 24.9 ▲ 82.7 ▲ 138.6
67 黒木 真生 ▲ 29.8 ▲ 16.9 12.5 ▲ 82.5 敗退
68 童瞳 3.8 ▲ 23.4 ▲ 85.2 敗退
69 室伏 理麻 ▲ 36.2 ▲ 55.9 ▲ 13.0 敗退
70 西島 一彦 ▲ 72.0 ▲ 35.8 敗退
71 藤本 哲也 3.3 ▲ 27.0 ▲ 88.1 敗退
72 井出 一寛 11.5 ▲ 28.1 ▲ 10.9 ▲ 84.5 敗退
73 伊賀 則夫 ▲ 47.0 16.2 ▲ 54.4 ▲ 26.9 敗退
74 真光 祐尚 ▲ 16.6 ▲ 43.8 ▲ 62.7 敗退

JPML WRCリーグ 成績表/第27期チャンピオンズリーグ最終節(1月)成績表

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 岡田 茂 18.7 36.7 106.5 44.2 18.5 224.6
2 客野 直 13.6 60.1 118.2 ▲ 32.9 61.0 220.0
3 吉田 直 53.3 ▲ 29.7 10.9 79.6 45.5 159.6
4 小町 拓也 14.4 5.6 28.7 54.1 50.6 153.4
5 新谷 翔平 69.8 34.2 26.5 7.0 10.1 147.6
6 西田 修 ▲ 4.4 51.2 39.5 20.8 36.2 143.3
7 内川 幸太郎 ▲ 4.9 38.9 34.9 32.5 37.1 138.5
8 白鳥 翔 92.9 ▲ 38.9 1.1 37.7 40.9 133.7
9 山田 学武 3.0 38.1 58.3 25.4 ▲ 1.3 123.5
10 藤島 健二郎 ▲ 29.9 0.8 9.6 43.5 81.8 105.8
11 西川 淳 74.2 ▲ 6.6 50.6 49.4 ▲ 70.0 97.6
12 冨田 久志 36.0 12.1 25.6 42.7 ▲ 19.5 96.9
13 安達 紘文 ▲ 10.2 10.7 44.7 50.7 ▲ 4.3 91.6
14 瀬戸熊 直樹 25.7 25.2 ▲ 7.1 33.0 7.1 83.9
15 藤原 隆弘 ▲ 25.2 ▲ 32.3 54.9 25.5 57.4 80.3
16 末松 隆文 ▲ 9.0 22.9 40.0 17.5 5.1 76.5
17 小車 祥 ▲ 6.3 75.1 43.8 ▲ 6.3 ▲ 31.4 74.9
18 一井 慎也 73.1 ▲ 18.1 ▲ 31.7 37.0 12.9 73.2
19 西川 舞 ▲ 7.0 85.0 ▲ 15.6 40.9 ▲ 30.3 73.0
20 中 寿文 ▲ 7.2 11.1 10.9 19.0 36.8 70.6
21 ケネス・徳田 35.8 93.6 ▲ 5.1 3.7 ▲ 61.0 67.0
22 石川 正明 0.3 44.8 ▲ 42.1 60.2 ▲ 1.0 62.2
23 吉野 敦志 14.5 ▲ 1.4 28.6 35.0 ▲ 16.6 60.1
24 安田 麻里菜 62.9 14.4 ▲ 18.0 48.0 ▲ 52.3 55.0
25 山中 翼 52.2 ▲ 31.9 36.5 14.2 ▲ 20.5 50.5
26 水越 京子 35.7 24.4 43.3 10.1 ▲ 63.5 50.0
27 小川 拓麻 ▲ 15.1 23.5 19.6 ▲ 4.6 20.5 43.9
28 本田 朋広 7.5 47.6 33.0 3.8 ▲ 48.7 43.2
29 小笠原 奈央 ▲ 1.2 6.6 8.8 ▲ 5.6 32.1 40.7
30 東谷 達矢 58.4 77.8 ▲ 28.6 ▲ 62.9 ▲ 14.1 30.6
31 新井 駿一 ▲ 8.5 81.8 63.8 ▲ 29.3 ▲ 81.6 26.2
32 七瀬 真実 ▲ 23.9 ▲ 21.4 23.9 46.5 ▲ 8.2 16.9
33 紺野 真太郎 ▲ 24.5 28.9 24.6 ▲ 1.3 ▲ 15.2 12.5
34 手塚 紗掬 ▲ 58.4 35.0 31.7 54.1 ▲ 52.3 10.1
35 安藤 友一 ▲ 28.1 ▲ 9.0 5.2 30.1 10.7 8.9
36 末続 ヒロトシ ▲ 36.4 ▲ 13.1 ▲ 2.4 48.7 10.6 7.4
37 柴田 弘幸 ▲ 8.8 ▲ 3.0 ▲ 54.6 9.8 62.9 6.3
38 山口 大和 62.4 15.8 ▲ 20.5 ▲ 13.3 ▲ 41.1 3.3
39 阿部 謙一 ▲ 7.0 38.4 ▲ 3.5 ▲ 9.6 ▲ 21.7 ▲ 3.4
40 鳥越 真仁 ▲ 6.3 ▲ 6.3 ▲ 47.7 115.9 ▲ 60.6 ▲ 5.0
41 三田 晋也 38.3 ▲ 19.2 4.9 ▲ 30.2 0.6 ▲ 5.6
42 杉浦 勘介 ▲ 29.4 37.9 ▲ 11.4 18.6 ▲ 32.0 ▲ 16.3
43 山田 浩之 ▲ 67.4 ▲ 15.5 37.8 ▲ 7.7 31.2 ▲ 21.6
44 中野 妙子 ▲ 25.3 38.9 6.6 ▲ 19.3 ▲ 23.0 ▲ 22.1
45 松岡 昭彦 ▲ 7.0 54.9 ▲ 26.7 ▲ 3.9 ▲ 42.1 ▲ 24.8
46 相沢 かおる 32.7 28.6 ▲ 39.1 ▲ 37.8 ▲ 11.4 ▲ 27.0
47 清原 継光 ▲ 11.5 ▲ 25.5 ▲ 11.1 ▲ 0.5 18.5 ▲ 30.1
48 福島 佑一 2.9 ▲ 3.6 ▲ 1.2 ▲ 34.5 ▲ 7.1 ▲ 43.5
49 三好 直幸 ▲ 11.8 ▲ 16.7 20.7 ▲ 10.4 ▲ 30.4 ▲ 48.6
50 古橋 崇志 ▲ 20.0 ▲ 22.1 8.7 ▲ 9.9 ▲ 5.6 ▲ 48.9
51 土井 悟 ▲ 47.6 ▲ 52.0 57.4 43.7 ▲ 52.7 ▲ 51.2
52 高宮 まり ▲ 0.9 5.3 37.5 ▲ 72.8 ▲ 20.7 ▲ 51.6
53 太田 優介 ▲ 48.3 ▲ 11.5 1.2 18.4 ▲ 18.0 ▲ 58.2
54 石橋 和也 13.2 ▲ 21.4 ▲ 15.1 ▲ 36.1 ▲ 4.2 ▲ 63.6
55 山井 弘 23.7 ▲ 75.3 ▲ 18.5 5.4 ▲ 0.5 ▲ 65.2
56 樋口 徹 ▲ 7.1 ▲ 2.7 ▲ 71.0 ▲ 14.2 26.8 ▲ 68.2
57 安村 浩司 ▲ 19.6 ▲ 31.6 22.0 ▲ 0.2 ▲ 45.8 ▲ 75.2
58 須浦 正裕 ▲ 17.2 ▲ 0.8 ▲ 21.5 ▲ 17.1 ▲ 23.1 ▲ 79.7
59 中村 慎吾 ▲ 25.2 ▲ 54.0 22.5 ▲ 10.3 ▲ 13.9 ▲ 80.9
60 田中 史孝 23.2 ▲ 56.8 ▲ 9.4 ▲ 29.4 ▲ 31.7 ▲ 104.1
61 永井 勝晴 ▲ 23.8 46.8 ▲ 21.4 ▲ 82.9 ▲ 37.9 ▲ 119.2
62 中村 毅 16.3 ▲ 13.1 ▲ 49.3 0.2 ▲ 79.5 ▲ 125.4
63 犬見 武史 ▲ 41.2 ▲ 5.1 ▲ 6.1 ▲ 42.3 ▲ 33.0 ▲ 127.7
64 大木 亮典 3.8 ▲ 11.7 ▲ 82.0 44.5 ▲ 83.6 ▲ 129.0
65 吾妻 さおり ▲ 91.2 8.2 20.2 ▲ 2.8 ▲ 71.2 ▲ 136.8
66 桶本 篤史 ▲ 94.5 98.3 ▲ 34.8 ▲ 24.9 ▲ 82.7 ▲ 138.6
67 黒木 真生 ▲ 29.8 ▲ 16.9 12.5 ▲ 82.5 敗退
68 童瞳 3.8 ▲ 23.4 ▲ 85.2 敗退
69 室伏 理麻 ▲ 36.2 ▲ 55.9 ▲ 13.0 敗退
70 西島 一彦 ▲ 72.0 ▲ 35.8 敗退
71 藤本 哲也 3.3 ▲ 27.0 ▲ 88.1 敗退
72 井出 一寛 11.5 ▲ 28.1 ▲ 10.9 ▲ 84.5 敗退
73 伊賀 則夫 ▲ 47.0 16.2 ▲ 54.4 ▲ 26.9 敗退
74 真光 祐尚 ▲ 16.6 ▲ 43.8 ▲ 62.7 敗退

第96回:清原 継光

この度、東城プロよりリレーエッセィのバトンを受けました清原継光です。
昨年末、王位戦にて初のタイトル戦決勝進出、初タイトルを獲得できました。
終わった後はタイトルを獲った実感もなく、半ば呆然として、夢の中にいるかのような心地でした。
皆から「おめでとう」とお祝いの言葉をかけられて、やっとタイトルを獲った実感を得ました。
何よりも、皆が喜んで祝ってくれたことがとても嬉しかったです。

初タイトルは様々な縁と運とが絡み合い、僕の手に転がりこんできましたが、実力的にはまだまだ差があることを痛感した決勝でした。
(勝利の実感は未だに得られてません)
タイトルホルダーに相応しい力を身につけるべく、さらなる精進が必須と感じています。

では、軽く自己紹介を。
1979年1月20日生まれの35歳です。
王位戦決勝の舞台では一番年下でした。
「見た目よりは若いね」と、よく言われますが、その言葉に素直に喜ぶことはなかなかできません。

連盟25期生、同期には、新人王を獲り映像媒体でも活躍する福光聖雄プロ。
同じく女流桜花を連覇し映像でも活躍する魚谷侑未プロ。
グランプリ準優勝、B1リーグまで破竹の勢いで昇級してる本格派の安村浩司プロ、他にも、女流桜花Aリーグで活躍する斎藤理絵プロ。
現在はD1リーグですが去年C2リーグで活躍してた荒牧冬樹プロ。

彼らは研修時代からも仲が良く、戦友という意識もあり常に注目してました。
そんな彼らが次々と活躍していく中で、僕は全く芽もでず、置いてけぼりをくっていたように感じており、今回タイトルを獲得して、少しは仲間たちに近づけたかなぁ?とか考えています。

麻雀に関しては、他人よりも経歴は短い異色の経歴だと思ってます。
最初に麻雀を知ったのは高校生の時。仲間内でやる程度の麻雀でしたし、大学に入ってからも、その程度の遊びの麻雀でした。
大学を卒業してからは、麻雀をやる機会はまったくなく、仕事漬けの生活でした。
今思い返すとワーカーホリックにかかってたのだと思います。

いろいろあって「仕事だけが人生の価値ではないな」と考え、しばらく遊び人生活をはじめます。
(人生におけるそういうきっかけは、たいてい恋愛絡みですが、謎設定にしておきます)
そんな中で「学生時代に皆でわいわいやってた麻雀は楽しかったな、もう一度やってみようかな?」とふと思い、そして入った店で現A2リーガーの刀川昌浩プロと出会いました。
刀川プロからは麻雀に関する基礎的な考え方をいろいろと教えてもらいました。
そして、刀川プロが麻雀プロとして連盟に入ることになったので、僕も入ってみようかな?と思い、なかば興味半分で入りました。

麻雀経歴も当時で5年ほど、現在でも11年ほど、年齢の割に短いキャリアだと思います。
プロになってからも麻雀を舐めていた部分はあったかと思います。
「結局、牌の絵合わせでしょ」そんな気持ちが心のどこかにあったかもしれません。

そんな僕が、ショックを受けることがありました。
当時、お世話になってた刀川プロに誘われて、藤崎智プロの決勝を観戦した時のことです。
2009年度のグランプリの決勝は、荒正義プロ、前原雄大プロ、藤崎智プロ、沢崎誠プロの超激闘、そこには自分の麻雀観を一変させる内容がありました。

カルチャーショックを受けたというのが正直な感想。
超僅差の接戦、紙一重の攻防、見るものを魅了させる試合がそこにはありました。

応援していた藤崎プロは惜しくも負けたのですが、そこにいた4人全員が勝者に見えるようなかっこいい麻雀でした。
以来、僕もそんな舞台で戦いたいという気持ちが芽生えました。
また、麻雀に対する意識、姿勢も変わったと思います。

このショックをきっかけに、僕は勝利至上主義を捨てました。
「勝利という結果が大事」という言葉では、僕が感じた感動が汲み尽くせない気がしました。
(優勝した荒プロはもちろん、優勝できなかった前原プロ、藤崎プロ、沢崎プロも主役であったように感じました)

今回、拙いながらも自分の麻雀を決勝で打つことができ、観戦者から「観戦してて感動したよ」と言われることがありました。
(僕個人としては他人に見せるには恥ずかしい麻雀でもあるのですが)
数年前に僕が感じた感動を、プレイヤーとしてまた別の人に伝えることができたならば、これほど幸せなことはありません。
「あの時、僕が観戦していて感じた1%でも誰かに分け与えることができたなら、僕がいた役目もあったかな?」
そんなことをふと思ってしまいます。

もちろん、今回で満足することもなく、次もその次も、もっと決勝の舞台に立ちたいですし、そのためにも決勝で戦える実力を身につけねばならないと感じています。
視聴者の方にいい内容の試合を見せること、コンテンツを魅力的にすることが僕らの仕事だと思ってます。
また、そんな麻雀を打っていたら麻雀の女神もいつか振り向いてくれる、そんな気持ちで臨んでいます。

長々と自分の価値観を書いてしまいましたが、それも僕という1人の人間の考え方、「こんな変人が1人ぐらいいてもいいかな?」とか考えています。

終わりに、日本プロ麻雀連盟ではたくさんの人にお世話になったので、この場を借りてお礼を言いたいと思います。
特に、日頃からお世話になっている刀川昌浩プロ。
様々な麻雀観を吸収させていただいた藤崎智プロ、沢崎誠プロ、
決勝前日に、激励の言葉をかけていただいた吉田幸雄プロ、茂さん。
その存在が励みになった同期の福光聖雄プロ、安村浩司プロ。
その他、諸先輩方、同期の方々。
そういったまわりの方たちの存在がこの度の結果につながったと思います。

最後に、王位戦の決勝の舞台で共に戦った荒正義プロ、矢島亨プロ、五十嵐毅プロに感謝の意を表して、締めくくりたいと思います。
どうもありがとうございました。

次回は、麻雀格闘倶楽部「彩の華」から参戦している、山脇千文美プロにお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。