6月11日、初夏の香りの漂うほど良い日差しの中で、十段戦の九段Sの戦いが行われた。
5半荘を戦い、上位2名が勝ち抜けるトーナメント戦、勝ち上がり組とシードを交えた24名がベスト16の席を争って戦い合う。
1卓:木村東平・山井弘・森山茂和・黒木真生
1回戦
親の連荘力、爆発力の高い4人が集まった卓という印象。
まずは起家の木村が飛ばす。
リーチロンドラ
このリーチを森山から12,000点のアガリ。幸先よいスタートを切った木村はその後も勢いにのる。
山井の親リーチにも勝負しそれを蹴ると、南場では2,600オールを含む3本場まで連荘し7万点を超える大トップ、大きなアドバンテージを得た。
1回戦結果
木村+55.9P 黒木▲10.3P 山井▲12.8P 森山▲32.8P
2回戦
南場の親の山井がドラ暗刻のリーチ
ドラ
高めをツモれば6,000オールの超弩級のリーチ。森山も次の手で攻め返す。
リーチ
この勝負に勝った方がトータル2着争いに手を挙げると思われたが、勝ったのは北家の木村。
ポンツモ
この300・500で2人のリーチを蹴ると、その勢いそのままにドラ暗刻の手をツモり、2回戦もトップをとった。
2回戦結果
木村+21.3P 森山+8.8P 黒木+2.7P 山井▲32.8P
3回戦
木村が2着と7万点差のリード、勝ち上がりをほぼ当確にした。
状況は3者によって残り1つの椅子を争う戦いにシフトする。
ここまで好調だった木村だが、黒木のリーチにすぐに5,200点の放銃。
リーチロンドラ
これで木村はリズムを崩したか、森山にも6,400点の放銃、木村が1人沈みのラスをとるも圧倒的な前半の貯金があるのでこれも計算内か。
トータル2着の争いは森山と黒木のデッドヒートの様相を呈してきた。
3回戦結果
森山+15.4P 黒木+8.0P 山井+3.4P 木村▲26.8P
4回戦
南場、南家の森山が仕掛ける。
ポンポンドラ
この仕掛けに局を回したい木村も北家でリーチをかぶせる。
リーチ
親の山井も息をひそめていた。
この勝負所を制したのは山井。森山からを打ちとり7,700点をアガリトップをとる。
4回戦結果
山井+17.9P 木村+11.8P 森山▲13.3P 黒木▲17.4P
4回戦終了時トータル
木村+62.2P 黒木▲17.0P 森山▲21.9P 山井▲24.3P
最終戦
木村はほぼ当確、2着争いはなんと3人の横一線。
着順勝負でほぼ勝負が決まる。
2着争いに抜け出したのは森山。
リーチツモドラ
価値ある1,000・2,000のツモアガリ。これで頭一つ抜け出たか。
南3局、あとは黒木と山井の親を蹴るだけの森山が7巡目にリーチを打つ。
リーチドラ
後がない黒木も11巡目に追いつく。
リーチ
最後の勝負所。15巡目にをつかんだ森山は観念するかのような手つきでを河に並べた。
黒木が森山から7,700点をアガリ、雌雄を決した。
5回戦結果
黒木+17.9P 木村+7.4P 森山▲8.5P 山井▲16.8P
トータル
木村+69.6P 黒木+0.7P 森山▲30.4P 山井▲41.1P
勝ち上がり 木村東平・黒木真生
2卓:吉田幸雄・伊藤優孝・藤原隆弘・老月貴紀
1回戦
現A1の伊藤はもちろん、他3者もA1在籍経験がある。
お互いに手の内を知り尽くしただろう4人が同卓となった。
まずは親の伊藤がリーチ。
リーチドラ
満貫テンパイの老月がこれにを放銃、伊藤が11,600点のアガリ。
伊藤にとっては幸先のいい、対して老月にとっては幸先悪いスタートとなった。
吉田も黙っていない。南2局
ツモドラ
伊藤の親番で3,000・6,000のツモアガリ、これで伊藤を追い抜く。
しかし、この半荘は南場の親番で連荘した藤原がトップ。
老月はツモられも響き100点持ちの1人沈みのラス、苦しいスタートとなった。
1回戦結果
藤原+26.0P 吉田+13.2P 伊藤+2.7P 老月▲41.9P
2回戦
苦しいスタートを切った老月が意地を見せる。
リーチツモドラ
2,600オールをツモアガると、その後も加点して1人浮きのトップ。
オーラス、藤原の選択が光る。
ドラ
22,600点持ちのラス目でこの手をヤミにする。
浮きを確保するよりもラス抜けすることを優先するいぶし銀のヤミテン、これも1回戦目がトップであるがゆえの選択か。
注文通り、吉田からをアガリ、3,900は4,200のアガリ。これでラスを抜け、トータルでは1人だけプラス。
吉田は痛いラス落ちとなった。
2回戦結果
老月+26.0P 伊藤▲4,7P 藤原▲7.2P 吉田▲14.1P
3回戦
藤原が1人抜け、2着争いの伊藤と吉田は僅差、ここは吉田が攻める。
ロンドラ
競争相手の伊藤から8,000点の直撃。
ツモドラ
4,000オールツモと大爆発、大トップをとる。藤原も、
ポンツモドラ
この2,000・4,000をツモり、2着に滑り込む。
3回戦結果
吉田+39.7P 藤原▲3.8P 老月▲12.9P 伊藤▲23.0P
4回戦
4回戦は小場で進み、藤原が1人浮きのトップ。
これで吉田、藤原が伊藤、老月を引き離して抜け出した格好となった。
4回戦結果
藤原+18.1P 伊藤▲2.5P 吉田▲4.7P 老月▲10.9P
4回戦終了時トータル
吉田+34.1P 藤原+33.1P 伊藤▲27.5P 老月▲39.7P
最終戦
伊藤は60P、老月は70P超をまくらねばならない。
吉田、藤原の独走に見えたが、伊藤が粘る。打点こそ安いが、親で先制リーチを打ち続ける。
1,000オール、1,300オール、と東場で3本、南場で4本と積み、気づいたら6万点超えの1人浮きトップ。
前を走る吉田、藤原を射程圏内に捉えた。
伊藤にストップをかけるべく吉田も仕掛ける、これに藤原が放銃、1,000点は2,200点もこの局面では痛い放銃か。
これで吉田はアタマ1つ出てオーラスを迎え、着順は上から吉田、伊藤、藤原。
伊藤と藤原の差は4.9P差、1,000・2,000ツモか2,600直撃で変わる。
オーラス、北家の伊藤がを仕掛ける。1,000点アガれば勝ち上がりだ。
しかし、6巡目に藤原がひときわ高く「リーチ」の発声。
リーチドラ
条件を満たしたリーチだ。これには伊藤も渋い顔をする。
放銃してもツモられても敗退、流局は勝ち上がり。
ポン
このテンパイを果たしていた伊藤、得点票を一瞥すると、真向勝負を挑んだ。
ひたすらいらない牌を切る伊藤、ドラまで「えいやっ」と独特のモーションで切る。
お互いにアガリ牌を持ってこず、捲り合いの決着はなかなかつかないまま時が過ぎる。
伊藤の気合に呼応するかのように、14巡目に伊藤がを力強く引き寄せる。
勝ち上がりを決める伊藤のアガリで幕を下ろした。
5回戦結果
伊藤+50.5P 吉田▲5.7P 藤原▲18.9P 老月▲25.9P
トータル
吉田+28.4P 伊藤+23.0P 藤原+14.2P 老月▲65.6P
勝ち上がり 吉田幸雄・伊藤優孝
3卓:勝又健志・灘麻太郎・ともたけ雅晴・小野雅俊
1回戦
現鳳凰位がここから参戦、さらに27期鳳凰位のともたけ、グランプリを獲ったばかりのレジェンド灘、
そこに四段戦Sから勝ち上がってきた小野が挑むという構図。
小野は昨年、中部リーグで優勝し、そのシード権を得て四段戦Sからの参戦となった。
まずは勝又。
リーチツモドラ
2,000・4,000をツモり先制。
南1局、親番の勝又が秀逸。
ドラ
ここにをツモると、ノータイムでと払い、上家のをノータイムでチーしてを出アガリ
チー
灘から2,900点を出アガる。打点こそ低いが、場を読み山に生きている牌を見抜く力がすごい。
現鳳凰位が1回戦からその能力をいかんなく発揮する。
南2局、灘が親番で、
ロン
この3,900をヤミにして小野から出アガリ。
このヤミテンもカミソリ灘の独特の感性によるものなのだろう。
1回戦は小場の戦い方を熟知しているかのように、勝又、灘が場を制した。
1回戦結果
勝又+14.0P 灘+5.1P ともたけ▲6.3P 小野▲12.8P
2回戦
1回戦目は緊張からかあまり動きのなかった小野、ここから積極的に動きに出る。
東1局
ポンツモドラ
4,000オールをツモり、あっという間に借金を返済。
その後も仕掛けを含めて積極的に場に参加し出す。灘、勝又、小野に仕掛けられる中、タイプの違うともたけは苦しいか。四暗刻のリーチを打つも1回もツモれずにかわされる。
勝又も打点の高い仕掛けを入れるがアガリ牌が遠い。道中、小野の守備力が光った。
灘、小野の2人が地道に加点する中、勝又が会心のアガリ。
ロンドラ
灘から9,600点の出アガリ。
これで灘に肉薄するかと思われたが、最後は意地を見せた灘がオーラスに連荘してトップをとった。
2回戦結果
灘+18.6P 小野+9.2P 勝又▲7.2P ともたけ▲21.6P
3回戦
3回戦も灘がしぶとく加点する。
勝又のリーチ。
リーチドラ
小野の追っかけリーチ。
リーチ
2件リーチにもひるまずに牌を通し、勝又から3,900の出アガリ。
ロン
このをつかむのだから勝又の気分は悪かろう。
この半荘を制したのは小野。
加カンツモドラ
危険牌を止めながら打ちまわし、仕掛けてとったテンパイにハイテイツモのプレゼント。
この1,300・2,600で小野がトップをとった。
3回戦結果
小野+17.8P ともたけ+5.3P 灘▲7.6P 勝又▲15.5P
4回戦
ここにきてともたけにチャンスがまわってくる。
親で待ちで先制リーチを打った勝又、しかし、仕掛けたともたけのチンイツに放銃。
チーロン
ともたけが勝又から8,000の出アガリ。
さらに灘の先制リーチがあった局面に勝又。
ドラ
このテンパイが入り、直前につかんだを切ると、それにロンの声をかけたのはともたけ。
ロンドラ
またしても、ともたけに8,000点の放銃となった。勝又にとっては不幸が続く。
ロンドラ
このヤミテンでともたけから8,000をアガった小野がともたけを追走。
リーチロンドラ
最後は、灘から8,000点をアガったともたけがトップをとった。
4回戦結果
ともたけ+18.8P 小野+10.8P 灘▲7.7P 勝又▲21.9P
4回戦終了時トータル
小野+25.0P 灘+8.4P ともたけ▲3.8P 勝又▲30.6P
最終戦
灘とともたけのデッドヒート、勝又は40P逆転条件。
後に勝又に話を聞く機会があったが、この4半荘目を話してくれた。
「ともたけさんのテンパイは分かっていたけど、灘さんがリーチを打っているのでオリの選択はなかった。灘さんがアガるのが最悪、自分がアガるのがベストだけど、ともたけさんへの放銃でも構わないと思ってた。だから三色じゃなくてピンフのみのテンパイでも切るし、ともたけさんに放銃するよ。ともたけさんにトップをとられたことで、最終戦の条件はあまり変わらないし、自分の中ではそんなに悲観的に捉えてなかった。」
果たして、鳳凰位の思惑通りに進むのか。
最終戦、お互いに牽制し合いながら場は進む。これも鳳凰位の計算の内なのか。
ラス前、勝又の親番、ここが勝又の最後の勝負どころ。
リーチツモドラ
まずはこの2,000オールで差を詰めると、
同2本場
ツモドラ
この3,900オールは4,100オールで55,000点のトップ目に立ち、一気に灘、ともたけを抜き去る。
同3本場、小野からリーチが入るとすばやく中抜きして撤退した。
この計算の速さもまた現鳳凰位の強さを担うものだ。
オーラス
ともたけが逆転の手を入れるも手牌が倒されることはなかった。
ドラ
僅差を制した勝又と小野の勝ち上がり。
勝又は、山読みの精度、展開をコントロールする力、トータルポイントの計算の速さ、など現鳳凰位の力を存分に見せつけての勝ち上がりであったように思う。
九段戦を終えて、「まぁ、ツイてたよ」と笑みをうかべながら言う鳳凰位の姿を見て、
「この人に逆境とかあるのだろうか?どんなところにも自分の通過するチャンスを見出しそうだ」と思ってしまう。
そう思えるほど、卓をコントロールするかのような現鳳凰位の力が現れた戦いだった。
5回戦結果
勝又+31.1P ともたけ▲2.2P 灘▲10.7P 小野▲18.2P
トータル
小野+6.8P 勝又+0.5P 灘▲2.3P ともたけ▲6.0P
勝ち上がり 小野雅俊・勝又健志
4卓:前田直哉・藤井すみれ・沢崎誠・荒正義
1回戦
今ベスト32の「死のグループ」と言えば、間違いなく、この卓だろう。
現最強位の前田、さらにレジェンドの荒と沢崎。そこに挑むは女流の藤井。藤井は去年昇級を果たし、今年から女流桜花Aリーグ、鳳凰位戦C1リーグで戦っている。
その勢いそのままに四段戦から勝ち上がってきた。頂上クラスの強豪を相手に藤井の勢いが通用するか。
開局、沢崎が先制リーチ。
そこに荒が追いかける。すぐに流れるような動きでツモ。
リーチツモドラ
ドラ暗刻の2,000・4,000のツモアガリ。
これで調子良しと見たか、荒は積極的に仕掛けて場を回す。東場は荒の捌きが場を制し荒の独壇場。
南場に入り風向きが変わる。ずっと身を潜めていた前田
ポンロンドラ
親番で藤井から12,000点を出アガリ。まずは1つ目のミサイルを炸裂させると、
オーラスでも前田、
ロンドラ
親で先制リーチを打っていた荒から、12,000点の出アガリ。2発のミサイルでトップを手中にした。
局面をほぼ牛耳っていた荒にすると痛恨の放銃か、前半で貯めた貯金が帳消しになってしまった。
前田が1回戦から大陸間弾道ミサイル打法の真骨頂を見せ、前田らしい半荘で1回戦を手中に収めた。
1回戦結果
前田+28.2P 荒+5.5P 沢崎▲8.8P 藤井▲24.9P
2回戦
1回戦オーラスの大逆転が荒の闘志に火をつけたか、荒の攻めがさらに加速する。
親で連荘すると点棒は5万点台へ、一人舞台のままトップを独走。
1回戦目に前田にやられたお返しとばかりに大トップ。荒が、その捌きの技術を存分に見せ2回戦を制した。
2回戦結果
荒+26.0P 藤井+7.4P 沢崎▲4.9P 前田▲28.5P
3回戦
トータルラス目の藤井もこのまま引き下がるわけにはいかない。
藤井が親で粘りを見せ沢崎から、5,800は6,100を出アガリ。
リーチロンドラ
前田も荒から5,200は5,500を代名詞のヤミテンで捕らえる。
ロンドラ
この半荘は前田と藤井が浮きにまわった。
3回戦結果
藤井+17.3P 前田+12.1P 荒▲12.1P 沢崎▲17.3P
4回戦
藤井がトップをとり、点棒的には1人置いて行かれた形の沢崎。
この日はリーチや仕掛けを入れるものの、どこか様子を見るかのような、牌と戯れるかのように振る舞ってきた。
その沢崎が今半荘からギアを上げる。圧巻は親番の連荘力、初動の早い仕掛け、後付け、フリテンリーチ、なんでもござれの多彩な技で親番をキープすると、見計らったかのようにヤミテンで加点。
そして仕上げとばかりにメンホンリーチ。
リーチドラ
見事をツモり3,000・6,000。オーラスは荒から1,300をアガリ、沢崎が1人浮きの大トップを決めた。
最初の3半荘が様子見だったのではないかと思わせる圧巻の内容、沢崎の多彩な技が炸裂した沢崎の半荘だった。
4回戦結果
沢崎+37.4P 荒▲1.6P 前田▲9.2P 藤井▲26.6P
4回戦終了時トータル
荒+17.4P 沢崎+6.4P 前田+2.6P 藤井▲26.8P
最終戦
沢崎の大トップにより混戦の様相を呈してきた最終戦、少しだけ置いて行かれた藤井は全員を沈めたトップ条件か。
荒、前田が仕掛けを含めながら牽制し合い、局を回そうとする。壮絶なつばぜり合いという感じだ。
そんな中、東4局に事件は起きた。
荒の仕掛けの中、ずっと大人しくしていた藤井がリーチ。すぐにツモの発声。
「4,000・8,000」の声が会場に響き渡る。静寂のまま手牌を確認する3者。
リーチツモドラ
リーチツモホンイツイッツー、間違いなく、4,000・8,000だ。
この倍満ツモで藤井は1人浮きのトップに。計算すると・・一挙に前田、沢崎に並ぶアガリだ。
親被りをした荒だってうかうかしてられない。局面は、4人の混戦という非常に計算が面倒くさい事態になった。
横並び4人の中でお互いに牽制し合う中、ラス前に荒が2,000点をアガる。横並びから荒がハナ差抜け出た格好だ。
稀に見る4者のミクロの戦いのままオーラスに突入した。
オーラス、藤井45,700点、荒28,200点、前田23,400点、沢崎22,700点。
ラス目のトータルトップ目の荒が加点することは考えにくい。
前田は沢崎、荒から6,400以上のアガリ。藤井から3,200以上のアガリ。1,300・2,600以上のツモアガリ。
沢崎は前田から5,200以上のアガリ。藤井から2,600以上のアガリ。荒から3,200以上のアガリ。1,000・2,000以上のツモアガリ。
荒は前田、沢崎に7,700点放銃できない。
藤井は1,000点でもいいから自分がアガるしか勝ち残りはない。(荒がアガるとむしろ不利)
オーラス前の計算の中、荒の表情には余裕が見てとれた。けして安全圏ではないが、この僅かなリードが持つ大きな意味を熟知しているのだろう。
藤井にはアガらねばならないという使命感が、沢崎には「仕方ないものは仕方ない」というある意味での諦観が漂っていた。
一際、崖っぷちの悲壮感が漂っていたのが前田だ。
後がない前田は祈るように配牌をとる。見るも無残なバラバラ。心なしか肩を落とす前田。それでも瞬時に前を向き直し、条件に向けて暗刻のを1枚切り出す。
藤井が仕掛けると、チャンタを見切り七対子に切り替えて、藤井の当たり牌を切らないように反撃の機会を窺う。
現最強位として、多くのファンを背負う者として、ここで簡単に諦めるわけにはいかないという決意がこもった魂の打牌だ。
沢崎も諦めてはない。
ドラ
逆転のテンパイを果たすも、宣言牌のを藤井が捕らえて、ミクロの戦いに終止符が打たれた。
最も過酷な卓を藤井が勝ち残った。
卓組が発表された時には悲壮感で泣きそうだった藤井だが、勝った後は嬉しさのあまり号泣していた。
それだけ厳しい戦いであり、また厳しさの中での踏ん張りが報われた戦いだったのだろう。
敗れたとはいえ、前田、沢崎も存分にストロングポイントを発揮し、荒も持ち前の捌きを存分に発揮するなど見応えある卓であった。
5回戦結果
藤井+28.7P 荒▲2.8P 前田▲9.6P 沢崎▲16.3P
トータル
荒+15.0P 藤井+1.9P 前田▲7.0P 沢崎▲9.9P
勝ち上がり 荒正義・藤井すみれ
5卓:藤本哲也・宮内こずえ・小島武夫・瀬戸熊直樹
1回戦
映像対局経験が多くファンも多い小島、瀬戸熊、宮内、そこに四段戦から勝ち上がった現B1リーガーの藤本が挑む構図となった。
その藤本が東1局から好スタートを切る。
ロンドラ
小島のソウズの染めの陰に隠れて宮内から9,600点のアガリ。
東2局にも、
ロンドラ
藤本は宮内から7,700をアガリ、ヤミテン攻勢で点棒を積み上げる。
苦しい立ち上がりの宮内は南場の親番で奮起、序盤のビハインドを埋めに行く。
宮内と藤本が場を支配する中、間隙を縫ったのは瀬戸熊。
ロンドラ
瀬戸熊が藤本からヤミテンで高めの7,700をアガる。
小島もオーラス、
リーチドラ
このリーチを打つが、藤本が瀬戸熊から1,000点をアガリ決着。
ヤミテンで大物手を決めた2人のワンツーとなった。
1回戦結果
藤本+14.6P 瀬戸熊+7.9P 宮内▲6.8P 小島▲15.7P
2回戦
初戦をラスで迎えた小島。
ロンドラ
親番でヤミテンで7,700を瀬戸熊からアガリ1人浮きのトップ目にたつ。
オーラスは瀬戸熊の親リーチに追いかけた藤本。
リーチロンドラ
宮内から1,300点をアガリ、瀬戸熊のリーチ棒込みで浮きを確保、僅差の2着争いを制する。
宮内は小さいながらもラスに転落、痛い放銃となった。
2回戦結果
小島+13.1P 藤本+4.1P 瀬戸熊▲6.2P 宮内▲11.0P
3回戦
東4局、藤本が親番で、
リーチツモドラ
2,600オールをツモり接戦から抜け出すと、
南4局も
ロンドラ
藤本は宮内から5,800をアガリ、トップを不動のものとした。
瀬戸熊は苦しみながらも浮きをキープ、対して宮内は苦しいラスとなった。
3回戦結果
藤本+28.5P 瀬戸熊+4.5P 小島▲11.2P 宮内▲21.8P
4回戦
抜け出した藤本を小島と瀬戸熊が追う展開。
まずは小島が、
リーチツモ??ドラ
1,300・2,600をツモる。
瀬戸熊も反撃。
リーチツモドラ
2,600オールツモで小島に抜け出させない。一進一退の攻防が続く。
そんな中、南2局は今日の宮内を象徴する一局。5巡目にして1シャンテン。
ドラ
すでにも切っている超絶好手。しかし手は進まず11巡目にをひいてきて切った牌は、
暗カンロンドラ
なんと親の藤本の12,000に放銃する牌、その不調を顔に出さずに手牌を崩す宮内、凛とした強さがある、ファンも多いはずである。
2着の椅子は渡さないとデッドヒートを繰り広げる瀬戸熊と小島。瀬戸熊リードで迎えたオーラスの小島の親。
小島のリーチは
リーチドラ
南をツモれば8,000オールのすごいリーチ、ツモれば一気に瀬戸熊を抜き去るが、しかし、これは流れて流局1人テンパイ。
最後は瀬戸熊がかわし、小島との争いを制した。
4回戦結果
瀬戸熊+17.1P 小島+5.1P 藤本▲8.6P 宮内▲13.6P
4回戦終了時トータル
藤本+34.6P 瀬戸熊+31.3P 小島▲4.7P 宮内▲61.2P
最終戦
瀬戸熊と藤本が抜け、追う小島が35P差、宮内に至っては90P以上を逆転せねばならない。だが、現女流桜花がここから意地を見せてくれた。
起家をひいた宮内は90P差を逆転すべく、果敢に攻め立てる。
ポンツモドラ
4,000オールをツモると、続く1本場もドラドラをアガリ、3本場まで積む。
その後も七対子リーチををツモアガリ、55,000オーバー。そして迎えた南場の親番で先制リーチ、
その手は
リーチ
なんとツモり四暗刻のリーチ、ツモれば藤本も瀬戸熊も抜いて逆転する。
「まさか??」そう思わせるリーチだったが、ここは藤本が意地を見せ300・500のツモアガリ。
この時ばかりはさすがの宮内もガクッと肩を落として手牌を伏せた。
これで宮内の条件はほぼなくなったが、現女流桜花の粘り、逆転への執念を見せてくれた。
小島もラス前に、
リーチドラ
このリーチを打つが流局、最後まで小島らしいリーチを見せてくれた。
小島、宮内の執念を凌いで瀬戸熊、藤本が勝ち上がりを決めた。
瀬戸熊は代名詞のクマクマタイムこそなかったが、要所でアガリを決め原点をキープすると、最後は藤本も抜きトータルトップに立つ。抜群の安定感を見せた。
5回戦結果
宮内+19.7P 瀬戸熊+7.9P 小島▲9.1P 藤本▲18.5P
トータル
瀬戸熊+39.2P 藤本+16.1P 小島▲13.8P 宮内▲41.5P
勝ち上がり 瀬戸熊直樹・藤本哲也
6卓:古川孝二・前原雄大・安乗参・上田直樹
1回戦
古川、前原というA1の化け物2人に挑戦するは、現B2リーガーの安と、初段戦から快進撃を続けている上田。
去年初段戦から勝ち上がった高谷は王位戦決勝に残り、土屋も静岡リーグ優勝を果たしている。上田も2人に続きたいところか。
開局から小場で場が展開する。古川が場の主導権を握り、上田も小場に迎合するかのようだ。
安の1人浮きで迎えたオーラス、安が5巡目からマンズのチンイツに一気に寄せる。
ここで大きく引き離そうという魂胆か、はたまた上家が29,100点持ちなので絞ってられないとの判断か。
しかし、安の上家の前原は「その4のトイツ落としはマンズへの移行でしょ」とばかりにマンズを止めて価値あるツモアガリ。
ツモドラ
300・500ながら、これで浮きの2着をとれる価値あるアガリ。
チームがらくたの総帥が、その豪放磊落に隠れた繊細さを見せ、見事に浮きの2着をとった。
1回戦結果
安+12.5P 前原+5.2P 古川▲6.7P 上田▲11.0P
2回戦
1回戦ラスだった上田が東場を終えてトップ。
しかし、南場に入って安に、
リーチツモドラ
この2,600オールをツモられ逆転され、さらに前原には7,700の出アガリから3本場まで連荘され、上田は沈みの3着に。
オーラス上田の親番に古川の5巡目リーチ。
リーチドラ
ドラ暗刻のリーチ、上田の絶体絶命かと思われたが、ここは上田が決死の覚悟で活路を見出す。
古川のリーチに攻め返すと、仕掛けて親でテンパイを獲得。
この決死の覚悟が運を呼び込んだのか、上田は親で3本場まで積み4万点オーバー、安、前原を抜いてトップに立つ。
苦しいのは古川、最後は1人沈みのラス確2,000点を仕掛けてアガリ、次の半荘に逆転の機を窺うことにした。
2回戦結果
上田+19.3P 前原+7.6P 安+2.6P 古川▲29.5P
3、4回戦
2回戦の好調を引きずるかのように上田が好調に加点していく。
二番手は安が仕掛けて1,300.2,600をツモ、安は毎半荘1,300・2,600か2,600オールをアガってるイメージだ。
それだけ、安は1,300・2,600をつくるのが上手なのだろう。しかし、その加点がどんどん削られる。
前原、上田が積極的に場に参加する中、受けにまわる安の点棒がノーテン罰符で削られる。
終盤の粘っこい打ちまわしでテンパイ料で着実に点数を稼ぐ上田と前原。点棒獲得方法は違うが、徐々に削られる安と古川は苦しい。
4回戦目も、安が、
ロンドラ
5,200を古川から出アガるが、この貯金を維持できないまま沈みで決着。
好調の上田はトップをとり、前原は沈まない。古川に至っては毎回ノーテン罰を払っているかのようだ。
3回戦結果
上田+16.1P 前原+11.1P 安▲7.2P 古川▲20.9P
4回戦結果
上田+15.9P 前原+4.5P 安▲5.5P 古川▲14.9P
4回戦終了時トータル
上田+40.3P 前原28.3P 安+2.4P 古川▲72.0P
最終戦
上田が3連勝でほぼ当確、安と前原がトップラス条件、古川は100Pまくらねばならない。
東場を終えて安がトップ目、上田が2着、古川が沈みの3着、前原がラス。並びができてるので、安にとっては嬉しいところ。
一進一退の中、迎えたオーラス。
持ち点は、上田が30,100点、前原が22,700点、安が35,800点、古川が31,400点、現状だと安が前原より7.2P上位。安、上田は1,000点でアガればいいだけで前原にとっては絶体絶命のピンチ。
その土壇場で前原が踏ん張る。
チーツモ
これを素早く仕掛けるとすぐにをツモって2,000オール。
これで前原が安より上に行きトータル2着目になる。
次局は、
ドラ
このテンパイをノータイムでリーチ、当然であるかのように2巡後にあっさりをツモる。
2,000オールは2,100オール。上田との差が少ないため1,000・2,000で安に逆転されるための加点だが、早く、そして、力強かった。
僅か2局で上田を逆転してトータルトップ目に立った前原、これで安全に手牌を伏せられる。
苦しいのは安、僅か2局で追いかける立場となった。安の条件は跳満ツモか、上田か前原からの満貫直撃条件である。
最終局、安も
ドラ
このテンパイを入れるが、最後までは河に姿を見せなかった。
五回戦結果
安+12.7P 前原+8.0P 古川▲7.7P 上田▲13.0P
トータル
前原+36.3P 上田+27.3P 安+15.1P 古川▲79.7P
勝ち上がり 前原雄大・上田直樹
これで勝ち上がり者の12名が決まった。
ここに去年の十段戦ファイナリストの、藤崎智・櫻井秀樹・野方祐介・ダンプ大橋を交え、現十段位の柴田吉和に挑戦する椅子を賭けて、ベスト16トーナメントが開始される。