半年1期で開催している北海道プロリーグも今年で第50期目を迎えました。
今期も5節20戦の熱い戦いを経て、決勝進出者が決定いたしました。
今回、僭越ながらわたし 石田雅人(26期生・四段)が決勝レポートを担当させていただきます。
拙い文章ではありますがお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
決勝は5節までのポイント持ち越しでの4回戦を戦います。
それでは決勝進出者をわたしの主観にて紹介させていただき、そのままレポートに入らせていただきたいと思います。
1位通過 +169.2P
西野 拓也(にしの たくや) 11期生 五段 43歳 ※以下「西野」と表記
北海道本部においては副本部長を務め、北海道プロリーグは過去2回の優勝経験もあり、実績、その雀力の高さも然ることながら、誠実な人柄はみなが慕い若手のまとめ役でもある。
わたしが麻雀における師と仰ぐ西野、第40期の優勝以来、結果の面ではしばらく影を落としていたが、ようやく強い西野が帰ってきた。
2位通過 +165.5P
浦山 祐輔(うらやま ゆうすけ) 21期生 四段 30歳 ※以下「浦山」と表記
「ミスターサマーカッパー」こと浦山。
18歳で日本プロ麻雀連盟の門を叩いた頃はただの生意気な若造であったが、技術的にも人間的にもその成長ぶりには目を見張るものがある。
第44期に優勝も経験しており、サマーカップ4連覇の偉業も成し遂げたばかりの浦山。
その成長と今の脂の乗りっぷりは、北海道本部の中で「最もG1タイトルに近い男」と言えるだろう。
3位通過 +132.8P
中村 龍太(なかむら りゅうた) 23期生 三段 32歳 ※以下「龍太」と表記
お茶目でみなに愛される性格の龍太。
同じく北海道本部所属の第35期王位戦ファイナリストも務めた実力派の中村瞬(なかむら しゅん)と比べられ、「ニセモノの中村」と仲間からよく茶化される。
抜群の攻撃力の反面やや守備に不安があるものの、前期に続いての2期連続決勝進出は着実に成長している証だろう。
優勝経験は無いが、今日は「ホンモノの中村」になってほしい。
4位通過 +101.6P
喜多 清貴(きた きよたか) 28期生 二段 52歳 ※以下「喜多」と表記
連盟入りは最近であるが、長年競技麻雀に携わり、北海道の競技麻雀界において彼の名を知らない者はいない。
その経験と実績で培われた雀力で、出場4期のうち既に2回目の決勝進出を果たす。
第5節最終戦、最終局でのツモり四暗刻で4位者を微差でかわしての決勝進出。
上とのポイント差は大きいが、老練な雀力に加え勢いも追い風となり一泡吹かせてくれるはず。
お互いを意識せざるを得ないほぼ並びの西野と浦山。
龍太の上2人とのポイント差は、龍太の攻撃力からすれば追う側としてはむしろ戦いやすいだろうか。
喜多が1回戦叩くことができれば一気に混戦となる。
4者緊張感漂う中、決勝1回戦が始まった。
1回戦
(起家から 龍太・浦山・西野・喜多)
東1局 最初にテンパイを入れたのは喜多
12巡目
ドラ
上とのポイント差など考慮するとリーチと行きたいところでもあるが、受けも良くなく親の龍太の現物でもあり冷静にヤミを選択。
すぐに龍太がツモぎったを捕まえ2,000のアガリ、緊張感が増すような静かな滑り出しとなった。
東2局 またしてもテンパイ一番乗りは喜多。
終盤オリに回りノーテン流局となったが、更に次局は5巡目にテンパイが入る。
喜多の手牌が活き活きとしている。
アガリにこそ結びつかないが、その後も流局が続く中、喜多は活きている手牌に老練な押し引きを絡ませながらテンパイで粘り続ける。
そして迎えた東3局3本場 供託2本
南家 喜多 5巡目、1枚目のを仕掛けるとすぐに急所が埋まり軽いホンイツのテンパイが入った。
ポン ツモ
老練な手順はホンイツには見えなく、すぐに親の西野がを掴まされ、3,900は4,800+供託2,000のアガリ。
ここまでまだ喜多しかアガっておらず、しかも全局テンパイ一番乗りしている。
テンパイを入れた後の押し引きのバランスも素晴らしく、爆発の予感を感じさせる親番を迎えたのだが、東4局 喜多の手牌が伸び悩んでいると、ミスターサマーカッパー浦山が来た。
12巡目 浦山
ポン ツモ ドラ
2,000・3,900
これまでの感触の良さを全て奪われてしまいそうな浦山の力強いアガリ。
それでも喜多の手牌は活きていた。
南1局 4巡目でこの1シャンテン
ドラ
6巡目、テンパイを入れた浦山が放したドラのを仕掛ける。
喜多の河にはがあることもあり平時ならば打とするであろうが、喜多の選択は先にソーズで仕掛けていた西野を狙う打。
思惑どおり同巡、西野がをツモぎり最速で7,700のアガリとなった。
西野もこの早い巡目でなければ放銃しないであろうし、テンパイ、待ち選択、アガリまでのタイミングは出来すぎな感はあったが、喜多の老練さが場にピッタリとハマった。
南4局 喜多の配牌
ドラ
誰もがまず最初にこの最終形が頭に浮かぶはず。
〔〕
喜多 5巡目
リーチ
10巡目
ツモ 6,000オール
1回戦、「喜多の半荘」が完成した。
1回戦成績
喜多+38.0P 浦山▲3.2P 龍太▲7.7P 西野▲27.1P
1回戦終了時
浦山+162.3P 西野+142.1P 喜多+139.6P 龍太+125.1P
喜多の1人浮きトップにより一気に混戦へ。
2回戦(起家から 西野・浦山・龍太・喜多)
東1局 西野の配牌
ドラ
とても苦しい展開だった1回戦直後の開局親番でもらったこの配牌、精神的にも滅入ってしまいそうである。
しかし、西野は揺るがない。しっかりとギリギリまで最高打点も見据えた丁寧な手順を踏む。
12巡目
ツモ
なんとこのテンパイが入る。しかもは全員がほぼツモぎるであろう牌だ。
15巡目
ツモ 6,000オール
1回戦のマイナスを、ポイントだけではなく精神的にも全て払拭するような力強いアガリ。
そしてたたみかけるように次局、
9巡目
ロン
龍太から12,000は12,300。
次局、龍太の2,000・3,900で親は落とされるものの、
東3局 9巡目
ロン ドラ
喜多から6,400。悪配牌から自然なツモでテンパイしその同巡ロン牌が場に放たれる。
東4局 6巡目
加カン リンシャンツモ ドラ
1,300・2,600
5巡目東のポンテン、次巡を加カンしリンシャンツモ。流れるようなアガリを連発する西野、もはや独壇場だ。
南1局 再び西野の親番
西野12巡目
ツモ ドラ
巡目が深く親番だけにテンパイをとってしまいそうな場面だが、躊躇なくツモぎる西野。
この時、序盤から安い仕掛けを入れていた龍太の手牌が急激に伸びていた。
龍太
加カン
西野の最終形
17巡目にを引いているのだが、龍太の河はホンイツにも見えず場の状況から見ても、12巡目ツモでテンパイをとっているとこのは止まらなかっただろう。
イケイケ態勢からも決して揺るがない状況判断とその押し引きのセンスには恐れ入る。
南2局 龍太が浦山から7,700をアガリ浮きに回ってくるが、
南3局 6巡目 西野
ツモ 500・1,000
龍太の親番もあっさりと流し、
南4局 5巡目 西野
ドラ
自然な手順で流れるようにピンフをテンパイし、同巡、吸い込まれるように30,900の龍太が九をツモぎる。
2回戦、「西野の半荘」が完成した。
2回戦成績
西野+50.0P 龍太▲2.1P 浦山▲18.0P 喜多▲29.9P
2回戦終了時
西野+192.1P 浦山+144.3P 龍太+123.0P 喜多+109.7P
西野が混戦模様を全て吹き飛ばし一躍踊り出た。
3回戦(起家から 浦山・喜多・西野・龍太)
2回戦、西野の独壇場に為す術もなかった浦山、是が非でも連荘したい3回戦の開局、手が入る。
10巡目
ポン ドラ
しかしすぐに危険を察知され3者オリに回り、引けずに流局。ここ一番のテンパイが実らない浦山。
次局、龍太の6巡目リーチに対し真っ向勝負の構えであったが、あっさりと引きアガられる。
龍太
ツモ
2000・4000は2100・4100
心折られそうな龍太のアガリであったが、
東2局 12巡目 浦山
ポン ポン ツモ
浦山の選択は暗カン。最も討ち取りたいのは西野であるが既に対応に入っており、喜多と龍太の進行状況も微妙との判断だろうか。
それとも、既に「気持ち」の領域にあったのかもしれない。
暗カン ポン ポン リンシャンツモ
3000・6000
実った。いよいよ浦山の反撃だと思いきや西野の壁は高い。
東3局 7巡目 親番の西野のポンテンに秒で捕まる。
ポン ドラ 5,800
タイミングと言い打った相手と言い再び心折られそうな瞬間であったが、次局、丁寧にピンフを仕上げ400・700は500・800をツモアガる、決して折れていない。
東4局 11巡目 浦山
リーチ ドラ
親番の龍太も真っ向勝負するが決着つかず流局。
東4局1本場 13巡目 喜多
ツモ ドラ
喜多にとってはこれが最後の抵抗となった。
浦山
チー ロン ドラ 喜多から7,700は8,000
南3局 浦山44,400、西野31,300。
このままトップで終えたとしても西野が浮きである以上、最終戦は30P以上を追うことになってしまう。
どうしてもこの西野の親番でアガリを被せたい、悪配牌であったことも相まって七対一直線の手組みで進める。
10巡目 浦山
リーチ ドラ
「リーチ!」の発生に明らかに「気持ち」を感じた。
13巡目 西野
リーチ
タンヤオのみであるが西野は追いかた。西野的に「理」でのリーチであっただろうが、「気持ち」の領域でもあったのかもしれない。
浦山にとっては絶対に勝たなければいけないこの勝負。そして16巡目、高らかに「ツモ!」の発生とともに浦山の手元にが踊った。
リーチ ツモ ドラ 3,000・6,000。
3回戦、「浦山の半荘」が完成した。
3回戦成績
浦山+35.4P 龍太+6.3P 西野▲9.7P 喜多▲32.0P
3回戦終了時
西野+182.4P 浦山+179.7P 龍太+129.3P 喜多+77.7P
浦山が劇的に西野に並び着順勝負にまで持ち込んだ。
最終4回戦(起家から 西野・浦山・喜多・龍太)
2人を抜かなければならない龍太は相当に厳しい状況であり、喜多はこの状況では場を乱すような牌は1牌たりとも打たないだろう。
事実上、着順勝負となった西野・浦山のマッチレースである。
東1局 12巡目 龍太
リーチ ドラ
親番の西野は宣言牌の⑦を仕掛けて粘る。
チー
西野最終形
チー チー
龍太のアガリ牌を2枚食い下げてのテンパイ維持。
〔 西野31,500 浦山28,500 〕
東1局1本場
浦山 西野の初打、自風のNを仕掛け、続けて次巡、西野のツモぎった9を仕掛ける。
チー ポン ドラ
なんとこの土壇場において2巡でこのテンパイが入る。
しかしこれが引けないうちに、西野が追いついた。
8巡目
ポン
このめくり合い、さすがに浦山に分があるかと思っていたところ、10巡目 龍太
ツモ 打
ここは2人の勝負にしてほしかったとも思うが、龍太もこのテンパイでは放銃も致し方ないであろう。
〔 西野31,500 浦山33,700 〕
東2局 全員ノーテン
東3局1本場
西野のリーチ宣言牌にチーテンを入れた浦山が即引きアガる。
チー ツモ
300・500は400・600+供託1,000
〔 西野30,100 浦山36,100 〕
東4局 龍太の親リーチに押し返す西野、浦山はベタオリ、2人テンパイで流局。
〔 西野31,600 浦山34,600 〕
東4局1本場 7巡目、浦山が龍太からタンピン2,000は2,300+供託1,000のアガリ、浦山リードで南入する。
〔 西野31,600 浦山37,900 〕
南1局 一刻も早く落としたい西野の親番、
浦山 7巡目
ツモ 400・700
じわりじわりと差を広げ満貫1つ分のリードを作り親番を迎える。
〔 西野30,900 浦山39,400 〕
南2局 9巡目 西野
ツモ ドラ
2は全山だと河が語っている。西野、迷わずリーチの発生。
12巡目
ツモ 1600・3200
〔 西野37,300 浦山36,200 〕
西野が技アリの七対子で上に立つ。
南3局 唯一我が侭が許される最後の親番の喜多、それでも3人をケアした手組みをする姿はとても素敵だった。
その上での終盤の2,600オールは感動さえ覚えるものであった。
〔 西野34,700 浦山33,600 〕
南3局1本場
西野、3巡目にピンフのみのテンパイが入る。もちろんリーチだ。
一歩も引かない浦山、6巡目に追いつく。
ツモ ドラ
「リーチ!」
「ロン!」 西野の手牌が倒れる。
ロン 2,000は2,300
二人の大接戦もついにオーラスを迎えた。
〔 西野37,000 浦山31,300 〕
南4局 西野5,700のリードではあるが在って無きが如しの点差、西野は自ら決着をつけに行くだろう。
4巡目 ドラ
から動いた西野。
浦山 8巡目 絶妙な手順で条件のテンパイを果たす。
「リーチ!」 気持ちの入った発生と宣言打牌は少し震えていた。
もちろん真っ向勝負の西野、10巡目、追いついた。
チー
2人がツモぎり合う時間が長く永く感じた。師である西野、切磋琢磨し合う浦山、どちらにも勝ってほしい。
お互いがツモった牌を河に放つ瞬間、また瞬間が、身が摩り減る思いだった。
もう勝敗などどうでもいいとさえ思った。
浦山の河にが置かれた瞬間、溢れ出す感動で涙をこらえるのに必死だった。
最終4回戦成績
西野+27.7P 喜多▲1.1P 浦山▲10.4P 龍太▲16.2P
優 勝 西野+210.1P
準優勝 浦山+169.3P
第3位 龍太+113.1P
第4位 喜多+76.6P
以上、第50期北海道プロリーグは西野拓也の3回目の優勝で幕を閉じました。
駄文に長らくお付き合いいただきまして大変ありがとうございました。
北海道本部所属プロたちの麻雀に対する真摯な姿勢、熱意を感じ取っていただければ幸いであります。
最後に、西野さん、浦ちゃん、とても素晴らしい戦いを魅せてくれて感謝感謝です。
自分も早く2人の領域に入れるよう益々日々研鑽させていただきます。
喜多さん、たくさん勉強させていただきました。特に1回戦の巧みな押し引き、最終4回戦の徹底したスタンスにはグッと来るものがありました。
龍太、よくがんばったよ。
残念ながら「龍太の半荘」は無かったけど、「ホンモノの中村」になったね。
順位 |
名前 |
第1節 |
第2節 |
第3節 |
第4節 |
第5節 |
最終節 |
合計 |
優勝 |
西野 拓也 |
▲ 3.7 |
91.3 |
▲ 34.8 |
80.4 |
36.0 |
40.9 |
210.1 |
準 |
浦山 祐輔 |
76.9 |
35.4 |
41.1 |
▲ 10.0 |
22.1 |
3.8 |
169.3 |
3 |
中村 龍太 |
46.2 |
9.6 |
22.1 |
68.8 |
▲ 13.9 |
▲ 19.7 |
113.1 |
4 |
喜多 清貴 |
42.8 |
30.0 |
28.3 |
▲ 22.5 |
23.0 |
▲ 25.0 |
76.6 |
5 |
須賀 智博 |
▲ 24.3 |
61.0 |
61.7 |
▲ 15.0 |
9.4 |
|
92.8 |
6 |
加藤 晋平 |
23.1 |
20.5 |
45.4 |
▲ 5.6 |
3.2 |
|
86.6 |
7 |
佐藤 賢忠 |
▲ 16.5 |
11.7 |
41.6 |
37.9 |
▲ 0.4 |
|
74.3 |
8 |
石田 雅人 |
27.3 |
7.0 |
16.4 |
▲ 11.8 |
6.6 |
|
45.5 |
9 |
平島 誉久 |
31.5 |
▲ 12.1 |
▲ 10.3 |
▲ 10.5 |
28.5 |
|
27.1 |
10 |
池田 太郎 |
▲ 18.1 |
23.6 |
▲ 2.8 |
4.0 |
▲ 11.4 |
|
▲ 4.7 |
11 |
藤原 洋一 |
4.8 |
50.6 |
▲ 35.8 |
26.6 |
– |
|
▲ 23.8 |
12 |
野坂 健一 |
▲ 6.9 |
▲ 26.4 |
3.6 |
▲ 8.9 |
▲ 48.4 |
|
▲ 87.0 |
13 |
吉木 輝 |
▲ 11.6 |
▲ 101.7 |
▲ 3.5 |
15.9 |
▲ 6.8 |
|
▲ 107.7 |
14 |
小川 稔貴 |
34.9 |
11.7 |
▲ 14.4 |
– |
– |
|
▲ 117.8 |
15 |
三盃 貴之 |
▲ 33.1 |
▲ 52.2 |
▲ 5.9 |
19.2 |
– |
|
▲ 122.0 |
16 |
真光 祐尚 |
– |
30.6 |
– |
▲ 42.0 |
– |
|
▲ 161.4 |
17 |
野々川 博之 |
▲ 39.1 |
3.1 |
6.6 |
▲ 17.7 |
▲ 20.8 |
|
▲ 67.9 |
18 |
三盃 志 |
▲ 50.1 |
▲ 54.2 |
▲ 8.6 |
▲ 15.3 |
▲ 4.5 |
|
▲ 172.7 |
19 |
砂原 裕美子 |
▲ 51.3 |
▲ 72.3 |
▲ 44.1 |
▲ 16.1 |
0.4 |
|
▲ 183.4 |
20 |
市川 敦士 |
– |
▲ 27.0 |
▲ 67.5 |
– |
▲ 42.3 |
|
▲ 236.8 |
21 |
村上 良 |
▲ 34.8 |
▲ 42.2 |
▲ 40.1 |
▲ 77.4 |
|
|
▲ 194.5 |