2017年8月27日、第29回静岡リーグ(プロアマ混合)が「Look up(静岡県浜松市)」で行われた。
半年間の予選を経て見事決勝に勝ち進んだのは以下の5名。
1位通過 岡本和也(静岡支部、2期ぶり3回目)

2位通過 川崎義之(静岡支部、初出場)

3位通過 鷲見隼人(静岡支部、6期ぶり5回目)

4位通過 鈴木秀幸(静岡支部、2期ぶり7回目)

5位通過 青嶋宏樹(一般、初出場、後に33期静岡支部)

先に決勝のシステムについて説明したい。
決勝はそれぞれ予選1位通過の方から順に、40P、30P、20P、10P、0Pのアドバンテージが与えられる。
その後、抜け番を1人ずつ決めて半荘5回を行い、5回戦終了時点でのトータル最下位が足切りで脱落となる。
5回戦までのポイントを持越し、最終6回戦を残った4人で行い、トータルトップの者が優勝となる。
次に簡単な選手紹介をしたいと思う。
1位通過 岡本和也
高打点の手組みと、1節での爆発力が持ち味。その爆発力は本物で、半荘4回で100P以上叩くのを何度見たことかわからないほどだ。
予選でも決勝圏外から予選最終節で130Pを叩き、堂々の1位通過であるから恐れ入る。
第27期新人王を獲得するなど、短期決戦で最も力を発揮するタイプであるから、今回の決勝で本命に挙げる声も多い。
2位通過 川崎義之
予選最終節こそマイナスとなったが、常に安定した麻雀で決勝の切符を手に入れた。
多少の放銃や裏目にも常にブレない打牌ができる選手だと感じる部分があり、特に表情や動作にクセがない。
決勝ではメンタル面もかなり重要なファクターとなるため、ここはかなり強みとなるだろう。
3位通過 鷲見隼人
過去に優勝経験もある鷲見。高打点の手組みだけでなく、場を見極める冷静さも持ち合わせている。
今回で5回目の出場となるが、しばらく優勝からは遠ざかっているだけにそろそろタイトルが欲しいところだろう。
決勝経験豊富なだけに、そのアドバンテージも存分に生かしてもらいたい。
4位通過 鈴木秀幸
今回のメンバーで最も決勝経験が豊富な鈴木。自身が出場した直近2回の決勝では見事どちらも優勝を収めている。
勝ち方を熟知している上、鳴きを使った多彩な技も繰り出してくる。
周りが対応するようだと鈴木が有利になる展開も想定できる。
5位通過 青嶋宏樹
一般参加で唯一決勝の座を掴んだ青嶋さん。
ここ最近の成長ぶりは私も感じるところで、局面を見る力はプロにも引けをとっていない。
追いかける立場なので緊張せず自分の麻雀を思い切り打ってもらいたい。
1回戦(起家から鷲見、青嶋、鈴木、川崎)
東1局は鈴木の1,000・2,000のツモアガリ。
東2局も鈴木が場に安いソーズにアガリを求める良手順で青嶋さんから7,700を出アガリ、スタートダッシュを決める。












ロン
ドラ
東4局0本場
親の川崎にチャンス手が入る。10巡目の手牌。













ドラ
ターツ選択なのだが、川崎はここから
を落とし、次巡ツモ
でリーチ。
をツモり2,000オールのアガリになるのだが、
より先に
をツモっていたことを川崎はどう捉えたか。
東4局1本場。
鈴木にテンパイが入り先制リーチ












リーチ ドラ
ここに川崎が追いつき、追いかけリーチ。












リーチ
ここはここまでアガリを重ねてきた者同士、早速1回戦の勝負所となった。
この結果を予想するのはかなり難しかったが、勝ったのは川崎。
鈴木が
を掴み3,900は4,200の放銃となる。
2本場は青嶋さんが意地の2,000・4,000ツモアガリで川崎の親が落ちる。
南場に突入し、南1局は親の鷲見がピンフドラ1をヤミテンで捕えるなど冷静にアガリを積み、連荘に成功する。
南1局までで全員にアガリがでる一進一退の攻防が続き、南4局2本場には、
鷲見 28,200 青嶋 27,600 鈴木 28,900 川崎 33,300 供託2,000
となり、全員トップの可能性が残されている状況となった。
南4局2本場 親川崎
この大事な局面で6巡目にファーストテンパイが入ったのが青嶋さん。












ツモ
ドラ
MAXタンピン三色まで見える手牌にツモった牌が
。正直テンパイする牌の中ではかなり嬉しくないツモであるが、青嶋さんは打
リーチを選択。
ツモるか川崎からの直撃ならば現状ラスから一気にトップになるかなり競りの状況の中、この
待ちに運命を委ねた。
結果は1人テンパイでの流局。
結果論とはなるが次巡のツモが
、さらに次巡ツモが
、その次巡は
。アガリ形や手牌の変化がいくつか確認できる為、このアガリ逃しは気持ちが揺れるかもしれないと感じた1局であった。
1回戦成績
川崎+14.3P 青嶋▲1.4P 鈴木▲5.1P 鷲見▲10.8P
1回戦終了時
川崎+44.3P 岡本+40.0P 鷲見+9.2P 鈴木+4.9P 青嶋▲1.4P
2回戦(起家から岡本、鈴木、川崎、鷲見)
東場は小場の展開が続き、迎えた南1局0本場。
4人全員の手がぶつかる。
親の岡本が10巡目にマンズのメンホン1シャンテンとなる。












ドラ
同10巡目、北家川崎が
を引き入れドラ入りの七対子をテンパイ。













11巡目には南家鈴木が追いつく。













さらに同11巡目、西家鷲見がリーチ。












リーチ
鷲見は高めタンピン三色の大物手。打点的にも待ち的にも一歩有利か。
この白熱した局を制したのは鈴木。メンホンの岡本から余った
を捕え値千金の1,300。
打点以上に価値のあるアガリとなった。
南2局は岡本が先ほどの失点を補って余りある2,000・3,900。
ドラの
と
のシャンポン待ちを力強くツモり他家を突き放す。
南4局0本場
ここで親の岡本に先制リーチ。












リーチ ドラ
現状1人浮き状態でのトップ目の親のリーチ。打点も十分。これほど怖いものはない。
その中でこの親リーに向かったのが川崎。無筋を勝負し、12巡目に追いかけリーチ












リーチ
またも勝負所となり、打牌音のみが響く中、発声は川崎。岡本から高目
がツモ切られ5,200。
これでトップには及ばずとも見事浮きを確保する。
川崎のメンタルの強さが垣間見えた瞬間であった。
この半荘は1度も親が連荘することなく8局で終了した。
2回戦成績
岡本+12.8P 川崎+6.3P 鈴木▲7.1P 鷲見▲12.0P
2回戦終了時
岡本+52.8P 川崎+50.6P 青嶋▲1.4P 鈴木▲2.2P 鷲見▲2.8P
3回戦(起家から鈴木、岡本、青嶋、鷲見)
東1局0本場
岡本が8巡目に2,000・4,000をあっさりリーチでツモアガる。












リーチ ツモ
ドラ
入り目がドラ
のリーチで即ツモ。勢いそのままにこの半荘も幸先よくトップに立つ。
東3局0本場
今度は5巡目に西家鈴木にチャンス手が入りリーチ。












リーチ ドラ
この時点で高目の
が3枚、
が1枚山に残っていたが結果は流局。
ここまでを振り返ってみると、岡本、川崎はしっかり手が入りアガリもついてきている。
逆に鈴木は手こそ入るがアガリが遠く、青嶋さんは3者の攻防をなんとか耐えて躱している印象。鷲見は率直にかなり苦しい戦いを強いられている。
南1局0本場
西家青嶋さんに第一ツモでドラが暗刻になる勝負手が入る。手牌も順調に育ち、9巡目にリーチ。












リーチ ドラ
すぐに追いついたのが親の鈴木。次巡に追いかけリーチ。












リーチ
2人ともに3メン待ちで面白い戦いとなったが、ここは青嶋さんが
をツモアガリ2,000・4,000。この時点でこの半荘のトップに立つ。
南4局0本場。
持ち点は 鈴木30,700 岡本34,200 青嶋35,100 鷲見20,000。
この状況で鈴木が11巡目に以下の形から
をポン、打
。












ドラ
3,900以上がほぼ確定の当然といえば当然の手順と仕掛けだが、無情にもこの
がピンフドラ1のテンパイを入れていた岡本に放銃となる。
この放銃で鈴木が沈み、岡本は2連勝となった。予選ポイントを考えれば、川崎を除く3名はかなり優勝が難しくなったといえる。
3回戦成績
岡本+14.2P 青嶋+9.1P 鈴木▲5.3P 鷲見▲18.0P
3回戦終了時
岡本+67.0P 川崎+50.6P 青嶋+7.7P 鈴木▲7.5P 鷲見▲20.8P
4回戦(起家から岡本、川崎、鷲見、青嶋)
東2局0本場
西家青嶋さんが6巡目に以下のリーチ












リーチ ドラ
ピンズの下目はかなり場況が良く見え、理にかなったリーチといえる。
このリーチに真っ向勝負を仕掛けたのが南家の鷲見。
無筋を数回押し、青嶋さんがツモ切ったドラをポンして以下のテンパイ。






ポン

暗カン



をツモれば倍満のテンパイを入れるも結果は流局。
鷲見はこういった大物手をアガリに結び付けられないとかなり厳しくなってくる。
東4局1本場は岡本が2,000・3,900。
岡本は要所でしっかり満貫クラスのアガリをたぐり寄せている印象だ。
南1局
12巡目、ここで南家川崎にツモり四暗刻のテンパイが入る。












ドラ
この時点で山には
が1枚だけ残っていたが、すぐに鷲見の手牌に吸収され、この手牌が開かれたのは流局後となった。仮にこれが成就していたら、岡本が親だけにほぼ大勢が決まっていたと言っても過言ではなかった。開かれた手を見て岡本はゾッとしただろう。
南2局1本場
今度は青嶋さんにチャンスが訪れる。
7巡目の手牌












ツモ
ドラ
選択が残る形となり、選んだ牌は
。次巡のツモが
で打
としシャンポン待ちでのテンパイを入れる。さらに2巡後、
を引き入れたところで両面リーチ。












リーチ
ここに追いつくのが親の川崎。自分で切っている当たり牌
を2枚引き入れ追いかけリーチ。
こうなると軍配は川崎。
のツモアガリで2,000は2,100オール。












リーチ ツモ
青嶋さんはツモ
の段階でマンズに手をかけていればすぐに
待ちでのリーチとなり、川崎から出アガっていた可能性も高いだけに何を思ったか気になるところだ。
南3局2本場
親の鷲見のリーチに2人が染め手で押し返す格好となる。以下鷲見の手牌。












リーチ ドラ
この時点で南家青嶋さんの手牌









チー


さらには北家川崎の手牌













結果から言うと、完全手詰まりの岡本が暗刻の
を青嶋さんに放銃となるのだが、道中の川崎の手牌が、












ツモ
となり、ここからドラ
をトイツで落としていったのだがこれはどうだったか。
現状トップ目でもあり、何よりも打牌がかなり目立つ。瞬間の
と万が一のドラのポンテンに構えられる
切りや、タテも残す
切りもあったのではないか。その場合は展開が変わるため結果は追えないが、私には意外な一打だった。
南4局0本場は川崎が鷲見から3,900を出アガリ、長かった4回戦は終了した。
4回戦成績
川崎+25.7P 岡本+8.5P 鷲見▲6.3P 青嶋▲27.9P
4回戦終了時
川崎+76.3P 岡本+75.5P 鈴木▲7.5P 青嶋▲20.2P 鷲見▲27.1P
5回戦(起家から鈴木、川崎、青嶋、岡本)
この半荘終了時、トータルラスの者が途中敗退となり、最終6回戦は残りの4名で行うことになる。
優勝争いはほぼ実質2人に絞られてきたといってもいいだろう。
東4局0本場
鈴木、川崎がぶつかる。
鈴木、10巡目に
をポンして以下のテンパイ









ポン

ドラ
ここに数巡後さらに
をツモり









ポン


鈴木の手が12,000点に化ける。
一方で川崎は驚異的な牌の伸びを見せ14巡目に追いつく。













川崎はそろそろ優勝の文字が頭にちらつき始めてもおかしくないころだ。
ここの勝負でアガリきるか、放銃となるかでは天と地ほどの差であろう。
迎えた18巡目、ツモの声は、青嶋さん。ツモのみの300・500。
注目の大物手対決はどちらもアガリには至らなかった。
南1局1本場
ここで手が入ったのが岡本。10巡目にリーチ。












リーチ ドラ
本当に岡本は手が落ちない。数巡後にあっさり
をツモり2,000・4,000。
岡本の満貫のツモアガリは何回目だろうか。手が入った局はしっかりアガリに結びついている。
さらに南3局1本場。
南家岡本にまたしても早いテンパイが入る。












ドラ
ダブ南暗刻の6,400。これが7巡目である。
ここに飛び込んだのが当面のライバル川崎。
ほぼ防ぎようのないこの直撃で岡本はかなり優位に立つ形となった。
私はメモに、「決定打。ほぼ岡本で決まり」と書き記した。
5回戦成績
岡本+25.2P 青嶋+12.0P 鈴木▲14.6P 川崎▲22.6P
5回戦終了時
岡本+100.7P 川崎+53.7P 青嶋▲8.2P 鈴木▲22.1P 鷲見▲27.1P
6回戦(起家から川崎、青嶋、鈴木、岡本)
5回戦までのトータル最下位の鷲見が途中敗退となり、残った4人で最終戦が開始された。
岡本と川崎のポイント差は47.0P。1人浮きでのトップラスを作っても30,000点近く離さないと優勝できない計算だ。
まずは起家の川崎が執念でテンパイを維持し親番を継続。
迎えた東1局の2本場。
西家鈴木の先制リーチが襲うも、ここも川崎が追いかける。
鈴木の手牌












リーチ ドラ
川崎の手牌












リーチ
見ての通り同テン。見ている側としては面白いこの戦いを制したのは川崎。
を引き当てさらに連荘に成功する。まだ運は川崎に味方しているようだ。
続く3本場にようやく岡本が1,000点で親落としに成功する。
岡本も受けに周り過ぎると川崎の独壇場となりかねない。ここが最終戦の難しさだろう。
東2局1本場
南家鈴木の8巡目の手牌












ツモ
ドラ
カン
待ちの8,000のテンパイにツモってきたのが
。
テンパイが入る直前に川崎に
を打たれていることもあるか、ここで打
とする。
別段普通の選択なのだが、この選択が川崎の信じられないアガリを生むことになる。
まずこの待ち選択を変えた瞬間に岡本から
がツモ切られる。
その時点での川崎の手牌









ポン


とても間に合いそうにないピンズのホンイツの2シャンテン。
だが2巡後ここにドラの
をツモり、そのタイミングで鈴木が
を掴みこれを川崎がポン。
すぐに
のツモアガリとなる。2,000・4,000。






ポン

ポン

ツモ
川崎の
がタッチで間に合っている事、鈴木の選択が裏目になったこと、テンパイの入っている鈴木が
を掴むことなど、全てが川崎にプラスに働いている局だった。
これはひょっとするとひょっとするかもしれない。
東3局は鈴木が親で連荘に成功し、点数の積み重ねに成功。
迎えた東3局3本場。
この半荘まだ見せ場のない岡本に奇跡が起きる。
まずはまたも親の鈴木が先制リーチ。












リーチ ドラ
この時点での岡本の手牌













染まってはいるが、ほぼ受けに回ることが予想される手牌。
ここからリーチを受けて一発目のツモが
、そして打
。次巡ツモ
、打
。あっという間にメンホン七対子のテンパイを入れ、2巡後にラス牌の
を手繰り寄せた。












ツモ
この4,000・8,000で現状11,200点持ちからほぼ原点に復帰する。こういった岡本の一撃必殺には毎回驚かされる。もはや人間業ではないとさえ思えてくる。
南1局1本場
岡本の4,000・8,000もありまだまだアガリが欲しい親番の川崎。
慎重に打牌選択し、10巡目に待望のリーチ。












リーチ ドラ
今度はこれに対抗したのが青嶋さん。
15巡目に追いかける。












リーチ
お互い山に3枚ずつ残っている五分の対決。軍配は青嶋さん。
ハイテイで
をツモり3,000・6,000は3,100・6,100。
川崎の最後の親が終わった。
南2局0本場
一度持ち点の確認をしておくと、
青嶋 30,400 岡本 25,000 鈴木 29,900 川崎 34,700
まだ岡本が有利なのは間違いない。
川崎は後3局で20,000点近く欲しい計算だ。
注目の川崎の配牌












ドラ
中の上といったところだが、この手牌が9巡すると以下のようになるから麻雀は面白い。当然リーチを打つ。












リーチ
結果は2巡後に高目の
をツモ。跳満の親かぶりをした後、跳満をアガリ返すというミラクル。本当にこの方々の生命力には恐れ入る。
しかも川崎はこの状況でも表情や動作にほとんど変化がない。このメンタルの強さがミラクルを起こす原動力なのかもしれない。
南3局も川崎は待ちの選択を誤らず、鈴木から5,200を出アガる。
ほぼ岡本と並びでオーラスに突入した。
南4局0本場
現状では僅差で岡本が上だが、川崎はツモであれば400・700以上。岡本からは1,000以上、鈴木からは2,600以上、青嶋さんからは4,500以上という少し複雑な条件になっている。
注目の両者の配牌
岡本













ドラ
川崎













どちらもツモ次第というところ。
岡本もノーテンで伏せられない為とりあえず1回はアガリに向かうしかない状況だ。
ここでツモが効いたのは川崎。
丁寧にピンフのテンパイに照準を合わせた手組で10巡目にテンパイ。













ツモるか直撃で優勝となる。鈴木と青嶋さんは完全に受けている。岡本は放銃牌を打たずにテンパイを目指さなければならない。
冷静な川崎でもツモに力が入っているのが伝わってくる。
終局かと思われた16巡目、静かに川崎の手元に
が置かれ、第29回静岡リーグ決勝は幕を閉じた。
6回戦成績
川崎+35.4P 青嶋▲7.0P 岡本▲14.2P 鈴木▲14.2P
最終成績
川崎+89.1P 岡本+86.5P 青嶋▲15.2P 鈴木▲36.3P 途中敗退 鷲見
今回の決勝は川崎の初優勝で幕を閉じ、プロ1年目でのタイトル獲得となった。
見ている私自身も少し熱くなる部分があり、何より率直に面白いと思える決勝だった。
選手のみなさん、本当にお疲れさまでした。川崎プロ、おめでとうございます。
そして今回の静岡リーグに関わったすべての方に感謝したいと思います。