今期の十段戦もついにベスト8を迎えた。
誰が勝ち上がっても不思議ではない、ベスト8に相応しい選手達が、現十段位内川幸太郎への挑戦権をかけて最後の関門に挑む。
魚谷侑未(東京本部、第44期王位、第6、7期女流桜花他、セガサミーフェニックス)
櫻井秀樹(東京本部、第31期十段位、B2リーグ)
沢崎誠(前年度決勝シード、東京本部、第13期十段位、第27期マスターズ他、KADOKAWAサクラナイツ、A1リーグ)
藤崎智(前年度決勝シード、東京本部、第16、33、34期十段位、第30期鳳凰位他、KONAMI麻雀格闘倶楽部、A1リーグ)
1回戦(起家から、沢崎・魚谷・櫻井・藤崎)
開局から踏み込んだ攻めを見せたのは藤崎。
藤崎らしいテンパイ取らずがフリテンとなってしまうものの、意外にもフリテンリーチを敢行。
リーチ ドラ
しかし開局を制したのは魚谷。幸先の良いスタートを切った。
ツモ ドラ
開局は空振りに終わったものの、この日の藤崎は攻めに攻める。
東2局1本場に2,600を沢崎からアガると、続く東3局は2巡目にオタ風のからポン。
7巡目にはこのテンパイ。
ポン ロン ドラ
この16,000に飛び込んだのは沢崎。
自身が好形だった故に仕方ないと捉えるか、他の選択肢があったと考えるのか。沢崎ならではの解決方法があるのなら聞いてみたいところではあるのだが。
大きな失点となった沢崎だが、南1局の親番ですぐに失点を挽回する。
藤崎、早々の四暗刻1シャンテンもなかなか有効牌を引けず…
それを横目に沢崎9巡目、七対子のテンパイを取らずにホンイツへ。
12巡目沢崎、ドラのをチーテン。
チー ドラ
対する櫻井は15巡目、をポンしてチンイツテンパイもいったん打としてホンイツの仮テンに。
ポン
ここにツモ。さすがにこのは止まらないか。
櫻井が沢崎に11,600を献上。先程の倍満放銃をすぐにリカバリーする。
続く南1局1本場、親番の沢崎は2巡目からを仕掛ける。
沢崎8巡目ポン。さらにドラのを引いて、
ポン ポン ドラ
ここに飛び込んだのはまたしても櫻井。
11,600は11,900。沢崎はたった2局で負債を完済する。
勢いに乗った沢崎は南1局2本場、9巡目リーチを放つ。
リーチ ドラ
このリーチに果敢に勝負を挑んだのは魚谷。
待ちは山に1枚の魚谷、安めながら1,300・2,600と結果を出す。
リーチ ツモ
魚谷は南4局も攻める。15巡目ドラを重ねてリーチに。
リーチ ドラ
ここに放銃はまたしても櫻井。
苦しい戦いを強いられた櫻井。1人大きく離されて1回戦を終了することとなってしまった。
1回戦成績
藤崎+26.9P 魚谷+17.9P 沢崎+2.4P 櫻井▲47.2P
2回戦(起家から、魚谷・沢崎・藤崎・櫻井)
2回戦も藤崎と沢崎の対決からスタートする。
東2局、藤崎としては珍しい、ドラ単騎の七対子で先制リーチに打って出る。
リーチ ドラ
追いついた親番沢崎、9巡目リーチ。
リーチ
沢崎のは山に5枚、対して藤崎のは山に1枚だけだったが…これを引き当てたのは藤崎。価値ある3,000・6,000でこの半荘も一歩リード。
ここまで苦しい展開の続く櫻井。これ以上離されてしまうのは本当に苦しくなってしまう。親番で迎えた東4局も、沢崎からの先制リーチを受ける。
ドラ
対する櫻井は2巡目ダブをポン。その時の牌姿は、
ポン
と、アガリにも程遠く打点も見込めない形。
しかしここにツモ、打。ポン、打。
ここで沢崎のリーチをもらう。万事休す。
それでも櫻井は11巡目、をチーしてテンパイ。
この時点では山に1枚。さらにドラのを重ねて打点アップ。そしてを引き当てて起死回生の4,000オール。
ポン ポン チー ツモ
このアガリをキッカケに、細かい加点を繰り返した櫻井。
南2局2本場も、沢崎の追撃を受けるもののしっかりと引きアガリ、1回戦の負債をほぼ完済。1人浮きの大トップで2回戦を終了。2度目の戴冠に向けて追撃態勢を整えた。
リーチ ツモ ドラ
2回戦成績
櫻井+39.1P 魚谷▲3.8P 藤崎▲12.5P 沢崎▲22.8P
2回戦終了時
藤崎+14.4 P 魚谷+14.1P 櫻井▲8.1P 沢崎▲20.4P
3回戦(起家から、沢崎・魚谷・藤崎・櫻井)
1回戦は藤崎、2回戦は櫻井と、大トップで終えた序盤戦。
打って変わって3回戦は静かな立ち上がりとなった。
東1局1本場、沢崎8巡目、をポンしてホンイツへ。
次巡もポンしてテンパイ。
ポン ポン ドラ
魚谷が沢崎へ2,900は3,200の放銃。このアガリは嵐の前の序章に過ぎなかった…。
大きな点棒の移動が無く迎えた南1局2本場、4巡目櫻井、ポン。を暗刻にしてマンズのホンイツへ。しかし急所は藤崎と沢崎の手に。
その仕掛けを見た沢崎、櫻井と同色のマンズに一気に寄せる。
魚谷10巡目、マンズが高いとみてソウズの一気通貫のチーテン。しかしこれがジュンカラ…。
こうなると、沢崎の一人舞台。
沢崎12巡目、メンチンテンパイ。次巡、ツモで暗カン。
暗カン ロン ドラ
ここに飛び込んだのは魚谷。
痛恨の18,000放銃で、膠着状態から沢崎が一気に抜け出す事に成功。
更なる加点を目指す沢崎。
南1局3本場は藤崎から沢崎2,900は3,500。
南1局4本場も藤崎から沢崎2,900は4,100。
こうなると沢崎は止まらない。いや、止められない。
南1局7本場、沢崎4巡目カンからチー。
そこからドラの、と引き込み、
チー ツモ ドラ
をツモって三暗刻付きの6,000は6,700オール。沢崎の時間は全く止まる気配を見せない。
ようやく沢崎の親を落としたのは櫻井。南1局9本場、
ロン ドラ
このピンフで沢崎の親を落とすと、南2局1本場
ツモ ドラ
沢崎の仕掛けを受けるもしっかりと対応した櫻井、大きなツモアガリで2,000・3,900は2,100・4,000。原点に復活する。
勢いにのる櫻井は南3局9巡目、四暗刻テンパイ。出アガリでも倍満の超勝負手に。
ドラ
このテンパイに対し藤崎が10巡目にリーチ。
暗カン リーチ ツモ
櫻井のツモる手にも力が入るが…
ここは藤崎がをツモアガリで2,000オールと櫻井の夢を打ち砕く。
さらに藤崎は南4局、櫻井13巡目リーチを受け、
リーチ ドラ
藤崎同巡、ヤミテンに。そしてドラと振り替わり櫻井からの出アガリ。
ロン ドラ
このアガリで藤崎は3着をキープ。
さらに櫻井の原点を割り、櫻井との差を詰める貴重なアガリとなった。
3回戦成績
沢崎+71.7P 櫻井▲2.6P 藤崎▲28.7P 魚谷▲40.4P
3回戦終了時
沢崎+51.3P 櫻井▲10.7P 藤崎▲14.3P 魚谷▲26.3P
4回戦(起家から、沢崎・櫻井・魚谷・藤崎)
沢崎が特大トップを取り、1人大きく抜け出した展開となった4回戦。2番手の椅子を狙う3人の差は約15P。ここからは着順争いもより一層シビアな戦いが見られそうだ。
しかしこの半荘も沢崎が連荘を重ねる。
東1局も5本場まで連荘するが、沢崎の攻勢を受ける3者はしっかりと受け、沢崎の加点を許さない。
東3局、親番は魚谷。大きく構えてメンゼン進行の手筋で進めるも…ここに忍んだのは忍者藤崎。
ロン ドラ
3人の競り合いから一歩抜け出す大きなアガリ。タンヤオイーペーコードラ1の5,200で魚谷にダメージを与える。
さらに魚谷には苦難が続く。
東4局、魚谷ドラのから積極的に仕掛ける。もポンして、
ポン ポン ドラ
親番藤崎、オタ風の二鳴きでホンイツに。
ポン ドラ
この2人の仕掛け合いにコッソリと忍び寄ったのは櫻井。
ロン ドラ
ドラポンの魚谷からを討ち取り8,000。
藤崎にしっかりと喰らいついていく。
それでも、魚谷は攻め続けるしかない。
南1局1本場、櫻井6巡目、ドラ単騎の七対子のリーチを受け、
リーチ ドラ
後がない魚谷、腹を括って攻める。
苦しいながらもテンパイを果たしてリーチに打って出る。
暗カン リーチ ツモ ドラ
このツモアガリで櫻井を沈め、何とかギリギリ食い下がる魚谷。
さらに魚谷は南3局、4巡目にリャンペーコーのリーチ。
リーチ ツモ ドラ
魚谷、意地の4,000オールのツモアガリで一気にトップ目に。勝ち上がりに可能性を残す。
しかし…
勝負の神様は魚谷にさらなる試練を与えた。
南3局1本場、魚谷7巡目先制リーチ。
リーチ ドラ
このリーチを受け、丁寧に受けたのは藤崎。
のトイツ落としから入り、魚谷の当たり牌を重ねてタンピンのテンパイに。
さらにドラと振りかわってのタンピン三色ドラ1に変化したところでリーチに踏み込む。
リーチ ロン
この藤崎の勝負リーチに飛び込んだのは…魚谷。
魚谷を奈落の底に突き落とす12,000の一撃で、再びトップに躍り出る。
南4局、逃げ切りを図る沢崎は9巡目にチー。
するとこの仕掛けで、櫻井に原点復帰の条件を満たすテンパイが入る。
櫻井は当然のリーチに打って出る。
リーチ ドラ
櫻井はツモれば原点復帰も…
掴んだのは魚谷。魚谷も前に出るしかない状況だっただけに放銃は責められない。
櫻井は僅かに原点に届かず、魚谷は2連続ラスでいよいよ後がなくなる。2人にとって厳しい結果となった4回戦オーラスであったが、最終戦はどのような展開が待ち受けているのか。
4回戦成績
藤崎+26.1P 沢崎▲1.5P 櫻井▲4.2P 魚谷▲20.4P
4回戦終了時
沢崎+49.8P 藤崎+11.8P 櫻井▲14.9P 魚谷▲46.7P
5回戦(起家から、沢崎・藤崎・櫻井・魚谷)
沢崎の通過はほぼ決定的とみると、残された椅子はたった1つ。
現在2番手の藤崎と、櫻井との差は26.7P。
一見すると厳しいように見える差ではあるが、藤崎を原点以下に沈めておけばまだまだ逆転可能な数字であろう。
魚谷と藤崎との差は58.5P。こちらはかなり厳しい数字ではあるが、ベスト16の最終戦で藤崎が見せた逆転劇を魚谷が再現することが出来れば、こちらも不可能な数字ではない。
東1局は櫻井が魚谷から1,000の出アガリ。
続く東2局は逆転を狙う櫻井の親番。
好配牌に恵まれた櫻井はメンホンを目指すが、先にテンパイしたのは藤崎。
6巡目、ドラ単騎の七対子テンパイを入れる。
ドラ
9巡目沢崎、チーテンを入れて捌きにかかる。
チー
これを藤崎から出アガリ。
点数は安いながら櫻井、魚谷とすると浮き沈みの関係が出来た事は大きいか。
東3局1本場、沢崎8巡目チー。
藤崎10巡目チー。13巡目に役牌のバックのテンパイ。
この2つの仕掛けで、12巡目櫻井に三暗刻のテンパイが入る。藤崎と沢崎の対応を見て、15巡目にツモ切りリーチを敢行。
ドラ
後には引けない魚谷、同巡にメンホンリャンペーコーのテンパイ。ここは気合いのリーチ。
リーチ ツモ
一発で高めのをツモアガリ。
4,000・8,000で一気にトップへ浮上。さらには1人浮きとなり、逆転の可能性が現実味を帯びてきた。
魚谷はまだまだ諦めない。
南1局、魚谷6巡目高め三色のリーチ。
リーチ ツモ ドラ
ここも一発で高めのを引きアガリ、3,000・6,000。
さらに藤崎との差を詰め、十段戦初の決勝進出に執念を見せる。
南2局は藤崎の親番。
櫻井と魚谷としては、何としてもこの親を落としたいところ。
櫻井6巡目、 をポンしてテンパイだがテンパイ取らず。
逆転の為に高打点を狙いに行く。ツモ、ツモであっという間のホンイツテンパイ。
さらに沢崎のリーチ宣言牌8をポンしてトイトイ変化。そして高めのツモ。
ポン ポン ツモ ドラ
魚谷に続き櫻井も負けてはいない。
3,000・6,000で一気に藤崎に肉薄。
藤崎の親カブリにより、魚谷にも逆転のチャンスが訪れた。
残り2局。まずは櫻井の親番。
藤崎▲5.1P、櫻井▲8.8P、魚谷▲14.4P。
櫻井は3.7P、魚谷は9.3Pとその差僅か。藤崎はラス落ちした瞬間に櫻井に捲られる。
南3局、まずは櫻井が仕掛ける。
カンをチーしてテンパイも、ドラを使い切る構えでタンヤオに。ドラを重ねて
チー ドラ
藤崎も仕掛け返す。ポン。もチーする事ができて、
ポン チー ツモ
ここは藤崎、見事にを引き当てる。
これで僅かにリードを広げた藤崎、オーラスを迎えての得点は、藤崎▲3.1P、櫻井▲9.8P、魚谷▲14.9P。
藤崎と櫻井の差は6.7P、藤崎と魚谷の差は11.8P。櫻井は3,200直撃か7,700。ツモアガリは1,600・3,200。魚谷は親番なのでアガリ続けるのが条件。一発での逆転なら12,000。
南4局、沢崎2巡目ダブポン。もポンしてホンイツのテンパイ。
ポン ポン ドラ
魚谷も応戦。ポン、ツモでテンパイに。
ポン 大明カン
しかし…
魚谷の手に届いた牌は。この瞬間、櫻井と魚谷の十段戦は幕を閉じ、沢崎の2年連続8回目、藤崎の6年連続11回目の決勝進出が決定した。
勝ち上がり
沢崎誠
藤崎智
5回戦成績
魚谷+23.8P 櫻井+5.1P 沢崎▲10.0P 藤崎▲18.9P
5回戦終了時
沢崎+39.8P 藤崎▲7.1P 櫻井▲9.8P 魚谷▲22.9P