『小島武夫杯帝王戦』
これは、全国で行われているプロアマリーグなどを予選とし、プロ連盟の地方本部支部8地区(北海道、東北、中部、関西、九州、北関東、北陸、静岡)から各地区プロ代表2名、アマチュア代表2名の計32名が、東京本部の代表プロ16名と、アマチュアの巣鴨道場代表、ロン2代表、麻雀格闘倶楽部代表合わせて16名、合計64名で争う今年度から新しく設立されたタイトル戦である。
日本プロ麻雀連盟初代会長で“ミスター麻雀”と呼ばれ親しまれた、
『小島武夫』
の名を冠にしたこの大会。単なる一つのタイトル戦の設立とは訳が違い、麻雀ファンを心から愛した小島プロの理念にも沿った、全ての麻雀ファンが目指すべきタイトル戦になるように、夏目坂スタジオがアマチュア選手にとっての"麻雀の甲子園”になるように祈念して設立されたタイトル戦である。
当然プロ側の熱量も凄まじく、普段のタイトル戦やリーグ戦以上の真剣勝負が繰り広げられた。また、アマチュア選手や地方プロにとってもこのような機会は貴重な場であり、それぞれの地区を背負っての戦いとなっていただけに、王位戦やマスターズ、またファン感謝祭などのプロアマイベントとも違った新しい雰囲気での大会の盛り上がりとなっていたように感じた。
初年度である第1回の今回は、故小島武夫プロにゆかりのあるプロから選出された選りすぐりのトッププロばかり。
小島武夫杯の名に相応しい選手が、7/20、21に東京に集結し、栄えある第一期の小島武夫杯帝王戦の頂きを目指して熱戦が繰り広げられたのだ。
ルールは一発、裏ドラありのWRCルール。
準決勝は各卓80分プラス1局、決勝は各回100分プラス1局となる。
決勝に進出出来るのは各卓から1人だけ。
トップ者だけが決勝に進出する事が出来る厳しいサバイバルレースだ。
それでは準決勝の各卓を振り返っていこう。
準決勝A卓
滝沢和典(予選16位)
『最後まで気を緩めずにしっかりと打ちたいと思います。』
黒田隆明(予選9位、九州代表)
『山口で普段は対局しています。恐れ多い卓に入らせて頂きましたが、遠く山口からでもアマチュアとしてこういった場所に立たせて頂けることに感謝しながら戦いたいと思います。』
森山茂和(予選8位)
『最悪の卓ですね。なんで荒プロと滝沢プロと戦わないといけないんだ…小島武夫は一体何を考えているんだ(笑)はっきり言いましてこの対局が一番の勝負所です。そういうつもりで戦います!』
荒正義(予選1位)
『昨日はちょっと出来が良すぎたんですけど、今日はそれが残っているかどうか。小島先生に喜ばれるような麻雀をみせていきたいと思います。』
(起家から、滝沢・黒田・森山・荒)
A卓はアマチュア選手が九州代表の黒田さん1人。
対するプロは森山、荒、滝沢と、プロ連盟を代表するレジェンドがいきなりの登場。
勝手知ったるプロ3人は自分の仕事をするだけだろうが、この3人に囲まれた黒田さんの心中を察すると、緊張感だけでなく脅威すら感じる事だろう。黒田さんには臆することなく自身の麻雀を打ち切ってもらいたいと願う。
開局、まずは先手を取ったのは親番滝沢。
7巡目、先制リーチと打って出る。
リーチ ロン ドラ 裏
ここに飛び込んでしまったのは黒田さん。
滝沢の第一打にはが光っていた。
丁寧にのターツ落としを選択した事が裏目に出てしまったか。裏ドラが乗らなかった事が幸いか。
滝沢としては打点的には不満残りも、まずまずのスタートを切ったといってもいいのではないか。
東2局、今度は黒田さんの親番。
ドラのトイツが黒田さんと荒に。
時間はかかったが、13巡目、黒田さんに高めツモ跳満のテンパイが。迷う事なくリーチを宣言する。
リーチ ドラ
このリーチに対して14巡目、森山に七対子のテンパイ。
ロン
黒田さんの勝負手を、森山がキッチリと捌く。
黒田さんにとっては本当に痛恨の1局となってしまった。
局は進んで東3局1本場、後に滝沢がこの局の対応を悔いた局だ。
最初にテンパイは荒。7巡目、
ドラ
ここは即リーチではなく、じっくりと手牌変化を待ってのヤミテンに構える。
しかし先制リーチは滝沢。11巡目、高め三色のピンフテンパイをリーチに。
リーチ
荒、ツモ。この変化を待っていた荒は真正面から滝沢に勝負を挑む。
リーチ ロン ドラ 裏
荒のこの判断が大正解。
先制リーチの滝沢から高めのを討ち取り3,900は4,200と浮上のきっかけを掴んだか。
続く東4局、親番を迎えた荒、配牌ダブ暗刻の超勝負手。
安めのツモながらも、4巡目リーチに。
リーチ ツモ ドラ 裏
当然のようにあっさりとツモ。持ち点は50,000点を超え、荒は一気に独走態勢に入る。
連荘を続けたい荒、続く東4局1本場12巡目リーチ。
リーチ ドラ
このリーチを受け、ここまで苦しい展開の続く黒田さんであったが13巡目に追いつきテンパイ。
リーチの選択もあるも、ここはヤミテンに。
このヤミテンの判断が大正解。生牌のを引いて受ける。
次巡、荒のアタリ牌を引いていただけに、黒田さんとしては好判断の1局となった。
この粘りが活きたか、東4局3本場、黒田さんにドラ暗刻の勝負手が入る。
7巡目ポン、10巡目引きでテンパイ。
ポン ドラ
仕掛けを受けた滝沢であったが、10巡目リーチに踏み切る。
は互いの手に。滝沢のが2枚、黒田さんのが1枚。この勝負の行方で展開は大きく変化するのだが…
ここは滝沢がをツモって700・1,300は、1,000・1,600。
黒田さんとしては荒を追いかける大チャンスを逃した形となってしまった。
荒を追いかける3者。
各自の親番は加点チャンスだけに、南入してからは一局一局が勝負となってくるはずだ。
まずは滝沢の親番。何とか連荘をしたいところだったが、先手を取ったのは森山。南1局1本場9巡目リーチ。
暗カン リーチ ロン ドラ 裏
待ちは文句なし。暗カンして裏ドラチャンスでもあったが…
荒が放ったのは安めの。裏ドラも乗らず1,600は1,900。荒にとっては助かったと言えるだろうか。
森山とすれば荒からの直撃は追いかける立場としてはプラスに考えるところだろう。
逆に親番が落ちた滝沢とするとかなり厳しい状況に追い込まれた。
続く南2局は黒田さんの親番。しかし手牌が苦しい。
逃げる立場の荒、10巡目テンパイ。も、役無しのカン。ここは当然のヤミテンに構える。
ドラ
親番の落ちた滝沢、加点が欲しいだけに僅かな望みに賭けて11巡目に先制リーチ。
リーチ
現在2着目の森山16巡目、ホンイツのチーテンに
チー
この2人の攻勢に挟まれては、黒田さんとしてはかなり厳しい状況となってしまった。
最後まで可能性を探るものの、無念のノーテン。滝沢、森山の2人テンパイで、黒田さんとしてはここで事実上の敗退となってしまった。
残るは後2局。森山と荒の親を残すのみ。時間的にも残り3局がギリギリといったところ。
追手の森山としては、荒との点差約20,000点をどうやって詰めていくのかがカギとなるだろう。
そんな森山に大チャンスが訪れた。
南3局1本場森山14巡目、チャンタ三色のテンパイ。
引き上がっての跳満狙いも十分に考えられるところだが、森山は荒からの直撃を狙いに慎重にヤミテンに構える。
ロン ドラ
テンパイの前巡、荒は1シャンテンからのカンチャンターツを払って打。
この一打を森山の目は見逃さなかったのだ。
まさにこのタイミングしかない絶好のヤミテンは、荒が築き上げたポイントを一瞬にして奪い取る、チャンタ三色ドラ1。一気に形勢は逆転し、今度は荒が追いかける立場に。
小島武夫の系譜を継承する森山らしい一撃。このアガリは本当に価値のある12,000となったのだ。
こうなると、荒も滝沢もターゲットは森山となる。
南3局2本場、滝沢8巡目テンパイも、打点が足りない。
ドラ
七対子のテンパイも、ドラのを引くまではリーチには踏み込めないだろう。
対する荒は9巡目、役牌三暗刻のテンパイ。
ロン
このテンパイを果たした瞬間に、80分のコールが鳴る。この局プラス1局での終了が確定。
対局者に残された局は残り2局。
勝ち上がりの為には前に出るしかない九州代表の黒田さん。ドラのが対子の七対子を決める為には、を切り出す道しか残されていなかった。
役牌三暗刻は60符3翻の8,000は8,600。
森山を再度逆転して、残り1局となった。
荒と森山の差は2,900。
滝沢は倍満ツモも僅かに届かず。
実質的に2人のアガリ勝負となった。
南4局、泣いても笑ってもこの局で終了となる。
まずは荒が仕掛ける。
3巡目、ポン。自力でアガって勝ち上がりを決める腹であろう。
難解な選択も残っていたが、10巡目、荒は見事にテンパイを果たす。
ポン ドラ
が、この待ちは既に山に1枚。
すぐに滝沢に吸収され、自力でのツモアガリはない状態に。
後がない森山、1シャンテンが長く焦れるところだが、13巡目テンパイ。
リーチ ドラ
ヤミテンで直撃かツモアガリ。滝沢と黒田さんからは出アガリが出来ない。しかし状況が状況だけに、2人からの出アガリは恐らくないであろう。
それでも森山はリーチを選択した。
これが森山の中に脈々と流れている【小島イズム】なのだろう。“魅せて勝つ”道を選んだように感じた。
結果…
荒、森山の2人テンパイ。
最後まで手に汗握る戦いとなったが、荒の勝ち上がりで準決勝A卓は幕を閉じることになった。
〜戦いを終えて〜
黒田隆明(予選9位、九州本部代表)
『攻めていいのか、判断に迷う局が多かった。あんまり覚えてないです。』
滝沢和典(予選16位)
『567高め三色のリーチが満貫になるからって理由だけでリーチしてしまったのですが、あのリーチをヤミテンにしていたらどうだったか…?後は難しかったです。』
森山茂和(予選8位)
『(12,000直撃のシーンを振り返って)荒プロがを切ってきたから、ひょっとしたらが出るかもと思って。その後の荒プロの満貫が凄かったね。荒プロおめでとうございます。』
荒正義(予選1位)
『(東3局1本場の)カンをずっとヤミテンにしていて、と振り返ってでアガれたから、手ごたえはかなりあった。次の配牌を見たら『ほら来た!』って感じだったので。(森山に放銃した)は、嫌な気がしていたんですよ。切らなくてもいいじゃないですか。やめちゃおうかなぁと思ったんですけど…勝てて良かったです。ありがとうございました。』
準決勝B卓
丹野賢一(予選7位、巣鴨道場代表)
『2月に行われたプロアマオープン優勝で本大会に出場の権利を頂きました。僕が麻雀を覚えた80年代、小島さんはスーパースターでよくその姿を見ていましたので、その冠がついた大会に出られる事は光栄に思っています。今日は頑張ります。』
宮内こずえ(予選15位)
『A卓が素晴らしすぎて…観てて逆に緊張しちゃってて、いつもの麻雀を打てるかはわからないですけど、小島先生に女流で一番お世話になったのは私だと思うので、小島先生の力をお借りしてここを勝ち抜きたいと思います。』
五月女義彦(予選2位、関西本部代表)
『関西プロアマリーグの昨年度の上位者で戦って勝ち抜いてきました。プロアマリーグには15、6年出場させてもらっています。昨日の予選は手が入ってツキすぎていたので、今日はどうなるかわかりませんが、出来ることはやって頑張りたいと思います。』
中庭三四郎(予選12位、ロン2代表)
『ロン2予選を勝ち上がってきました。手元がおぼつかないのでご了解をお願いします。どんな状況でも、出来る限りの事をやって楽しみたいと思います。』
(起家から、丹野・宮内・五月女・中庭)
先程のA卓はプロ3人の対局だったが、こちらB卓はプロが宮内1人。アマチュア3人が宮内に対して挑戦する形となった。
とはいえ、丹野さんはプロアマオープン優勝者、五月女さんは関西競技麻雀界の強豪、中庭さんは厳しいロン2予選を勝ち上がっての準決勝進出だけに、どんな結果になるのか想像もつかない戦いとなった。
局が動いたのは東2局1本場、五月女さんは5巡目テンパイも、テンパイとらず。まだまだ余裕がありそうだ。
6巡目丹野さん、ペンをチーして、とドラののダブルバックに。
チー ドラ
五月女さん7巡目、理想的なツモでリーチを宣言。
リーチ ロン ドラ 裏
をポンした丹野さんからが出て2,000は2,300。初アガリにホッと一安心の五月女さん。堂々とした打ち回しに自信の色が窺える。
さらに五月女さんは攻める。東3局、丹野さん7巡目リーチを受け、
リーチ ドラ
親番の五月女さん、9巡目に追いつきリーチに。
リーチ ロン
安全牌に窮した中庭さんから5,800の価値あるアガリ。五月女さんはまずは一歩抜け出す事に成功する。
このままでは五月女さんペースか…
と思われた瞬間、ここでロン2代表の中庭さんがベールを脱ぐ。
東3局1本場、前局気持ちいいアガリを決めた親番の五月女さん、次局の配牌はなんと、
打 ドラ
234三色含みの1シャンテン!一気通貫も視野に入れ、第1打は当然打。
ここでロン2代表の中庭さんがこのにポンの声。次巡ポンで役が完成し、
ポン ポン
ツモ打、チー打で、あっという間のテンパイに。
ポン ポン チー
この仕掛けによって、好配牌の五月女さんは無情にも迂回を選択。
五月女さんの6,000オールが見える配牌を、ポンの一声で潰した形となった中庭さん。結果、最後には再度テンパイ復活した五月女さんから1,000の出アガリ。
点数は安いものの、五月女さんのチャンス手を封じ込めた中庭さんの仕掛けには恐れ入った。
中庭さんが魅せるのなら、丹野さんだって負けてはいない。
東4局、丹野さん2巡目、
ツモ ドラ
さぁここから何を切る?
色々な手役の可能性がある中、丹野さんは何と打!この手が7巡目にはドラを重ねて、
リーチを宣言。
リーチ ツモ ドラ 裏
形を見ればドラのを重ねた理想的なリーチに。
しかし難解な手筋なだけに、このテンパイ形を組める男が世の中にどれくらいいるのか?
そして当然のように一発ツモ。裏ドラもで3,000・6,000。丹野さんが一気に抜け出し、南入へ。
ここまで息を潜めていた宮内、ようやく一つ結果を出す。
南1局、まずはアクションを起こしたのは中庭さん。7巡目ポン。次巡ポン。で一気にチンイツへ。
ポン ポン ドラ
対する宮内は9巡目テンパイ。ここは平和と三色の変化をみて打でヤミテンに。
このを丹野さんがポンテンにとる。
ポン
宮内としては、この手を最高形に仕上げたかったところだが、ここはそのまま宮内のツモアガリで500・1,000。ようやく南入しての初アガリ。追撃態勢を整える。
局は進んで南3局1本場、ここまで苦しい展開の中庭さんが切り込む。
中庭さんは7巡目テンパイ。そして逆転を目指して即リーチに。
リーチ ロン ドラ
このリーチに飛び込んだのはトップ目の丹野さん。裏ドラは乗らなかったが、3,900直撃で本当に誰が勝ってもおかしくないオーラスとなった。
トップの丹野さんが34,000、2着の五月女さんが32,800。その差僅か1,200点。3着の宮内が29,500で4,500点の差。3,900直撃か、1,000・2,000ツモ。脇からは5,200。中庭さんは23,700だがオーラスの親番。本当にわからない点差だ。
そして迎えた南4局、好配牌は中庭さん。逆に苦しいのは丹野さん。宮内は条件つきの手組や仕掛けが必要で、五月女さんは早くテンパイしたいところ。
宮内8巡目、2枚目のをポンしてトイトイに。
連荘を狙う中庭さん、同巡リーチに。場合によっては一気の浮上も考えられるリーチだ。
リーチ ドラ
勝ち上がりには後が無い宮内、11巡目、をポンしてドラのを勝負に出る。これで勝ち上がりの条件は整った。
ポン ポン
この2人に追いついたのは五月女さん。同巡役無しながらテンパイに。
五月女さん、ここは腹を括ってリーチを宣言。
リーチ ツモ ドラ 裏
すると…五月女さんは何とこのリーチを一発ツモ。
さらに裏ドラが3枚のおまけつき。
色々な動きがあり、バラエティーに富んだ内容を見せてくれたB卓は、終始安定した打ち回しを見せた五月女さんが最後の直線で差し切り逆転勝利を収めた。
〜戦いを終えて〜
中庭三四郎(予選12位、ロン2代表)
『最後にツモって裏が乗れば逆転の手が入ったのですが…アガれなくて残念でしたが、私の実力が出た半荘でした。また研鑽して戻って来たいと思います。ありがとうございます。』
宮内こずえ(予選15位)
『最後はこうするしかないかなと思ったんですけど、南場の親番でもう少し粘れば良かったと思いました。』
丹野賢一(予選7位、巣鴨道場代表)
『南場、トップ目に立ってから鳴きで早めに流していきたかったんですけど、それが上手く実らなかったです。普段通りの戦い方は出来ました。』
五月女義彦(予選2位、関西代表)
『途中すごく手が入っていたのですが、それがことごとくアガれなかったんで…最後も親に1回アガってもらってと思っていたんですけど、1回勝負なんで。ツイてました。』
準決勝C卓
しーら(予選3位、巣鴨道場代表)
『この前この場所で負けているので、今日は頑張りたいと思います。』
稲岡ミカ(予選6位、関西本部代表)
『関西本部の予選があったんですけど、そちらで勝ちあがって本戦に出場しました。今日は最後まで悔いなく打てたらいいなと思います。』
藤原隆弘(予選11位)
『まだ準決勝なのでかかってはいないのですが、一発勝負、トップ条件という対局は今まで勝った事がないのであんまり自信がないのですが、トップ一本狙いでいきます。頑張ります。』
皆川直毅(予選14位、東北本部代表)
『東北の方やいろんな人に応援してもらっているので、イイ麻雀が打てるように頑張ります。』
(起家から、しーら・稲岡・藤原・皆川)
C卓はプロが3人。
関西代表の稲岡、東北代表の皆川と地方勢に、巣鴨道場代表のしーらさんと道場長の藤原。
東京VS地方勢といった見方も出来るか。
藤原としーらさんとは巣鴨道場でかなりの対戦回数があるとの事。相性も含め、当人たちにしかわからない感情もあるだろう。また藤原は、『小島武夫杯』という事でかなりの気合いが入っての戦いになっているはず。トップにしか意味の無いこの戦いは果たしてどんなドラマが見られるのだろうか。
東1局、最初のテンパイはしーらさん。
ピンフや一気通貫の変化があるこの形から、7巡目即リーチに打って出る。
リーチ ドラ
同巡稲岡、こちらもリーチに。真正面からぶつかり合う2人。
リーチ ロン ドラ 裏
時間はかかったが、稲岡がしーらさんから2,600の出アガリ。幸先の良いスタートを切った。
続く東2局は藤原VSしーらさんの1局。
藤原13巡目のポンテンで、ホンイツのテンパイ。
ポン ドラ
皆川16巡目七対子ドラ2のテンパイに。
皆川は不穏な空気を感じてか、終盤だけにヤミテンを選択
しーらさん17巡目、藤原と同色のメンホンテンパイも…
余剰牌のが藤原のアガリ牌。
ツモ 打 ドラ
しーらさんから藤原が5,200のアガリで一歩リード。しーらさんは2局連続の放銃で苦しい立ち上がりとなってしまった。
逆に藤原としては狙い通り。このリードを上手く活かせるか。
藤原の勢いは止まらない。
東3局、親番を迎えた藤原は5巡目リーチに。
リーチ ドラ
ここも戦いを挑んだのはしーらさん。
9巡目テンパイ。こちらもリーチと勝負に出る。
リーチ
稲岡10巡目テンパイ。稲岡はヤミテンを選択。
同巡皆川テンパイ。皆川もヤミテン。これで4者共にテンパイに。
しかし…
この激戦を制したのはまたしても藤原。
高目のを引きアガっての4,000オール。本当に貴重な加点となった。
このままでは藤原のワンサイドゲームになってしまうのでは?と、誰もが感じ始めていた東3局1本場、ここでも攻めるのはしーらさん。
12巡目のしーらさん、ピンフイーペーコーのテンパイを即リーチに。
リーチ ツモ ドラ 裏
4度目の正直とでも言えば良いのだろうか。しーらさんは高目を一発ツモ。
裏ドラも乗せて3,000・6,000は3,100・6,100。失点を一気に挽回して、2着目に浮上。藤原追撃の一歩を踏み出した。
南1局、さらに勢いをつけたいしーらさんの親番。
藤原6巡目テンパイも、ドラ単騎の仮テン。手牌の変化を求める。
ドラ
稲岡7巡目、カンのチー。 そして10巡目チーでこの形。
チー チー
仕掛けたものの、まだまだアガリまでは時間が掛かりそうだ。
対する親番のしーらさんは11巡目、を暗刻にしてテンパイ。待ち取りの選択があるも、でリーチに。
リーチ ロン ドラ 裏
稲岡15巡目にを引いてテンパイ。
次巡ツモは止まらない。痛恨の12,000の放銃で脱落。しーらさんはこのアガリで藤原に肉薄。一対一の構図になってきた。
南1局1本場、しーらさんはまだ攻め抜く。
しーらさん8巡目、稲岡から放たれたドラのをポン。そして稲岡からが出て12,000は12,300。藤原を一気に捲ってトップ目に躍り出た。
ポン ロン ドラ
稲岡としてはこの放銃で敗退がほぼ確定。
トップしか意味のない戦いで、最終的な手を見ると放銃も仕方なく映る。
しかし序盤からの手牌構成を丁寧に進めると、ドラを組み込んだ形にもなり得ただけに、ドラを切り出したことが結果的には敗着。残念な放銃となってしまった。
ここまで受けに回る展開が多かった皆川。
手牌進行で後手に回る局面が多く、しーらさんの攻勢もあっては仕方ない部分もあったのかもしれない。しかし、決勝の椅子はたった1つ。このまま黙って見ているわけにはいかないだろう。
南1局2本場、皆川13巡目リーチ。
リーチ ドラ
こちらは無念の流局。
そして南3局皆川11巡目テンパイ。
メンホンの勝負手だけに時間を使って少考。そしてリーチを宣言する。
リーチ ドラ
このリーチに立ちはだかったのは…やはり藤原。
ポン ロン
皆川のリーチに屈するようなことがあると、藤原自身の勝ち上がりに黄信号が灯るところであったが、ここは皆川からを討ち取り親番キープ。勝ち上がりに可能性を残した。
局は進んで南3局2本場、しーらさん追撃の為には親番を落とせない藤原は9巡目、三色の手変わりを待たずに即リーチを宣言。
リーチ ドラ
しかしこの藤原のリーチは、
ロン
しーらさんが藤原の現物のを稲岡から出アガリ2,000は2,600。藤原のリーチ棒込みで3,600の収入。追いかける藤原、いよいよ後がなくなった。
しーらさんと藤原の差は12,300。条件的にはかなり厳しいか。
そして運命の南4局。
藤原9巡目七対子テンパイ。これでは条件に届かず。そして10巡目、待望のドラのを引く。
しーらさんとは6,400直撃か跳満ツモアガリ。リーチを宣言してツモアガリにかけるか、しーらさんからの直撃を狙うか…
藤原はヤミテンを選択し、しーらさんからの直撃に賭けた。これは9巡目、親の皆川からドラのが放たれた事も理由の1つ。この瞬間なら直撃の可能性もあるとみたのだ。
テンパイした次巡、しーらさんの手にはが届いた。そして12巡目、しーらさんテンパイ。打。藤原の手が開かれる。
ロン ドラ
この道しかないと思われる藤原の大逆転劇。
見事としか言いようがないアガリであったが、このアガリはまだこの後に巻き起こるドラマのプロローグであった事は、この瞬間には誰も想像出来なかった。
〜戦いを終えて〜
稲岡ミカ(予選6位、関西本部代表)
『いつも通りと言ってはなんなんですが…大体こんな感じです。南3局の放銃は申し訳なかったです。最後は流石藤原さんといった感じでした。楽しかったです。ありがとうございました。』
皆川直毅(予選14位、東北本部代表)
『見せ場なかったです。(笑)南3局のメンホンはヤミテンだったな、と。入れ替えてまだ粘れたかなと思ったのですが。』
しーら(予選3位、巣鴨道場代表)
『楽しかったです。藤原さんとやる時は配牌がいつも悪いので、いつも通りだなと思っていたのですが、途中から段々と良くなって今日は勝てるのかなと思ったんですが。最後は悔しいですね。』
藤原隆弘(予選11位)
『皆川くんがを切った時、稲岡さんが合わせなかったからは山にあるかと。直撃の僅かな可能性にかけてそれが上手くいったと。奇跡的でした。』
準決勝D卓
斉藤健人(予選4位、北関東支部代表)
『北関東のプロアマリーグに出場しています。応援してくれている地元の方々もたくさんいるので、頑張って勝ち上がりたいと思います。』
山屋洋平(予選13位、北海道本部代表)
『今日は視聴者の皆さんに、印象に残るようなワクワクする麻雀を打ちたいと思っています。』
小泉陽平(予選12位、北陸支部代表)
『北陸プロアマリーグに出場しています。せっかく掴んだチャンスなので、一発勝負ですけど決勝に残れるような打ち方で頑張ろうと思います。』
葭葉(5位通過、巣鴨道場代表)
『巣鴨道場に週3回くらい行っています。最初で最後のチャンスだと思いますので、精一杯打ちたいと思います。ちょっと緊張していますけど、打っているうちに緊張もほぐれるかと思います。』
(起家から、斉藤・山屋・小泉・葭葉)
予選最終卓となるD卓。
ここまで様々なパターンの大逆転劇を見せてもらったが、このD卓でもあっと驚くようなプレーの連続であった。
プロは北海道本部代表の山屋ただ1人。
対するアマチュア選手は、北関東支部代表の斉藤さん、北陸支部代表の小泉さん、そして巣鴨本部代表の葭葉さんと、この卓も全国各地の代表選手が顔を揃えた。
各地区を代表する選手の戦いを是非ご覧頂きたい。
まずは東1局。
親番斉藤さんが7巡目リーチ。
リーチ ツモ ドラ 裏
打点は安いリーチだったものの、ツモって裏1の2,000オールは幸先のいいスタートと言えるだろう。
続く東1局1本場は小泉さんが魅せる。
11巡目、三色のテンパイもヤミテンに。
ロン ドラ
2枚切れのカンであったが、これを斉藤さんから出アガリ5,200は5,500。小泉さんとしても感触の良い滑り出しとなっただろう。
この2人に続くのは山屋。東2局、親番山屋は7巡目リーチ。
リーチ ツモ ドラ 裏
山に2枚しかいないであったが、山屋はあっさりと一発ツモ。4,000オールで今度は山屋がリードする。
局面はさらに動きを加速させる。
東2局1本場斉藤さんの9巡目、ドラのを引き三色確定のテンパイ。これをヤミテンで構える。
ロン ドラ
今度はトップ目の山屋から5,200は5,500。
前々局に小泉さんに放銃した手役と点数を、そっくりそのまま山屋から召し捕った斉藤さん。トップ目の山屋に迫る。
続く東3局、山屋10巡目ポン
親番でドラ暗刻の小泉さん、山屋が切ったをチーしてテンパイ。待ちはカンを選択。
チー ドラ
しかしカンはジュンカラ…。
このチーで斉藤さんに絶好のツモ。タンピン三色のテンパイをヤミテンに。1巡回してリーチを宣言。
リーチ ロン ドラ 裏
このリーチを受け、山屋はテンパイするもあっさりと撤退を選択。
1枚押していれば、小泉さんからの出アガリか自身のツモアガリもあったのだが…
結果は親番でドラ暗刻の小泉さんが、ラス牌の高目を掴んで8,000の放銃。再びトップに返り咲く。
ここまで1人苦しい展開を強いられていた葭葉さん、ようやく手がまとまり始める。
南2局3本場葭葉さん6巡目リーチに。
リーチ ツモ ドラ 裏
裏ドラは乗らなかったものの、ここへ来て葭葉さんに初アガリ。オーラスの親番に向けての足掛かりとなるか。
そう感じた矢先の南3局、葭葉さんにチャンス手が舞い込む。
6巡目リーチを宣言した葭葉さん。高目は三暗刻だが…。
リーチ ツモ ドラ 裏
見事に高目を一発ツモ。
そして裏ドラが3枚乗って4,000・8,000。
ここまで苦しんでいた葭葉さんがひとアガリでトップを逆転。このアガリでオーラスまで誰が勝つのか全くわからない展開になった。
オーラスを迎えて、トップの葭葉さんと2着の斉藤さんとの点差は僅か1,300。3着の山屋も7,700点差。三つ巴の戦いか…と思いきや、まだまだ大きなドラマが待ち構えていた。
南4局。
前局の親カブリで、小泉さんの点数は僅か6,000点に。逆転での勝ち上がりを決めるには役満のツモアガリが条件と、かなり厳しい状況でオーラスを迎える事になってしまった。
そんな状況下でも小泉さんは諦めない。
3巡目、を重ねた小泉さんの手は、
ドラ
と、大三元の2シャンテンに。すぐにが出てポン。
この仕掛けを受けて斉藤さんは7巡目チーと、自力で勝ち上がりを決める仕掛けに打って出る。
2つの仕掛けを見た葭葉さん、たまらずチーと、三色含みの仕掛けに。
アガれば通過の斉藤さん、ドラをツモ切ると、山屋がポン。山屋も逆転条件が整った。
そしてをチーしてテンパイ。とのシャンポンでアガれば勝ち上がり。
ポン チー
葭葉さん13巡目、三色のテンパイに。
チー
小泉さん13巡目、ツモで手が止まる。
ポン ツモ
全員が前に出る展開。自分が放銃したらゲーム終了。大三元の1シャンテンを諦め、打。
自身の勝ち上がりより、良いゲームを作る事を大切にしたその判断に敬意を表したい。
が…
皮肉にも次巡のツモは。
大三元のテンパイ逃し。
しかしそれが小泉さんの生き方なのだろう。
結果、山屋がを掴み、葭葉さんへ1,500の放銃。勝ち上がりの結果はまだわからない。
大三元のテンパイを果たしていても、小泉さんには大三元をツモアガる事は出来なかった。つまりはそういう事なのだろう。
しかし、まだまだドラマは終わらない。
大三元のテンパイを諦めた小泉さんに、麻雀の神、いや小島武夫はもう一度チャンスを与えたのだ。
南4局1本場、葭葉さんと斉藤さんとの差は2,800。
葭葉さんと山屋の差は10,700。勝負はまだわからない。
3巡目、葭葉さんチー。
あくまでアガリ倒して勝ち上がりを決めるつもりだろう。
このチーでツモ山がズレる。
それでも最初のテンパイは葭葉さん。
チー ドラ
追いついたのは斉藤さん。9巡目リーチを宣言。条件を満たしたリーチだ。
リーチ
葭葉さん、斉藤さんとのマッチレース。誰もがそう思っただろう。
しかし小泉さんだけは諦めていなかった。11巡目、国士無双テンパイ。
前述した通り、小泉さんは役満ツモ条件。
しかし斉藤さんのリーチ棒が出たおかげで、葭葉さんからの出アガリだけは逆転となる。
1シャンテンの山屋からが放たれる。平然とツモ山に手を伸ばす小泉さん。国士無双の見逃しだ。
勝負の行方は誰にもわからない。斉藤さんの逆転劇か。小泉さんの麻雀史に残るであろう役満での大逆転か。はたまた葭葉さんの連荘か…。
息を飲む実況解説陣。立会人の紺野も幾分前傾姿勢だ。
しかし…
ここも葭葉さんのツモアガリ。
チー ツモ ドラ
麻雀の神様はまだ勝者を決めあぐねているようだ。
南4局2本場、葭葉さんと斉藤さんの差は7,200点。
まだ逆転には現実的な数字だ。
山屋との差は13,100点。こちらはかなり厳しい状況となったと言っていいだろう。
葭葉さんとしては、今度は伏せてゲームセットとなるだけに、今局が恐らく最終局になるだろう。
13巡目、斉藤さんがリーチ。
ツモれば条件を満たすリーチだ。
リーチ ツモ ドラ 裏
3度目の正直は…
斉藤さんが掴み取った。
ラス牌のをなんと一発ツモ。
ドラマのような目まぐるしく状況が変わるこの勝負は、斉藤さんが決勝の最後の椅子を自力で掴み取ったのだった。
〜戦いを終えて〜
小泉陽平(予選12位、北陸支部代表)
『見せ場はありましたね。東場の親番がちょっとダメでしたね。(国士無双の直撃は親からならOK?)もちろんわかっていました。ありがとうございました。』
山屋洋平(予選13位、北海道本部代表)
『もうちょっと色々やりたかったんですけど、限界でした。もうちょっと暴れたかったです。』
葭葉(5位通過、巣鴨道場代表)
『本当にツイてたんですけど、いつも通りの2着麻雀でした。最後もを落として逃げようと思ったんですけど…やっぱり(斉藤さんが)上手かったですね。』
斉藤健人(予選4位、北関東支部代表)
『あれだけ配牌が良くて勝てなかったら、応援してくれた方々には笑われちゃうと思うので、とりあえずホッとしています。今日は345に縁があったかなと。(ツモった時は?)マジで⁉』