第8期WRC一次・二次トーナメントレポート

第8期WRCリーグベスト16が出揃う!予備・一次・二次トーナメントレポート

12月27日、世間は仕事納めとなり年末の雰囲気が漂っている中、巣鴨・連盟本部道場では熱い戦いに火蓋が切られた。

WRCリーグはプロリーグの垣根を超えて一発裏ドラありのWRCルールで争われるG2タイトル。ベスト16からは配信卓があるため、普段メディア露出の機会が少ないプロにとっては大きなチャンスとなる。また、今回(第8期)は2月から予選がスタートし本来であれば7月にトーナメントが行われる予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大により4月の予選が延期。自粛明けの6月半ばから再開し、約1年をかけてトーナメント開催に漕ぎ着けた。各選手はこの長い期間を戦い勝ち抜いてきただけに、ことさら気合いが入っていることだろう。

当日は予備トーナメント(2回戦)、一次・二次トーナメント(3回戦)の最大8半荘が行われ、各卓上位2名が通過。2次トーナメントを勝ち上がるとベスト16に進出となる。

予備トーナメントを戦うのは各地方から勝ち上がりの10名に本部予選30~31位の2名を加えた12名。結果は以下の通りであった。

続いて一次予選を戦うのは本部予選12位~29位の18名に予備トーナメント勝ち上がりの6名を加えた24名。結果は以下の通り。

当日最終関門の二次予選を戦うのは本部予選2~11位の10名、一次予選を勝ち上がった12名にシード選手2名(グランプリMAXの本田朋広・女流桜花の川原舞子)を加えた24名。結果は以下の通り。

この12名に櫛田利太(予選1位)、藤崎智(鳳凰位)、柴田吉和(十段位)、真鍋明広(前回優勝)の4名を加えた16名でベスト16が行われる。組み合わせは以下画像の通り。

2卓の藤崎・澤谷・伊賀・川原の対局はニコ生・OPENRECの連盟チャンネルにて放送。(別卓の結果は公式Twitterにて速報)

1月6日(水)17時~
実況:優月みか
解説:勝又健志
是非ご視聴ください。

(文:浜野太陽)

第37期鳳凰戦A1リーグ最終節B卓レポート

【鳳凰位決定戦進出者が決まる最終節。最大の山場は1回戦1局目】

 

 

首位沢崎は対局者4人中3人にかわされなければ決定戦進出。1回戦の結果を見てからの4連戦なので、その点でも有利だ。
2位佐々木は2人にかわされなければOKだが、多少振っても安泰の沢崎とは立場が違う。1回のトップラスでも転落があり得るため慎重な立ち回りが求められる。
3位西川と4位勝又は、普通の展開なら残れるのはどちらか1人だけ。直近のライバル関係だ。
5位吉田は大きなプラスが必要なため手役を作って攻めるだろう。リーチと行けば誰も吉田には振りたくない。ツモアガリを何度も決めれば可能性が見えて来る。

勝負局は東1局だった。
七対子の先制リーチは西川。河を見ると待ちの二万は間4軒の危険スジ。通常は選ばなそうな待ちだが、西川は出やすそうなスジや1枚切れの字牌より、ツモれそうな外壁の待ちを好む。実際二万は山に2枚残っていた。
同巡、勝又も七対子テンパイ。1巡前にメンツ手との両天秤を捨てて残した中が重なった。待ちはドラの九索単騎。もし西川から親満直撃出来たらいきなり逆転だ。勝又もリーチ。ドラも2枚残り。
勝負はもつれ、ハイテイは西川。二万をツモれば満貫、九索を掴めば18,000放銃。

 

 

勝又のアガリ牌九索が西川の河に放たれて勝敗は決した。親の跳満。この七対子をここ一番、大事な一局でアガるために、もう何年も並々ならぬ努力を積み上げて来ているのだ。
勝又は対局で負けた日には電車を使わず、反省しながら歩いて数時間かけて帰宅すると言っていた。麻雀IQ220の脳内で何時間も反省したら、常人の何倍悔やまなければならないのだろうか?楽しい嬉しい対局ばかりではない麻雀という競技に魅せられ、何年も勉強と反省と実践を繰り返して鳳凰位を獲り、勝又は今期またその輝かしい舞台に立つ権利に王手をかけた。

一方、西川にとって結果は最悪だった。たった1局、リーチのめくり合いで負けた。それだけで、12節かけて積み上げた勝又との+24Pリードは消え失せ、逆に▲14.9Pのビハインドを背負った。西川はこれまでの放送対局で何度も先に挙げたような独特な七対子リーチをツモアガった。保険を一切かけない手順の「ジュンチャン」で解説席やコメント欄を大いに湧かせてくれた。西川だからこのポイントを叩いたし、この18,000も彼にしか出来ない放銃だったかも知れない。
観ていて泣きそうになるほど重い一牌だった。

その後も勝又は一切手を緩めなかった。次局は佐々木の先制リーチと西川の渾身の234三色追っかけリーチに挟まれてもピンフドラドラをヤミテンで打ち取り。
さらにドラドラシャンポンをリーチしてツモアガリ。
南1局の親番では11,600の加点で一時は80,000点超え。後半は失点もあったが西川と大きな差をつけた。

2回戦は吉田がトップを取るが、勝又も浮きの2着で思うように差は縮まらない。

3回戦のトップは佐々木。これにより、勝又から佐々木にターゲットに変更する事も難しくなった。

4回戦は沢崎が特大トップ。吉田は最終戦抜け番なので、今期は▲65.0Pで全対局終了となった。西川は3着。佐々木や勝又との差がまた開いてしまった。

5回戦は沢崎のメンホン、8,000でスタート。西を掴んだのは勝又だ。とは言え、まだ西川とのポイントには余裕がある。東3局には親番佐々木が白中待ちでメンホンの18,000のヤミテン。これも勝又が掴むが、今度はしっかり止めた。(佐々木の上家の沢崎も白単騎の七対子1,600のテンパイを入れていたので、西川や勝又が白を打っても1,600で済んだ。結果は沢崎が北に待ち変えして佐々木に放銃)

西川は一生懸命に手を作るが、逆転手を作る事は出来ずに対局は終了した。

 

 

この日の卓内トップは佐々木。沢崎もプラスを伸ばした。マイナスは最小限、感触が良い時はしっかり加点。決定戦への準備は万端といったところだろう。勝又が残る一席を勝ち取った。

 

 

今期A1リーグ全対局が終了。最終成績はこのようになった。

 

 

第37期鳳凰位決定戦は来年2021年1月16日(土)から4週連続
日本プロ麻雀連盟チャンネルで生放送!
最高峰の闘牌を是非ご覧ください。

(文:編集部)

第15期女流桜花決定戦 二日目観戦記 越野 智紀

”秒速5センチメートル”
新海誠監督の映画のタイトルで、桜の花の落ちるスピードを意味しているそうです。
実際の花びらの落下速度は秒速1メートル以上と聞きましたが、そんな無粋なことを言ってはいけません。
人は繊細で、その時の心境で感じる早さが変ってくるものです。

残り8戦は逃げる人には長く、追いかける人には短すぎる試合数と言えるかもしれません。

2日目開始前成績
仲田+33.6P 川原+15.4P 亜樹+3.2P 古谷▲52.2P

5回戦

東1局、7巡目に出た3枚目の六筒をスルーした仲田が9巡目の六筒をチー。
その苦しそうな仕掛けに対し、手出しで安全牌を連打する川原。

 

 

亜樹は川原と仲田の手があまり良くないと見るや、苦しい手から二万をポンしていきます。
ポイント上位の2人にプレッシャーをかけてテンパイ料での得を狙い、あわよくばドラを引いてのアガリも視野に入れた巧い鳴きです。
ドラを持っていない人にとって、2人目の仕掛けは脅威になります。

 

 

危険を冒すには見合わない手だった川原は完全に撤退。

 

 

仲田も受けに回り、亜樹の狙いが決まりかけましたが

 

 

仲田は亜樹に絞りながらテンパイに辿り着いて流局。
1人テンパイで3,000点を得ます。

 

 

南場の親で連荘した古谷がトップ目になり、仲田はラス目へ。
追う3人には悪くない並びになるも、続く仲田の親が終わりそうで終わりません。
南3局3本場、仲田の親を終わらせようと北を仕掛けた古谷。
字牌から切っていくのが手広い受けを残す選択でしたが、一万を切って少しだけ手を狭めます。

 

 

そして6巡目に親の仲田からリーチが入る緊急事態。
五筒 三万と川原からリーチの現物が切られますが、ペン三万のターツを拾い損ねた古谷は鳴けません。
八筒は仲田の現物で山に3枚残り。
三万が鳴けていたら有利な勝負になっていましたが

 

 

1巡目に少し受けを狭めた古谷の選択。
親番で粘っていた仲田はその僅かな隙を逃さずに6,300オールのツモアガリを捻じ込んできました。
次局も返す刀で2,600は3,000オールと、3人まとめて薙ぎ倒した仲田。

5回戦成績
仲田+32.7P 川原▲1.4P 古谷▲5.2P 亜樹▲26.1P

5回戦終了時
仲田+66.3P 川原+14.0P 亜樹▲22.9P 古谷▲57.4P

6回戦
残り7戦、古谷はトップ仲田と123.7P差。
全ての局で守備を顧みず攻めるには長すぎるけど、バランス良く打っていては届かない厳しい距離まで離れてしまいました。

 

 

6回戦も仲田はリードを広げていき、現状のままの持ち点で終わると2番手の川原でさえ100P近く離れてしまう独走状態になった南2局1本場。
古谷は予め決めていたかのようなスピードでツモリ三暗刻のテンパイを外し、四暗刻を狙います。

 

 

九筒を重ねた古谷は山に残っていなかった八筒を外してのツモリ四暗刻のテンパイ。

 

 

これにトップ目の仲田が飛び込んで8,300点。
終わった後に仲田から真っ先に出てきたのがこの局の放銃の話で、

「5回戦のトップでマークする対象がいなくなったことや、上家亜樹さん下家古谷さんっていう席順の難しさ。連荘が増えて長時間の対局になり、少し集中力の持続が難しくなっていた。怪しい捨て牌と思いながらもフワッと切ってしまった。」

古谷がリスクを取って攻めたタイミングで仲田のミスが重なる偶然。
ここから試合は大きく動きました。

 

 

南4局1本場、川原の勝負所。
トイツ系の配牌で役牌重なりの価値は高いが、捨て牌の強さを優先して南切りを選んだ川原。
七対子でテンパイした時に読まれづらくなることや、良い手に見せることで他家が真っ直ぐに手を進めづらくなる面白い選択です。

 

 

仲田は親の川原に注意を払い、受けに比重を置いた進行。
その後、川原はツモリ三暗刻でリーチをして1人テンパイで流局。
連荘に成功しました。

 

 

南4局2本場、今度は高打点も狙えるチャンス手。
前局とは一転して目立たない捨て牌でアガリを目指します。

 

 

仲田も真っ直ぐな進行。
六万九万が薄く、雀頭の一万が親の現物ということもあり三筒も残して目一杯の構えです。

 

 

静かな捨て牌のままリーチが打てた川原。

 

 

同巡テンパイを入れた仲田から余った三筒で11,600は12,200点の直撃。
放銃した仲田は

「わたしのスタイルだと、こういう放銃は1回は出る。取り返すチャンスがある早い段階で出て良かった」

と、前向きな考え。
意志を貫いての放銃には一切の後悔を見せません。
会心のアガリを決めた川原は次局に4,300オールも追加して、100P先を走っていた仲田に一気に追いつきました。

6回戦成績
川原+24.0P 古谷+8.0P 亜樹▲7.1P 仲田▲24.9P

6回戦終了時
仲田+41.4P 川原+38.0P 亜樹▲30.0P 古谷▲49.4P

7回戦

 

 

6回戦で追いついた川原に風が吹き続けます。
東3局、自風の北をポンした川原はドラがトイツです。

 

 

この仕掛けに反応した仲田はドラの受けを嫌います。
川原はフーロ率が12.4%と仲田の半分以下しか鳴かない打点重視の打ち手。
早い巡目の仕掛けには安手が少なく、染め手以外ならドラトイツ以上が濃厚と仲田には読めていそうです。

 

 

仲田はタンヤオで仕掛けて1,000点のアガリ。
川原の手を潰します。

 

 

続く東4局でまたも川原にドラがトイツのテンパイが入ります。

 

 

先にテンパイを入れていたがロン牌の六索を掴んだ仲田。
川原の手をドラトイツ以上のテンパイと読むと、六索は上下両方の筋に絡んだ超本線。
躊躇いなくテンパイを崩して流局に持ち込み、川原に食い下がります。

 

 

何度も受け流された川原でしたが、プレーオフB卓に組み込まれたところから川原自身も感じていた追い風は止むことなく吹き続けます。
南場の親でも2,000オールをツモアガって川原は連勝。

「経験が一番少ないから変に作戦とか考えて自分から崩れないようにと気をつけていました。初日に浮けたことで2日目も普段通りに打てたことが良かったです。」

女流桜花Aリーグ初挑戦での決定戦になった川原は、ここまで緊張に潰されることなく普段通りの打ち方を見せてトータルトップに立ちました。

7回戦成績
川原+16.1P 亜樹+4.4P 仲田▲4.8P 古谷▲15.7P

7回戦終了時
川原+54.1P 仲田+36.6P 亜樹▲25.6P 古谷▲65.1P

8回戦

 

 

東2局、トップを走る川原のリーチを受けた古谷はメンホン七対子の1シャンテン。
追いかけるポイント状況で強引に攻めたくなるところでしたが、浮いている牌の厳しさを見て古谷は次のチャンスを待ちました。
初日の3回戦で1人沈みを避けるために見逃しをしていた人と同一人物とは思えない落ち着きです。

 

 

東3局1本場。
諦めない古谷に次のチャンスがすぐにやってきました。
5巡目リーチで6巡目ツモ、電光石火の6,100オールです。

 

 

古谷は更に4,300オールなどをアガリ続けてあっという間の70,000点オーバー。
ここまでの我慢はこの爆発を待っていたのかもしれません。

追いつめられてから冷静さを取り戻した現女流桜花に突然入った大物手の連発。
特大の1人浮きトップで、これまでのマイナスをほぼ返済です。
初日に勢いよく落ちていった桜の花が、少し緩やかに感じられるところまで古谷は帰ってきました。

8回戦成績
古谷+58.1P 川原▲7.6P 仲田▲22.2P 亜樹▲28.3P

8回戦終了時
川原+46.5P 仲田+14.4P 古谷▲7.0P 亜樹▲53.9P

(文:越野智紀)

第37期鳳凰戦A2リーグ第10節C卓レポート

【A2リーグ第10節まで終了し、最終節の組み合わせが確定。】

この日の対局は以下の5名。
1位 杉浦勘介 +230.7P
3位 藤島健二郎 +112.8P
4位 近藤久春 +88.6P
6位 和久津晶 +25.2P
11位 一井慎也 ▲35.5P

 

 

首位杉浦は2位以下と100以上の差をキープして残り2節まで来た。最終節を待たずして昇級を決めるのか⁉︎それとも混戦に巻き込まれるのか⁉︎
3位藤島は好位置に着けている。現状維持でも昇級の可能性は残るが、出来ればプラスしておきたい。今日のうちに叩く勝負をする価値はある。
4位近藤はプラスが必須のため、藤島よりもさらに勝負をかけやすい。今日はダンディの超攻撃が観られるか。
6位和久津は目標が2つある。大目標は大きく浮いて藤島か近藤のポジションを奪う事。小目標は5位以内に入っておいて最終節に上位陣との直接対決の権利を得ることだ。
一井は今日を浮きか±0で終わらせればほぼ残留。マイナスの場合は降級の可能性が残る。降級を意識しない位置にいる他4名に比べるとマイナスした時のリスクが大きい。

1回戦(抜け番 杉浦)
東3局1本場、一番戦い方の難しい一井に自然な形でチャンス手が入る。ドラ発八万のシャンポンで先制リーチ。

 

 

同じくドラドラの和久津も五万を切り飛ばして戦う構え。ツモ六索でどこからでも鳴けるホンイツに切り替えピンズを切っていく。
親番の藤島も応戦。ダブ東が暗刻の1シャンテンで自身の手に真っ直ぐの八万を勝負で放銃。
この5,200(+1,300)をアガった一井がトップを取った。
和久津、藤島はいいテンションで戦えているが、近藤は1人沈みの4着と厳しいスタート。

2回戦(抜け番 藤島)

和久津が快調。タンピンイーペーコードラ3の跳満をヤミテンで一井からアガると、南2局のリーチは高めの六索ツモ。親番でも加点に成功し、1人浮きでオーラスを迎えた。

 

 

オーラス4本場で4着目の一井がダブリー七対子ドラドラをアガって素点を回復。
2回戦は和久津の1人浮きで終了。

3回戦 (抜け番 近藤)

東3局2本場、藤島がタンヤオ三色ドラドラをヤミテンで和久津からアガる。
振った和久津もすぐに5,800をアガリ返し、南3局はメンタンピンツモイーペーコーの満貫ツモアガリで微差ながらトップ目に立つ。

 

 

しかし、この回の主役は杉浦。1人沈みのオーラスで先制リーチ。メンタンピンツモ1,300・2,600で総まくりの1人浮きとなった。

4回戦 (抜け番 和久津)

序盤は藤島がアガリ倒してリード。東4局の親番で連荘、3本場でも仕掛けていたが、近藤からリーチが入る。

 

 

白五筒のシャンポン。トイトイツモり三暗刻テンパイの杉浦から2,600(+900)のアガリで弾みをつけた近藤は、2,600オール、7,700(+600)と加点してトップを取った。

5回戦 (抜け番 一井)

5回戦はとにかくプラスが欲しい近藤、藤島、和久津がアガリに向かう打撃戦に。

 

 

東2局に白中ドラドラをアガった近藤が頭1つ抜け出すと、南2局2本場では杉浦の大物手をかわすトイトイ。1人浮きのトップを決めた。

 

 

勝負形のテンパイ打牌がロンになる場面が多かった杉浦だが、失点を最小限に抑えて2位以下と100P差の首位をキープ。本日勝ち頭の近藤が暫定2位となった。

 

 

この結果により、A2リーグ最終節の組み合わせが確定。
来年1/11から3日連続の生放送となる。

1/11(月) 7.9.11.13.15位
客野、古橋、山田、前原、亜樹

1/12(火) 6.8.10.12.14位
和久津、魚谷、麓、一井、安村

1/13(水) 1.2.3.4.5位
杉浦、近藤、内川、藤島、ダンプ

(文:編集部)

第37期 A1リーグ 最終節成績表

A2 B1・B2 C1・C2・C3 D1・D2・D3 E

第36期鳳凰位
藤崎 智
出身地(秋田)

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 11節 12節 13節 合計
1 沢崎 誠(群馬) 33.6 2.3 ▲ 17.8 ▲ 1.4 ▲ 16.2 25.7 ▲ 2.4 52.9 38.4 6.5 22.9 53.1 35.3 232.9
2 佐々木 寿人(宮城) ▲ 35.1 6.1 56.9 58.2 ▲ 46.4 4.6 20.5 4.8 60.1 ▲ 0.9 ▲ 4.1 ▲ 19.8 41.6 146.5
3 勝又 健志(東京) ▲ 24.7 81.4 ▲ 1.7 ▲ 45.2 3.9 30.9 5.5 ▲ 5.2 16.6 ▲ 66.6 1.4 55.4 23.9 75.6
4 瀬戸熊 直樹(東京) ▲ 32.4 69.3 ▲ 72.0 15.7 4.8 ▲ 20.6 ▲ 32.0 0.8 6.6 0.8 3.5 4.1 98.5 47.1
5 西川 淳(愛媛) 25.8 17.5 12.5 61.4 14.0 14.5 ▲ 32.4 ▲ 12.0 ▲ 1.8 3.8 ▲ 32.1 4.5 ▲ 71.8 3.9
6 前田 直哉(静岡) 15.8 ▲ 41.5 ▲ 49.1 6.7 12.3 23.1 3.3 59.7 ▲ 34.4 ▲ 13.1 ▲ 25.8 ▲ 5.8 21.5 ▲ 27.3
7 吉田 直(新潟) ▲ 56.3 ▲ 25.3 126.9 30.9 27.3 4.8 ▲ 26.7 ▲ 49.5 ▲ 39.1 ▲ 0.1 ▲ 1.4 ▲ 27.5 ▲ 29.0 ▲ 65.0
8 HIRO柴田(神奈川) 41.3 13.2 ▲ 50.3 ▲ 12.3 ▲ 25.5 ▲ 74.2 41.6 ▲ 25.7 19.6 ▲ 23.2 ▲ 22.8 ▲ 21.2 68.5 ▲ 71.0
9 紺野 真太郎(静岡) ▲ 3.1 ▲ 52.7 ▲ 29.6 ▲ 14.6 22.3 38.5 17.1 4.3 20.0 11.7 ▲ 27.8 ▲ 44.4 ▲ 92.4 ▲ 150.7
10 伊藤 優孝(秋田) ▲ 100.0 95.0 ▲ 76.1 ▲ 31.3 7.6 ▲ 53.4 6.4 ▲ 32.0 ▲ 19.3 12.4 50.0 35.8 ▲ 97.1 ▲ 202.0

第21期九州プロリーグ A・B・Cリーグ 第8節成績表

Aリーグ

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 合計
1 松尾 樹宏 33.9 40.5 19.3 51.0 0.7 6.8 42.8 ▲ 9.9 185.1
2 塚本 将之 28.6 82.2 12.5 ▲ 13.9 ▲ 2.6 20.9 57.4 ▲ 11.9 173.2
3 浜上 文吾 ▲ 23.6 23.4 60.3 19.0 7.7 46.5 ▲ 5.4 15.8 143.7
4 山下 将浩 26.3 ▲ 51.9 15.0 31.5 24.2 55.8 ▲ 8.3 24.1 116.7
5 和久津 晶 7.3 ▲ 8.3 ▲ 10.8 ▲ 65.6 57.8 ▲ 45.8 26.1 62.3 23.0
6 安東 裕允 ▲ 31.3 ▲ 28.5 ▲ 41.6 25.1 81.2 52.1 ▲ 28.7 ▲ 5.5 22.8
7 佐藤 健治 3.0 26.4 8.9 32.1 ▲ 64.4 56.8 ▲ 12.9 ▲ 28.6 21.3
8 下山 哲也 ▲ 50.6 16.5 ▲ 39.5 34.4 ▲ 44.6 ▲ 18.4 18.4 40.5 ▲ 43.3
9 服部 学 119.4 ▲ 12.2 ▲ 28.7 ▲ 7.7 ▲ 42.3 ▲ 81.5 5.9 3.2 ▲ 43.9
10 杉谷 晋 ▲ 55.0 ▲ 26.0 ▲ 13.7 ▲ 20.2 68.9 ▲ 38.5 24.2 11.2 ▲ 49.1
11 矢野 拓郎 23.4 ▲ 26.1 ▲ 35.6 16.8 17.8 ▲ 38.1 ▲ 36.6 20.9 ▲ 57.5
12 氏家 義成 ▲ 1.0 9.6 38.7 ▲ 81.5 12.4 ▲ 37.2 ▲ 57.3 1.6 ▲ 114.7
13 名倉 徹 ▲ 15.4 ▲ 29.5 91.7 ▲ 7.1 ▲ 86.6 ▲ 35.7 19.7 ▲ 61.7 ▲ 124.6
14 島 秀彰 40.0 ▲ 7.3 ▲ 30.5 ▲ 59.9 ▲ 34.7 18.4 ▲ 5.6 ▲ 54.7 ▲ 134.3
15 椎奈 健 ▲ 9.9 ▲ 12.8 ▲ 49.0 ▲ 68.0 3.5 37.9 ▲ 39.7 ▲ 9.3 ▲ 147.3

 

 

Bリーグ

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 柴田 祐一朗 プロ 70.9 77.9 ▲ 13.2 80.5   216.1
2 竹田 巧 テスト生 ▲ 30.3 71.4 ▲ 20.6 61.3   81.8
3 坂平 二郎 プロ 29.8 ▲ 10.7 56.0 ▲ 27.3   47.8
4 吉田 彩乃 プロ 46.8 ▲ 44.1 7.5 36.7   46.9
5 河野 みのり プロ ▲ 25.5 ▲ 9.1 64.2 7.7   37.3
6 陶山 昌明 プロ ▲ 21.1 57.7 ▲ 19.2 2.1   19.5
7 相本 長武 一般 86.4 0.0 ▲ 25.8 ▲ 49.5   11.1
8 桝井 律男 一般 12.7 45.4 1.4 ▲ 48.5   11.0
9 仲村 澪哉 プロ ▲ 43.1 3.7 15.5 32.9   9.0
10 藤岡 治之 プロ 19.8 ▲ 64.4 49.0 0.9   5.3
11 菊池 豪 プロ ▲ 10.8 12.2 12.7 ▲ 15.2   ▲ 1.1
12 岡田 雄貴 プロ ▲ 8.7 ▲ 23.7 9.9 ▲ 2.6   ▲ 25.1
13 福田 諒 プロ ▲ 60.6 24.9 ▲ 19.7 11.2   ▲ 44.2
14 安永 敏郎 一般 ▲ 13.1 ▲ 2.9 37.4 ▲ 65.7  

▲ 44.3
15 大野 徳多郎 プロ ▲ 1.7 ▲ 47.1 ▲ 19.2 5.0   ▲ 63.0
16 早田 さきこ プロ 15.1 ▲ 28.0 ▲ 51.5 0.0   ▲ 64.4
17 河野 まや プロ ▲ 30.2 ▲ 49.8 16.4 ▲ 11.7   ▲ 75.3
18 藤瀬 恒介 一般 ▲ 36.4 ▲ 13.4 ▲ 100.8 ▲ 19.8   ▲ 170.4

 

 

C1リーグ

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 伊東 宏倫 プロ 12.9 30.6 31.6 54.3   129.4
2 団野 和広 一般 0.0 31.6 3.1 35.0   69.7
3 宝輪 聡 プロ ▲ 55.8 0.0 55.1 34.6   33.9
4 三苫 太矩也 プロ 13.3 39.7 ▲ 32.0 6.1   27.1
5 岩村 美智子 プロ 13.1 23.0 23.8 ▲ 46.6   13.3
6 石原 忠道 一般 29.4 ▲ 9.1 ▲ 49.1 39.0   10.2
7 山本 えりか プロ ▲ 10.0 12.6 13.3 ▲ 14.5   1.4
8 丹羽 英夫 一般 11.0 ▲ 5.0 26.0 ▲ 35.4   ▲ 3.4
9 福田 譲二 プロ 35.1 ▲ 18.7 0.0 ▲ 30.7   ▲ 14.3
10 木室 哲朗 プロ 21.9 ▲ 69.5 ▲ 37.5 49.6   ▲ 35.5
11 堀江 戌 一般 ▲ 10.2 ▲ 22.4 ▲ 18.5 4.9   ▲ 46.2
12 渡辺 健太 プロ 18.9 4.3 ▲ 9.4 ▲ 78.7   ▲ 64.9
13 如月 明日香 プロ ▲ 32.8 ▲ 34.9 29.1 ▲ 38.6   ▲ 77.2
14 友保 美香里 プロ ▲ 46.8 ▲ 3.2 ▲ 35.5 0.0

 

▲ 85.5

 

 

C2リーグ

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 清水 智之 プロ 82.3 25.3 96.1 11.9   215.6
2 中山 賢一 一般 ▲ 13.9 ▲ 6.5 58.2 71.2   109.0
3 牟田 匠汰 テスト生 ▲ 39.6 85.5 26.9 ▲ 0.8   72.0
4 山室 泰典 プロ 13.3 11.9 ▲ 6.6 13.1   31.7
5 川島 貴博 一般 33.1 2.6 ▲ 12.8 6.0   28.9
6 渡辺 辰宏 一般 ▲ 18.6 26.9 54.5 ▲ 38.8   24.0
7 早瀬 慧 一般 61.2 52.4 ▲ 87.7 ▲ 17.4   8.5
8 石田 知幸 プロ 9.6 42.5 ▲ 63.1 0.0   ▲ 11.0
9 新宮 英樹 プロ ▲ 28.8 ▲ 58.6 62.8 0.0   ▲ 24.6
10 天野 真人 プロ 4.6 ▲ 3.9 29.9 ▲ 86.9   ▲ 56.3
11 錦辺 卓三 一般 1.2 ▲ 48.3 ▲ 42.0 0.0   ▲ 89.1
12 吉鶴 大輝 一般 ▲ 24.1 ▲ 41.4 ▲ 100.0 74.6   ▲ 90.9
13 北島 勇輝 プロ ▲ 1.4 ▲ 100.0 ▲ 23.0 7.7   ▲ 116.7
14 安部 久美子 プロ ▲ 19.1 ▲ 61.4 ▲ 42.0 ▲ 40.1   ▲ 162.6
15 世利 純平 テスト生 ▲ 54.7 ▲ 68.0 ▲ 72.2 ▲ 0.5   ▲ 195.4
16 土田 小緒里 プロ ▲ 5.1 ▲ 100.0 ▲ 100.0 0.0   ▲ 205.1

第19期北関東プロリーグ最終節成績表

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 合計
1 新井 駿一 ▲ 30.7 114.0 94.0 ▲ 46.6 ▲ 11.0 ▲ 14.2 41.7 14.6 161.8
2 吉田 幸雄 ▲ 2.0 37.8 ▲ 29.3 9.0 21.9 17.8 63.3 ▲ 14.2 104.3
3 中津 真吾 39.6 ▲ 22.7 92.3 ▲ 14.9 42.9 ▲ 33.4 ▲ 8.6 5.2 100.4
4 岡部 光輝 32.2 22.0 65.4 14.0 ▲ 50.9 16.6 ▲ 14.6 ▲ 0.1 84.6
5 小林 正和 50.6 ▲ 8.9 6.9 1.6 ▲ 9.6 ▲ 39.1 ▲ 12.8 91.8 80.5
6 高橋 信夫 80.8 ▲ 36.9 ▲ 41.4 ▲ 23.1 38.5 24.6 ▲ 40.3 67.8 70.0
7 阿部 謙一 ▲ 37.9 1.8 ▲ 5.5 13.4 ▲ 52.8 48.3 40.4 55.6 63.3
8 木暮 智貴 53.4 ▲ 42.5 ▲ 84.8 5.3 66.4 5.2 ▲ 16.5 61.1 47.6
9 須長 正和 47.6 ▲ 83.8 ▲ 26.8 50.7 79.7 6.6 ▲ 0.7 ▲ 75.4 ▲ 2.1
10 西嶋 ゆかり ▲ 64.2 ▲ 59.0 10.4 43.7 9.3 62.8 ▲ 8.4 1.5 ▲ 3.9
11 小川 尚哉 54.0 ▲ 8.8 29.3 ▲ 7.9 ▲ 38.9 20.3 ▲ 4.8 ▲ 55.5 ▲ 12.3
12 蒼山 秀佑 ▲ 0.1 ▲ 18.7 20.2 21.8 ▲ 8.1 ▲ 46.7 ▲ 15.4 13.8 ▲ 33.2
13 大月 れみ ▲ 34.5 ▲ 10.4 ▲ 36.8 39.0 16.6 ▲ 15.3 ▲ 7.6 ▲ 29.2 ▲ 78.2
14 ガース ▲ 8.8 41.6 25.4 6.4 ▲ 38.9 ▲ 92.8 12.3 ▲ 40.0 ▲ 94.8
15 後藤 隆 ▲ 12.6 ▲ 2.8 ▲ 44.7 2.3 83.1 23.4 ▲ 69.7 ▲ 100.0 ▲ 121.0
16 奥津 勇輝 7.7 ▲ 3.6 ▲ 63.0 6.7 14.0 11.2 ▲ 100.0 ▲ 24.3 ▲ 151.3
17 長井 梨世 ▲ 74.2 ▲ 49.2 35.0 ▲ 49.8 27.3 ▲ 29.9 ▲ 55.1 ▲ 9.1 ▲ 205.0
18 石倉 弘之 ▲ 60.6 ▲ 21.3 ▲ 40.9 ▲ 42.2 ▲ 12.2 ▲ 54.1 40.2 ▲ 65.6 ▲ 256.7

麻雀日本シリーズ2020決勝レポート

【麻雀日本シリーズ2020決勝は役満が飛び出し大接戦に】

【システム】
■一次予選
16人で全24回戦(各自6回戦)
下位4名が敗退

■二次予選
ポイント持ち越し
12人で全6回戦(各自2回戦)
下位4名が敗退

■プレーオフ
ポイント持ち越し
8人で全4回戦(各自2回戦)
上位4名が決勝進出

■決勝
ポイントリセット
全4回戦

【ルール】
30,000点持ち30,000点返し
順位点5,000-15,000
一発・裏ドラあり
その他WRCルールに準ずる

1回戦は佐々木、白鳥の競り合い。佐々木がリーチツモ三暗刻を決めると、白鳥が親番でドラ3枚使いの跳満をツモアガリ。佐々木がメンピン一発イーペーコーを白鳥から直撃して1回戦トップスタートとなった。

 

 

2回戦は白鳥がリードして迎えたオーラス。平賀、佐々木の2軒リーチを受け、親番瀬戸熊もポン。白鳥は四索六索七索でテンパイしていたが、佐々木のアタり牌六筒単騎で4人テンパイに持ち込む。続く1本場で満貫を決めて白鳥がトップ。

 

 

白鳥 +41.2P
佐々木 ▲0.8P
瀬戸熊 ▲4.5P
平賀 ▲35.9P

佐々木を4着にして、2着トップとプラスを重ねた白鳥が1人浮き状態。この3回戦で白鳥より着順が下になった者はほぼチャンスがなくなってしまう。

3回戦も首位を走る白鳥は順調。自身と平賀が浮きで、佐々木と瀬戸熊が沈み。並びも良い。ここで頑張ってトップを取れたら最終戦を待たずして優勝が決まってしまいそうだ。
交わし手で仕掛けた東4局3本場、目一杯に受ければポンテンを取れてアガリがあった。「アガるために仕掛けたのに、何で手狭に受けてしまったのか?」3軒リーチを受けてしまい流局を祈りながら撤退するが、佐々木がハイテイで親満ツモ。本人が一番悔いていた局だ。その後瀬戸熊に2回のドラ暗刻が入り、どちらも白鳥が満貫放銃。瞬く間に4着に転げ落ちた。

 

 

しかし、地獄を見たのは白鳥だけではなかった。55,600持ちでオーラス親番の佐々木。平賀が国士無双を狙っていそうだが、まだ19字牌が1枚も余っていない。
佐々木が東をツモ切る。平賀の手が開く。「ロン。32,000」
もしこのまま終われば優勝だと強く意識して後ろを気にする麻雀なら、役満を最も警戒する。おそらくまだ勝利を掴み取りに行く途中で前しか見ていなかったのだろう。いかにも佐々木らしい放銃だ。
かくして、佐々木は国士無双放銃で大トップ目から3着まで転落し、トータル最下位になってしまった。

3回戦終了時
白鳥 +6.9P
平賀 +6.1P
瀬戸熊 ▲0.8P
佐々木 ▲12.2P

順位点が1着順で10ポイントなので最終戦はほぼ着順勝負となった。佐々木だけ素点に少し条件があるが、全員に優勝の可能性がある。

4回戦、東1局に仕掛けて倍満のツモアガリを決めたのは佐々木だった。休憩を挟んだとは言え、国士無双放銃の次の局である。どれだけハートが強いのだろうか?

七万七万四索四索四索八索八索七筒七筒七筒  ポン 五筒 左向き五筒五筒  ツモ七万  ドラ七筒

東3局、平賀も負けじと大物手を作る。ドラの七索切りリーチでツモり三暗刻に受けたが、無常にも平賀のツモ山に居たのはカン八索の方だった。

 

 

圧倒的リードの佐々木だが、すんなり決まらないのが麻雀。東4局、親番白鳥がリーチしてツモアガリ。

七万八万九万二筒三筒三索四索五索北北  暗カン牌の背四万 上向き四万 上向き牌の背 リーチ ツモ一筒 ドラ七万四索 裏 ドラ二筒四万

リーチドラ1の手がカンドラ1枚裏ドラ5枚で8,100オールとなり、1局で逆転。3回戦から佐々木はエンジン全開でアガリ続けていたのに、土壇場で首位を奪われた。佐々木に再逆転する力は残っているのだろうか⁉︎

 

 

東4局2本場
白東ホンイツ。2,200・4,200。

南1局
リーチツモ。500・1,000(+1,000)

南2局
ダブ南ドラ。1,100・2,100。

心配は無用だった。佐々木は最後まで全部アガり倒す勢いで戦った。
オーラス白鳥の親番も自らアガって優勝を決めた。

 

 

 

片時も目を離せない対局だった。
佐々木の戦い続ける、アガリ続けようとする姿勢に心打たれた。たとえ役満を打とうが、そんな時もあると言わんばかりに、もう一度前を向いて戦う事の大切さを見せてくれた。
毎回最善を選ぼうと頭をフル回転する白鳥の気合いが十分伝わって来た。親番で裏ドラが5枚乗った時は画面に向かって思わず声をあげた。
どんなに打ちたい牌でもアタり牌なら打たない、瀬戸熊の読みの精度が凄かった。一番アガリたい牌姿で役牌を一鳴きせずに首位からの直撃成功は本当に格好良かった。
平賀の起死回生の国士無双は大いに観る者を魅了した。でももっと凄いのは絶対勝ちたいはずの対局で恐怖を表に出さずに無筋をスイスイ切り飛ばす胆力だと思う。

出来る事なら全員優勝してほしいと思う対局だった。それほど素晴らしい対局だった。

 

 

(文:編集部)

「~2日目~」 藤崎 智

第36期鳳凰位決定戦2日目(5回戦~8回戦)。
初日の4回戦まで
古川+53.2P 藤崎+6.4P 吉田▲25.7P 西川▲33.9P

3回戦4回戦と連勝してプラスで終えることが出来て気分は上々で2日目を迎える。

5回戦
トータルトップの古川プロが大きくリードする展開も、南3局1本場でアガリを拾った形で浮きの2着で終える。

 

100

 

古川+26.8P 藤崎+6.8P 西川+2.0P 吉田▲35.6P

5回戦まで 
古川+80.0P 藤崎+13.2P 西川▲31.9P 吉田▲61.3P

強い古川プロに付いて行くので精一杯の感じである。

6回戦
対古川プロとしてはまたまた先行される展開となったが、ここで再び忍者のラッキーパンチが炸裂する。

 

100

 

4巡目のリーチ。共に1枚切れの南西。どちらのタンキで待つかの話で実況の古橋プロと解説のHIRO柴田プロと佐々木寿人プロの掛け合いが面白かった。
古「南西のタンキ選択は何か理由があるのでしょうか?」
寿「タンキは西で待て!の格言の裏をかいたとか」
H「トータルトップの古川さんが捨てているからでしょ。直撃とれる可能性も考えて」
勿論藤崎は単純にHIRO柴田プロの解説通りなのだが、寿人プロの裏読みも面白かった。ある意味寿人プロの考えの方が深いのかもしれない。あくまで“ある意味”ではありますが・・・。面白かったのでまだ見られる方は是非見てみて下さい。

 

100

 

ツモりアガってさらにラッキーである。運を味方につけたかも、そんな一撃であった。

この6回戦は吉田プロとのトップ争いと、古川プロの浮きか沈みかの終盤の攻防となったのだが、全ての展開が自分に味方してくれた。

藤崎+17.3P 吉田+12.2P 古川▲5.5P 西川▲24.0P

6回戦まで 
古川+74.5P 藤崎+30.5P 吉田▲49.1P 西川▲55.9P

7回戦
完全に運を味方につけた忍者が点棒をかき集める。
そして運王と化した忍者が、2回戦目の南4局を迎えた時点では100ポイント上にいた古川プロをついに捉える。

 

100

 

なんと藤崎は3人に対応しながらかなり引き気味に打っていただけの局で、少し展開が違えば1人ノーテンで3,000点の出費となっていた局である。普通は運王といえば自分がアガリ倒して無双状態になることだが、こんなところでも忍者はちっちゃいようである。

藤崎+27.4P 西川+6.3P 吉田▲13.5P 古川▲20.2P

7回戦まで 
藤崎+57.9P 古川+54.3P 西川▲49.6P 吉田▲62.6P

僅かな点差ではあるがもはや勢い的には大差である。だがトータルトップに立つのが早すぎる。嫌な記憶が蘇る。5年前の決定戦、初日で前田プロに100ポイント差をつけられるも、3日目の途中に前田プロの親番で大三元をツモりアガって逆転した。やはり勢い的には大差であとは差が開いていく一方だろう。勝ったかな?と思ってしまったことがある。勿論対戦相手全て強いので気を抜いたつもりは全くないのだが、その後全く手が入らなくなって逆の意味で差が開いていく一方だった。

5年前の経験から8回戦目は自分にとって本当に大切で勝負をわける半荘になると思って臨んでいた。

8回戦
藤崎+14.8P 西川+4.6P 古川+1.3P 吉田▲20.7P

8回戦まで 
藤崎+72.7P 古川+55.6P 西川▲45.0P 吉田▲83.3P

2日目が終わった。8回戦もトップで3連勝。勝負の半荘と位置づけた半荘でトップがとれた。
おそらく古川プロとの一騎打ちで点差以上に勢いは大差。ここまで自分がトップ5回で古川プロが3回。正直、西川プロと吉田プロは見ていなかった。まだ半分ではあるが勝ったと思っていた。

次回の最終回では、ここまでほとんど名前の出てこなかったあの人が、プロ生活24年間味わった事のない驚異の末脚で迫ってきます。

第37期鳳凰戦A1リーグ最終節A卓レポート

【A1降級をかけた最終節の戦いは柴田が抜け出し大荒れの展開に】

A1最終節で先に行われるこの日の対局は、降級者が確定する戦いである。
今期最下位だった伊藤が2節連続で国士無双ツモアガリを決めて9位浮上。否応にも波乱の予感を感じさせる。

 

 

前田、瀬戸熊、紺野はプラスしておけば残留出来そうなポイント。裏を返せばマイナスが続けば降級争いに足を踏み入れるという事だ。

1回戦 起家から、瀬戸熊、伊藤、柴田、紺野

最初に勝負がけしたのは柴田。ペン七索の一通をリーチし、3,900オールのツモアガリ。

 

 

柴田の手牌がだんだん良くなって来た。このままトップが取れたら。そんな願いを真っ向から叩くリーチが飛んでくる。
南1局、瀬戸熊の4巡目親リーチだ。絶対振りたくない。しかし気持ちとは裏腹に柴田の手は順調に育ち345三色のカン四索テンパイ。手牌が行けと言っているが、切るのはドラ。覚悟を決めて切る。
ドラは通ったが、瀬戸熊は強かった。高めの一万をツモりあげて6,000オール。
オーラスもチンイツの跳満ツモで柴田を沈めて1人浮きトップをとった。

2回戦 起家から、伊藤、紺野、柴田、前田

六万六万九万九万一筒八筒八筒六索六索七索七索白白 ロン一筒 ドラ白

起家伊藤がドラドラ七対子でヤミテンの9,600テンパイ。これに紺野が飛び込んでしまう。もしリーチと言ってくれたら絶対打たないのに。伊藤はどんなにポイントが欲しくてもヤミテンを混ぜて来る。

二万三万四万一筒一筒二筒三筒四筒七筒八筒九筒二索四索 ロン三索 ドラ八筒

東4局には3巡目234三色テンパイ。これは前田から出て5,200のアガリ。
波に乗って来た伊藤はドラの三万を引き入れてリーチ。2,000オールをツモり、53,600持ち。
こうなるとキツいのは柴田。
何とか浮きを維持したい。メンピンドラをハイテイでツモって満貫で食らいつく。
柴田の満貫でいよいよ降級争いは紺野を含む三つ巴となって来た所で、事件が起きた。

 

 

南2局1本場、7巡目の伊藤の手牌はピンフドラの1シャンテン。一索三索外しを選択するのだが、下家で親番の紺野の手牌とがっちり噛み合ってしまった。
一筒四筒七筒待ちのリーチに出た伊藤が五索で紺野に18,000(+300)の放銃。

起死回生のチンイツで浮きに回った紺野はほっと一息つけるかと思いきや、ここまで耐えていた前田の大砲がオーラス親番で炸裂。タンヤオ七対子ドラドラのヤミテンに紺野が再び放銃。

2回戦トップは柴田。紺野は2連続4着となってしまい、降級争いから脱する事は出来なかった。

3回戦はトップから、瀬戸熊、柴田、前田の3人浮きで終了。

3回戦終了時
柴田 ▲105.5
紺野 ▲105.5
伊藤 ▲170.5

柴田と紺野がちょうど同点。
伊藤との差は65ポイント。
伊藤抜け番の4回戦で柴田か紺野の着順が下になった者は、最終戦伊藤のターゲットとなる。

4回戦は紺野にとって地獄のような半荘であった。
親番瀬戸熊のリーチに1枚切れでトイツの白で9,600放銃。
純チャン三色ドラの跳満テンパイがアガれず。
柴田のポンテン5,800(+1,500)に放銃。
ライバル柴田に7本場まで積まれて、やっとアガれたと思ったら柴田とダブロンで柴田の上家優先。

8本場でやっと2,600(+2,400)直撃で親を流せたが、瀬戸熊の今日何度目かわからない跳満ツモで素点を削られる。
ペン三筒の一通リーチを打つが、親番前田にドラ単騎放銃。
ラス前の7巡目跳満テンパイもアガれず。
柴田は遥か彼方。紺野は完全に伊藤のターゲットになってしまった。

4回戦終了時
紺野 ▲143.9
伊藤 ▲170.5
その差は26.6ポイント。

およそ15,000差のトップ3着で変わる差となった。十分実現可能な条件が残ったが…。

5回戦 起家から、伊藤、紺野、前田、瀬戸熊

東1局に瀬戸熊が先制リーチ。

九万九万九万一筒一筒三筒三筒二索三索四索牌の背白白牌の背 暗カン リーチ ドラ白

ドラの暗槓を見せられてしまい、高いのは明白だが、親番を捨てるわけにはいかない伊藤も追っかけリーチに出る。

二万三万五筒六筒七筒二索三索四索五索六索六索六索七索 リーチ ドラ白

瀬戸熊が三筒ツモで倍満のアガリ。リーチ棒付きで9,000失点な上、東場の親が終わった伊藤は俄然厳しくなった。

 

 

とにかく浮かなければ始まらない伊藤。タンヤオドラドラのテンパイ。六索七索待ちになった所でリーチに踏み切る。自分が浮きさえすれば紺野との並びは出来ている。一方紺野は絞っていた伊藤の字風西が打ち切れず迂回。終盤に重なり四万を勝負してテンパイを入れると、何と伊藤のハイテイ牌は西だった。

その後も伊藤は懸命に手を作るが実らなかった。

 

 

卓内トップは完全勝利の瀬戸熊。柴田も大きなプラスで最終戦を待たずして残留を確定させた。

 

 

来週は12/23(水)16:00からのA1リーグ最終節B卓。ついに決定戦進出の3名が確定する。沢崎、佐々木、西川、勝又、吉田の5名の戦いも、今から楽しみである。

(文:編集部)

第15期女流桜花決定戦 初日観戦記 越野 智紀

日本プロ麻雀連盟に所属する女流選手で年間のリーグ戦を行い、女流ナンバー1を決める女流桜花も今年で15年目。
今年からCリーグがC1とC2に分かれて4リーグ制に拡大。
入れ替え戦も二日制になり、険しくも夢があるタイトル戦になりました。
多くの女流選手が公式戦の中で一番力を入れているという試合。
真剣に勝負している姿は観ている人を熱くさせます。

 

100

 

(自身最終戦で目標クリアのアガリを上家取りで奪われた藤井すみれには全米が涙)

その激戦を制した仲田加南・二階堂亜樹・川原舞子の3人が、桜の花を奪いに古谷知美のもとまでやってきました。

 

1回戦
開局、川原にリーチが入ります。

 

100

 

川原舞子(今期女流桜花リーグ戦データ)
リーチ率 :10.1%(12位/15人中)
フーロ率 :12.4%(14位/15人中)
アガリ率 :18.6%(10位/15人中)
平均打点 :5,275点(4位/15人中)
放銃率  :17.5%(15位/15人中)
平均放銃点:2,731点(1位/15人中)
流局聴牌率:37.9%(10位/15人中)

今期初のAリーグで決定戦に進出した川原。
経験面からか下馬評では厳しい結果を予想する意見も出ましたが、Aリーグ1年目で女流桜花を獲得した魚谷のように一気に駆け上がるパターンも過去にはあります。
最近の女流桜花では少数派になっているメンゼン重視の高打点スタイルで新しい風を吹かすことが出来れば面白い存在です。

 

100

 

そんな川原のリーチは本来のスタイルとは違うリーチのみの手。

 

100

 

そのリーチに対し、仲田が独特な選択を見せます。
七対子一本に絞った現物の五万切りでも、真っ直ぐに無筋の四索を切って縦横両天秤でもない七索切り。
まさかのシュンツ手一本の選択です。
序盤は動ける手にして自身の状態を判断しているような節がある仲田。

 

100

 

この局は川原のロン牌五索を吸収しながら1シャンテンまでいくも上家古谷に警戒されてテンパイ出来ず流局に終わります。
川原はリーグ戦の時とは違ったリーチ選択の範囲を見せることができ、まずまずのスタートとなりました。

 

100

 

1回戦で好スタートを切ったのは現女流桜花として決定戦からの登場になった古谷。
今期の女流桜花では解説をすることが多く、その落ち着いた様子に女流桜花の風格が見えました。
連覇して女流桜花でいたい、成長した姿を見せたいと言う古谷の昨年の女流桜花での麻雀は

リーチ率 :14.6%(8位/20人中)
フーロ率 :17.4%(12位/20人中)
アガリ率 :22.9%(4位/20人中)
平均打点 :4,036点(16位/20人中)
放銃率  :12.2%(15位/20人中)
平均放銃点:3,271点(4位/20人中)
流局聴牌率:39.7%(9位/20人中)

全体的に穏やかなスタイルでした。
リーチヤミテンの選択の巧さがアガリ率の高さに繋がっていて、その代償として平均打点が少し下がっているようにも見えます。
守備面に関しては相手の安い手には積極的に押していますが致命傷は避けていたような数字です。

女流桜花獲得から1年たち、古谷が見せたいと言っていた成長した姿が1回戦から出ました。

 

100

 

親番の連荘でトップ目に立った古谷。
シュンツ系の手に見えるように捨て牌に気をつけながら、七対子本線で手を進めます。

 

100

 

美し過ぎる捨て牌の並び。
狙いが見事に決まり、亜樹からリーチ七対子で4,800点は6,000点のアガリ。
リードを広げることに成功しました。

 

100

 

一本取られた形になった亜樹は、次局一万一筒を1巡目からポン。
ドラが発ということもあり、かなり大胆なブラフ気味の仕掛けを入れます。
他家の進行を縛りながら、ゆっくり手作り高打点狙いのラテン系舞姫です。

 

100

 

その激しい舞いに割って入ったのは連荘中の古谷。
234の三色の1シャンテンとはいえ、ドラの発が余っている状態での一索切り。
1年間解説をしながら各選手を見てきた古谷は、亜樹が去年より多彩な仕掛けをしていることに気づいていました。

 

100

 

二階堂亜樹(今期女流桜花リーグ戦データ)
リーチ率 :12.8%(10位/15人中)
フーロ率  :22.1%(7位/15人中)
アガリ率 :21.2%(8位/15人中)
平均打点 :5,292点(3位/15人中)
放銃率  :10.6%(7位/15人中)
平均放銃点:4,100点(9位/15人中)
流局聴牌率:53.6%(2位/15人中)

亜樹の特徴はアガリと貰ったテンパイ料を足した加点率が31.6%で今期2位、放銃と払ったテンパイ料を足した失点率が19.6%で今期1位と非常に優れています。
リーチ率は低く成功率は高めでアガリ率と放銃率が平均的だがテンパイ率は高め。
これは終盤でのテンパイ取りに長けた選手に見られる数字なのですが、亜樹から出るオーラで他家がオリているという説もあります。
もう一つの特徴はフーロ率。
あまり鳴かないと思われている亜樹が実は平均以上に鳴いていて、1局の中で2フーロ以上する『多フーロ率』も7.5%の6位と意外にも遠い仕掛けをしていることが解ります。

亜樹の打ち筋を見てきた古谷は、攻められる局と判断して※一索を切りました。

 

100

 

しかし3巡の間に一索九筒を引いていた亜樹にポンテンを取られてしまいます。
清老頭には変化せず、このままツモアガって純チャン三色同刻で満貫になりました。
序盤の好スタートが活きて1回戦はトップのまま終われたものの、積極策が裏目に出たことで古谷の歯車が少しずつ狂っていきます。

1回戦成績
古谷+15.8P 川原+5.1P 亜樹▲4.1P 仲田▲16.8P

 

2回戦

 

100

 

仲田はカンをすると亜樹のハイテイを消せるが、あえてカンせず。
亜樹がツモ切って流局、仲田以外の3人テンパイで古谷の親番が連荘となりました。
初日が終わった後に聞いた仲田の話では

「去年まではゆーみん(魚谷侑未)をマークしてたけど、今年はゆーみんいないから初日は古谷さんマーク。」

ここでのカンせずは1人ノーテン回避もありますが、亜樹がツモって古谷の親が流れたらOKという意図もあったようです。

仲田は女流桜花で圧倒的な成績を誇り、その麻雀スタイルは個性的です。

 

100

 

仲田加南(今期女流桜花リーグ戦データ)
リーチ率 :14.5%(8位/15人中)
フーロ率 :30.1%(1位/15人中)
アガリ率 :22.6%(3位/15人中)
平均打点 :4,508点(10位/15人中)
放銃率  :11.7%(9位/15人中)
平均放銃点:4,703点(11位/15人中)
流局聴牌率:45.8%(5位/15人中)

フーロ率が高い仲田ですが、何を鳴くかの判断は繊細です。

 

100

 

九索をポンした仲田は打点を求めて四万のチーテンはスルーします。

 

100

 

現物以外の喰い変えが出来るのが日本プロ麻雀連盟公式ルール。
打点を求めていたと思っていた仲田だが四万を引いた後に出た一万は喰い変えせずスルー。
自身のアガリ率を下げないように、相手に与える情報を少なくします。

 

100

 

その後一万を引いてチャンタに変化。
九索を加カンしたのち七筒をツモって1,600・3,200。
このアガリで今日はイケルと判断した仲田は、ここから攻め寄りにシフトを切り替えていきました。

 

100

 

川原らしさが見えたのが南2局1本場。
タンヤオ三色ドラ2のチーテンをスルーします。

 

100

 

山に残っていなかったカン七筒のターツを払い、メンゼンでタンヤオ三色ドラ2のテンパイを入れます。

 

100

 

川原のアガリかと思ったら、この六索を止める亜樹。
九索を切っている人から何巡か空いて八索が出た場合、六索を持っているパターンが多いと言われています。
場に六索が1枚出ているのでシャンポンの可能性も無く、一見安全そうに見える六索でしたが亜樹は危険な一般論より自分の読みを信じていました。
川原が長考しての八筒六筒ターツ落としで、手に別の愚形ターツが残っている可能性が高く見えます。
その愚形ターツがカン六索の場合。
八索はフリテンの九索の受けを増やす有効牌として手に残されていた可能性は考えられます。
川原はメンゼン高打点を狙うタイプで八索が余った以上、1シャンテンから六索を切るのは見合わないと判断。

 

100

 

亜樹が六索を止めている間に川原は五筒を掴み、古谷に一通ドラ1を放銃。
純カラになるチーテンを避けてメンゼン高打点のテンパイに辿り着いた川原と、危険を察知し回避した亜樹。
2人の特徴が出た見事な攻防でした。

 

100

 

南3局、北八万をポンする亜樹。
1回戦でも見せた遠めの仕掛けです。

 

100

 

1回戦での三色同刻のアガリも影響したか、全員が受けに回る亜樹得意の展開になり1人テンパイで流局しました。

オーラスは調子が上がってきた仲田がアガってトップを逆転。
2回戦は1回戦と逆の順位で勝負は振り出しへ。

2回戦成績
仲田+14.1P 亜樹+6.0P 川原▲6.7P 古谷▲13.4P

2回戦終了時
古谷+2.4P 亜樹+1.9P 川原▲1.6P 仲田▲2.7P

 

3回戦

 

100

 

八万をポンして六万切りの亜樹を気にせず、古谷は二万を切ってカン五万を選択すると

 

100

 

今度の亜樹はポンテンで満貫テンパイ。
自在な鳴きで古谷を翻弄します。

 

100

 

仲田・亜樹の厳しい攻撃に劣勢の古谷が状況を打破しようと西五索をポンします。

 

100

 

しかし周りが全然止まりません。
場に見えていない役牌が中だけになり、一万のほうに狙いを切り替えた仲田はツモ切りリーチを選択。

 

100

 

狙いの一万をツモアガリ700・1,300。
3回戦も経験豊富な仲田・亜樹が試合をリードする展開に、離されたくない川原・古谷。

 

100

 

南2局1本場、川原は2シャンテン戻しの暗カンで高打点を目指します。

 

100

 

10巡目にピンフのテンパイが入った古谷がドラの八筒を切ると

 

100

 

川原に南三暗刻ドラ4の跳満が炸裂。
前を走る仲田・亜樹を追いかけます。

 

100

 

川原に12,000点の後、仲田に5,200点も放銃して窮地に立たされた古谷。
通常の4着に付く順位点▲8.0Pと違い、1人沈みの4着は順位点が▲12.0Pとなるルール。
この状態を避けるため、仲田から出た五万を見逃します。

 

100

 

初日から追い込まれた古谷でしたが、この手をリーチツモタンヤオイーペーコーの2,000・3,900にして一矢報いることに成功します。

3回戦成績
仲田+25.7P 亜樹+13.0P 川原▲5.1P 古谷▲33.6P

3回戦終了時
仲田+23.0P 亜樹+14.9P 川原▲6.7P 古谷▲31.2P

 

4回戦

 

100

 

東1局、リーチツモピンフドラ2。

 

100

 

南2局、発ドラ2。
3回戦で踏みとどまった川原がドラ2のチャンス手を2度アガリにつなげ、好調仲田を抑えながらトップ目でオーラスを迎えます。

 

100

 

オーラス、3フーロのテンパイを崩す仲田。
仕掛けた3種は北東南
南北ホンイツトイトイの跳満テンパイを崩した小四喜狙い。
この瞬間、西は山に全部残っていました。

 

100

 

仲田の切った白を亜樹がポンすると、次巡引いたのが西

 

100

 

14巡目になり仲田は小四喜を諦めてテンパイ復帰させます。

 

100

 

待ちをカン二筒に変化させる仲田。

 

100

 

二筒六筒の選択を迫られた亜樹。
北東南を仕掛けている人が西の後に切った一筒は手に関連した牌。
一筒二筒三筒一筒一筒一筒だと西単騎に受けているので一筒一筒か※一筒二筒一筒三筒
小四喜を諦めてテンパイを取るぐらいの手なので打点は高そうで、捨て牌はホンイツに見えます。
仲田は西の前に三筒を切っているので一筒一筒からの一筒切りが濃厚。
現状一筒のシャンポンテンパイからカン二筒に変化させるのは打点が安くなる上に待ちが読まれそうなので不自然な選択。
仲田の手は一筒三筒七筒八筒西から三筒を切って一筒を引いた形、

一筒一筒七筒八筒ぐらいしか無さそうです。

その場合は一筒の手出しは空切りで六筒がロン牌になります。
二筒切りを選択して亜樹は、仲田に8,000点の放銃。
仲田の跳満テンパイ壊しが亜樹の精密な読みも狂わせました。

4回戦成績
川原+22.1P 仲田+10.6P 亜樹▲11.7P 古谷▲21.0P

4回戦終了時
仲田+33.6P 川原+15.4P 亜樹+3.2P 古谷▲52.2P

北家スタートが好きじゃないと言った仲田。
2回戦以降は北家スタートの席に座らず初日トップに立ち、5度目の女流桜花獲得へ向けて好スタートです。

(文:越野智紀)

戦術の系譜14 藤島 健二郎

前回はどちらかと言うと自分の手牌の形に対しての仕掛けの是非がテーマでありました。
今回は他家を対応させるような仕掛けに関して重点的にお話しします。
その前に下記をご覧下さい。

南1局ドラ五筒、点棒は平たい状況とします。

🔴親の河→西白九筒 上向き八万 上向き

4巡目の北家の切った二筒を親が両面でチー(打七索)

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ドラ五筒

例えばこの状況で親の手をどのように読みますか?

読み材料として使うべき情報は
①親は安い手をアガりに行く場面ではない
②ドラスジの安めを鳴いている
③巡目が早すぎる
④切り出しから一色ではなさそう

状況的にある程度打点はありそうですし、急所とは思えない両面チー、あとアガりや親権に対して焦るような巡目でもないです。
考えれば考えるほど随分あやしいチーですよね?まあ、こんな仕掛けをされた時は全てが整っているものです。

親の手牌は以下の牌姿でした。

三万三万三索四索五索六索七索五筒五筒五筒  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ドラ五筒

スピード、打点、待ちの良さ全てが揃っていました。

これは稽古時の実戦例でしたが親に高いチーテンが入ってることは、さすがに子方三人の共通認識でした。ちなみに全員降りて無事流局となりました。
この例からも状況によって仕掛けの手牌が透けてしまうことが麻雀ではよくあるのです。

しかしこのような状況設定を逆手にとっていくのが言わば牽制仕掛けなのです。
上記のような例を踏まえた上でいわゆる「牽制する仕掛け」について触れていきたいと思います。

牽制仕掛けと言っても牽制のための鳴きをいつも入れて勝てるものではありません。というよりむしろ負けます。仕掛けで対応してもらうためにはまず自分のアクションに対する他家の心理を読むことが大事になってきます。牽制の目的でも無視されるような相手や、また状況設定だとしたら効果はあまりありません。

牽制という言葉を言い換えるなら「対応させる」ということなのですが、まずはどのような場合が対応させたい状況なのかを知ることで、効果的な牽制仕掛けを使うことができます。
●悪い配牌の時に打点がほしい
●スピードで既に他家に負けている
●親の連荘にかけたいときなど「テンパイ」がほしいとき
代表的なのは以上3パターンです。

ただどの場合でも他家にまっすぐ打たせたくないということに変わりはありません。分かりやすく言い換えるならば”時間を稼ぎたい”もしくは”相手を降ろしたい”ということになります。

相手に対応させながら目指す代表的な役と言えばホンイツです。鳴いても高打点が狙える役であり、攻守兼用の万能役です。
実は遠目であってもホンイツに向かって仕掛けを入れていくことは既に他家に対して牽制していることになります。
役牌が絡むだけで中打点は確保される役なので、大した手牌でない他家は使いづらい字牌を絞らざるを得なくなります。要は相手に13枚で麻雀を打たせなくするのです。ホンイツを匂わせることはかなりの牽制となります。そうさせることで時間の猶予ができ、遠目の発進であっても高い手を組んでいくことができるというのがホンイツ仕掛けのメリットです。逆に対応せず無視して字牌などを切ってくる人がいればその人に手が入っていることも把握できます。
ホンイツにも絶対アガりたいものからアガれればラッキーなもの、ただのブラフ目的のものまでかなり幅があります。

A2リーグ第5節参照

 

100

 

上記のような点棒状況でのオーラスの配牌。
一人沈みの現状で、まず考えるべきは他家の心理。
■親の麓さんは(37400)トップ目の親番で一局凌げばノーテンでもトップがとれます。ツモアガリができれば一人浮きになりますが、逆に7700を打つと沈みになる状況。他家からアクションがあった場合は守備寄りになりそう。特にラス目のツモアガリは自身が1人浮きになるので北家がアガリに来た場合は傍観で良い局面。
■南家ダンプさん(30600)と西家客野さん(30400)は僅かながら浮き。二人とも安くてもアガリたい場面。親がやらずの流局狙いになった場合テンパイでも浮きキープ、ただ放銃は何点からでも原点割れ、そして最悪はラス目に高い放銃でのラス落ち。
■北家の私(21600)は一人沈みだけは避けたい。最悪は子方に放銃すること。仮に500.1000のツモアガリでも二人沈みに持ち込めるのでこれが最低目標。

南家・西家は安い放銃でも原点割れ、高い手に飛び込むとラス落ちがあります。東家もラス目に7700以上放銃での原点割れ+2着順以上の着落ちだけは絶対に避けたいというこの状況。
安い仕掛けを見せてしまうと自身のツモアガりでも一人浮きが狙える東家にまっすぐ打たれてしまうし、南家・西家にもリスクが小さいと判断されある程度来られてしまうことが想定されます。つまりアガり云々の前に打点がありそうな仕掛けを”見せる”ことが第一テーマとなる局面でありました。

 

100

 

一枚目の発から仕掛けます。もちろんホンイツ狙いですが大事なのは南家と西家に対応してもらうこと。仮にアガれなくてもどちらかがノーテンならば一人沈みを回避できます。もし自分のツモが効かなくても【ドラ色のホンイツやってます】という看板を掲げることで子方2名にまっすぐ打たせない効果があります。ちなみに上記の理由から、親は相当まっすぐ打てないはずです。ですから露骨なホンイツで大丈夫なケースです。故に七万八筒九筒という切り出しにしています。(ソーズのホンイツを隠したい場合は八筒九筒七万とするのが定石ではあります)

 

100

 

するとオタ風ではありますが西も鳴けて、ターツ払いを見せる打九筒とすることができました。
ここからは他家には”テンパイかもしれない”という疑念を抱かせることができます。この先ソーズか字牌でロンと言われれば原点割れプラスラス落ち(親は3着落ち)という状況を押し付けることができました。この後マンズとピンズだけを5巡ツモ切ります。

 

100

 

そして11巡目にテンパイとなり、打北としました。字牌が余ったことで他家にはテンパイがかなり悟られてしまいますが、ここまでたどり着けば十分です。南家と西家二人がこの先ソーズと字牌を一枚も打たずにテンパイに持っていくことは困難だと思われるからです。

 

100

 

次巡さらにドラの三索引きで手広くなり打八索。他家に対してはダメ押しとなったはずです。
東家麓さんはもともと生牌の白を1枚持っていたこともありますがロン牌である七索を引き完全撤退。南家ダンプさんはドラの三索が浮いた状態だったこともあり、イーシャンテンを崩します。西家客野さんはソーズを打ち切れずシャンテンキープとは言え回り道となりました。(実際客野さんには早々にイーシャンテンが入っていました。後に一枚ソーズを打てばテンパイでしたがそれも打ち切らず)。

 

100

 

最終手番でマンガンのツモアガリとなりました。3巡目の発進でしたがアガリは最後のツモ番でした。アガリ自体は僥倖でしたが他家を対応させて作った「時間」をゆっくり使ってもぎ取ったアガリと言えるでしょう。そもそも南家か西家をノーテンにしてテンパイ料をもらえれば一人沈み(▲12)から二人沈み(▲8)となり5200アガるくらいと同等の価値があったのです。沈みのままとは言えマンガンで2着浮上(▲12→▲1)は19ポイント分のアガリとなりました。

テンパイ止まりの流局の場合でも一人沈みを逃れた分の4ポイントとテンパイ料3000点で「7」ポイントの価値ある立ち回り。
今回のように安めながらアガリが付いたケースで「19」ポイント。
仮に高めのドラでの引きアガリになった場合は浮きどころかトップまで行くのでその場合は「32」ポイント分のアガリとなるケースでした(順位点▲12→+8の差20と跳満分の素点12)。

【他家のスピードダウン<テンパイ料<中打点<高打点】

このような幅のある牽制仕掛けの参考例でした。

ただ、このケースは点棒状況ありきでハマった感じは否めません。

 

もう一つホンイツの実戦例をあげてみます。

A2リーグ第5節3回戦南2局より
親番が残っているとはいえラス目で以下のような配牌をもらいました。

 

100

 

白発のトイツ2組ありますがあとはかなり悪い形が残っています。ドラもありません。
ただ現状ラス目なのでなんとかこの手材料から勝負手にしたい局面です。第一ツモで七索を引いてマンズ二枚ソーズ二枚ピンズ三枚ですが、手を高くするためには何かのホンイツにするのが現実的です。唯一ターツがないマンズを見切る打一万とします。ソーズかピンズどちらかのホンイツ狙いです。

 

100

 

3巡目にツモ六筒でソーズ三枚ピンズ四枚となりますが、まだどちらに寄せるか決め兼ねる牌姿なのでいったん一枚切れの打北とします。これは後々役牌を鳴きたいので字牌が重い捨て牌にならないようにする意味合いもあります。

 

100

 

次巡ツモ二索でソーズ四枚ピンズも四枚となります。まだどちらの色に決めるかは難しくここでも場に一枚切られている打中としました。三元役を見切ることになりますがこれも後々白or発を鳴きやすくするための布石でもあります。あのような配牌から跳満以上の高望みはしません。生牌の西を残して5200かマンガンのアガリ率を上げにいきます。

 

100

 

狙い通り西を重ねます。ただこれで二索五索七索九索のソーズor六筒六筒八筒九筒のピンズの分岐点を迎えますが打二索としピンズに照準を絞ります。

 

100

 

7巡目に北家の切った二枚目の白をポンして打九索とします。この時点で南家の私の捨て牌は一万 上向き四万 上向き北中二索 上向き六万 上向き六万 上向き九索 上向き。これで白を二鳴きなのであまり警戒はされてないはずです。

 

100

 

すると次巡七筒を引き入れ5200~8000のイーシャンテンとなります。4巡目に中を置いてあることで一番欲しい発が出やすい状況も作れています。打五索としたのは九索七索とターツ払いにすると、後からホンイツに渡ったように見えてしまうのを嫌った側面もあります。

 

100

 

発が鳴けて役役ホンイツのテンパイにたどり着きました。ここまで行くとかなりホンイツに見えてしまいますが、テンパイするまでにこれだけ工夫をしたのですからそこは仕方ありません。あとはめくり合いです。

 

100

 

六筒で7700のアガリとなりました。

こちらの実戦例は他家の牽制を逆に解きながら、じわじわとアガリに向かうようなイメージのものでした。本手を決めたい時には牽制に特化し過ぎても駄目なのです。少し相手を油断させるような切り出しや河作りで、欲しい牌を引き出してアガれる手もあるということです。

次回最終回は、捌く仕掛けとまとめになります。

第37期鳳凰戦A2リーグ第10節B卓レポート

【二階堂亜樹が今期初の卓内トップ!A2リーグ第10節B卓】

12月15日に行われたA2リーグ第10節B卓は、ここまで苦しんできた亜樹が待望の卓内トップで残留の可能性を残すことに成功した。

 

 

開始前の全体成績は以下の通り。

 

 

対局者はダンプ大橋(2位・+120.3P)、内川幸太郎(4位・+94.4P)、客野直(7位・▲11.6P)、安村浩司(13位・▲100.6P)、二階堂亜樹(15位・▲273.1P)。昇級・降級を争う2名ずつに、どちらも見える客野。客野が大きくプラスを目指すか残留を意識し堅く打つかで展開が大きく変わる1日であったが、どうやら客野が選んだのは残留をより確実にする方であった。普段からアガリ重視の打ち手ではあるが、親からポンしてタンヤオのみの仕掛けなど…

 

 

今までと比べても一際スピード重視の仕掛けが目立つように思われた。解説の藤島健二郎は「アガリが拾えそうなら打点関係なく仕掛ける作戦を用意してきたのかもしれませんね」とコメント。場が重くなって高打点が成就しやすい状況は、大負けしなければOKの客野は歓迎できないということだ。もう1つ作戦を感じた点は以下の場面。

 

 

亜樹の早いリーチに対してドラ1のシャンポンテンパイをヤミテンにとっている。そこに4枚目の西を持ってきた客野はこれをツモ切り!暗カンして追いかけリーチという手もあるが、大きくプラスしたい亜樹のリーチを基準の高いものと読み、様子を見る方を選んだ。そして次に無筋の六索を引いてくるとあっさりオリを選択。その読み通り、数巡後開かれた亜樹の手牌は…

 

 

メンタンピンツモドラドラで3,000・6,000!六索自体は当たり牌ではなかったが、亜樹のリーチ判断とともに客野の選択も光った場面だった。

ここに来て今期一番の好配牌を入れてきた亜樹は、3回戦の南1局では…

 

 

安村の3メンチャンリーチをかい潜り、薄い待ちをツモって6,000オール!今までの不調が嘘だったかのようなプレーを見せ、4回戦全てを浮きで終えると+63.9Pものプラスを手にした。

1日を終えての全体成績は以下の通り。

 

 

 

亜樹は次回、より大きなプラスが必要なものの、とりあえず残留に向けて希望を繋いだ格好。
客野は大負けしないという目標からは十分すぎる成績。降級の心配なく最終節のびのびとプレーができそうだ。
堅実な打ち回しで安定感抜群の内川はプラスを積み上げることに成功。
1回戦大きくマイナスした安村はなかなか大きく抜け出すことができず、残留ボーダー上の山田と約90Pの差で最終節を迎えることに。
そして本日先手を取られ続け▲76.8と苦しんだダンプは、次回爆発的なプラスを狙う。

次回の放送は12月22日16時~。
対局者は杉浦勘介(1位・+230.7P)、藤島健二郎(3位・+112.8P)、近藤久春(4位・+88.6P)、和久津晶(6位・+25.2P)、一井慎也(11位・▲35.5P)。
いよいよクライマックスを迎えつつある昇級争いにぜひご注目ください。

(文・浜野太陽)

第37期十段位決定戦初日観戦記 西川 淳

長大な坂を前にした時、人はどんな気持ちになるだろうか。

初めから頂上を明確に意識し意志をもって進む者。
ただ目の前の一歩に集中し歩み続ける者。
諦めの混じった気持ちで登りだす者。
不平や言い訳を口にして登ることさえしない者もいるかもしれない。

東京は皇居のほとりに桜の名所千鳥ヶ淵がある。
そこに至る坂道は「九段坂」と名付けられた。
『新撰東京名所図会』によると「石を以て横に階を成すこと九層にして、且つ急嶮なりし」とあり、坂の名の由来が、急坂のため九つの段が築かれていたことにあるとされている。

十段戦の道のりは気が遠くなるほど長い。
8月の初段戦を皮切りに実に3か月をかけて予選を行う。
初段者は初段戦を勝ち上がれば二段戦に。
二段者は二段戦から参加し勝ち上がれば三段戦へ…
坂の段を登るように長い長い戦いが繰り広げられるのだ。

卓内上位2名が勝ち上がるシステムのため、上位何人通過といったシステムの一般的なタイトル戦と違い、勝ち上がり人数を絞るのに時間がかかる。
対局自体にも存分に時間をかける。
八~九段戦を例にあげると、昼から八段戦4半荘、夕方から九段戦5半荘と実に9半荘の長丁場だ。
卓内決着になるため「対決」の図式が色濃くなる。果し合いの様相を呈することが多く、激戦の末、心身ともに疲労困憊になりながら坂を登っていくのだ。

新型コロナ感染症が世界を襲った2020年。
日本プロ麻雀連盟は、感染拡大防止の観点から、年内のプロアマ混合のタイトル戦、マスターズと王位戦の中止を、春の段階で早々に決断した。
その中で開催を死守したのがこの十段戦である。

運営人員も開催の長さに応じて必要となってくる。
感染対策で卓間隔をあけるため会場使用コストも大きくなった。
ベスト16からは、1卓につき1日を割いて配信を行った。

時間も手間も日本一かけている贅沢なタイトル戦と表現して過言ではないだろう。鳳凰位戦と同じ回を重ねる長い歴史を誇る十段戦は、まさにプロ連盟の威信の表れなのだ。

そんな過酷な予選を勝ち上がった4名。そこに十段位が加わり5名による決勝戦を行う。
たとえるなら、九段坂を登り切った四名の剣士を、坂上で現十段位が待ち受け、共に頂を競う、といったところか。

 

 

第37期十段戦の初日は12月7日に行われた。
当日の九段坂は快晴。ピークを迎えた紅葉の輝きがまぶしい。

 

100

 

決勝メンバーは以下の通り

伊藤 優孝(現十段位)
杉浦 勘介
内川 幸太郎
柴田 吉和
本田 朋広

 

100

 

対局は全12回戦(4回戦を3日間)

立会人、紺野真太郎の下、抜け番抽選。

 

100

 

[結果]
選択順位1位 杉浦 勘介 →1回戦抜け番希望
選択順位2位 内川 幸太郎 →4回戦抜け番希望
選択順位3位 本田 朋広 →5回戦抜け番希望
選択順位4位 柴田 吉和 →2回戦抜け番希望
選択順位5位 伊藤 優孝 →3回戦抜け番自動決定

 

100

 

対局はライブ配信。
全員PCR検査を受け感染症陰性を確認してマスク非着用での対局が実現した。

実況は古橋 崇志。初日の解説に白鳥 翔と山田 浩之。牌譜解説に大和。

 

1回戦(起家から、本田・伊藤・柴田・内川)抜け番杉浦

起家、本田 朋広
28期生・四段
富山県出身・37歳・A型
七段戦からの勝ち上がり

 

100

 

春先に北陸プロリーグ優勝からの地方チャンピオンシップを制して、その勢いのままにグランプリMAX戴冠まで昇りつめた。グランプリでは大三元を2回アガリ華のあるサクセスストーリーの主役に。各団体の強者が揃う最強戦2020のファイナルにも勝ち上がり(2020.12.7時点)最も勢いがあるプレーヤーの1人である。2020年はまさに飛躍の年だった。

しかし同時に鬱屈たる日々も過ごした。
初タイトル獲得後、沢崎 誠に祝福の言と共に「一つのタイトルで満足してはダメだ。がんばれ」と激励を受けた本田は、次のタイトルへの決意を強くしたが、前述の通り、タイトル戦が次々と中止になり悔しい思いを溜めることとなる。

「最低でも決勝」との思いを実現し「どんな内容でも良い。とにかく勝ちたい」と静かに語る。

注目の開局、東1局。

親の本田。

四万六万六万六万四索六索七索八索九索七筒七筒中中

この1シャンテン。
3巡目に上家から放たれた2枚目の中をポンせず。

大事な初戦。まずアガることを重視してテンパイをとる打ち手も多いだろう。
しかし本田は十分な形や打点が見込まれないときは、たとえ親でテンパイでも仕掛けない。
グランプリでも披露した懐の深さは健在だった。

ここは見事な手順で伊藤が柴田から5,200のアガリ。

柴田 吉和
28期・五段
山形県出身・42歳・O型
八段戦からの勝ち上がり

 

100

 

語り草となっている第32期十段戦
最終戦オーラス。
藤崎 智と櫻井 秀樹が同点という最高潮クライマックスで国士無双をツモり大逆転優勝を果たした。

あれから5年。優勝を足掛かりに他団体トッププロが鎬を削る場でも活躍。その経験や技術を取り入れたことで確実に強くなったと自他共に認める。
昨年の決定戦をリアルタイム観戦し、この大舞台へ戻りたいという気持ちを抱きつつも、タイトル獲得経験が無欲で冷静な対局を可能にしているようだ。

東3局
親番の柴田

二万四万四万五索七索六筒七筒九筒九筒東東発中

4巡目に放たれた東を1鳴き。

鳴いて2シャンテン。愚形もある。
点数状況やダブ東であることの違いを踏まえても、東1局の本田との対比が面白い。

積極的な姿勢がプレッシャーを与えたか、本田や内川は早々に受けに回った。
首尾よく高目5,800のテンパイにたどりつくが、ここは伊藤のアガリが先。
しかし、次局、有力な手替わりもあるテンパイを果敢にリーチに踏み切りツモって満貫。

やはり柴田はツモが似合う。3方向から点棒を受け取る姿を実によく見かけるではないか。

ところで死神の鎌を見たことはあるだろうか?
それは突然やってくる。
何か魔が差したように気が緩んだ時、自分のアガリに欲がでた時、もう大丈夫だろう、と油断した時…
視界の外からひっそりと背後に忍び寄り、前触れなく冷たい光と共に振り下ろされるのだ。

「死神」とはよくいったものだ。
伊藤 優孝の通り名である。
どんなに「死んだ」ように見えても突然やってくる。

伊藤 優孝
1期・九段
秋田県出身・71歳・A型
ディフェンディング決勝シード

 

100

 

36期十段戦で圧勝。
続く36期鳳凰位戦A1リーグは残り2節の状態でマイナス200Pを超える絶望的な位置から最終節に大逆転での残留。今期も、マイナス200Pを超えた状態から2週連続で国士無双ツモの離れ業を見せつけ上り調子で残留ポジションにつけている。(2020.12.7時点)

今回の決定戦は「(連覇は)簡単には行かないよ。ご老人の希望となれるように良い戦いを頑張る」と柔らかい優孝節ではぐらかしたが、奥に潜んだ鋭い眼光は対局した者なら身をもって知るところだ。

南1局1本場
柴田と内川がテンパイ。親の本田も超勝負手で強い牌を押している局面。

伊藤の13巡目。

四万五万六万六万六万七万六索七索八索三筒六筒七筒八筒  ドラ三筒

ここに三筒を重ねてテンパイ、打六万
静かにゆっくりと振りかぶる。ヤミのテンパイで高め12,000の超重量の鎌だ。
この手がゆっくり開かれる瞬間の冷たい空気は何と伝えれば良いのだろう。想像すると観ているだけで背筋が凍る…

が、ここは内川がホンイツの1,000・2,000をツモり、伊藤は人知れず静かに鎌を収めた。

続く南2局が伊藤の凄まじさを感じた初日の中でも一、二を争うキーとなる局。

柴田が7巡目にしてドラ雀頭のチャンス手リーチを打つ。

四万四万五万五万六万七万八万九万一筒一筒一筒六筒六筒

待ちの三万六万は、なんと山に6枚生きでアガリは約束されたようなもの。

それを受けた親の伊藤は3シャンテンで自身のホンイツに必要な二索を打ってオリる。
ように…見えたが。
リーチ後に出た1枚目の中をスルーしたのに2枚目の中をポン。
そして役牌ホンイツの5,800をテンパイ!
そこに!

 

100

 

振り込めば高め満貫となる六万をキャッチしてしまうが…
ここからノータイムで六万を止める。
止めただけでなく結果がこれである。

 

100

 

あまりの出来事に実況、解説陣は絶叫。
リーチ者の柴田はテンパイから止められた可能性が高いことを目の当たりにして思わずのけぞった。
因みに中を1鳴きした場合、柴田がツモあがっている。解析不能。このアガリは世界広しといえども伊藤にしか成しえない芸当に映る。

このアガリでリードを守った伊藤だったが、この半荘は南3局に2軒リーチを制し初アガリを手にした本田が次局も2連続アガリで逆転トップを果たす。

1回戦成績
本田+12.1P  伊藤+7.3P  柴田▲6.8P  内川▲12.6P

 

2回戦(起家から、内川・杉浦・伊藤・本田)抜け番柴田

内川 幸太郎
22期・七段
長野県出身・39歳・O型
ベスト16からの勝ち上がり

 

100

 

2年前の6月9日。
日本プロ麻雀連盟最高顧問、故・小島 武夫プロを送り出す連盟葬があり、告別式が9:30からしめやかに行われた。
有志の連盟員が早朝から準備と対応にあたった。
当日は告別式終了後、十段戦の六段戦が開催される予定だった。
その場で連盟員を集めて森山 茂和会長が挨拶。
「対局前に早朝から手伝ってくれた君たちの中から十段位が生まれると信じている」
その言葉を直立不動で耳を傾けていた一人が式の受付を担当した内川だった。
果たして、ベスト16で、半荘1回で9万点差を逆転するなど神がかり的な快進撃を続けそのまま頂点へ。

昨年はディフェンディングとして臨むも伊藤の前に完敗。リベンジを期して最初からこの場を強く意識していたという。決意が眼差しに宿っている。

当日、内川は自身のSNSで心境を「いざ参る!」と表現した。

流局が2回続いた東2局2本場

柴田のリーチに対して、内川、1シャンテンから真っすぐ打ち抜き5,200の放銃。
しかし失点に対して微塵も後悔の色が出ない。

続く東3局1本場
親の伊藤からリーチ。

本田が対抗。
暗刻の一万を切り、大きなリスクを負ってでもアガリを獲りにいく「覚悟」を見せる。

これに呼応するかのように内川がフリテンの八筒を熱のこもったツモで1,000・2,000。

内川の反撃開始だ。
一歩も引かない決戦ムードが卓を覆う。

南場にはいってラス目の内川の親番。

「やーっ!!」
まるで剣道の追い込み稽古のように体を前に出す内川の気迫が伝わってくる。

まずは平場で1,000オール。

その1、1本場
VS本田
難解な牌構成を「手順マエストロ」らしく丁寧にタンヤオピンフイーペーコーの手に育てる。
リーチのモーションがすごい。
ツイッター速報担当の越野 智紀が「しなり」とメモをした。

ここに本田が七対子ドラ2のテンパイをいれる。待ちは内川の現物待ちの中
さらにドラをもう1枚持ってきたところで空切りでの追っかけリーチ!
対決の構図が明瞭な一騎打ち。
他家からロン牌がでると思ってない内川はじっと目を閉じツモに集中し、待望のアガリ牌五筒を卓上に打ち付けた!

その2、2本場
VS杉浦
内川、軽妙な手順でピンフドラのリーチ。
今度は杉浦がメンホンの4メンチャンのテンパイで追いつく!
打ち合いの末、内川が杉浦から5,800を討ち取る。

その3、3本場
VS伊藤、杉浦
ならば2人がかりだ。
内川がドラ3の大チャンス手をいれると、伊藤が一気通貫のテンパイ。そして杉浦がホンイツのテンパイ。
ここは内川が杉浦に真っすぐ放銃。3,900は4,800。

まだまだー!
次局で返す刀だ。
ドラ3のリーチを打った本田からしっかりとアガリをもぎ取り、続くはさばき手で本田から連続アガリ。
圧巻はオーラス。
先にテンパイした伊藤と杉浦の七対子ドラ2のリーチをすり抜けて、華麗にホンイツ七対子をアガリきった!

内川の恐るべき打突力!
この半荘、ラス目からの3連続を2回含む7回のアガリで1人浮きの圧勝!

2回戦成績
内川+40.3P  伊藤▲1.6P  本田▲14.2P  杉浦▲24.5P

2回戦終了時
内川+27.7P  伊藤+5.7P  本田▲2.1P 柴田▲6.8P  杉浦▲24.5P

 

3回戦(起家から、内川・杉浦・柴田・本田)抜け番伊藤

十段戦決勝史上、対局者平均年齢が最少とされた半荘。
派手な力の勝負がみられるかと予想したが、別の意味での力勝負となった。

東1局。
内川の親番。
北家、本田の手牌

二万二万四万五万六万四索五索五筒七筒八筒九筒北北  ドラ三万

2巡目に出た北を1鳴きしてポンテン。
すぐに杉浦から1,000の出アガリ。

実況が「わずか15秒での決着」と表現したこの速攻。
ピンフ三色も見える手だけに様子をみる打ち手もいるかもしれない。
1回戦の親で役牌ポンテンを取らなかった本田なら尚更だ。
解説陣から「暫定トップの内川に楽をさせないためかもしれない」という指摘があったが、自然な手筋でもあるので真相はわからない。

しかし南1局。
同じく親は内川。
北家、本田の配牌

四万八万九万七索八索九索六筒七筒九筒南南北中中

この第一打がなんと九筒
チャンタ三色が明確に見えるだけに、打点よりもスピードやアガリやすさを主眼としていることは明白だ。
その目的が内川を封じることにある可能性は十分にある。
その後、辛くチーテンをとって隙無くアガリに結び付けた。

その因果もあってか内川が苦しい。
チャンス手は入るのだが、要所をさばかれ、おろされる。
放銃はないのにラス目に。

柴田も楽ではない。
高打点テンパイが入るのだが一度もアガリに結びつかない。
しかし実に4回の1人テンパイで収入。アガリ無しで4万点のトップ目となったが、良いのか悪いのか。

お互いがお互いを楽にさせない綱引きが延々と続く。

杉浦も我慢比べの渦中にあった。
初戦となった2回戦は引く時と行く時の緩急にメリハリをつけたが、勝負局が振込となりラスを引いた。
今回も耐える局面が多く、特に親番で我慢をしなければならなかったのはキツイところだ。

杉浦 勘介
20期・六段
愛知出身・39歳・AB型
ベスト16からの勝ち上がり

 

100

 

今から4年前。
第33期鳳凰位戦A2リーグ最終節で降級が決まった杉浦は、吐き捨てるような、それでいて噛みしめるかのような口調でインタビューで応じた。
「実力がないとどのみち同じことになる。力を付けて戻ってきたい」
その間、どのような修練を積んだことだろう。
36期B1リーグ優勝でA2復帰を果たすと、今期のA2も頭一つ抜けた首位を走っている(2020.12.7時点)
昨年は十段戦決定戦で伊藤の前に敗れたが、周囲が口を揃えて言うように力強さが格段に増した。
もう一度伊藤に挑戦したいという気持を原動力に決勝の場に再び舞い戻ってきた。

その杉浦に南3局にやっと快心のアガリ。

四万八万一索三索六索八索八索六筒八筒九筒九筒東南発  ドラ一索

このバラバラの配牌を持前の技術で七対子ドラ2のテンパイに持ち込むとリーチ。

一万八万八万一索一索八索八索八筒八筒九筒九筒南南

結果、柴田からの回し打ちのような放銃で満貫となった。
派手な河となっていたが、リーチをしないと柴田からは出ないどころか一万を使われてリーチされてた可能性も大きく、価値の高いリーチ判断となった。
積極策が功を奏し一撃でトップ目に。

さて、この半荘は全12局中流局が6回と非常にタフな内容となった。
その最たるものがオーラス南4局である。

5巡目
ここまでノーホーラの内川が仕掛ける。

一万二万六万六万八万八万一索一索三索一筒三筒九筒九筒  ドラ九筒

ここから二索をチー。

6巡目
柴田がポンして白だけあがれる片アガリのテンパイ。

六索六索二筒三筒四筒七筒八筒九筒白白  ポン六万 上向き六万 上向き六万 上向き

7巡目
本田がチンイツに向かってチー。

二万三万四万四万五万五万七万九万南中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き

このチーで同巡、次巡と立て続けに内川が欲しかった急所の二筒三万が杉浦に流れる。

10巡目
チンイツの急所で本田が欲しい八万をチーしようとすると、それを内川がポン。
もちろん邪魔ポンではないし、自身も欲しい牌ではあるのだが、内川にとっては鳴くと満貫のアガリが消え浮きは難しくなる。
となると、マンズは親の本田には鳴かせられないという意識もあったか。本田は激痛。

12巡目
その内川のポンで、柴田が掴まされたのは、アガれないほうの六索
フリテンとなり柴田は白での出アガリが利かなくなる。

13巡目。
しかもその柴田のアガリ牌の白を内川が喰い取り2枚に重ねる。
白も萬子もドラも切れないので、仕方なく三色はあきらめ内川は打三筒

15巡目。
柴田、マンズを引かされテンパイを崩す。

16巡目。
杉浦、ピンフのテンパイで、七万を勝負!
理だけではなく、気配察知や勝負感覚に力強さや磨きがかかっている印象だ。

17巡目。
杉浦の捨てた七万を本田がポン。
そして、同巡、内川の手が下図。

 

100

 

マンズや字牌は親の染め手に切れない。他家もテンパイ濃厚。
打つ牌が無い…

強いて言うなら…
内川の苦渋の打牌はドラの九筒
オーラスのこの局面でこの選択を強いられるとは。
苦虫を噛み潰すかのような表情の内川。心中いかに。

4者がお互いをがっぷり掴んで離さず、まるで泥中、乱闘の絵図。

結果、本田と杉浦の2人テンパイで終ったが、一牌の後先や仕掛けの有無が強烈な因果関係を残し、4者の思惑がぶつかった面白い局となった。
機会があれば是非映像でご視聴いただきたい。

この半荘は、オーラスに柴田がアガリ、内川は1回もアガれず1人沈みのラス。
ミスがあるでもなく、ただ押し付けられた感が強い。
最終戦を見守ることなく会場を背にした内川の肩は、雪辱への闘志に燃えているようにみえた。

3回戦成績
杉浦+15.9P  柴田+6.1P  本田+1.3P  内川▲23.3P

3回戦終了時
伊藤+5.7P  内川+4.4P  柴田▲0.7P 本田▲0.8P  杉浦▲8.6P

 

4回戦(起家から、柴田・杉浦・伊藤・本田)抜け番内川

東1局
伊藤にチャンス手。

一万二万三万五万六万六筒六筒発発発  ポン白白白  ドラ六筒

ここに六筒を持ってきてツモ切りで本田のピンフに放銃してしまう。

他家に気配がなかった。
手出しを見せたくなかった。
安く見せたかった。
など、色々な理由があったかもしれないが、打点が変わらないなら安全度の高い発を切るのが順当に見える。
伊藤転落のきっかけになりかねないな、と感じた次局。

気のせいだった。

東2局、南家・伊藤

二索二索二索六筒六筒南南北北北  ポン四筒 上向き四筒 上向き四筒 上向き  ドラ二索

これを高め南でツモって4,000・8,000!
この日の最高打点。強烈!!

しかし、この倍満親かぶりをした杉浦がメンゼンホンイツのアガリなどで回復。

その杉浦。南場の親番。

三万五万四索五索六索六索六索七索八索九索七筒八筒九筒  ドラ四索

ここを躊躇なくリーチ。
本田から3,900をアガリ、いよいよ逆転してトップ目に。
リーチ判断は微妙な要素が多々ありそうだが、今の杉浦からは迷いが感じられない。

オーラスは、またもや混戦となったが、伊藤が変幻自在の仕掛けで流局テンパイにたどり着き再度トップに立ち初日を締めくくる。

4回戦成績
伊藤+12.6P  杉浦+7.9P  柴田▲4.3P  本田▲17.2P

4回戦終了時
伊藤+18.3P  内川+4.4P  杉浦▲0.7P 柴田▲5.0P  本田▲18.0P

一日を通じて、各々が持ち味を出した名局が並び、誰も抜け出せない、抜け出させない鍔迫り合いが続いた。
ポイント差は、有って無いような大接戦。
2日目以降が非常に楽しみである。

昼から始まった対局だが、死闘が終了したのは実に21:00。
空には下弦の月。

第37期鳳凰戦A1リーグ第12節C卓レポート

【変幻自在の沢崎が圧勝。最終節を待たずして決定戦1枠は当確か⁉︎】

A1リーグもいよいよ佳境。この対局を終えたら最終節を残すのみとなる

 

 

首位沢崎はポイントに余裕がある。無理に勝負せず無難にまとめる戦い方も選べる立場だが、果たして大人しくしてくれるのか?
2位佐々木は大きくプラスするのが理想。もし加点が厳しそうでも▲20P程度におさめ、トータル+100Pはキープしておきたい。
吉田は現状5位。今期は1~5位が後から打てるB卓となる為、前田にかわされなければ直接対決が出来る。今日はフルスイングで叩きにくるだろう。
6位前田は吉田との順位を入れ替えておきたいが、今日大きく沈むと降級も意識せざるを得ない。吉田ほど大振りは出来ない立ち位置だ。

最初のアガリは佐々木。メンタンピンツモドラの満貫ツモでリード。沢崎は手牌では若干遅れをとっていたが、ターツ選択が裏目に出ても素早く修正してフリテンをツモったりと経験値でカバー。南2局親番の1人テンパイで原点復帰していた。

 

 

潮目が変わったのは3本場。カン三筒チーから234三色を見ていた沢崎だが、後引きのドラを切り出さずにテンパイ。フリテンの一万四万七万に受けていた所に引いたのはドラの六万。自身が234な上に三万のワンチャンスである二万が見えていない。下家吉田の河に八万もある事から五万かと思いきや、沢崎は二万切りとする。
それまで役牌2組をトイツ落としして丁寧に受けていた佐々木だが二万ポンで打八索。巡目や待ちの悪さを考えるとアガリに賭けたというよりテンパイ料取りの1牌押しだろうが、沢崎の5,800(+900)に放銃となる。
もし沢崎が五万を切っていたらおそらく吉田がチーで2人テンパイの流局。
大きな分岐となる局に思えた。

 

 

オーラス佐々木はタンヤオテンパイ。ヤミテンで手堅く浮きの2着を取りに行かず、ドラの三万ツモでトップをもぎ取りにいくリーチを敢行。(一応沢崎からドラ直撃もトップ)
しかし終盤に吉田もテンパイ。本当は強気に七万勝負でタンヤオ確定の五筒七筒八筒にしたい所だが、安全度を考慮してスジでワンチャンスの七筒切りリーチとした。
佐々木はハイテイツモなら無条件トップだが、一万を掴んで吉田に5,200(+1,300)の放銃で沈み3着となった。

2回戦は開局に吉田が4,000オールをツモ。東3局に前田がメンゼンチンイツイーペーコーをアガるが、この回の主役も沢崎だった。

 

 

24,500持ちからメンピンツモの3メンチャンリーチを高めのドラツモ。1,300・2,600(+1,300)をアガって親番を迎えると、リーチ三色7,700。リーチピンフドラ5,800(+300)と決めて一気にトップ。沢崎が2連勝。

続く3回戦も沢崎の7,700から始まるが、この回に意地を見せたのは沢崎に7,700を放銃してしまった吉田。
挽回したい親番で佐々木のホンイツと沢崎のピンフドラドラのリーチに挟まれるが、押し切って1,500をアガリ連荘。

 

 

一時は沢崎の三索単騎ツモアガリで引き離されるが、吉田も中トイトイ6,400をアガって懸命に追いかける。
オーラスはピンフツモイーペーコーで自らアガってトップを飾った。

4回戦の主役は前田。東4局に役なしドラ1をヤミテン。ドラ四万を振り替えたタイミングで思い切りの良いリーチ。山に1枚しかなかった七万をツモ。前田は普段愚形リーチをほとんどしない、しかも待ち部分に打点が絡まない愚形リーチは非常に珍しい。

 

 

南2局にも4巡目リーチし、高めの一筒ツモ。
4回戦は前田がトップ。本日唯一沈んでいた沢崎もオーラスに8,000を決めて浮きに回って終了。

 

 

沢崎が全てプラスで200P目前まで。佐々木も少ないマイナスで2位キープ。決定戦候補最有力の2名なのは間違いない。

 

 

第12節の結果により、最終節の組み合わせが確定。
A卓が前田、瀬戸熊、紺野、伊藤、柴田。
B卓が沢崎、佐々木、西川、勝又、吉田となる。

(文:編集部)

何を切る? 2020年12月

第37期鳳凰戦A1リーグ 第11節 B卓 1回戦 東4局 東家 HIRO柴田プロ

 

 

 

 

■Twitterで実施したアンケートの結果

 

 

 

■プロ解答

五筒切り

 


 

六索切り

 

 

発 または 中切り

 

 

 

 

東切り

 

 

 

 

■プロの視点

HIRO柴田プロ
五索ツモ切り、六索切りや発中のトイツ落としもしくは、五筒六筒などもあるのだろうか。
アガリは厳しくなるかもしれないが、最悪の2,900という手にはしたくなかったので、ドラを固定する六索切りとしました。
ひとまず四筒七筒チー以外は全て鳴くつもり。
ただ、ポンをした後の切り出しが役牌のトイツ落としとなり、2フーロ目は容易でないため、テンパイやアガリまではやはり厳しいという想定の上での選択です。」

 

■終局図

 

 

日本プロ麻雀連盟チャンネルはこちらから
OPENREC 日本プロ麻雀連盟チャンネル
ニコニコ生放送<PC版>

第37期鳳凰戦A2リーグ第10節A卓レポート

12月8日に行われたA2リーグ第10節A卓は山田・魚谷が大きなプラスを手にし、残留の可能性を大きく上げることに成功した。

 

 

この日の対局者は古橋崇志(7位・+19.9P)、麓征生(8位・▲1.0)、魚谷侑未(11位・▲64.8)、前原雄大(12位・▲100.2)、山田浩之(14位・▲111.1)。開始前の全体成績は画像の通り。

 

 

通年の長いリーグ戦も、今回を入れて残すところ2節となり、完全な条件戦となる。解説の猿川は「今回の見どころが下位3人の残留争い。魚谷さんは+20くらいできれば安泰…ではないけど、良いですね」とコメント。この日勝負を分けたように思われたのは3回戦の山田の親番。東1局に気持ち良い3,900オールをアガると…

 

 

続く1本場でチートイツのみのテンパイ。

 

 

少々見えにくいが、ツモってきたのは八万。マンズを多く持っているためチンイツに行きたいところだが、九万が2枚切れ。打点や連荘率を上げる為にもリーチはしておきたいところだが、1枚切れの東と生牌の六万どちらを待ちにするか。山田が選んだのは…

 

 

六万単騎!七対子は1枚切れの字牌で待つというのがセオリーではあるが、なぜこの選択に至ったのか。一つ考えられるのは、字牌待ちとはいえダブ東は他家からの出アガリが厳しいこと。また、六万を切ってしまうと非常に中張牌の多い河になってしまう点も注意したい。合わせ打ちで「ワンチャンス」や「ノーチャンス」ができてしまうようであれば、3人の子のうち1人ぐらいは安全牌を切りながらテンパイができてしまうかもしれない。当初の目的の一つであった連荘率の上昇のためには、字牌を切ってのリーチが有効なのである。そんなことを思ってか思わずかリーチに踏み切った山田。すると…

 

 

なんと2巡後に望外のツモアガリ!このアガリには解説の猿川も「芸術点で5,000点あげたいですね」と絶賛!このリードを生かしてこの回トップをとった山田は続く4回戦もトップを手にし、+68.9Pの嬉しすぎる勝利。一日終了時点の全体成績は、画像の通り。

 

 

 

魚谷が山田に次ぐプラスで11位から8位に浮上。Twitterでは「今期のリーグ戦で最大に手が入りました。残留目指して頑張ります!」と謙虚ながら嬉しそうなコメント。
麓は「熱くなりすぎました\(_ _)あまり集中できてませんでした。」と後悔を滲ませた。古橋も「最終戦下手すぎました」と反省。
前原は、なかなか効果的なアガリを決めることができず、▲26.7Pで耐えたといった印象。次節大きなプラスが必要に。

次回の放送は12月15日(火)。対局者はダンプ大橋(2位 +120.3)、内川幸太郎(4位 +94.4)、客野直(7位 ▲11.6)、安村浩司(13位 ▲100.6)、二階堂亜樹(15位 ▲273.1)。昇級・降級を争う2名ずつに、どちらも見える客野。それぞれの思惑が交錯する試合をぜひご視聴ください。

(文・浜野太陽)

第15期女流桜花 優勝者予想

正解者の中から抽選で1名の方に、第15期女流桜花獲得後の直筆サインをプレゼント致します。

また、応募された方の中から抽選で2名の方に、女流桜花決勝進出プロ寄せ書きサインをプレゼント致します。

応募方法:優勝すると思われるプロを記載し、こちら からご応募ください。

※1メールアドレスに対し、1応募とさせて頂きます。
※1メールアドレスより複数の応募があった場合、最後に応募されたもののみ受け付けられます。

なお当選者の発表は賞品の発送を以って代えさせて頂きます。

応募締切:12/16(水)

番号 名前 プロフィール 白銀 山脇 吾妻 瑠美 魚谷 稲岡 西山 内田
1

古谷知美
25期生 四段
第14期女流桜花

ロン2プロフィールはこちら

2

仲田加南
21期生 六段
第21期新人王
第4、11、12、13期女流桜花
ロン2プロフィールはこちら

3

二階堂亜樹
15期生 七段
第2、3期女流桜花
第4期女流桜花 3位
第3期 プロクイーン決定戦 優勝
ロン2プロフィールはこちら

4

川原舞子

28期生 三段

ロン2プロフィールはこちら

 

決定戦進出者

現女流桜花:古谷知美
1位通過:仲田加南
2位通過:二階堂亜樹
3位通過:川原舞子

 
 
白銀紗希

「強い」今までに何度思ったことか…特にプレーオフB卓での仲田の力強い麻雀を見せられると、本命にせざるを得ない。
対抗は古谷。昨年の決定戦では最後まで攻め切り、初戴冠。今年はその攻撃力にさらに磨きがかかっているのではないかと思う。
安定感抜群の亜樹、初Aリーグで決定戦進出の勢いがある川原からも目が離せない。

◎ 仲田加南
○ 古谷知美

 
山脇千文美

予選、プレーオフと安定した強さを見せつけた仲田さんは、実力は言うまでもなく、女流桜花と言うタイトルへの思い入れも人一倍強そうなので、本命としました。
決定戦最後の1枠を勝ち取った川原さんは勢いもあり、歳も期も近いため応援の意味も込めて対抗に。

◎ 仲田加南
○ 川原舞子

 
吾妻さおり

今期のメンバーは仲田の麻雀と相性良しとみる。年間を通して桜花対局を観た印象から再戴冠への準備も十分と考え本命とする。
対抗は亜樹。基礎能力の高さ、大舞台での経験値、的確で冷静な判断力。必要な要素は揃っていると思う。
現桜花の古谷も連覇に向け、リーグ戦のない1年で相当の稽古を積んでいるはず。
初決勝の川原がどのような準備をして挑むかも非常に楽しみである。

◎ 仲田加南
○ 二階堂亜樹

 
二階堂瑠美

速度と踏み込みを攻め寄りに調整していても、元々のバランス感覚が優れているので堂々の本命
去年の決定戦以降、厳しい戦いを強いられる場面を多々みる古谷と、巧みなゲーム回しと鋭い読みを駆使する仲田を抑えて爆発力の川原が対抗

◎ 二階堂亜樹
〇 川原舞子

 
魚谷侑未

決勝の場になると麻雀の個性という意味で仲田さんが一番主体になりやすいです。仲田さんは相手に対応させる&場面対応の麻雀で、今回の桜花決勝には対応型が亜樹さんしかいないので、亜樹さんが不利になりやすいと予想します。
仲田さんに亜樹さんが対応している所を、古谷さんの持ち味の打点攻撃力で攻めて優勝の可能性が高いかなと思います。
しかし、仲田さんが自分のペースに持ち込みきった場合は、仲田さんが圧勝すると思うので、古谷本命、仲田対抗とさせて頂きました。

◎ 古谷知美
〇 仲田加南

 
稲岡ミカ

1年間通して試合で当たったり、当たらなかった節を全て見てきましたが、安定感と、勝負強さで本命を仲田さんとしました。
桜花にも何度もなっているので、決勝戦の戦い方も慣れている部分があると思います。
対抗は、初Aリーグ初決定戦の川原さんとしました。
対抗は結構悩みましたが、初めての決定戦で緊張すると思いましたが、持ち前の勝負所での押しがハマればと思います。
どなたが桜花になっても納得のメンバーでの決定戦。
楽しみにしております。

◎ 仲田加南
○ 川原舞子

 
西山あみ

亜樹本命、仲田対抗と予想させて頂きます。
亜樹さんは今期の攻守バランスが秀逸だったように感じました。後半にさしかかって上位メンバーが目まぐるしく変動する中、安定性も抜群でした。
そこに仲田さんが持ち前の攻撃力を上手にぶつけてくると予想します!

◎ 二階堂亜樹
○ 仲田加南

 
内田美乃里

女流桜花で三連覇の実績もあり仲田さん。対抗は総合的な実力で二階堂さん。
初決勝で大先輩2方と現女流桜花相手にのびのび打てれば川原さんもあり、連覇したい古谷さんが他者3人とどう闘うかも楽しみです。

◎ 仲田加南
○ 二階堂亜樹

第37期十段戦 優勝者予想

正解者の中から抽選で1名の方に、第37期十段位獲得後の直筆サインをプレゼント致します。
また、応募された方の中から抽選で2名の方に、決勝進出プロ寄せ書きサインをプレゼント致します。

応募方法:優勝すると思われるプロを記載し、こちら からご応募ください。

※1メールアドレスに対し、1応募とさせて頂きます。
※1メールアドレスより複数の応募があった場合、最後に応募されたもののみ受け付けられます。

なお当選者の発表は賞品の発送を以って代えさせて頂きます。

締め切り:2020年12月11日(金)17:00まで

番号 名前
段位
プロフィール 前原 沢崎 藤原 ともたけ 藤崎 瀬戸熊 編集部
1

伊藤優孝
九段
現十段位
第3期 最強位
第6期 雀魔王
第9期 鳳凰位
第6、7期 發王位
他多数

ロン2プロフィールはこちら

2

杉浦勘介
六段
第36期十段位決定戦 3位
第9期野口恭一郎賞 受賞
第39期王位戦 準優勝

ロン2プロフィールはこちら

3

柴田吉和
五段
第32期十段位
第28期新人王
第19回モンド杯 優勝

ロン2プロフィールはこちら

4

内川幸太郎
七段
第35期十段位
第34期鳳凰位決定戦 4位
第7期グランプリMAX 4位
第37期王位戦 3位

ロン2プロフィールはこちら

5

本田朋広
四段
第10期グランプリMAX優勝

 

 

予想者コメント

荒正義

タイトル戦決勝は、経験値が物をいう。となれば、伊藤プロが本命。
対抗は杉浦プロと見ます。ここ3年、彼の打ち方が進化している。
切り込みが鋭く、ギリギリまで押してくる。そこに魅力を感じます。

◎ 伊藤優孝
○ 杉浦勘介

 
前原雄大

それにしても打ち盛りのプレイヤーが多く残ったものだな__。
それが私の素直な感想である。
4人の挑戦者の映像はほとんど観ている。本命は杉浦勘介、対抗が内川幸太郎。これが私の予想である。
普通はタイトル獲得経験者を軸に考えるものである。そうしなかったのは、杉浦のここ1年の変貌に驚かされたからに他ならない。
彼をここまで変容させたものは、昨年の十段戦決勝の負けであると睨んでいる。
対抗の内川であるが、本命にしなかったのは対局過多と稽古量の問題である。
この2人にしたのは、勝ちたいという曖昧模糊とした思い入れではなく、勝つという意志を感じるからである。殊に杉浦には強く感じざるを得ない。
初日、抜け番の位置から、何をすべきか考え実行できるちからを有している。普通の対局と違い、5人打ちの対局はそこは要の1つであることは相違ない。
昨年解説をさせていただいたが、一視聴者としては誰が勝っても良いのだが、最終日の伊藤優孝さんのような素晴らしい勝ち切り方をみたいものである。
これは願いであり、祈りでもあり、打ち手の使命でもあるように考える。

◎ 杉浦勘介
○ 内川幸太郎

 
沢崎誠

防衛の伊藤プロは、A1リーグの最終節も重なり2つを追うことになりますから、他の選手とローテーションを比較すると厳しく思います。
挑戦者は甲乙つけがたい活躍をしておりますが、近年十段位を獲得している内川プロが相性的にも一歩リードするように思います。
続いてはグランプリ優勝から活躍続きの、本田プロがいま一番打ち盛りのように思います。
この難しい組合せは

◎ 内川幸太郎
○ 本田朋広

と予想します。

 
藤原隆弘

初の十段位防衛戦となる伊藤。昨年はA1最下位と苦しいシーズンの中、最年長記録を大幅に塗り替える、70歳で十段位を獲得した快挙はまだ記憶に新しい。
今年もA1最下位争い中で、シチュエーションは同じ。息子ほどに歳下の挑戦者達に、格と経験値の差を見せて連覇すると予想する。
ただ、3日間の決定戦は長いので、高齢により気力と体力が続かずエンジン不良に陥った場合は、今期グランプリや最強戦プロ代表戦を制して勢いに乗る本田が2つ目のG1を掴み取ると見る。

◎ 伊藤優孝
○ 本田朋広

 
ともたけ雅晴

今期の挑戦者は若手の4人になったが、リーグ戦での調子の良さ、攻守のバランス良さから昨年の決定戦にも出場している2人を推したい。
2人に差はないが、タイトル奪取への気持ちが一番強いのが杉浦だと思うので本命にした。

◎ 杉浦勘介
○ 内川幸太郎 

 
藤崎智

勢いのある若手の挑戦者が揃った。ベテランの伊藤としては闘いづらいメンバーだと思う。ただし挑戦者4人とも麻雀のスタイルは似ているような気がする。苦しい局面はじっと耐えてチャンスが来るのを待つタイプ。局面を自力で切り開くタイプの伊藤が最後まで優勝争いに絡みそう。期待も込みで伊藤対抗。4人の中で誰が主導権を取るかは予想は難しいがA1経験が大きいとみて内川本命としたい。

◎ 内川幸太郎 
○ 伊藤優孝

 
瀬戸熊直樹

「必ず決勝まで上がって来い!」
守れなかった漢の約束を来年果たしたいので連覇を期待して本命とします。
対抗にはベスト16オーラスで、あと2巡しかないところから見事逆転勝ちを決めた本田さんを。
自分の勝ち運をしっかり落ちついて掴みとるところを見ていると、年齢とキャリアにはない勝負師としてのセンスを感じます。
熱い闘い間違いなし。楽しみです。

◎ 伊藤優孝
○ 本田朋広

 
編集部

現十段位の伊藤に挑戦する4名は、ともに中堅どころでいま一番乗っている30代、40代の打ち手となった。
杉浦、本田がとれば、初の十段獲得で杉浦はG1初優勝となる。
しかし十段と言えば連覇が多いタイトル戦で、これまでのデータを見てみると、36期で19名が優勝しているが、内連覇以上が7名で8回(前原が2連覇と3連覇している)。
ここ最近では藤崎連覇のあと内川、伊藤ときているので、ここで連覇がくるのではと予想する。
対抗は、ベスト8で前原、山田の猛追を交わし5年ぶりに決勝進出を果たした柴田とする。

◎ 伊藤優孝
○ 柴田吉和 

第15期女流桜花入れ替え戦2nd stageレポート

入れ替え戦2nd stageに出場する4名は

C2リーグ1位で入れ替え戦1st stageに出場し、見事勝ち上がってきた35期杉浦まゆ。

 

 

西城の追走を振り切りC1リーグ1位で入れ替え戦2nd stage出場の31期桜川姫子。

 

 
Bリーグ昇級争い3位和泉に僅かに届かず、4位で入れ替え戦に出場の25期斉藤理絵。

 

 

昨年までプレーオフ進出率100%と安定感のある成績でしたが、今期は最後まで不調から抜け出せずAリーグ13位で入れ替え戦に回った28期松岡千晶。

4回戦でトップ1名が来期の女流桜花Aリーグに入る入れ替え戦。
これまではBリーグで昇級争いをして次点になった調子の良い選手が勝ち上がることが多く、例外は昨年の中山だけでした。
中山はAリーグ最終節で降級ゾーンから抜け出し奇跡的な展開で入れ替え戦に滑り込むことに成功していたので、Aリーグからの参加ながら勢いもあった稀なケース。

データ的に有利と見られていたBリーグ4位で昇級次点だった斉藤が1回戦から走ります。

 

 

東場の親で怒涛の7本場。
手を緩めず攻め続ける斉藤に待ったをかけたのが杉浦でした。
杉浦以外の3人は負けるとBリーグ。
杉浦だけはここで負けると正規の昇級ルートのC1リーグに組み込まれるため、他の3人とは気合が違います。
昨日1st stageを勝ち上がった勢いも合わせ、杉浦の状態が一番良く見えました。
状態が良くても手が入らなければ勝てないのが麻雀ですが、この日も杉浦には風が吹きます。

 

 

2回戦の東1局6巡目、東南發ホンイツホンロウトイトイの倍満を1回戦トップの斉藤から直撃。

 

 

そこから粘って倍満放銃の失点を取り返した斉藤から更に9,600点を直撃して浮上させず。
良いタイミングで直撃したい場所から高打点をアガってリードを広げ、そこからもリズムよく淡々と押し引きを選択していく姿は1st stageの再現になりました。

 

 

最終戦もしっかり攻め続け、全員の息の根を止める一撃。
役満ツモでも届かないポイント差にしてオーラスを迎える完璧な試合運びで優勝し、デビュー2年目で見事Aリーグ入りを決めました。

<最終結果>
杉浦+100.4P 斉藤+44.0P 松岡▲66.0P 桜川▲79.4P

(文:越野智紀)