第142回:中級講座『2フーロに放銃するべからず。』 浦田 豊人
2018年11月14日
連盟公式ルールに的を絞った中級講座も、今回で4回目となりました。
前回は鳴くか鳴かないかの「鳴き判断」について書かせて頂きました。
今回は逆に鳴かれた側の視点にたって、どう対応していくかを書いてみたいと思います。
麻雀において、相手の手が一番読みにくいのはどんな時でしょうか?
やはり「ダブリー」でしょうか?
ダブリーでなくても早いリーチなどはヒントが少なく、手役も待ちも読みにくいものですが、これが仕掛けとなると話が違ってきます。
推理しなくても1フーロで3枚、2フーロで6枚も労せずに相手の手を見る事が出来て、狙っている手役もそこから自ずと分かりやすくなってきます。
そんなリーチに比べてヒントが多い「鳴き」ですので、相手に仕掛けられた時は、しっかりと読みを入れて、無用に振り込まないようにしていくべきです。
そして、振り込まないだけでなく、打てる牌は読みを入れてしっかりと打っていき、無駄にオリに向かわず、ギリギリまでアガリを目指さなくてはいけません。
「2フーロに放銃するべからず。」
これが私の連盟公式ルールにおけるテーマの1つです。
1フーロならいざしらず、2フーロで放銃するのは、プロとして覚悟の勝負牌以外では避けなければならないと思っております。
それでは、その「鳴き読み」について、何項目かに分けて説明していきます。
●鳴き読み其の一
「1つ目の鳴き=手役確定」
1つ目に仕掛けた部分が手役を確定し、手役そのものを意味するもの、という事です。
例えばと仕掛けたら、234の三色狙いを確定させた、という事です。
もしでしたら、三色狙いは勿論、ピンズの一通やチャンタ系でいくと決めたもの、という事です。
人はどうしても不安定を無意識に嫌い、安定を目指してしまいます。
麻雀もまたしかりで、出来る限り後付けや片アガリといった不安定な仕掛けは避けようとします。
なので初動の仕掛けには、どうしても「自分が狙うべき手役」を確定するところから入ってしまいます。
そうは言っても麻雀には色々なバリエーションがあるため、1つ鳴かれてもそこまで決めきれないものですが、この中級講座アドバイスとして、一旦決めつけてしまう事にしましょう!
◯仕掛けが、、、の場合
下家が私の捨てたに反応しと仕掛けました。
ハイ!それでは三色と決めつけます。
とすれば、下家に警戒すべきは残りのマンズとピンズの2~4の牌となりますが、これが「三色単独役」なのか、それとも「三色複合役」なのかで、警戒する牌が少しずつ変わってきます。
「役牌暗刻」と複合されている場合はどうでしょう?
チー
その時の警戒範囲は「2~4の全ての数牌」となり、場合によっては「1~5」の広範囲となります。
先ずは相手に役牌暗刻があるかを推察しましょう。
面倒そうかもしれませんが、役牌は全部で4~5種類しかありません。
(三元牌、場風牌、自風牌)
鳴かれた時点で場に既に2枚以上見えている役牌もあり、また自分の手牌で持っている牌もあったりして、比較的残りを推察しやすいものと思われます。
これは仕掛けの話のみならず、常日頃第一打目から「相手の役牌暗刻」の可能性を一つずつ潰ししていくクセをつけていきましょう。
次に最も多いのが、「タンヤオと鳴き三色」の複合。
ドラも絡めば3,900点になるので、連盟公式ルール的にも比較的仕掛けやすい複合役と言えましょう。
チー
この場合も「2~4の数牌」と広範囲で要警戒ですが、役牌暗刻と違うのは、タンヤオ志向のため、残った他の色の形が「23」といった、端にかかっている形にはなっていない事が推察され、当たり前ですが、「端牌1」は警戒から除外出来ます。
そして単独役、つまり三色だけの場合ですが、この場合は一気に範囲が狭められ、警戒すべき牌は「カンチャンの3のみ」という事になります。
チー
上記は234の三色狙いですが、片アガリはしない前提なので、マンズとソウズの2と4の待ちは無いと考えられます。
そうなれば待ちは「カンチャン確定」という事になり、カンとカンが最も警戒すべき牌となります。
こんな時に下家にまたはを切る時は、自分に勝算のあるテンパイで、アタリを覚悟しての勝負牌となります。
◯仕掛けがの場合
この時も勿論三色で確定させた鳴きの可能性もありますが、456で鳴いた場合は三色の他に「一通確定鳴き」の可能性があります。
チー
一通の場合の警戒牌は「2、3、5、7、8の数牌」となり、
「1、4、6、9の数牌」は逆に通せる牌となります。
理由は先でも述べましたが、片アガリの手で待たない前提であれば、残った待ちはカンチャンかペンチャンという事になり、そうすれば上記の「1、4、6、9」では待っていない理屈となります。
このように折角相手の手役を読んで、テンパイを察知したからといって、何でもかんでも止めれば良いというものではなく、守備に回っていても通せる牌はある、という事を知るべきであります。
◯仕掛けが(または)の場合
この時が一番厄介です。
三色、一通、そしてチャンタ系と色々と考えられるからです。
勿論、役牌暗刻の可能性もあります。
なので、この時は仕掛けた人の捨て牌とドラ牌、そして役牌の残り枚数などを見て、手役を判断していかねばなりません。
ただ同じく言える事は、役牌暗刻以外はいずれにせよやっぱりこの「一つ目の鳴きで手役を確定させにいっている」という事なのです。
●鳴き読み其の二
「トイトイに初動ソバテンあり」
もし相手の手役をトイトイと読んだならば、はじめにポンをして打牌したソバテンを警戒せよ、という意味です。
例えば相手が6巡目にをポンして、捨て牌が、その後もしトイトイ狙いと推察したのならば、待ちはやの可能性が浮かび上がってくる、という事です。
例えば下記のような手
西家 6巡目 ドラ
トイトイはどちらかというと最初から狙っていく手役ではなく、普通に手を進めていくうちに牌が縦に重なってきて、七対子を意識するようになり、1つ暗刻が出来たり、役牌がトイツになった時に、トイトイを狙いにいく事が多いものと思っております。
それで場にポン材が出て、「トイトイに決めた!」と決断するわけですが、上記の手でをポンした時に、人は何故か孤立牌のではなくて、トイトイに関係のない両面ターツのでもなく、先ずを切る人が多く見受けられます。
これはの出が遅ければ遅い程、そのソバを警戒されてしまうという心理が働き、少しでも早く処理しようと思うからであります。
また、なかなかテンパイせずになんかを持って来た時に、形式テンパイを取りに行きたくなる誘惑にかられないためにも決め打っておく、という人もいるかもしれません。
なので、自分の手が下記のようになって、
どちらかを切る場合は、を切る事をオススメします。
騙されたと思って、「初動ポンのソバテン」を止めてみて下さい。
●鳴き読み其の三
「中盤からの連打は一通くずれのタンヤオ」
ダンピン系の捨て牌で中張牌も切られはじめたのに、突然手出しで「とが順番」に切られていく捨て牌があります。
こんな時は「一通くずれ」を警戒し、その色のタンヤオ牌が待ちになっている可能性が高い、という事です。
チー
ドラ
捨て牌
(チー)
こんな感じの時は手の中にがあって、待ちになっているケースが考えられます。
のメンツは完成していない事が多いです。
もし完成しているのであれば、そのまま一通を目指している時が多いからです。
なので、メンツでなくターツの待ち、またはカン待ちが残っている、と読めます。
●鳴き読み其の四
「『スライド』を読め。」
鳴きの読みとしましては、「スライド」も非常に有効となります。
例えば手の内にの出来メンツがあるところに、を持って来た時にと振り替える、これがスライドであります。
面前でもこのスライドは読みには重要ですが、鳴き読みの時にもより効果を発揮します。
下家が下記の仕掛けを入れています。
チー ポン
ドラ
捨て牌は
ドラはで、が早々に切られている事からとドラはトイツ以上の可能性もあり、振り込めば3,900点以上の覚悟が必要。
放銃したくはないが、待ちが絞りにくい捨て牌であリます。
ここから下家は「何か」をツモって、手の内からを切って来た。
後述しますが、これはかなりの確率でスライドの可能性大であり、恐らくをツモり、手の内のと振り替えた模様。
とすればと持っているので、の形は考えられず(フリテンになるため)
、という事はは通るということになります。
とも比較的通りやすいので、ピンズは捨て牌にしか捨てていないにもかかわらず、は通るということになります。
そしてドラトイツと読めば、
チー ポン
と、2枚以外は見透かしている事になります。
これは大きい。
実戦は勿論こんな簡単には見透かせないかもしれないが、スライドを見抜く事は鳴き読みには心強いものになり得ます。
それでは、どんな時がスライドと思われるのでしょう?
色々なケースが考えられますが、捨て牌の順番として「不自然な牌」が出てきたら、スライドの可能性有りと推察します。
【ケース1】
手の内から切った牌によって、捨て牌にメンツが出来た場合。
例えば手出しがで、下記の捨て牌の時。
5巡目に、少し間をおいて、なのにまたの手出し…?
こういう「手出しで、捨て牌にメンツ完成」させた時はスライド要注意です。
とメンツ完成していたところに、を持って来たので、を切ってスライドさせたのかもしれません。
【ケース2】
数巡前に切ってある牌(もしくはそのスジ牌)を、手の内から切ってきた場合。
例えば手出しがで下記の捨て牌の場合
序盤にを切ってあるのに、終盤に差し掛かる12巡目にまたの手出し…。
これもスライドの匂いがしますね。
【ケース3】
終盤の不自然な「・」「・」切り
これもスライドを疑います。
ダンピン系の捨て牌は
「一九→オタ風→二八→不要な中張牌または役牌」と、だいたいこんな感じで順番に切られていくかと思いますが、この後に何故か手出しで「・」、「・」が中盤以降で突然切られると、不自然に感じられます。
必ずしもスライドばかりとは限りませんが、一応可能性はありえると言えましょう。
●鳴き読み其の五
「最終手出しが完全安全牌なら待ちは充分形」
仕掛けを入れた人が、数巡後に場に3枚切れている完全安全牌のを手出しで切って来たとしましょう。
「あー、テンパイしたんだな…。」
と、先ずは思われる事でしょう。
こんな時の手の内は「リャンメンの充分形」が待ちになっている事が多い、と推察されます。
1シャンテンの時に完全安全牌を持てる余裕がある
→つまり「リャンメン+リャンメン」になっている事が多く、その前に切られている「マタギ筋」が最も危険筋と言えましょう。
チー ポン
ドラ
捨て牌
このが手出しとします。
ドラがなのでからドラが出ていかないようにを一枚先切りするケースも充分考えられます。
また、テンパイ打牌でソバテンを見抜かれたくないため、から受け入れ枚数を狭めてでも先にを切るタイプもいます。
なので、上記の状況では待ち、待ちを警戒すべきであります。
私はこんな場面で、いとも簡単にあっさりとを切って振り込むケースをいっぱい見て来ました。
分かっていて尚且つ覚悟して打つのならば全然構わないのですが、さして勝負してないのに切ってしまうのは勿体無いですね。
また、それとは逆に完全安全牌が切られて、更に手出しが入った場合は「愚形の待ち」の可能性が考えられます。
そんな時は「もしかしたら安全牌を持つ余裕がなかったのかなぁ?」
と疑ってみましょう。
●鳴き読みその六
「北家は親と一緒にノーテン」
これまでの読み其の一~五を実行するにあたり、特に大事な「子」は誰でしょう?と聞かれたら、
それは「北家」の方と答えるでしょう。
麻雀を深く知っていくと、子の南家・西家・北家の役割が違う事に気付いてきます。
特にその中でも北家の役割は大事であります。
親の大連荘を許してしまう原因として、誰かがかわし手をちゃんと入れずにのんびり手作りしたケースが考えられますが、
「北家の親に対する絞りが甘い。」時にも親の爆発を起こしてしまう原因の1つになります。
なので北家は連荘阻止のためのキーマン的存在であり、アガリが見込めそうでない場合の中盤以降は、親に対してしっかりと絞っていくべきで、「親を道連れにして、一緒にノーテンになる」自己犠牲の精神も持ち合わせていなければなりません。
東3局 東家 ドラ
ポン
捨て牌
北家の手牌
親がダブをポンしており、12巡目の完全安全牌のを手出ししてからはオールツモ切りで、いかにもテンパイしていそう。
北家は途中ドラのを持って来たので、受けを余儀なくされて、残り2巡となったところで残念ながら安全牌が切れてしまう。
どうしようと思ったところに、上家の西家がを切る。
「良かった~。これであと2巡凌げる。」とをトイツ落としに入る。
するとテンパイしていたと思っていた親が「チー!」
失敗したと思っても後の祭り。
苦しいけれど、こんな時こそ北家の見せ所。安全牌は無くとも以外を探して、しかもテンパイしていると思われる西家にもケアをして、死に物狂いでオリの牌を探さねばなりません。
実に北家は辛い位置なのです…。
●鳴き読み其の七
「『何を鳴かなかった』から待ちを外す。」
何を鳴いたかも大事ですが、何を鳴かなかったかも、読みとしては非常に重要な材料となり得ます。
例えば役牌を仕掛けた人の対面がを切り、「その直後に何かをポン」して、同じくを切ったとします。
そんな時はソバテンの待ちや待ちといったマタギ筋は、待ちとして無い、という意味です。
単純な話ですが、マタギ筋があるとすれば、やといった形があるという事になり、何かをポンしてテンパイに取った以上、その形であれば先にを鳴いているはずなので、つまりマタギ筋が無いと読めます。
ソバテンなのでついつい止めてしまいがちですが、こんな時こそ「マタギ筋無し」と自信を持ってマンズ周りを切っていきましょう。
以上、今回は七項目にわたって「鳴き読み」を説明させて頂きましたが、上記の項目以外でも鳴きには大小さまざまなヒントが隠されていて、そこから看破していく事が出来ます。
皆さんも自分のオリジナルを是非発見してみて下さい。
という事で、本日最後に鳴かれた時の「自分の構え」をフローチャートにしてみました。
【自分の構え】
鳴いた人の「手役」は何か?
↓
「本手」か「かわし手」か?
↓
鳴いてから「手出し」を凝視。
↓
2枚目を鳴いた時点で、残り7枚をイメージ、待ちも同時にイメージ。
↓
何でもかんでも抑えずに、打てる牌はしっかりと打ち抜く。
こんな感じです。
「2フーロに放銃するべからず。」
明日からの「鳴き読み」に少しでもお役立て下さい。
次回も邪道戦法は続きます。
お楽しみに~。
カテゴリ:中級