第151回:中級講座『二の矢を放て』 森下 剛任
2019年09月24日
半年に渡って担当させて頂きました中級講座ですが、今回で最終稿となります。
最終稿は『二の矢を放て』という内容で、麻雀を打つ(対局を行う)上で私が大切に思っている事の一つを紹介します。
何度も言いますが、麻雀は4人で戦う対戦ゲームです。
人と人とが戦うゲームですので、その日のツキや実力はもちろん、そこには焦りなどの感情も生まれますし、調子が良い人・悪い人、リーグ戦でいえばポイントがプラスの人・マイナスの人、対局者の状況は千変万化です。
麻雀を打つ上で、人によっては調子の良し悪しで戦い方を変える人もいるでしょうし、単純に手牌の効率・自分と相手の持ち点の状況や残り局数などデジタルな情報を基に戦う人もいるでしょう。
戦い方について私が大事に思うことは、見える部分での的確な状況判断と、見えない部分に対してどれだけ深く考えるか、さらにそのバランスのとり方だと思います。
囲碁や将棋のように盤面だけを見て勝負するゲームであれば、熟練者より若い人の方が体力面は当然の事、記憶力・判断力・思考の瞬発力など思考面でも有利であると思います。
しかし、いまの麻雀界を振り返ると果たしてそうなっているでしょうか。
熟練者が優れている点としては、なんといっても経験値・経験則でしょう。
盤面や自分の手牌といった目に見えている部分だけで麻雀を打つのではなく、目に見えない部分をどのように推理・予測して戦うか。これこそ、経験則が物を言います。
さらには、「自分の手牌は待ちが悪い(もしくは、打点が低い)が、この局面ならリーチを打てば相手が反撃し辛い状況だから、リーチだ」など、目に見えない相手の心理面を突いた攻めなどは熟練者の業といえるでしょう。
戦い方について別の側面から考えた場合、人にはそれぞれの考え方・価値観・性格があり、それに沿った形での成功の仕方・失敗の仕方があります。
極力、安全牌1枚は手の内に確保して麻雀を打つ慎重なタイプ、ドラや役牌を積極的に切り出したり、相手のリーチに対して無筋を数枚は打ち出していく大胆なタイプ、ルールや対戦相手に応じて打ち方を変える事のできる器用なタイプ、一つの打ち方を愚直に進める不器用なタイプなど、打ち手のタイプは様々です。
性格などの違いも加味すると、麻雀においての勝ちパターン・負けパターンは打ち手によって千差万別です。そのため、まずは自分自身を知ることが大事だと思います。
自分は何が得意で、何が不得意か。
自分は何が好きで、何が嫌いか。
自分は何が強み(ストロングポイント)で、何が弱み(ウィークポイント)か。
自分がしたい麻雀と、自分に合った麻雀が異なっていることもあります。
まずは、たくさん麻雀を打ち、試合に出場し自分自身を分析してみましょう。
自分の手牌や捨て牌、相手の捨て牌など目に見える部分を基に状況判断が出来るようになったのなら、次は対戦相手のその場の状況や心理状態などの目に見えない部分を深く考えてみましょう。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
時に理不尽な出来事も起こりうるのが麻雀ですが、故事にあるように相手の実情までも熟知できれば勝てる場面・局面も増えると思います。
前置きが長くなってしまいましたが、これらを踏まえて『二の矢を放て』について紹介したいと思います。
イメージはリードがあるうちにしっかりと勝負するといった感覚でしょうか。
例えば、開局に2,000・4,000をアガっても、そのアガリだけでは決定打にはならない事が多いです。
このリードを軽いアガリで局を流すのではなく、更なる加点を目指して本手をぶつける事が二の矢という事になります。
リーグ戦の昇級ボーダーは100ポイント前後になることが多いです。
半年のリーグ戦では20半荘で結果を残さないといけません。
1半荘あたりアベレージ+5ポイントが必要です。
毎回30,000点を維持すればいけそうな数字ですが、簡単な事ではありません。
公式ルールは原点や着順も大事ですが、一番大事なのは素点だと私は思っています。
一の矢が成功したら二の矢、二の矢が成功すれば三の矢と、調子がいい時に得点を伸ばし不調の時は失点を減らす事が昇級や降級しない為に必要な事だと思います。
よく見かけられるのは、不調の時に着順を上げようと無理をし、さらに失点をするケースです。
私自身もこのケースでよく失敗経験がありますが、公式ルールは着順が大事なルールではないので、不調の時に無理しない事が結果的に良いケースが多いです。
仮に、不調時に何かアクションを起こしたいときは、親番でする事をお勧めします。
『二の矢を放て』ということは一の矢は成功したということなので、調子は悪くはなさそうです。
できることなら東場のうちに二の矢を放ちたいところです。
理由はとしては…
・東場で大きく抜け出すと他家の目標が2着狙いになりやすく、南場に入ってからも大きく加点できるチャンスが増えるため。
・南場に入ってからだと勝負に対するリスクが高くなるため。
今回は二の矢のケースですが、調子が悪い時や、状況を打破したい時に南場よりも東場での挑戦をお勧めします。
最後に、場況や自分の手牌といった目に見えている部分はしっかり学び、目に見えない部分をどのように考え、見えている部分との、バランスのとりかたが大事だと思います。
押し引きを見極めその時々で柔軟に対応していかなければなりません。
忘れていけないのは、自分1人で麻雀をしているのではないということ。
自分のコンセプトはあると思います。ただ、堅くならずに柔らかく考えてみることも時には大切なことだと思います。
麻雀は勉強したからといってすぐ結果がついてくるゲームではありません。
結果が出なくてつらい時もありますが、経験を積み学び続けることが大切だと思います。
半年に渡って書かせていただいた中級講座も今回で終了です。拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
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