第72回『先制リーチは有利?』
2012年12月12日
前回のリーグ戦の、ある1局。
対面が役牌を2つ鳴いていて、ピンズのホンイツ模様。
上家も既に1つ仕掛けていてタンヤオだろう、そこに下家の親がを打ち、上家がそれをポン、打。
上家はテンパイ確実で、下家の親もテンパイか、好形もしくは高打点の1シャンテンと見て間違いないだろう。
その時、自分にもテンパイが入り、牌姿は以下の形。
北家
マンズは比較的場に安く、下家の親がテンパイしていない可能性があること、
上家が安手でリーチをしたら、マンズが止まる可能性があることなどを考慮して、ヤミテンを選択した。
結果は、上家が生牌ので対面の単騎のホンイツに放銃、という結果になった。
対局終了後、後ろで見ていた杉浦勘介プロとその局の話になり、
___「あれはアガリたかったな」
杉浦「でも、一番得なめくり合いをしていたのは間違いないでしょ。」
杉浦プロとは良く麻雀の話をすることも多く、幅広い思考を持っているので勉強になることも多い。
最近の風潮では、先制リーチや先制テンパイが偉いと言われているが、果たしてそうだろうか?
局単位で考えてみても、テンパイではなくその先のアガリの成立を目指すゲームである。
僕自身の考えとしては、(若干)テンパイするスピードが遅くなったとしても、
「得と思われるめくり合い」に持ち込めるテンパイ形を目指すことの方が、
最速のリーチや先制テンパイよりも重要であると考えている。
簡単な例としては、
ドラ
5巡目(一発、裏ドラ有り)仕掛け、リーチ等何も入っていない場合、
先制で2,600点のリーチが打てるが、打とテンパイ取らずする方が有利と見る。
これは、両面以上のテンパイ形になる枚数が多く、ピンフ手への変化で打点も上昇する。
打点が上昇しないケース、
これでもテンパイ取らずが有利だろう。
先制リーチによって、他家3人が全員オリてくれるケースももちろんあるが、
先制テンパイに固執し、自らの手牌の変化を絶ってしまい、
追いつかれた時にしまったと思うようなテンパイ形でのめくり合いは避けるべきだ。
特に、自分が子方の時は、親からの反撃も考えなくてはいけないだろう。
では、今度は鳴きに関する別の例。
点棒の動きがほとんどない東3局、上家の子方が役牌を含む3フーロでテンパイ濃厚、
こちらも子方で以下の手牌。
上家
ポン チー ポン ドラ
自分
ドラがで、上家が3フーロ目の手出しがで1,000点濃厚のケース。
上家から鳴ける牌が出た時、チーしてテンパイに取り「めくり合い」に持ち込むのかどうか?
また、ドラがで3フーロ目の手出しがの場合や、
更にドラがで上家がを既に切っているケース。
スピードを合わせてめくり合いに持ち込むのかどうか?といった所がテーマだ。
ドラがのケース、こちらがメンタンピンの1シャンテンで、
1,000点に対して1,000点でめくり合いをするよりも、高打点を目指したい為、
鳴きはスルーした方がよさそうだ。
ドラがの時も門前でテンパイすれば、リーチで出アガリ満貫の決定打になる為スルーを推奨する。
難しいのはドラがのケース。
これはチーしてテンパイをとれば、3,900点のテンパイで1,000点とのめくり合い。
門前で完成すれば跳満まで見込めるが、ここは意見の分かれるところだろう。
競技麻雀だと3,900点は割と価値が高いと思うが、
跳満はその半荘自体の決定打になり得るので、巡目によっても変わるだろう。
他にはリーチ者がいる場合の例。
ルールはプロ連盟の一発・裏なしのAルールで、東2局、点棒の動いていない状況、
上家の先行リーチ者(子方)の現物にがあるとしよう。
その時の自分(子)の手牌。
ツモ ドラ
6巡目、切るのはな訳だが、リーチをかけてめくり合いをするのかどうか。
場況に偏りがない状況ならば、僕ならある程度の危険牌を持ってきてもヤミテンのまま押す。
まず一発・裏無しなので打点の上昇がそこまでないこと(出アガリならば2,000→3,900まで)、
その打点の上昇のメリットとリーチをかけたことによって、
確実なテンパイを他家に教えてしまう=アガリ率が下がること(つまりその局の失点率も上がる)
というデメリットでは、後者の方が大きいのではないかと思うからである。
「先制リーチは有利」など、最近ではシステム化、単純化した戦術が有効とした見方が増えている様に思う。
しかし、単純化しすぎた戦術ばかりを用いていると、
自らの思考の柔軟性や引き出しを狭めることになりかねない。
一番大事なのは、その引き出しをどのタイミングで使うかという正確さとスピードなのだが、
多ければ多いほど難しい。だから単純化してしまおう、ということなのだろうと思う。
実際麻雀というのは、基本的なものとして「○○だから、こう打つ」といったいわゆるセオリーはある。
しかし、実戦の局面は複雑なものが多く「○○だけど、××だから、こう打つ」といった、
基本から応用したものが正着打になるケースも多い。
単純化したシステムばかりを用いてしまうと、その応用するべき所が省かれてしまったり、
それ自体の力が身につかないのではないかと思う。
色々な技をどこで引き出すかのスピードや正確さはその人の鍛え方次第。
自ら限界を作ってしまう様なことは、雀力向上の為には決してしてならないだろう。
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