中級

第89回『質』

まさかの連載8回目。
回を重ねる事に題材が減っていき、締切が守れなくなっていくという悪循環。
今回は何を書こうと、以前の書き物を読み直しては考えての繰り返しです。

さて、これが掲載される頃には我が日本プロ麻雀連盟のリーグ戦も第2節が終了しているでしょうが、
第1節、降級してA2からの再スタートとなった自分は、5年ぶりに第1節をプラスして終えることができました。

今回はそんなリーグ戦からお話を始めていこうかと思います。

その前にA1という、リーグの非常に異質な部分から説明を。
鳳凰位戦は現在A1からEまでを合わせ11のリーグから成り立っておりまして、計300人という大所帯となります。

その中でも、A1は12人しか在籍が許されず、さらに、唯一鳳凰位になれる可能性があるリーグです。
鳳凰位決定戦に進めるのは3名。A2に降級するのは2名。
もちろん鳳凰位にはなりたいけど、A2に落ちるのは嫌。そんな思惑が常に渦巻いているからか、リーグ戦の最終節は決定戦を決める卓よりも、降級者を決める卓の方が面白いと誰かが言っている様な気がします。

地獄の釜に落ちた4人が、2本の蜘蛛の糸を掴む為に他人を蹴落とす戦いですからね。
そりゃ見ている方は面白いでしょう。毎年そこにいた自分にとっちゃたまったもんじゃありませんでしたが。

そういう争いの時に必要な物って、麻雀が上手いとか下手とかいった言葉で表現できない部分が多いんですよね。渋とさであったり、ズブとさであったり泥臭さであったり。

先日連盟チャンネルで「三麻エンペラー」という放送がありましたが、
自分が出た回の最終戦なんて正にそんな感じだったと思います。
自分は早々に脱落してしまったのですが、滝沢プロと瀬戸熊プロの争いは最後の最後まで続き、
麻雀が上手い下手とかそういった部分では語れない様な手の入れ方を見せておりました。
なんていうか、そういうものを見せられると、自分はまだまだだなぁと思ってしまう今日この頃。

しかし、そんな自分ですが、リーグ戦は40ポイントのプラスで終わる事ができました。
4年ぶりのA2で対局し、まず思った事はやりやすいという事でした。

A1では自分が一番後輩であり年齢も若かったのですが、A2になると自分より若い人も後輩も増えてきました。卓上に纏われる空気っていえばいいんですかね。雰囲気がA1に比べてA2の方が柔らかいんです。

例えるなら、昔っから開いている年季の入った常連だらけの雀荘と、学生や若い人がメインのギャル雀みたいな感じでしょうか。

A1はとにかく雰囲気が重いです。しかも、その空気が自分にのしかかってくるような感じがします。
こればかりは、実際に体験してみないとわからない感覚なので、気になる方は頑張ってA1まで上がって下さい。
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さらに、対戦者の質も大きく違います。レベルとか技術ってわけじゃありません。あくまで質です。
前回の対戦で当たった紺野プロ、黒沢プロ、河井プロですが、紺野プロは受けタイプなので外しますが、
黒沢プロ、河井プロの両名は打撃系の打ち手でしょう。
そして、A1で打撃系といえば、沢崎プロや瀬戸熊プロが挙げられるかと思います。

ここからはあくまで自分の主観となりますが、まずこの4名で大きな違いは渋とさだと思います。
放銃に対する感覚の違いっていうんでしょうか。
沢崎プロ、瀬戸熊プロはここぞという勝負局でなければ、メンピンドラ2とかメンタンピンドラといった相手に放銃しません。
逆に、黒沢プロ、河井プロは手牌と相談しつつも、結構淡白な放銃が多く見受けられます。

これだけ書くと、黒沢プロと河井プロはダメじゃないかってなっちゃうんですが、それは間違ってまして、
乱打戦上等、殴り合い上等って意識が強いんだと思います。プラス、取り返す自信ですね。

いうなれば、真剣で切り合うか木刀で殴り合うかの差でしょうか。
どちらにもメリットがありデメリットがあるわけですから、前述した様に質が違うと書いたわけです。
ただ、自分がどちらとやりやすいかとなると、前者よりは後者になるだけの話です。

A1で1人ベタオリさせられて、延々とノーテン罰符の3,000点を払い続ける作業はもう嫌なんです。
放銃しあって局が終われば自分の点数は減りませんからね。相性みたいなもんでしょうか。

とまぁ、最近の対戦から例を出してみましたが、タイプっておおまかに分ければ攻めか受けかバランスですけど、攻めの中、受けの中にでも沢山のカテゴリーがあるわけです。

同じタイプだからといって、全てを一緒くたに考えてしまうと、実は中身が全く違っていたなんて事もよくあると思います。
特に仲間内で何回も対戦する相手なら、最低でも相手がどんなタイプかを、攻め、受け、バランスの3系統をさらに3つに分類するぐらいの努力はすべきでしょう。

特に自分が受ける事が多いと思っている受け、バランスタイプな方はこういった努力が自分の雀力の生命線になると思って下さい。
それが出来ないのなら、常に攻め続ける様にシフトチェンジをお勧めいたします。

何事も、得手不得手という言葉があるように、上達する為に必要な努力を込みで自分の性格にあった麻雀をまず身に付けて、それから新しい事を覚えていく方が中級者から上級者へのステップアップとして一番の近道なのではないかと思います。

それではまた次回?(あるの?)

編集部:あります!