第134回『勝負の感性④』 荒 正義
2018年07月18日
○チャンスは2度ある
打ち手4人の「運」が平等なら、半荘1回でチャンスは2度ある。これも大事な勝負の感性である。
チャンスが2度なら、気持ちに余裕が生まれるし打ち方も変わる。無理な牌姿で、危険な勝負を挑む必要もない。来るべきチャンスをじっと待てばいい。そのチャンスとは、東場と南場の親番のことである。だからチャンス2度だ。
もちろん、散家のときも満貫、跳満のアガリがある。しかし、それはお互い様で、差引0だ。
なぜ親番が大事か、それは言うまでもない。親のアガリは子方の5割増し。連荘することで、その権利を何度でも活用できる。実戦では、勝負が決まるのは7割が親番である。となれば、勢いのあるいい親番を引くことが、いかに大切かということになる。
① 南家の感性
第1戦、東1局7巡目の南家の手(一発・裏あり)。
ドラ
開局早々なら、相手の運も自分の運も手探りである。こんなとき親からが出たらどうする?なお、場は無風状態である。
回答 チーテンに取る。
7巡目は微妙な巡目。仮テンのテンパイがいる場合もあるし、好形で満貫の1シャンテンの者もいるかも知れない。
ここで、メンゼンにこだわって危険は冒せない。この手が満貫になるためには、カンチャンを引き入れる。さらに、リーチでツモって、裏ドラが必要。これでは話が遠い。
ここは速やかにアガリ、親を迎えるのが確かな足取り。1,000点で勢いがつくとは思わぬが、相手のチャンスをつぶした1,000点なら価値がある。
(実戦では、相手の手の内を見ることはできない。しかし、次の親で大きな連荘が出来たなら、値千金だったと予想はできる)
また連荘された次の親は、すぐに流される。連荘の怖さを知った子方は、気を引き締めて次から親に辛く打つ。だから連荘された後の親は、連荘しづらいのだ。そのためにも上家の親は早く蹴る、これが南家の親落としの理由である。
○場合の応手
第1戦、東1局7巡目の南家の手(一発・裏あり)。
ドラ
場は無風状態だが、中盤で相手の手が煮詰まっていることも確か。そんな時、上家からが出たがどうする?なお、場は無風状態。
回答 鳴かない
いくら南家が、親落としが役目とはいってもこの手を鳴いていけない。鳴いてアガって3,900点止まりが関の山。これでは勝てない。この手はタンピン形でドラがある。そして三色が見える。この手は、すでに面前で戦う、勝負手なのである。ピンズを引き込んだら即リーチだ。これでもいい。満貫が見込める。
(満貫が見込める)
そして、これなら最高。3面チャンで受けが広くアガリの可能性大である。なら、出ても跳満がある。
(理想形)
ソーズが先に入っても、ここまでが限度。受けのは筋だが、リーチかヤミテンかは微妙な判断。状況次第といえるだろう。
(受けが弱い)
私ならヤミテンに構える。
しかし、実践は複雑だ。ヤミテンに構えたら、親のリーチが飛んで来た。さて、どうする?
ここが思案のしどころである。無筋の牌を掴んだら、押し切るか引くかだ。
前原雄大、佐々木寿人は押し切る。場合によっては追いかけリーチもある。だから彼らは攻撃型なのだ。受けも出来るが、攻撃に重点を置く。
しかし、藤崎智や沢崎誠は場面によって応手が変わる。捨て牌(4人の)を見て押す時もあれば、急に引くときがある。押したときによくアガリ、引いた時に、なぜかロン牌が止まっているのだ。これが経験値である。こちらは自在型である。
私は無筋でも打点があるから、一牌は勝負だ。しかし、2度目は引きである。
なぜなら、高さはあっても受けがイマイチだからだ。このカンチャンがアガることができるときはヤミテンのときか、一牌を勝負したすぐ後と見る。これが私の勝負の感性だ。
麻雀の構えは三者三様で、どれが正しいか分らぬこともある。だから面白いのだ。
南家の構えの基本は親落とし。しかし、麻雀に絶対の一手はない。手牌と相談だし、状況次第で応手が変わる。いつの場合も打ち手は、状況次第の対応能力が求められるのだ。
② 北家の感性
北家は親で精根使い果たした後だから、手休みの1局と考えるのが妥当。
チャンス手が舞い込んだら攻めるが、そうでなければ日曜日だ。休養して疲れを取り、明日からの仕事に備える。これが北家の基本姿勢。
だが、親の上家だから打牌と仕掛けには、細心の注意が必要である。親に仕掛けが入ったら、徹底して牌を絞ることが肝心。親がホンイチ仕掛けなら、その色の牌と字牌は鳴かせてはいけない。南家は親落としが役目だが、北家は親に連荘させないのが役目。これが、卓上の暗黙の了解事項である。
この手は、東3局1巡目の北家の配牌。
ドラ
七対子1シャンテンの好配牌だ。親の第一打が。これに北家がポンの声。
おそらく北家は字牌が3組あるから、面前で進めるより鳴いてトイトイが早いと思ったはずである。実戦も東家から次に。そしてが出た。これも勢い北家はポンとなる。
ポン ポン ポン
手牌4枚の手の内はこうだ。
もちろん、北家の仕掛けに役牌を打つ者はいない。いや、あっても南家と西家はツモ番が来ないから打てないのだ。そして親から6巡目にリーチがかかる。
(親の河)
そして2巡後、ドラのを引いた親の手がこうである。
ツモ
6,000点オールだ。北家の鳴きは南家と西家のツモを飛ばし、親のツモ番を早くしている。これは親の敵に、塩を送る行為に等しい。
親が北家の鳴きで引いた牌はと。そして、仕上げがドラの。怖いのは、この後の親の勢いだ。
北家の手牌4枚が、これならまだ話は分かる。
ポン ポン ポン
これは、親の上家でポンポンするとろくな結果が出ない一例である。
北家の手はこうだった。
ドラ
この手は本線が七対子。余裕があるなら、ホンイチ七対子まで狙えばいい。暗刻ができたら遠くに四暗刻を見る。トイトイならポンテンで、ツモリ三暗刻狙いが相場である。これが北家の構想力と感性だ。
③ 西家の感性
西家は親に対しての縛りがない分、自由に手作りできる立場にある。これがゆとり。したがって、西家の多くは一通や三色の2ハン役を狙う。これならリーチで引けば、満貫となるからだ。だから、西家の受けは両面の好形で、打点もそれなりにあると見るのが当然。となれば、一番警戒すべきは親の攻めで次が西家の攻めだ。
南家のリーチ後に、西家の追いかけリーチが入る。共通の安全牌がないときは、西家の安全牌を切るのも一つの手段だ。南家のリーチは、速さを頼みとした親落としの可能性があるからだ。いや、そうではなくてもリーチ後に追いかけリーチが来たときは手作りに時間をかけた分、追いかけの方が高いはずである。
これはドラが2丁の西家の手だ。
ドラ
ここで切るのはかだが、リーチは不十分でまだ必要なしだ。ここは、三色を見て切りのヤミテンがいい。次のツモがならこうだ。
これなら十分形でリーチがある。なら出て跳満。
ツモがでもいい。これならヤミテン満貫。
リーチもある。捨て牌に並んだが格好の迷彩となり、の釣り出しに役立つ。これも、選択肢の多い西家のゆとりである。
以下次号。
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