第66回『2つの原則』
2012年06月30日
麻雀にはたとえ時代は変わっても絶対に変わらない2つの原則が存在すると私は思っている。
1つは「麻雀はツイてる者が勝つゲームである」という事。
もう1つは「麻雀は4人でやるゲームである」という事である。
一昔前なら当たり前の話なのだが、最近は「麻雀にツキは存在しない。全ては確率の範囲内である」という発想も出てきているので興味深いのだが、
私はあくまで「ツイてる者の勝ち」だと思っている。
さて、なぜ大多数の方が当たり前じゃないかと思うような事を書いたかというと、実は麻雀で勝つうえでこの2つの原則が非常に大切な事だからである。
「麻雀はツイてる者が勝つゲームである」。戦術的にそんな事言ったら全てが終わってしまうと思ってしまう方もいると思うが、実はここが始まりである。
競技プロの場合は「ツキ」という言葉はあまり使わず、「状態がいい(悪い)」という表現が一般的ではあるのですが、意味は同じであると思ってもらっていい。
まずはその時の自分の状態を知る事が何より大切である。
言い換えれば、もしその日の1回戦目であれば、まず自分がツイてるのかツイてないのか知る事が最初の作業であるという事である。
もしその日の半荘の回数が決まっているのであれば、この作業は当たり前ではあるが手短に済ませることが理想である。
できれば2・3局で済ませたい。
麻雀を打つうえでの理想はツイてる時は攻撃的に、ツイていない時は守備的にである。
では藤崎の状態の判断材料を簡単に紹介したい。
アガれれば状態はまあだいたい悪くはないので、自分のアガリに関しては省略します。
≪相手から先制リーチが入った時点の自分の手牌が、しっかり安全牌が残っている充分形の1シャンテンなら悪くなく、
また雀頭が現物であるなど無理なくまわっていけそうなら更に悪くない≫
≪相手から先制リーチが入った場合で、自分の手牌が是非勝負に行きたいような形の場合(受け入れがかなり広い、打点的にかなり期待できる等)
この場合は自分のツモに注目である≫
状態の良い時は、自分の不要牌はリーチの現物であるケースが多い。
従って、自分のテンパイの前に相手の危険牌を掴むのはあまり良い状態とは言えないのですが、
それでも自分の状態の良し悪しもわからないうちから、1枚も勝負出来ないのはいくら守備型の藤崎とはいえ弱過ぎる。
だから藤崎流は1枚だけ押す。
それでも更にテンパイせず危険牌が飛んでくるようならオリる。
攻撃型の人であればとりあえず、アガるか振るかの決着が着くまで勝負してみるのだろが、守備型なら1枚が精一杯であろう。
「あそこであの1枚さえ押せていれば」なんて経験みなさんもありますよね。
これが1枚だけの理由でもある。もう1枚押せていれば…いやいやキリがない。
元来守備型はビビりなのだから1枚で充分である。
ちなみにアガれる、アガれないは別にしてマックス1枚の勝負でテンパイまで行けるようなら決して悪くない。
≪自分の鳴きによって相手のリーチやツモアガリを誘発するようなら自分の状態は良くない。
それが鳴いた1巡以内であればかなり要注意である≫
だいたいこの3点に注目して自分の状態判別をしている。
ちなみに、3局続けて配牌もツモも全くダメなんてケースはまだ勝負にすら参加していないわけですから、
今日はツイてないと判断するのではなく少し先送りにするようにしています。
さて、今日のツキの状態の確認作業が終わりました。ここから戦術である。
このツキというのが目には見えない細菌のような存在である。
どのくらいの間、自分のところに留まっていてくれるか全くわからないものである。
その日1日続く事もあれば、半荘の東場で終わってしまう事もあるでしょう。
従ってツイてる状態でいかに攻めることが出来るか、ツイていない状態でいかに我慢できるかが全てであると思っている。
勝てば実力、負ければツイていない。
麻雀ではよく聞く言葉なのですが、これではやはり上級者とはまだまだ言い難いでしょう。
自分がツイているという自覚がないのだから、状態の良い時と悪い時の打ち分けが出来ていないという事になる。
我々競技プロの場合は、公式戦では1日の半荘の回数が決まっているため、今日はツイてるから長くやるとか、
今日はツイていないのでもう帰りますというわけにもいかない。当たり前ではあるが…。
従って、リーグ戦などの長丁場の場合はツイている時は大きくプラスして、ツイていない日は小さいマイナスで抑えて、
どっち付かずの場合は、小さくてもプラスで終えることが目標となる。
なので、1日単位で考えると勝てばツキ、負ければツイてない。
トータルで考えれば勝ちは実力、負けても実力という事になるはずである。
まあリーグ戦のような長丁場の勝負は、一般の方にはあまり興味のない話だと思います。
ではタイトル戦などではどうでしょう。
タイトル戦では1日単位で勝てば次に進めるが、負けてしまえばそこで終わりである。
その日ツイていれば勝ち上がるのは誰にでも出来る簡単な作業である。
しかし、ツイていないので小さいマイナスで抑えられればいいやというわけにはいかない。
ツイていなくても、ギリギリの勝ち上がりのボーダーラインを目指さなければならない。
では、このツイてない時にどうやって勝ち上がりを目指すかであるが、藤崎がデビューして間もない今から15年くらい前の話である。
同期の黒木プロや今里プロ、1期後輩の老月プロなど10数人と藤原プロに講師役をお願いして研究会を開いていた事がある。
そこで、状態が悪い時にどうやって打つかというテーマで意見を出しあった事があった。
勿論答えなどないテーマであり、いろいろな意見の中から自分自身面白いと思う意見があれば、
自分で実戦で試してみればいいという程度の意見の交換の場であったのだが、
鳴いて1,000点でもいいから、とりあえずアガリに行くという意見が多かったと記憶している。
そうすることで、少しでも流れが変わるきっかけになるかもしれないという考え方である。
しかし、藤崎の意見はかなり違っていた。
ツキなどいうものが人間の力でそう簡単に持ってこられるとは思えない。
だから、ひたすら我慢してワンチャンスを待つ。
アガリたい1,000点なら、状態が悪い時はアガれない可能性が高い。そんな時に鳴いて手を狭めるのは危険極まりない。
状態が悪いのでどう打っても確率的にはアガれないと思うので、間違ってアガれた時にその一撃だけで2着くらいは狙える打点を狙う。
まあ、私1人の少数意見ではあったが今でもそう思っているし実践している。
状態がよければアガれる回数も多く、手なりでも高い手が出来ることもよくあるので無理に手を高くする打ち方はしない。
しかし、状態が悪い時はアガれても半荘に1回であろう。だからその1回を渾身の一撃にしようとする。「状態が悪い時ほど手は高く」である。
藤崎の実戦から2例ほど挙げておく。どちらもまだ最終戦ではなく中盤戦。
南2局、23,800点持ちのラス目の南家11巡目。
ドラがなく巡目も早くはなく、待ちも優秀とは言えない。
ピンズを1枚も余さずにテンパイしたので、いかにもピンズの一色手という捨て牌だったがヤミテンなら出アガリの可能性はあった。
しかし、もしヤミで8,000をアガれたとしても、あと2局で30,000点の浮きをキープするのは無理と判断してリーチをかけた。
これをツモって、この1回のアガリのみでこの半荘トップをとった。
今度は、東4局の親番。27,500点持ち3着目9巡目。
ツモ ドラ
はドラ表示牌の他に1枚切られていたが、ここは切りリーチといった。
これを最後のツモでツモってこの半荘この1回のアガリで2着。
しかし、この時は最終戦でギリギリ競りまけて勝ち上がる事はできなかった。
どちらの例も、たまたまうまくいっただけの結果ではあるが、状態が悪い時に勝ち上がるための非常手段であり、
この゛たまたま゛がなければ勝負にすらならない状態であった。
藤崎流のちょっと変な定石ではあるが、面白いと思ってくれる方がいれば試してみて下さい。
最後にもう1つの「麻雀は4人でやるゲームである」の方ですが、こちらは至って簡単なことです。
1人よがりが麻雀には細心の注意を払ってほしいということです。
1人よがりの麻雀で他の誰かをツかせてしまった時点で、もはや麻雀とは違うゲームになってしまいます。
特に若い方達の中で、リーチの一発消しだけの目的で鳴きを入れる方を見ますが、この鳴きによって本来あり得ないアガリが発生するケースがあります。
もし一発でツモられてもいいじゃないでしょうか。ツモった人をほめるくらいの心の余裕は欲しいもです。
(文中敬称略)
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