上級

第89回『自然論』

一言で自然といっても考え方は人それぞれだ。
私は以下の4つのことを考慮している。

①麻雀の本質的な自然
②効率的な自然
③場に合わせた自然
④態勢的な自然

①は、麻雀が1局勝負だとしたら、アガることが勝つことだと言える。
この考え方には、守備や打点というものは関係ない。
あくまで、手牌13枚の中で1番アガリに近そうな打牌選択をいていくこととなる。

私がこの考え方を取り入れたのは、連盟に所属し始めた十数年前のことだった。
当時、連盟新聞というものがあり、その中にあった何切る問題。
牌姿はしっかりと覚えていないが、こんな感じだったと思う。

一万二万三万五万六万一索三索三索四索五索五索五筒六筒七筒  ドラ一索

私は五索切りかなぁと思った記憶があった。
しかし、1人だけドラ切りを選択していた人がいた。
北海の荒法師、荒正義である。

当時は牌譜ぐらいしか見たことはなかったが、現役最強の呼び声も高かった荒のその戦術はとても興味を引いた。
この時から、私の中でドラに対しての扱いは変わっていったと記憶している。
私は現在、Aリーガーの中で、一番ドラをリリースするタイミングが早いと自負する。
態勢が良くなってきた時は、この本質的な自然を最重視している。

gpmax2012

 

これは昇龍伝の決勝1回戦の牌譜であるが、Aルールで考えてみたい(昇龍伝はBルール)。
この日は特別、手が良いわけではなかったが、展開にかなり恵まれている日。
決勝も充分に戦えるなと予選では感じていた。

この牌姿で態勢が良いかフラットな状況ならば、ドラの白切り、悪ければ五索切りになると私は考える。
五索切りの理由は、3者の捨て牌が変則的でなく、ソ―ズが1牌も切られていないから。
仮に五索にくっついて両面タ―ツができたとしても、将来色が高くなって弱い待ちになる可能性が高いので心細く思ってしまう。

麻雀は序盤が1番大切だと私は思っている。押し引きのタイミング、手牌構成など、その局の命運を分ける事が多々ある。

たかが4巡、されど4巡。

滝沢和典なら、今はドラを切りそうだが、以前のスタイルなら八万を切るのではないかと思う。
三色とドラを使いきっての七対子狙い。手がまとまって勝負してもいい牌姿になったらドラを勝負ということになりそうだ。

これは②の自然論。
このように自然論同士でも個々によって打牌は変わっていく。

また、同じAルールでもトーナメント方式とリーグ戦でも打牌は変わる。
前者を例に挙げると、十段戦やグランプリの1、2着残りルール。
正攻法ではないが、ドラをリリースすることが多少早くなる場合がある。

鳴かれた場合、痛手を負ってしまう事もあるが、基本的には場を軽くしたいという気持ちでリリースする。
それに加えて、ドラの在り処を特定することができる。
そしてこの局、踏み込むか退くかの選択を、できる限り打点との兼ね合いで決めたいから。
トーナメントの特徴は、とにかく2番手までにギリギリでもいいから滑り込めばいいのである。
トップ走者がどれだけ叩こうが関係ない。

一番大事なことは、態勢が良い者とは戦わない事。
『態勢が良い人』の情報をいち早く察知することが攻略のカギとなる。

リーグ戦でもこの察知は非常に大事なことではあるが、好きにアガらせていてはポイントはどんどん減っていくばかり。
戦い方としては、ヒットアンドアウェイになることが多い。
これを繰り返していくことにより、態勢の差を詰めてからインファイトに持ち込む。

リーグ戦であれば態勢が良くても八万切りで力を溜めたい。
打点がそこまで見込めないであろう事に加え、前章で書いた「エネルギー論」との兼ね合いに関係している。
但し、自分の態勢が2番手につけているとしたら、白切りになるかもしれない。
3番手、4番手を抑え込みつつ、インファイトの体勢に持っていくのである。

巡目が深まれば深まるほど、ドラの切り時は難しくなるが、どちらにせよ、この巡目は分岐点になりそうだと感じるであろう。

また、態勢が悪かったら34を落としていきたい。
将来高くなりそうな色を払って、七対子を本線に手を進めていこうと考える。

このように、同じAルールでも決勝、トーナメント、リーグ戦でも打ち筋は変わってくる。
②は少し触れたが、速度と打点のバランスが肝心。

先程の手牌の巡目が進んでこの牌姿。

gpmax2012

 

私の選択は打二索のテンパイ取らず。
ソ―ズのイーペーコ―に加えて、マンズのイーペーコ―も狙っていこうと考えたからだ。
一索を切ってなくても、Aルールならば私ならば二索を切ることの方が多い。
この打牌はAルールの手順としての特徴だと言える。
ドラを自分しか切っていない場況であれば、さすがに打七万とするのが自然かもしれない。

次章は③と④の自然論について書きたいと思います。