第106回『確率の向こう側へ』 瀬戸熊 直樹
2015年11月25日
みなさんこんにちは。今月から上級講座を担当する事になりました、瀬戸熊です。宜しくお願いします。
さて、上級講座で、何をして行くのかと言いますと、2つの大きな柱で進めていきたいと思います。
① 僕がどのように考えながら、1局、半荘、1節を戦っているのか。
② 僕以外のA1プレイヤーの、凄いプレイを深く掘り下げる。
この2つを絡めて、毎回話を進めて行きます。
この上級講座で、連盟チャンネルを観戦して下さっている方々が、さらに楽しめて、トップリーグを目指す、全ての後輩達へのバイブルになる事を目的として、書き進めて行きたいと思います。
今から7年前、僕は初めて鳳凰位を獲得しました。
その時はまだ気付いていませんでした。
でもそこから1年くらい経った時に、「ある事」がぼんやりと見えてきたのです。
「配牌は、入れられるものなのではないか?」
ここから、劇的に僕の麻雀は変わって行きます。
それまで対局に挑む際に、少なからず「今日はツイてるといいなあ」とか、「不幸な出来事がおこりませんように」とか、運否天賦みたいなお願いをしながら対局に挑んでいましたが、「配牌が入れられるもの」であるなら、そこだけをしっかり見据えてやれば、まず勝負にならない日はなくなり、どんなにツイていない日でも、必ずワンチャンス作れるようになるはずだと。
それからというもの、日々の研究は、漠然と見えてきたこの事象をいかに自分のものにしていくのかに費やすようになりました。
この行為は、何も毎回ダブリ―を入れるようにするものではないし、毎回必ず勝つ事でもないです。
対局者との相対で、自分が優位になる状況を少しずつ構築し、半荘1回勝負だろうが、半荘20回勝負だろうが、どのような試合でも必ず「勝負所」の場面を迎えられるはずだと。
そこでいかに勝負を制するかは、色々な要素が入ってくるので、置いておきますが、どんな戦いでも、そういう思考が持てるようになれば、敗因をツキのせいにしなくなります。だから、僕は自分には「しょうがない」という言葉は使わなくなりました。
もちろん、この一連の行為には、正しい手順としっかりとした読みと強靭な精神力が必要です。
上級講座ですから、ある程度の手順が踏めるのを前提として話を進めるのを、お許しください。
ChapterⅠ 伊藤優孝プロの場合
11月16日のプロリーグ第8節4回戦で、それまで劣勢だった優孝さんが、スーパープレーを出して、試合の流れをひっくり返します。
この半荘は僕のペースでここまで進み、1日を通しては、好調勝又さんの圧勝の予感の最終戦でした。
東3局 持ち点25,900 6巡目、南家・優孝さんは、以下のテンパイ。
ドラ
打としてテンパイ取り。
この時点で、東家・荒さんが、ポンしており、勝又さんがをポン。勝又さんの河に早めにがあり、ドラが固まっていると予想されます。
局面としては、荒さん対勝又さんの戦いになりそうな序盤。
次巡ツモときて、打のテンパイ外し。そして次巡、ツモ。
ツモ
は場に1枚。ここで打リーチと出ます。
リーグ戦全体を考えた場合、優孝さんは残留ポジションで、無理をしないほうが無難な場面でもあり、絶好調勝又さんの恐い仕掛けと、降級ボーダーラインの荒さんの親の仕掛けに挟まれた場面。
ヤミテン選択が無難ですので、ここでのリーチはなかなか出来ません。
ソーズ振り替わりのイーペーコーもあり、解説席もややびっくりのリーチでした。
もちろんフラットな局面なら、リーチもありの手牌です。
結果は、下家・勝又さんが、すぐにを掴まされ放銃となりました。
2,600と点数は安いですが、きっかけとなるアガリとなりました。
このアガリは、僕の中では、トップクラスのアガリとなります。
こういうアガリが、配牌を入れ展開をよくして行きます。
ただ、この日の優孝さんは、ご自身でも言われていたように、3回戦でやらかしていたので、もうひと工夫必要でした。
それが次の局面で出ます。
南2局
ここまでなんとか積み上げて40,000点持ちで迎えた僕の2回目の親番。
僕的には、最大のチャンスと思っていました。
実際6巡目に以下の形になります。
ドラ
一方、優孝さんは原点復帰をして、好調になってきた僕の親を落として、ラス親に供えたいところ。
5巡目以下の手牌になります。
が場に1枚。打か打としそうな場面ですが、打。
次巡、ツモ打、ツモ打リーチとします。
リーチ
丁度僕もツモと来て、タンピン三色1シャンテンとなり、ソーズのターツ外しにはいった場面でした。
ツモで、耐えきれず、打の放銃に。
二度の勝負リーチを成功させ、この日の負債を最小限にした場面でした。
高い手を成功させるのも醍醐味ですが、悪い時に相手のチャンスを摘むのは、さらに難しい行為です。
それを本能でやり遂げるところに優孝さんの凄さがあります。
次回は、更に「配牌を入れる方法」と「戦いの論理」を追求して行きたいと思います。
お楽しみに。
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