第108回『確率の向こう側へ③』 瀬戸熊 直樹
2016年02月17日
皆さんこんにちは。
いきなりですが、本題に入る前に、今回はさらに細かく、配牌の入れ方に必須な「読み」と「サイン」を見逃さない方法を書きたいと思っておりましたが、書き出したら長文になりすぎてしまい、今回「読み」次回「サイン」と二部に分けさせて頂きましたので、ご了承ください。
また、この講座は「鳳凰位」になる為を念頭に入れて書いておりますので、連盟Aルールをベースに、牌姿など全てそこから抜粋しております。
では参りましょう。
以下の捨て牌をざっと見て牌姿と打点を想像してみて下さい。
※薄暗い牌はツモ切り※
A群
【1】ドラ 西家
【2】ドラ 東家
【3】ドラ 東家
A群それぞれの最終手牌にはある共通点があります。
もう一度考えてみましょう。
では解答です。以下が各最終形です。
【1】
【2】
【3】
いかがですか。全て両面マチですね。
僕の思考はこうです。【1】と【2】の捨て牌には、キー牌があります。
【1】ドラ 西家
↓
(最終形)
との切り順とツモ切りですが、。そして宣言牌の。
まず読みとして、が2枚以上ではないかと予測できます。
それは、のあとにが切られ、ピンズのドラを除く~が全て不用とされている所。
マンズが高い捨て牌ですが、ポイントは宣言牌の。このそばの・を入り目と見るか、マチとみるか、関係なしと見るか。
最悪マンズの一色は?と質問もきそうですが、これだけのピンズの手出しがあると、ドラ色だけにその可能性はなさそうです。
ツモ切りのあと、手出しとなっており、このが意図的にツモ切られたものとするなら、の裏スジも一応考慮に入れなければなりません。この辺りは、打ち手の傾向も考慮にいれれば、よりマチが浮かびます。
かなり高い手と考えられ、勝負に行くにはそれ相応の勇気がいりそうです。
【2】ドラ 東家
↓
(最終形)
まず目につくのは、宣言牌のとの切り順。
・・の切り出しから普通に手なりにスピードに重きを置いて、メンツを作っていった事は憶測できます。
典型的なピンフの捨て牌に見えます。ピンズは上より下の方が危険です。
宣言牌ののそばと、の形の切りもあり、マンズとピンズの下は危険なのが解ります。
二択なら場の状況から埋まった方を推測するしかありません。
【3】ドラ 東家
↓
(最終形)
非常に読みづらい捨て牌です。親なので、何でもありそうです。正直読めませんでした。
切り出しから、手なり進行だと憶測できますが、無筋が多すぎる為、こういう時は自分の手牌と相手の状況から押し引きを考えるしかないでしょう。
続いてもう一問いきましょう。
B群
【1】ドラ 東家
【2】ドラ 西家
【3】ドラ 東家
B群もそれぞれの最終手牌にはある共通点があります。
もう一度考えてみましょう。
それでは解答です。
B群最終形
【1】
【2】
【3】
B群は七対子でした。
【1】ドラ 東家
↓
(最終形)
捨て牌からある程度読めます。やはり宣言牌のが・とツモ切りの後に切られている所が最大のポイントです。
宣言牌までの3巡、・とツモ切りのあとの最終手出しの宣言牌をどのように読むかにつきます。
1巡まわしてのカラ切りリーチでなければ、七対子が濃厚です。
ダブルメンツが埋まる、何らかの理由で1巡ヤミテン、スライドかツモ宣言のレアケースが面子手のケースですが、レアケースを考えれば考えるほど切れない種類は増えますので、なるべくシンプルに考えます。
そこの読みと心中できればある程度押せる場面とみます。
【2】ドラ 西家
↓
(最終形)
非常に解りづらいです。打ち手も七対子と読めないと思ってリーチを打っているのが解ります。
ただ、こういう手牌は必要以上に読まず、自分の中でゴーサインが出れば真っ直ぐ打ち抜くだけです。
チャンス手をやめて、オリ打ちのような事態になれば攻守が完全に入れ替わります。
相手に主導権を握られる七対子の典型的な例です。
【3】ドラ 東家
↓
(最終形)
捨て牌から変則手っぽいですが、実はこれ決勝戦で追い上げる立場の人のリーチでした。
河からは、変則としか読めませんが、この場面は、決勝戦の追う立場の人がリーチときていて、打点は高いと想定できる場面だったので、背景からドラがらみと予測できる捨て牌でした。
僕が前回言った、時間帯に突入させる為の行為に必要不可欠なものとして、ギリギリまで攻めると言う行為があります。
もし仮に、相手のマチが全て解れば麻雀の勝率は9割を超えるでしょう。
なぜならほとんど失点なく、加点だけできるからです。そして相手のチャンスを潰せば、必然的に自分の時間帯となっていくからです。
しかし、そんなことは不可能なのでラインぎりぎりまで押し進める行為が必要となります。
つまり押せる牌を増やすことと、押し引きです。
∴「読み」を強化することが第一のステップとしてもっとも重要なのです。
もちろん、一点で読むのは難しいですが、まず相手に攻め込まれた時に、自分の手牌と相談はもちろんですが、打点と相手のマチが両面なのか、リーチをする事の意味がどこにあるのか、そして場の状況からある程度推測して押し進める事が大事です。
今回はほとんど打点のある手牌でしたが、当然麻雀ですから、リーチのみや相手がオリてくれればラッキーくらいのリーチも多いです。
全てのリーチに逃げ回って、うまく追いついた時だけ、エイっと追いかけるような麻雀では、手牌はなかなか入ってきません。
普段の訓練から、常に相手の手牌を推測する事を繰り返すことで、大事な場面での究極の二択で、必ず正解できると信じで努力しております。
余談ですが、ある講習会で、若手がリーチに屈してオリてアガリ逃しをして、相手のペースになった場面で、
僕は「通る牌は全て行って、アタリ牌だけ止めるくらいの気持ちで行かなくちゃダメだよ」と言いました。
それを隣で聞いていた麻雀IQ220勝又さんが、
「瀬戸熊さん滅茶苦茶言ってますね」と笑いながら言ってきました。
もちろん彼も僕の意志は解ってくれていて、僕がそういう事を言ってから、彼が理論的に、どの牌とどの牌が押せて、リスクとリターンの事を教えるという暗黙の了解があったからの指導でした。
考えてみて下さい。放送対局では視聴者の皆さんは、たった一牌押せない、応援しているプロのプレイに対して、
「それくらい行けよ」とか、「行って欲しかった」と言いますよね。
それは、そのプロを本気で応援しているからです。だからプロは応援してくれる人の為にも、いや自分がこの世界で生きていく為にも、必死で戦わなければなりません。
だから、限界まで読むのです。考えるのです。
捨て牌、点数状況、打ち手の思考、先にある展開。
素晴らしい攻めの後のアガリには、素敵な時間帯が待っていますが、安易な放銃の後には、じわじわいと苦しい時間が押し寄せてくるものです。
以下の図を眺めてみてください。
これは、僕の麻雀ノートのある部分の抜粋です。
展開予想の基本の考えです。ここからさらに細かく枝わかれしていきますが、まず、読みをいれて、勇気をもって戦う人にしか手牌は入らないのが解ると思います。
さらに講座を進めて、完成チャートを作っていきましょう。
Capter3 沢崎 誠プロの場合
以前紹介したこともありますが、沢崎さんのスーパープレイとして何度でも紹介したい場面がこちら。
第27期鳳凰位決定戦 1回戦南1局沢崎ツモアガリ場面
との比較はほとんどない場面。しかし沢崎さんは、三色を捨てるを切り、12,000点放銃となる⑦を止めた。
心が震えるプレイとはこの事でしょう。何度も見返すこの牌譜を見るたびに頂きの高さを感じます。
数年後、沢崎さんにこのシーンを聞くと、笑って
「三色が確定した訳でもない以上、やはり何回やってもあの場面は、切るよ」
と、仰いました。 先輩カッコ良過ぎです!
次回は、手牌を入れる方法のもう一つのキモである、サインの感じ方と、「鳴き」についての説明を予定しておりますので、お楽しみに。
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