第121回『目線』 沢崎 誠
2017年06月21日
みなさんこんにちは~。
心配しておりました上級編の第一話が無事通過致しまして、今回は第二話となりました。ありがとうございます。
卓に一牌ありますね。この牌は何でしょう?と言う問題ではありません。
これは僕のリアル麻雀における基本中の基本、目線の位置を示しています。
ゲーム中の九割以上の時間はここを見ています。
油絵の世界に透視法という花瓶とか透明のガラス製品を描く時に、気持ちを落ち着けて、一点を見つめて描くと何故か不思議に透明に描く事が出来ます。麻雀にも応用して牌が透き通るようになれば良いのですが、不純な気持ちが邪魔をしているようです。
この一点に多くの情報を集めます。
20代の頃は下家・対面・上家と目線は他家のツモ動作に合わせて目線も動いていましたが・・現在ではこの伏牌の位置に目線を合わせています。1人の情報を得ようとすれば、その人の手の動きや目線などを見るのでしょうが、同時に他2名の情報収集がおろそかになります。
3名同時に情報を集めるのはここを見つめる視界を広げる事が大切です。
情報が一番溢れるように出てくるのは配牌の取り出しから捨牌が2・3巡目くらいの間です。その情報の多くは人の欲から出るもので、楽をするという行為からの所作にあると思います。その所作に関してここでお話するのは遠慮させて頂きます。
配牌の取り出しから理牌をする。他家と同じ動作をするのは普通の事なのでしょうが、その時間帯の情報収集を減らすのは少し勿体無いように思います。僕の配牌手順が皆さんと違い、手牌を伏せているのは30代半ばからの習慣にあります。現在も同じ仕草ですが、そそっかしい僕としては手が触れたり牌山を崩したり、ドラ表示を間違えないように注意しています。見えない牌が見えるのはゲームが楽しくなくなりますからね。
この伏せてある手牌ですが、開くと同時に手牌の骨格を記憶しています。時間にして0.2~0.3秒くらいだと思います。目線をいつもの位置に戻し他家3者の所作を同時に観察して手牌の進んでいそうな者を探します。もし探し出せるなら早い巡目であっても危険察知から対応できるかも知れませんね。4・5巡目であっても局の終盤に入ったと意識できることも有ります。自分の手牌の打点・シャンテンの進行ばかりを考えるなら放銃が多くなります。
この手牌を一瞬で覚える作業というのは最初からできる事では有りません。当然ながら練習は必要です。最初は手牌10牌くらいから練習スタート。
完全伏牌から10牌を選び、同時に開きます。5秒で伏牌して端から当てていきます。完全に当てる必要はありませんが・・慣れてきたら開く時間を短くしていきます。1秒くらいでだいぶ出来るかな?と思ったら・・手牌13牌で同じ練習です。これも自分なりに時間を長めから徐々に短くしていきます。13牌を1秒でだいぶ覚えられるようになったら、次はパァと開いてパァと伏せて手牌の骨格をみつける練習です。ここまで練習すれば・・目線が手牌から放れてあの一点に集中できるでしょう。情報量は増える事になりますから当然考える事が多くなりますね。
考える・・この考える行為ですが自分の手番での長考が多々見られます。
手牌は一巡で一牌しか変わりませんからあまり見る必要がありません。他家の手番で多くの情報を仕入れる事により自分の手番が来るまでにたくさん考える必要があります。一巡で10~20通りは普通でしょう、もっと考える人は100通りくらいあっても不思議ではありません。情報収集・分析・対応と主張、この繰り返しです。沢山の情報収集から予想ミス、対応・主張の多くのミスが生まれます。その多くのミスは痛みとなって自分のデータとなります。
その痛みのデータは各自が違うものを持つのでしょう。僕の押し引きの感覚はここがベースになっています。これは人に伝えられるものではないと思います。
卓の一点に集中する事により、以前より増して違和感というものを感じる事が多くなると思います。他家の打牌内容・打牌音の強弱もそうですが、自摸のスピード・間合い・打牌スピード、様々な仕草に沢山の情報を得て、考えても理解出来ない一瞬の事が違和感として感じられるように思います。現在の自分は年齢的に若い頃とは同じ作業は出来ません。考えるという事よりも違和感を持ったら考えることが多くなりました。これも楽をしたいという欲なのでしょう。
第34期鳳凰戦A1リーグ第4節A卓
打点力の高い前田直哉七段・近藤久春六段・石渡正志七段との対局となりました。
このツモで切り!と考えたのですが・・そののとなりにが有ったから!?かどうか分かりませんが、ドラ2のイメージが浮かびました。
ここで切りからツモに切りは最悪に見えます。ツモ切りはアガれても打点的に魅力が有りませんし、たぶんシャンポン受けにするのでしょうからアガリ逃しとなりそうです。
競技ルールでは満貫クラスは価値が高いですから・・取り敢えずの切り、同時にを1枚外しのピンフ手牌のイメージも持ちました。
こんな感じですね。
切りから次巡、まさかのツモから手なりテンパイとしてリーチとなりました。
リーチ ロン
親からダブリーが入りました。4巡目にして殆んど情報が有りません。下家はと現物で合わせていますが、自分と対面はのトイツ落とし・トイツ落としと守りには苦しい状況です。この局、このようなトイツ落としを3人が使っています。ダブリーの現物無しの受けの手順として定石化しているようです。
字牌はだけですがダブリーの親にダブの放銃では洒落にもなりません。見た目切りが普通かな?と思います。状況判断はこの1局に限ればの二択なのですが・・1回戦をトップで終えてこの2回戦もトップ目にいる状態、素直にアガリ方向に手を進めれば悪い結果にはならないのだろうと推測すれば、この先に手が進み余るは通るイメージを持ちました。この打の良さはと同様にトイツである事です。通せばもう1巡凌げます。もトイツですが、こちらは伸びて来たところで好調者のアタリ牌が重なったりターツになったりで止まる事を考えれば、この段階でここに手をつけるのは少し危険かと考えました。
次巡のツモが
このようなツモなら取り敢えず切り!それで放銃となります、それで仕方ないと思います。
ツモは2メンツとなりますが、安い手牌で危険なゾーンに押し出される感じで嬉しいツモとはとても思えません。ツモも手牌に勢いを感じません。他のツモ牌と同様に河にはと並ぶ事になるでしょう。捨牌の2列目まで凌げれば何とか対応が出来るかも知れませんね。
切りテンパイ!
11巡目、河に2枚切れの待ちでテンパイです。山に有ればツモ切りの可能性の高い牌です。ヤミテンで構えました。
山に有りそうな感じでここまで来ました。対面の打に約3秒の少考がありました。ここに違和感が生じました。誰もテンパイしていないと感じていたからです。
すぐにツモ番。偶然のツモ!ここから急いで情報を仕入れます。
このは初牌!
は場に3牌?
は場に3牌?
と考えます。このは手牌にターツ・メンツでもう1牌orトイツ?で持っている。守りの手詰まりの形になっているだろう。そう考えさせるのは、彼が守りのスペシャリストで守りの精度が高いからです。当然次の打牌は完全安全牌のツモで無ければ切りになります。
ツモから打牌まで約1秒。 に?が付いているのは河のやに目線を動かして確認はしていません。感覚的にそのくらいだと・・。
それに目線を動かせば悟られます。
これらの事を一瞬でやらなければアガリには結びつかないのが連盟のA1レベルです。あとコンマ何秒か打牌に時間を要すなら、違和感を持って打牌選択が変わるのは当然と思います。
いきなりドラを引いてこの手牌
まだ1メンツも無いのに風牌トイツでアガリに向かって行け行けモード!
配牌 | |
ツモ | |
捨て |
ポン チー
打牌の次巡にツモとしたところです。前巡の打も、この打も同じと考えるかも知れませんが、だいぶ違うように思います。
牌の価値は同等なのですが、はもう通してしまいました。を通してしまった分このは危険度の高い牌になりました。僕の配牌には字牌
と有りました。僕の打ち筋にはのような三元牌の形では1牌切るなら続けて2牌目を切る事を意識しています。
手牌の上に乗せて時間が経つにつれてこのは凄く危険と考えました。
「もしかしたら・・は暗刻かも?で大三元??・・ここで大三元を放銃したら・・今日1日何をしていたの?この1年どうなるの?」
違和感が2つ有りましたが・・取り敢えず安全第一モードに切り替えての対応です。
1つの違和感はポン打 チー打
これは当然チャンタに見えますが・・たとえが暗刻であってもとのシャンポンの大三元の形は無いのは数巡してから気がつきました。
XX
Xは何か同じ牌として・・こんな形でしたらポン打になりますよね。続いてチーでとなるのでしょう。
もう1つの違和感は自分にあります。3巡目の捨牌からと打牌しています。普通の次はです。ですからを怖がっている自分に気がついたということです。
配牌から切りに切りは自分の手筋ですが・・他家の動きで手元に届いたこのは、とはまるで別物と考えます。手仕舞いが妥当なのでしょう。
解説の瀬戸熊プロが「他家の目線を見ていたのかも知れません!」
そのように話しておりましたが、目線の位置は1つです。
そこでも見えるかも?
卓の一点を見るべし!!
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