第86回:吾妻さおり
2014年03月13日
【ご挨拶】
日本プロ麻雀連盟HPをご覧の皆さん。
いつもありがとうございます。
吾妻さおりです。
私はこれまで、麻雀の内容に対する発言は公共の場でもプロ同士でも殆どして来ませんでした。
一番の理由は人の意見を聞きたいからです。
麻雀を勉強出来る環境に身を置きながら、固定観念にとらわれて自分の考えを披露し、「価値観が違うから話しても意味がない」と思われてしまうのは勿体ない事です。
特に私の指針の1つに「状態論」がありますが、これは目に見えずデータ理論を提示出来ない話です。
私などが中途半端に口を開く事により聞き手の方が不愉快になることをおそれたのもあります。
加えて、常に信念を持っているとはいえ、私の持論などまだまだ途中経過であり、公表するのは烏滸がましいと思っていました。
今も勿論完成などしておりませんが、途中経過を公開することも皆であれこれ麻雀を考えるきっかけになっていいのかも知れないと最近思うようになりました。
今日は第8期女流桜花決定戦を巡る、私の思考の一部を皆さんと共有したいです。
色んな価値観があるかと思いますが吾妻はこんな事考えてたんだ、と楽しんでいただけたら幸いです。
よろしくお願いします。
下記をまだご覧になってない方はこちらもご一読くだされば幸いです。
★ロン2ブログ3/5
初めて吾妻を知ってくださった方向けに自己紹介をしております。
★第8期女流桜花決定戦初日観戦記
執筆:黒木真生プロ
★第8期女流桜花決定戦二日目観戦記
執筆:黒木真生プロ
★第8期女流桜花決定戦最終日観戦記
執筆:黒木真生プロ
★プロ雀士インタビュー第103回吾妻さおり
執筆:美波智子プロ
★吾妻さおりの麻雀清一色生活
写真満載の個人ブログ
決勝期間にも更新しておりました。
リレーエッセィへの想い】
リレーエッセィの連載が始まったのは2007年2月。
麻雀普及活動に微力ながも携わりたいと思い、当時唯一連盟の情報発信源だった「編集会議」に毎回私は参加していた。
優れた物書きでもなければ、編集も未経験の私をこの場に導いてくれたのは前原雄大プロ。
麻雀プロとしての心構えについても幾度も話をしてくださり、拙い私の頭では当時理解しきれなかったお話もあった。今でも頻繁にあの頃のお言葉が脳裏をよぎる。
伝えたい意味はこうではないか。今すべき事は何か。自分なりに解釈しながら過ごしている。
編集会議もその一つ。
「麻雀が大好きでもっと多くの方に楽しさを伝えたい」
多くのプロはこの想いを胸に秘めている。だが、思うだけでは何も始まらない。形にするには誰よりも早く行動しなさいというメッセージを込めてここに連れて来られたのだと思った。
意を決してタイトル戦観戦記者に立候補。
その後、連盟HPで麻雀用語辞典の作成と30回に及ぶ初級講座初級講座の連載を担当。
「吾妻プロの初級講座で勉強しました。」
このようなコメントを頂いた時は一つ成し遂げた気持ちになり、嬉し涙が出そうになった。
リレーエッセィの企画が通った時も会議に参加していた。
タイトル戦出場者や今活躍している旬な人物にバトンが渡る。個性溢れるプロ達の随筆が次々に紡がれていく。毎回違う趣の作品なので飽きることなく面白いので、私も更新を楽しみにしている。
麻雀好きにはたまらない魅力的な企画だ。
いつかはエッセィを書きたいと思っていたのに何年経っても読者側。私は何も残せていない。
いくら努力しても実績がなければ世間は認めてくれない。
プロになって得たものは、自分の思い出となって鍵のかかった宝箱行き。
目標と現実のギャップに、はがゆい気持ちが確かにあった。
長い時を経てこの依頼を頂けた事は、企画が生まれる瞬間に立ち会った私にとって、とりわけ感慨深い喜びなのだ。同期で研修時代からの仲間である井出康平プロからバトンが託された事も本当に嬉しく思う。
【第8期女流桜花決定戦進出】
バトンが届いた理由は、今年1月の第8期女流桜花決定戦。
11月末にプレイオフが終了。決勝進出者が決まってから初日までが約1月半。
期間が長かったので否応なしにイメージが膨らみ続ける。
食事中も、寝る為に目を閉じても頭に浮かぶのは麻雀の事ばかり。
早く対局したい気持ちが爆発しそうだった。
【対局者の考察】
ディフェンディングは魚谷侑未プロ。6期、7期の女流桜花であり、今期3連覇がかかっていた。
最速マーメイドの名に相応しく、積極的に鳴いて局面をリードする。
鳴いた後でも手牌に見合わない無謀な勝負はしないクレバーな打ち筋。
本手の鳴き、本手になりえる鳴き、かわし手の鳴きなどのメリハリもしっかりしていて、守備力を保ちつつも勝負と思えばしっかり前に出て戦う。信念の通った仕掛けを打って来る。
2冠達成の7期では打点力もアップし、競技ルールで比重の大きいホンイツとタンヤオを軸に逆境にも挫けずに頂点に向かって泳ぐ姿には私も魅せられた。
淡々と無表情で打ち続けるその佇まいには、寧ろ内に秘めた熱い想いが溢れているように見えた。最終半荘で猛追に遭い、オーラスまで勝負の行方がわからない。手に汗握る戦いの末、見事連覇を成し遂げた。
動画を観た後、残ったのは感動だった。
彼女の強さを尊敬し、あの素晴らしい舞台で麻雀を打ちたいと思った。
「来年は決勝に進出して彼女と戦うんだ」と心に誓ったのだ。
マラソンで言えば魚谷は先頭集団にピタリと張り付くタイプ、対する和久津晶プロはスタートから先頭を狙ってくると予想した。特に今期から3日間になり、もし初日に沈んでも8半荘あるので、システム的にも前に出やすくなった。超攻撃アマゾネスが様子見から入るとは思えない。
彼女の麻雀はプロ入り前の守備型の頃から評判が良く、その噂は私の耳にも届いていた。
現在はリーチと鳴きを多用しイニシアチブを取るスタイルに転身し、第9期プロクイーンを獲得。
今回も全局アガる位の気迫を持って前に進むに違いない。
実際これは効果的で、決勝の麻雀で常に後手に回らされるのは辛い。
自分のペースを掴もうと手牌に集中しても、よほど勝負手でない限り「リーチ」と言われた瞬間「どこまで押そうか」に切り替わってしまう。
先に述べた昨年の魚谷との最終半荘で50ポイント差を詰めた名勝負も記憶に新しい。
誰もが爆発力に一目置いている。
彼女のハートの強さとマッチして、超攻撃がもたらす効果は計り知れないだろう。
となると守備を重視しても良さそうだが、そうしなかった理由は安田麻里菜プロにある。
麻雀くのいちという異名は守備型代表として第30期鳳凰位決定戦を見事に勝ち抜いた藤崎智プロの麻雀忍者と対になっているらしい。彼女のディフェンス力の高さが評価されている証だ。
守備型の自意識はないという本人の発言も見受けられるが、それでも基本スタンスに丁寧な打ち回しがあり、ここぞという時だけエンジンをかける印象がある。初決勝進出時は会場で観戦したし、最近の公開対局も観ている。
同卓だった11月のプレイオフでは序盤にきっちりリードを奪い、ポイントを叩く麻雀も打てる所を見せつけられた。とはいえ、後半安全圏に身を置いてからの徹底した守備麻雀が本来の姿だと思う。
常に好成績を残して第10期プロクイーンで最後の半荘勝負を制して優勝。今回急にスタンスを変えることはないと思った。いや、本音を言えば変えて来てくれたほうが嬉しかった。
何故なら、初日に安田が守備に徹し、魚谷が様子見から入った場合、和久津の独壇場になるのは想像に難くないからだ。
【戦いの方針】
この図式を考えると私の方針は自ずと「超攻撃を超える攻撃」となる。誰よりも先にギリギリの勝負して、点棒を叩く。嵐が来たら身を潜めてやり過ごし、チャンスが転がってくれば攻めるなんて呑気な心構えでは「吾妻の時間帯」なんて来ない気がした。ならば本来のスタンス。いや、いつもよりさらに押し切る気合で挑む。
相手の打点も予測した上での放銃覚悟のノータイム無筋切りは元々得意分野。
危険牌を涼しい顔で切るキャリアは私の方がずっと先輩だ。
そう思ったら初決勝への漠然とした不安はなくなっていた。
【4つのテーマ】
今までの観戦やイメージトレーニングなどにより方針が決まった。
頭の中のイメージをより的確なものにするべく、早速重要なテーマを4つにまとめた。
【テーマ1 スピード】
ここでのスピードとは、テンパイ速度ではなく打牌速度のことである。
壮行会に駆けつけてくれた同期の西岡慎泰プロは「決勝だから、公開対局だから早く切らなきゃと焦らずにゆっくり納得いくまで考えて」とアドバイスをくれた。
なんて思いやりのある暖かい言葉だろう。
初決勝でガチガチに緊張しているであろう私の背中を優しく支えてくれようとする彼の人柄が良く表れた言葉だ。なのに私は「ありがとう。本当に迷った時はそうする。でも今回の決勝、自分の長所であるスピード感も大切にしたい。」と答えた。
テンポよく打てるかどうかは自分の状態を知るバロメーターだと思っているからだ。
実際、映像の自分を観ていると常に同じテンポを心がけているにもかかわらず、かなりスピードにムラがあることがわかる。
好調時は打牌スピードは早くなる。選択に迷いも少なく、指が正解を選ぶ。
打ちながら考えている事と場況がピタりとハマる状態である。
例えばこの局。
3回戦 東3局 ドラ3
明らかに国士無双狙いの安田が、5巡目に切ったドラを再び手出し。空気はピンと張り詰めていた。
頭で考えてしまえばリャンメンが残るを払いたくなる牌姿だが、私はノータイムで。
後に単騎になる可能性もある不安定な受けだが、それなら戦える待ちを選べばいいと思い、ピンズで2メンツ出来た事を素直に喜び受け入れた。
その後、安田が比較的安全度の高いを打つ。テンパイ打牌か?さらに緊迫する。
1つ前の手順も全てノータイムでお気に入りの局。
このような「指が正解を選ぶ」状態に持っていく為には一定のテンポを保って打牌する集中力が必要不可欠というのが私の持論なのだ。
一方不調時は打牌が遅くなる。難しい選択を迫られ、考えがまとまる前に一番迷う牌を引く。
手が止まったからには時間をかけてでも正解を選ばなければならないのは、先に西岡が言った通りである。
しかし、不調時に長考してより良い答えを導き出すことは困難を極める。
もし間違った思考ならみるみる正解から離れ、最初のインスピレーションに逆らい消極的な理由に支配されたりして、中途半端な一打をしてしまう事がある。
2回戦 南1局 ドラ5
これは是非ともジュンチャンを決めたいが、リードがあるので無理する必要はない状況。
考え過ぎた結果、どっちつかずの牌を切ってしまった悪い例である。
牌理的にはとのどちらかの9が正着であろう。
しかし、どちらがいいか決め切れない内に選択を迫られた。
捨て牌を見た私は、トータル2位につけている和久津への将来の危険度を考慮し打。
ピンズとソウズが選べないという最初の感性にも、まっすぐ戦うという自分のテーマにも反する打牌であり、すぐに悔いた。
結果はペンを引いてテンパイ、が嬉しくないのリーチを打つ。
すぐをツモる。このアガリ逃しは酷い。この時点で放銃よりも罪が重い。
挙句、追っかけリーチの和久津にカンの2,600放銃。
この後訪れるであろう地獄を覚悟したが、幸い大怪我をせずに初日が終了した。
後の2日間はこの罪を受け入れ、禊になる位の良い打牌をしなければ優勝出来ないと猛反省をした。
【テーマ2 納得行く手作り】
最高打点を目指し、妥協しない。安くなるテンパイやシャンテンは取らない。
もし確率に抗う場合は明確な理由を持つ事。
先ほどの局の大失敗を自分なりに考えた結果、自分が本当に打ちたかったのはだったのかなと思う。
たった1枚のロスだが9と9の暗刻を逃さない一打はないかな?と思うとメールが次々に届く。
文面には牌姿と場況がズラリ。ダメ出しもかなり多い。
数少ない私の麻雀観を熟知する仲間からのオリジナル観戦記だ。
「切りはどう?」
「さすがに2シャンテン戻しのは良くないと思う。何故ダメなのか納得いくまで考えてください。」
知り合った頃はお世辞にも上手いとは言えなかったが、地味な努力と牌譜検証を繰り返し、瞬く間に牌効率に強くなった。話をすれば意見が対立し険悪になる事もあった。今ではお互いの雀風を理解し尊重出来る。
その貴重な意見を踏まえてもう一晩考えた。
槓刻になる事のない一を1枚外すのは安い四受けを嫌いマンズのイーペーコーを見据える手順。
いや、出来なければただの失敗。
の残り枚数が少なすぎてマンズで2メンツは厳しいので、ここは素直にアドバイスを受け入れることにした。
だが、もし同じ牌姿でがもっと残っていたらやはり私はを選びたい。
面前で高打点を決めるには、時にはシャンテン数を落としてでも最後まで押し切れる納得行くテンパイを組む必要がある。
何より大切なのは助言を聞いた上で考えて納得し、なおかつという選択も残った事。
固執して批判に耳を傾けないのとは全く違う。全ての意見を財産にしてひたすら考え、自分の麻雀を確立して行く。ツモ番がくる前にあらゆる選択に考えを及ばせ、正解を手が選ぶよう精進する事。
いつしかあの時私には見えなかった理由でピンズかソウズを選べる打ち手になり、を切ると言った事を謝る日が来るかも知れない。でもそれは成長であるからいいとも思う。自分が後悔しない打牌を選び続け、今日正解だと思った選択が永遠の正解などと結論付けず、考え続けることが大切なのだ。
各々が違う主義と歴史と感性とを携え、公平なルールのもとで戦う。
目指す理想像によって打牌に個性が生まれるのが麻雀の醍醐味だと思う。
【テーマ3 オリない】
まっすぐ戦えないような安い手作りをしない事。
2つ目と関係があるが、これは他家の動向に惑わされず最善手を貫き通すという決意だ。
3回戦 東1局1本場 ドラ2
和久津のソウズの鳴きに対し、ドラが出て行く安手のシャンテンを取らずにやっとこの形。
ツモ
タンヤオが崩れるから引っ掛けリーチ?いや、スジだからと安牌でが出てくる場況ではない上、がより良い根拠もない。ツモ切り。次巡、裏目の引き。これも勝負。
和久津はおそらく少し遠い鳴きだったがツモが効いたのかをトイツ落とし。
をポンした時に微妙な間があり、字牌待ちはなさそう、単騎も可能性が低い。
まだ1シャンテンかもと思った。次に手出し。これでテンパイは確実。
私の読みではカンとペンが大本命。先ほどのトイツ落としはとと愚形ターツの選択か。
なら残した愚形はドラ受けの可能性が高い。そしてにポンがかからなかったことによりは持っていても1枚。もちろんリャンメン残りのもあり得るが、は倍の危険牌。
打点は7,700か、を1枚引き入れた8,000か。一通ドラ1とドラ2の時は12,000。ならほぼ互角の勝負だ。
次にならまた選択だからさすがにやめようかな。を持って来たら形は最高だけど…。
が大本命とはいえ、この手からツモ切りは中途半端。手牌読みに酔っているだけだ。
今日のテーマは読みではない。読みに頼りはじめたら今後打牌が捻くれる。
なら最高形で押し切るか。と考えていた時にツモ。
ここまで手が仕上がってくれた事に感謝し、意を決してを放つ。
「ロン。7,700。」「はい。」
視聴された方はさすがに行き過ぎだと思ったはずだ。何も7,700とわかって打つ事はない。
放銃を避けて別の局で勝負すればいい。かくいう私も普段なら好調時でもで、不調時ならその前のまたはでストップだ。
私の中では1回戦の安田へ345の放銃の時と同じ。前に出る代償は承知の上で、戦う気持ちだ。
早いリーチにまっすぐと分かり切ったソウズのホンイツへの放銃は、全く別物だがテーマを尊重した。
この局は加点こそ出来なかったが、常に戦える状態を作るために必要な放銃もあるだろうと覚悟していたし、想定で最安の7,700で済んだ。不思議と心は揺れなかった。
【テーマ4 安い鳴きをしない】
元々面前主体の麻雀を好み、手役を大事にしながらツモれる待ちを作るよう心がけるのを理想としている。
メンゼンツモが最も好きな役であり、そこを大切にしようと思った。
かわし手というのは高度な読みを必要とする高度技術であり、武器の1つとして身に付けたいと日頃から勉強しているが、今回のテーマと反するので極力封印した。
【ゲームメイクの練習不足】
以上の4つに加え、点棒と総合ポイントを踏まえた場況判断。
この部分はいくら想定してトレーニングしてもやはり決勝の舞台。全く思い描いたものと逆の事ばかりしてしまった。日頃から一生懸命打っているつもりではあったが、この一局は何をすべきかを考える意識がまだ甘かった事を痛感した。今後はどんな局も明確な目標を持ち、より緊張感を持って打たなければならないと思う。
【初心と可能性】
理想とする麻雀をいくら思い描いても、実現に向けて努力しても、大事な局面で最高のパフォーマンスをするのは本当に難しい。未熟さや心の弱さに直面した場面もあり、反省点は挙げたらキリがない。
決勝を終えた今、少しでも成長するために、牌効率や字牌の切り順から勉強し直している。
第8期女流桜花を優勝出来た事は、応援してくれた人達の喜ぶ顔が見られて最高に嬉しいが、自分は強いから優勝したなどと自惚れる気持ちは微塵も持てなかった。
ただ、今回晒してしまったみっともない姿も、あの日持てる全てを込めて精一杯戦う吾妻さおりだった。
タイムシフトを見て、自分らしさが存分に発揮された場面も、別人のようにもがいている格好悪い自分も引っくるめてほんの少しだけ誇りに思い、麻雀をまた一つ好きになる。
もっとああすれば、こうすればと課題は山積みになっているが、そこを1つずつ改善したらもっと強くなれる。次はもっといい麻雀が打てるはず。今回の経験で理想像はより明確になった。その為に何をすべきか考え、今までの何倍も努力すれば、自分の思い描く麻雀を貫いて優勝出来る日が来るかも知れない。
以前より微かに可能性の光が大きく見えた。
【白い線】
最初は打ち手というより、麻雀を広めたい一心でプロになった。
研修を終え晴れてプロを名乗り、一斉にスタートラインから走り出した。
まだこの道に何があるのか見えないままがむしゃらに進んだ、プレイヤーとしての険しい道。
前は沢山の先人が止まらずに走り続けている。
後ろからは力をつけた若者達が虎視眈々と私を追い抜こうとしている。
ふと前を見ると道の横いっぱいに描かれた白い線が見えて来た。
その手前まで行き立ち止まって鮮やかな白に視線を落とす。
これが私の第2のスタートライン。
ここまで出逢った人達に感謝したくなり「ありがとうございます」とつぶやいた。
頭に浮かぶのはどれも笑顔で「これからも頑張れ!」と励ましてくれる。
また走る力をもらった。
果てしなく続くこの道は麻雀プロだけのものだと思うと急に愛おしくなり、
両の足でしっかり踏みしめてから、全力疾走でスタートを切る。
長い道のその遥か向こうには眩い光が溢れている。
【バトンの行方】
次のバトンは第25期チャンピオンズリーグ優勝の森岡貞臣プロにお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
カテゴリ:リレーエッセィ