対局番組レポート

特集企画/天鳳位vs.連盟プロ対抗戦 2nd season 決勝戦レポート:ケネス徳田

~麻雀の限界?~
 
将棋界では新星が誕生した。藤井聡太四段がデビューから公式戦26連勝(※2017年6月15日現在)という快挙を成し遂げている。
これを麻雀におきかえた場合、確率的には13連続トップという相当な、ほぼありえない数字である。
将棋の場合、実力差があればそれも不可能ではない(とはいえ、デビュー後の新人が26連勝とは、まさに新星)が、麻雀の場合おそらくトッププロが、初級者くらいの打ち手3人とやったとしても、おそらく13連勝は無理なのではないだろうか。
それだけ麻雀というのは不確定要素が強く、言いかえれば「誰でも楽しめる」ことができる。麻雀を将棋や囲碁と同一視するのはナンセンスなことなのである。
ゆえに麻雀は「絶対王者」という存在は基本的存在せず、それゆえ麻雀プロは結果よりもプロセスを大事にすべきなのである。
 
 
プレーオフ成績

順位 名前 予選合計 プレーオフ1回戦 プレーオフ2回戦 合計
1 前原雄大 69.3 73.8 ▲ 5.0 138.1
2 勝又健志 104.0 12.1 ▲ 40.9 75.2
3 就活生@川村軍団(9代目天鳳位) 65.3 ▲ 36.1 35.0 64.2
4 すずめクレイジー(4代目天鳳位) ▲ 10.9 28.6 11.5 29.2
5 瀬戸熊直樹 34.1 ▲ 28.4 ▲ 23.4 ▲ 17.7
6 前田直哉 ▲ 29.6 ▲ 23.6 1.5 ▲ 51.7
7 藤崎智 ▲ 67.4 ▲ 14.1 16.9 ▲ 64.6
8 独歩(3代目天鳳位) ▲ 65.5 ▲ 12.3 4.4 ▲ 73.4

 
 
1stシーズンで決勝に進出した4名(ASAPINさん・独歩さん・瀬戸熊プロ・藤崎プロ)が、この2ndシーズンでは誰一人決勝の舞台に立つことができなかった。もちろん出場選手の10名が10名とも一流の打ち手。「負けたから弱い」「勝ったから強い」などとは全く思われない10名。これも過程の積み重ね、特に上位3名は開幕からのスタートダッシュに成功しており、道中を有利な立場で運んでいる。
麻雀は圧倒的に「先行有利」。見ているほうは劣勢からの大逆転を期待するが、劣勢ゆえに無理な手作りや道中の選択が制限されたりする。麻雀はとにかく余裕が大事なのである。
 
 
~素直な手順とは?~
 
麻雀の基本はアガリに向かうこと。そのためには手牌に素直に打つ。これが簡単なようで難しい。東1局8巡目、西家・前原プロが次の形。
一万一万一万六万七万八万八万四索四索七索八索五筒六筒  ツモ八筒  ドラ八万
南家・すずめクレイジーさんが発を一鳴きして四万五万とリャンメン落としが見えている。
さて、ここからノータイムでドラの八万を打てる人がどれだけいるだろうか。
もちろん素直に打つなら八万切りに答えが行きつく。しかし、ひねった選択を選んでしまうと三色を捨てる八筒切りや、逆に三色を強く狙う五筒切り。あるいはドラドラを使い切る四索トイツ落としなど選びかねない。
打ち手の狙いと、そして状況に反してなければどれが正解、どれが間違いというわけでもない。前原プロの場合は、手牌に忠実に打つことを選んだだけにすぎない。
結果、次巡七筒を入れてのリーチ。
一万一万一万六万七万八万四索四索七索八索六筒七筒八筒  リーチ  ロン九索  ドラ八万
就活生@川村軍団さんから九索を出アガリ。今回はたまたま安目が出たが、場合によっては高目をツモるかもしれない。あるいは先に切った八万で放銃する場合もある。だけど、それもすべて選択の上での結果。その結果の積み重ねこそが麻雀ともいえる。
東2局も三色狙いからのテンパイが入る前原プロ。
 
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四万を切れば三色・ドラ、ドラの七万を切ればピンフ。就活生@川村軍団さんが2フーローしていることもあり、さすがにここは受けも含めての四万切り。おそらくその後八万を持って来れば、六万九万待ちに受ける構えである。が、その前に自ら六万ツモアガリ。
五万七万五索六索七索一筒二筒三筒三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ六万  ドラ七万
最高の形で親番を持ってきた前原プロ、7巡目で先制リーチ、からのツモアガリ。
五万六万三索四索五索八索八索八索五筒五筒八筒八筒八筒  ツモ七万  ドラ四万
素直な手順がアガリを生み、アガリが次のアガリを呼び込む。これぞ前原劇場である。
 
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~天鳳位たちの意地も…~
 
1回戦トップの前原を止めるのは誰か。2回戦は比較的平穏にすすみ、大きく動くのは南場から。南1局、南家・すずめクレイジーさんが
 
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とダブ南トイツ1シャンテンのチャンス手。しかし同巡、就活生@川村軍団さんのリーチ、そしてすずめクレイジーさんが即放銃。
一万二万三万四万五万六万七万八万九万一筒一筒六筒七筒  ロン八筒  ドラ南
 
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7,700で浮きに成功。しかし南2局、今度は逆にすずめクレイジーさんが親番での4,000オール。1人浮き状態に
 
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激戦は続き南3局、就活生@川村軍団さんが親番で8巡目リーチ。
一万二万三万六万七万八万三索三索三索七索八索八筒八筒  リーチ  ドラ八筒
しかし同巡、南家・前原プロが力強いテンパイ。
 
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この6,400は前原プロといえども当然ヤミテン。ちなみにもう1人のガラクタ部の人はどうしてたのだろうか…
 
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結果はヤミテンが功を奏して勝又プロから出アガリ。これが2件リーチだったら、両方に無スジだったためおそらく出ていなかったであろう。
これで前原プロは2戦連続浮きとなる。
 
 
~プレーオフの借り?~
 
ここまで2連続ラスの勝又プロ。苦しい戦いを強いられる。
 
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まだ3回戦目のラス親が残っているとはいえ、上位2者が浮きのまま。
 
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六万から入る、この配牌を最高形に仕上げる。
一万九万一索九索一筒東東南西北白発中  ロン九筒  ドラ北
奇しくもプレーオフで国士無双直撃された就活生@川村軍団さんからの出アガリ。これで最終戦にのぞみをつなげた。
 
 
~優勝に向けての勝負~
 
とはいえ現実的にはやはり前原プロvsすずめクレイジーさんのマッチレースとなる最終戦。
 
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プロ連盟の規定により、トータル2位で起家スタートとなるすずめクレイジーさん。11巡目でツモ七万。トータルトップの前原プロが役牌を仕掛けており、一刻も早くリーチを打ちたい局面だが…なんと打八万。タンヤオが確定するが、その分テンパイチャンスは半分に減る。この選択が…吉と出る。次巡ツモ五索でリーチ。そして六筒ツモアガリ。
二万二万二万七万七万三索四索五索八索八索八索四筒五筒  ツモ六筒  ドラ六万
即リーチを打ちたいとはいえども、やはりビハインドを背負っている以上打点も欲しい。すずめクレイジーさんの意志が伝わるアガリである。
 
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さて、2人のポイント差は13.2P。大体浮き沈みなら変わる数字である。逆に前原プロが浮くと、1万点近い点差をすずめクレイジーさんはつけなければならなくなる。
なので、前原プロが原点にいるかいないかで話が全く変わり、お互いがお互い毎局必死である。
南1局、前原プロが4巡目で二万ポンから動く。
 
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現状トータルでは捲られているため、すずめクレイジーさんの親を、十分形ではないが全力で蹴りに向かう。
9巡目、すずめクレイジーさんにテンパイが入りリーチ。
 
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しかしこの宣言牌の七索が、前原プロのアガリとなる。
一索一索五索六索発発発  チー五万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン二万 上向き二万 上向き二万 左向き  ロン七索  ドラ五索
北家スタート、つまりラス親はトータル1位、つまり前原プロが着く。流局で伏せられる点差ならばオーラスは1局で終わるというわけである。
逆に他家はトータルで負けていても、オーラスで何点ツモれば逆転できるかを踏まえなければならない。
 

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すずめクレイジーさんは満貫ツモ、勝又プロは跳満ツモと、見事2人とも条件に合うテンパイを見事入れている。しかし両者ともあと1枚が来ず流局。
 
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現鳳凰位の前原プロが優勝。1stシーズンでの雪辱をプロ連盟側がはらした格好となった。
さて3rdシーズンがいよいよ開幕。天鳳ルールでもない、プロ連盟公式ルールでもない「世界選手権」ルールでの対局となる。そして人数もこれまでの10名から12名にスケールアップ、乞うご期待!