十段戦 レポート/第29期 ベスト16レポート
2012年08月03日
第29期、十段戦。頂上で待ち構えるのは、現十段位・瀬戸熊直樹。
その挑戦者を決めるべく、ベスト16の戦いが行われた。
一発・裏なしの日本プロ麻雀連盟のAルールで半荘6回を戦い、上位2名がベスト8へと駒を進めることができる。
それでは各卓がどの様な戦いであったか、振り返ってみたいと思う。
A卓 堀内正人(前年度準優勝者) vs 藤崎智(七段) vs 桜井紘巳(三段) vs 櫻井秀樹(四段)
![]() 堀内 正人 |
![]() 桜井 紘巳 |
![]() 堀内 正人 |
![]() 櫻井 秀樹 |
1回戦、東1局、堀内が藤崎から軽く1,000点をアガると、東2局には藤崎が堀内から5,200点を奪う。
東3局1本場、親の桜井(紘)の手牌は以下の14枚で切り番。
ドラ
ここから打点重視で打とすると、すぐにツモ
で打
。
12巡目に上家・堀内から出た3枚目のをスルー。(
は2枚とび)
ここは流石にチーテンをとったほうがいいのでは、と思った。
上家の堀内がツモ番のない所から打とすると、これを桜井(紘)がポンテン。が、手残りした
が藤崎に捕まる。
この後も1回戦目は藤崎の安定した戦いぶりが光り、藤崎のトップで終了。
2回戦目、西家の堀内がいきなりのリーチ。牌姿を見ると、
リーチ ドラ
このメンピンリーチ。
良くも悪くもこれが堀内のスタイルなのだろうが、私には勝負を焦っている様に見えた。
その後藤崎が、
これで追いつくが、が2枚切れの為ヤミテン。ここにツモ
で堀内の現物の打
。ツモ
で打
。
親の桜井(秀)も追いつき、
ポン
ポン
この時のテンパイ打牌がで、藤崎も仕掛け返してテンパイに。
ポン
こうなると、堀内不利に見えたが桜井(秀)がをツモ切って堀内に2,000点の放銃となった。
その後も堀内は親番でも三色リーチをツモるなどして、持ち点は60,000点に。
続く3回戦も堀内の大きなトップで、堀内はほぼ通過となった。
残り1つの席の争いは、4回戦目に親でメンホン七対子をツモるなどして加点した桜井(秀)と、
被害を最小限に抑えながら戦っていた藤崎との争いになったが、最終半荘で、
ポン
ポン
藤崎が親でのこのテンパイをいれ、既にテンパイをいれていた桜井(秀)から直撃。
1本場も2,600は2,700オールをツモアガリ、最終戦で30ポイント近くあった差を藤崎が捲って堀内と共に通過を決めた。
A卓勝ち上がり 堀内正人 藤崎智
B卓 森山茂和(前年度第3位) vs 斉藤等(七段) vs 浜上文吾(四段) vs 沢崎誠(八段)
![]() 森山 茂和 |
![]() 斉藤 等 |
![]() 浜上 文吾 |
![]() 沢崎 誠 |
1回戦、南1局、森山が、
ドラ
ここから終盤にツモでテンパイ。
は4枚切れで、下家の沢崎がピンズの染め手で2フーロしているが、
は絶好に見えた為打
のヤミテン。
すぐにトップ目だった斉藤からがこぼれて3,900点をものにする。
南2局でも森山が沢崎から5,200点をアガると、浜上もリーチで1,000・2,000。
南4局は森山が軽く捌いて、沢崎にとっては痛い1人沈みで終了。
続く2回戦も沢崎は、浜上からでた当たり牌を森山に頭ハネされるという厳しい展開に。
3回戦、森山の、
リーチ ドラ
この4巡目リーチ。
当然の一人旅かと思われたが、ここにリーチと被せたのが沢崎で
リーチ
森山がすぐをつかんで8,000のアガリ。ここから沢崎の反撃が始まるかと思ったが、森山が強かった。
南3局の沢崎の親リーチに対して、森山が13巡目リーチ。そして高らかにツモ。
リーチ ツモ
ドラ
この3,000・6,000でラス目から原点復帰の2着に浮上。
南4局も自らアガリ、原点キープに成功した。
5回戦も1人浮きをトップをとった森山と、随所にアガリをみせていた浜上が最終戦を有利な立場で迎え、
2人の安定感が崩れることはなくそのまま勝ち上がりを決めた。
沢崎、斉藤は無念の敗退となった。
B卓勝ち上がり 浜上文吾 森山茂和
C卓 三戸亮祐(前年度第4位) vs 井出一寛(六段) vs 山井弘(六段) vs 安東裕允(三段)
![]() 三戸 亮祐 |
![]() 井出 一寛 |
![]() 山井 弘 |
![]() 安東 裕允 |
1回戦、南1局、西家・三戸の6巡目リーチ。
これを受けての南家・井出の手牌が、
ポン
ドラ
ここから無筋と生牌を連打。の暗カン後ツモ
も、三戸の宣言牌の
を見て
が打ち切れず、打
。
直後に三戸がツモって1,000・2,000。井出にしてはちぐはぐな印象をうけた。
ドラ表示牌にが1枚見えているし、トイトイにはなりにくい。
この手牌で押す井出よりも、メンゼンで押している井出の方が怖いし井出らしいのではないか、と思った。
例えば三戸がこの手牌になっていたとしてもそこまで驚きはないが、三戸はここからどうにかオリきるだろう。
ポイントが大きく上下したのが、3回戦。
ここまでほとんどアガれていなかった山井が、南2局にメンホン七対子をアガってトップ目に浮上。
南3局の親番でもうまく七対子をテンパイしてリーチ。
リーチ ドラ
これをドラドラ七対子をテンパイしていた三戸から出アガって4,800を加点する。
南4局の井出の先制リーチに山井がまたも被せてリーチ。更には親の安東もタンピンでリーチ。
この勝負に勝ったのは山井で、開けられた手牌は、
リーチ ツモ
なんと四暗刻!
このアガリで80,000点のトップをとった山井が、トータルラス目から一気にトータルトップ目へと浮上した。
4、5回戦と安東、三戸も山井にくらいつき、ほぼ三つ巴の形で最終戦を迎えた。
最終戦南4局を迎えて、三戸が現状トータル3位で、ツモれば勝ち上がりとなるリーチを打つ。
リーチ ドラ
祈るようにツモる三戸だったが、ここでラス親の井出からリーチ。
当然、井出も最後まで諦めてはいない。そして流局。
1本場、またしても井出から早いリーチが入り、勝負は次局に持ち越されたかと思われたが、
終盤テンパイの入った山井がアガリきり、安東と共に勝ち上がりを決めた。
C卓勝ち上がり 山井弘 安東裕允
D卓 石渡正志(前年度第5位) vs 山田浩之(六段) vs 近藤久春(六段) vs 仁平宣明(七段)
![]() 石渡 正志 |
![]() 山田 浩之 |
![]() 近藤 久晴 |
![]() 仁平 宣明 |
1回戦、東1局は近藤から山田に2,000点と静かな立ち上がり。
続く東2局、近藤が仕掛ける。
ポン
ポン
ドラ
ここに山田がリーチと被せる。
リーチ
これを受けて近藤、ツモで打
と迂回すると、すぐにツモ
→打
でテンパイ復活。
更には、もう1枚をツモって、見た目以上に大きな400・700。
アガリ形をじっと見つめ、何かを確認する様に軽く頷く山田の姿が印象的だった。
南3局にも近藤が2本積んでからの3本場で、この半荘の決め手となる4,000は4,300オールをアガると、次局にアガった石渡が2着に食い込んだ。
2回戦は、石渡が先行して43,000点に。
仁平はメンゼンで常に一撃を狙ってくるタイプだが、東場の親でメンホンを炸裂させ山田から12,000。
3回戦も石渡が好調で、手が入り続けている印象を受けた。
また、立ち回り方も上手い。東3局の親で、山田のテンパイ打を捕まえて11,600を加点した。
その山田も南1局に、
ツモ
ドラ
安目ながら2,600オール。が、後が続かない。今日の山田は本当に苦しそうに見えた。
5回戦が始まる前までは、前半の貯金がきいている近藤と、石渡でほぼ決まりかと思われたが、近藤がらしくない放銃を2回してこれが両方ともドラ暗刻。
トップは東1局に3,000・6,000をツモった仁平で、近藤は1人沈みのラスとなってしまった為に勝負は分からなくなった。
6回戦、東1局から近藤が、
ポン
ポン
ポン
ドラ
積極的に仕掛けるも、仁平がリーチして1,000・2,000をアガる。
仁平は常に落ち着いて打っていて、状況判断が素晴らしいと思うのだが、ここが勝負所!と判断した時は躊躇なく踏み込める。
南1局にも近藤がリーチ。
リーチ ドラ
ここに仁平も自ら切っているを重ねて
このテンパイをするも、終盤にを引かされて冷静にオリを選択。
運命の南4局を迎えて、石渡は確定、山田はラス親で連荘条件。仁平は5,200点以上の出アガリで通過となった。
序盤から仁平が仕掛けていってこのテンパイ。
ポン
ポン
ドラ
ここからノータイムで打とした。
は3枚切れているのだが、
は1枚見え、
が自分の目から全て見えている。
確かに冷静に考えれば、連荘条件の山田は不要な牌は全て切るだろうから、そこに照準を合わせるなら、
ほぼ使えないと横に広がるバリエーションの無い字牌のシャンポンに受けた方がいいのだろう。
直後、山田からリーチが入るが、すぐに仁平がをツモって、石渡と共に勝ち上がりを決めた。
D卓勝ち上がり 石渡正志 仁平宣明
ベスト8組み合わせ
A卓 堀内正人vs森山茂和vs山井弘vs仁平宣明
B卓 藤崎智vs浜上文吾vs安東裕允vs石渡正志
(文中敬称略)
カテゴリ:十段戦 レポート