十段戦 レポート

第35期十段戦 七・八段戦レポート 東谷達矢

ここから登場するのは、長年Aリーグに滞在しているものや大御所達。若手にとっては険しい道のりとなる。

 

【七段戦】

1卓:HIRO柴田・刀川昌浩・宮内こずえ・鮎川卓

1回戦ラスの宮内が2回戦トップを取り混戦模様に。そして3回戦、刀川が有利に進める中、南3局に勝負所を迎える。ます北家の鮎川がテンパイ

一筒二筒三筒七筒八筒九筒東  チー四索 左向き五索 上向き六索 上向き  ポン北北北  ドラ白

そして柴田が虎視眈々と闇討ちを狙う。

三索四索五索七索七索一筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒

そして刀川がチーテン。

三万四万五万八万八万二索三索六筒七筒八筒  チー七索 左向き五索 上向き六索 上向き

一歩出遅れた親の宮内もテンパイ。

六索七索八索四筒五筒六筒東東白白  チー三索 左向き二索 上向き四索 上向き

リャンカン形からの入り目が五筒三筒が入っていれば柴田に放銃だったがこれで勝負となる。まずオリたのは五筒を持ってきた柴田。リーチを掛けなかったのはドラの所在がわからなかったからだろう。丁寧に対処する。
宮内はここで親番を落とすと苦しくなるので危険牌も切り飛ばす。そして鮎川は白を持ってくると手が止まった。ドラは切るわけにはいかない為、切るならば東だが宮内に放銃となってもおかしくない。行くか引くか悩んだ末、鮎川は勝負した。宮内にとっては大きな、そして鮎川にとっては痛い5,800。
だが4回戦、最後の最後まで4者接戦の中勝ち上がったのは刀川と鮎川だった。

1卓勝ち上がり:刀川昌浩・鮎川卓

 

2卓:近藤久春・西岡慎泰・三浦大輔・嶋村泰之

A1リーガーの近藤が完全に抑え込まれる。
嶋村が抜け、西岡と三浦は着順勝負。しかし最終半荘、嶋村と三浦が西岡の浮上を許さなかった。

2卓勝ち上がり:嶋村泰之・三浦大輔

 

3卓:勝又健志・太田優介・早川林香・日吉辰哉

早川が開局からいきなり大きな先制パンチとなる6,000オールをアガる。しかし流局を挟んだ2本場、今度は勝又が魅せた。

六万六万七万七万六索六索六索東東東北北北  リーチ  ツモ七万

8,000・16,000。早川にとっては6,000オールが無に帰す、そして日吉、太田にとっては開局そうそう14,000点を失う強烈な一撃だった。
だが王位戦決勝まで進み、ここまで安定感のある戦いぶりを見せてきた太田が復活する。
少しずつ加点を繰り返し気づけば30,000点オーバーだ。気持ちよく次半荘に進むとトップをもぎ取った。
そして転機は3回戦オーラス。まず、後がない日吉がテンパイを入れる。

一万一万二万三万三万五万五万七万八万九万  チー四万 左向き五万 上向き六万 上向き  ドラ一索

そして勝又

七万七索八索九索東東白白中中  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き

さらに早川

四万五万一索一索二索三索三索一筒二筒三筒七筒八筒九筒

早川は二索を引き入れると打四万。更に九筒を引き打五万。マンズ染め手の日吉にマンズのリャンメンを払った。おそらく単純リャンメン形は可能性が低いと読んだのだろう。勝又は六筒を打ち早川に7,700。
4回戦は怒涛の展開となった。勝又が親番で50,000点を超え早川を逆転すると、早川がアガリを重ね勝又を逆転する。そして勝又が南2局3,900オールをアガリ今度は太田がトータルで3位に落ちる。迎えた最終局、アガれば勝ち上がりの早川と勝又が仕掛けを入れるが太田

一万二万四索五索六索一筒二筒三筒七筒八筒九筒西西  リーチ  ツモ三万

終盤にテンパイを入れ、流局も許されない状況の中、力強くツモ牌を引き入れ勝又を破った。

3卓勝ち上がり:太田優介・早川林香

 

4卓:紺野真太郎・本田朋広・大和・荒牧冬樹

荒牧が序盤に奪ったリードを守りきり、最終戦オーラス、紺野が大和の背中を追う。
1,000・2,000条件の紺野がドラを軸に手を進めテンパイ。

七万八万三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒九筒南南  リーチ  ドラ七筒

親番で伏せれば勝ち上がりの大和は現物を抜いてオリる。その牌に荒牧が一瞬止まった。鳴けば片アガリテンパイだが、全く無理する必要のない荒牧はスルーした。
そして荒牧がツモってきた牌は九万。ただの結果論だが、荒牧が鳴いていれば勝ち上がっていたのは紺野だったのだ。項垂れる紺野の表情が印象的だった。

4卓勝ち上がり:荒牧冬樹・大和

 

5卓:前田直哉・杉浦勘介・安東裕允・佐々木亮

不調の安東と佐々木。こうなると百戦錬磨の前田と杉浦が局を消化し終わるかと思ったが、佐々木が突如アクセルを踏みこみ2人を猛追する。

二万二万七万七万八万八万九万九万西西西北北  ツモ北  ドラ西

この4,000・8,000をアガると、更に杉浦から大物手を打ち取り一気に60,000点オーバー。有利な位置にいた杉浦だったが、トータル+15.5ポイントを持ちながら、まさかの3位敗退となった。

5卓勝ち上がり:前田直哉・佐々木亮

 

6卓:山田浩之・奈良圭純・花岡章生・岡田茂

劣勢の山田が3回戦オーラスの親番で2,600オールをアガリ土俵際で踏みとどまると、4回戦でも粘る。花岡は放銃さえしなければ安泰。安定した戦いを見せてきた岡田もここにきて不発。
最後、自身で止めるしかない奈良が仕掛けを入れ迫る山田をふり切りアガリきった。

6卓勝ち上がり:花岡章生・奈良圭純

 

7卓:ダンプ大橋・鈴木基芳・松岡昭彦・上村宜久

ダンプが安定した戦いぶりでリードを保ち、残り1席を巡る勝負は4回戦東1局に松岡。

二万三万四万五万六万八万八万六索七索八索三筒四筒五筒  リーチ  ドラ四万

そして鈴木

四万五万三索三索五索六索七索五筒六筒六筒七筒七筒八筒  リーチ

松岡にとっては自信のあるリーチだっただろうが無常にも掴んだのは六。鈴木は競っている相手から直に点棒を奪い勝負あり。

7卓勝ち上がり:ダンプ大橋・鈴木基芳

 

8卓:望月雅継・黒沢咲・一井慎也・小林正和

接戦で迎えた4回戦、まず抜け出したのは望月

一万二万三万七万七万八万九万  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ポン四万 上向き四万 上向き四万 上向き  ツモ七万

道中待ちを変える機会はあったが、山にいると狙いを定めた牌でのハイテイツモ。
そしてオーラス、黒沢を追う一井がリーチ

二万三万七万八万九万一索二索三索七索八索九索南南  リーチ  ドラ九万

ツモるか一万の出アガリで条件を満たす。しかしこの時、伏せて勝ち上がりの黒沢が手を組んでおり役なしのテンパイからツモアガリ。逆転の芽を摘んだ黒沢が勝ち上がった。

8卓勝ち上がり:望月雅継・黒沢咲

 

9卓:金子貴行・西川淳・仲田加南・井出康平

金子と西川で勝ち上がりかと思われた最終局、仲田が最後の親番で西川を捉えた。

七万七万八万八万九万九万三索四索五索五筒六筒八筒八筒  ロン四筒  ドラ四索

西川にとっては痛恨の11,600。仲田が女流桜花の意地を見せた。

9卓勝ち上がり:金子貴行・仲田加南

 

10卓:山井弘・横山毅・内川幸太郎・二階堂亜樹

1回戦に内川が6,000オールをアガリ、更に2回戦

三索四索六索七索八索北北  ポン白白白  ポン中中中  ツモ二索  ドラ北

3,000・6,000で大きなリードを得る。そして4回戦オーラス、横山と亜樹の勝負に山井が割って入る。

三万三万三万六万六万七万七万七万一索一索発発発

ツモれば大逆転だが流局。次局、横山と亜樹は両者ノーテンなら横山の勝ち上がりだが、亜樹のみテンパイなら亜樹の勝ちという大接戦。
チャンタ仕掛けの横山は有効牌が少なく、テンパイも危うい。亜樹は単騎待ちの待ち牌を替え、テンパイを維持しながらポンテンさえ入れさせない。亜樹の勝ち上がりは目前であったが、終盤になんとかテンパイを入れた横山が次局2,600オールをアガリ勝負あった。

10卓勝ち上がり:内川幸太郎・横山毅

 

11卓:滝沢和典・斉藤等・藤本哲也・中村毅

藤本が大三元をテンパイ

二万二万発発  チー六索 左向き四索 上向き五索 上向き  ポン中中中  ポン白白白

この手は成就しなかったものの、3回戦まで大きくリードする。4回戦、滝沢が親で連荘し50,000点を超え、あとは中村の親番を落とせばという所だったが中村の親番がまったく落ちない。
連荘に連荘を重ね気づけば7本場で70,000点オーバー。滝沢はここで敗退となった。

11卓勝ち上がり:中村毅・藤本哲也

 

12卓:野方祐介・明石定家・黒木真生・東幸一郎

東が好調。残り1枠を4回戦オーラス、黒木と野方が争う。野方がオーラス役牌バックながらアガれば勝ち上がりのテンパイを入れる。
しかしアガリ切れず、前々年度決勝進出者で現王位の野方がここで敗退となった。

12卓勝ち上がり:東幸一郎・黒木真生

 

13卓:老月貴紀・井出一寛・吉田直・西島一彦

高打点の応酬となったこの卓だが、西島は1回戦で突き抜け残り3者での2位争いとなった。吉田は井出に18,000、老月に7,700を献上するものの高打点をアガリ返し簡単には土俵を割らない。その勝負は最後までもつれた。
親番の吉田はまだ点数が足りないのでアガリ続けないといけない。老月と井出はアガリ勝負。
吉田がまずは連荘するが、次局井出が愚形の勝負リーチを前に出た老月からアガリ決着。

13卓勝ち上がり:西島一彦・井出一寛

 

 

【八段戦】

1卓:木村東平・内川幸太郎・鮎川卓・中村毅

木村は仕掛けを多用し他家にプレッシャーを掛けながら飄々とした攻めでポイントを集めていく。4回戦東1局、内川は標的の鮎川に痛恨の放銃。

四筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒九筒九筒中中  ロン三筒

この直撃で鮎川が大きく勝ち上がりに近づいたが南3局に内川、

一万九万一索一索九索一筒九筒東南西白発中  ツモ北

大逆転となる国士無双を決めた。

1卓勝ち上がり:木村東平・内川幸太郎

 

2卓:藤原隆弘・金子貴之・三浦大輔・東幸一郎

藤原が3回戦、おもしろいように高い手役を決めてアガリ続ける。気づけばその持ち点は90,000点に到達していた。
2着争いは最終戦オーラス、金子がリーチを掛ける

三万四万五万二索三索五索五索六索七索八索六筒六筒六筒  リーチ  ドラ五筒

条件を満たすのは4のツモアガリだけだ。そして金子のリーチ宣言牌の六索を三浦がチー

三万四万五万六万六万七索八索三筒五筒五筒  チー六索 左向き七索 上向き八索 上向き

二度受けを捌いたがかなり厳しい形。しかしこの鳴きで三浦は金子の逆転牌4を食い取り流局。三浦にとっては薄氷の勝利となった。

2卓勝ち上がり:藤原隆弘・三浦大輔

 

3卓:吉田幸雄・望月雅継・西島一彦・早川林香

早川が開局早々アガリを重ね、猛者達を相手に大きくリードを奪う。
4回戦、2位通過を狙い支部長同士の熱い対決が始まった。東4局親番の吉田

六万七万八万三索四索五索六索七索九索九索白白白  ドラ九索

待ちも打点も十分。決定打となり得るテンパイ形だったが、望月が止める。

二万二万三索四索五索三筒四筒中中中  チー四万 左向き五万 上向き六万 上向き  ツモ二筒

カン五筒から手替わり直後のツモだった。更に次局、ドラポンの吉田の手をまたもかわす望月だったが、その後西島に7,700を放銃し吉田が上に立つ。
絶体絶命の望月だったが、

五万五万五万六万六万六万七万八万四索四索五索六筒八筒  ドラ四索

ここから八万五筒八万と引き入れテンパイ。そしてテンパイした吉田から七筒を打ち取り8,000。再逆転。
最終局、親の吉田からリーチが入るが、最後まで戦う姿勢を崩さなかった望月が勝ちをもぎ取った。

3卓勝ち上がり:早川林香・望月雅継

 

4卓:石渡正志・ダンプ大橋・井出一寛・大和

ここまで安定感のある戦いを見せてきた大和だったが最後に崩れた。ダンプは安泰。井出と石渡の勝負は奇しくも同じ待ちとなった。まず石渡

二万三万四万四万五万四索四索四索五索六索  チー六筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き  ドラ六索

そして井出

四万五万三索三索二筒三筒四筒  チー七索 左向き六索 上向き八索 上向き  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き

三万を手元に手繰り寄せたのは井出。またも接戦を制した。

4卓勝ち上がり:ダンプ大橋・井出一寛

 

5卓:櫻井秀樹・黒木真生・花岡章生・佐々木亮

櫻井の手にドラが集まり高打点を連続でアガる。そして2番手に名乗りを挙げるべく黒木がリーチ

四万五万八万八万八万三索四索五索八索八索三筒四筒五筒  リーチ  ツモ六万  ドラ四筒

佐々木の先制テンパイに追いついての大きな3,900オール。しかし花岡と佐々木の関西勢もこのまま黙ってはいない。
3回戦、黒木を捉えると4回戦で逆転。最後は花岡と佐々木の勝負になった。
関西勢対決を制し上に進んだのはここまで何度も逆転劇を演じてきた佐々木だった。

5卓勝ち上がり:櫻井秀樹・佐々木亮

 

6卓:柴田吉和・前田直哉・奈良圭純・藤本哲也

2回戦オーラス

七万七万八万八万九万一索二索三索七筒八筒九筒北北  リーチ  ツモ九万  ドラ八索

3,000・6,000でラスのままだが失点を最小限に抑えた前田が3回戦に爆発。
道中藤本はトータルトップでリードしていたものの崩れた。勝ち上がったのはトーナメント巧者の元十段位、柴田だった。

6択勝ち上がり:前田直哉・柴田吉和

 

7卓:横山毅・刀川昌浩・荒牧冬樹・鈴木基芳

ここまで勝ち上がり続けた荒牧だったが、八段戦ではなす術がなかった。3回戦まで横山と鈴木が2人で連帯を取り続けると、そのまま危なげなくフィニッシュ。

7卓勝ち上がり:鈴木基芳・横山毅

 

8卓:仲田加南・黒沢咲・太田優介・嶋村泰之

序盤に嶋村が仲田から大物手をアガる。

一万二万三万四万五万六万七万八万三筒三筒四筒五筒六筒  リーチ  ロン九万

11,600で大きなリードとなったが、太田と黒沢の安定感が嶋村を上回る。
3回戦には8,000点から連荘を重ね太田と黒沢に迫るが、2人はまったく崩れることなく反撃を抑え込んだ。

8卓勝ち上がり:太田優介・黒沢咲