第35期十段戦 ベスト16B卓レポート 小車 祥
2018年07月16日
瀬戸熊直樹(前年度決定戦出場により、ベスト16シード)
伊藤優孝(九段戦Sからの出場)
古川孝次(九段戦Sからの出場)
前原雄大(九段戦Sからの出場)
なんと全員A1リーガーで全員九段。そして全員鳳凰位経験者。お互いに手の内は熟知した上での神々の戦い。
1回戦(起家から、前原・瀬戸熊・伊藤・古川)
決定打は出ず、もつれる展開が続いていた。
南2局を終えた時には前原以外の3名が浮いている状況。
かなり僅差でトップ目の古川が33,800点持ちだった。
南3局 親 伊藤
好配牌だった前原が5巡目にテンパイ。
ツモ ドラ
待ちとしてはあまり良くないかもしれないが、打点はまずまずのテンパイ。
親番が残っていない前原は切りリーチを選択。
伊藤の目からはがノーチャンスとなり、粘りの一打でが切られた。
前原、5,200のアガリ。
南4局 親 古川
まずは前原が仕掛けを入れ、さらに自力で有効牌をツモってテンパイ。
ポン ドラ
さらにドラをツモってと入れ替え、どちらでアガっても満貫にする。
ここに古川が以下のテンパイ。
ツモ
テンパイを取ってを切る強い選択だったが、これが手痛い8,000の放銃となる。
前原は1人沈みのラスだったところからたった2局でトップに立ち1回戦を終えた。
1回戦成績
前原+12.2P 瀬戸熊+6.9P 伊藤▲6.9P 古川▲12.2P
2回戦(起家から、瀬戸熊・伊藤・前原・古川)
実力者が揃うと必ずそうなるのものなのかと思うくらいに、またももつれる展開。
東場が終了してトップ目は古川の32,900点と動きが少ない。
南1局 親 瀬戸熊
伊藤が開局からピンズの一色手へと一気に寄せていく。
チー ドラ
親の瀬戸熊がテンパイ。
ツモ
ここで切られたを伊藤がチーし、一旦はヤミテンに構えた瀬戸熊も次巡ツモ切りリーチを敢行。
伊藤もをツモりテンパイ。瀬戸熊と伊藤のめくり合いとなる。
軍配は伊藤に上がる。
をツモって2,000・3,900のアガリ。
ここに来てようやく伊藤が少し抜け出すことに成功。
南4局 親 古川
31,600点持ちの2着目でオーラスの親番を迎えた古川。
10巡目に以下のテンパイを入れる。
ドラ
古川はヤミテンを選択。リーチを打たない選択ができることが、素直にすごいと感じた。
ヤミテンが功を奏し、伊藤からが出る。2,900だが伊藤からの出アガリであればトップ目になる。
そのまま古川が逃げ切る形で2回戦が終了。
2回戦成績
古川+11.4P 伊藤+6.5P 前原▲4.2P 瀬戸熊▲13.7P
2回戦終了時
前原+8.0P 伊藤▲0.4P 古川▲0.8P 瀬戸熊▲6.8P
3回戦(起家から、瀬戸熊・古川・前原・伊藤)
勝負手の成就は起こるものの、やられた者がやり返す。
そんな展開でやはりこの3回戦も大きく抜け出す者が出ない展開に。
南3局 親 前原
9巡目、前原がテンパイ。
ドラ
ヤミテンに構える前原。すぐに伊藤もテンパイ。
リーチ
リーチを打つ伊藤。前原はリーチを受けてもヤミテン続行。
伊藤のリーチ後最初のツモはだった。前原、7,700のアガリ。
南4局 親 伊藤
三色に拘る手作りで伊藤が12巡目にリーチをかける。
リーチ ドラ
伊藤のリーチ後に、仕掛けを入れていた古川が自力でテンパイを入れる。
ポン
山に1枚残っていた伊藤のアガリ牌のは瀬戸熊の手牌へ行き、は山に2枚。
古川のアガリ牌を2人でツモるような状況になってしまい、無情にも伊藤がをツモる。
古川、8,000のアガリで原点復帰に成功。
伊藤はラス前から手痛い放銃が2度続いてしまい、1人沈みのラスとなってしまう。
3回戦成績
前原+14.9P 瀬戸熊+9.6P 古川+4.4P 伊藤▲28.9P
3回戦終了時
前原+22.9P 古川+3.6P 瀬戸熊+2.8P 伊藤▲29.3P
4回戦(起家から、伊藤・前原・瀬戸熊・古川)
南1局 親 伊藤
早い巡目から前原が動く。
ドラ
ここからをチーして打。
ポン、チーでカン待ちのテンパイとなった。
さらにを加カンして打点が5,200に上昇。ツモでとのシャンポン待ちに受け変え。
古川も2フーロでテンパイを入れていた。
ポン ポン
その古川からが打たれ前原のアガリ。
チー カン チー ロン
5,200は6,100のアガリ。
南2局 親 前原
8巡目、古川がリーチ。
リーチ ドラ
ツモで1,300・2,600のアガリ。
失点をしっかりリカバリーする。
南4局 親 古川
オーラスの点数状況は以下の通り。
伊藤30,800
前原31,900
瀬戸熊24,600
古川31,700
熾烈なトップ争い。1人沈みの瀬戸熊でさえも満貫ツモで1人浮きのトップになるような状況だ。
ここで前原がテンパイを入れヤミテンに構える。
ドラ
瀬戸熊からを捕らえ、2,000は2,300のアガリ。
前原は勝ち上がりに向けてかなり優位に立てるトップを獲得。
瀬戸熊はきつい1人沈みのラスを引かされてしまった。
4回戦成績
前原+13.2P 古川+4.7P 伊藤+1.8P 瀬戸熊▲19.7P
4回戦終了時
前原+36.1P 古川+8.3P 瀬戸熊▲16.9P 伊藤▲27.5P
最終戦(起家から、伊藤・前原・古川・瀬戸熊)
東1局2本場 親 伊藤
8巡目、瀬戸熊がリーチを打つ。
暗カン リーチ ドラ
15巡目、追いついた伊藤が追っかけリーチを打つ。
リーチ
奇しくも同じ待ち。山に残っているは2枚。
1枚目のは古川のもとへ。そして2枚目は瀬戸熊のもとへ舞い降りた。
2,000・4,000は2,200・4,200のアガリ。
苦しい展開が続いていた瀬戸熊に手応えあるアガリが生まれる。
瞬間的にではあるが、このアガリでトータルポイントは瀬戸熊の方が古川より上となった。
東3局 親 古川
8巡目、伊藤がテンパイ。
ツモ ドラ
いろんな選択肢がある中、伊藤はドラ切りリーチを選択。
11巡目、古川が追っかけリーチ。
リーチ
山に1枚しか残っていなかったアガリ牌のをツモって1,300オール。
古川、瀬戸熊に食らいついていく。
南4局1本場 親 瀬戸熊
オーラスの点数状況は以下の通り。
伊藤35,700
前原22,400
古川30,900
瀬戸熊30,000
瀬戸熊は親なので連荘するほかないが、一旦古川をツモアガリなどで沈めなければ順位点での差があまりつかない。
瀬戸熊の配牌は以下の通り。
ドラ
苦しい配牌だったがツモが瀬戸熊を勝たせようとしているかのように、どんどんマンズの一色手へと成長した。
11巡目、メンゼンで仕上げた瀬戸熊、リーチを打つ。
前原はマンズのホンイツで仕掛けを入れていた。
ポン ツモ
突然訪れた放銃の可能性。いきなり手詰まってしまっていた。
ドラは切れない。1枚切れのかトイツののどちらかを切らなければならない。
1枚切れている方が仕掛けられていない分、通りやすそうには見える。しかしを通せばもう1巡凌げるという利点もある。紙一重で前原の選択はだった。しかしまだピンチは続く。
続いて、ドラ暗刻の古川が動く。瀬戸熊がツモ切ったをポン。
ポン
ドラ暗刻とはいえ、巡目が深くアガリが遠そうなこの手牌からのポンは、並の打ち手には難しい。
サーファー古川ならではの、守備にも自信があるからこその仕掛けだろう。
運命のいたずらか、この仕掛けで山に1枚だけ残っていた瀬戸熊のアガリ牌であるを、古川が食いとる。
前原は都合よく安全牌を引き続けていたが、自身の最後のツモでいよいよ安全牌がなくなった。
ポン ツモ
マンズの情報は全く増えていない。
何を切っても放銃する可能性がある。何を切って放銃したとしても高打点の可能性がある。
ドラを切ればテンパイだがドラでの放銃は最も避けたいところのはず。
瀬戸熊の河は、元々ホンイツはイメージしづらい手牌だっただけにマンズのホンイツだとはわかりづらい。
ここまで来るともう理屈ではないと思う。理屈ではないのなら何なのか。
それを私程度が言葉にすると、どんな言葉を用いてもチープになってしまうだろう。
38秒。
前原はその時間をかけて牌を選択した。
切られたのはドラのだった。
瀬戸熊、前原の2人テンパイで流局。
これが神々の戦いかと、凄まじい対局を見せられ改めて感じていた。
南4局2本場
瀬戸熊、15巡目になんとかテンパイ。
ツモ ドラ
を切ってリーチを打つ。
伊藤にもテンパイが入っており、伊藤がツモったハイテイ牌はだった。
ツモ切ればテンパイ維持でき、テンパイ料の価値が高い伊藤はを切る。
瀬戸熊、ホウテイがついて7,700は8,300のアガリとなる。
このアガリで瀬戸熊の1人浮きとなり、古川とのトータルポイントの差は0.8Pまで迫る。
南4局3本場
早々に前原にテンパイが入る。
ポン ドラ
このテンパイ、ツモなら前原と古川の勝ち上がりだが、古川からのアガリとなると前原と瀬戸熊の勝ち上がりとなる。
さらに9巡目には古川からリーチ。
リーチ
前原をツモって打とし、待ちに変える。
勝負は佳境に入る。瀬戸熊もノーテンで終わらせるわけにはいかない。
ツモ
粘りを見せていた瀬戸熊だったが、このを切らないわけにはいかなかった。
カン ロン
前原、1,300は2,200のアガリで全対局が終了。
最終戦成績
瀬戸熊+20.6P 古川▲2.6P 前原▲5.9P 伊藤▲12.1P
最終戦終了時
前原+30.2P 古川+5.7P 瀬戸熊+3.7P 伊藤▲39.6P
ベスト8勝ち上がり
前原雄大 古川孝次
見事ベスト8へ勝ち上がりを決めたのは前原と古川。
瀬戸熊と伊藤が敗退となった。
「アガリが少ない中でそれなりには戦ったつもりだけどね。こればかりは仕方ないよな」と伊藤。
こんな凄まじい戦いの後とは思えないほど、ゆったりとした口調だった。
瀬戸熊も第一声には自分の敗着となった勝負の分かれ目を自身で的確に分析し、それを口にしていた。
最後までもつれにもつれた神々の戦い。
数字で見る以上にほんの僅かな差で勝者と敗者が決まった。
ベスト16B卓が終了。
ベスト8のメンバーが半分決まった。
まだまだ熱い戦いは続く。
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