第35期十段戦 ベスト16D卓レポート 小車 祥
2018年07月27日
黒沢咲(六段戦からの出場)
太田優介(四段戦からの出場)
仁平宣明(前年度決定戦出場により、ベスト16シード)
沢崎誠(九段戦Sからの出場)
A2リーガーの黒沢、力強く勝ち上がってきた。
ベスト16メンバーの中では一番下からの勝ち上がりで勢いのある太田。
安定感のある仁平、現麻雀マスターズでもある沢崎がどう迎え撃つか。
1回戦(起家から、黒沢・太田・仁平・沢崎)
東1局 親 黒沢
8巡目、仁平がテンパイを入れた。
ドラ
ヤミテンに構える仁平。沢崎から出たで8,000のアガリ。幸先の良いスタートとなる。
東4局1本場 親 沢崎
8巡目、仁平がテンパイしてリーチ。
リーチ ドラ
リーチに対して受け気味ながらも手を進めていた沢崎、仕掛けを入れてテンパイを入れた。
ポン
テンパイ前なら出なかった牌だろうが、ここでを掴んだ沢崎が仁平への放銃となる。
仁平、7,700は8,000のアガリ。
南1局 親 黒沢
沢崎が積極的に動く。
ドラ
ここからをポンして打。この動きで流れてきたツモでテンパイを入れる黒沢。
ツモ
を切ってリーチを打つ。沢崎、その後にテンパイを入れて黒沢とのめくり合いになる。
ポン ポン
この沢崎の待ちがかなり強く、山に5枚残りで黒沢の待ちは1枚残りだった。
沢崎のアガリとなる可能性が高い局面だったが、なんと沢崎がを掴む。
リーチ後にの暗カンを入れていた黒沢、9,600のアガリ。沢崎、手痛い放銃が続いてしまう。
南2局1本場 親 太田
太田はここまでアガリはなかったが、失点も少なくテンパイ料だけで35,300点持ちの2着目につけていた。ここでドラドラの手牌に仕掛けを入れテンパイを入れた。
ポン ドラ
浅い巡目だったこともあり、仁平からが自然とこぼれる。
太田、5,800は6,100のアガリ。トップ目からの直撃で太田がトップ目となる。
この後は各選手決め手に欠ける展開で太田の逃げ切り。
沢崎は1人沈みの厳しいスタートとなった。
1回戦成績
太田+17.7P 黒沢+7.8P 仁平+5.3P 沢崎▲33.8P
2回戦(起家から、太田・沢崎・仁平・黒沢)
南2局2本場 親 沢崎
連荘して親番を繋ぐ沢崎、ここで早い巡目にテンパイを入れる。
チー ドラ
国士をやっていた仁平からを打ち取り5,800は6,400のアガリ。
南4局 親 黒沢
オーラスの点数状況は以下の通り。
太田28,900
沢崎41,600
仁平20,000
黒沢29,500
以下、8巡目の太田の手牌。
ツモ ドラ
ひとアガリで原点復活を狙える持ち点だけに手広くを切る選択肢もあるが、太田はドラを切らずにピンフ変化や一通のある打とする大きな構え。
このが沢崎にとって絶好の仕掛けとなる牌だった。
チー
しかも太田の手牌からはが余りやすい形になってしまっており、このまま太田からが切られて沢崎のアガリとなった。
沢崎、2,000のアガリで1人浮きのトップを決めた。
2回戦成績
沢崎+25.6P 黒沢▲1.5P 太田▲6.1P 仁平▲18.0P
2回戦終了時
太田+11.6P 黒沢+6.3P 沢崎▲8.2P 仁平▲12.7P
3回戦(起家から、仁平・太田・沢崎・黒沢)
南3局2本場 親 沢崎
11巡目、沢崎がテンパイ。
ドラ
ここはヤミテンを選択する沢崎。
次にをツモって暗刻にした沢崎は打で待ちに変化しヤミテン続行。
その巡目に黒沢がテンパイを入れる。
マンズ待ちは絶好に見える状況で、黒沢もヤミテンを選択した。
さらに太田もテンパイ。
こちらもヤミテン。一気に3人テンパイで3人とも役ありヤミテンという状況に。
そして沢崎がここでを空切りしてリーチを敢行。
ツモ
すぐにをツモって2,000は2,200オールのアガリ。
沢崎は南場の親番で6本場まで積み、高打点のアガリこそなかったものの大きなリードを持つ。
このリードで沢崎は逃げ切りトップを取る。
太田と黒沢も粘りを見せたが、この3回戦は仁平が1人沈みの大きなラスとなってしまった。
3回戦成績
沢崎+18.4P 太田+8.6P 黒沢+1.5P 仁平▲28.5P
3回戦終了時
太田+20.2P 沢崎+10.2P 黒沢+7.8P 仁平▲41.2P
4回戦(起家から、黒沢・沢崎・仁平・太田)
東1局 親 黒沢
トータルポイントは仁平以外の3人が三つ巴で、仁平はこの半荘プラスで終わらなければかなり厳しい戦いになる。
そう思った矢先の出来事だった。
仁平がほとんど無駄ヅモなしで8巡目にあっさり以下のテンパイ。
ドラ
仁平の河にヤオチュウ牌は1枚も余っていない。
ヤミテンに構えた仁平。出アガリも十分あるところ。山には2枚残っていたが、これを仁平があっさりツモ。
8,000・16,000
なんとたった1局でトータルのビハインドを返したのだった。
東3局1本場 親 仁平
1巡目から仁平がダブを仕掛ける。
ポン ドラ
10巡目、沢崎からリーチ。
リーチ
その後、仁平は打点にこだわった打ち筋で以下のテンパイを入れる。
チー ポン
高目のを沢崎から打ち取り、11,600は11,900のアガリ。
仁平はさらなる加点に成功する。
仁平、4回戦は申し分ない大きなトップでトータルポイントも一気にトップまで躍り出た。
4回戦成績
仁平+58.6P 太田▲9.0P 沢崎▲21.2P 黒沢▲28.4P
4回戦終了時
仁平+17.4P 太田+11.2P 沢崎▲11.0P 黒沢▲20.6P
最終戦(起家から、仁平・黒沢・沢崎・太田)
最終戦はプラスしている者とマイナスしている者で二分化されているようにも思えるが、このくらいの点差だと簡単に入れ替わるため最後まで誰が勝つかわからない試合になるのは必至だろう。
東2局 親 黒沢
5巡目、黒沢が先制リーチ。
リーチ ドラ
7巡目、沢崎が追いつく。
沢崎はヤミテンに構えるが、ソウズにくっついて手変わりしてしまうと黒沢への放銃となってしまう手牌。
しかし沢崎が引いた牌はだった。
メンタンピンドラ1の手に変え、待ちのリーチを打つ。この勝負は黒沢が制す。をツモって2,600オール。
東3局1本場 親 沢崎
この局沢崎はドラドラのチャンス手だった。
形は苦しい手牌だったが丁寧に仕上げ11巡目にテンパイを入れる。
ドラ
沢崎は一旦ヤミテンに構えるも、次巡ツモ切りリーチ。
勝負局、勝負手、勝負リーチ。
こういう勝ち負けを分ける局面での判断を、沢崎が間違える気が全くしないのが沢崎の恐ろしいところだ。
すぐにをツモって6,000は6,100オール。このアガリで沢崎はトータルトップに立つ。
東4局 親 太田
7巡目、黒沢が動く。
ポン ドラ
ここにを重ねるも、そこで手がピタリと止まってしまう黒沢。
局終盤、残りツモ3回のところからなんと、とツモって跳満に仕上げる。
ポン ツモ
3,000・6,000。追う立場の黒沢にとってはこのアガリは値千金だった。
南3局 親 沢崎
現状は沢崎が抜けていて、他3名が着順を変えるよりも素点をまくった方が早いというところまで来ていた。
この時点で太田が黒沢よりも4.4P上。
まずは黒沢が動く。
ポン ドラ
さらに太田も動く。
チー
黒沢が仕掛け返す。
ポン ポン
さらに太田も仕掛け返す。
ポン チー
太田はチャンタ三色のテンパイ。
そして黒沢が以下の手牌となる。
ポン ポン ツモ
太田にで打つと満貫クラスの可能性がある。1シャンテンからは切れずに太田の現物の切りを選択。
次に太田がツモったを、太田はシャンポン待ちに受け変えせずにノータイムでツモ切った。
自分の仕掛けにはかなり切りづらい牌。手出しとなればも透ける。
太田はを持ってきてもツモ切ると決めていたのだとわかるほどの速度。
このを黒沢がポンして、強気のヴィーナスはを勝負した。
太田は次に生牌のを引かされのトイツ落としでテンパイ外し。
黒沢1人テンパイで流局し、このテンパイノーテンで太田との差を0.4Pまで詰める。
オーラスの条件やノーテンで伏せられなくなることを改めて考えると、太田はテンパイを取るために危険牌を切る選択もあったかどうか難しいところ。
南4局1本場
オーラスの点数状況は以下の通り。
仁平10,400
黒沢42,600
沢崎47,800
太田19,200
着順を変える必要はそれぞれなく、沢崎以外の3名は素点勝負となる。
黒沢はアガればなんでもオッケー。
太田はノーテンで伏せられる点差をつけなければならない。
仁平は1,300・2,600ツモ、太田から3,200、沢崎か黒沢から6,400という条件。
6巡目、仁平が動く。
ポン ドラ
さらに黒沢から出たをポンしてツモ直撃条件を満たしたテンパイ。
太田の手牌も1シャンテンまでこぎつけた。
そして黒沢もテンパイ。
ツモ
タンヤオの単騎で仮テンを取る。そしてすぐに沢崎からが切られる。
最後は意外な形であっさりと黒沢が1,300は1,600をアガリ、このもつれた戦いの勝者となった。
最終戦成績
沢崎+24.2P 黒沢+18.2P 太田▲14.8P 仁平▲27.6P
最終戦終了時
沢崎+13.2P 黒沢▲2.4P 太田▲3.6P 仁平▲10.2P
ベスト8勝ち上がり
沢崎誠 黒沢咲
見事ベスト8へ勝ち上がりを決めたのは沢崎と黒沢。
太田と仁平が敗退となった。
「精一杯やりましたけど、どうにもなりませんでした」と仁平。
「配牌には恵まれていたのに負けてしまったのは自分の未熟さですね」と謙虚な姿勢の太田。
敗退が決まった瞬間には手で自らの顔を塞ぎ動けなくなっていた太田。
ほんの数分後には明るく話す姿勢に好感を持った。
これでベスト16の対局がすべて終了となった。
対戦カードが以下の通り。
A卓:佐々木亮vs古川孝次vs望月雅継vs黒沢咲
B卓:内川幸太郎vs前原雄大vs青山めぐみvs沢崎誠
現在連覇中の藤崎十段位が待つ決定戦への切符を手にするのはこの中から4名。
ベスト8の戦いにも目が離せないのである。
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