第36期十段戦 ベスト16A卓レポート 望月 雅継
2019年07月18日
プロ連盟の夏の風物詩、十段戦。
今年度もベスト16に12名の精鋭が勝ち上がってきた。
迎え討つのは昨年度の決勝シードの4名。この16名が、現十段位内川幸太郎への挑戦権をかけての戦いに挑む。
佐々木亮(前年度決勝シード、関西本部)
小松武蔵(東京本部、B2リーグ)
猿川真寿(静岡支部、A2リーグ、第17期マスターズ、A2リーグ)
魚谷侑未(東京本部、A2リーグ、第44期王位、第6、7期女流桜花他、セガサミーフェニックス)
昨年度決勝シードの佐々木亮はここからの登場。昨年魅せた変幻自在な攻撃を、ここでも発揮する事が出来るか?
対するは、十段戦決勝進出の実績もある猿川に、昨年度はMVP級の活躍を見せた現王位でMリーガーでもある魚谷。
そしてなんといっても注目すべきは小松だろう。並み居る強豪を打ち破り、堂々のベスト16進出。B2リーグでも首位を快走するこの男の躍進はどこまで続くのか。
1回戦(起家から、魚谷・佐々木・猿川・小松)
立ち上がりから手がぶつかる。
東1局 ドラ
佐々木8巡目。
前巡まで役無しの仮テンも、三色に振り替わって以下の形に。
ドラ
猿川9巡目、
チー
このチーで、魚谷に暗刻になるはずのドラのが先制テンパイの佐々木に流れ、佐々木は雀頭ののトイツ落とし。これが猿川にジャストミート。
佐々木としては苦しい立ち上がりに。即リーチの選択もあったか。
東2局。
北家魚谷、七対子1シャンテンから選択が生まれるツモ。
ツモ 打 ドラ
魚谷はトイツ手を見切りメンツ手一本に。
これが見事に決まる。
次巡ツモはなんとドラの。魚谷は淀みなくリーチを宣言。
これに飛び込んだのは先制した猿川。
東3局
ここまで大人しかった小松の先制リーチ。
ドラ
これを一発ツモで1,300・2600。
このアガリをきっかけに、小松は細かいながらも加点を繰り返し、局面をリードし1回戦も南入。
南1局。
魚谷VS佐々木の1局。魚谷の先制リーチに、
ドラ
佐々木がドラ2のの高め一通のリーチと真正面からぶつかる。
リーチ ロン ドラ
枚数的には魚谷が圧倒的に有利も、ここは安めながら佐々木に軍配、魚谷は無念の放銃。
このアガリをキッカケに、昨年度ファイナリストの佐々木の猛攻が始まる。
南2局。
猿川が仕掛けて局面先手を取りにいくが…
小松が先制リーチ。
ドラ
このリーチに佐々木が仕掛けで挑む。
チー ツモ ドラ
枚数は圧倒的に小松も、またしても佐々木が制する。
南2局1本場
佐々木、魚谷テンパイ。
南2局2本場
四風子連打、流局。
南2局3本場
佐々木1人テンパイ。
長かった佐々木の親番も、南2局4本場、小松がようやく佐々木の親を落とす。
ツモ ドラ
南3局、魚谷の先制リーチも…
ドラ
ここも小松が捌く
ツモ
南4局1本場
親番小松、勝負をかけた1局。
猿川と佐々木の仕掛けを受けて、小松も腹を括る。
チー ドラ
ここにツモ。
に取らずにをツモ切り。
そしてドラのをツモっての3,900は4,000オール!
このアガリで勝負あり。小松が値千金のトップとなり、一歩抜け出すことに成功。
こうなると注目は着順争い。
南4局2本場、
ポン ポン チー ロン ドラ
佐々木、価値ある原点復帰。
対する猿川は痛恨の放銃となる。
1回戦終了時
小松+33.5P 佐々木+9.3P 魚谷▲13.9P 猿川▲28.9
2回戦(起家から、小松・魚谷・猿川・佐々木)
勝負が大きく動いたのは東2局2本場。
ここまで仕掛けを多用し局面打破を図る猿川、前局の清一色テンパイに続き、今局も積極的に仕掛ける。
ポン、ポン、加カンと派手なアクションから、
加カン ポン ツモ ドラ
ようやく猿川の片目が開く。
2000・4000は2200・4200のツモアガリ。これで一回戦の負債を取り戻し、追撃態勢に入る。
南1局、初戦トップの親番小松。ここで大チャンス手。
このリーチをアガれば二連勝も。勝ち上がり当確ランプが点灯するか?
しかしながらこの局は他家も意地を見せる。
魚谷はこの仕掛け。待ちは。
ポン ポン
小松も追いつく。待ちは魚谷と同じ。
暗カン リーチ ドラ
この二人の攻勢を受けた猿川、静かにヤミテンを選択していたが…
ドラ
猿川、二人のロン牌のを引き、一歩後退。
猿川が受けると、今度は佐々木が応戦。
ポン
佐々木、二人の争いに参戦も…
猿川、をチーしてアガリ牌を使い切り形テンに。
チー
この猿川のチーで、小松のツモ牌が魚谷に流れ、この勝負は魚谷に軍配があがる。
点数こそ安いものの、本当に価値あるアガリとなった。
続く南2局、小松、猿川の仕掛けを受けた魚谷、この日一番の長考。
ツモ ドラ
ドラもない平和のテンパイ。
そこにドラのをツモっての長考。
『リャンメン待ちには当たらないと思った。』とは魚谷の試合後のコメントだが、裏を返せば放銃した時には大きな失点になり得る牌。そしてそれは、自身の敗退を意味する事になるのだが…
腹を括った魚谷、このを勝負!
佐々木がこのドラを仕掛けるも、同巡力強くをツモ!
700オールと点数こそ安いアガリだが、この半荘を含めたこの後の三連勝を自ら引き寄せた一打になったのではないか。
南4局、親の佐々木は現在21,300のラス目。
このままでは終わらぬと、魚谷が切ったドラのをポンしてトイトイに。
もポンしてテンパイ。
ポン ポン ロン ドラ
ここに飛び込んだのはトップ目の猿川。
猿川としては痛恨の放銃。対する佐々木は一気に原点復帰。
この12,000のアガリをキッカケに、佐々木が攻める。
南4局1本場では2,000は2,100オール。
南4局2本場では2,900は3,500の出アガリ。
南4局3本場、佐々木を止めるべく小松が先制リーチ。
ドラ
このリーチを受け、原点復帰を目指す猿川も応戦するも…
競り勝ったのは魚谷。
ツモ ドラ
この2,000・3,900で佐々木を一気に差し切り、待望のトップ。
トータルでも三番手ながらプラス域まで浮上し、三つ巴の様相を呈していく。
2回戦終了
魚谷+19.7P 佐々木+12.9P 猿川▲9.1P 小松▲23.5P
2回戦終了時
佐々木+22.2P 小松+10.0P 魚谷+5.8P 猿川▲38.0P
3回戦
東1局、猿川が1,000.2,000と先制するも、次局魚谷が、
リーチ ツモ ドラ
あっさりとカンのツモアガリ。
この半荘も優位に局を進める。
これ以上のマイナスは敗退を意味する猿川。
何とか局面打破を図るべく、普段以上に仕掛けを多用するのも気持ちは伝わってくる。
東4局、全員テンパイの中必死にアガリを拾うも、次局は猿川に歩を合わせ仕掛けた佐々木に放銃。
猿川の仕掛けに対応し、手数が増えたのはトータルトップの佐々木。
南1局、小松のテンパイを捌き切ると、南2局2本場から、オーラスまで3局連続仕掛けてアガリをモノにする。
先程とは打って変わって小場で展開した3回戦。
佐々木は粘ってプラスを拾い2着を堅守。トータルトップの座を守り切り、優位に後半戦に進む。
この佐々木の対応が利したのは魚谷。
展開トップで2連勝。トータル2着へ浮上した。
苦しいのは猿川。粘りを見せるものの、この日は本当にプラスが遠い。かなり苦しい条件で残り2戦をどう戦うのだろうか。
3回戦終了
魚谷+15.2P 佐々木+5.9P 猿川▲6.0P 小松▲15.1P
3回戦終了時
佐々木+28.1P 魚谷+21.0P 小松▲5.1P 猿川▲44.0P
4回戦
ポイントを持った時のトーナメントの戦い方を熟知している魚谷。
2連勝の勢いのままに、局面をリードして局を消化していく。
是が非でもトップが欲しい猿川が粘って連荘を続ける東2局2本場、魚谷が華麗な捌きを見せる。
親番の猿川は粘ってテンパイを入れ、トータル2番手の佐々木は、
ドラ
高目ツモ倍満のテンパイ。
佐々木のテンパイ打牌を見た魚谷は、猿川の切ったに反応し、
チー ツモ ドラ
猿川の連荘を阻止し、佐々木の大物手を躱す見事な捌き。
続く東3局の親番は、
リーチ ツモ ドラ
ここはリーチで2,600オール
そして極めつけは南2局、
ツモ ドラ
このタンピンツモ三色ドラ1の3,000・6,000で圧巻の3連勝!
勝ち上がりの椅子を自らの手で掴み取ってみせた。
4回戦終了
魚谷+27.3P 猿川+7.4P 小松▲11.2P 佐々木▲23.5
4回戦終了時
魚谷+48.3P 佐々木+4.6P 小松▲16.3P 猿川▲36.6P
5回戦
佐々木と小松との差は20.9P差。
佐々木はプラスをキープできればほぼ安泰か。
追う小松は、佐々木を原点以下に沈めれば、小さめのトップでも勝ち上がりの権利を得る。
猿川は佐々木との差41.2Pを考えると、まずはトップ目に立ってからどれだけ加点出来るかがカギとなろう。
東1局、東1局1本場と、意地の連荘をみせる猿川だが、猿川の親は魚谷がスッと捌く。
続く東2局、猿川の十段戦は幕を下ろす。
親佐々木のリーチを受け、勇敢にも立ち向かった猿川。
自身の待ちはと。しかし無情にも、猿川の手に届いた牌は、佐々木が勝ち上がりを一気に引き寄せる事になるであった。
リーチ ロン ドラ
このアガリで、一気に楽になったのは佐々木。
小松とのポイント差を考えると、後は無難に局消化を図ればいいからだ。
そしてトータルトップはその局消化に長ける魚谷。見ている誰もが、魚谷と佐々木の勝ち上がりを疑わなかっただろう。
しかし1人だけ、自身の勝利を諦めない男がいた。小松武蔵だ。
東3局、自身の親番で気合のリーチ。そして最後のツモ番でアガリ牌を引き寄せる。
リーチ ツモ ドラ
このアガリで小松は佐々木を捲りトップ目に。
しかし佐々木が原点をキープしている以上、小松はまだまだ加点が必要な状況であることに違いない。
その佐々木、かなり冷静な局回しで手牌を進行していく。
東4局、役無しリャンメンのテンパイを取らずにタンピンへ移行。そしてライバル小松から価値ある一撃。
ロン ドラ
この直撃で再びトップ目に。
残すは南場のみ。昨年準優勝の佐々木の勝ち上がりが現実味を帯びてきた。
追う小松。
南2局で2,600をアガリ、南3局の親番。
リーチ ツモ ドラ
この2,000オールでまずは佐々木を捲り、そして迎えた南3局1本場、佐々木と武蔵の勝負の行方を決定づける1局が始まる。
まずは佐々木。11巡目に先制テンパイも、ヤミテンに構えずリャンメン待ちにも取らず、ツモり三暗刻のリーチに打って出る。
リーチ ドラ
ドラ無しのツモり三暗刻のリーチ。
先程までとは打って変わって、勝負を決めに来たリーチだ。
佐々木
「がいると思ったんだけどなぁ…加点出来るチャンスがあるなら加点しようと思ってシャンポン待ちに受けましたが、よくよく考えるとリャンメン待ちでしたね。」
後がない小松。同巡テンパイだが、このリーチを受け長考。
リーチを打つか、シャンポン待ちに取るか、カンチャン待ちに取るか、勝負を決める瞬間であることは間違いない。
小松が選んだ選択はカンチャン待ち。
すると…
小松の手にはシャンポン待ちのアガリ牌が。
まだまだ勝負は終わらない。
佐々木の手には、リャンメン待ちならアガリ牌のが。
両者共にアガリ逃しをした後、佐々木の手に訪れたのは…だった。
リーチ ロン
佐々木にとっては痛恨の放銃。
しかし現状は佐々木が僅かながらに小松を上回っている。
それでも…勢いは小松だった。
南3局2本場、猿川から、
ポン ロン ドラ
3,900は4,500をアガってトータルポイントで佐々木を捲ると、南3局4本場、
ポン ポン ロン
この7,700は8,900で勝負あり。
小松が佐々木を一気に差し切り、見事に勝ち上がりを決めた。
勝ち上がり
魚谷侑未、小松武蔵
カテゴリ:十段戦 レポート