第36期十段戦 ベスト16B卓レポート 望月 雅継
2019年07月25日
前週の興奮も覚めやらぬ中、十段戦ベスト16もB卓が開始された。
ベスト16屈指の好カードとなったB卓は、歴代十段位が3名、Mリーガーが3名と注目必至。その中でも、十段位でありMリーガーでもある前原と瀬戸熊は歴代鳳凰位でもあるだけに、混戦模様とはいえ2人が対局をリードしていくような戦前予想も多く見受けられた。
そんな2人に挑戦するのは、トーナメント巧者の元十段位櫻井に、近況充実著しい黒沢。
大方の予想を上回る白熱した展開に、興奮した視聴者も多かっただろう。
それでは対局を振り返ってみたい。
黒沢咲(前年度決勝シード、東京本部、A2リーグ、TEAM雷電)
櫻井秀樹(東京本部、第31期十段位、B2リーグ)
瀬戸熊直樹(東京本部、第28、29、30期十段位、第26、27、29期鳳凰位他、A1リーグ、TEAM雷電)
前原雄大(東京本部、第14、15、24、25、26期十段位、第12、25、33、34期鳳凰位他、A1リーグ、KONAMI麻雀格闘倶楽部)
1回戦(起家から、櫻井・瀬戸熊・前原・黒沢)
1回戦から強烈な打撃戦の様相を見せる。
東1局1本場、瀬戸熊5巡目、メンホンの先制リーチ!
このリーチに一発で前原が飛び込む。
リーチ ロン ドラ
東2局、今局は櫻井vs瀬戸熊の1局。
櫻井、ポンテンの3,900に、
ポン ドラ
1シャンテンの瀬戸熊、ドラのをぶつける。
ツモ 打 ドラ
このドラを櫻井がポン。待ちへ。
ドラを打ち切り、さらなるアガリを掴もうとする瀬戸熊に、そうはさせるかと仕掛け返す櫻井。
アガリ云々ではなく、2人の意地がぶつかり合った名局。
結果、櫻井の1人テンパイで終局するものの、短期決戦ならではの戦いとなった1局となった。
東3局1本場、親番前原、1シャンテンでドラの切り。
同巡櫻井、ドラ単騎の三暗刻ドラ2のテンパイ。
ドラ
櫻井が息を潜める中、ドラが浮いていた黒沢、ドラを重ね放銃のピンチを回避。
すると櫻井、好形変化のツモで方針決定。ドラ切りの3メンチャンでリーチを敢行。
この選択が功を奏し、櫻井ツモ。瀬戸熊を捲り返す。
局は進んで南3局1本場、現状はラス目の親番前原。早めの仕掛けでテンパイを入れるも、そこに追いついたのは瀬戸熊。
ピンフ三色のテンパイを丁寧にヤミテン。
瀬戸熊と前原、枚数は五分五分の勝負も、ここは前原からの出アガリ。
ロン
このアガリで、瀬戸熊は混戦を一歩抜け出す事に成功。このベスト16も安定した戦いを進められるはず…だった。
立ちはだかったのはMリーグチームメイトでもある黒沢。ここまでは南1局の1,000点のアガリだけ。親番での爆発の為に、じっと息を潜めていたようにすら感じた。
南4局、黒沢、丁寧な進行から、をポンして1シャンテンに。すぐにテンパイを果たすと、
ポン ロン ドラ
瀬戸熊から価値ある12,000。一気にトップに躍り出る。対する瀬戸熊は一気にマイナス域に転落。積み上げてきたモノを一気に吐き出してしまう結果となった。
大乱戦の1回戦はまだまだ終わらない。
南4局1本場、櫻井メンチンテンパイ。
ドラ
手牌変化もある為、ここは当然ヤミテンを選択。
是が非でも原点復帰は果たしておきたい瀬戸熊、テンパイしている櫻井から放たれたドラにチーテンの声をかける。
チー ドラ
この仕掛けを受け、良形変化を果たした黒沢はリーチを選択。
リーチ ドラ
前原もヤミテンを選択しており、全員テンパイの状況も競り勝ったのは櫻井。
再逆転を果たす3,000・6,000で混戦を制する事に成功。絶好のスタートを切った。
1回戦終了時
櫻井+23.7P 黒沢+7.8P 瀬戸熊▲8.7P 前原▲22.8P
2回戦(起家から、前原・黒沢・櫻井・瀬戸熊)
惜しくも櫻井に捲られて初戦2着の黒沢、2回戦はまさに『黒沢劇場』というべき半荘となった。
東1局、早々にドラを暗刻にした黒沢、7巡目に優雅にリーチを放つ。
リーチ ドラ
黒沢の1人テンパイも、開けられた手を見て各者何を感じたか。
東4局1本場、前原7巡目、ポン
この仕掛けで黒沢にテンパイが。
ツモ 打 ドラ
選択がある中、黒沢が選んだのはツモリ三暗刻のリーチ。
当然のように黒沢はツモ!2,000・4,000と一歩抜け出す。
南1局、瀬戸熊先制リーチ
親前原もヤミテンで応酬。
2人の攻勢を受けた黒沢、丁寧に手を進めると…
瀬戸熊のアタリ牌でもあるドラの単騎をハイテイでツモアガリ。
ツモ ドラ
黒沢の充実ぶりが伝わってくる1局であった。
さらに加点を目指す黒沢、原点復帰を目指す瀬戸熊、好不調をはっきりと示す結果となったのが南4局1本場、瀬戸熊ポンから仕掛ける。
黒沢2巡目にテンパイも、手変わって三色リーチ。
リーチ ツモ ドラ
リーチツモタンヤオ三色の2,000・4,000。
2人勝ち上がりのトーナメントの戦い方として、トータルトップ目のオーラスのリーチはリスクが大きいのは黒沢も承知であろう。
そんな中、黒沢は自力で加点を掴みにいった。その姿勢こそが、黒沢が勝ち上がりを決めた大きな理由であると感じられた1局であった。
2回戦終了
黒沢+40.0P 前原▲2.2P 瀬戸熊▲11.1P 櫻井▲26.7P
2回戦終了時
黒沢+47.8P 櫻井▲3.0P 瀬戸熊▲19.8P 前原▲25.0P
3回戦(起家から、瀬戸熊・黒沢・櫻井・前原)
黒沢の勢いは止まらない。
東1局、配牌でドラ3を手にした黒沢は、道中ドラを槓子に。
親番瀬戸熊の先制リーチを受けるも、ドラを暗カンして臨戦態勢。
前原、ここは腹を括ったかリーチを敢行するも…
一番枚数が少ないはずの黒沢のアタリ牌を掴んだのは前原。
暗カン ロン ドラ
失点した前原、これ以上のマイナスは自身の敗退を意味するだけに、ここで何とか挽回したいところ。
東2局、ドラ2を手にした前原は自ら道を切り開くべく前に出る。が、しかし…
ロン ドラ
この日の黒沢の出来は本物だった。
前原が丁寧な手牌進行から切り出したは、前巡テンパイを果たした黒沢にジャストミート。
たった2局で2万点を加点した黒沢の勝ち上がりは、この時点で決まったと言っても良かっただろう。
こうなると注目は2着争い。
東2局1本場、瀬戸熊が、
リーチ ツモ ドラ
1,300・2,600のツモアガリで抜け出すが、櫻井も追いすがる。
東3局、瀬戸熊ヤミテンも、櫻井先制リーチ。
瀬戸熊ドラ引きからのリーチへ。
ここは櫻井、1,300オールと櫻井が制する。
が、櫻井は二の矢が出ない…。
対する瀬戸熊は、南場の競り合いを制して細かい加点を繰り返し、櫻井を突き放す事に成功。
オーラスも、
ロン ドラ
この手を櫻井から直撃して、しっかりと浮きと2着をキープ。勝ち上がりに一歩前進した。
3回戦終了
黒沢+40.3P 瀬戸熊+11.4P 櫻井▲11.4P 前原▲40.3P
3回戦終了時
黒沢+88.1P 瀬戸熊▲8.4P 櫻井▲14.4P 前原▲65.3P
4回戦(起家から、瀬戸熊・前原・黒沢・櫻井)
意地を見せたい前原。
大きくポイントを離されるも、自身の連勝で僅かながらに勝ち上がりの可能性を残したい。
東1局8巡目、前原リーチ。
ドラ暗刻の櫻井も、トータルラス目の前原のリーチには迂闊に前に出るわけにはいかない。
リーチ ツモ ドラ
ポイントが欲しい前原、1,300・2,600のツモアガリ。
4回戦ではあるが、やっと先制リードを取る事に成功。
東2局、ようやく前原らしさが出てきたか、親番前原、6巡目に先制リーチ。
リーチ ツモ ドラ
前原1,300オールと、ここへきて普段の前原らしい麻雀をファンの皆さんへ届けはじめた。
前原の復調を許してしまう事は、それぞれの勝ち上がり確率を下げてしまう事を意味している。現在トータル3着の櫻井としては、何とかここで前原に食らいつきたいところ。
東3局、櫻井にチャンスが訪れる。
ドラのがトイツの勝負手、10巡目にリーチ。
リーチ ツモ ドラ
これを引きアガリ、前原に肉薄。
ライバル瀬戸熊とのポイントも差を広げる形となる。
対する瀬戸熊は苦しい。
南2局に黒沢に1,300を、南3局には櫻井に1,000を放銃し、ラスに転落。
しかもこの放銃で同点ながら櫻井をトップに押し上げる事になり、かなり苦しい状況でオーラスを迎えることになった。
南4局、何とか加点したい前原、大三元含みの仕掛け。
対する瀬戸熊は、ラス回避、櫻井2着落ちの為には2,000点のツモアガリが必要なところ。
後のない瀬戸熊は11巡目リーチを宣言。宣言牌のをポンした前原もテンパイ。
瀬戸熊
リーチ ドラ
前原
チー ポン
奇しくも2人は同じ待ち。
引きアガるかどうかで、この先の結果が大きく左右するのだが…
黒沢のチーで、瀬戸熊のツモるはずのが前原に喰い下がり、前原のツモアガリで2,000・4,000。
前原トップ、瀬戸熊ラス。
前原は勝ち上がりに僅かな可能性を残し、逆に瀬戸熊はかなり厳しい条件に追い込まれた。
4回戦終了
前原+28.1P 櫻井+11.1P 黒沢▲16.1P 瀬戸熊▲23.1P
4回戦終了時
黒沢+72.0P櫻井▲3.3P 瀬戸熊▲31.5P 前原▲37.2P
5回戦(起家から、前原・櫻井・瀬戸熊・黒沢)
2位櫻井と瀬戸熊との差は、28.2P。
前原との差は33.9P。
瀬戸熊、前原共にトップを取った上で、ターゲットである櫻井の素点を少しでも削りたい。
対する櫻井は、自身がプラス域にいればほぼ安泰だけに、トーナメント巧者ならではの押し引きがみられるはずだ。
東1局、大逆転を目論む前原、いきなりの勝負手。
リーチ ドラ
高目のを引きアガると6,000オール。一気に櫻井を逆転する勝負リーチと打って出るが、ヤミテンを選択していた櫻井、ここは押し切って価値あるアガリ。
ツモ ドラ
この700・1,300で一息ついた櫻井だが、まだまだ予断を許さない。
続く東2局は瀬戸熊が櫻井に襲い掛かる。
瀬戸熊7巡目、絶好のカンを引き込んだ瀬戸熊は勝負をかけたヤミテンに。
跳満の引きアガリを狙うのではなく、櫻井直撃を狙ってのヤミテンに構えた。
そんな中、櫻井、黒沢も追いつくが、この瀬戸熊のアタリ牌を掴んだのは前原。
ロン ドラ
前原から瀬戸熊への7,700で、まずは前原が脱落。残る1つの椅子の行方は、櫻井と瀬戸熊の争いとなった。
続く東3局は瀬戸熊の親番。
トーナメント巧者の櫻井は、定石通り瀬戸熊の親を落としにかかり、自風のを1鳴き。
対する瀬戸熊はホンイツへ。チー、ポンと2フーロしてのテンパイ。さらに待ち変えをして
ポン チー ドラ
瀬戸熊ツモ打とに変えるも…
前原が意地の400・700で瀬戸熊のチャンスを潰す。
南2局、櫻井最後の親番。
前原から3,900をアガリ加点をした櫻井、続く南2局1本場勝ち上がりを決めるべく、櫻井が前に出る。
ポン ツモ
櫻井、4,000オールと勝負あり。
南3局4本場
オーラスが黒沢の親だけに、瀬戸熊にとっても櫻井にとってもこの親番を死守するか落とすかの勝負。
勝負が決した黒沢と前原が前に出ないだけに、実質は2人だけの戦いとなる。
瀬戸熊、七対子ドラ2を単騎でリーチ。
櫻井、のピンフ一気通貫テンパイ。
意地と意地のぶつかり合いは、櫻井が無筋を何枚も押し切り、ツモ!
櫻井が勝ち上がりを決めた。
ツモ ドラ
勝ち上がり 黒沢咲、櫻井秀樹
5回戦終了
櫻井+30.7P 瀬戸熊+9.6P 黒沢▲11.5P 前原▲28.8P
5回戦終了時
黒沢+60.5P 櫻井+27.4P 瀬戸熊▲21.9P 前原▲66.0P
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