第36期十段戦 ベスト16C卓レポート 望月 雅継
2019年07月31日
十段戦ベスト16もC卓の戦い。
ここまで快進撃を続ける山田が、格上3人を相手にどのように踏み込むのかが勝負のカギとなろう。守備が堅い滝沢、杉浦に、変幻自在の沢崎が交わるとどのような化学変化が起きるのかにも注目したい。
沢崎誠(前年度決勝シード、東京本部、第13期十段位、第27期マスターズ他、A1リーグ)
山田学武(東京本部、C3リーグ)
滝沢和典(東京本部、第32、33期王位、C1リーグ、EX風林火山)
杉浦勘介(東京本部、第9期野口恭一郎賞、B1リーグ)
1回戦(起家から、沢崎・山田・杉浦・滝沢)
東1局、開局から激しくぶつかり合う。
10巡目、滝沢をポンしてテンパイ
ポン ドラ
を切った杉浦、この仕掛けでテンパイ。押し出された形の打で滝沢への放銃。
滝沢が絶好のスタートを切った。
続く東2局、滝沢7巡目、三色のテンパイもヤミテン。
ドラ
が2枚切れもヤミテンの理由か。
対する山田はテンパイ即リーチに。
リーチ ロン ドラ
ここは滝沢がを掴んで山田への放銃。
さらに山田は東2局3本場、滝沢のチーによりテンパイを果たすと、ここはヤミテンに。
ロン ドラ
ホンイツに向かい、何度もテンパイを外す杉浦。
その杉浦からを討ち取る。
ここまで放銃が続き苦しい展開の杉浦だが、東2局4本場、自力での局面打破を目指し7巡目にリーチを宣言。沢崎からを打ち取り、ようやく長かった山田の親を止めると。
リーチ ロン ドラ
続く東3局も先制リーチ。
リーチ ツモ ドラ
時間はかかったものの2局続いてのアガリをモノにし、反撃の狼煙を上げる、
勝負の分岐点は東3局1本場。
トップ目に立つ山田。ここもあっという間にテンパイ一番乗り。
ドラ
テンパイ時にアガリ牌のはなんと山に4枚。
ここは山田のアガリを誰もが予想したのだろうが…
しかし山田は、沢崎の切ったをチーして喰い伸ばし。このチーが山田の運命を大きく変えてしまった。
山田、打。
このを沢崎がポンしてテンパイ。
ポン ポン
ここに飛び込んだのは山田。
自らの仕掛けで、沢崎に復調のきっかけを与えてしまったように映ったのだが…。
南2局、ここも山田が5巡目テンパイ。
安めの引きだが、ここは先手を取りにリーチを宣言。
リーチ ドラ
粘ったのは沢崎。12巡目に追いつきリーチ。
リーチ ツモ
高めのをツモアガリ3,000・6,000。一気に山田を差し切った。
山田とすると、一旦ヤミテンに構えるとアガリが濃厚だっただけに、選択が悔やまれる1局となったか。
大混戦で迎えたオーラス、競り勝ったのは山田。8巡目にリーチを放つと、
リーチ ドラ
このリーチに捕まったのは滝沢。
山田は再逆転、トップで終了となったが、逆に痛恨の放銃は滝沢。この放銃で3着から4着に着順ダウン。混戦ながらも厳しい立ち上がりとなった。
1回戦終了時
山田+13.2P 沢崎+7.1P 杉浦▲8.0P 滝沢▲12.3P
2回戦(起家から、杉浦・沢崎・山田・滝沢)
1回戦は細かく刻んだ印象の杉浦。
東1局、時間がかかったが13巡目にテンパイもヤミテン。
安めながらも2,600オールでの滑り出し。
ツモ ドラ
しかしこの半荘の主役は沢崎。
東3局1本場、8巡目の沢崎はターツ選択。
ツモ
余剰牌のか、二度受けのソウズターツを触るのが普通の選択だが、ここで沢崎はなんと打とピンズを払いに行く。
そしてをチーし、を引き込み、リーチ者の現物を討ち取る。
まるで沢崎の掌の上でゲームが進行していくような錯覚に陥ってしまう一瞬であった。
その極めつけは南4局の捌き。
先制テンパイは山田。
ドラ
ツモり三暗刻のテンパイ。
対する親番滝沢は、
こちらも逆転へ十分な手格好。
杉浦はをポンして、
ポン
この時沢崎の手牌は、
と、1人圧倒的に遅れている状況。
だがしかし…
7巡目、杉浦が切ったを一瞥すると、少考後チー、打とまずは山田への放銃回避。
さらにここからがすごい。
このチーで、滝沢がテンパイするはずのが杉浦に喰い下がる。
杉浦が欲しいドラのを自身で喰い下げ打。
そして滝沢のツモアガリになるはずだったがさらに杉浦に流れる。
同巡沢崎、ドラのを重ねて打。そしてツモ打とテンパイにつけると、山田のツモは。当然暗カンした山田、リンシャン牌に手を伸ばすと…
そこには沢崎のアタリ牌のが。
チー ロン
タンヤオ三色ドラ2。
幾つもの奇跡を果たした沢崎。
実況の日吉が『悪魔のチー』と言い放った表現がピッタリだろう。
3人を地獄へと引きずり込むようなそのアクションは、観ている者を麻雀の魅力に引き込む動きでもあったのだろう。
2回戦終了
沢崎+22.1P 杉浦+11.3P 滝沢▲9.3P 山田▲24.1P
2回戦終了時
沢崎+29.2P 杉浦+3.3P 山田▲10.9P 滝沢▲21.6P
3回戦(起家から、杉浦・滝沢・山田・沢崎)
初戦のトップを生かしたい山田、東3局1本場親番で4巡目の先制リーチ
リーチ ツモ ドラ
これを一発でツモり2,600オールと幸先の良いスタートを切った。
ここまでなかなか勝負に乗り切れない感のある滝沢、これ以上のマイナスは苦しくなるところだが、東4局、滝沢好配牌から6巡目先制リーチ。
リーチ ツモ ドラ
滝沢、ようやく反撃の狼煙を上げた。
山田だって負けてはいない。
南1局、山田9巡目の先制リーチ。
リーチ ツモ ドラ
これを一発で引きアガリ1,300・2,600。
山田も食い下がる。
南2局、滝沢の親番。9巡目のリーチを最後のツモで引きアガると、
リーチ ツモ ドラ
1,500は1,800。2,900は3,500。3,900は4,800と小刻みに加点していく。
滝沢の連荘を止めたいのは3者共に同じ。
南3局5本場、三者三様のアクションを見せる。
杉浦はヤミテンに構え、山田はリーチを選択。しかし勝ったのは沢崎。
リーチ ハイテイ ツモ ドラ
杉浦は道中三色に受け変えればアガリがあっただけに悔やまれる1局となったか。
このアガリで沢崎は原点復帰。
勢いに乗る沢崎は、
南4局、高めツモ6,000オールのリーチを放つも…
リーチ ドラ
息を潜めていたのは滝沢。
ロン
沢崎のリーチ棒で、沢崎は原点を下回り滝沢の1人浮きに。勝負の行く末はまるでわからなくなってきた。
3回戦終了
滝沢+29.8P 沢崎▲1.9P 山田▲6.4P 杉浦▲21.5P
3回戦終了時
沢崎+27.3P 滝沢+8.2P 山田▲17.3P 杉浦▲18.2P
4回戦(起家から、山田・杉浦・滝沢・沢崎)
開局から杉浦が電光石火の攻撃を仕掛ける。
東1局、杉浦2巡目先制リーチ。
リーチ ツモ ドラ
安めツモながら2,000・4,000と好スタート。
続く東2局も、杉浦連続リーチ。
リーチ ツモ ドラ
たった2局で滝沢をごぼう抜き。
一気にトータル2着に浮上した。
さらに東2局1本場にも滝沢から3,900を討ち取り、沢崎への追撃体制を整えた杉浦だったが、交わされた滝沢も黙ってはいない。
東2局2本場、700・1,300をアガって迎えた東3局、沢崎の先制リーチを受けるも、粘りに粘った滝沢は、
ホウテイ ロン ドラ
ホウテイで沢崎から7,700の価値あるアガリを決め原点復帰。勝ち上がりに意地を見せる。
4回戦はここまで精彩を欠いたように映っていた沢崎、南1局3本場、沢崎ならではの熟練の技を魅せる。
沢崎5巡目テンパイも…
リャンペーコー変化もみずに単騎の七対子リーチ
リーチ ロン
これを杉浦から打ち取り復調のキッカケを掴むと、南4局2本場、親番沢崎はポン 、加カン、チーと積極的に動きテンパイ。
ここに勝負を挑んだのは後のない山田。
4回戦の原点復帰が勝ち上がりの最低条件とみたか、条件を満たす為にホンイツへ。
勝ち上がる為の一打は、無情にも自身の敗退を決定づける致命傷となってしまった。
チー 加カン ロン ドラ
このアガリで沢崎は3着浮上。
三つ巴で最終戦を迎える事となった。
4回戦終了
杉浦+24.4P 滝沢+9.7P 沢崎▲6.9P 山田▲27.2P
4回戦終了時
沢崎+20.4P 滝沢+17.9P 杉浦+6.2P 山田▲44.5P
5回戦(起家から、滝沢・杉浦・山田・沢崎)
沢崎+20.4P 滝沢+17.9P 杉浦+6.2P 山田▲44.5P
着順上位が通過となりそうな、かなりの混戦で最終5回戦を迎えた。
東1局、山田はピンフ三色ドラ2テンパイもヤミテンに。大逆転を目指し、一手変わりの純チャンを見据える。
ドラ
追う立場の杉浦、ピンフイーペーコーのリーチに。
これを受けた山田、ツモ切りリーチを敢行も…
リーチ ロン
山田としては大チャンスを逃してしまった形となった。
杉浦を追いかける滝沢、ターツ選択を成功した滝沢は即リーチに踏み込む。
リーチ ドラ
この手をアガリ、勝ち上がりの権利を引き寄せたい滝沢であったが、掴んだのは無情にも沢崎のアタリ牌。ここは沢崎の捌きに軍配。
ポン ロン
この放銃をキッカケに、沢崎と滝沢の争いはさらに激化する。
東3局3本場、
ツモ
滝沢はヤミテンでアガリを掴むと、続く東4局も沢崎のリーチを受けながらも、
チー ロン ドラ
無筋を6巡押し切り、見事沢崎からアガリを奪取。続く南1局もアガリ切り、点棒をプラス域まで回復する。
この半荘ラスに転落したトータルトップ目の沢崎、何とか素点を回復しないとこのままでは敗退となってしまう。
南1局1本場、親番滝沢のリーチを受けるも、最終巡目でテンパイ料を取ると、南1局2本場では、杉浦のリーチを受け、
ツモ ドラ
タンヤオ七対子のドラ単騎のテンパイから、ドラを勝負してのテンパイ奪取!
南2局3本場では、
チー ポン ロン ドラ
山田のリーチをも躱し、供託のリーチ棒込みでなんとトップ目に。
残すはあと2局。
南3局、どうしても原点復帰したい杉浦は、
ポン ポン ロン ドラ
トップ目の沢崎から値千金の5,200。
このアガリで三つ巴の争いから一歩リード。
オーラス、沢崎は連荘あるのみ。
杉浦、滝沢はアガリトップも放銃が出来ない状況。
沢崎はポンから入るが、先にテンパイは滝沢。
ドラ
アガれば通過の滝沢。杉浦、沢崎は放銃したら敗退。
10巡目、追いついたのは沢崎。
ポン
互いにツモる手にも力が入るが…
勝ったのは沢崎。滝沢からの出アガリで、逆に滝沢に条件を突きつけた。
南4局1本場、滝沢の条件は700・1,300か2,600の出アガリ。杉浦からは1,000の出アガリはOK。さらに滝沢の1人テンパイで杉浦は敗退となる。
滝沢、13巡目テンパイ。
対する杉浦は1シャンテン。
ドラ
700・1,300は勝ち上がり。
つまりリーチしてツモは勝ち上がりとなるが、はハイテイ以外ツモれない。
しかしリーチしてしまうと、リーチ棒を出す関係で1人テンパイは敗退となってしまう。よって杉浦はオリを選択出来る。
滝沢、苦渋の決断。
悩みに悩んだ選択は…リーチ。
自らの手で勝利を掴み取る道を選んだ。
これを見た杉浦、流局に全てを賭ける。
結果…
滝沢の手にが届く事なく流局。勝ち上がりは沢崎、杉浦の両名となった。
勝ち上がり
沢崎誠
杉浦勘介
カテゴリ:十段戦 レポート