第31期十段戦ベスト16D卓レポート 滝沢 和典
2014年09月17日
第31期十段戦は、本日でベスト8進出者が出揃う。
時を同じくして、夏の甲子園でもベスト8が決定しようとしていた。
毎年多くの球児が涙を流す姿には心打たれるものだ。
敗けた瞬間、夏が終わり、3年生は高校野球生活が終わる。
その「敗けること」に対するプレッシャーが重いほど、勝負が熱く、面白いものになるのだろう。
同様に、十段戦もトーナメントに敗けた瞬間1年が終了となる。
発表されている戦術の大半がそうであるように、麻雀は長い期間でのトータル勝負と捉えられることが多いが、トーナメント方式の対局には、また別の技術力が必要となるのは明らかだ。
力まかせに打っているだけでは、頂上まで登ることができないのである。
今回のD卓には頂上からの景色を見た男、前原雄大、藤崎智の2名がいる。
もちろんこの2名の勝ち上がり確率が高いと見るのが普通であろう。
百戦錬磨の相手に対して、関島、吉田2名がどう戦うのか、というのが見どころだ。
前原 雄大 |
藤崎 智 |
関島 義基 |
吉田 直 |
1回戦東1局
藤崎の4,000オールからスタート。
ドラ1
藤崎配牌
8巡目にツモアガリ。
ツモ
5巡目テンパイだったが、藤崎の雀風なら安目のは見逃しでいたであろう。(そして2枚目のはポンまであるかも?)
このとき、関島にも早いテンパイが入っていた。
関島手牌
藤崎が打ち出した5巡目のドラに全員が反応している様子だっだので、仮に藤崎が安目を見逃して高い打点を目指したときは、アガリに結びついていなかったかもしれない。
それくらいピリピリとした空気が卓上には流れており、この1局の選択一つで勝者が変わっていた可能性もある。
2回戦
東1局は前原の2,000、4,000からスタート。
ドラ五
ツモ
東3局、ドラ
前原はドラのを打って先制リーチをかける。
この局は実に前原らしいリーチである。
チンイツや一通またはドラのくっつきを待つ人が多いのではないだろうか。
前原はしばしば、こういった打牌を選択するが、例えば、1回戦の藤崎の手牌で、前原がどういった選択をするのか興味深い。
1、2回戦を終了して時点で、前原が抜け出す。
前原+64.9
藤崎+7.9
吉田△36.8
関島△37.0
3回戦東4局
1回戦で大きくマイナスしてしまった吉田だが、2回戦をしっかりとまとめ、2着目の藤崎に約45ポイント差まで詰め寄る。
しかし、ここでボーンヘッド。
場面は早々に関島、藤崎、1対1の様相を呈している。
4巡目にドラのを打ち出したのは南家の関島。
それをポンした藤崎の手牌は、
ポン
このとき、2者のテンパイに挟まれた格好となった吉田だが、現在のターゲットで
ある、藤崎に対してを打ってチーさせてしまい、それがすぐに2,000、4,000のアガリ。
一旦追い詰めた相手にまた逃げられてしまった。
通常の麻雀ならそれほどのことではないが、すでに前原が一人抜け出している状態。
2着目の藤崎を徹底的にマークするべきだろう。
この局は、終わった瞬間に本人も反省点として挙げていた局であった。
4回戦オーラス
4巡目、32,000持ち3着目の関島は、場に1枚目のからポン。
ドラ
関島手牌
ポン
トータルポイントを考えると、前原、藤崎の2名からは仕掛けることが難しいため、(前原+50.7 藤崎+34.0 関島△41.3 吉田△44.4)1枚目の北は仕掛けない方が、アガリ確率が高いようにも感じる。しかし、関島の積極的な仕掛けが、役満テンパイを引き寄せる。
ポン
アガリ牌が山には残っているが、前原、藤崎の2名からはもちろん出ない。
ポイントがマイナスしている吉田からは出る可能性があったが、惜しくも流局となった。
決勝メンバーは、瀬戸熊直樹、前原雄大、藤崎智、柴田弘幸、櫻井秀樹の5名。
瀬戸熊、前原、藤崎は十段位を獲得している。
柴田、櫻井の2名は3名の強豪を相手に初のタイトルを獲得することができるのか。
非常に楽しみな決定戦だ。
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