JPML WRCリーグ 決勝観戦記/第23期チャンピオンズリーグ 決勝観戦記
2013年02月15日
「あなたにとって麻雀とはなんですか。」
そんな問いを不意に投げかけられたら、さてなんと答えよう?
趣味、生きがい、生きる術、人生、コミュニケーションツール、ゲーム・・・。
予想されるさまざまな返答。
私にとって麻雀が、そういったものであった時も確かにあった。
けれど、今の私にはそれらの返答はどれもいまひとつしっくりこない。
今の私にとって麻雀とは、まるで遠い初恋の人のように思える。
願っても届かない想いを抱えることに疲れて、正面から向き合うことを避けるようになっていた。
伝えることなく諦めた初恋。
しかし距離を置いてつきあうと、なぜか良い結果が出るようにもなったりして、そういったところも追えば逃げる情愛の難しさに似ている。
観戦記者の話が来た時、思わず断る理由を探した。
想い人の背中すら見失いそうになっている私に、誰かの大切な闘いを伝える資格などないと思えたから。
けれども、やっぱり想いを諦めたくない気持ちが確かにあり、一つの闘いを真剣に見届ければ、なにか変われるかもしれないと思い直した。
今日麻雀が選ぶのは一体どんな人なのか。
まるで憧れの人に会いに行くような心持ちで、四ツ谷の連盟道場に足を向けた。
Chapter1 選手入場
2013年1月27日、連盟四ツ谷道場。これからここで第23期チャンピオンズリーグ決勝戦が行われる。
私は開始より少し早めに会場入りし、本日の主役たちを待つことにした。
まず最初にやってきたのは中村慎吾。
27期生、初段。今日が初めての決勝となる。
意気込みなどを聞いてみた。
「予選をぎりぎりの最下位で通過したので、トーナメントは負けて元々の気持ちで臨んだら、ベスト8まで非常に恵まれた展開で勝ち進むことができた。昨日で力を出し切ってしまったから、もう今日は4位になっちゃうんじゃないんですかね。」
なんと驚いた。決勝を前にして4位でいいと言えてしまう人がいるなんて。
これが流行の草食系男子というやつか?
この気負わなさっぷりが、吉と出るか凶と出るか、要チェックや、と思いながら礼を言って離れる。
登場人物No.1 草食系男子・中村慎吾
中村慎吾
次にやってきたのは吉田幸雄。
5期生、七段。
第10期發王戦優勝を筆頭に、数々の決勝出場経験を持つ百戦錬磨の猛者である。
北関東支部長として地方の麻雀発展を目指した活動も精力的に行っている。
決勝に向けた心構えを聞かせて頂けますか、との問いに、にこやかに「平常心」と答えてくれた。
全くの自然体で卓に向かう姿には格上の風格が漂っていて、さすがだな、と思わせられる。
登場人物No.2 百戦錬磨の支部長・吉田幸雄
吉田幸雄
3番目の到着は高沢智。
25期生、三段。
今年度の麻雀マスターズ決勝戦にて、惜しくも3位に敗れたものの、最終戦オーラスまでもつれる大熱戦を繰り広げたことは記憶に新しい。
私の勝手な見立てだが、麻雀の王道を追及するスタイルのイメージがある。
そのイメージと、長身細身で落ち着いた佇まいから、なんとなく「貴公子」といった風情がある。襟元のヒラヒラしたブラウスなど着せたら似合いそうである。
こちらのインタビューに、「今日はタイトル獲れるように頑張ります。」と言葉少なに答えてくれた。うむ、貴公子である。
登場人物No.3 貴公子・高沢智
高沢智
最後に現れたのは吉田直。
23期生、四段。
2009年度の特昇リーグで優勝し、B2にステップアップ昇級、以来、上位リーグで互角以上にわたりあっている。A2リーグ昇級を決めた際は、男泣きに泣いたという、熱い男である。
「まあ50%の確率で吉田が勝つよ。だって4人中2人吉田だもん、HAHAHA!」
そう冗談めいて話す口調とは裏腹に、『勝つのは俺だ』という強い意志が眼差しに宿る。
これはまた中村とは好対照な肉食系である。
登場人物No.4 肉食・吉田直
吉田直
さて主役たちがそろった。いよいよ楽しく辛い時間の始まりである。
左から 高沢智、吉田直、吉田幸雄、中村慎吾
Chapter2 支部長の貫禄
1回戦(起家から、高沢・中村・吉田(幸)・吉田(直))
東1局。高沢と吉田(直)の手牌が良く、どちらかのアガリかと思い見ていると、13巡目、中村がツモ発声。ピンフツモの400、700。闘いは静かに始まった。
その後2局流局し、東3局2本場。場が動き始める。
ここまで手が形にならず、3者に遅れをとっているように見えた吉田(幸)、今局は手牌がいい。
7巡目にこの形でテンパイ。
ドラ
慎重にヤミを選択。
無風状態の今、確実に5,800をモノにしようという腹づもりか、あるいは前巡、中村にを打たれた感触の悪さ故か。
直後、下家の吉田(直)が切ったを中村がポン。
すると3巡後、吉田(幸)の手に届いたのはアガリ牌の。
タンヤオピンフツモドラ1の2,600は2,800オール。
親リーチしていれば、中村は生牌のを鳴けなかったかもしれない。ヤミテン正解ということか。
ちなみに中村は、
ツモ
ここから、打、次巡出たを一鳴きして打としている。
むやみに大振りせず、直線的に進んで隙なくアガリを狙いに行くタイプということか。
続く東3局3本場。一気に場が活気付く。
まず親の吉田(幸)が9巡目にリーチ。すると同巡、高沢と中村が追いつき、相次いでリーチ。
吉田(幸)
リーチ ドラ
高沢
リーチ
中村
リーチ
高沢と中村は、役アリテンパイ、親リーチが入っている、そして字牌のドラが1枚も見えていない、という点から、普段の麻雀であれば追いかける必要はないかもしれない。
しかし、今日は5回勝負の頭取り麻雀。引いていてはいけない、という気持ちが打ったリーチであろうか。
奇しくも広さは違えど、全員が同じ––の筋待ち。
ここを誰がアガるかで、この後しばらくの勢いは決まるかも、と場に見入る。
結果は、あっさりと吉田(幸)が高めのツモ。リーチタンヤオピンフツモの2,600オールは2,900オール。
東3局4本場。吉田(幸)の点棒は46,000点を超えた。
この親を落とさなければ、というのが子方3人共通の思いだろう。
今回は4者とも手がまとまっている。一番早くテンパイしたのは中村。
5巡目テンパイから、待ちを単騎から3面張に振り替えて、8巡目リーチ。
リーチ ドラ
この手、ドラの振り替わりや一通・ピンフ手変わりが見えるが、親落としという今局のテーマからすると、これが正解なのだろう。
一方、ここまで出番のなかった吉田(直)、リーチ後に七対子のテンパイが入る。
ツモ
無筋のを河において、そっとヤミテン。ほどなくをツモりあげる。
七対子ツモドラ2の2,000・4,000。
脅威だった支部長の親が落ちた。そして場はまた一旦凪となる。
次に大きく動くのは南1局3本場。
中村の手がいい。3巡目でこの1シャンテン。
ドラ
そして場にはがどんどん切られていき、とは非常に良さそうに見える。
私が中村なら、早くどちらか引いてリーチしたい、という思いにはやることだろう。
しかし無情にもツモが効かず、ようやくリーチ出来たのは12巡目。
リーチ
そして中村のツモがもたついている間に、着々と吉田(幸)の手が育っていた。
同巡、テンパイして追いかけリーチ。
リーチ
二軒リーチを受けた吉田(直)。しかしこちらも手は悪くない。
ツモ
2人に共通の現物はない。また、中村はが早く切れていて、吉田(幸)の河にはがある。
あまり間を置かず、打。かくして吉田(幸)の満貫のアガリと相成った。
吉田(直)の放銃したはラス牌であったが、これは致し方ないだろう。
かわいそうな吉田(直)。かわいそうな中村。
そして恐るべきは、百戦錬磨の支部長・吉田(幸)。
南2局を迎えて、吉田(幸)の点棒は53,000点台に突入した。
この回はこのまま支部長の圧勝か?と思われたが、さらに波乱が待っていた。
まず0本場は、親の中村が積極的に仕掛けて、トイトイの7,700点を吉田(幸)から討ち取る。
ポン ポン ロン ドラ
続く1本場。初巡、中村がを暗カン。6巡目リーチ。
暗カン リーチ ドラ
愚形ながら、場にはとが程良く飛んで、は1枚切れ、気持ちよくリーチに行ける。
これに、同巡テンパイした高沢と吉田(直)が、果敢に無筋を切り飛ばしてかぶせるが、結果は中村のツモ。リーチツモの3,900オール。
これで、吉田(幸)42,000点に対して、中村35,400点。吉田(幸)に、じわり、と近づく。
2本場は、吉田(幸)が軽く七対子ツモで流し、南3局。
ここまで磐石の態勢を築いていた支部長・吉田(幸)が初めて隙を見せる。
中村の捨て牌が、と異様な切り出し。
その後、東、西と続き、染め手なのは明らか。場にソーズが安いことから、マンズ染めであることは全員認識しているはず。
吉田(幸)は丁寧にソーズを落としながらも手を作り、14巡目テンパイ。
ツモ ドラ
僥倖のラスツモでテンパイ。は生牌。さて行くべきか、引くべきか。
吉田(幸)の選択は打のテンパイとらず。すると3巡後、ツモ。痛恨のアガリ逃し!
私如きが支部長の麻雀に何か言える立場でもないが、調子のいい親番であること、そして決勝戦であることを考えると、ぜひこのを切ってアガリ切るところを見せて欲しかった。
そうしたらこの親番、この後一体何点稼いだろうか、想像するだに恐ろしい。
結局この局は、静かにテンパイを入れていた高沢が、吉田(直)から七対子ドラ2の6,400をアガって終了。
動画再生
南4局は、親の吉田(直)がテンパイ流局で粘って2本積むが、締めは吉田(幸)が高沢から3,900点を討ち取った。
1回戦成績
吉田(幸)+25.8P 中村 +5.1P 吉田(直)▲13.2P 高沢 ▲17.7P
さすが支部長の貫禄を見せた吉田(幸)、しかし更に大きなトップを取れた可能性があったのも事実。
果たしてこれがこの後どう働いてくるか。
Chapter3 飢えた肉食
2回戦(起家から、高沢・中村・吉田(幸)・吉田(直))
初戦あまり見せ場のなかった吉田(直)が動き出す。
吉田(直)の麻雀は、深く、重いイメージがある。照準に入れば一撃で仕留めるしなやかな肉食獣のようである。
1回戦、吉田(直)の手牌・ツモは決して悪くなかった。しかしなかなかアガリに結びつかずにここまで来ていた。私が吉田(直)の立場なら、こういう状況にはかなり嫌な感触を持つ。
一見好形が決まらず、チャンスが流れていくと、どんどん態勢が悪くなる気がする。
いっそ手牌ばらばらの方がわかりやすくてよい。
吉田(直)自身には、そういった焦りはないのだろうか、と様子を伺う。
東1局1本場、吉田(直)に勝負手が入る。
リーチ ドラ
果たしてこのチャンスは実るのか、これも逃したらさすがに寒いな・・・、と見ていると、5巡後にツモ。リーチツモドラで2,000・4,000。
続く東2局も、吉田(直)が先行リーチ、追いかけリーチをした高沢から7,700を討ち取る。
リーチ ロン ドラ
いよいよ肉食獣が爪を研ぎ獲物を狙い始めたか?
東3局、親は吉田(幸)。
吉田(直)にだけ好き勝手させない、とばかりに、吉田(幸)が攻めて行く。
ドラ
ここから、1枚目のをポン。
一方、吉田(直)の手にはソーズが押し寄せ、吉田(直)は染めに移行。
両者順調に手が進み、残された高沢・中村はうかつに割って入れなくなった。吉田同士の一騎打ち。
吉田(幸)
ポン
吉田(直)
互いに互いのテンパイは察しているだろう。吉田(直)が吉田(幸)の待ちを抑えている分、若干吉田(直)の方が有利か?(ええい、『吉田』ばっかでややこしいな!)
しかし吉田(直)がをツモる。ほぼ唯一、吉田(幸)のあたり牌が出ていく可能性のあるツモ牌。
吉田(直)、長考に入る。
自分勝手に行くならおそらく打、しかしテンパイ濃厚の親に5枚持ちの筋が切れるか?
しかし、テンパイ維持のためにはかを切らなくてはならない・・・。
この時の吉田(直)の思考は推測しか出来ないが、最終的に彼が選んだのは、支部長の刃をすり抜ける打。
無情にも、次巡、吉田(直)が持ってきたのは、打としておけばアガリ牌であった1。
しかし流局して開かれた吉田(幸)の手を見て、自分の判断は間違っていなかったと、背中を押された気がしたのではないだろうか。
吉田同士の紙一重のしのぎあい、そして場を見てきちんと引いた高沢と中村。
見応えのある、良い一局だった。
動画再生
この回はこの後更に吉田(直)が加点し、5万点オーバーのトップを取ることとなる。
しかし肉食系が暴れまわる中、中村は南1局に3,000・6,000をツモり、しっかりと4万点超の浮きを確保。
2回戦成績
吉田(直)+28.5P 中村 +16.4P 吉田(幸)▲7.2P 高沢 ▲37.7P
2回戦終了時
中村 +21.5P 吉田(幸)+18.6P 吉田(直)+15.3P 高沢 ▲55.4P
1回戦、2回戦ともにしぶとく2着を確保した中村が総合トップ。しかしまだ両吉田との差はわずか。
決戦は三つ巴の様相を呈してきた。
Chapter4 貴公子の嘆き
3回戦(起家から、中村・吉田(幸)・吉田(直)・高沢)
2ラスを引いて、トータル1人沈みとなってしまった貴公子・高沢。そろそろ挽回しないと、もう追いつけなくなってしまう。
高沢の麻雀には華がある。貴公子の名にふさわしい。(まあ今私がつけたんだが。)
例えば1回戦東2局。
ドラ
ここから打としてマンズに一気寄せする。
あるいは2回戦南2局。3巡目に、
ドラ
ここからをツモ切り。そして6巡目に、
ツモ
これで一通と三色の芽を残す打。
見ていてやりたいことが分かりやすく伝わってくる。
思わず手元のノートに「手役追うきれいな麻雀」と書き付けた。
そして3回戦東1局、高沢リーチ。
リーチ ドラ
うむ、美しい。しかし結果は流局。
さらに東2局1本場、またもリーチ。
リーチ ドラ
うん美しいね。しかし結果は他家のアガリ。
何度でも手を作って挑むのに、その度に振られてしまう貴公子・高沢。非常に苦しい。
こういった手がことごとくはまる日もあるだろうに、本日の麻雀の女神は、高沢にはつれない。
貴公子の嘆きをよそに、他3人がアガリを重ねる。
東2局2本場。
親の吉田(幸)が6巡目にこのヤミテン。
ドラ
すぐに吉田(直)からが出て12,000。
しかし、すかさずアガリ返してこそ肉食。
吉田(直)1巡目、
ツモ ドラ
ここからを切ってホンイツまっしぐら。2巡目に出たを一鳴きして手を進める。
ちょっと今までの吉田(直)の手組みとは違うように感じる。苦境を受けて少し変えてきたということか。
もしかしたら麻雀の女神は、きれいなだけでは物足りなくて、時にはこういった強引な仕掛けの肉食系に惹かれるのかもしれない。そのまま2,000・4,000をアガって吉田(幸)の親を流す。
中村も、両吉田がせめぎあうなか、南3局、少ないチャンスをモノにして1,300・2,600をツモアガる。
そしてオーラスも軽く仕掛けて2,000点をアガリ、しっかりと浮きを確保。
3回戦成績
吉田(幸)+25.7P 中村 +5.7P 吉田(直)▲12.0P 高沢 ▲19.4P
3回戦終了時
吉田(幸)+44.3P 中村 +27.2P 吉田(直)+3.3P 高沢 ▲74.8P
他家のアガリを受けつつも、3回戦とも浮きの2着を確保した中村。
きちんとチャンスを活かしていくアガリへの嗅覚が見事である。
しかし、総合トップの座は支部長吉田の元へ。
ここまで展開の良さにも恵まれたせいか、先手なら押す、後手なら好形の場合1、2牌は押すが、その後はいかない、といった淡白とも見える押し引きをしてきた草食系男子・中村。
追う展開となった時の踏み込み方が、さて見ものである。
Chapter5 ロールキャベツ男子
4回戦(起家から、吉田(直)・吉田(幸)・中村・高沢)
4回戦の山場はいきなりやってきた。
東1局、親の吉田(直)がリーチ。
リーチ ドラ
これに対する中村の手牌。
ツモ
さてあなたならどうする?
中村はノータイム打でリーチを宣言!
結果は、もちろんあえなく御用であるが、私はこの時(あれあれあれ)と思っていた。
私がここまで見てきた中村の印象と、このノータイムドラ切りが結びつかない。
誰だ、中村を草食系男子だなんて言ったのは?!(お前だ!)
私は中村を誤解していたのかもしれない・・・。
混乱のあまり、私は手元のノートに「ロールキャベツ」と殴り書いた。
そうか、中村は一見草食系だが、一皮向けば肉食のロールキャベツ男子だったのか・・・!
「押すべきときに押す」
特に決勝で勝ちきる時には絶対に必要な要素であると思う。
言葉にするとシンプルだが、貫くのは非常に難しい。この際の敵は、相手3者ではなく自分自身である。
今回の結果は12,000点の放銃だが、きちんと押すべきところで押していった上でのことである。
中村がこの後もこの姿勢を貫けるなら、これは決して悪い放銃ではないだろう。
それを証明するかのように、東4局3本場、中村に大きなアガリが生まれる。
暗カン リーチ ドラ
これをさばきに動いたのが吉田(直)。
この形から、上家から出たを鳴いてテンパイ。
チー
結果は、次巡、吉田(直)が高めを掴んでそのまま中村に8,000点の放銃。
普段の吉田(直)のスタイルからすると、このさばきには若干違和感を覚える。
しかし、吉田(直)が勝負所と見込んで踏み込んだゆえの結果。一概に是非は言えまい。
「押すべきときに押す」
いつ押すか、どこまで押すか。すべて自分次第。一牌ごとに試される自分。
やはり麻雀は奥深い。
結局この回は、その後も中村が細かくアガって加点、なんと開局の失点を大きく取り返す浮き2着を確保する。
やはりしぶとい、草食系改めロールキャベツ男子・中村。
4回戦成績
高沢 +18.0P 中村 +12.8P 吉田(直)▲5.1P 吉田(幸)▲25.7P
4回戦終了時
中村+40.0P 吉田(幸)+18.6P 吉田(直)▲1.8P 高沢 ▲56.8P
総合トップだった吉田(幸)、この回は5,200点を放銃したのみだったが、他3者のアガリ合いに巻き込まれ、痛恨のラス。
残り1回、今日の中村の安定感からすると、このまま押し切ってしまうムード満載である。
さて波乱はあるのか。
Chapter6 そして終幕へ
5回戦(起家から、吉田(幸)・吉田(直)・高沢・中村)
総合2位の吉田(幸)の親番からスタート。
吉田(幸)の配牌がいい。少し手間取るが、13巡目にリーチ、2巡後にあっさりツモ。
リーチ ツモ ドラ
リーチタンヤオピンフツモの2,600オール。
この土壇場において非常に大きな2,600オール。この瞬間、吉田(幸)と中村のポイントは順位点込みでひっくり返っている。
まったくこれだから、決勝戦、特に最終戦は面白い。
これはもしかすると波乱が起きるのか?と思わせたが、更に予想を超えた事件が起きる。
東3局、親の高沢が8巡目リーチ。
リーチ ドラ
これに飛び込んだのが吉田(幸)。
高沢の切り出しは、丁寧に作られた七対子に見えない捨て牌。
トップを目指す吉田(幸)にしてみれば、こんな止めていたら優勝なんて出来ないだろう。
放銃やむなし。かわいそうな支部長・・・。
しかしその後、吉田(幸)がすかさず2,000・3,900をアガリ返し、場が平らになる。
さて仕切りなおしてまたトップ争いか、と思われたところで、一気に突き放したのが中村。
東4局、中村。
リーチ ツモ ドラ リーチピンフツモドラ2の4,000オール。
この状況であっさりこのアガリ。やはり中村強い。
この時点での点棒状況は、吉田(幸)26,400、吉田(直)23,300、高沢30,400、中村39,900
思わずノートに「決まり?」と記す。
南1局に吉田(幸)が4,000オールをアガリ、3本場まで積んで、中村の点棒に追いつこうかというところまで来たものの、最後は中村がきちんと自力でアガって、吉田(幸)の親を流す。
もうこうなると中村の浮きはほぼ確実。中村を浮かせたまま逆転するのは3者とも難しく、逆転の波乱は起きないまま5回戦が終了、中村の初優勝が決定した。
5回戦成績
中村+24.4P 高沢+11.6P 吉田(幸)▲18.0P 吉田(直)▲18.0P
最終成績
中村+64.4P 吉田(幸)+0.6P 吉田(直)▲19.8P 高沢 ▲45.2P
終わってみれば中村の圧勝である。
勝負所と見た時の踏み込みの深さ、そして最終戦で見せた他家を更に突き放す力強さ。
見事な優勝劇であった。本当に、おめでとう。
終了後、次の目標は?と聞くと、鳳凰位リーグと特昇リーグを頑張って、上のリーグに行きたい、と答えてくれた。
うむ、やっぱり草食系ではなくてロールキャベツだった。
これからも志を高く持ち、更に活躍する姿が見られることを祈っている。
決戦の熱気にあてられ、多少ふわふわした足取りで帰途についた私は、やっぱり初恋はまだ諦めないでおこう、と思った。
今日麻雀に選ばれたのは中村だったが、でも中村はもちろん、振られた3人だってきれいに輝いていた。
私だって、何度振られても、いつか振り向いてもらえる日がくるかもしれないじゃないか。
最後に、好き勝手書かさせて頂きましたが、ご覧になった皆様、特に登場人物の皆様、もし不快な表現等ありましたら大変申し訳ありません。
私の愚かさに免じて、ご容赦頂けると幸いです。
ではこれにて、閉幕。
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