グランプリ 決勝観戦記/第4期グランプリMAX2日目(最終日)観戦記
2014年04月04日
4回戦までのポイント
前田+20.1P 灘+13.3P 二階堂+8.4P 安村▲41.8P
初日の対局が終了し、トータルポイントは以上のようになっている。
1回戦目、好スタートを切った安村だが、4回戦を終えて、1人沈みの状態になってしまった。
初日の最終戦(4回戦)、南2局、安村には痛恨の放銃があった。
二階堂の第一打、自分の手格好。
親番をキープしたい気持ちと、放銃したくない気持ちが混在している、中途半端な手を打ってしまった安村は、この後フラフラになってしまいそうだ。(すでにフラフラになっていたのかも)
スタート時の新鮮な精神状態に戻すことができるなら良いが、トータルのマイナスと、残り4回戦という圧が重くのしかかる。
開き直って攻めても、傷は深まるだけだろう。
それは、開き直ったフリをしているだけだから。丁半博打に持ち込んで勝つパターンは稀だ。
また、そんな勝ち方にどんな意味がある?
3者は横一線。安村にとっては後がない2日目、第5回戦が始まった。
5回戦
10巡目に二階堂が先制リーチ。
前田がタンヤオ仕掛けで、テンパイを取ると、二階堂のハイテイツモだったはずの、が食い下がる。
東1局一本場
二階堂の打で前田が8,000のアガリ。
前田がマンズの一色手なら、トイツ落としの2枚目はかなりの危険信号だ。
(のチーで2枚目の打ち)
しかし、二階堂もドラトイツの勝負手。
このを遅らせる手段もあるが、先に打つ方を選択した。
東4局1本場
後がない安村は、粘り強く打ち、親番をキープすることに成功する。
続く2本場
??リーチ??ツモ??ドラ
3本場
??リーチ??ロン??ドラ
4局連続でアガリをものにした。
東4局4本場
二階堂のアガリによって、安村の親が落ちた。
ここで注目は、12巡目の灘のドラ打ちだ。
先手を取って仕掛けた灘、それに合わせる格好で動いた安村、すると二階堂からリーチがかかる。
ようやくテンパイが入った灘は、2者に対してドラを強打したのだ。
そして次局、南1局も続けて見ていただきたい。
9巡目に打ったを前田がポンしたとき、2枚目のを手出し。
そして、前巡に打ったを、下家の安村がポン。
ここで、持ってきたで打として迂回した。
結果は、前田が300・500のツモアガリとなったのだが、前局のドラ打ちとの緩急のつけ方が並ではない。
ちなみには安村にポンテンがかかる牌であった。
放銃を嫌う灘の麻雀は、一見ヒットアンドアウェイの戦法に映る。
しかし実際は、勝負所と見るや腹をくくって攻めまくる、かなりの攻撃麻雀なのだ。
灘の「インターネット麻雀ロン2」における生涯副露率は40.24%、アガリ率は27.12%(2014年3月現在)
仕掛ける麻雀は、このバランスが命なのである。
対称的な2局を平然とやってのけるには、長い年月を要するのではないだろうか。
南4局
流局間際にチーしてテンパイを取った二階堂。ツモ番のない灘からアガリ牌が出るが、これを見逃し。
これについて、解説陣の意見は割れた。
二階堂が灘から1,000をアガることは、3万点を超えている、トータル首位の前田にとって、嬉しいアガリとなるのは確かだ。(2人浮きの場合、順位点は+8P、+4P、▲4P、▲8P)
一般的なルール設定と比較すると、順位点が小さいのが日本プロ麻雀連盟Aルールの特徴だが、実際あなたが座っていたら、どうするだろうか?
4回戦までのポイント
前田+20.1P 灘+13.3P 二階堂+8.4P 安村▲41.8P
半荘1000回トータルの一片ならどちらを選択しても大差はない。しかし、決勝戦の舞台では、半荘8回で結果を出さなければならないのだから、二階堂の選択は間違ってはいないと思う。
このを親の安村がポンしてテンパイし、前田の1人ノーテンで流局となった。
続く1本場では、安村が3メンチャンのリーチ。助けた亀に殺される、という言葉が頭をよぎる場面であったが、安村、二階堂2人テンパイで流局。
そして、2本場では二階堂が3万点を超えるアガリ。
前田との浮き沈みをつくる形で、二階堂が暫定首位に立ち、5回戦が終了となった。
5回戦成績
安村+24.2P 二階堂+5.0P 前田▲7.7P 灘▲21.5P
5回戦終了時
二階堂+13.4P 前田+12.4P 灘▲8.2P 安村▲17.6P
仮に、二階堂がを見逃さずに出アガった場合は、前田とのトータルポイントの差が25.6Pとなっていた。
6回戦
東4局
灘のポンは6巡目、南家の安村は、1フーロの灘に対して、愚形リーチでぶつけた。
仕掛けた灘の手牌は、当時こうなっていた。
??ポン
安村のリーチ後、をポンしてカン待ち。一瞬の勝負ではあるが、躊躇いのないポンの手出しを見て、カン待ちは特定しずらいだろう。
その後、安村のアガリ牌であるを喰いとって、ピンポイントでオリ。
以外の危険牌でもオリていたと思うが、鮮やかな一局であった。
南1局
しばらく前田が起死回生の2,000・4,000。
??リーチ??ツモ??ドラ
続く南2局
二階堂がツモで即リーチ。
一見が山に眠っていそうな捨て牌だが、安村の手出しは、字牌の後の手出しだけに不安が残る。
もちろん捨て牌状況も込みでリーチをかけたのであろうが、おそらく灘の「仕掛けに対して」という意識が強かったのではないだろうか。
しかし、麻雀は先手の取り合いではない、状況に応じた的確な判断がものを言う競技だ。
確かに灘の仕掛けが本物かどうかは判別しずらいが、相手の動向に左右され、崩れてしまった典型的なパターン。結果、他家に攻め込まれて、灘に7,700放銃となってしまった。
南3局
失点を挽回したい二階堂の配牌。
??ドラ
この配牌が、7巡目に七対子の1シャンテンに。
この形から、をポン。この仕掛けで、、、と上家に喰い流してしまう。
ポンするべき手牌で間違いない。つまり、反省する必要のない場面ではあるが、ひとつの事実として記しておく。
南4局
6巡目にテンパイした安村。
(テンパイ時は1枚切れ、は場に見えていない)
ヤミテンに構え、手牌に関連しているをツモ切ると下家の前田がチー。さらにツモ切ったが親の灘にポンされるが、まだヤミテン。
二階堂のポンの後、ツモでソーズの3メンチャンに手変わりリーチをかけると、一発でをツモアガリ。
最下位スタートの安村が連勝を決めた。
6回戦成績
灘+17.9P 安村+8.9P 前田+3.5P 二階堂▲30.3P
6回戦終了時
前田+15.9P 灘+9.7P 安村▲8.7P 二階堂▲16.9P
7回戦
稀に見る接戦で、残り2回戦となった。
東1局、東2局と安村が本日の好調を思わせるアガリ。
??ツモ??ドラ
??ツモ??ドラ
東4局には、首位の前田からドラ2七対子を出アガリ。
??ロン??ドラ
南1局一本場
今にも打ちそうなだっただけに、ほっと胸を撫で下ろしたことだろう。
南4局
灘の仕掛けは6巡目である。
安村はドラの切りリーチを選択したが、これは対局終了後に、直接安村から聞いたコメントを使わせていただく。
「前田さんの手出しで、は山だと確信しました。ドラを3枚持っていることもあり、リスクも少ない。最終戦に向けて、ポイントを稼ぎたかったことが理由です」
12巡目にテンパイが入った前田から、5,200の出アガリ。
本日好調の安村が、トータル2位に躍り出た。
7回戦成績
安村+20.4P 灘+5.4P 二階堂▲10.3P 前田▲15.5P
7回戦終了時
灘+15.1P 安村+11.7P 前田+0.4P 二階堂▲27.2P
8回戦(最終戦)
規定により、最終戦の席順は決定されている。
安村→前田→二階堂→灘
(起家から、2位→3位→4位→1位の順)
東1局
8巡目に安村が先制リーチをかける。
すると、先手を取った安村の捨て牌に導かれる形で、前田にドラ単騎のテンパイが入る。
私の印象かもしれないが、前田はどんなときでもフォームを崩していない。
それは灘も同じだが、二階堂、安村にはまだふらつく場面があった。
与えられた場面によって、自身の経験に基づいた丁寧な選択を繰り返している。
ともかくここは勝負所と踏んだのであろう。
自然に導かれたテンパイ形でリーチをかけ、勝敗を天に任せた結果、のツモアガリとなった。
優勝が目前となった対局者は、極限状態となる。
張り詰めた空気の中では、冷静な判断力と同時に大胆な攻撃力が要求される。
東3局は、二階堂のドラ暗刻仕掛けに対して、安村が一通のテンパイでドラ切りリーチをかけると、二階堂は大ミンカンで応戦。
やはり、今日は安村に風が吹いているのか?このアガリでトータルトップまで上り詰めた。
南1局1本場
今局は前田の手順に、特に取り上げる部分があるわけではないが、リーチを受けて、安村が一発目に打ったが強い。トップ目に立った瞬間、逃げ腰になってしまうのが人の性だが、安村にその心配はないようだ。
本日2度目のドラ単騎ツモで前田が再びトップに立った。
南2局の前田の親は、仕掛けた灘が安村に2,600放銃。
南3局
安村はこのテンパイが入って打としてヤミテンに構える。
そして、次巡持ってきたでテンパイ外し。
再びを引くがツモ切り、もう一度持ってきたとを入れ替えた。
そして、次に持ってきた牌は・・・
「あれはペンで勝負をかけても良かった」
と安村は語る。
思考放棄した一か八かのリーチを嫌う気持ちもわかるが、私もここはリーチだと思う。
磐石に足場を踏み固めている余裕などない。
ベスト8のレポートで、瀬戸熊直樹がこう記している。
若い安村にアドバイスを1つ贈りたい。
解説中もコメントで「熊、激辛」などと言われたが、安村は非常に期待している若手の1人である。
もし安村がワンステップ上を目指すなら、足りないものは「覚悟」である。
一次予選から勝ち上がったその戦いぶりを観ていると、状況判断、打牌選択はどれもクレバーで好感が持てる。でも競った時の打牌は全て「保留」しているチョイスが目立っていた。
「負けられない戦い」だからこそ、そこに「覚悟をもった、魂を込めた打牌」を今後見せてもらいたい。
そういう戦いが必ず道を開く。せっかく良い物を持っているのだから。
そして若さは、その「勇気」が許されるのだから。
二階堂は親番で2本場まで粘ったが、灘の仕掛けによって親落ち。
灘は、トータルポイントでトップ者が北家スタートになるという規定の利点を活かし、自由に手を進め、場を進行させる。
そしてオーラス。
南4局
珍しく、ツモる瞬間に迷いがあった、灘の5巡目のリーチは、リーチをかけた時点で高目が4枚生きていた。灘が引き当てたのはたった1枚しかない安目の1,300オール。
7回戦終了時のポイント
灘+15.1P 安村+11.7P 前田+0.4P 二階堂▲27.2P
南4局1本場
前田、安村、アガったほうが第4期グランプリの栄冠に輝く。
前田がこのにチーテンをかけると、すぐに安村にが入り、両者テンパイが入る。
安村からアガれないが打たれた次巡、二階堂からがこぼれて前田の優勝が決まった。
この打ちのように、優勝の可能性がないものが勝負を決めてしまう放銃は避けるべきと、されている。
これまで、同じような放銃が決勝戦でしばしば見られたが、話題にすることは避けられてきた。
しかし、ほとんど全てのタイトル戦決勝が生中継されるようになった今、触れないわけにはいくまい。
もし、二階堂がを打たなかったら、安村のアガリがあり、優勝となっていたかもしれない。
しかし、前田の手役は特定できず、まして、テンパイが入っているかどうかすら判別不能であった。
もし、前田がノーテンなのに、ここから二階堂がオリ始めたら、最終的に手が詰まってしまう可能性も高くなる。
それでは、どう打てばいいのか?
規則を作ってくれという意見も耳にするが、そんなものは作りようがない。
基本的には打牌は個人の自由で、どう打てば綺麗な対局なのか、と全員が考えて打つ以外にはない。
すでに勝負がついている、敗けている者ほど、アンテナを張り巡らせて打つべきなのである。
「2人に勝負させろ」やら「マジ勘弁してくれ」など、辛辣なコメントも流れたが、この場面での二階堂の放銃を全否定することはできない。
自分なりにベストな打牌を選択した「結果」がこの牌譜であるなら、全く問題ない。
対局が終わった瞬間は、呆けたような、なんともいえない表情でいた安村だが、打ち上げの席では真摯な態度で「反省点が山ほどあるので、最後はそれほど問題じゃないです」と語った。
安村の言葉通り、最後の場面だけを切り取って考えるのは素人の考えだ。
実際、対局終了後も、安村は残った山に手を触れなかった。
喉から手が出るほど欲しいタイトルだったはずだが、愚痴ひとつこぼさずに、次の勝負を見据えているようだった。
表彰式の様子 |
優勝者インタビューの様子 |
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