第9期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 最終章:ダンプ大橋【威風堂堂】 古橋 崇志
2019年05月24日
ダンプ大橋
2009年には第34期の王位を獲得。そして翌々年の第27期A2リーグで優勝し、若干28歳でA1リーガーとなる。
20代でのG1タイトル、そしてA1リーグ入りと言う実績はプロ連盟の最年少記録であろう。
その立派な体格から「土俵際の魔術師」と呼ばれており、持ち味は追い込まれた時の勝負強さ。
大関と呼ぶには十分な実績の男は、横綱となるべく2つ目のG1タイトルに挑む。
1回戦東3局、序盤戦に本来の力を発揮できないのもダンプの特徴である。
藤崎の先制リーチを受けて二向聴。カンのカンチャンターツを外している最中であった。
一番不要なのはであるが、場に3枚切れているだけにロンと言われれば打点はありそうだ。
現物は、、と十分にあるが、ダンプは真っ直ぐにを撃ち抜く。
これに藤崎からロンの声。打点も予想通りドラ2の5,200。
この放銃から立ち直る事無く、1回戦は沈みの3着。
2回戦でも苦しい戦いは続く。
東1局ドラ。
藤崎の混一仕掛けを受けながらもカンテンパイ。
までは押したものの、次巡のツモで安全策の打とする。
終局間際山田の切ったに藤崎がポン。打ち出されたのはであった。
打としていれば藤崎のチーが入りそうなのでこの結果は無いが、ダンプの心境やいかに。
じりじりと点数を減らされ迎えた東4局1本場。
2巡目にを引いて以下の形。
手なりで行くのなら打となりそうだが、ダンプはの対子落としを選択。
マンズの一気通貫と混一を狙った重厚な一打である。
そして7巡目にドラを重ねて選択が。
カンが絶好の受けに見えるだけに切りや切りも十分に考えられる、むしろそちらがマジョリティーと言えるであろう。
しかしダンプの選択は打。最高打点を狙ってマンズに寄せていく。
カンのメンツを捕える事には失敗したものの、を引き入れハネ満のテンパイ。
藤崎からを打ち取り12,000の和了りとなった。
ダンプらしい高打点の狙いを成就させ素晴らしい一局となったが、どうも波に乗り切れない。
藤崎のリーチ、親の山田のの暗槓を受けての局面。
柴田から打たれたをチー。
しかしこのテンパイ打牌のが藤崎のドラ暗刻に捕まる。
柴田も無筋を押しているので3人テンパイでもおかしくなく、テンパイを取りに行きたい局面だろう。
藤崎も2打目がなだけには通りそうに見えるが、結果痛恨の放銃でこの半荘原点割れの3着となってしまう。
3回戦もダンプに楽な展開は訪れない。
南2局
南3局
連続でハネ満級のリーチをかけるも和了りには至らず。
オーラスも2件リーチに挟まれ苦しい中、三色ドラ1のテンパイが入る。
和了りは厳しいかと思われたが、現物が無くなった藤崎から親の中筋であるが打ち出される。
忍者藤崎のお株を奪うヤミテンで、浮きの2着に浮上する起死回生の和了りだ。
4回戦。
3回戦オーラスの和了りで波に乗りたいダンプであったが、まだ先手が取れない。
一人沈みで迎えた東3局。親の柴田から先制リーチが入り、藤崎から2枚目のが打たれる。
苦しい形であるがをポンして押し返す。
ダンプの気迫に応えるように3枚目のを引き入れ、テンパイが入っている山田に4枚目のを捕ませた。
3,900の和了りで一息つくのも束の間、柴田の連続攻撃で点棒が削られていく。
親番も落ちて後がない南3局。
何と第一ツモでマンズが12枚。3年に一度あるかないかの超絶配牌である。
このチャンスをしっかりと活かし満貫のツモ和了り。
そしてオーラスにはきっちりと浮きに回るツモ和了りで2着確保。
初日は▲5.6と苦しいながらも何とか食らいつく。
折返しを過ぎた5回戦。ここでダンプがついに大爆発する。
27,000点持ちで迎えた東4局の親番。
まずは三色確定リーチで一人テンパイ。
1本場。
高目三色リーチも安目出和了り2,900。
2本場、ついに決まり手が。
メンホンイーペーコーの12,000。
3本場。
高目ツモ6,000オールのリーチも一人テンパイ。
ここまで高打点を見せられると他3者もダンプの安全牌を絶対に確保したいだろう。
麻雀に「流れ」があるとすれば、今のダンプはまさに最高の流れである。
4本場もテンパイで繋ぎ、5本場はチャンタ三色の5,800。
6本場はテンパイ連荘、そして極めつけは7本場。
テンパイを入れていたダンプは12巡目に絶好の変化。
打点を狙うのであれば切りであるが、は藤崎の当たり牌だ。
しかしここは受け入れの広さを選んだダンプ。
放銃を回避したと言うことはツモ和了るのは必然か。
この親番で5万点を加点したダンプは一気にトータル首位に躍り出るが、ここで守りに入らないのがダンプの強さだ。
6回戦東1局。
山田の親リーチを受けるも無筋のを切り飛ばしのツモ和了り。
東2局では役ありテンパイも果敢にリーチ。
ダンプの気合に応えるように和了り牌が押し寄せてくる。
7回戦東1局1本場。
柴田の親リーチに対しても怯むこと無く押し返す。
ここも当然のように和了りきり局を進めていく。
6回戦はトップ、7回戦では3着となるが、ポイントを守る事無くとにかく攻め続ける。
そして迎えた最終戦。あと1回戦凌げばダンプの優勝である。
ポイントは一番近い山田と60差。これは公式ルールではかなり有利な点差である。
しかし東1局、山田が6本場まで積み上げ何と60ポイントを早くも逆転。
余裕が無くなったダンプにとって本当の戦いが始まる。
東3局1本場。
供託も2本あるだけに軽く和了って親番を迎えたい局面だ。
しかしダンプはここで打と打点に重点を置いた選択とする。
同巡北家の柴田から先制リーチが入る。
そしてダンプはツモ、を切って追っかけリーチを選択する。
一見普通の判断にも思えるが、4着目の柴田のリーチである。
打点は伴っている事も大いに想像できるし、は5枚見えで柴田には厳しい筋だ。
そして何よりが良い待ちと言う根拠が無さすぎる。
実際柴田はドラドラの手牌で、ダンプの待ちは山に1枚しか残っていなかった。
ただ、私の主観だがここでリーチと行けない者は優勝できない気がする。
この精神力の強さ、さすが決勝の勝ち方を知っている男と言うところか。
親の藤崎の追っかけリーチを受けるも8枚目のをツモ和了り。
500・1,000だが山田を再逆転する価値ある和了りとなった。
東4局には山田が柴田に7,700放銃、南1局にはダンプが藤崎に8,000放銃と両者点数を減らし、迎えたオーラス。
オーラスを迎えた時点では山田が数ポイントリード。
ダンプは連荘が必須だ。
配牌はダンプ三向聴、山田は二向聴。若干山田に分があったが先制テンパイはダンプ。
ドラを切って当然のリーチ。
山田も一向聴だがこの形からは向かえず、ダンプの一人テンパイ。
そして運命の1本場。
山田の配牌は厳しく、ダンプの配牌はドラドラ!
ダンプはこれを和了りきれば次局ノーテンにする事ができる。
しかしダンプが4巡ツモ切りを続けている間に、山田が続々と有効牌を引き入れる。
ダンプはカンチャン・リャンカンの二向聴に対し、山田はリャンメン2つの一向聴。
これは勝負ありかと思われた・・・
・・が、何とダンプがと3連続で引き入れ先制リーチ。
東3局に力強く引き和了った待ち。偶然かも知れないが優勝を決めたのも、このであった。
追いすがる山田を退け、ダンプの頭上に栄冠は輝いた。
今期の麻雀グランプリMAX、ダンプは1次予選からの見事な優勝となった。私も同じ1次予選から出場し圧倒的敗退。同世代と言うこともあり正直とても悔しいし、自分が情けなくも思う。
しかしダンプは優勝に相応しい威風堂々とした麻雀であったし、素直に「おめでとう」と言いたい。
この優勝で我々世代では圧倒的な実績となった。
次の目標はA1への復帰、そして鳳凰位だ。
その日が訪れるのも近いのかも知れない。と一瞬思ったが気の所為かも知れない。
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