グランプリ 決勝観戦記

第9期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 最終章:ダンプ大橋【威風堂堂】 古橋 崇志

ダンプ大橋

 

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2009年には第34期の王位を獲得。そして翌々年の第27期A2リーグで優勝し、若干28歳でA1リーガーとなる。
20代でのG1タイトル、そしてA1リーグ入りと言う実績はプロ連盟の最年少記録であろう。
その立派な体格から「土俵際の魔術師」と呼ばれており、持ち味は追い込まれた時の勝負強さ。
大関と呼ぶには十分な実績の男は、横綱となるべく2つ目のG1タイトルに挑む。

1回戦東3局、序盤戦に本来の力を発揮できないのもダンプの特徴である。

 

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藤崎の先制リーチを受けて二向聴。カン二筒のカンチャンターツを外している最中であった。
一番不要なのは一筒であるが、場に3枚切れているだけにロンと言われれば打点はありそうだ。
現物は七万八索八筒と十分にあるが、ダンプは真っ直ぐに一筒を撃ち抜く。
これに藤崎からロンの声。打点も予想通りドラ2の5,200。
この放銃から立ち直る事無く、1回戦は沈みの3着。

2回戦でも苦しい戦いは続く。
東1局ドラ五索

 

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藤崎の混一仕掛けを受けながらもカン二索テンパイ。
七索までは押したものの、次巡のツモ一索で安全策の打八索とする。

 

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終局間際山田の切った東に藤崎がポン。打ち出されたのは二索であった。
一索としていれば藤崎のチーが入りそうなのでこの結果は無いが、ダンプの心境やいかに。

じりじりと点数を減らされ迎えた東4局1本場。
2巡目に九索を引いて以下の形。

 

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手なりで行くのなら打東となりそうだが、ダンプは九索の対子落としを選択。
マンズの一気通貫と混一を狙った重厚な一打である。

そして7巡目にドラを重ねて選択が。

 

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カン三索が絶好の受けに見えるだけに一万切りや八万切りも十分に考えられる、むしろそちらがマジョリティーと言えるであろう。
しかしダンプの選択は打四索。最高打点を狙ってマンズに寄せていく。

カン三索のメンツを捕える事には失敗したものの、四万を引き入れハネ満のテンパイ。

 

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藤崎から二万を打ち取り12,000の和了りとなった。
ダンプらしい高打点の狙いを成就させ素晴らしい一局となったが、どうも波に乗り切れない。

 

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藤崎のリーチ、親の山田の発の暗槓を受けての局面。
柴田から打たれた二索をチー。

 

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しかしこのテンパイ打牌の八筒が藤崎のドラ暗刻に捕まる。
柴田も無筋を押しているので3人テンパイでもおかしくなく、テンパイを取りに行きたい局面だろう。
藤崎も2打目が七筒なだけに八筒は通りそうに見えるが、結果痛恨の放銃でこの半荘原点割れの3着となってしまう。

3回戦もダンプに楽な展開は訪れない。
南2局

 

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南3局

 

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連続でハネ満級のリーチをかけるも和了りには至らず。

オーラスも2件リーチに挟まれ苦しい中、三色ドラ1のテンパイが入る。
和了りは厳しいかと思われたが、現物が無くなった藤崎から親の中筋である五筒が打ち出される。

 

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忍者藤崎のお株を奪うヤミテンで、浮きの2着に浮上する起死回生の和了りだ。

4回戦。
3回戦オーラスの和了りで波に乗りたいダンプであったが、まだ先手が取れない。
一人沈みで迎えた東3局。親の柴田から先制リーチが入り、藤崎から2枚目の西が打たれる。

 

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苦しい形であるが西をポンして押し返す。

ダンプの気迫に応えるように3枚目の三万を引き入れ、テンパイが入っている山田に4枚目の六万を捕ませた。

 

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3,900の和了りで一息つくのも束の間、柴田の連続攻撃で点棒が削られていく。

親番も落ちて後がない南3局。

 

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何と第一ツモでマンズが12枚。3年に一度あるかないかの超絶配牌である。
このチャンスをしっかりと活かし満貫のツモ和了り。

 

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そしてオーラスにはきっちりと浮きに回るツモ和了りで2着確保。

 

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初日は▲5.6と苦しいながらも何とか食らいつく。

折返しを過ぎた5回戦。ここでダンプがついに大爆発する。
27,000点持ちで迎えた東4局の親番。

 

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まずは三色確定リーチで一人テンパイ。

1本場。

 

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高目三色リーチも安目出和了り2,900。

2本場、ついに決まり手が。

 

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メンホンイーペーコーの12,000。

3本場。

 

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高目ツモ6,000オールのリーチも一人テンパイ。

ここまで高打点を見せられると他3者もダンプの安全牌を絶対に確保したいだろう。
麻雀に「流れ」があるとすれば、今のダンプはまさに最高の流れである。

4本場もテンパイで繋ぎ、5本場は発チャンタ三色の5,800。

 

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6本場はテンパイ連荘、そして極めつけは7本場。
テンパイを入れていたダンプは12巡目に絶好の変化。

 

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打点を狙うのであれば八万切りであるが、八万は藤崎の当たり牌だ。
しかしここは受け入れの広さを選んだダンプ。
放銃を回避したと言うことはツモ和了るのは必然か。

 

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この親番で5万点を加点したダンプは一気にトータル首位に躍り出るが、ここで守りに入らないのがダンプの強さだ。

6回戦東1局。
山田の親リーチを受けるも無筋の六筒を切り飛ばし五万のツモ和了り。

 

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東2局では役ありテンパイも果敢にリーチ。

 

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ダンプの気合に応えるように和了り牌が押し寄せてくる。

7回戦東1局1本場。
柴田の親リーチに対しても怯むこと無く押し返す。

 

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ここも当然のように和了りきり局を進めていく。

6回戦はトップ、7回戦では3着となるが、ポイントを守る事無くとにかく攻め続ける。

そして迎えた最終戦。あと1回戦凌げばダンプの優勝である。
ポイントは一番近い山田と60差。これは公式ルールではかなり有利な点差である。

しかし東1局、山田が6本場まで積み上げ何と60ポイントを早くも逆転。
余裕が無くなったダンプにとって本当の戦いが始まる。

東3局1本場。
供託も2本あるだけに軽く和了って親番を迎えたい局面だ。

 

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しかしダンプはここで打四万と打点に重点を置いた選択とする。

同巡北家の柴田から先制リーチが入る。

 

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そしてダンプはツモ四索一万を切って追っかけリーチを選択する。
一見普通の判断にも思えるが、4着目の柴田のリーチである。
打点は伴っている事も大いに想像できるし、一万四万は5枚見えで柴田には厳しい筋だ。
そして何より二索五索が良い待ちと言う根拠が無さすぎる。
実際柴田はドラドラの手牌で、ダンプの待ちは山に1枚しか残っていなかった。
ただ、私の主観だがここでリーチと行けない者は優勝できない気がする。
この精神力の強さ、さすが決勝の勝ち方を知っている男と言うところか。

 

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親の藤崎の追っかけリーチを受けるも8枚目の五索をツモ和了り。
500・1,000だが山田を再逆転する価値ある和了りとなった。

東4局には山田が柴田に7,700放銃、南1局にはダンプが藤崎に8,000放銃と両者点数を減らし、迎えたオーラス。

オーラスを迎えた時点では山田が数ポイントリード。
ダンプは連荘が必須だ。

 

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配牌はダンプ三向聴、山田は二向聴。若干山田に分があったが先制テンパイはダンプ。
ドラを切って当然のリーチ。

 

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山田も一向聴だがこの形からは向かえず、ダンプの一人テンパイ。

そして運命の1本場。
山田の配牌は厳しく、ダンプの配牌はドラドラ!

 

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ダンプはこれを和了りきれば次局ノーテンにする事ができる。

しかしダンプが4巡ツモ切りを続けている間に、山田が続々と有効牌を引き入れる。

 

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ダンプはカンチャン・リャンカンの二向聴に対し、山田はリャンメン2つの一向聴。
これは勝負ありかと思われた・・・

 

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・・が、何とダンプが二筒一筒六筒と3連続で引き入れ先制リーチ。

東3局に力強く引き和了った五索待ち。偶然かも知れないが優勝を決めたのも、この五索であった。

 

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追いすがる山田を退け、ダンプの頭上に栄冠は輝いた。

今期の麻雀グランプリMAX、ダンプは1次予選からの見事な優勝となった。私も同じ1次予選から出場し圧倒的敗退。同世代と言うこともあり正直とても悔しいし、自分が情けなくも思う。
しかしダンプは優勝に相応しい威風堂々とした麻雀であったし、素直に「おめでとう」と言いたい。
この優勝で我々世代では圧倒的な実績となった。
次の目標はA1への復帰、そして鳳凰位だ。
その日が訪れるのも近いのかも知れない。と一瞬思ったが気の所為かも知れない。

 

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