第6期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 最終日 紺野 真太郎
2016年04月15日
前半4回戦を終了してのポイントは以下の通り。
4回戦終了時
灘+26.2P 和久津▲6.0P 柴田▲9.3P HIRO▲10.9P
灘の1人浮きの形だが、現状最下位のHIROでさえ、まだ37.1P差と勝負の行方は展開次第でどうとでも転がる。
灘が初日のような自在の立ち回りで逃げ切ってしまうのか。爆発力を持つ3者が灘を捕まえるのか。残り4回も目を離せない。
5回戦 起親から 灘 和久津 柴田 HIRO
開局の手がすんなりまとまるようであれば士気も上がるというもの。
そういった意味で注目の東1局。すんなりとまとまったのは和久津であった。
ドラ
8巡目にこの形でリーチ。高目ツモで跳満。ツモるようであればまだ先は長いとはいえ、トータルポイントで灘を逆転する。
しかし、空振りしてしまうと、今日も苦しい展開なのかと疑心暗鬼に陥ることも。
高目のは最後まで山に残ってはいたが、和久津の手元にはやってこなかった。親の灘も粘り2人テンパイ。
続く1本場、親の灘は早々に仕掛け5巡目にはこの形。
ポン ポン ドラ
対する和久津は6巡目、
ツモ ドラ
「とりあえずは辺りか・・」そんな予想を覆す打。真っ向から戦うことを決めた。
全8回戦のまだ中盤と考えればなかなか打てる牌ではない。
ただ、このままを抱えていたとしても、灘に好きに打たれてしまうのも事実である。和久津はここを勝負所と捉えて切り込むことを選択した。
灘は8巡目にを引きテンパイ。和久津はを引いて打。
ドラ
にくっつかない限り和久津の放銃となってしまいそうだが、灘が手変わり。
ポン ポン ドラ
は通るようになったが、今度はがピンチに。だが和久津の気が上回ったのかを引き放銃を回避し、ツモり三暗刻テンパイ。
流局間近にテンパイを入れていたHIROからでアガリ1,300。点数は安いが戦う姿勢を貫き通した。
東3局、西家の灘、4巡目テンパイ。
ドラ
リャンメン待ちとはいえ、ドラ表示牌にもで待ちはそこまで良くない。変化を待ってのヤミテンか。
だが、あっさりを引き1,000・2,000。このアガリは灘本人にも、周り3者にも好調を印象付けるには十分過ぎるか。
こうなってくると周りは灘に翻弄される。東4局は親の第一打を仕掛け1,000、南1局の親番では、じっくり手を育てこのテンパイ。
ドラ
ツモで4,000オールと、この5回戦の勝負を決めてしまった。
灘を止めることは出来ないのか。その差は更に広がった。
5回戦終了
灘+27.6P 和久津▲2.7P HIRO▲8.5P 柴田▲19.4P
5回戦トータル
灘+53.8P 和久津▲8.7P HIRO▲19.4P 柴田▲28.7P
6回戦 起親から 灘 HIRO 柴田 和久津
少しでもトップを走る灘との点差を詰めたかった3者であるが、反対に突き放されてしまった。
2番手和久津でもその差60ポイント強。残り3回ここで灘がさらに離すようだとマジックが点灯する。
東1局、親の灘、9巡目にドラ単騎の先制リーチ。プレッシャーを与える。
ドラ
この時の北家・和久津の手牌。
ドラ
大物手の予感も感じさせる手牌だが、肝心のは灘のアタリ牌。進め方によっては放銃まである。
直後にを暗刻にして打。理想的にも見えるが、が余る可能性が高くなったとも言える。
HIROも四暗刻まで見える手牌が入っており、1枚切れのを切ってきた。和久津は動いた。
ポン ドラ
和久津がこの手を捌き手として動いたのならばここで勝負は決していたであろう。
これ以上離されたくないと動かずにいたとしても、結果を先延ばしにするだけで、波乱は起きずに終わっていたこもしれない。
和久津はを鳴き、通っていないを河に置いた。
ほんの少しだが、風向きが変わった気がした。和久津は自らの勝負感覚で切り開きに行った。
先にが暗刻になった。が、迷いはない。HIROが通していたこともあろうが、を落とす。16巡目ついにを引き入れた。1つ間違えばいつ放銃になってもおかしくなかったをついに重ねた。
ポン ドラ
灘がをツモ切ったのはその直後だった。16,000の直撃。62.5Pあった差は一気に8.5P差にまで縮まった。
東2局、和久津の配牌。
ドラ
特に良くも悪くもない配牌。567の三色が少し見える程度か。しかし、この手が7巡目には
ドラ
ここまで育つ。次巡をチー。もちろん一気通貫のみの捌き手になどしない。ソウズを落として一気に灘を捕らえにいった。
更にを引き入れテンパイ。、、、、待ちとし、をツモ。
チー ドラ
2,000・4,000。たった2局で逆転してしまった。
観戦記者は立会人と共に対局室にいるので、何があろうが声も出せないし、アクションも起こせないが、外で見ていたら「うおぉぉぉォー!」と声をあげていたことだろう。それぐらい見事で鮮やかな逆転劇であった。
東3局、逆転したと言っても僅かに上回っただけの和久津。並んだ勢いのまま一気に突き放したいところ。
手牌も呼応し、5巡目にドラを引き、早くも1シャンテン。
ドラ
5巡目にこの形ならもらったも同然か。
だが、この広い1シャンテンがここから全く入らなくなる。
何巡ツモ切りしたであろうか。その間にも親の柴田、仕掛けたHIROに手出しが入り、追いつき追い越されていく。先に手を開いたのは親の柴田であった。
ツモ ドラ
1,300オール。柴田が浮きに回った為、順位点の差でまた灘がトータルトップに返り咲く。
東3局1本場は、HIROが5,200を柴田よりアガリ、今度はHIROの反撃開始。
続く東4局には7巡目に先制リーチ。
リーチ ドラ
HIROのリーチを見たのは久しぶりな気がする。それだけ苦しい戦いを強いられているということであろう。
だがここは、すぐにツモり1,300・2,600。HIROもこれ以上離されるわけにはいかないのだ。
南1局、追いつかれたといっても、それがどうかしたのかといった風情で淡々と手を進めて行く親番の灘。
ツモ ドラ
こんな形になっても、落ち着いてに手をかけ落としていく。そして7巡目、狙い通りに手役を仕上げリーチ。
リーチ
8巡目、柴田にもテンパイが入る。ツモり三暗刻に受けリーチ。追いかけリーチだけに多少のリスクはあるが、灘が沈んでいるという状況は柴田にとってもチャンスであり、勝負を賭けた。
打
だが、無情にも柴田のツモはアガリ逃し、そして灘の高目のであった。
南1局1本場、追いついたものをまた離されるわけにはいかない和久津、を仕掛け、6巡目テンパイ。
ポン ドラ
対する親の灘、和久津の当たり牌を使い切りリーチ。
リーチ ドラ
リーチを受けた和久津、怯まずに押すが、当たり牌を使い切られて追いつかれては分が悪い。灘が五をツモり2,600オール。トータルポイントを再び突き放す。
南4局、厳しい展開の中置かれていた柴田が最後に意地を見せた。
ドラ
難しい手を七対子にまとめてリーチを打ち、流局かと思われた最後のツモでツモり3000・6000。もう一度灘にラスを押し付け返した。
6回戦終了
和久津+20.5P HIRO▲2.3P 柴田▲5.7P 灘▲12.5P
6回戦トータル
灘+41.3P 和久津+11.8P HIRO▲21.7P 柴田▲34.4P
7回戦 起親から HIRO 灘 和久津 柴田
ここまでは灘VS和久津がバトルの中心であった。HIROと柴田は展開的に受けに回らされることが多く、耐える場面が多かった。
ここまで圏外にならないよう必死で繋いできたが、残りは2回戦。自ら勝負を仕掛けていかなければいけない時間帯となった。
東1局、親のHIRO、終盤15巡目であるが、リーチに行く。
リーチ ドラ
はすでに4枚切られており、手変わりや流局を待っても良さそうな手牌だが、灘との差は63ポイント。もう親番を流す余裕はなく、灘の仕掛けが入っていることも終盤でもリーチを打たせた理由であろう。
一方の柴田。ドラ2のチャンス手。こちらも手変わりや流局を待つ時間的余裕はない。カンで追いかけリーチ。
リーチ
もも残り1枚ずつであったが、柴田がを掴みHIROの3,900。続く1本場もHIROが2,000を和久津からアガリ連荘に成功。2本場を迎える。
東1局2本場4巡目、HIROはドラ表示牌のをチー。
チー ドラ 打
メンゼンではスピードが乏しい手牌。それでもドラ表示牌でなければ動かなかったであろうが、この動きが裏目に出る。
柴田の11巡目、手牌を仕上げリーチ。
リーチ
HIROは3フーロして牽制していたが、勝負手の入った柴田は真っすぐ打ち抜き、をツモり3,000・6,000。更に東2局にもリーチ。
リーチ ドラ
これも力強くをツモり2,000・3,900。親は灘。親被りに成功する。
このまま柴田にだけ走らせるわけにはいかないHIRO。東3局反撃に出る。9巡目にリーチ。
リーチ ドラ
トータル2番手とはいえ、このままズルズルとポイントを削られると苦しくなる親の和久津。灘が沈んでいるこの場面はチャンスでもある。
HIROのリーチに対して、、と無スジを通しまくる。17巡目テンパイ。打った牌は4つ目の無スジであった。
和久津、痛恨の7,700放銃。だが、これくらいでは諦める和久津ではない。次局、4巡目にリーチ。
リーチ ドラ
これを安目ながらツモり1,300・2,600。踏みとどまり食らいつく。
続く南1局、和久津は4巡目、を暗刻にして打、方針を決めた。
ツモ 打 ドラ
灘との差は約30ポイント。2回戦で決められた四暗刻を決め返せば、戴冠に大きく近づく。
次巡には、ドラを重ねて1シャンテン。ただ、当然のことではあるが、ここからが難しい。
親のHIROはこの時まだ、七対子3シャンテンであったが、1つ、1つ重ねて先にテンパイ。そしてリーチ。
リーチ
こんな時は不思議と勝負を分ける牌がやってくる。、、であれば和久津はツモるか、そうでなくてもHIROから直撃していたように思う。
ただこの時はそれがであった・・
南1局2本場、またもやHIROのリーチ。
リーチ ドラ
直後に和久津の元にやってきたのは、またもやHIROの当たり牌の。
ツモ ドラ
安全牌は無い。引くにも引けない。それでもここは耐えて欲しかったが・・をツモ切りし7,700の放銃となった。
南1局3本場は柴田が3,000・6,000。ドラ入りの七対子をノーミスで決めた。
リーチ ツモ ドラ
この7回戦、HIROと柴田がついに爆発。両者とも灘との差を20ポイント強まで詰め寄り、最終戦を迎えることとなった。
7回戦終了
柴田+31.9P HIRO+21.6P 灘▲18.1P 和久津▲36.4P
7回戦トータル
灘+23.2P HIRO▲0.1P 柴田▲2.5P 和久津▲24.6P
最終戦 起親から HIRO 柴田 和久津 灘
ポイント差を考えると灘が原点をキープ出来るかが焦点となるが、東2局、和久津からリーチが入る。
リーチ ドラ
この時灘は既にテンパイ。
チー チー ドラ
灘の仕掛けが入っているこの場面、和久津からのリーチは打点も待ちも悪くないことは予想できる。普通に考えれば灘は放銃出来ない場面。
灘のツモは。安全牌は全くない。灘の選択はツモ切り。ただ、この選択を考えて導いたのではなく、さして時間もかけずに感覚で導いた。
そして、和久津にを掴ませ1,000。ピンチを切り抜けた。いや、捻じ伏せたと言うほうが正しい気がする。
東3局、HIRO、灘の仕掛けに合わせ、動いてテンパイを入れる。
チー ドラ
でもいいから、アガリが欲しい場面。HIROがツモったのは望外のだった。2,000・3,900。ついに灘に2.6P差まで詰め寄った。
HIROはこの決勝戦この最終戦を迎えるまで1回もトップが無かった。そんな中で勝負圏に踏みとどまり、あと一歩のところまで迫った。このまま一気に捕まえることが出来るか・・
東4局1本場、親の灘2巡目テンパイ。だが、ここは様子見なのか、ヤミテンに構えた。
ドラ
2巡ほど様子を見た後リーチを決行。灘がリーチをかけた以上チャンスとHIROも押す。が、灘はこのを僅か2巡でツモアガった。1,000オール。
これで灘は原点を超えた為、点数以上に大きいアガリとなった。
続く2本場、柴田からリーチ。
ドラ
灘はこの直後カンを引き入れ1シャンテン。
ツモ
浮きにも回ったので安全に行く手もあるだろうが、灘は生牌のを打つ。灘はここで引けばどんな結末になるか解っている。僅かな浮きを守っていても、それは隙となるだけという事も。勝負感はそれぞれだが、灘の磨き抜かれた勝負感はここを攻める事を選んだ。
カンを引き入れテンパイしHIROから2,000。浮くどころかこの半荘のトップに躍り出た。
南1局、HIRO最後の親。ここで踏ん張りアガリを重ねればまだまだわからない。が、しかし・・
ポン ドラ ツモ
これも僅か5巡。最後までカミソリの切れ味は衰えなかった。この局で事実上の決着を見たのであった。
最終戦終了
灘+16.6P 柴田▲2.1P 和久津▲5.1P HIRO▲10.4P
最終成績
灘+39.8P 柴田▲4.6P HIRO▲10.P5 和久津▲29.7P
灘はこれで79歳という最高齢タイトル戴冠記録を更新。また1つ伝説が加わった。
しかし、灘本人からは年齢を感じさせることはほとんどない。一度卓につけば、まだまだ現役の勝負師の顔を見せる。
灘は今回の決勝戦、全く気負いが無かったようにも見えた。
昭和という激動の時代を戦い抜いてきた事を考えれば、気負う必要も無かったのだろう。
麻雀プロ灘麻太郎を存分に見せてくれた決勝戦であった。
カテゴリ:グランプリ 決勝観戦記