第8期麻雀グランプリMAX ベスト8レポート 日吉 辰哉
2018年04月23日
日本プロ麻雀連盟ではいくつかのタイトル戦が開催されている。
春のマスターズ。夏の十段位戦。秋の王位戦。冬の鳳凰位決定戦。
更には女流桜花、プロクイーン、WRCリーグ、新人王戦、地方プロリーグ。そして今年度は第2回WRC世界大会がラスベガスにて開催された。
これらの年間を通したタイトル戦で優秀な成績を収めたものだけに出場権利が与えられる年度末の祭典、麻雀グランプリMAX。
今期で第8期を迎え、これまでの優勝者には歴代の猛者の名が並ぶ。
そんな第8期麻雀グランプリMAXベスト8の模様を私、日吉辰哉がお届けしてまいります。
第8期麻雀グランプリMAXベスト8A卓
1回戦【起家から ともたけ、HIRO柴田、勝又、前原】
日本プロ麻雀連盟の最高峰、鳳凰位。
その鳳凰位決定戦を連覇で飾った前原雄大が1回戦から大爆発。
北家スタートの前原は開局から2局連続のリーチ。しかし東1局は勝又の1,300・2,600、東2局は柴田の4,000オール。大物手で逆襲に合い、いずれも不発。
しかし前原の攻撃の手は一切緩まない。
東2局1本場では僅か4巡目に以下のリーチ。
リーチ
これをともたけから打ち取り。5,200は5,500。
東3局ではともたけの先制リーチに七対子ドラタンキで追っかけリーチも流局。
そして迎えた親番、東4局1本場では仕掛けて1,000は1,100オール。
次局も仕掛けて500は700オール。細かくつないで大物手を狙う。
開局から6局連続テンパイ。親では安手ながら2局連続のアガリ。3者を取り巻く空気が重くなる。これ以上の連荘は阻止したい。
東4局3本場 7巡目
ツモ ドラ
前原は7巡目でこの形。スピード感に欠けるこの手牌、親番維持も考慮し字牌を打つかと思われた。しかし大物手狙いに照準を絞り打。
11巡目
ここからポン、打。
更に13巡目にを重ね、次巡タンヤオテンパイの柴田からがツモ切られる。
前原当然のポンでテンパイまでたどり着く。
ポン ポン
しかしは山には残っていない。
柴田のは3枚残り。前原の連荘は止まると誰もが思った17巡目。
ポン ポン ツモ 打
この変化。次巡、驚きの声を上げる実況解説を横目に当然のように8枚目のアガリ牌を引き寄せた。
解説の佐々木がつぶやいた。
「強いわ・・・」
1回戦終了時
前原+37.1P 勝又▲4.9P HIRO柴田▲9.4P ともたけ▲22.8P
2回戦【起家から HIRO柴田、勝又、ともたけ、前原】
前原と同じく鳳凰位獲得経験のある勝又。
その勝又が初のG1タイトルを獲得したのが第2期麻雀グランプリMAX。
今タイトル戦は思い入れの深いものであろう。
勝又はこの2回戦3着となるが南2局の親番でのプレーを紹介したい。
南2局、持ち点はHIRO柴田19,000点、勝又21,300点、ともたけ32,700点、前原46,100点。
簡単に親番を落としたくない場面。9巡目に前原が先制リーチ、11巡目に柴田が仕掛けて追いつく。
前原のリーチ、柴田テンパイ濃厚な状況で勝又は慎重に打ち進めるも14巡目。
ツモ
は無筋、は1枚切れで押し切れず打とする。次巡ツモ、打と安全に打ちまわす。勝又受けを選択。
しかし、この2巡で柴田が現物の手出し2枚としオリ気配が漂う。
これを素早く察知した勝又。
16巡目
ツモ
柴田がノーテンと察知し、前原に対しを勝負して1シャンテン。親の連荘を狙う。
そして17巡目
ツモ
勝又のツモは2巡前に打ちだしている。ここで少考に入る。勝又の思考がめぐる。
部分的な説明をお許しいただきたいが、勝又の目からはが4枚、とが前原、柴田、自身の捨て牌にそれぞれ1枚ずつ、いずれも都合3枚ずつ見えている。
現物のかあるいは目一杯か・・・
勝又の選択はワンチャンスの打。
はノーテンから打ちだす牌ではなく、テンパイ復活にかけたギリギリの打牌。
この執念が実る。次巡柴田からツモ切られたをフリテンチーでのテンパイ連荘。
勝又の緻密さと執念を感じた一局となった。
この2回戦も前原が制し、決勝のシートは1席確定といっても過言ではない。
3回戦以降は3者で1席をめぐる争いとなる。
2回戦成績
前原+32.9P ともたけ+4.9P 勝又▲15.3P HIRO柴田▲22.5P
2回戦終了時
前原+70.0P ともたけ▲17.8P 勝又▲20.2P HIRO柴田▲31.9P
3、4回戦は勝又が連勝を決め抜け出すも柴田もしっかりと原点をキープし食らいつく。逆に現世界チャンピオンともたけは2連続4着で大きく引き離される。
3回戦成績
勝又+13.0P HIRO柴田+5.7P 前原▲5.3P ともたけ▲13.4P
4回戦成績
勝又+11.6P 前原+5.2P HIRO柴田+2.3P ともたけ▲19.1P
4回戦終了時
前原+69.9P 勝又+4.4P HIRO柴田▲23.9P ともたけ▲50.4P
5回戦【起家から 勝又、ともたけ、HIRO柴田、前原】
勝又、柴田のポイント差は28.3ポイント。逆転可能なギリギリのポイント差。
決して楽ではないこの差を柴田はいかに詰め寄るか。
最終戦開始5分。柴田が淀みない手順で先制リーチ。
リーチ ドラ
13巡目に勝又、ともたけの両者が同時にテンパイ。
勝又は柴田の追随を振り切りたい。ともたけは逆転に向け最後のチャンス。そして柴田はのツモアガリであれば瞬間的に勝又を逆転する。
決着は直後の14巡目。
手牌の横にアガリ牌を力強く引き寄せたのは柴田。3,000・6,000のツモアガリで勝又を逆転。順位点込みで28.3ポイント差をたった1局でひっくり返す。
立場逆転。1局で逆転されたショック。焦る、慌てる、、、常人であれば。
しかしその男の表情にその気配は微塵も感じない。
麻雀IQ220勝又建志。自身のやるべきことを冷静に精査し遂行する。
柴田のアガリにより自身の持ち点は24,000点。これを原点の30,000点に戻せば再逆転。
勝又は東3局でテンパイの前原から5,200のアガリ。
ロン ドラ
更に南2局ではともたけから7,700のアガリを決め通過濃厚ポジション。
最後の山場、柴田の親でもしっかりと攻め切り親落としに成功。
南4局は親の前原がノーテンを宣言しベスト8A卓の戦いは幕を閉じた。
5回戦成績
HIRO柴田+25.3P 勝又+8.3P 前原▲9.3P ともたけ▲24.3P
5回戦終了時
前原+60.6P 勝又+12.4P HIRO柴田+1.4P ともたけ▲74.7P
決勝進出 前原雄大 勝又建志
第8期麻雀グランプリMAXベスト8B卓
1回戦【起家から 森山、仁平、藤崎、灘】
A卓でその存在感を十分に見せつけた現鳳凰位、前原雄大。
日本プロ麻雀連盟の最高峰鳳凰位。その双璧であるG1タイトル十段位。
その十段戦を連覇で制した藤崎智。その麻雀を形容して忍者と例えられる。
静寂に包まれた闇夜から決定打を繰り出す。
まずは東2局9巡目、南家の藤崎は以下のテンパイ。
ドラ
更に次巡ツモで打。藤崎闇夜に大きな罠を仕掛ける。
同巡森山が以下のリーチ。
リーチ
このリーチを受けた藤崎のツモは。シャンポンであればアガリがあったが受けられるはずもなく切り追っかけリーチとするも、6巡目からテンパイの灘から森山の筋であり、藤崎の現物がツモ切られる。藤崎の勝負手は煙と消える。
更に次局、藤崎は森山にヤミテンのメンホン8,000放銃。
ロン ドラ
藤崎は東2局に放った特大の手裏剣をはじき返され、東3局では自身のお株を奪われる大物手のヤミテンを決められる。
ペースがつかめない現十段位は1回戦1人沈みとなる。
続く2回戦では不調の中、粘り、凌ぎ、戦い続け南3局を迎え30,200点持ちの2着目。
しかし南3局で仁平にタンヤオ三色の5,200は5,500、更に南4局では灘に七対子ドラ2の6,400。
ここでも打点十分のヤミテンを決められる。
なんと現十段位藤崎はたった2局でラス落ちとなり、あっという間に後がなくなる。
1回戦終了時
森山+12.4P 仁平+4.9P 灘+1.7P 藤崎▲19.0P
2回戦成績
灘+17.8P 仁平+7.9P 森山▲6.0P 藤崎▲19.7P
2回戦終了時
灘+19.5P 仁平+12.8P 森山+6.4` 藤崎▲38.7P
3回戦【起家から 仁平、森山、藤崎、灘】
藤崎の苦悩は続く。
東1局では仁平の先制リーチに対し追いつくもテンパイ打牌は仁平のアガリ牌。ここはじっと我慢で放銃回避。
続く1本場8巡目。藤崎に超勝負手が舞い降りる。
ドラ
このヤミテンのツモ倍を1巡回してツモ切りリーチ。
しかし、この日の藤崎に簡単に頭を下げる3者ではない。
11巡目仁平が以下のテンパイで追いつきリーチ。
リーチ
17巡目に手牌を開けたのは仁平。2,600オールのツモアガリ。
仁平の点数申告に大きく頷いた藤崎。
東3局の親番ではタンヤオドラ3のヤミテンも無念の流局。
次局1本場ではメンタンピンの3面張リーチも流局。
いくつもの勝負手が実らず、遂に藤崎の表情にも焦りと苦悶の表情がにじみ出る。
万策尽きたか、、、誰もがそう思っていたはずだ。
東3局1本場9巡目。藤崎最後のチャンス。意地のテンパイから即リーチ。
打 ドラ
ヤミテンでも11,600。この日何度も目にした藤崎の勝負手。
残り3枚の。リーチ直後、灘に1枚流れる。森山はまっすぐ押し返すもを掴み撤退。
山には残り1枚となった。ヤミテンであればアガリ濃厚な1局。
またしても実らずか、、、
そんな思いがめぐる中、16巡目藤崎はいつもの落ち着いた所作で8枚目のアガリ牌を手元に置いた。
その後、南2局に仁平がチャンタ三色を森山からアガリ藤崎を逆転するも、オーラス再逆転に成功。忍者藤崎、戦線に踏みとどまる。
3回戦成績
藤崎+25.8P 仁平+21.7P 灘▲10.3P 森山▲37.2P
3回戦終了時
仁平+34.5P 灘+9.2P 藤崎▲12.9P 森山▲30.8P
4回戦【起家から 森山、藤崎、仁平、灘】
仕掛けを使いこなし切れ味鋭い灘、劣勢の藤崎が気迫のトップ、3戦連続の連帯と安定感抜群の仁平。その波に飲み込まれた格好となったのが森山。
初戦のプラスポイントを吐き出し現状トータルポイント最下位となる。
息詰まる4回戦、東2局に激しい攻め合いの中から大物手が炸裂する。
まずは得意の仕掛けで灘が発進する。
ドラ
ここからポン。ホンイツ、トイトイを見据えた仕掛け。
続いたのが仁平。
を仕掛けて打。高打点を見据えつつ速攻も可能。
そしてこのに反応したのが親番の藤崎。
ポン打とし、ホンイツまで見た仕掛け。追う立場の藤崎。簡単に親番は落とせない。
僅か4巡目にして3者が3フーロ。激しい空中戦。
藤崎さらに仕掛けて1シャンテン。
を重ねて勝負手に変化した仁平は下家の灘に対してマンズの連打。灘は次々仕掛けてテンパイ。
チー チー ポン
更に仁平が灘からを仕掛けてテンパイ。これをものに出来れば決勝進出濃厚。
ポン チー
森山は仕掛けに囲まれ対応に追われるなか、以下の手牌。
ツモ ドラ
下家の藤崎はピンズ、対面の仁平はソーズ、下家の灘はマンズ。
森山の選択は切り。灘の仕掛けは下目は処理されているとの判断か。
その同巡、灘の手牌に舞い降りたのは仁平のアタリ牌ドラの。切れず打とする。
灘は対局後この切りをミスだったと反省した。ドラのが仁平に放銃となっても切るべきだったと。それが勝負だと。
灘に続きソーズをつかまされた藤崎もギブアップ。
灘、藤崎が去った今、仕掛けの森に残されたのは仁平と森山。
その森山の手が急激に伸びる。と引き込み以下の手牌。
ツモ
この手になれば勝負と、ここまで絞り続けたを切り飛ばし高め倍満リーチ。
完全に手詰まりの藤崎がトイツ落とし。これに声をかけたのは灘。
チー チー ポン
を仕掛けて裸タンキのドラタンキで応戦。再び仕掛けの森に踏み入る。
卓上には全8フーロ。
仁平が森山の無筋で撤退した直後、灘の捨て牌にはが投げられた。
仕掛けの嵐の中で決めた値千金の12,000。
こうなった森山は誰にも止められない。
リーチ ツモ ドラ
次局は上記のドラタンキの七対子ツモアガリで勝負を決めた。
熱い2着争いは南1局にタンピン三色をリーチでツモアガった藤崎が制した。
4回戦成績
森山+36.9P 藤崎+12.2P 仁平▲16.9P 灘▲32.2P
4回戦終了時
仁平+17.6P 森山+6.1P 藤崎▲0.7P 灘▲23.0P
5回戦【起家から 森山、仁平、灘、藤崎】
前原、勝又の待つ決勝戦に進むのは誰になるのか。その可能性は全員に残された。
4回戦の勢いそのままにまずは森山がゲームを引っ張る。
南1局で森山41,400点、仁平31,100点、灘30,600点、藤崎16,900点。
森山、仁平が通過ポジション。灘、藤崎が追う展開。
森山、仁平の勝ち上がり濃厚かと思われた南1局2本場、森山のヤミテンが仁平を襲う。
ロン ドラ
この5,800に飛び込んだ仁平は灘、藤崎の後続に飲み込まれる。
森山が決勝進出を確保した中、3者の戦いはいよいよクライマックス。
南2局4本場、藤崎の持ち点は17,400点。この段階では原点復帰が条件の藤崎は15巡目に下記のテンパイ即リーチ。
リーチ ドラ
このリーチをなんとハイテイでツモリ上げ2,000・4,000。仁平に肉薄。
更に南3局で藤崎の決定打が決まる。
ポン ロン ドラ
これを一歩も引けない仁平から直撃の価値ある8,000。
苦しい厳しい戦いだった全5回戦、このアガリで最後のシートは現十段位藤崎が手にした。
5回戦成績
森山+28.0P 藤崎+8.6P 灘▲8.4P 仁平▲28.2P
5回戦終了時
森山+34.1P 藤崎+7.9P 仁平▲10.6P 灘▲31.4P
決勝進出 森山茂和 藤崎智
カテゴリ:グランプリ レポート