第35期鳳凰位決定戦 二日目観戦記 荒 正義
2019年02月06日
東京は、寒い日が続いていた。吹く風が冷たくて、身に凍みる。しかし、大一番の会場には熱気があった。この日も、一番乗りは柴田である。1人で卓に着き、ツモ捨て繰り返し打っていた。
初日の4回戦は、柴田にとっては悔いの残る半荘だった。持ち点を57,1Pまで積み上げ、これまでのマイナスを一気に取り戻す勢いだった。しかし、終わってみれば33,8Pだ。浮きの2着は確保したが、不満はかなり残ったはずだ。
5回戦。
出親は前原で、順に勝又、柴田、吉田の並び。
東3局までは、小場だった。微妙だったのが、東4局の1本場だ。前局が流れて、リーチ棒が2本ある状況だった。まず仕掛けたのは、南家の前原だ。
ドラ
5巡目にをポンして、打。少し強引だが、リーチ棒がある。
7巡目、親の吉田の手がこうなる。ドラ2と、一通が見えるチャンス手だ。
ツモ
の受けは、いいマチだ。それなら打牌はのはずだ。ところが、吉田はを切ったのである。これが微妙。このとき前原の手は、こうだ。
ポン
切りなら、前原のチーテンが入る。
2巡のツモで、前原は、と引いてこのテンパイ。
ポン
次に吉田のツモがこうで、がロン牌となったのだ。
ツモ
先に受け手広く切りなら、前原のテンパイはこうだ。
チー ポン
吉田はこう。
は食いで流れるが、前原のテンパイも不自由だ。これなら結果は分らない。打点が大差なだけに、吉田は残念。
南2局は、大きな見せ場となった。親の勝又の手が軽い。
ツモ ドラ
これが3巡目の仕上がり、当然リーチだ。
少しの不満は、入り目がドラでなかったことだ。出て5,800点か、ツモで2,600点オールは固い。このとき、北家の前原の手もこうだった。しかし、好形テンパイと2シャンテンでは、勝又有利だ。
ツモ
当然、前原は無筋のマンズを切って前に出る。すぐにが出る。ポンだ。次が。これもポン。
ポン ポン
あっという間に追いついた。まだ5巡目だが、跳満である。すぐに勝又がを掴んだ、何たる不運!
やっぱりゴジラの生命力は、ただものではない。このあと2局進んで、前原が楽勝の流れだ。
問題は、オーラスに起きた。この時点で、4人の持ち点はこうだ。
前原 勝又 柴田 吉田
46.2 13.3 33.3 27.2
8巡目、吉田がリーチだ。
ドラ
しかし、は純カラ。9巡目、柴田にも七対子のテンパイが入る。浮きの2着だから、ヤミテンは当然。
そして12巡目、親の前原が切ろうとしたとき牌山に手がかすって、山が崩れてしまったのである。落ちた牌は4枚で、どれも表が見えている。麻雀ではよくある出来事だ。
すぐに立会人の紺野から、ストップの声がかかる。規定では2枚までがセーフで、3枚がアガリ放棄だ。4枚は、続行不可能でチョンボとして2万点の罰則。
紺野が裏に回り、ビデオ判定。結果は、前原のアガリ放棄で続行。前原、助かる。
見えた牌の1枚は、ドラの指示牌だったからである。
ゴジラの弱点発見!手が大きいと不利なのだ。
このあと、11巡目に勝又のリーチだ。
入り目はの、ドラの重なりである。これにで、柴田が5,200点の放銃。
なんと、柴田が沈んで前原の1人浮きとなった。アガリ放棄なのに、4,000点の加点である。これには、びっくり。
5回戦までの総合成績がこれだ。
前原 吉田 勝又 柴田
+43,0 +17,9 ▲22,9 ▲38,0
6回戦
出親は前原で順に勝又、吉田、柴田の並び。
席は、前原と勝又は動かなった。トップを取って、同じ席に座ると気分がいい。比べてラスを食って、同じ席だといやな予感がする。案の定だ、東1局は勝又の1人ノーテン。
1本場は、親の前原に軽い手が入った。8巡目でリーチだ。
の暗刻かぶりがあって、テンパイは遅れたが手牌はこう。
ドラ
同巡、柴田にもテンパイが入る。
ツモ
は2枚出ていたが、切りで強気の攻めだ。しかし、これが命中で3,900点と300点の支払い。確かに、前原への安全パイはしかなかったが、相手は親だ。しっかり、受ける手段もある。私なら切りである。前原は好調の滑り出し。この前原に待ったをかけたのが、吉田だった。
東1局2本場。
吉田の手が、3巡目にしてこれである。
ドラ
そして次のツモがで、即リーチだ。
の先切りが気になるが、これではマチが絞れない。は山に無いが、は2枚生きている。このを勝又が捕まる。しばらく粘ったが、11巡目に打ち出した。12,000点と600点の放銃。勝又の手も、ドラが2丁のこの手だから仕方ない。
勝又、不調である。
東2局。
吉田の手が軽い、6巡目でこうだ。
ツモ ドラ
ここで吉田はドラ待ちを選択、そしてヤミテン。
は、勝又と柴田の手に浮いている。手が進めば出る可能性がある。
9巡目に、前原が追いついてリーチだ。
しかし、は河に3枚出て純カラ。は1枚残りだ。どうして、ゴジラはこんなに強気なンだろう。吉田も、無筋をバンバン通して突っ張った。結果は、を掴んだ前原の放銃。リーチ棒込みで、9,000点は痛かった。
東3局は、柴田が吉田から満貫を打ち取る。
東4局。この時点で、4人の持ち点はこう。
前原 勝又 吉田 柴田
27.2 13.4 43.6 35.8
ここから、柴田が頑張った。
まず親で2900点を、吉田から打ち取る。
そして、南2局で七対子ドラ2をツモって、2,000・4,000点。
前局は勝又が満ツモだったが、すぐに親で被る。やっぱり、今日の勝又は運がない。
南3局の1本場は、前原が意地を見せた。
この手をリーチで引いて、2,000・3,900点。
オーラスも勝又から、2,600点を打ち取って幕とした。これでトップは柴田。2着は吉田で、前原は小さい沈みの3着。勝又が、大きく沈んだラスだ。
そして、6回戦までの総合成績がこれだ。
前原 吉田 勝又 柴田
+35.9 +30.3 ▲48.6 ▲17.6
残り10戦、この点差ならまだわからない。優勝は、勝又だって十分狙える。
7回戦。出親は前原で、順に吉田、柴田、勝又の並び。
東1局。
11巡目、テンパイ一番乗りは、吉田でヤミテン。
ドラ
同巡、勝又にもテンパイが入る。
三色の手変りがあるので、こちらもヤミテンを選択。
すると吉田が絶好のドラ引きで、こうなった。
これもヤミテン。すると流局間際、ラス牌のを掴んで勝又の7,700点の放銃。これが、運の明暗である。勝又には、仕方がない放銃ばかりが目立つ。
一方の吉田は、絶好調。手が軽いしツモが利いている。今日の彼の課題は、プラスをどこまで伸ばすかだ。
吉田は、1977年2月生まれの41歳。趣味はカラオケである。タイトル戦の優勝はまだないが、A1昇級と鳳凰戦出場は立派な戦歴だ。そのときのご褒美に、瀬戸熊からもらったネクタイが2本ある。初日がその1本で、今日が残りの1本だ。元気にゲンを担いで締めている。
東3局1本場。ドラ
この局は、勝又と吉田の鳴き合戦。最初に動いたのは勝又だ。
のポン。次にドラののポン。これで、一気に場に緊張が走る。
仕上げが、これだ。
チー ポン ポン ツモ
を鳴く前は、この形。
テンパイ時の打牌がなので、その周りは危険牌。だから鳴いて、相手の読みの裏をかいたのだ。すると、次のツモがでまんまと成功。リーチ棒込みで2,000・3,900。これで、勝又は原点復帰。このアガリが、次につながればいいのだが…。
東4局は、勝又の親で2,900点のアガリ。
そして1本場。11巡目の、勝又のリーチだ。
ドラ
このとき、吉田ものテンパイだった。そのが、出ない形になったのだ。
ドラのは無いが、は2枚生きている。ツモなら6,000点オールだ。
前原のリーチが入る。
しかし、結果は流局。は、王牌(ワンパイ)の中だった。
2本場は、勝又のアガリ。1,000点オールだが、リーチ棒2本と積み場が付いた。
3本場は、勝又と前原のテンパイで流局。
勝又の粘りも、ここまでだった。南場は好調の吉田が加点し、トップを決めた。
2着は浮きの勝又。3着が前原で柴田がラスだった。
総合得点はこれだ。
前原 吉田 勝又 柴田
+25.2 +51.5 ▲36.2 ▲40.5
8回戦。出親は勝又で順に前原、柴田、吉田の並び。
東1局。
やっぱり、吉田が好調。
ドラ
この手をヤミテンで、前原から仕留めて7,700点のスタートだ。
東2局。ドラ
ここは、仕掛け合戦。しかし、制したのは吉田だった。
ポン
この手をで、勝又から打ち取る。3,900点。
このあとは無難に流れて、オーラスの持ち点がこうだ。
勝又 前原 柴田 吉田
25.5 23.9 22.6 48.0
3人沈みである。吉田とは、差が大きく広がる。
今度は、勝又が頑張った。なりふり構わずの3フーロ。
ポン ポン ポン
このを引いて1,300・2,600点。沈みが、浮きの2着になった。これは大きいアガリだ。勝又の根性が、垣間見えた。
これで、4者の総合得点がこれだ。
吉田 前原 勝又 柴田
+74.9 +13.8 ▲31.5 ▲57.2
態勢は吉田有利だが、まだ半分の道のりだ。まだ、勝負は分らない。
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記