第36期鳳凰位決定戦 二日目観戦記 荒 正義
2020年02月14日
初日と違って、今日は晴れ。しかし、冬の盛りなので風は冷たい。
首位を走る古川は、名古屋からだ。70歳では、移動の体も辛かろう。疲れると思考能力が低下し、ミスが出るものだ。
西川は千葉からだ。対戦の2時間前には、家を出る必要がある。そして、初日は最下位で▲33,1P。トップ1回で回復できるが、焦りは禁物。それは吉田も同じ。この2人は、マイナスを消すことから考える。マイナスが0なら、トップ走者は射程距離に入る。ただ、大事なことはこれ以上、古川に得点を与えないことだ。
藤崎は、今日で首位の古川に並べばいい。となれば残り2日、体力、気力で勝る藤崎が有利となるだろう。
東1局。ドラ
親は藤崎で、順に古川、西川、吉田の並び。
4巡目、藤崎が動いた。西川の切ったをポンだ。藤崎の早い仕掛けは要注意だ。手牌が好形で、打点があるからだ。それは誰もが知っている。このとき藤崎の手はこうだった。
ポン
6巡目、西川にテンパイが入った。
しかし、ヤミテン。藤崎の手がタンヤオ志向ならば、ドラ2かドラ3と見なければならない。こちらが2,600点では、割に合わないと見たのだ。を引けば三色があるし、、ツモならタンヤオがある。
10巡目、藤崎にテンパイが入る。を入れてカン待ちだ。
ポン
すぐに西川もを引き、タンヤオに変わる。ここでリーチだ。
藤崎もオリなし。2人のめくり勝負だ。これは西川が引き勝って、2,000・3,900点。西川が好調のスタートを切った。藤崎にとっては痛い、親のかぶりだ。
東2局。ドラ
今度は、藤崎が踏ん張る。6巡目のリーチだ。
12巡目、安めのを引いて1,300・2,600点。このとき、親が古川だったのも藤崎には好都合。この日は、藤崎の52歳の誕生日だった。彼の技の精度は天下一品である。今日は誕生日で、運の後押しもあるかも知れない。
東3局。ドラ
今度は古川が自風のポンで、早い仕掛け。さらに6巡目、を鳴いてテンパイだ。
チー ポン
は初物だが、は1枚河に見えている。なのに、打だ。ドラならチャンタで7,700、マンズの受けなら1,000点である。これには、解説の佐々木寿人も古橋も驚きの声を上げた。私も切りである。
打点が違いすぎるからである。この後、吉田からが出たが、これは合わせ打ち。古川が切らなければ、出ない牌。この後、藤崎にが流れてトイツになる。ドラで受ければ、純カラだったのだ。となれば、藤崎の反撃があったはずだ。この後、古川はを引いて300・500点。難を逃れた。
後で、この時の構えを古川が語った。
「自分の状態が悪かったから…」
ベテランは、時と場合で応手が変わる。
この後は、小場で回って古川の逆襲が始まった。やっぱりサーフィンだ。
南2局。ドラ
古川の親番。
ポン チー
まず、を引いて2,000点オールだ。
次がこれ。
南3局3本場。ドラ
ポン ポン ツモ
ここで古川がを切って、今度はドラとのシャンポンに受け変える。すると、吉田がをツモ切った。吉田もテンパイで、親の現物。しかし、古川の最終打牌がだから、撤退はあったはずだ。今日の吉田は、エンジンがかかりすぎている。こういう日は危ない。
ここで古川のトップが確定、11,600点(+900)だ。これは大きい。古川にとっては望外の利で、吉田はがっくり。しかし、もっとがっくりしたのは、総合2番手の藤崎だったに違いない。この時点で4人の持ち点はこうだ。
藤崎 古川 西川 吉田
27,0 49,6 33,6 9,8
今度は藤崎が頑張った。
南3局1本場。ドラ
ポン ツモ
自風のドラのをポンして、2,000・4,000(+300)点。浮きの2着に浮上。今日も古川の先勝である。
5回戦の成績。
藤崎 古川 西川 吉田
+6,8 +26,8 +2,0 ▲35,6
5回戦までの総合成績。
古川 +80,0P
藤崎 +13,2P
西川 ▲31,9P
吉田 ▲61,3P
6回戦。出親は古川で順に藤崎、西川、吉田の並び。
古川と藤崎の差は、66,8Pだ。かなり開いたが、まだ逆転可能である。
西川と吉田には、厳しい展開。
東3局。ドラ
4巡目、藤崎が絶好のツモを引き当てた。
ツモ
ドラを重ねてテンパイ、即リーチだ。
(藤崎の河)
は河に1枚。誰が掴んでも切る牌だった。8巡目にこれをツモって、3,000・6,000点。一気に主導権を握った。これが誕生日の、後押しか。
しかし、後が続かずこう着状態。古川も鳴きを駆使するが、うまく噛み合わない。西川の1人沈みで、オーラスを迎えた。
親は吉田、テンパイと小さなアガリで粘る。この間に、古川が原点を割る。
南4局2本場は、藤崎が1,300点アガってトップを取った。
6回戦成績。
古川 藤崎 西川 吉田
▲5,5 +17,3 ▲24,0+12,2
6回戦までの総合得点。
古川+74,5P
藤崎+30,5P
吉田▲49,1P
西川▲55,9P
7回戦。
親は吉田で順に古川、西川、藤崎の並び。
この回は、1,000・2,000点を引いた西川が先行。誰も手が入らない。
東4局。ドラ
藤崎の親番。11巡目、西川からリーチがかかった。
このリーチが作用し、藤崎のアガリが生まれた。麻雀ではよくある出来事。
チー
2,900点だが、古川からの直撃だから大きい。無いはずのアガリが生まれる。こんな親は、怖いのだ。
東4局1本場。ドラ
吉田が動いた。早いソーズのホンイチ仕掛け。
ポン チー
ドラがだから、要注意だ。そのドラが3人に1枚ずつ。だから、吉田の1人旅に思えた。吉田の手の内の7枚はこうだった。
しかし、藤崎に15巡目テンパイが入る。
すると、すぐにラス牌のを掴んだのが吉田。誰もテンパイの気配がなかった。だから切った。この9,600(+300)点は、吉田にとっては痛かった。
東4局2本場も、藤崎のアガリ。
打ったのは古川。2,900(+600)のアガリだが、直撃は大きい。やっぱり、無いはずのアガリが生まれた…親は怖かった。暖かい風が、藤崎に向かって吹いている。
3本場は3,900(+900)アガって、西川が落とした。打ったのは、吉田だった。
南2局は古川の親番。この時点で、4者の持ち点はこう。
吉田 古川 西川 藤崎
13,3 22,7 38,5 45,5
このままでは藤崎に並ばれる。古川は浮いて、少しでも差をつけておきたいところ。7巡目、古川にリーチがかかった。
ドラ
これにを一発で、西川が振り込む。3,900点。
南1局1本場。ドラ
9巡目、古川のリーチが入った。
リャンペーコの手変りを見て、ヤミテンだった。しかしを切られ、そのを藤崎がチーした。もう我慢の限界と、押さえ込みのリーチだ。は、藤崎が雀頭。筋で危なかったが流局して、吉田の1人ノーテン。
南2局2本場。ドラ
ここも古川が粘って、で西川からアガリ。
チー
2,900と600点で、古川が浮きに回る。
3本場は、藤崎が落とす。500・1,000点のツモアガリだが、これで古川が200点の原点割れ。
南3局。ドラ
16巡目、吉田からリーチが入った。ツモは残り1回。
は筋でも河にも安くはなかったが、構ってはいられない。これをテンパイの古川が、ハイテイで掴んだ。古川は、テンパイなら浮きに回る。勝負と切って、跳満の放銃。
「何すんだ、直!」これは、古川の心の叫び。
この一発で、ラスになる。これは古川…無念!
南4局は、西川が1,000点アガリで終了。
7回戦の成績。
吉田 古川 西川 藤崎
▲13,5 ▲20,2+6,3 +27,4
7回戦までの総合。
藤崎 +57,9P
古川 +54,3P
西川 ▲49,6P
吉田 ▲62,6P
8回戦。
親は藤崎で順に西川、吉田、古川の並び。
藤崎が7回戦でトップに立ったが、その差は微細。しかし、昇り調子なので古川を引き離すことも可能だ。
東1局。ドラ
藤崎が8巡目にをポン。11巡目にをポン。
ポン ポン
その河がこう。
これなら誰だって、ピンズの染め手と判る。このとき、手牌7枚はこうだ。
15巡目、ドラのを引いてテンパイを果たす。で18,000点、なら24,000点だ。18巡目、南家の吉田もテンパイを果たす。
2人とも待ちの大物手。しかし、残念ながら1枚は古川の手の内で、1枚は王牌だった。
東1局1本場。ドラ
8巡目、またしても親の藤崎が動いた。
ポン
で、手の内はこう。
は、2枚目だから仕方ない。ツモなら満貫、ツモなら跳満である。しかし、流れて藤崎の1人テンパイ。
2本場も流れた。テンパイは西川と吉田。
後はかわしての応酬。
南2局。ドラ
藤崎が、ラス牌のでアガリ。
ツモ
これで藤崎が、5,000点浮きのトップに立つ。
後は小場で流れた。
南4局。ドラ
ラス親は古川。5巡目に古川が切った、ドラのに西川からポンの声。西川は遠い仕掛け。7巡目、古川からリーチがかかった。
暗カン
なら、相当の高打点、これに一発でを打ち上げたのが吉田。4,800点。
これで古川が浮きに回る。
吉田は、受ける場面だ。遅い手だったし、安全牌もあった。
なのに、なぜ―。
1本場は、藤崎がかわして幕。
8回戦の成績。
藤崎 西川 吉田 古川
+14,8 +4,6 ▲20,7 +1,3
8回戦までの総合成績
藤崎+72,7P
古川+55,6P
西川▲45,0P
吉田▲83,3P
上と下に差がついた。
しかし残り8戦、何が起こるかまだ分らない。次回が楽しみだ!
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記