日本プロ麻雀連盟第32期鳳凰位決定戦 最終日観戦記 HIRO柴田 - 日本プロ麻雀連盟

鳳凰位決定戦最終日となる４日目のはじまり。
現状のポイントはこうなっている
勝又＋111.1P　前田＋69.4P　古川▲64.6P　瀬戸熊▲116.9P

マイナスしている古川、瀬戸熊は優勝する可能性は５％もないだろう、それでも優勝するなら勝又、前田が大きく沈んでの優勝ボーダーが＋10前後でおさまった場合か。
ただ前述したように、ほぼ現実的な数値ではないので戦い方はその人の思想で行うはずだ。４半荘ひたすら逆転を狙うか、それとも自然に打ちきり負けを受け入れるかだ。
残りの半荘はアガるも放銃も全て誰かが得をして誰かが損をする、そして打ち手は非難されるであろう。負けるということはそういうことなのだ。

一方の前田だが、勝又との差が41.7Pなので現実的な位置である。
瀬戸熊、古川の出方次第と、自身の打点力を生かしての大連荘も考えられる親番と勝又の親番が勝負所となりそうだ。

トータルトップの勝又は、守るも攻めるも自由だが、前田との距離感だけは的確に対処してくるだろう。
あとは初日から言えることだが、トータルトップ目というプレッシャーとの戦いだ。
これまでの３日間を見る限りそんなものは微塵も感じさせられないが。

13回戦　（起家から、古川・前田・瀬戸熊・勝又）

東１局、ドラをトイツで持つ前田が、７巡目にをツモでカンを外す打。

前田
  ツモ  打  ドラ

この時すでには山に残っていなかったので、先にを引いての自然なカン外しが良手となり2,000・3,900のツモアガリ。

前田
  ツモ  ドラ

東２局、勝又の手牌進行が難しい。

勝又
  ドラ

浮かせていたを重ねてテンパイとなる打を選択したが
次ツモはと最悪な牌の前後となる。

一方、親の前田は着々と手を進めこのテンパイ

前田
  ドラ

前田の望む–は場に２枚切れ、そのを打っている古川はも打ちだしてきているので、古川からのアガリはありそうだ。
–でのアガリへの感触が無ければ、押さえ込みリーチもあるかもしれないが、を打たれた後では遅いだろう。
役無しのヤミテンでぎりぎりまで踏み込んだ勝又が、古川への1,000点放銃となった。前田の親を終らせるには最小限の失点で終えることができた勝又。

古川
  ロン  ドラ

南１局、奇跡を起こすには親番での連荘は絶対条件であろう古川。
形式テンパイで連荘を狙うも、瀬戸熊のドラ３につかまる。

瀬戸熊
  ポン  ロン  ドラ

瀬戸熊の手牌は読みにくいかもしれない。瀬戸熊の放つ切りの意味を求めるか、それとものトイツが危険とみるかだろう。
放銃してしまえば間違いだと気づく、結果古川連荘に失敗する。

南２局、前田親で６巡目リーチを打つ。
年間のリーグ戦とは違いポイントの状況があるので、ぎりぎりの攻防でなくリーチへの対処は手が良いときに攻める、めりはり対応となってしまいそうだ。

  ツモ  ドラ

前田最後のツモ番で2,600オールをものにする。

南２局１本場、追う側は少しでも多く加点を、そして親はなにがなんでも連荘を！追う側の心理であろう。
しかし、前田は非常に落ち着いた雰囲気で打つ、時を待つかのようにアガる700は800オール。

前田
  ツモ  ドラ

南２局２本場、非常に白熱した局だった。
古川が早々にポン、ポンと来て、瀬戸熊がをツモ切ってリーチを打つのだ。

瀬戸熊の待ち山には５枚だ、もうすぐにでもいるのではないかと思った

瀬戸熊
  リーチ  ドラ

古川の待ちであるとは残り２枚、枚数は不利だが悪くは無く見える。

古川
  ポン  ポン  ポン

そして勝又が自風のが暗刻の、高め三色まである特大リーチ、対局後にこのにはかなり自信があったと告げていた。

勝又
  リーチ

時を待つ静けさをもちながら打ち出したそのには熱いものを感じさせられた。
その人、前田のツモアガリでこの局を制したのだった。

前田
  ツモ

南４局、８巡目の勝又の選択は打。

勝又の手筋から４トイツなので、そこに手をかけることはなさそうだが、打ち後の進行に皆が興味を示したと思う。

勝又
  ポン  ドラ

  ポン  ポン  ロン

変則の場だったのだと思う、それをいち早く察したのか、シュンツとトイツを上手く融合させた勝又見事な5,800のアガリで失点を少しでも取り戻す。

13回戦成績
前田＋29.8P　瀬戸熊＋20.1P　勝又▲14.1P　古川▲35.8P

13回戦終了時成績
前田＋99.2P　勝又＋97.0P　瀬戸熊▲96.8P　古川▲100.4P

 

14回戦　（起家から、前田・古川・勝又・瀬戸熊）

13回戦目の前田の猛攻により、トータルポイントで2.2ポイントほど前田が上となった。
失点を最少に抑えたといえる勝又もまた終局の形を描いているのだろう。

東１局、

勝又
  ロン  ドラ

このヤミテン、成すべきことを成す、それを実行できる勝又の胆力は素晴らしいと思える。

東２局、勝又と自風のシャンポンからを引きいれここは攻め時を見るやリーチ。

親の古川もすぐに追いかけリーチを打つ枚数と打点のバランス的に五分かと見えたが、ここは瀬戸熊が勝又へ8,000の放銃となる。

南１局、親の前田10巡目に瀬戸熊から打ち出されたに反応するかが難しいところ。

テンパイを入れる前にこのを子方の３者に打ち出されると、もうアガリは厳しいと感じるのでポンもありそうだが前田の選択は鳴かず。
思いが通じたのか、前田を引きいれリーチを打ち、僥倖の4,000オールをアガリ一気にトップ目に。

前田
  ツモ  ドラ

南１局２本場、２人のゲームを見るように、前田の4,000オールとくれば、すぐに勝又も2,000・3,900をツモりトップをまくり返す。

勝又
  ツモ  ドラ

南２局１本場

後日「あれはリーチだったかな？」と前田は陽気に聞いてきた。
私の意見などより、この場面を作っている前田が選択したのだ間違いはない。

南３局、この半荘２人の互角の競争に決着を着けるべく前田がリーチを打つ。

前田
  リーチ  ドラ

勝又もここは引かない構えで牌を打ち出していく。両者の待ちは共に２枚と互角だったが、この攻防は勝又が勝つ。

勝又
  ロン  ドラ

14回戦成績
勝又＋22.5P　前田＋16.6P　瀬戸熊▲15.3P　古川▲23.8P

14回戦終了時成績
勝又＋119.5P　前田＋115.8P　瀬戸熊▲112.1P　古川▲124.2P

 

15回戦　（起家から、前田・勝又・瀬戸熊・古川）

東１局、勝又のスーパープレイが炸裂する。

この牌譜の結果だけを見てもなかなかそれは伝わりにくい７巡目のが秀逸だ。

勝又

  ドラ

競技ルールでは、マンズで２メンツとアタマを作っての、リーチのみでは手が重くなるここは、受けも視野に入れた七対子で手牌を進める。
そして手役となるイーペーコーで使えるを引き入れ、受け駒であるを生かしての見事なサバキとなる。

前田
  リーチ

勝又
  ロン

南２局、勢いを抑え込まれたように見えた前田が今度こそはと仕掛ける。

前田
  チー  ドラ

しかし親の勝又もソーズのめくりあいを避けるべく、ソーズを処理して500オールとして前田を封じ込める。

勝又
  チー  ツモ

南４局

ここは勝又自らアガって前田との差を開こうとするが、そこに瀬戸熊のリーチへ放銃となってしまい沈みにまわる。
本当に勝負のゆくへは最終戦となってきた

15回戦成績
古川＋19.5P　勝又▲2.1P　瀬戸熊▲5.0P　前田▲12.4P

15回戦終了時成績
勝又＋117.4P　前田＋103.4P　古川▲104.7P　瀬戸熊▲117.1P

 

16回戦　（起家から、前田・古川・瀬戸熊・勝又）

日本プロ麻雀連盟の規定により、現状の着順により最終戦の座順が決まる。
起家トータル２着目・南家３着目・西家４着目・北家１着目。

優勝争いである勝又、前田の差は14.0Pだ。下位の古川、瀬戸熊の差も12.4Pほど。

東１局

勝又が、全者対応の打ちに前田の反応が無かったので、並べたに前田がチーと動いて古川・前田のテンパイとなる。
このテンパイを好機と見て前田が連荘できるかが早くも序盤のキーポイントとなりそうに見えた。

東１局１本場、しかしその連荘も前田への好機と転ずることなく瀬戸熊がリーチをしてツモアガる。

瀬戸熊
  ツモ  ドラ

東２局、瀬戸熊の先制リーチを受けるもドラトイツの前田が追いかける。

前田
  リーチ  ドラ

瀬戸熊
  ロン

ここは前田がを持ってきて1,300の放銃となった。
前田としては小場での進行で最後の位置取りをうまく着けるか、それとも残りの局で大物手をものにするかといったところか。

東３局１本場

勝又、大きい放銃は許されないが、15巡目ドラであるを打ち切りアガリをものにする。
このを打ち出す覚悟と集中力、これぞ強者と感じさせられる。

 

東４局、前田の考えが勝負はラストという終局イメージを伝えさせられる2,000のアガリ。

前田
  ポン  ロン  ドラ

前田自分の状態も悪いと見ているのだろう、それならばと最後まで位置どりだけは絶対につけなくてはいけない前田の覚悟のアガリ。

南２局、点数状況は古川37,000・瀬戸熊33,000・勝又26,400・前田23,600
前田は浮きにまわっての逆転の図が用意されている。
11巡目前田の手牌はこうだった。

前田
  ドラ

前田は静かにを合わせ打った、この極限の状態でリーチツモでの1,300・2,600が非常に大きいのは誰もがわかっている。
ツモる１巡、また次の１巡が前田を悩ませていたはずだ。

そこに瀬戸熊のリーチ。前田の選択はだった。苦しくも瀬戸熊のリーチ後のツモは、とツモ切られていく…勝負は最終局か。

最終局

結果だけを伝えると最終局は古川がアガって幕を閉じた。
これを論じても答えのない話だが、これだけ最終戦でアガる力を見せつけられて、最終局だけはアガらないというのも奇麗ごとすぎて違和感をおぼえる。
皆が自分を持つプロフェッショナルなのだ。

勝又健志という新たな鳳凰位の誕生。

16回戦成績
古川＋21.4P　瀬戸熊＋5.4P　勝又▲10.2P　前田▲16.6P

最終戦終了時成績
勝又＋107.2P　前田＋86.8P　古川▲83.3P　瀬戸熊▲111.7P