プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記

第33期鳳凰位決定戦 二日目(5回戦~8回戦)観戦記 瀬戸熊 直樹

結論から言うと、前原が3連勝し、最下位から一気に首位に立ってしまうのだが、果たして前原をストップする事は、出来なかったのだろうか。

何がそうさせてしまったのか、勝負のアヤを振り返ってみたいと思います。

僕の主観だが、この日の古川、前原のマークは勝又だったように思う。
たまたまと言えばそれまでだが、1日を通して、勝又の親は常に軽い仕掛けで蹴られたと思う。

 

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まずこの日、最初の山場。
5回戦 東3局 0本場 親近藤
みなさんなら、どの選択をとりますか?
一番無難な選択が、北待ちヤミテン。
2番目に無難なのが、九万待ちヤミテン。
北九万もリーチすれば、おそらく出してくれないメンツ。

 

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近藤は終了後、こう語ってくれた。
今日の出来と印象に残った局を教えてください。
近藤:「20点。最初の入り方(七対子のリーチorヤミテン)を間違ってしまい大物手の選択がすべて裏目に出てしまいました。トータルトップな事、変則的な捨て牌、これらを考慮してヤミテンが正着だったと思いました。ただ、リーチするのが自分のスタイルでもあり、迷いました。結果を出せなければ勝負師には致命的です」。

近藤は、北切りの九万単騎リーチを敢行する。

A1リーガーなら誰でもヤミテンが正着打とわかるであろう。近藤も冷静になって考えれば、それは充分わかっている。しかし、決定戦初日トップで折り返し、最初に来た大チャンス。リーチしてツモれたなら、6,000オールだ。3人も序盤とは言え、がっくりするだろう。近藤が、北を選択していれば、おそらくダマなら前原から直撃の9,600、リーチなら6,000オールのツモアガりであった。

 

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目に見える失敗作。近藤自身も歯を食いしばったが、揺れているはずだ。九万を止めた前原は自身の河の北と手牌の九万を見て、何を思ったのであろうか。

 

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序盤、前原には試練が続く。

5回戦 東4局 親古川
古川がきっちり1枚切れの白を選択してダマテン。

 

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この白は、前原が持っていた。
9,600の放銃。ただこの日の前原はここからねばる。
一本場 高め789の平和三色リーチを打つも安目、ツモアガリ。

迎えた親番

 

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3者、勝負手が入る中、勝又から前原へのアガリ。

勝又:「三筒六筒待ちと自信持って読んでいただけにヤミテンにしておけば良かったです。欲まみれで反省しています」。

ここから古川のマークがやはり前原にシフト。
以下の形から三万をチーしていく。
解説のしようがないが、前原の有効牌をことごとく喰い流していく。

 

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発八筒を流した。
前原もピンズのホンイツイーシャンテンまでこぎつけるが、四者ノーテンで流局。
サーフィン成功の巻きの場面。この後失敗の巻きも出てしまうが・・・。
ここで、失速しないのが前原、次局勝又の親番で、簡単に2,000・3,900の引きアガリ。

 

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前原が、一つの放銃で堪えないのは前回に紹介した通りだが、この半荘は、前原ペースになりつつある。そんな感じがしていた。
もちろん、同卓の3人は、そんな事は当たり前のようにわかっていただろうし、いかにして前原を止めるか考えていただろう。

わかっていても、前原が目を覚ましてしまっては、どうする事も出来ない場面があるのも事実だ。

 

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5回戦 オーラス
これまで七対子のターゲットに二度なりながらも、最後はタンヤオ七対子ドラドラを難なく決めて断トツで終える。
実は、前原自身にとって、二日目の初戦は大きな意味があったと思う。この日もマイナススタートしてしまうと、相手に余裕が出て来てしまう。しかし、相手も下がれない状況をつくる事ができれば、前原ワールドは全開となるからだ。

 

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トータルをプラスの2着としてむかえた。6、7回戦。
この辺りから、勝負のアヤが出始める。

 

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まずは、前原の5,800リーチと近藤の高目二盃口のめくり合い、近藤から前原へ5,800。
この時点でトータルポイントで首位に立つ前原。
対前原戦を数多くこなした僕の経験からすると、こうなったら、一歩も引かないインファイトに持ち込むしかないように思えるが、近藤はどういう手法をとるのか。

そこからあまり動きのないまま、南3局近藤の親番で前原の決定打が出る。 ドラ六筒

 

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リーチの時点で五万八万は山に6枚。
前原が仕上がりつつある。

でも、全員にミスがなく、前原のナイスプレーでこの状況ができたのか。
実は、ここが二日目の最大の争点である。

前原にこの日の出来を聞いてみた。
「出来としては60点。良く打てたという局は残念ながら一つもなかったように思います」。

例えばこの局 6回戦 東3局 親近藤
勝又、近藤どちらかにアガリがあってもおかしくない。

 

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そして5回戦オーラスで前原3,000・6,000の場面の古川の仕掛け。

この古川の初動である。
もちろん、ここから、トイトイや清一色になる古川マジックを何度も見せられてきたが、この場面では裏目にでてしまう。
今局は、結果として前原の手を進める事となってしまった。

 

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そして6回戦 東3局1本場 勝又リーチの場面にタンヤオドラドラでテンパイの近藤。
勝又の二索にチーの声。待ちは変わらず、打点が倍、当然と言えば当然のチー。

 

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結果だけを見れば、失敗。

 

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これを仕方ないと見るか。絶対に失敗してはならない局面と見るかで、心の持ちようもかわるというもの。

ここを、ゴーするかステイするかは、欲を出していい場面なのか、頭を下げて、1翻下げているこの道順を正しいと見るかである。(結果はハイテイで七筒を持ってきて近藤オリ)

哲学的な領域。鳳凰位決定戦は近藤に試練を与えている。その道のりは、走破した人間しかわからない。二日目は、近藤にとって終始悩ましい1日となった。

ただ、近藤のコメントが前を見ていたので、三日目に期待したい。

近藤「ダブリーに打ち込んだ8回戦。567回戦が終始受け気味だったので、それを払拭すべく、後半戦に向けた意思表示的な意味合いだったため後悔はありません」。

実は近藤のキッカケは、ここにあると思う。退路を断った覚悟。これを持たなければ前原を倒すことはできない。

そして今回の主役、勝又の不調。
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ハイブリッド麻雀という言葉を聞くが、本来この言葉がぴったりくるのは、勝又なのだろう。牌理に明るく、流れや態勢も重んじる。もちろん白鳥にも似合うネーミングであるが。
勝又の連覇に黄信号が灯っている原因は、どうしても理詰めで考えてしまって、不遇な出来事にうまく切り換えが出来ていない所。

勝又が連覇した時、新しい時代は来るのだろうが、そこまで来ている未来を切り開けるかは勝又の人間力次第か。

古川の3連覇がいかに偉大な記録かわかるというもの。(阿部[RMU]も達成)

そしてその古川。ここまで決定戦をのびのびと自由に楽しんでいる。普段の打ち込みがなせる動きも随所で見せてくれている。ただ体力面の不安から、つまらないボーンヘッドでの失点が致命傷にならなければ良いが。どちらにせよ、古川があと二日間もキーマンなのに変わりはない。
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最後はトップに躍り出た前原。60点の出来で3連勝してしまった。本人の言葉ではないが、僕も前原が本調子には見えない。前原が本当に「ゴジラ」になってない今、まだまだ一山、二山ありそうである。

二日目 振り返り
5回戦 乱打戦を前原が制し、初トップ
前原+28.1 古川+8.9 近藤▲11.8 勝又▲25.2

6回戦 他家のエラーを味方に前原が2連勝(トータルトップに)
前原+27.7 勝又▲5.2 近藤▲8.2 古川▲14.3

7回戦 前原の鳴きが凄い形になり決定打に。古川はさらし間違えによるペナルティがつく事に。
前原+28.1 勝又▲2.8 近藤▲10.0 古川▲35.3(ペナルティ込み)

8回戦 前原ダブリーなども、近藤が戦う姿勢を全面に出し逆転トップ
近藤+14.1 古川+4.1 勝又▲6.4 前原▲11.8

二日目トータルスコア
前原+45.8 近藤+26.5 古川▲46.5 勝又▲47.8 供託22.0

三日目見所
古川、勝又は後がなくなった為、必ず浮きたい所。二人とも調子自体があまり良くない為、大胆な作戦をとってくるかが見物。

近藤は鳳凰位を獲る為には死をも覚悟して攻めなければならない事が分かる二日目だったはず。置きにいかないで、攻守しっかりバランスをとれるかがポイント。

そして、前原。予想より早い段階でトップになったな、というのが正直な感想。
前原が「ゴジラ」となった時、決定戦が面白くなるのは必至の為、前原らしい麻雀を見せてもらいたい所。三日目は二日目の最終戦ぐらい激しい乱打戦になると見ています。

乞うご期待。