プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第39期鳳凰位決定戦3日目レポート

【悲願の初タイトルへ。HIRO柴田が示した決意と覚悟。】

佐々木寿人(現鳳凰位)
前田直哉
HIRO柴田
吉田直

実況:古橋崇志
解説:森山茂和・藤崎智

 

 

◆2日目までの成績

 

 

今決定戦シリーズでは持ち前の連続攻撃がなかなか決まらない佐々木だったが、9回戦いきなりビッグチャンスが訪れる。

9回戦 東1局
東家 佐々木
四万五万六万四索五索六索七索八索九索四筒五筒八筒八筒 リーチ ドラ二万

親番で僅か3巡という早さでの高め三色リーチ。

森山「三筒はツモ切るくらいの気持ちで六筒がツモれたら大分違うけどね。」
藤崎「大差ですからね。良い時の寿人なら直ぐに高めでアガってますよ。」

他3者ともリーチに押し返すまでには行かず山との勝負となったこの局。結果は終盤に差し掛かる所で安め三筒ツモの1,300オールとなった。

森山「時間が掛かってしまっていて良い時のアガリではないかな。好調ならばテンパイからアガリまでのスピードが上がってくる事が多いからね。」

解説の森山がそう表したように、佐々木と対照的であったのはHIRO柴田であった。

 

 

9回戦の南場において、3連続テンパイから1巡以内でのアガリである。もちろん道中の打牌選択や、リーチ・ヤミテン判断の精度の高さが大前提ではあるが、柴田の好調さが言霊となって現れた。

1人快走するHIRO柴田がトップスタートとなった3日目であったが、10回戦に入ると構図が一転。第35期の鳳凰位である吉田の出番である。

 

 

東1局にリーチ・ツモ・中・ドラ1の3,900オール。
一見すると何気ないアガリではあるが、良く場を見渡すと14巡目に上家から放たれた二索にチーテンの声を掛けていない。7巡目に1シャンテンとなってからツモ切りが続く中で、親番を維持する為の一言が出ても良い状況。それでも、しっかりと見送ると自力でテンパイを入れて力強くツモりあげる。それは正に吉田直という漢の意志を垣間見る瞬間であった。

このアガリにより勢いを加速させた吉田は続く11回戦も先手を取る。

 

 

親の先制リーチは高め4,000オールの勝負手。局と局は独立しているが、他者にとっては攻め返しづらい対局感が画面越しからも伝わって来る。その中でHIRO柴田の手格好は以下のようになっていた。

一索一索二索三索四索五索七索七索七索八索八索四筒五筒 ツモ六索 ドラ四筒

確実な安牌は二索のみ。リーチが入っていなければピンズターツ払いからのチンイツも有力ではあるが、あいにくそれはドラとその跨ぎ牌である。ましてや4番手からの親リーチを受けてとなれば唯一の現物を抜くのも不思議ではない。中間を取って一索切りのテンパイ取りも選択肢としてある中であったが、HIRO柴田は最も強気の姿勢を選んだ。

 

 

ソウズが来るようであればドラの四筒も打ち抜く決意の打五筒で放銃を回避すると、東2局ではその五筒が自身のアガリ牌となって返って来る。

 

 

リーチ・ピンフ・タンヤオ・三色の12,000の加点により11回戦もHIRO柴田が着実にポイントを伸ばしていった。

一方ここまで苦しい展開を強いられている第31期鳳凰位の前田であったが持ち前の守備が光る。

 

 

まずは11回戦の南2局、東家HIRO柴田からのドラ九筒発とのシャンポン待ちリーチを受けながら役あり三索六索九索テンパイ。しかし当たり牌の発で迂回という鉄壁の片鱗を披露すると、驚愕であったのが12回戦の東2局。

12回戦 東2局 
南家 佐々木
九万九万一索二索四索四索四索二筒三筒三筒四筒四筒五筒 リーチ ドラ一索

北家 HIRO柴田
五万六万七万三索四索六索六索 ポン発 チー六筒七筒八筒 ドラ一索

2者のアクションに挟まれながらも自力でテンパイに辿り着いた前田。しかし無情にもHIRO柴田への放銃牌が手元に。

 

 

ここで前田の目線に立って少し考えてみたいと思う。現状140ポイント以上を追いかける立場であり且つラス目の親番。そして五索はリーチ者の現物であり、HIRO柴田は仕掛けてからドラの一索に声を掛けていない。また残り巡目も僅か…。考えれば考えるほど選択肢は1つに絞られそうだが皆さんは何を切るだろうか。

 

 

前田が選んだ道はテンパイ崩しの“我慢”。一体この牌を選べる打ち手はどれくらいいるのだろう。
1,000点2,000点の放銃ならノーテン罰符と変わらない、それならばテンパイ取った方が期待値的に得だろうという思考が現代麻雀。それに仮に放銃してもこの状況で一体どれほどの人が批判するのだろうか。その葛藤の中で前田は自身の読みを信じ、そして貫いたのである。

「弱気と我慢」
「頑固と一貫性」

これらは似て非なる存在。
最終的に佐々木のツモアガリで親が流れてしまったが、前田ブランドが正に体現された至極の一局であった。

最高峰の戦いである鳳凰位決定戦3日目も終盤を迎える。

 

 

12回戦南3局、2番手まで浮上した現鳳凰位である佐々木が薄い六万九万ターツを埋めて感触の良い親リーチを打っている場面。

 

 

この局は前田が1,300の出アガリで佐々木のチャンス手を摘む形となったが、卓上を振り返ると隠れたファインプレーが潜んでいた。

 

 

手牌価値が高い訳でもなく安牌も比較的存在する中で、HIRO柴田が佐々木のリーチに対して無筋の三索を切り飛ばしたのである。そして導かれるように六索が中筋となり、前田のテンパイの道筋を切り開いたというものであった。
今まで幾度となく決勝戦に残りながらも、未だタイトル獲得に至っていないHIRO柴田の並ならぬ強い覚悟が伝わってくる。

 

 

そしてオーラス。
一索二索二索二索三索四索五索六索七索八索 ツモ三索 ポン九索 ドラ白

先程の三索が再びアガリ牌として返って来ると、長い3日目が幕を閉じた。

 

◆3日目終了時

 

 

【第39期鳳凰位決定戦〜最終日〜】
2023年2月4日(土)14:00

佐々木寿人(現鳳凰位)
前田直哉
HIRO柴田
吉田直

実況:古橋崇志
解説:森山茂和・前原雄大

(文:小林正和)