プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A2リーグ第7節レポート 佐々木 寿人
2014年10月22日
第7節は奇しくも上位3名がぶつかる対局となった。
この日の展開次第では、今後の勢力図が大きく変わってくる可能性もあり、卓内のみならず、卓外の12名にとっても重要な意味を持つ1節だったのではないだろうか。
だが、当の私は至って平静だった。
皆が皆勝ちに来ることは目に見えているのだ。ならば私のテーマは、丁寧に1節をこなすことである。
もちろん今節をプラスで終えることに越したことはないが、理想ばかりを追いかけていたわけではなかったのである。
勝負事にたらればは禁物だとよく言われる。
しかし、今回はあえてそれのみを中心に対局を振り返ってみたい。
まずは1回戦の東2局。
親の内川が2フーロしてのテンパイ。
ポン チー ドラ
このチーで既にテンパイしていた紺野にドラのが流れる。
ツモ
ピンズの下は親の内川にいかにも切り辛いが、四柳の河にが打たれていることと、他のファン牌が全て出切っていることから、ドラをツモ切らない限りは、打っても2,900が濃厚である。
私なら間違いなくを打って捕まっていたところだが、紺野は打のリーチを選択。
ただ、これによって真っ先に仕掛けていた私にアガリが生まれる。
ポン チー ロン
点数こそ安いが、親の仕掛けとリーチを蹴ってのアガリである。
もし紺野が打としていれば親の連荘となり、全く別のゲームになっていたことだけは間違いない。
続けてが3回戦の東4局である。
相変わらずの安仕掛けで南家の私がまずテンパイ。
ポン ポン ドラ
同巡、西家・四柳も追いつく。
だが、ここに目下2連勝中の親・紺野からリーチ。
リーチ
なら出アガリでも跳満という大物手だ。
そんなこととは露知らず、私は一発目に持ってきた無スジのを平然とツモ切る。
もちろんこれには訳がある。
21,200とはいえ、ここまで+39.4Pの紺野がラス目に落ち込んでいたのだ。
となれば私がここでオリて、親の1人旅にさせる訳にはいかない(ハナからオリる気などないが)。
ここは1つの勝負所なのである。
するとそこに、北家の内川も参戦。
テンパイ気配のある四柳のをチーして、こちらもテンパイだ。
チー
やはり3者ともが紺野の親を潰すことに共通の意識を持っている。
しかし次巡、内川がを持ってきて長考に入る。
これは四柳のロン牌だが、結果的には満貫ツモを食い下げて打てばわずか1,300の支出だ。
(おい、止めんのかい!みんなでこの親落とすんとちゃうかったんかい!)
私の心の声である。だが内川に私の声が届くことはなかった。
確かに紺野のリーチにピンズの中目は切り辛い。
はい、止めー!という音が聞こえるかのような打である。
そして今度は四柳だ。
私のアガリ牌であるを持ってきて少考。
(止めんなー!こっちだってこんな蚊とんぼみたいな手じゃあ、いつ飛ばされてしまうかわからんよ。)
幸いにも今度はその声が届いた。
四柳がそのままをツモ切り、どうにか怖い親が落ちた。
ここで2度目の“れば”である。
もし、内川のみならず、四柳にまでオリを選択されていれば…
もうどうなったかはわからない。いや、考えるだけで恐ろしい。
つくづく麻雀とは4人の絡みが織り成す戦いである。
そして最後は4回戦の南2局、私の親番である。
8巡目、南家の四柳が以下の捨て牌でリーチ。
ドラ
そこに向かって北家の内川が追っかける。
これを受けての私の手がこうだ。
ツモ
2人の共通安全牌はない。
しかし、高いのがどちらかだけは誰の目からも明らかだった。
あの時の内川の腕の振り下ろし方とリーチ音は異常だった。
仕方なく、半分オリ気味に私がに手をかけると、四柳の手が開いた。
リーチ ロン
その局の内川の手はこうだった。
ここで最後の“れば”である。
もし内川のリーチ音があんなに大きくなければ…
私の選択もまた違ったものになっていたかもしれない。
結局この日は2.9Pのマイナスで乗り切った。
しかし映像を見れば見るほどこう思う。
勝負の世界というのは意外にも、たらればの積み重ねから成り立っているのかもしれないと。
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