プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第32期A1リーグ第4節レポート 瀬戸熊 直樹
2015年08月06日
第32期A1リーグ自戦記:瀬戸熊直樹
第3節を終えて、僕のスコアは▲20.3P、+36.4P、+10.7Pと来てトータル+26.8P。
数字は大事だが、それ以上に大事なものがある。
僕の場合は、「いかに戦えているか」である。
第2節の対荒プロ・前原プロ・仁平プロでは、初心を思い出したかのような内容で、大満足で終える事が出来た。
プロである以上、勝っても負けても打ち手の内容を問われる。意見を言ってもらえるのは、注目の裏返しでもあるし、プロ冥利に尽きると言えるだろう。
ここでは対局、感想戦ですら伝わらなかった部分を伝える事が出来ればを思う。
連盟のトップリーグを勝ち上がる為にはどうしても避けては通れない相手が必ずいる。
もっとも、それは非常に幸運なことであるし、そんな存在のいない世界であるなら、やっている意義すらなくなってしまうと思う。
僕の中にも何人かいるが、その一人がこの日の対戦相手前原プロだった。
しかも今回は100P以上の貯金を持っての対戦である。
いつも以上に気合を入れて、戦いに挑まなくてはならない。
僕の貯金は、わずか20P。積み重ねる戦いだけど、ポイントよりも、もっと大切なものを優先しなくてはならない。全てを捨てる覚悟で卓に着いた。
1回戦、東1局
親の望月プロが、配牌をもらってからやや長めの理牌。
{手がいいな}という予想を上回り「ダブリ―」の声。
ドラなし
数巡後、放銃は、前原プロ。
入りの状況としては、望月プロがトップ、前原プロの手牌は分らないが、前に出た結果なら前原プロ二番手。受けた近藤プロと僕がよくない。
ただ、もう少し細かく分析するなら、前原プロも手牌が見合っていなければ四番手。
近藤プロと僕も、腰が引けたのではなく、しっかり当たり牌を抑えたなら二番手と考えられる。
AⅠリーグでは、置かれた状況を察知しなくては命取りになる。
迎えた1本場、7巡目に親の望月プロがをポン。
ポン
この時、南家の僕の手牌は
状況判断が出来ていなければ、かで放銃もあり得た場面。上手く凌げた。
開けられた手牌を見て、ガードによる態勢の上昇を感じた。
迎えた東4局チャンス到来。
中盤に以下の手牌。
ツモ ドラ
ツモ切りして、手牌が変化して数巡後
ツモ
こうなる。打として、リーチ宣言。
望月プロもを暗カンしてからの、・マチとなり同テン。
親の前原プロも中盤のドラの孤立からの・マチとなり、「」をめぐる攻防となった。
結果は幸運にも、僕の引きアガリとなった。
麻雀は不思議なもので、こうなると自然に事態が好転する。
これを偶然の事象と考えるか、必然と考えるかで麻雀観の違いとなる。
次局の配牌、南1局 南家
ドラ
これが、ソーズが押し寄せて、
ここまで伸び、ポンテンの即引きアガリとなった。
こうなってしまえば、次局の親番は手牌に忠実に最速で最高の値段の手牌を作るだけ。
配牌
ドラ
第一打を切り(鳴かれない事がポイント)、次のツモは。
絶好のツモ。これが以下の形まで伸びる。
12巡目まで
悩みは、ツモ、ツモ・と来た時にリーチをするのか否かだけ。
そこへ、南家の近藤プロがツモ切りリーチ。
北家・望月プロから5枚目の・のが打ち出される。
鳴く事と鳴かないこと、どちらが必然なのか。
状況が上向きだから、ツモを信じるべきか?
リーチに対して打ち出され、近藤プロの河に・がある以上鳴くのが自然なのか?
僕の選択はチーテン。
南家のリーチなので、鳴いた場合も当然ツモの後を追える。
有効牌は流れないまま、数巡後、近藤プロ「ツモ」の声。開かれた手牌、
ツモ
あえて、生牌のダブ待ち。
絶好調の僕に対抗できる唯一の役、七対子。
ダブは、対面の西家・前原プロが2枚持っていた為、ラス牌。
近藤プロがヤミテンなら、僕も鳴かないので、6,400点の放銃となっていたが、近藤プロの立場からすると、最高のアガリ。
この局を境に、近藤プロを中心に展開して行くから、麻雀は面白くて怖い。
僕の脳内は、常にこう言う風に麻雀を捉えている。
1回戦結果
近藤+20.1P 瀬戸熊+11.4P 望月▲10.5P 前原▲21.0P
2回戦 東2局 親・瀬戸熊
1回戦、大人しかった前原プロが工夫してくる。
南家・前原 配牌
ドラ
1枚目の自風をスルーして、2枚目のをポン、親で真っ直ぐ打ち抜いた僕の牌を2フーロし、以下の形。
チー チー ポン
捨て牌は
僕の手牌はこうなっていた。
ここからが心理戦である。通常、2鳴きを考えれば、ドラ単騎か親落としの安手だろう。
しかも仕掛けた相手は前原プロ。
イメージとしては1鳴きが多く、高いか安いか読めない事も多い打ち手である。
打った瞬間「えっ」とびっくりする程高いこともしょっちゅうだ。
その前原プロの2鳴き。これがスタートなら僕も違和感なく安いと読む。
しかし、何かがおかしい。その理由は解らないが、場に3枚切れのなのに、が顔を見せていない。
かかの推測をする。
しかし、打ちながら自分の感じたものが、怯えなのかもしれないと言う思いも頭をよぎる。
取りあえず打とし、次の1シャンテンになる。
ツモなら単騎にするが、ツモならどうするか?この時はこの事ばかり考えていた。
僕以上に手牌がまとまっていた望月プロにラス牌のが行く。
こう言った牌を掴むか否かは、その日の勝敗を左右する。
前原プロ「ロン」の声。7,700である。
が3枚切れである以上、僕もツモと来たら、耐えられたか微妙な局面であった。
何と言っても前原プロの2鳴き3フーロである。
またしてもガード出来た。
この1局から当然のように、望月プロ1人沈みのラスでオーラスを迎える。
オーラス持ち点
前原33,900P 近藤31,200P 瀬戸熊30,200P 望月▲23,700P
しかし、望月プロもやはりAⅠの住人。
オーラスの親で7巡目にリーチときた。
ドラ
「流れ」と「態勢」を示すかのように、は山にわずか1枚。
当然この巡目にもかかわらず、他家にもテンパイが入っている。
しかし結果は、望月プロの一発ツモ。
開けられた手牌を見て、僕はもちろん、前原プロも近藤プロも「グラッ」と来たはずだ。
それまでの川の流れが急に反対になったかのように、1人沈みが1人浮きになったのである。
「流れ」や「態勢」は絶対にあると思うが、人の想いはそんなものを壊す力も持っているかのような渾身のツモアガリ。
恐いけど楽しい。
このオーラスは7本場まで積まれ、何とか望月プロのリーチを掻い潜り、僕も浮きに転じて終えた。
3回戦も親番でのドラ3枚引きの幸運に恵まれ、浮きの2着。
この日は、2着・2着・2着と並べて最終半荘を迎える。
数字を考えたい時である。無難に終えたい。ラスは引きたくない。
当然この心理になるが、こう言った心理は必ず負の作用となる。
自分に言い聞かせる。「絶対トップを獲る!」
そんな願いが通じたのか、東1局1本場、四暗刻を引きアガった。
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トータルを50ポイントとし、この日を終える。
ポイントも嬉しいが、相手との距離、精神力のバランス、強い気持ちで打つ。
これらの事がクリア出来たことが何よりの収穫だった。
AⅠリーグは、何となく勝ちましたとか、不運で負けましたとかは、全くと言っていい程ないリーグである。
ツキをいかに見方にし、耐える時間をいかに我慢できるか、これが崩れた時、築いたものは一瞬で崩壊する。
「今日は生き延びた」これが僕の正直な感想である。
100ポイント浮く自分は、なかなか想像できないが、100ポイント沈む自分ならいくらでも想像できる。
今日はたまたま止める事が出来た相手のアタリ牌も、些細な心理から放銃して坂道を転がり落ちるのである。
そんな怖い戦いだからこそ、内容に満足し、ポイントをわずかでも積み上げれた日の充実感は何ごとにも代えがたい。
そしてちょっとだけファンの皆様に「今日は良かったよ」と褒めて頂けることが最大の喜びです。
次節も頑張ります。
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