第30期プロリーグ A2 第3節レポート
2013年06月06日
第2節が終わった瞬間から、この第3節のレポートのテーマは私の心の中で決まっていた。
リーグ戦を観戦する時の方法としては、注目する選手の手牌の動きを見る観戦方法と、逆に視線が見える位置に陣取り、
その選手の思考を追う観戦方法があるだろう。
また、もう少し視野を広げて卓全体を俯瞰できるポジションに構え、普段対局している時には見ることの出来ない視点から対局を観戦する方法がある。観戦する皆さんも、いろいろな視点から対局を見ることにチャレンジすることをお勧めしたい。
普段の私は、比較的フラットな視点で観戦することを好むタイプだ。
さらにレポートを書くとなると、感情が入らない観戦方法の方が構成していく時に文章をまとめやすいといった理由もあったりするだけに、いつもは全体を見渡して観戦している事が多い。
しかし、今節はどうしてもある選手の麻雀に注目したかった。
その為、今回のレポートの内容は偏りがある内容になってしまう事を事前にお許し願いたい。
私が注目したのは上位3名が揃う組み合わせ。
首位の山井、2位の四柳、3位の前田に、昨年度惜しくも昇級を逃した黒沢と遠藤の卓。
“ある選手”とは首位を走る山井。ここ数年での山井のスタイルチェンジからの進化と、その強さの秘密を探りたいと思っていたことが大きな理由だ。
対戦前から、今節は山井の後ろに陣取り好調の理由を探ろうと目論んでいたものの、山井は1回戦の抜け番という事で、首位の山井に挑戦権を突き付ける4人の争いに注目。
1回戦、開局から飛び出したのは親番の黒沢。
四柳からポンテンの2,900を召し取ると、続く東1局1本場、10巡目にリーチ。
ツモ
打
リーチ ドラ
手役が確定し、ヤミに構えても十分な所を敢然とリーチを打てるところが黒沢の強み。
手堅く点棒を拾うというより、自分の力でポイントを掴み取るんだという意思や姿勢がギャラリーにも伝わるリーチで、今節の対戦に懸ける黒沢の気持ちがこちらにも伝わってくるようだ。
この確定18,000点のリーチに向かっていくのは遠藤。
7巡目テンパイも、
ツモ
打
ドラ
ツモリ三暗刻のテンパイを拒否し、あくまで高め追及のスタイルは以前には見られなかった形。
昨年度のA2リーグでの経験から、新たなスタイルを模索しているのだろうか。
黒沢のリーチを受け、遠藤は黒沢の現物をポン。黒沢の
–
–
は何と山7枚、対する遠藤は山3枚。
麻雀のアガリ形の強さは待ちの枚数ではないが、打点の違いと形の強さから黒沢が圧倒的優位と見たが、勝者は遠藤。
黒沢がを掴んで決着。
ここから互いに牽制しあう展開が続いたが、局が大きく動いたのは南2局4本場。
10巡目、まずは北家の黒沢がリーチ。
このリーチを受け、次巡、南家の四柳がを暗カン。リンシャンから
を引き込み即リーチ。
暗カン
ドラ
同巡、西家・前田もテンパイも、待ち牌のを暗カンされているだけにここはヤミ。
ツモ
打
ドラ
この勝負所を制したのは黒沢。この日1日を象徴するようなアガリは、
リーチ ツモ
ドラ
会心の2,000・4,000で1人抜け出すことに成功。
次局は遠藤が、前田のリーチをかい潜り見事に跳満を引きアガリ肉薄するも、
リーチ ツモ
ドラ
最後は黒沢がきっちりと締め勝負あり。
ポン
ロン
ドラ
注目の首位争いは、2位、3位共にマイナスしたため大きな変動はなし。
ここで満を持して山井の登場だ。
山井の強さは何度も対戦して十分にわかっているつもり…だった。
しかし、スタイルチェンジしてからの“本当の”強さの理由を知りたい自分がいた。
それが今回、山井の後ろに陣取った大きな理由の1つである。
山井が踏み込むタイミング、間合い、そして受け手順、全てのアクションが、今自分が山井から吸収しなければならないスキルで、自分に足りないモノだという事を自覚しているだけに、今節の山井の大爆発を密かに期待していたのも事実だ。(観戦記者という公平な視点で観戦しなければならないことは十分に承知の上で。)客観的にレポートは書かなければならないが、何か1つでも盗んで帰れたらいいなと。
しかし、今節は山井にとって受難の月となってしまったようだ。
2回戦東1局、親の山井は13巡目にリーチを放つものの、ドラ暗刻の黒沢があっさりとツモアガリ。
ツモ
ドラ
そして昇級争いのライバルである前田も続く。トップを走る黒沢から東3局の親番で、
リーチ ロン
ドラ
高めので9,600。
山井も南1局の親番で持ち前の爆発力の片鱗を見せる。
リーチ ツモ
ドラ
リーチ ツモ
ドラ
この二発のツモアガリでトップ目に立つも、今日の黒沢と前田の出来はそれ以上だった。
南1局3本場、黒沢は山井の追っかけリーチを受けながらも気合の3,000・6,000のツモアガリ。
リーチ ツモ
ドラ
首位の山井に親カブリさせる価値あるアガリを果たすものの、今度はその黒沢から前田が、
ロン
ドラ
このアガリで黒沢の2連勝を阻止。山井は2着で自身の緒戦を終える。
3回戦、山井の強さを垣間見るスーパープレイが開局早々飛び出す。
5巡目にをポンした牌姿は以下の形。
ポン
ドラ
ここから上家・前田の放ったを平然とスルー。
すると、ツモ打
、ツモ
打
と自然なテンパイを果たし、ハイテイで
をツモ。
最高打点をモノにし一歩リードするも、山井自身が、
「このリーチは少し焦ったのかなぁ?」
と後悔を滲ませる一手が生まれる。
東2局7巡目、タンピンリャンペーコーを目指し進めていた山井は、待ち変えを選択しリーチ。
ドラ
「この手をしっかりとヤミテンでアガっていれば、今日の勝ちは間違いなかったのに。」
最終戦を前に語った山井のこの繊細さと、前局の大胆な戦い方とのバランスが山井の強さを物語っているのかもしれない。
今局の結果は、四柳がきっちりと捌き切り親権をキープ。
するとこのアガリから3連続でアガリをモノにし、1回戦の負債を取り戻す復調のきっかけとなったのだ。
山井が語るこのタンキのヤミテン。テンパイは
をツモってのモノだった。
もし仮に、タンヤオ牌を引いてのテンパイであるなら、自然とタンヤオ牌でのヤミテンを選択したであろうし、前局の感触の良いアガリが、リーチを宣言させたものだと思っていた。自分が座っていたとしても同じようなアクションを起こす可能性もあるなと感じていただけに、山井の『繊細さと大胆さ』のバランスを感じ取ることが出来た瞬間だった。
実際、この瞬間から山井は苦戦を強いられることとなる。
絶好調の黒沢が抜け番の3回戦、前田が2回戦に引き続き連勝を果たし、息を吹き返した四柳が2着。
対局が終わった今振り返ってみても、四柳がプラスで終えたきっかけはこの局だったように思えるし、山井が苦しんだのもこのリーチがきっかけだったように思う。
しかし大切な事は、このアクション云々ではなく、この瞬間が山井にとってのターニングポイントだという事を、対局している最中から山井自身が感じ取ることが出来ているという事だと私は思う。
自分自身の置かれている位置や状態を客観的に見る“目”を持っている事。
自分自身の事だけでなく、周りの変化にも瞬時に対応し、判断することが出来る事。
これらが山井の強さを支える強さの一部分ではないかと結論付けることが出来たことが、今節の私にとっての収穫だったように思えるのだ。
話を対局に戻そう。
この日の主役はやはり黒沢。黒沢自身も、
「私じゃなかったらもっと勝ってたかも~。」
と、冗舌に語るほど、黒沢の状態は良かったように映った。
4回戦も、
リーチ ツモ
ツモ
ドラ
この二発の2,000・3,900でトップを確定させる。
出入りの激しい内容ながら、攻める所は攻め、守る所は必死に守る。そういった戦う姿勢が卓外からも十分に感じ取ることが出来る程の気迫が、今節の黒沢からは伝わってきた。この姿勢を崩さない限り、今期も黒沢の活躍が期待できそうだ。
全体の成績を見ると、上位3人の争いはしばらくの間続く様相を見せている。
安定感のある勝又も今節も着実にプラスを重ね、上位を窺う好ポジションにつける。
また、今節の勝ち頭は石渡。
4114と激しい結果ながら、2回戦は70,000点越え、3回戦も60,000点越えと大爆発。
一期でのA1リーグ復帰も十分にありそうだ。
例年に比べ混戦模様のA2リーグ。
戦いは1/3を過ぎた所だが、この先どういったドラマが待っているのか全く予想できない。
来節も熱い戦いが期待できそうだ。
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)レポート